老後のことが知りたい

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「シニア」の記事一覧

  • 建て替えとリフォームはどちらがいい?メリット・デメリット、判断する基準を解説

    建て替えとリフォームはどちらがいい?判断する基準を解説

    築年数の経過やライフスタイルの変化などに応じて、住宅の建て替えやリフォームを検討することがあるでしょう。 建て替えとリフォームの特徴を知っておけば、どちらが自分に合っているか判断しやすくなります。この記事では、建て替えとリフォームのどちらがいいか迷っている方に向けて、双方のメリットやデメリット、どちらが向いているかを判断する基準の例を解説します。 建て替えのメリット・デメリット まずは、建て替えのメリットとデメリットについて解説します。 建て替えのメリット 建て替えの主なメリットは以下の2点です。 ①建物の構造や間取りを最初から見直せる 建て替えの場合、工事内容が既存住宅の構造や間取りに左右されることがありません。希望に沿った建物の構造や間取り、仕上がりなどを一から見直すことができます。 ②耐震性をより高めることができる 建築基準法と住宅瑕疵担保履行法により、建て替えの際には必ず地盤調査が行われます。耐震性を高めたい場合、地盤調査のうえで耐震改修工事ができる点は大きなメリットです。また、必要に応じた地盤改良も可能です。 出典)一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会「かし保険全般に関するご質問(地盤編)」 建て替えのデメリット 建て替えの主なデメリットは以下の2点です。 ①時間と手間がかかる 既存建物の解体と建築を行うため、完成までにまとまった期間が必要になります。加えて工事の間は仮住まいで過ごす必要があるため、仮住まいや引っ越しなどの手間もかかります。 ②費用が高い 建て替えには、建築費用以外に既存建物の解体費用や仮住まいの費用、引っ越し費用などが必要です。なお、経済産業省の「令和3年度 住宅市場動向調査報告書」によれば、建て替え費用の平均額は3,299万円という結果が出ています。あくまで平均値ですが、一つの目安にはなるでしょう。 出典)国土交通省 住宅局「令和3年度 住宅市場動向調査報告書」 リフォームのメリット・デメリット 続いて、リフォームのメリットとデメリットについて解説します。 リフォームのメリット リフォームの主なメリットは以下の2点です。 ①時間や手間、費用を抑えられる 必要な部位のみリフォームを行えるため、建て替えと比べると工事の期間が短くなります。また、設備の交換などの小規模なリフォームであれば、住み続けたまま工事ができるので、仮住まいが必ずしも必要なわけではありません。 ②愛着のある家に住み続けられる 今住んでいる家に愛着がある場合、建物の原型を大きく変えられないことはメリットにもなります。人によっては壁や柱の傷や汚れも想い出になっているかもしれません。そのような部位は残しつつ、必要な修繕のみ行うことも可能です。 リフォームのデメリット リフォームの主なデメリットは以下の2点です。   ①住宅性能や耐震性の向上には限界がある 部分的なリフォームをする場合、住宅を支える柱や梁を変更、補強しない限りは住宅性能を上げるには限界があります。また、地盤が悪い場合には地盤改良が必要ですが、建築されている状況だと工事が不可能です。 ②希望どおりの間取りになるとは限らない リフォームの場合、建て替えのように自由に構造や間取りを変更することは困難です。工事内容が既存住宅の構造や間取りによって制限されてしまうため、自身の希望する工事ができない場合もあります。自身の希望どおりの工事が可能かどうか、リフォーム業者にしっかりと確認しておくことが大切です。 建て替えかリフォームかを判断するポイント 建て替えとリフォームのメリットとデメリットを把握したうえで、自身の状況に合う方を選択することが大切です。一つの参考として、建て替えが向いている場合とリフォームが向いている場合を、それぞれご紹介します。 建て替えが向いている場合 建て替えが向いている例として、下記の場合が挙げられます。 家の構造や間取りを大きく変更したい 耐震性に不安があり、地盤から見直したい 子供や孫世代に家を引き継ぎたい リフォーム費用が同程度かかる 基本的には大規模な工事を行いたい場合には、建て替えが向いているといえます。その分費用は大きくなるので、自己資金や住宅ローンの条件なども踏まえて検討することが大切です。 リフォームが向いている場合 リフォームが向いている例として、以下の場合が挙げられます。 家全体の状態は良く、一部の工事で済む 家の構造や間取りを大きく変える必要がない 子供や孫世代に家を引き継ぐ予定がない 費用や手間をできるだけ抑えたい 小規模な工事で済む場合、もしくは済ませたい場合にはリフォームが向いているといえます。また、費用面を比較する際には、リフォームの補助金も含めて検討することが大切です。 関連記事はこちら【令和5年版】リフォームで活用できる補助金の種類と金額の目安 選ぶときの注意点 ここで紹介した建て替えが向いている場合とリフォームが向いている場合は、あくまで一例にすぎません。もしどちらかに当てはまったとしても、実際に両方の見積もりを行うなどして、しっかりと比較することが大切です。 また、建て替えとリフォームのどちらかを選択する上で、自宅の状態を適切に把握することも大切です。ご自身で判断するのが不安な場合は、専門家に建物状況調査を依頼するのも一つの手段として有効です。 関連記事はこちら建物状況調査とは?メリット・デメリットと手続きの流れを解説 まとめ 建て替えとリフォームでは、それぞれメリットとデメリットがあるため、十分に比較をしてからどちらが合っているかを決める必要があります。費用面だけでなく、家族構成やライフスタイルの変化を踏まえた中長期的な視点で考えていくことが重要です。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 老後は家の建て替えが必要?資金はどうやって準備する? 子どもが独立したり、定年が近づいてきたりすると、老後の住まいについて考える機会が増えるのではないでしょうか。戸建てに住んでいる場合は、住み替えやリフォームだけでなく、建て替えも検討するかもし...

