更新日: / 公開日:2023.10.11
フラット35は、自宅を購入する際に利用できる住宅ローンの一種です。住宅ローンを検討する中で、全期間固定金利を利用して自宅を購入する場合は、フラット35が選択肢となるかもしれません。
この記事では、フラット35の概要や利用条件、メリット・デメリットを解説します。
フラット35とは、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローンです。全国300以上の提携金融機関が扱っており、最長35年間の固定金利で融資を受けられます。一般的な住宅ローンと同様に、自宅の購入資金や借換資金に活用できます。
借入時に毎月の返済額や総返済額が確定するため、資金計画を立てやすいのが特長です。 住宅金融支援機構が提供しており、融資を希望する場合は、民間の提携金融機関に借り入れの申込みを行います。
住宅金融支援機構の「2023年度フラット35利用者調査」によると、年齢別の利用割合では30歳代が30.4%で最も多く、次いで40歳代の27.6%が続き、30・40歳代の合計で全体の6割超を占めています。
2022年と比較すると、30歳代の利用割合は3.8%減少している一方、50歳代および60歳代の利用割合は増加しています。特に60歳以上の利用割合は13.9%と大幅に増加しました。
世帯年収別の利用割合については、「世帯年収400万円以上600万円未満」の層が37.5%で最も多く、「世帯年収800万円未満」の層が全体の約8割を占めています。
出典)住宅金融支援機構「2023年度 フラット35利用者調査」P.4
フラット35には「買取型」と「保証型」の2種類があります。フラット35の買取型は、以下のような仕組みを活用して融資が実行されます。
買取型は、2024年10月28日時点で306機関もの金融機関に取り扱われており、一般的に用いられる「フラット35」は買取型を指していることが多いです。一方で、フラット35の保証型は、以下のような仕組みを活用して融資が実行されます。
保証型は、2023年12月21日時点でわずか8機関の金融機関にしか取り扱われておらず、買取型の方が主流であることが分かります。
フラット35の申込条件は以下の3つです。
なお、総返済負担率はフラット35だけでなく、自動車ローンやカードローンなどのすべての債務を含めて計算する点に注意が必要です。
民間の住宅ローンよりも「審査が緩い」とも言われることもあるフラット35ですが、前述のような「申込人に関する基準」と「住宅に関する基準」が明確に定められています。
フラット35には以下のようなメリットがあります。
フラット35は全期間固定金利であり、借入期間中に金利が変わることはありません。変動金利型の住宅ローンの場合、金融情勢の変化に伴い、返済途中でも定期的に金利が見直されるため、毎月の返済額や総返済額が変わることがあります。そのため、フラット35は、変動金利型の住宅ローンに比べて、資金計画を立てやすいと言えます。
フラット35は保証料や繰上手数料がかかりません。一般的な住宅ローンでは、保証料がかかることがあるほか、繰上返済手数料がかかる場合があります。そのため、一般的な住宅ローンに比べて、手数料の負担が少なく済む可能性があります。
フラット35は、団体信用生命保険(以下、団信)に加入するかどうかを選択することができます。対して、一般的な住宅ローンは基本的に団信の加入義務があります。例えば、健康状態が原因で団信への加入が難しい場合に、一般的な住宅ローンは利用できなくなりますが、フラット35であれば利用することができます。
また、団信に加入できる人でも、団信の代わりに収入保障保険等の民間の生命保険に加入することで、団信なしでフラット35を利用するという選択肢を検討できます。加入する保険によっては、団信加入よりも費用を抑えられるほか、保障額や引受範囲を広げるなど、自身の希望に合わせた設計にすることもできます。
フラット35はオーバーローンにもできます。平成30年4月1日の制度改正以降、従前のフラット35では借りられなかった融資手数料や仲介手数料等の費用が、新たに住宅の売買代金に上乗せして借りられるようになりました。ただし、上乗せできるのはあくまで住宅の購入に必要な費用に限られる点や、手付金には利用できない点に注意が必要です。
なお、オーバーローンはさまざまな定義で用いられる用語ですが、この記事では「購入する住宅の価格に購入時にかかる諸費用を上乗せして住宅ローンを組むこと」と定義して使用しています。
