公開日:2023.11.08
「強引に勧誘された」「高額の違約金を請求された」など、高齢者の自宅売却に関するトラブルが増加しています。
相手に言われるがまま売買契約をしてしまうと、高齢者の場合は「住む場所が見つからない」「違約金の支払いで老後資金が足りない」などの問題が生じる恐れがあります。老後も持ち家で安心して生活するには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。
この記事では、高齢者の自宅売却のトラブル事例や回避するための対策を紹介します。
国民生活センターの資料によると、契約当事者が60歳以上の自宅売却に関する相談件数は、以下のとおり推移しています。
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 |
---|---|---|---|---|
571件 | 564件 | 657件 | 616件 | 610件 |
2018年以降は600件を超えているものの、全体的には横ばいで推移しています。
一方で、70歳以上の高齢者の自宅トラブルは増加傾向にあります。以下は、契約当事者の年代別相談割合です。
60歳未満 | 60~69歳 | 70~79歳 | 80歳以上 | |
---|---|---|---|---|
2016年 | 35.6% | 28.2% | 20.6% | 15.6% |
2017年 | 35.0% | 25.5% | 21.9% | 17.6% |
2018年 | 34.8% | 19.9% | 26.1% | 19.3% |
2019年 | 34.5% | 19.6% | 25.5% | 20.4% |
2020年 | 30.1% | 17.6% | 30.4% | 21.9% |
60歳未満および60歳代は年々減少していますが、70歳以上は増加が続いています。2020年は70歳以上の相談割合が52.3%で、全体の半分以上を占めている状況です。
クーリング・オフとは、一度契約の申し込みや締結を行っても、一定期間内であれば無条件で申し込みの撤回や契約解除ができる制度です。しかし、自宅を不動産業者に売却する場合には、このクーリング・オフ制度を利用できません。
クーリング・オフはできないものの、契約破棄することも可能です。ただし、ほとんどの場合で契約解除には、売買金額の2割程度の違約金が発生するため、経済的に大きな負担となります。
高齢者の自宅売却について、具体的にどんなトラブルが発生しているのでしょうか。ここでは、国民生活センターに寄せられた相談事例を3つ紹介します。
長期間の勧誘を受け、強引に契約させられた80代女性の事例です。
強引に契約させられ、「解約には違約金がかかる」と言われた80代女性の事例です。
嘘の説明を信じて、自宅の売却と賃貸借の契約をしてしまった70代女性の知人の事例です。
自宅売却に関するトラブルを避けるために、以下の3つを心掛けましょう。
不動産業者から話を聞いても、契約内容がわからない場合や納得できない場合は絶対に契約しないことが大切です。不動産売買はさまざまな手続きが必要で、仕組みも複雑です。自宅売却はクーリング・オフができないため、よくわからないまま契約してしまうと後悔するかもしれません。
1人で対応すると相手のペースで話を進められ、適切な判断ができない可能性があります。契約前に家族や友人などに相談し、不動産業者との面談ではできるだけ立ち会ってもらいましょう。相談できる身近な人がいない場合には、弁護士などの専門家に相談するのもひとつの手です。
「夫(妻)と相談します」「考えてみます」のような断り方をすると、可能性があると判断され、今後も勧誘が続いてしまいます。不動産業者から電話や訪問で勧誘されても、自宅を売却するつもりがないなら「自宅は売りません」とはっきり断ることが大切です。
今後も勧誘してほしくない場合は、「もう勧誘はやめてください」と明確に意思を伝えましょう。消費者が断ったにも関わらず、不動産業者が勧誘を続けることは宅地建物取引業法で禁止されています。
不要な勧誘を避けるには、「知らない電話番号からの電話には出ない」「訪問されても玄関ドアを開けない(インターフォンで対応)」などの対策も有効です。
「不動産業者の説明がよくわからない」「よく考えずに契約してしまった(解約したい)」など、トラブルになりそうな場合は、なるべく早く消費者生活センターなどに相談しましょう。
消費者ホットライン「188」に電話し、アナウンスに従って自宅の郵便番号を入力すると、最寄りの消費者生活センターや市区町村の消費生活相談窓口につながります。また、長期間の居座りは不退去罪に当たる可能性があるため、状況によっては警察を呼ぶことも検討しましょう。
高齢者が自宅売却のトラブルに巻き込まれると、住む場所が見つからなかったり、高額の違約金を請求されたりする恐れがあります。不動産業者から電話や訪問で勧誘されても、自宅を売るつもりがないなら「売りません」とはっきり断ることが大切です。
不安な場合やトラブルに巻き込まれそうなときは、消費者ホットライン「188」に電話して相談しましょう。
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