  • 終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリット、普通建物賃貸借契約との違い、手続き方法を分かりやすく解説

    終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説

    終身建物賃貸借契約は、高齢者が安心して賃貸住宅に居住できる仕組みです。老後も賃貸暮らしを続けるなら、終身建物賃貸借契約に対応している賃貸住宅も選択肢のひとつです。この記事では、終身建物賃貸借契約の概要やメリット・デメリット、手続きの流れについて解説します。 終身建物賃貸借契約とは? 終身建物賃貸借契約とは、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づき、高齢者単身・夫婦世帯等が終身にわたり安心して賃貸住宅に居住することができる仕組みとして、借家人が生きている限り存続し、死亡時に終了する相続のない一代限りの借家契約です。 賃借人は生涯同じ家で安心して生活でき、一代限りの契約であるため、死亡時に相続は発生しません。基本的に入居できるのは60歳以上に限られます。ただし、60歳以上の配偶者との同居であれば、60歳未満でも入居ができます。 なお、終身建物賃貸借契約をするには、対象となる不動産が都道府県知事の認可を受けている必要があります。また、賃貸住宅が一定の基準に適合していることも要件です。 出典)東京都住宅政策本部「終身建物賃貸借制度」 終身建物賃貸借契約のメリット 終身建物賃貸借契約のメリットは以下のとおりです。 死亡するまで住み続けられる 終身建物賃貸借契約は契約期間が終身であるため、賃借人が死亡するまで同じ家に住み続けられ、賃貸人からの解約は、原則以下のとおりです。 老朽や損傷などにより、住宅を維持できない場合 入居者が長期にわたり居住しておらず、住宅の管理が困難な場合 入居者に不正行為や公序良俗に反する行為、事実が判明した場合 中途解約は基本的に都道府県知事の承認が必要です。それに加え、6か月前に入居者に対して解約の申入れを行わなければならず、急に賃貸人から退去を求められることが少ない点も安心です。 なお、老人ホームへの入所や親族との同居などの理由で居住できなくなった場合は、1ヵ月前に申入れを行うことで、賃借人からの解約が可能です。 契約終了後の手続きが簡単 終身建物賃貸借契約は、賃借人の死亡によって契約が終了します。相続が発生せず、契約終了の手続きが不要のため、相続人に迷惑をかけずに済みます。同居配偶者は、賃借人の死亡を知った日から1ヵ月以内に申し出れば、引き続き居住が可能です。 バリアフリーの要件を満たしている 終身建物賃貸借契約の対象不動産は、一定のバリアフリー基準を満たしています。「段差のない床」「浴室等の手すり」などが備わっており、高齢者にとっては住みやすいでしょう。 高齢者でも家を借りられる 一般的な賃貸住宅では、健康面や金銭面の不安から高齢者の入居を敬遠するケースもあります。それに対し、終身建物賃貸借契約は、高齢者が生涯にわたって賃貸住宅に居住できる制度であるため、高齢を理由に入居を断られる心配がありません。 更新料がかからない 普通建物賃貸借契約では契約期間が定められており、契約更新の際に家賃1ヵ月分の更新料がかかるのが一般的です。一方、終身建物賃貸借契約は契約期間が終身のため、更新料はかかりません。同じ家に長く住む場合は、住居費の負担軽減が期待できます。 終身建物賃貸借契約のデメリット 終身建物賃貸借契約には、以下のようなデメリットもあります。 事前に認可されている不動産でないと利用できない 終身建物賃貸借契約を利用できるのは、都道府県知事から認可を受けた不動産に限られます。認可されている不動産はまだ少ないので、住みたいエリアに終身建物賃貸借契約に対応した物件がない可能性もあります。 同居配偶者や60歳以上の親族以外は入居できない 終身建物賃貸借契約は、賃借人や同居人に一定の制限があります。賃借人は、基本的に60歳以上の高齢者に限られます。また、同居配偶者や60歳以上の親族以外は入居できないので注意が必要です。 終身建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約の違い 終身建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約の違いは以下のとおりです。 区分 終身建物賃貸借契約 普通建物賃貸借契約 定期建物賃貸借契約 契約の方法公正証書等の書面による契約に限る書面でも口頭でも可公正証書等の書面による契約に限る 期間または期限賃借人の死亡に至るまで1年以上または期間の定めなし期間の定めなし 契約の更新無し正当事由がない限り更新更新なし、再契約が必要 賃料増減額請求権 増減を請求できる※1 増減を請求できる※2 増減を請求できる※3 相続の有無無し有り有り ※1 賃料を改定しない特約があるときは増減を請求できない ※2 賃料を増額しない特約があるときは増額を請求できない ※3 増減額請求権を排除する特約を定めることが可能 終身建物賃貸借契約は、契約方法が公正証書等に限られ、契約期間が終身で更新や相続がないのが特徴です。 終身建物賃貸借契約の手続き方法 終身建物賃貸借契約は、賃借人側に特別な準備は必要ありません。都道府県ごとに、終身建物賃貸借契約が利用できる住宅一覧が公表されているため、確認して問い合わせてみましょう。入居したい物件が見つかったら、賃貸人と終身建物賃貸借契約を締結します。 出典)東京都終身認可住宅一覧(令和5年4月1日現在) 賃貸人の手続き 賃貸人が終身建物賃貸借契約をするには、事前に都道府県知事の認可を受ける必要があります。手続きの流れは以下のとおりです。 賃貸住宅の概要や賃貸条件等を記載した「事業認可申請書」を作成する 間取図等の必要な書類を添付する 都道府県知事等の自治体の長に提出する 一定のバリアフリー基準等に適合していることが要件となるため、物件の状況によっては手すりの設置などの対応も必要です。 出典)国土交通省住宅局安心居住推進課「終身建物賃貸借契約の手引き」 まとめ 高齢者は、健康面や金銭面の問題で賃貸住宅の入居を断られるケースが少なくありません。しかし、終身建物賃貸借契約を利用できる不動産であれば、高齢者でも安心して同じ家に住み続けられます。老後も賃貸暮らしを続けたい場合は、終身建物賃貸借契約に対応した物件を探してみてはいかがでしょうか。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 老後にリースバックを利用すると得られる4つのメリット リースバックは、自宅を売却してまとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるサービスです。リースバックを利用することで老後の不安を解消し、より快適な生活が送れるように...

