公開日:2023.03.01
建物の改装を検討するときには、リフォームとリノベーションのどちらが適しているのかを見極めることが大切です。この記事では、リフォームとリノベーションの基本的な違いについて解説します。
また、施工内容ごとにかかる費用の目安を詳しく見ていきましょう。
リフォームとリノベーションはどちらも住宅の改築や改修の際に用いられる用語ですが、それぞれに明確な定義はありません。ここでは一般的に用いられる用語の解説をします。
「リフォーム(reform)」は、住宅改修を指す際に用いられる和製英語です。一般的には、「原状回復のための修繕営繕不具合箇所への部分的な対処すること」とされています。経年劣化による設備の損傷を補修したり、古くなった水回り設備を交換したりして、新築に近い状態まで戻すのがリフォームの目的です。
一方、「リノベーション(renovation)」は、一般社団法人リノベーション協議会によると、「中古住宅に対して、機能・価値の再生のための改修、その家での暮らし全体に対処した、包括的な改修を行うこと」とされています。壁を取り払って広い部屋を確保したり、配管を変更してキッチンを移動したりと、住まいの価値を高めたり、自分好みの住環境を実現したりするのがリノベーションの目的です。
出典)一般社団法人リノベーション協議会「リノベーションとは」
工事が大規模である際に用いられるのは、リフォームではなくリノベーションである場合が多いです。
リフォームはあくまで新築に近い状態に戻す目的のため、クロスの貼り替えや設備の交換、外壁の塗り替えなど部分的な施工が中心となります。工事の範囲が一部だけであれば、居住しながら作業してもらえる場合もあります。
一方、リノベーションは住まいの価値を高めたり、自分好みの住環境を実現したりする目的のため、間取りの変更や配管の改修などを伴います。そのため、リフォームと比較すると大がかりな施工が中心と言えます。
リフォームにしろリノベーションにしろ、施工内容によって費用が大きく変わります。ここでは、国土交通省の『事業者団体を通じた適正な住宅リフォーム事業の推進に関する検討会における資料』を参考にしながら、主な施工内容について価格の目安を見ていきましょう。
出典)国土交通省『事業者団体を通じた適正な住宅リフォーム事業の推進に関する検討会第1回配布資料「部位別リフォーム費用一覧」』
設備や内装の施工については、それぞれ以下の金額が目安となります。
施工範囲 | 施工内容 | 目安費用 |
---|---|---|
バス・洗面所 | バスタブの交換 | 14~20万円 |
洗面台の交換 | 20~50万円 | |
システムバスの交換※戸建 | 60~150万円 | |
システムバスの交換※マンション | 50~100万円 | |
洗面所の改装 | 20~100万円 | |
トイレ | 温水洗浄便座の設置 | 8~16万円 |
トイレ全体の改装 | 20~100万円 | |
タンクレストイレへの交換 | 30~50万円 | |
キッチン | IHコンロへの交換 | 18~80万円 |
システムキッチン(I型)の交換 | 40~80万円 | |
システムキッチン(壁付→対面型)の交換 | 75~200万円 | |
キッチン全体のリフォーム | 80~400万円 | |
アイランドキッチンへの改修 | 300~450万円 |
水回りの改装については、新たに導入する設備の質によっても価格が大きく変動します。
施工範囲 | 施工内容 | 目安費用 |
---|---|---|
床 | 畳の交換 | 6~12万円 |
畳からフローリングに交換 | 15~60万円 | |
段差の解消 | 8~20万円 | |
床暖房の設置 | 50~150万円 | |
壁 | クロスの交換 | 6~30万円 |
珪藻土のクロスに交換 | 18~30万円 | |
間取り | 2室を1室にまとめる | 50~80万円 |
和室から洋室への改修 | 50~200万円 | |
リビングの改修 | 200~400万円 | |
廊下の改修 | 20~100万円 |
内装については、施工範囲に応じて価格の違いが生まれます。一室丸ごとの施工であれば、100万円を超える場合もあるため、予算に応じた慎重な計画を立てることが大切です。
続いて、外装・増築に関する施工費用の目安を見ていきましょう。(※戸建の目安)
施工範囲 | 施工内容 | 目安費用 |
---|---|---|
屋根 | スレート屋根の塗り替え | 20~80万円 |
金属屋根の重ね葺き | 90~250万円 | |
瓦屋根の交換 | 70~120万円 | |
外壁 | 外壁材の重ね塗り | 50~150万円 |
サイディングの上貼り | 80~200万円 | |
基礎 | 耐震補強(金物の使用) | 20~60万円 |
耐震補強(基礎からの工事) | 100~200万円 | |
増築 | 増築 | 300~2,000万円 |
減築 | 800~2,600万円 | |
二世帯住宅化 | 800~2,500万円 | その他 | 雨どいの交換 | 5~40万円 |
シロアリ防止処理 | 15~30万円 |
増築や二世帯住宅化は、大規模なものになると、建て替えや新築の建築費とも変わらないほど高額なコストがかかる場合もあります。費用にそれほど差がないようであれば、リフォームを依頼する会社に、建て替えとどちらが適しているか相談してみることが大切です。
最後に、外構やその他の部分に関する費用の目安もご紹介します。
施工内容 | 目安費用 |
---|---|
ウッドデッキの新設 | 10~80万円 |
太陽光発電システムの導入 | 200~300万円 |
オール電化への移行 | 100~200万円 |
高効率給湯システムの設置 | 55~100万円 |
太陽光発電や高効率給湯システムなど、エコに関するリフォームには一定の条件を満たすことで補助金を活用できる場合もあります。新たに設備を導入する際には大きな費用がかかるので、補助金やローンを活用しながら予算計画を立てましょう。
一般的には、リフォームは古くなった状態を改修し、新築に近い状態まで回復させる施工を指します。一方、リノベーションは単なる改修だけでなく、間取りの変更などによって新たな付加価値を求める施工とされています。
実際に改修を依頼する際には、希望の施工内容によって費用が変わるため、部位別に目安金額を把握しておくと安心です。予算の範囲内で快適な住環境を整えられるように、計画を立てましょう。
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