公開日:2024.06.12
債権回収会社(サービサー)とは、金融機関等に代わって債権の管理や回収を行う民間業者のことです。ローンの返済が困難になると、サービサーとのやり取りが発生する場合があります。
この記事では、サービサーの概要や仕組み、債権回収の方法などについて解説します。
サービサーとは、金融機関等から委託を受け、または譲り受けて、特定金銭債権の管理回収を行う法務大臣の許可を得た民間の債権管理回収専門業者です。(特定金銭債権の詳細は後述します。)
例えば、フラット35の融資を受けている債務者が全額繰上償還請求を行ったときの回収業務は、住宅金融支援機構が行うのではなく、以下のサービサーが行うものとされています。
出典)住宅金融支援機構「委託先債権回収会社について(機構が行う個人向け融資)」
債権回収業務は、従来は弁護士法の規定により、弁護士または弁護士法人以外の者が債権管理回収業務を行うことはできませんでした。しかし、1991年のバブル崩壊により発生した不良債権の処理等を促進するため、1999年に弁護士法の特例として「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」が施行され、債権管理回収業が民間業者に解禁されました。
出典)法務省「債権回収会社(サービサー)制度 -債権管理回収業に関する特別措置法-」
債権者である金融機関等にとっては、サービサーを利用することで回収交渉などの業務負担の軽減、債権譲渡による不良債権の解消などが期待できます。
特定金銭債権とは、サービサーが取り扱うことができる以下のような金銭債権です。
特定金銭債権の範囲は、サービサー法によって規定されています。不良債権の処理等を促進する観点から、サービサーが取り扱える金銭債権の範囲を限定しています。
法務省の資料によれば、2023年12月31日時点で、営業を行っているサービサー73社に調査した結果、出資母体等別の内訳は以下のとおりとなっています。
出典)法務省「債権回収会社(サービサー)の業務状況について(概要)」
債権管理回収業の営業許可を受けている業者は、法務省のホームページで確認でき、2024年4月1日時点では、72社となっています。
サービサーはどのように運営され、どのような方法で債務者から債権を回収しているのでしょうか。ここでは、サービサーの仕組みと債権回収の方法について紹介します。
※筆者作成
サービサーとして債権管理回収業を行うには、法務大臣の許可が必要です。許可を受けるには、以下の3つの要件を満たさなくてはなりません。
法務大臣が日本弁護士連合会に意見を聴取し、弁護士会が取締役となる弁護士を推薦することで、サービサーの業務全般を適正に監督しています。
暴力団員等の排除については、法務大臣が警察庁長官に意見聴取、警察庁長官がサービサーに立入検査や援助等を行う仕組みになっています。
サービサーは金融機関等からの委託、債権譲渡を受けて次のような業務を行います。
債権者である金融機関等に代わって、担当窓口として債務者への債権額の確認、返済交渉などを行います。債権を譲り受けた場合は債権者として自ら回収を行い、状況によっては法的手段も検討することになります。
サービサーは前述のとおり、銀行や貸金業者などの金融会社が特定金銭債権の回収業務を委託され、後から債権を回収するものです。これに対し、ファクタリングは、企業がファクタリング会社に売掛債権(売掛金など)を買い取ってもらうことで、本来の回収より前に資金調達を行えるという違いがあります。
詳しくは関連記事をご確認ください。
サービサーと債務者の関係は、債権者から債権回収を委託されるか、債権を譲渡される(買い取る)かによって異なります。
金融機関等がサービサーに債権回収を委託する場合、サービサーが窓口として債務者と返済に関する交渉を行います。債権者は金融機関のまま変わりません。
※筆者作成
一方、金融機関等がサービサーに債権を譲渡する場合、サービサーは債権者として債務者と回収交渉を行います。債権譲渡後、債務者は金融機関に対する返済義務はなくなりますが、サービサーへの返済義務が生じます。
※筆者作成
サービサーは、次のような方法で債権回収を行います。
まずは電話や書面などで通知が来るのが一般的です。その段階で対応しなければ、民事調停や訴訟などの法的手続きに移り、最終的には財産を差し押さえられるなどの強制執行が行われます。
ローン返済が滞った場合など、サービサーから通知が来たら、法務大臣の許可を受けている業者かどうかを確認しましょう。サービサーの名前をかたった業者による債権の架空請求などが発生しているため、心当たりのない請求には応じないことが大切です。
実際に返済が遅れているなど、サービサーからの通知に心当たりがある場合は、必要に応じて弁護士などの専門家に相談しながら返済について交渉するといいでしょう。
ローンの返済が困難となった場合、返済交渉の窓口が借入先である金融機関等から民間業者のサービサーに移る場合があります。
サービサーは債権回収の専門知識を有しており、通知を無視していると最終的には財産を差し押さえられる恐れがあります。サービサーから連絡がきたら、まずは法務大臣の許可を受けた登録業者であることを確認することが大切です。
そのうえで、自身だけで返済交渉をするのが難しい場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。
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