賃貸用不動産を担保にローンは借りられるのか?

公開日:2021.11.24

自宅や賃貸用の不動産を購入する時、多くの人がローンを利用して購入するため、融資を受けられることは想像できるでしょう。しかし、所有する賃貸用不動産を担保にする場合、「果たしてローンを組めるのか」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか?

そこでこの記事では、賃貸用不動産を担保にローンを借りる際のポイントや、事例について紹介します。

抵当権設定の有無がポイント

結論として、条件が整えば所有する賃貸用不動産を担保にローンを借りることは可能です。実際に借りる際にはいくつかのハードルがあり、まずは担保にする賃貸用不動産の抵当権設定の有無がポイントとなります。

賃貸用不動産に抵当権設定がない場合

所有する賃貸用不動産に抵当権が設定されていない(つまり、所有する賃貸用不動産を担保にした借り入れがない)場合、基本的には問題なくローンを借りることが出来るでしょう。現金で賃貸用不動産を購入した場合や、繰り上げ返済などによりローンを完済した場合であれば、資金調達の際に賃貸用不動産を担保に利用することは有効な手段の一つです。

しかし、所有する賃貸用不動産が金融機関の取り扱いエリア外である場合や、築年数が古い物件の場合は担保に利用することが難しい場合もあります。その場合は複数の金融機関に打診するなど、取り扱いが出来る金融機関を探す必要があります。

賃貸用不動産に抵当権設定がある場合

所有する賃貸用不動産に抵当権が設定されている場合、下記に該当すると借り入れが難しくなります。

  • 金銭消費貸借契約で後順位の抵当権設定を認めていない
  • 先順位のローン*の残債が大きい

※先順位の抵当権を設定する際に締結した金銭消費貸借契約による借り入れを指します。(以下、当コラムでは「先順位のローン」と呼称します。)

先順位のローンによっては、後順位の抵当権設定を認めていないケースが多いです。もし仮にこのようなケースで、契約を無視して後順位の抵当権を設定すれば、期限の利益の喪失事由にあたり、先順位のローンの一括返済を求められることとなります。

また、先順位のローンの残債が大きい場合にも賃貸用不動産を担保にした借り入れは難しいでしょう。例えば、2,000万円の価値の不動産に対して、先順位のローンの残債が1,500万円の場合、担保余力は500万円しかありません。このようなケースでは、金融機関に回収が難しいと判断され、融資を断られることがほとんどです。

なお、担保の掛け目については、下記のコラムで詳しく解説していますのでご覧ください。

不動産投資ローンの2番抵当でローンは借りられるのか?

上述のとおり、先順位のローンの内容と、先順位のローンの残債が少ないなどの条件を満たさなければならないため、賃貸用不動産を担保にした借り入れは基本的には難しいです。ただし、上記の条件を満たせば、2番抵当でローンを借りることは可能です。

なお、後順位の抵当権設定を禁止している場合には、先順位のローンの残債も含めた借り換えも一つの手となります。残債が少なければ、借り入れのハードルは低くなるでしょう。ただし、購入時に組む不動産投資ローンよりも金利が高くなることがほとんどであるため注意が必要です。金利や融資条件の判断が付かない場合は、借入予定の金融機関に相談してみるといいでしょう。

賃貸用不動産を担保にローンを借りる代表的な事例

上述のとおり、賃貸用不動産を担保にローンを借りることは可能です。ここでは、所有する賃貸用不動産を担保にローンを借りる代表的な事例をご紹介します。

賃貸用不動産のリフォーム資金を借りる

賃貸用不動産を長年所有していると、設備の入れ替えや建物の修繕のためにリフォームが必要です。このような修繕の際には100万円単位で資金が必要となることも珍しくないため、手元資金だけで融通するのは大きな負担となってしまうかもしれません。

このようなときに、所有する賃貸用不動産を担保にリフォーム資金を借りることで、毎月の返済負担を抑えながらリフォーム資金の調達をすることができます。

賃貸用不動産の相続資金を借りる

自身の親が所有していた賃貸用不動産を相続によって取得するケースがあるかもしれません。不動産を相続する場合には、相続財産の額が大きくなり、場合によっては多額な相続税の支払いが発生することもあるでしょう。相続時に預貯金が多く残っていれば、その預貯金で支払うこともできますが、相続財産が不動産に偏っている場合などは難しいでしょう。

このようなときに、相続する賃貸用不動産を担保に相続資金を借りることで、自身の手元資金がなくとも相続税の支払いなどに活用することができます。

賃貸用不動産を担保に不動産の購入資金を借りる

新規に不動産を購入する際に、購入資金の借入申し込みをしても、融資金が購入資金の満額ではなく、頭金が必要となるケースがあるかもしれません。すでに所有する賃貸用不動産を共同担保にすることで、不動産の購入資金を満額借りることも可能です。

また、購入不動産が金融機関の取扱対象外である場合でも、所有する不動産が取扱対象であれば、それを担保に購入資金を借りることも可能です。

まとめ

この記事では賃貸用不動産を担保にした借り入れの可否や抵当権との関係を解説しました。賃貸用不動産を担保にした借り入れは可能ですが、先順位のローンの内容や、残債によって借り入れは難しいかもしれません。賃貸用不動産を担保にした借り入れを検討の際は、借入予定の金融機関に相談してみるといいでしょう。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。