フラット35には「ポイント制」という金利引下げメニューがあり、家族構成や住宅の性能のほか、エリアなどの要件によって金利の優遇を受けることが可能です。
フラット35Sとは、フラット35の申込者が長期優良住宅など、省エネルギー性や耐震性などを備えた質の高い住宅を取得する場合に、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度です。
住宅の基準は通常のフラット35より厳しく設定されますが、基準を満たせば金利が下がるため、返済負担の軽減が期待できます。フラット35Sは、住宅の技術基準の高い順から、「フラット35S(ZEH)」、「フラット35S(金利Aプラン)」、「フラット35S(金利Bプラン)」の3種類があります。
フラット35子育てプラスとは、子育て世帯が良質な住宅を取得する際の金利負担を軽減することを目的として、少子化対策の推進施策の一環として成立した制度です。フラット35子育てプラスは、子どもの人数等に応じて最大年▲1.0%の金利引き下げが一定期間適用されます。
実際にこちら(【フラット35】引下げ内容確認)からシミュレーションすることで、金利優遇がどれくらい適用されるか確認することが可能です。
金利引継特約とは、フラット35の返済中に長期優良住宅を売却する場合に、債務を引き継ぐことができる特約です。買主は売主が利用していた借入金利のまま、フラット35の債務を引き継ぐことができます。
売却金額がローン残高より高い場合は買主から売主に売却金額からローン残高を差し引いた額が支払われます。売却金額がローン残高を下回る場合は、売主が買主にローン残高から売却金額を差し引いた額を支払うことになります。
当初の借入時よりも金利が上昇している場合は、新規に住宅ローンを借りるよりも低い金利で債務を引き継ぐことが可能であり、これは売却時のアピールポイントになるかもしれません。
なお、債務承継した分の住宅ローン控除は受けられませんが、金利引継特約付きフラット35を利用し、購入額の不足分を新たにフラット35で借入れ、住宅ローン控除の要件を満たすときは、この借入れについては住宅ローン控除の対象となります。
また、団体信用生命保険の加入は、売主が加入していた団体信用保険と同じ保障内容のものであれば、加入申し込みが可能です。なお、平成29年9月30日以前の申込受付分及びフラット35(保証型)の場合は取扱いが異なるため、取扱金融機関に確認しましょう。
フラット35を取り扱う金融機関の中には、金利引継特約付きの取り扱いがない場合もあるため、将来住み替えを考えている場合は注意しましょう。
フラット35には、以下のようなデメリットや注意点もあります。
フラット35は、一般的な変動金利型の住宅ローンに比べて、借入時の金利が高く設定されています。そのため、目先の支払いだけを考えるのであれば、毎月の返済負担が重くなります。
また、フラット35は融資率(住宅の建設費または購入価額に占めるフラット35の借入金額の割合)が9割を超えると適用金利が高く設定されます。フラット35の金利を少しでも下げたい場合は、融資率が9割以下になるように頭金を準備することが必要です。
フラット35の審査では、住宅金融支援機構が定める住宅の技術基準が含まれます。検査機関による物件検査を受け、適合証明書を取得しなくてはなりません。そのため、一般的な住宅ローンでは必要のない手続きや費用が発生します。
フラット35は全期間固定金利で借りられるため、変動金利型の住宅ローンに不安がある人におすすめです。また、申込基準を満たしていれば審査に通りやすいので、高齢の人や個人事業主、転職して間もない人など、融資を受けづらい属性の人にも向いています。
ただし、借入時の金利は比較的高く設定されています。そのため、変動金利で毎月の支払額を抑えたい人、民間金融機関の住宅ローンで金利優遇を受けられる人には向かないでしょう。自身の状況や希望を考慮し、フラット35が自分に合っているかどうかを判断することが大切です。
フラット35は35年間固定金利のため、借入時点で毎月の返済額や総返済額が確定できるのが特長です。また、申込基準を満たしていれば、一般的な住宅ローンの審査に落ちてしまった人でも住宅ローンを組める可能性があります。
住宅ローンにおいて、毎月の返済額が変わらないことを重視する場合は、フラット35を検討してみてはいかがでしょうか。
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