公的年金の仕組みとは?国民年金・厚生年金の基礎知識を解説

更新日: / 公開日:2022.10.05

公的年金は、国民が安心して日常生活を送るために不可欠な制度です。老後だけでなく、病気・ケガで障害が残ったときや加入者が死亡したときも給付を受けられます。老後生活に備えて公的年金の仕組みについて理解を深めておくことが大切です。

この記事では、公的年金の概要や受け取り方、注意点などの基礎知識を解説します。

公的年金の仕組み

公的年金とは、国が運営する年金制度です。日本では、20歳以上60歳未満のすべての人が公的年金に加入する「国民皆保険」を採用しています。

公的年金は、現役世代が支払った保険料を高齢者などの年金給付に充てる「世代間扶養」が基本です。保険料収入を基本財源とし、そこに国庫負担金(税金)を組み合わせる「社会保険方式」によって、安定的に年金を給付できる仕組みになっています。

公的年金は国民年金と厚生年金の2種類

公的年金は、「国民年金」と「厚生年金」の2種類があります。

国民年金

国民年金とは、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する公的年金です。自営業や無職の人などは国民年金の保険料を自分で納める必要があります。

厚生年金

厚生年金とは、会社員や公務員が加入する公的年金です。厚生年金加入者は同時に国民年金の加入者でもあります。厚生年金保険の被扶養者は、勤務先などの事業主が支払いを行うため、年金の加入者が保険料を直接納めることはありません。

公的年金の受け取り方は3種類

公的年金は老後だけでなく、障害や被保険者の死亡も給付対象です。具体的には、「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3種類があります。それぞれの内容は以下のとおりです。

老齢年金

老齢年金とは、公的年金の加入者が一定の年齢に達したときに一生涯受け取れる年金です。

国民年金は、受給資格期間が10年以上ある場合に65歳から老齢基礎年金が支給されます。年金額は保険料の納付状況によって計算され、40年間(20~60歳)の保険料をすべて納めると満額の老齢基礎年金を受け取れます。

厚生年金では、65歳から老齢基礎年金に上乗せして厚生老齢年金が支給されます。そのため、老齢基礎年金の受給資格があることが要件です。年金額は厚生年金加入時の報酬額や加入期間などに応じて計算されます。

老齢基礎年金と老齢厚生年金は、どちらも受給開始年齢の「繰り上げ」や「繰り下げ」が可能です。繰り上げは、受給開始を60~65歳に早めることで年金額が減額されます。繰り下げは、受給開始を66~75歳に遅らせることで年金額が増額されます。

障害年金

障害年金とは、病気やケガなどで生活や仕事が制限される場合に受け取れる年金です。国民年金からは「障害基礎年金」、厚生年金からは「障害厚生年金」が支給されます。年金額は、保険の種類や障害の程度、家族構成などによって変わります。

障害基礎年金は、以下のすべての要件を満たしているときに支給されます。

  • 障害の原因となった病気・ケガの初診日が以下のいずれかに該当する
    1. 国民年金加入期間
    2. 20歳前または60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間
  • 障害の状態が障害等級1級または2級に該当する
  • 被保険者期間のうち3分の2以上の納付済み期間があること

障害厚生年金は、以下のすべての要件を満たしているときに支給されます。

  • 障害の原因となった病気・ケガの初診日が厚生年金保険の被保険者である間
  • 障害の状態が障害等級1級から3級に該当する
  • 被保険者期間のうち3分の2以上の納付済み期間があり、直近1年以内に未納がないこと

出典)※詳細はこちら(日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」)をご確認ください。

遺族年金

遺族年金とは、公的年金の被保険者(または被保険者だった人)が亡くなったときに、その人に生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。年金額は、保険の種類や家族構成などによって変わります。遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。

遺族基礎年金では、「子のいる配偶者」と「子」に遺族基礎年金が支給されます。子は18歳到達年度の3月31日まで(または20歳未満で一定の障害状態にあること)が条件です。

遺族厚生年金の場合は、「①配偶者・子」「②父母」「③孫」「④祖父母」のうち、優先順位が最も高い遺族に遺族厚生年金が支給されます。もし亡くなった人に配偶者や子がいなければ、第2順位の父母が受け取ります。

公的年金の被保険者の分類

公的年金の被保険者は、働き方によって以下の3つに分類されます。

第1号被保険者

第1号被保険者は、自営業者や学生など国民年金のみに加入する人です。国民年金保険料は、納付書や口座振替を利用して自分で納めます。令和5年度(2023年度)の1ヵ月あたりの保険料は16,520円です。

第2号被保険者

第2号被保険者は、会社員や公務員などの厚生年金加入者です。厚生年金保険料は、事業主と加入者で半額ずつ負担します。保険料は給与や賞与から天引きされ、事業主が納めてくれるので、納付手続きは不要です。

第3号被保険者

第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者(年収130万円未満)です。保険料は、配偶者が加入する年金制度が負担するため、個別に納める必要はありません。

公的年金の注意点

公的年金について、以下の注意点を把握しておきましょう。

保険料を納めなければ受給できない

年金の受給資格を満たすには、保険料を納めなくてはなりません。厚生年金は給与や賞与から天引きされますが、国民年金は自分で納めるので納付漏れがないように注意が必要です。

保険料を納めるのが難しい場合は、最寄りの年金事務所で免除や納付猶予について相談し、自己判断での未納は絶対に避けましょう。保険料の納付状況については、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。

自営業者は老齢年金が少ない

国民年金のみの自営業者は、会社員(厚生年金加入者)に比べて老齢年金が少ない傾向にあります。老後の生活資金に不安がある場合は、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「国民年金基金」などの私的年金に加入して年金額を増やすことを検討しましょう。

まとめ

公的年金は老後だけでなく、病気やケガ、配偶者の死亡で仕事や生活が制限される場合にも給付を受けられます。ただし、保険料を納めていないと年金を受け取れないため、納付漏れのないように注意が必要です。

老後やもしものときに安心して生活できるように、公的年金への理解を深めておきましょう。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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