倒産や破産、特別清算の違いとは?根拠法や用語の意味を解説

公開日:2023.01.04

会社の経営が立ち行かなくなると、廃業を検討することもあるでしょう。「倒産」「破産」「特別清算」はいずれも廃業に関する用語ですが、廃業時に適切な方法を選択するためにも、用語の意味や違いを理解しておくことが大切です。

この記事では、「倒産」「破産」「特別清算」の意味やそれぞれの根拠法、違いについて解説します。

倒産とは

倒産は、中小企業倒産防止共済法第2条おいて、下記のいずれかに該当する場合と定義されています。

  1. 破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立てがされること。
  2. 手形交換所において、その手形交換所で手形交換を行っている金融機関が金融取引を停止する原因となる事実についての公表がこれらの金融機関に対してされること。
  3. 電子記録債権法第二条第二項 に規定する電子債権記録機関において、その電子債権記録機関で電子記録債権を取り扱う金融機関が金融取引を停止する原因となる事実についての公表がこれらの金融機関に対してされること。
  4. 前三号に掲げるもののほか、過大な債務を負っていることにより事業の継続が困難となっているため債務の減免又は期限の猶予を受けることを目的とするものと認められる手続であって、その開始日を特定することができるものとして経済産業省令で定めるものがされること。

出典)中小企業倒産防止共済法(第2条)

この条文から、倒産とは、法人や個人が破産手続・特別清算開始などの申立て、金融取引の停止、業績不振などによって経済的に破綻し、債務弁済や事業継続が困難な状態になることと言えます。

破産とは

破産とは、負債の整理方法の1つです。裁判所に破産手続開始の申立てをし、破産手続開始決定がされることで、債務者が支払不能の状態にあることを宣言します。なお、支払不能は破産法第2条において、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいうと定義されています。

出典)破産法(第2条)

破産手続開始決定の際は、原則として裁判所によって破産管財人(弁護士など)が選任されます。破産管財人は、債務者の全ての財産を現金化して債権者に分配します。破産管財人が選任されると、債務者は次のような制限を受けることがあります。

  • 居住制限を受ける(転居・長期の旅行は裁判所の許可が必要)
  • 郵便物が破産管財人に転送されることがある
  • 破産管財人に対して財産状況の説明義務を負う

個人の場合は、破産手続開始の申立てをすると、同時に免責許可の申立てをしたものとみなされます。ただし、破産手続開始決定だけで債務の支払義務が免除されるわけではありません。事案に応じて免責判断が行われます。虚偽の説明をした場合など、事由によっては免責が認められないこともあります。法人には免責制度はありませんが、破産によって解散すると法人格を失い、債務が消滅するのが一般的です。

出典)裁判所「自己破産の申立てを考えている方へ」

特別清算とは

特別清算とは、債務超過の状態で解散した株式会社を清算するための法的手続きです。会社法第510条では、特別清算を開始する事由について下記のように記載されています。

  1. 清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があること。
  2. 債務超過の疑いがあること。

出典)会社法(第510条)

特別清算は破産に比べると厳格な手続きを要求されず、簡易かつ迅速に会社を清算できるのが特徴です。特別清算開始の決定後、会社が選任した清算人が財産目録や協定案の作成、債権者集会の招集などを行います。

債権者集会において、「出席者の過半数」および「総債権額の3分の2以上」の同意を得られると協定案が可決されます。その後、裁判所の協定認可の決定により、特別清算手続きが実施されます。

協定案の内容は、債務者の間で平等であることが求められます。ただし、不利益を受ける債権者の同意がある場合などは、債権者の間で差を設けることも可能です。

倒産や破産、特別清算の違い

「倒産」「破産」「特別清算」は、それぞれ根拠法に違いがあります。

倒産は「中小企業倒産防止共済法」で定義されている用語です。破産は「破産法」、特別清算は「会社法」において、申立てや手続開始、効力などについて記載されています。

また、倒産の根拠法である「中小企業倒産防止共済法」の中で、破産手続開始や特別清算開始が倒産の状態に該当すると記載されています。このことから、倒産は法人・個人が債務弁済や事業継続が困難な状態にあることを意味する大きな概念であり、破産や特別清算は倒産の1つであることがわかります。なお、負債の整理方法として、破産や特別清算のほかに「任意整理」「特別調停」「個人再生」「民事再生」などの方法を選択することも可能です。

まとめ

「倒産」「破産」「特別清算」はいずれも廃業に関する用語ですが、根拠法が異なります。実際に廃業を選択する際には、弁護士などの専門家に依頼し、その意味を正しく理解したうえで手続きを進めるようにしましょう。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

関連キーワード