更新日: / 公開日:2022.01.26
老齢年金の受給開始年齢が近づいてくると、受給開始年齢の繰り上げや繰り下げを検討する人も多いのではないでしょうか。受給開始年齢を変更することで、受け取れる年金の見込み額は大きく変わります。
この記事では、受給開始年齢の変更でもらえる年金額が、どのように変わるのか解説します。
老齢年金は老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類があります。老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合に、65歳から受け取れます。また、20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めた人は、65歳から満額の老齢基礎年金を受け取れます。
老齢厚生年金は、厚生年金の被保険者期間があって、老齢基礎年金を受け取るのに必要な受給資格期間を満たした人が65歳になったときに、老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金を受け取れます。
出典)日本年金機構 老齢年金
老齢基礎年金を65歳から受け取れる人は、月単位で65歳より前への繰り上げや66歳以後への繰り下げによる受給もできます。ただし、繰り上げた場合には受給額が減額され、繰り下げた場合には受給額が増額される点を考慮する必要があります。増減額される金額の詳細は、以下のとおりです。
<昭和37年4月1日以前生まれの場合>
<昭和37年4月2日以降生まれの場合>
出典)
・日本年金機構 65歳前に老齢年金の受給を繰上げたいとき
・日本年金機構 66歳以後に老齢年金の受給を繰下げたいとき
前述のとおり、老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年以上である場合、65歳になったときに受け取れます。また、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年に満たない場合でも、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が10年以上である場合には、老齢基礎年金を受け取れます。
なお、令和5年4月分からの年金額は満額の場合795,000円です。つまり、老齢基礎年金が満額もらえる場合に、想定される受け取れる年金の見込み額は下記の計算式によって求めることができます。
次項で具体的に計算していきましょう。なお、昭和37年4月2日以降生まれの場合を想定して計算します。
まずは、受給開始年齢を変更しなかった場合、もらえる年金額は795,000円です。しかし、受給期間が何年になるかはわからないため、ここでは男性と女性の平均寿命から計算していきます。
厚生労働省の発表する『令和4年簡易生命表』によると、平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳です。つまり、65歳から年金を受け取る場合、受給期間は男性が16.05年、女性が22.09年です。そして、前述の計算式によって、もらえる見込み額は下記のように求めることができます。
次に、受給開始年齢を60歳まで繰り上げた場合を考えます。60歳まで繰り上げた場合、繰り上げ年数は5年(60か月)のため、減額率は24%(0.004 × 60)です。つまり、老齢基礎年金額は604,200円(795,000円 × 76%)です。一方で、受給期間は5年長くなり、男性が21.05年、女性が27.09年となるので、もらえる見込み額は下記のように求めることができます。
最後に、受給開始年齢を70歳まで繰り下げた場合を考えます。70歳まで繰り下げた場合、繰り下げ年数は5年(60か月)のため、増額率は42%(0.007 × 60)です。つまり、老齢基礎年金額は1,128,900円(795,000円 × 142%)です。一方で、受給期間は5年短くなり、男性が11.05年、女性が17.09年となるので、もらえる見込み額は下記のように求めることができます。
出典)
・日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金
・厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況
これまで説明してきたように、受け取れる年金の見込み額はもらえる年金額と何歳までもらえるかという受給期間の二つの要素の掛け合わせによって決定します。仮に平均寿命まで生きると仮定した場合、上述の3つのシミュレーションを加味すると下記のような結果が得られます。
受給開始年齢別の受け取れる年金の見込み額(単位:円)
60歳からの受給 | 65歳からの受給 | 70歳からの受給 | |
---|---|---|---|
男性の場合 (81.05歳) | 12,718,410 | 12,759,750 | 12,474,345 |
女性の場合 (87.09歳) | 16,367,778 | 17,561,550 | 19,292,901 |
このように上記3つの受給開始年齢の選択の中では、男性の場合は受給開始年齢を変更しない時、女性は受給開始年齢を繰り下げた時に受け取れる年金の見込み額が最大であることがわかります。ただし、受給開始年齢は月ごとに変更できるため、何歳まで年金を受け取れるかによって、最大化される受給開始年齢が異なる点には注意が必要です。
下図は年金をいつから受け取るかによって、どのように受け取れる年金の見込み額が変化するかを表した図です。
※筆者作成
図のように何歳まで年金を受け取れるかによって、受け取れる年金の見込み額は大きく異なります。シミュレーションすることで、下記のようなことがわかります。
いかがでしたでしょうか。年金を受け取るにあたって、受給期間が何年か仮定する事で、受け取れる年金の総額を最大化することは可能です。一方で、年金を請求する時点では、自身が何年間受け取れるかは誰にもわかりません。自身の貯蓄の状況や何歳まで働くかなどを加味して慎重に判断するようにしましょう。
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