低炭素住宅とは?認定基準、メリット・デメリットを解説

公開日:2023.06.28

環境問題への意識の高まりから、マイホームの建築・購入の際に「低炭素住宅」を選ぶ人が増えています。環境にやさしい住宅であり、税制優遇を受けることもできますが、認定を受ける際の注意点もあります。低炭素住宅の取得を検討する場合には、事前に特徴を理解しておくことが大切です。

この記事では、低炭素住宅の認定基準やメリット・デメリット、認定手続きの流れを解説します。

低炭素住宅とは

低炭素住宅とは、二酸化炭素(CO2)の排出量を抑制する仕組みのある住宅です。一般的な住宅に比べて、地球温暖化の原因となるCO2の排出を抑えられるため、環境にやさしい住宅といえます。

社会経済活動に伴い発生するCO2の多くは、都市部で発生しているのが現状です。この状況を改善するため、2012年12月に「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」が施行されました。

本法律に基づき「低炭素建築物認定制度」が創設され、都道府県などの所管行政庁が低炭素住宅の認定を行っています。

低炭素住宅の認定状況

低炭素住宅の認定状況は以下のとおりです。

2019年度2020年度2021年度
戸建て住宅5,189件5,932件16,464件
共同住宅等2,036件2,168件4,127件
複合建築物※46件45件72件

※1階が事務所、2階以上がマンション(住宅)のように、1つの建物を複数の用途で使用している建築物のこと

2021年度の認定実績は、戸建て住宅が前年比約2.8倍の16,464件、共同住宅等は前年比約1.9倍の4,127件、複合建築物は前年比1.6倍の72件となっています。

2021年度に認定実績が急増したのは、2020年10月に政府がカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)を目指すことを宣言し、低炭素住宅の普及を推進していることや、2021年度辺りから燃料不足等による電力不足が話題になったことなどが理由だと考えられます。

低炭素住宅の認定基準

低炭素住宅の認定基準は以下のとおりです。

  1. 省エネ法の省エネ基準に比べ、一次エネルギー消費量が-(マイナス)20%以上になること
  2. 再生可能エネルギー利用設備が設けられていること

  3. 省エネ効果による削減量と再生可能エネルギー利用設備で得られるエネルギー量の合計値が、基準一次エネルギー消費量の50%以上であること(戸建住宅のみ)

  4. その他の低炭素化に資する措置(選択項目)が講じられていること

上記4の選択項目については、次のいずれかの措置を講じる必要があります。

  • 貯水対策(節水型機器の採用など)
  • エネルギーマネジメント(HEMSの導入など)
  • ヒートアイランド対策(敷地や屋上の緑化など)
  • 建築物(躯体)の低炭素化(住宅の劣化軽減措置など)
  • V2H充放電設備の設置

HEMS(ヘムス)とは、「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」の略です。エネルギー使用量を見える化し、無駄なく使うためのシステムを意味します。

V2H充放電設備とは、住宅から電気自動車等への充電、および電気自動車等から住宅への給電ができる装置のことです。

低炭素住宅のメリット

低炭素住宅には次のようなメリットがあります。

住宅ローン控除が利用できる

住宅ローン控除は、「住宅ローンの年末残高×0.7%」を所得税等から控除する制度です。住宅の省エネ性能によって、住宅ローン控除が適用される借入限度額が異なります。2023年6月時点での、低炭素住宅の借入限度額は5,000万円で、一般住宅(3,000万円)よりも2,000万円上乗せされます。

なお、2024年以降、一般住宅は住宅ローン控除の対象外となりますが、低炭素住宅は引き続き控除を受けることが可能です(借入限度額は4,500万円に変更)。

登録免許税の優遇措置がある

低炭素住宅は、所有権登記にかかる登録免許税も軽減されます。そもそも住宅にかかる登録免許税は、個人の住宅の用に供される床面積50㎡以上の家屋に対して、軽減税率が適用されています。低炭素住宅であれば、それよりもさらに低い税率が適用されます。なお、この制度は2024年3月31日までなので、注意が必要です。

登記の種類本則税率軽減税率
(一般住宅)
軽減税率
(低炭素住宅)
所有権保存登記0.4%0.15%0.1%
所有権移転登記2.0%0.3%0.1%

容積率が緩和される

容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合です。低炭素住宅では、低炭素化に必要な設備にかかる床面積の容積率が緩和されます(延べ床面積の20分の1が限度)。敷地面積が同じ場合、一般住宅よりも広い家を建てることが可能です。

補助金の対象となる可能性がある

低炭素住宅は、国土交通省の「地域型住宅グリーン化事業」の補助金がもらえる可能性があります。

地域型住宅グリーン化事業とは、地域材を用いた省エネ性能等に優れた木造住宅への支援制度です。低炭素住宅であることに加えて、主要構造部が木造である、などの追加要件を満たすことが条件となります。令和5年度(2023年度)の補助限度額は140万円/戸となっています。

補助金の対象となるかは、事前にハウスメーカーや工務店に確認するといいでしょう。

出典)令和5年度地域型住宅グリーン化事業 グループ募集の開始について

フラット35の金利が下がる

住宅金融支援機構のフラット35では、省エネ性能を備えた住宅を取得する際に金利優遇を受けられます。

低炭素住宅は「フラット35S」の金利Aプランに該当し、当初10年間は通常より0.25%低い金利が適用されるため、住宅ローンの返済負担の軽減が期待できます。

低炭素住宅のデメリットと注意点

低炭素住宅には次のようなデメリットがあります。

建築コストが高くなる

低炭素住宅は、認定基準を満たすための省エネ設備を導入する必要があるため、その分の費用が一般住宅よりもかかってしまいます。税制優遇や住宅ローン金利の引き下げ、補助金により、どの程度コストを吸収できるかを試算しておくことが大切です。

対応エリアが限られる

低炭素住宅は、原則として市街化区域内に建築される住宅が対象です。建築予定の土地が市街化区域内であるかを、自治体が公表している都市計画図などから確認しておきましょう。

低炭素住宅の認定手続きの流れ

低炭素住宅の認定手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 審査機関に事前の技術的審査を依頼する
  2. 審査期間から適合証が発行される
  3. 所管行政庁に認定申請書を提出する(適合証を添付)
  4. 所管行政庁より認定証が交付される

ただし、着工後の建築物は認定を受けられません。低炭素住宅を検討する場合は、ハウスメーカーや工務店に申請のサポートを受けられるかを確認しておきましょう。

まとめ

低炭素住宅は断熱性に優れており、1年中快適な環境で生活できるのが特徴です。税制優遇や住宅ローン金利の引き下げ、光熱費の削減など金銭面のメリットも期待できます。ただし、設備導入に費用がかかる点は注意が必要です。メリットとデメリットを比較したうえで、低炭素住宅の取得を検討してみましょう。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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