2024.09.18

防火地域・準防火地域とは?特徴や建築制限、メリットをわかりやすく解説

公開日:2024.09.18

マイホームの取得を検討していると、「防火地域」「準防火地域」という言葉を聞くことがあるかもしれません。どちらも防火対策のために法律で指定されている地域ですが、何が違うのでしょうか。また、建物を建てる際にどのような制限があるのでしょうか。

この記事では、防火地域・準防火地域の特徴や建築制限、メリットなどをわかりやすく解説します。

防火地域・準防火地域とは

防火地域・準防火地域とは、都市計画法において市街地や住宅密集地での火災を防ぐために指定された地域です。都市計画法では次のように規定されています。

防火地域又は準防火地域は、市街地における火災の危険を防除するため定める地域とする。

出典)e-Gov法令検索「都市計画法第9条第21項」

防火地域・準防火地域はどちらも建築制限が設けられており、その内容は異なります。また、防火地域・準防火地域には指定されていなくても、火災を防ぐことを目的に「新たな防火規制区域(東京都の場合)」や「法22条区域」に指定されている地域もあります。

それぞれの地域(区域)の特徴を確認していきましょう。

防火地域の特徴・建築制限

防火地域は、都市の中心部で商業施設が建ち並び人通りや交通量の多い場所や災害時に緊急車両が通る幹線道路沿いなどが指定されます。火災による被害が拡大しやすく、防火対策の必要性が非常に高い地域です。

防火地域では、「3階以上の建物」「延べ面積100㎡超の建物」は耐火建築物としなくてはなりません。耐火建築物とは、建築基準法(第2条第9号の2)に定められた、「主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段)が耐火構造であること」などの基準に適合する建築物です。

また、「2階以下で延べ面積100㎡以下の建物」は準耐火建築物とする義務があります。準耐火建築物とは、建築基準法(第2条第9号の3)で定められた、「主要構造部を準耐火構造とすること」などの基準に適合する建築物です。

防火地域の建築制限

※筆者作成

準防火地域の特徴・建築制限

準防火地域は、駅前の周辺など住宅が分布している地域などが指定されます。防火対策の必要性は高いものの、防火地域に比べると規制は緩やかです。

準防火地域では、「4階以上の建物」「延べ面積1,500㎡超の建物」は耐火建築物としなくてはなりません。また、「3階以下で延べ面積500㎡超1,500㎡以下の建物」は準耐火建築物とする義務があります。

延べ面積が500㎡以下であれば、一般的な木造2階の戸建住宅も建築可能です。ただし、屋根や外壁、開口部(換気扇など)、軒裏などに所定の防火措置を行う必要があります。

準防火地域の建築制限

※筆者作成

出典)
国土交通省「防火地域等における建築物の規制【法第22条】【法第61条】【法第62条】」
国土交通省「耐火建築物・準耐火建築物」P.13
埼玉県「みんなで取り組もう 火災に強いまちづくり」

新たな防火規制区域とは

新たな防火規制区域とは、木造密集地域における災害時の安全性を確保するために、東京都が条例に基づいて指定する区域です。

対象区域では、原則として、すべての建築物は準耐火建築物以上としなくてはなりません。また、「延べ面積500㎡超の建物」は耐火建築物とする必要があります。

新たな防火地域の建築制限

※筆者作成

出典)東京都都市整備局「新たな防火規制について(制度の概要)」

法22条区域とは

法22条区域(建築基準法第22条指定区域)とは、火災による延焼を抑止するために、特定行政庁が防火地域・準防火地域以外の市街地に指定する区域です。法22条区域は、建物の屋根を不燃材料で造るか、不燃材で葺(ふ)くことを義務づけられています。

基本的に火は上に向かって燃え広がるため、火災を抑えるために定められた要件を満たす材料を用いて、屋根の防火性能を強化することが必要です。

耐火構造・準耐火構造・防火構造の違い

建物の防火性能を表す主な基準として、「耐火構造」「準耐火構造」「防火構造」の3つがあります。防火地域と準防火地域では、これらの基準が異なるため、それぞれの違いを理解しておきましょう。

耐火構造とは

耐火構造とは、火災が発生し一定時間の火熱が加えられても損傷などが生じない構造です。耐火建築物では、通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊や延焼を防止するため、主要構造部を耐熱構造とすることになっています。

建築物の階数や部分によって異なりますが、最上階から数えた階数が20以上の階の場合、柱とはりは最長3時間、損傷が生じない性能が求められます。

準耐火構造とは

準耐火構造とは、火災が発生し一定期間の火熱が加えられている間は損傷などが生じない構造です。耐火構造とは異なり、火災が終了した後に損傷が生じることは許容されます。

準耐火建築物では、通常の火災による延焼を抑制するため、主要構造部を準耐火構造とすることになっています。建築物の部分によって異なりますが、最長45分間、損傷が生じない性能が求められます。

防火構造とは

防火構造とは、防火地域・準防火地域において、比較的小規模の住宅を建てる場合に求められる構造です。

外壁に火熱が加えられた場合に、30分間は損傷が生じない性能が求められます。外壁と軒裏については、30分間は加熱面以外の温度が一定以上に上昇しないことも要件です。

出典)
国土交通省「耐火建築物・準耐火建築物」P.13-14
建築基準法施行令「第四章 耐火構造、準耐火構造、防火構造、防火区画等」

耐火構造の建物建築のメリット

耐火構造の建物を建築すると、次のようなメリットを得られます。

建ぺい率の緩和

建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合です。防火地域・準防火地域において、建ぺい率が80%以外に指定されている場合は、次の要件を満たすと建ぺい率が10%加算されます。

  • 防火地域:耐火建築物を建てる場合
  • 準防火地域:耐火建築物または準耐火建築物を建てる場合

建ぺい率が高くなれば、建物を建てるときに使える敷地がより広くなります。

火災保険料の割引

火災保険の保険料率は、建物の構造によって異なります。火災が起きたときの燃え広がり方などによって、被害の程度や倒壊しやすさなどのリスクが異なるからです。

M構造耐火性能を有する共同住宅(コンクリート造のマンションなど)
T構造M構造以外の耐火性能を有する建物および準耐火性能を有する建物(鉄骨造など)
H構造M構造、T構造以外の建物(木造など)

火災保険の保険料率は「M構造、T構造、H構造」の順に高くなるため、耐火構造の建物を建築することは火災保険料の節約につながります。

出典)損害保険料率算出機構「2023年度火災保険・地震保険の概況」P.16

防火地域・準防火地域を調べてみよう

自治体によっては、インターネットで防火地域・準防火地域を調べることが可能です。

東京都の場合、「都市計画情報等インターネット提供サービス」の都市計画情報で確認できます。地域を指定し、表示切替で「防火・準防火地域」を選択すると、地図上に情報が表示される仕組みです。
都市計画情報検索画面

出典)東京都 都市整備局「都市計画情報等インターネット提供サービス」

その他に、自分が住む地域名と防火規制で検索する方法もあります。

まとめ

防火地域・準防火地域は、どちらも市街地での火災を防ぐために指定された地域です。建築費用が高くなる傾向にありますが、建ぺい率の緩和や火災保険料の割引を受けられるメリットもあります。マイホームの取得を検討する際は総合的に判断しましょう。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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