公開日:2020.04.22
野村不動産アーバンネット株式会社は、2020年4月に「第126回野村不動産アーバンネット実勢調査」の結果を公表しました。本調査では、首都圏をはじめとする主要都市の住宅地価格の動向がわかります。コロナウイルスの感染拡大に伴い、住宅地価格にどのような影響が出ているか、気になる方は多いのではないでしょうか。住宅地価格は、住宅販売価格はもちろん、不動産の担保評価にも影響を与えます。そのため、マイホームの購入や売却、不動産を活用した資金調達をする予定がある場合は、住宅地価格の動向を確認しておくことが大切です。この記事では、野村アーバンネット実勢調査の概要や最新の調査結果の内容、住宅地価格の今後の動向について解説します。
野村不動産アーバンネット実勢調査とは、野村不動産アーバンネット株式会社が独自に実施している価格動向調査です。1989年7月にスタートし、調査は毎年1月、4月、7月、10月の年4回実施されています。本調査は通常取引を想定して実勢価格を査定しており、実際の取引価格(時価)により近い数字が示されているのが特徴です。公示地価や路線価といった公的な地価調査に比べてタイムリーな価格動向を確認できるため、地価動向の先行指標として注目されています。
出典)ノムコム「各種価格等(実勢価格、地価公示、路線価格)や調査方法について」
2020年4月に公表された、第126回野村不動産アーバンネット実勢調査(2020年4月1日時点)の調査結果は以下のとおりです。
出典)「野村不動産アーバンネット実勢調査による2020.4.1時点の首都圏「住宅地価格」の動向」
2020年1-3月期の住宅価格変動率は、首都圏エリア平均では▲0.0%で一年ぶりのマイナスとなりました。エリア別では東京都下(0.1%)、埼玉(0.0%)、千葉(0.0%)はプラスを維持していますが、東京都区部と神奈川は前回(2019年10-12月期)に引き続きマイナスとなっています。
年間ベースの変動率は、首都圏エリア平均で0.3%とプラスを維持しています。エリア別では東京都区部(0.3%)、東京都下(1.3%)、埼玉(0.0%)、千葉(0.5%)がプラスで、中でも東京都下の住宅地価格が上昇しているのがわかります。一方で、神奈川は▲0.6%と首都圏エリアでは唯一マイナスになりました。
2020年3月に入ってから、首都圏ではコロナウイルス感染拡大のペースが増加し、東京オリンピック延期についても言及されましたが(2020年4月に延期決定)、調査結果では住宅地価格に大きな影響は見られません。
次に、首都圏における、住宅地点別の住宅地価格の動向を確認していきましょう。調査対象の住宅地点の変動率について、「値上がり」「横ばい」「値下がり」の割合をまとめました。
値下がり地点は前回と同じですが、値上がり地点は減少し、横ばい地点は増加しています。東京都の住宅地で、2020年1-3月期の住宅価格変動率が高い地点をピックアップしました。
東京都区部エリアは以下のとおりです。
また、東京都下エリアは以下のとおりです。
これらの住宅地の中でも、武蔵野市西久保2丁目と三鷹市上連雀1丁目 の三鷹駅北口エリアは、年間ベースの変動率が大きく上昇しています。武蔵野市は「三鷹駅北口街づくりビジョン」を策定しており、補助幹線道路の整備などの再開発が進む予定であることが、住宅地価格の上昇要因だと考えられます。このように、一部の住宅地では高い変動率が見られるものの、全体的には横ばい地点が大半を占めています。
出典)
・ノムコム「野村不動産アーバンネット価格動向調査(実勢調査)について」
・武蔵野市「三鷹駅北口街づくりビジョン」
今回の調査結果で、2020年1-3月期の住宅地価格に大きな変動は見られないことが明らかになりました。しかし、コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動の影響、東京オリンピック延期などの要因があるため、住宅地価格の今後の動向は不透明です。コロナウイルス感染拡大が長引けば、経済活動の停滞は避けられず、住宅地価格が大きく下落する可能性もあります。住宅の購入や売却、不動産を活用した資金調達などを検討している場合は、住宅地価格の動向を注視しておきましょう。
執筆者紹介