持ち家派が減少?アンケート結果から住まいの実態を探る

公開日:2023.12.13

住まい選びは、暮らしに大きな影響を与えます。また、自宅は一度購入すると、そう簡単には売却や住み替えができなくなります。今後の住まいを検討する際に、他の人の考え方や動向が参考になるかもしれません。

この記事では、全国宅地建物取引業協会連合会の「2023年 住宅居住白書(全国の20歳以上の男女が調査対象)」から、住まいに関する実態と読み取れることを紹介します。

出典)全国宅地建物取引業協会連合会「2023年 住宅居住白書」

不動産は買い時か否か

「いま、不動産は買い時だと思いますか」に対する回答結果は下表のとおりです。

回答2022年2023年
買い時だと思う6.4%15.8%
買い時だと思わない26.4%37.0%
わからない67.2%47.2%

わからないと答えた人が20%減少し、買い時だと思う人、思わない人ともに、前年比で10%程度上昇しています。この結果から、「わからない」を除いた時に、買い時だと思う人の比率が増加していることがわかります。

まず、買い時だと思う理由として多く挙がったのは、以下の理由です。

  1. 今後住宅ローン金利が上昇しそうだから(今の金利が低いから):44.0%
  2. 不動産価値(価格)が安定または上昇しそうだから:24.9%
  3. 住宅ローン減税など住宅取得のための支援制度が充実しているから:24.6%

続いて、買い時だと思わない理由として多く挙がったのは、以下の理由です。

  1. 不動産価値(価格)が下落しそうだから:29.7%
  2. 自分の収入が不安定または減少しているから:25.4%
  3. 住宅ローン減税など税制優遇が見直されそうだから:12.5%

これらの結果から、不動産価格の面では、上昇するよりも下落すると考える人が多数のようです。一方で、金利の面では、米国をはじめとする諸外国の政策金利が上昇していることもあり、「日本でも将来金利が上昇する」と予測し、金利が低い今のうちに住宅ローンを組んでおきたいと考えている人が多いようです。

収入の面については、「収入が安定しているから(買い時だと思う)」に対して、「収入が安定していないから(買い時だと思わない)」と回答する人が多くなっています。この結果から、収入への不安から不動産の購入に踏み切れない人が多いことが読み取れます。

持ち家派は賃貸派の約4倍

「あなたは「持ち家派」「賃貸派」どちらですか(現在の住まいは関係なし)」の回答結果は、持ち家派67.5%、賃貸派17.4%となりました。

<持ち家派の理由>

  1. 家賃を払い続けることが無駄に思えるから(56.8%)
  2. 落ち着きたいから(37.4%)
  3. 老後の住まいが心配だから(35.3%)

持ち家を選ぶ人は、自分のものではない賃貸住宅に家賃を払い続けることに抵抗があるようです。また、家に対して心理的、経済的な安心感を求める傾向があります。

<賃貸派の理由>

  1. 住宅ローンに縛られたくないから(45.3%)
  2. 税金や維持管理にコストがかかるから(34.3%)
  3. 不動産を所有しない身軽さがいいから(29.4%)

一方、賃貸を選ぶ人は、自由や身軽さを重視する傾向が見られます。また、固定資産税や火災保険料、修繕費などの維持管理コストにも敏感です。収入に対する不安から、多額のローンを組むことに抵抗がある人も多いと考えられます。

持ち家派は初の60%台となり、過去8年の調査で最低となりました。ただし、賃貸派も前年より減少しており、今回(2023年)から回答に「どちらともいえない」という選択肢が追加されています。それを考慮すると、全体的に大きな変化はないとも考えられます。

災害に対する意識が高まっている

災害に対する住まいの意識として、「あてはまる」と回答した結果は以下のとおりです。

  1. 築年数や構造(免震、耐震)について考えるようになった(35.2%)
  2. 緊急避難場所や防災マップ・ハザードマップを意識するようになった(35.2%)
  3. 地盤などの状況を意識するようになった(30.3%)

災害に対する意識は全体的に高く、3人に1人は免震やハザードマップ、地盤などを意識しています。

ハザードマップについて「知っている」と回答した人は83.8%で、認知度は高いようです。住んでいる地域のハザードマップを見たことがある人は、60代の75.1%に対し、20代は36.4%でした。関心度は年齢と比例して高く、若年層ほど無関心な傾向にあります。

全体的に災害への意識が高いのは、地球温暖化の影響で台風や洪水などの被害が増えていることや、日本は地震大国であり、過去に「東日本大震災」などの大地震も発生していることが理由だと考えられます。

また、宅建業法施行規則の改正により、不動産取引の重要事項説明においてハザードマップの確認が追加(2020年8月28日から施行)されたことも、意識の高まりにつながっている可能性があります。

介護を意識した住まい方が重視されている

「今後求めている住まい方」については、以下の回答が上位となりました。

  1. 介護が必要になっても年金の範囲内で安心して暮らし続けられる住まいの整備(26.5%)
  2. 中心市街地など利便性の高い都心居住の推進(21.2%)
  3. 職場の近くで住まう職住近接の推進(18.8%)

長寿命化の影響で、年代が上がるにつれて介護や金銭面を強く意識しており、老後を見据えて住まいを選ぶ傾向が見られます。一方で、年代が若いほど職住近接を求めており、住まい選びで通勤しやすさを重視しているようです。

空き家問題に対する意識は受動的である

少子高齢化の影響により、今後は空き家の急増が見込まれています。

空き家に関する現状調査では、「自身や家族の家が空き家になっている、または将来空き家になる可能性がある」と回答した人は35.0%です。そのうち、「話し合いをしていない」「放置、何も考えていない」と回答した人は6割を超えています。

空き家問題への対策については、補助金や税制優遇、行政からの働きかけが有効と考える人が多数を占めています。

多くの人が、空き家問題を認識しているものの、緊急性を感じておらず、問題を先送りしている人が多いのが現状です。また、「国や自治体が利用者に働きかけることで解決が見込める」と考えており、全体的に受け身の姿勢が見られます。

まとめ

「持ち家か賃貸か」「住まいに何を求めるか」といったテーマは正解がなく、考え方は人それぞれです。ただし、一般消費者の動向は、自身の住まい選びの参考資料として活用できます。住まい選びで何を重視すべきか分からない場合は、本アンケートの調査結果を参考にしてみてはいかがでしょうか。

出典)全国宅地建物取引業協会連合会「2023年 住宅居住白書」

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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