支払督促とは?かかる費用と手続きの流れをわかりやすく解説

更新日: / 公開日:2023.09.27

支払督促は、お金の未払いに関するトラブルを解決できる法的手続きのひとつです。お金を返してもらえなくて困っている場合、支払督促を利用すれば、裁判をしなくても迅速に問題を解決できる可能性があります。

この記事では、支払督促の概要や費用、手続きの流れをわかりやすく解説します。

支払督促とは

支払督促とは、債権者からの申立てに基づいて、簡易裁判所の書記官が債務者に金銭の支払いを命じる制度です。書類審査のみで手続きが行われるため、以下の金銭に関する未払い、未返還などのトラブルを、迅速に解決できる可能性があります。

<支払督促の対象となるもの>

  • 貸金、立替金
  • 売買代金
  • 給料、報酬
  • 請負代金、修理代金
  • 家賃、地代
  • 敷金、保証金

債務者からの異議申立てがなければ、確定判決と同様の効力が生じます。

出典)政府広報オンライン「「お金を払ってもらえない」とお困りの方へ 簡易裁判所の「支払督促」手続をご存じですか?」

支払督促の特徴

支払督促には以下のような特徴があります。

  • 書類審査のみで手続きが行われる
  • 債権者の申立てのみに基づき、簡易裁判所の書記官が金銭の支払いを命じる
  • 支払督促をしても相手方が金銭を支払わない場合、強制執行の申立てが可能
  • 裁判所に納める手数料は通常の訴訟の半額

通常の訴訟とは異なり、債権者(申立人)が裁判所に出向いたり、証拠を提出したりする必要はありません。簡易裁判所の書記官が債務者(相手方)の言い分を聞くことなく、申立内容のみに基づいて支払督促を発付します。

支払督促が発付されても相手方が金銭を支払わず、異議申立てもしない場合は、裁判所に「仮執行宣言の申立て」を行うことで、強制執行の申立てが可能です。強制執行とは、債務者の財産を差し押さえるなどして、裁判所が強制的に申立人の債権を回収する手続きです。

出典)政府広報オンライン「「お金を払ってもらえない」とお困りの方へ 簡易裁判所の「支払督促」手続をご存じですか?」

支払督促ができない場合

以下の場合は、支払督促ができないので注意が必要です。

  • 金銭の支払いを目的としない(建物の明渡しなど)
  • 債務者の住所がわからない
  • 債務者が日本以外に居住している

書類を郵送して手続きを行うため、相手方の住所が判明している必要があります。

出典)裁判所「支払督促の申立について」

支払督促手続きの流れ

支払督促の申立ては、以下の流れで進めます。

  1. 支払督促申立書の提出
  2. 裁判所の審査
  3. 支払督促の発付

各手続きの内容を確認していきましょう。

1.支払督促申立書の提出

申立書に必要事項を記入して、債務者の住所を管轄する簡易裁判所に提出します。提出時には、手数料と相手方に書類を送付するための郵便切手などが必要です。申立書は裁判所のホームページからダウンロードできます。手数料については、後ほど詳しく説明します。

2.簡易裁判所の審査

簡易裁判所の書記官が、申立書の内容に不備や法律違反などがないかを確認します。債務者側の意見は聞かず、申立ての内容だけで判断されるのが特徴です。問題があれば補正を求められたり、却下されたりすることもあります。

3.支払督促の発付

審査に通過すると、裁判所の書記官は支払督促を発付し、申立者には発付通知が届きます。債務者は、納得できなければ支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申立てが可能です。異議のあるなしで、その後の流れは変わります。

債務者から異議申立てがあった場合

債務者からの異議申立てを裁判所が受理すると、支払督促は効力を失い、通常の訴訟手続きに移行します。債権者の主張は、訴訟において審理が続けられます。

債務者から異議申立てがなかった場合

債務者から異議申立てがない場合は、仮執行宣言の申立てが可能です。なお、仮執行宣言の申立てを相手方が支払督促を受領して2週間を経過した日から30日以内に行わない場合、支払督促が失効します。

申立ての内容に問題がなければ、裁判所の書記官は「仮執行宣言付支払督促」を相手方に送達します。仮執行宣言付支払督促を送達後、相手方が異議申立てをしたときは訴訟手続きに移行し、相手方からの支払いがない場合は強制執行となります。

出典)
政府広報オンライン「「お金を払ってもらえない」とお困りの方へ 簡易裁判所の「支払督促」手続をご存じですか?」
法務省「督促手続について」

支払督促にかかる費用

支払督促には、以下のような費用がかかります。

  • 申立手数料:収入印紙代(下記参照)
  • 支払督促正本送達費用(郵便切手代):債務者の数×1,204円分*1
  • 申立書作成及び提出費用:800円*2
  • 支払督促発付通知費用(郵便切手代):84円
  • 資格証明書手数料(法人の場合):600円
  • 送達結果通知費用(官製はがき代):債務者の数×63円

※1 申立書が7枚以下なら1,204円、申立書が8枚以上なら1,250円、16枚以上ならさらに切手代が増えることがあります。

※2 この800円は、債権者が裁判所に支払うものではなく、支払督促を申立てる人(債権者)が債務者に請求できる法令で定められた費用です。

出典)裁判所「支払督促の申立てについて」

申立手数料は、請求金額に応じて以下のように定められています。

請求金額申立手数料
100万円以下10万円ごとに500円
100万円超 500万円以下20万円ごとに500円
500万円超 1,000万円以下50万円ごとに1,000円
1,000万円超 10億円以下100万円ごとに1,500円
10億円超 50億円以下500万円ごとに5,000円
50億円超1,000万円ごとに5,000円

<例:請求金額が300万円の場合>

①100万円以下の部分:500円×(100万円÷10万円)=5,000円

②100万円超500万円以下の部分:500円×(200万円÷20万円)=5,000円

⇒申立手数料:1万円(①+②)

申立ての際は、相手方への送達や申立人への通知のため、郵便切手や郵便はがきも必要です。当事者の一方または双方が法人の場合は、代表者の資格を証明する書類として、各法人につき登記簿謄本を1通提出します。

出典)裁判所「手数料(別表)」

支払督促を受けた場合は?

万が一、支払督促を受けた場合は、内容を確認のうえ速やかに対応しましょう。異議がある場合は、同封の用紙を使用して、受領から2週間以内に異議申立てを行います。最近では、支払督促を悪用した架空請求の事例も報告されているため注意が必要です。

異議がない場合は、強制執行になる前に支払いを完了させましょう。なお、自分で対応することが難しいと判断した場合、弁護士に相談するといいでしょう。

まとめ

支払督促を利用すれば、簡易的な手続きでお金の未払いに関するトラブルを解決できるかもしれません。ただし、相手方が異議申立てを行うと訴訟に移行することになります。お金を払ってもらえなくて困っている場合は、支払督促の申立てを検討してみましょう。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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