公開日:2019.07.23
賃貸アパートやマンション等の収益物件を担保とした貸出しは、金融機関の不動産関連融資の中では主力商品のひとつです。2013年から始まったアベノミクスによって、国内の金融市場は超低金利状態に突入し、一般の個人が投資目的でマンションを購入したり、賃貸アパート経営に乗り出したりするケースが増加しました。それに伴って、金融機関の投資用不動産向け融資も伸びていったのです。
2015年には、相続税が課税強化されたことで、賃貸アパート建設が全国各地で拡大しました。保有する土地に賃貸用の不動産物件を建設すると、相続税評価額が小さくなるという優遇措置を活用するためです。しかし、2018年に、地方銀行の賃貸アパート投資向けの不正融資が明らかとなって以降は、個人に対する新規の投資用不動産向け融資は急減しています。
こうした状況下、すでに保有している投資用不動産を担保としたローンの申し込みは増加傾向にあるようです。また、依然として、個人による不動産投資のニーズも衰えてはいません。そこで、賃貸アパートやマンションに対する評価について、足元の動向を踏まえながら改めて解説をしていきましょう。なお、投資用の賃貸アパートやマンション購入向けの融資は、金融機関では「アパートローン」と呼ぶことが多いので、以下、アパートローンと表記します。
借り入れる本人や家族が住むために住宅を購入する際の住宅ローンと、投資用アパートおよびマンション向け融資であるアパートローンの最も違う点はどこか? それは、アパートローンには事業用資金の融資という側面が強いことです。
賃貸用アパートおよびマンションへの投資は、単に不動産を取得するだけでは終わりません。用地の取得から始まり、建物の建設、賃借人の募集、家賃の徴収、建物の維持や管理といったさまざまな業務が伴います。
このように、中身は事業性資金の貸出しに近いといえますので金融機関としては採算性を重視することになります。通常、不動産業者が手掛ける商業ビルやオフィスビルへの投資と比較すると、金額的には小さくなりますが、個人としての借入金額はかなり大きいはずです。投資をする個人にとっては、大きなリスクを抱えることになります。
また、ここ数年、「サービス付き高齢者向け住宅」の建設するための資金として、アパートローンを活用するケースも増えています。サービス付き高齢者向け住宅とは、おもに民間事業者が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅のことです。2011年に創設された制度により生まれた施設で、60歳以上の高齢者や要介護認定を受けた60歳未満の方を対象とした賃貸住宅です。
超高齢化社会を迎えつつある日本では、社会的なニーズも高く、現在も高水準の建設が続いています。建設にあたっては国からの補助金制度もあり、個人でも保有する土地に建設をするケースが少なくありません。冒頭で言及した、所有する土地に建設をすると相続税評価額を引き下げる効果もあるからです。ただし、そうした社会的なニーズに合致し、優遇制度が利用できる物件であっても、収益性が求められることには変わりありません。
近年の賃貸用アパートおよびマンション投資ブームの背景には、「サブリース」契約の流行も影響しています。サブリースとは、サブリースを手掛ける会社がアパートを一括で借り上げ、各戸についてはそのサブリース会社が個人などに〝転貸〟をする、という仕組みです。一般的には、住宅メーカーや住宅メーカーの関連会社がサブリースを手がけているパターンが多いようです。
サブリース会社が建物全体を借り上げるため、賃借人の募集や家賃の徴収といった業務はサブリース会社が行ってくれます。アパートのオーナーはそうした煩わしい業務を自分でする必要はありません。オーナーにはサブリース会社から一定の賃料が支払われます。そのため、不動産投資の経験が浅い個人のアパートオーナーなどを中心に、積極的に活用されてきました。
しかし、サブリース方式によるアパート、マンション経営が上手くいかないケースが出てくるようになり、オーナー側に負債が発生している物件が増えてきました。サブリースの契約は、個人が適切な判断をするのが難しく、当事者間で問題が解決できずに裁判に持ち込まれるケースも少なくありません。次回以降では、サブリース契約の注意ポイントについても解説をしたいと思います。
執筆者紹介
▼シリーズ「不動産投資ローンの審査はココをみる」の記事一覧
・第1回:不動産投資ローンの審査はココをみる(1)
・第2回:不動産投資ローンの審査はココをみる(2)