公開日:2023.03.22
住宅のリフォームを検討する際は、工事の依頼先を慎重に選ぶことが重要です。しかし、何らかのトラブルが生じたときに備えて、補償を受けられる保険に加入しておきたいと考えることもあるでしょう。
もしもの場合に備えた保険として、リフォーム瑕疵保険というものがあります。この記事では、リフォーム瑕疵保険の基本的な仕組みや加入方法、適用条件などを解説します。
リフォーム瑕疵保険とは、リフォーム時の検査と保証がセットになった保険制度です。国土交通大臣が指定した住宅専門の保証会社である、住宅瑕疵担保責任保険法人(以下保険法人という)が保険を引き受けます。2023年3月時点で指定されている保険法人は以下のとおりです。
リフォーム工事業者(以下事業者という)側が上記5法人のいずれかと保険契約を締結することで、リフォーム瑕疵保険に加入できます。リフォーム瑕疵保険へ加入する義務はないため、基本的にはリフォーム発注者(以下発注者という)側が事業者側に依頼をして加入してもらう流れになります。
リフォーム瑕疵保険では、リフォームの内容によって保証期間が1年・5年・10年(増築特約)のいずれかになります。各期間のリフォーム内容は以下のとおりです。
壁のひび割れや建具の不具合などが該当します。建物の構造上は問題がないものでも、社会通念上において必要とみられる部分について保険金が支払われます。
柱・壁などの構造上必要な部分や屋根・外壁など防水機能を保つ必要がある部分などが該当します。十分な耐力性能、防水性能を満たしていないときに保険金が支払われます。
増築工事を行う場合は、基礎部分を追加する場合の工事のみが10年の保証対象となります。適用条件については保証期間5年の場合と同様ですが、増築工事部分の内装工事などは含まれないので注意が必要です。
工事に欠陥が見つかった場合に施主に対して支払われる保険金額については、あらかじめルールが定められています。一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会によれば、支払いの対象となるのは事故を補修するための費用、もしくは方法などを決めるための調査費、転居または仮住まいを余儀なくされたときに発生する費用となっています。
また、保険金の計算式については次のとおりです。
上記計算式のとおり、かかった費用の100%分の保険金が事業者に支払われるわけではなく、足りない部分は事業者が負担することになります。ただし、リフォーム工事を行った事業者が倒産した場合には、居住者に対して100%の金額が支払われます。万が一修理が必要になっても、発注者側に負担が発生しないような仕組みになっているのが特徴です。
リフォーム瑕疵保険に加入するメリットは以下のとおりです。
リフォーム瑕疵保険では、発注者と事業者のどちらとも利害関係のない第三者検査員(建築士)によって、現地検査が行われます。また、検査基準が設計施工基準によって明確に定められています。専門的知識を持った第三者が明確な基準に則って検査を行っているため、質の高い施工を確保できます。
リフォーム瑕疵保険では、発注者と事業者が締結した工事請負契約に基づくリフォームであれば、基本的にすべてのリフォームが保証の対象となります。ただし、外構や庭工事など、住宅の建物自体に付帯しないリフォームは対象外となります。
事業者がリフォーム瑕疵保険に加入するには、先に紹介した保険法人が設ける一定の基準を満たし、事業者登録を受ける必要があります。さらに、一度加入した事業者であっても、保険事故(欠陥リフォーム)を多数起こしてしまった技術的な問題のある事業者は登録を抹消されます。したがって、リフォーム瑕疵保険に加入しているかどうかは、優良なリフォーム会社を見分ける判断基準の1つとなるでしょう。
なお、リフォーム瑕疵保険の加入事業者は一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会
のWebサイトで検索することができます。リフォーム事業者を選ぶ際には、リフォーム瑕疵保険に加入しているかどうかを確認してみましょう。
出典)一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会「かし保険を利用する登録事業者等の検索」
リフォーム後に瑕疵が見つかったとしても、事業者が保険法人に対して補償を求め、その保険金で修理を受けることができます。また、万が一事業者が倒産していた場合でも、発注者が直接保険法人に対して補償を求め、その保険金で別の事業者に修理を依頼できます。したがって、リフォーム瑕疵保険があれば、リフォームに瑕疵があっても安心です。
リフォーム瑕疵保険への加入は多くのメリットがある一方で、少なからずデメリットも存在します。リフォーム瑕疵保険に加入するデメリットは以下のとおりです。
リフォームが完了してから行われる現場での検査は、原則として1回となっています。ただし、リフォームの内容によっては工事の途中にも行われる場合があり、それによって工期が延びてしまう恐れがあるので注意が必要です。
入居日が後ろ倒しになる可能性もあるため、事前によく打ち合わせを行ったうえで、スケジュールに問題がないかを確認しておきましょう。
一方で、事業者以外の第三者機関が複数回検査に訪れてくれることは、発注者にとっては安心につながるので、デメリットだけであるとも限らないでしょう。
出典)住宅保証機構「まもりすまいリフォーム保険・まもりすまい大規模修繕かし保険手続き・設計施工基準・現場検査」
リフォーム瑕疵保険に入ることを検討するときは、加入方法や適用条件についても押さえておきましょう。対象となる住宅や工事内容などを解説します。
リフォーム瑕疵保険の対象となる住宅の条件として、以下のものが挙げられます。
あくまで住宅に関する部分に保険が適用されるため、外構部分や建物の解体などについては、保証対象外となります。
リフォーム瑕疵保険は、事業者が加入する保険です。事業者にリフォーム瑕疵保険の加入義務はないため、リフォーム瑕疵保険に加入したい場合はその旨を事業者側に伝える必要があります。
その後、既に事業者が保険法人に登録を受けている場合であれば、そのまま保険の申し込みに進めます。一方で、事業者がまだ登録を受けていない場合は、事業者登録に時間を要する恐れがあるので注意が必要です。
なお、保険の申し込みは事業者側が行いますが、発注者側も事業者から保険に関する説明を受ける、必要書類に記名押印をする、などの手続きを行う必要があります。
リフォーム瑕疵保険は検査と保険がセットになった仕組みであり、リフォーム工事で欠陥が見つかった際に必要な補償を受けられます。また、リフォーム工事が完了した後に、専門家による検査を受けられるので品質の高い工事が期待できるでしょう。
加入は事業者を通じて行う必要があるため、見積もりの際に伝えておく必要があります。もしものときに備えて、必要な準備を検討しておくことが大切です。
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