不動産売却における媒介契約の種類とは?選び方と注意点を解説

公開日:2025.02.26

不動産を売却するときは、不動産会社に買主を見つけてもらうのが一般的です。その際、依頼する不動産会社と媒介契約を締結する必要があります。媒介契約は3種類あるため、どれを選べばよいか悩む人は多いでしょう。

この記事では、不動産売却における媒介契約の種類や選び方、注意点を解説します。

不動産売却における媒介契約とは?

媒介契約とは、不動産を仲介で売却・購入・交換する際に不動産会社と締結する契約です。例えば、不動産会社に買主を見つけてもらう時に結びます。宅地建物取引業法では依頼者が不利にならないように、不動産会社に媒介契約の締結を義務付けています。
媒介契約書には、契約期間や売却活動の内容、仲介手数料の金額などが定められています。

出典)国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款」

媒介契約の種類や特徴

媒介契約には、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」など3つの種類があります。例えば、「専属専任媒介契約」ではレインズ(指定流通機構)※への登録義務が発生するなどの特徴があります。以下で各媒介契約について詳しく説明していきます。

※レインズとは、不動産会社専用のネットワークシステムです。全国の物件情報が共有されているので、レインズに登録すると早期の売買成立につながりやすい傾向があります。

専属専任媒介契約

専属専任媒介契約は、1つの不動産会社のみに仲介を依頼できる契約です。
契約期間は3か月以内です。不動産会社は物件情報を媒介契約締結日の翌日から、5営業日以内にレインズへ登録する必要があります。また、売主に対して売却活動の状況を1週間に1回以上報告する義務があります。自分で見つけた買主との直接取引(自己発見取引)はできません。1社しか契約できないため、不動産会社側からすると他社と契約される心配がありません。契約期間内に買主が見つかれば仲介手数料を受け取れるため、熱心に売却活動を行う傾向があります。
売主にとっては、レインズへの登録義務があることから早期の売買成立が期待できます。1週間に1回以上報告を受けられ、売却活動の状況を把握しやすいのもメリットです。

専任媒介契約

専任媒介契約も、1つの不動産会社のみに仲介を依頼できる契約です。
契約期間は3か月以内で、実務上は専属専任媒介契約と大きな違いはありません。レインズへの登録義務は媒介契約締結日の翌日から7営業日以内、売主に対する報告義務は2週間に1回以上となっています。ただし、売主自身が見つけた買主との直接取引は可能です。
専属専任媒介契約と同じく、不動産会社は熱心に売却活動を行ってくれる傾向にあります。

一般媒介契約

一般媒介契約は、複数の不動産会社に仲介を依頼できる契約です。
多くの購入希望者にアプローチできるので、早期の売却につながる可能性があります。売主自身が見つけた買主との直接取引も可能です。一方で、レインズへの登録義務や売主への報告義務はありません。他の不動産会社が買主を見つけると仲介手数料を受け取れないため、積極的に売却活動を行ってくれない可能性があります。複数の不動産会社とやり取りする必要があり、手間がかかるのもデメリットです。

3種類の媒介契約の比較表

専属専任媒介契約専任媒介契約一般媒介契約
契約期間3か月以内3か月以内制約なし
複数社との契約××
レインズへの登録義務媒介契約締結日の翌日から5営業日以内媒介契約締結日の翌日から7営業日以内なし
売主への報告義務1週間に1回以上2週間に1回以上なし
自己発見取引×

なお、仲介で不動産の売買契約が成立すると、媒介契約を締結した不動産会社に仲介手数料を支払います。宅地建物取引業法により、不動産会社が受け取れる仲介手数料の上限額は以下のように定められています。

仲介手数料の上限額

契約金額(税別)仲介手数料の上限額
200万円以下(契約金額(税別)×5%)+消費税10%
200万円超 400万円以下(契約金額(税別)×4%+2万円)+消費税10%
400万円超(契約金額(税別)×3%+6万円)+消費税10%

媒介契約の選び方

どの媒介契約を選ぶか迷うときは、物件の売りやすさを判断基準にするとよいでしょう。
立地や築年数などから、ある程度の需要が見込まれる物件は一般媒介契約が向いています。複数の不動産会社を競わせることで、好条件を引き出すことができるかもしれません。

一方で、「利便性が悪い」「築年数が古い」などの理由で需要があまり見込まれない物件は、専属専任媒介契約や専任媒介契約がおすすめです。売りづらい物件で一般媒介契約を結ぶと、不動産会社が積極的に売却活動を行わない可能性があります。そのため、依頼を受けた不動産会社が独占的に販売できる専属専任媒介契約や専任媒介契約を活用するとよいでしょう。

媒介契約の注意点

どの媒介契約を選択するにしても、不動産会社が売却活動をしっかりと行ってくれることが重要です。以下の項目を基準に、仲介を依頼する不動産会社を探しましょう。

  • 売却する物件のエリアに精通しているか
  • 不動産仲介の経験・実績は十分あるか
  • 査定額に根拠があるか
  • 信頼できる会社・担当者か

信頼できる会社・担当者かを見極めるときは、「丁寧に対応してくれる」「デメリットも説明してくれる」「媒介契約の締結を急かさない」などをもとに判断するとよいでしょう。
担当者からの連絡を待つだけでなく、ときにはきちんと売却活動を行っているかを自ら調べることも大切です。

まとめ

媒介契約とは、不動産を仲介で売却・購入・交換する際に不動産会社と締結する契約です。契約できる会社数やレインズへの登録義務などに応じて、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があります。
立地や築年数などから需要が見込まれる物件は一般媒介契約、売りづらい物件は専属専任媒介契約・専任媒介契約が向いています。どの媒介契約がよいか迷ったら、物件の売りやすさなどを基準に判断しましょう。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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