  • <介護と保健ガイドブック>介護におけるコミュニケーション

    <介護と保健ガイドブック>介護におけるコミュニケーション

    介護におけるより良いコミュニケーションとは 介護される人の心理状態を理解しよう より良い介護を行うためには、介護される人、介護する人、この両者間のコミュニケーションが非常に大切なものになります。介護をされる人の心理状態を知っておくことはとても重要です。相手がどういう心理状態なのかを理解できれば対応の方法もわかり、お互いの関係を良好に保つことにつながります。 一見わがままだと思えることも、介護されることへの申し訳ないという思いや家族に負担をかけることへの罪悪感、今までできていたことができないことへのいら立ちなどからくるものなのかも知れません。ここでは介護を受ける人が一般的にどのような気持ちを持つことが多いのかを紹介します。 ただし、実際にはひとりひとりに個人差がありますので、紹介する心理状態が必ずしも当はまる訳ではありません。介護される人と介護する人がよく話し合い、お互いの気持ちを知り、思いやりを持って接することが大切です。 【介護を受ける人の心理状態】 それまで、できていたことができなくなることによるイライラ、焦り、不満などを抱えていることがある。 自由にできていたことが人の手を借りないとできなくなることによる欲求不満から、攻撃的になる場合もある。 介護してもらうことに申し訳ないという罪悪感を持っていたり、負い目を感じていたりする場合もある。 排泄や入浴などの介助を受ける場合、恥ずかしいという意識をもつ場合もある。 高齢者の一般的な心理背景 介護を受ける人との接し方のポイント 介護を受ける人と接する場合、具体的にどのようなことに配慮して、どのような心がまえ、態度で対応したらよいのでしょうか。そのポイントを紹介します。 傾聴、受容、共感が大事 相手の気持ちや考え、状態を理解するには、まず相手の話にじっくりと耳を傾ける「傾聴」が大事です。また、話を聞いたら否定せず、ありのままを受け入れる「受容」、そして、相手の喜怒哀楽に「共感」する姿勢を持つことも大切です。相づちを打ちながら聞く、相手の言ったことに質問をしたり、聞いた言葉をそのまま繰り返したりするなど、相手の話をよく聞いているということを示すようにしましょう。相手と目線の高さを合わせ、相手の表情も見ながら話すように心がけると、より良いコミュニケーションにつながります。 非言語コミュニケーションも大事 コミュニケーションは、言葉だけで行われるものではありません。例えば、声の大きさや発し方にも気を配りましょう。「高齢者は耳が遠いから大声で話す」と思いがちですが、十分に聞こえている人もいます。相手の状態を見て、声の大きさは調整するようにします。一般的に、少し低めの声で、ゆっくり、はっきりと話すと聞き取りやすいといわれています。また、言葉で説明するだけでは伝わりにくいと思う場合、身ぶりや手ぶりを交える、文字で書いて示す、現物を見せるなどの工夫も有効です。さらに、肩に手を置く、手を握るなど、スキンシップも有効な場合があります。このように相手の状態をよく観察しながら、上手にコミュニケーションがとれるように工夫しましょう。できるだけリラックスして話せるように静かな環境を整えることも大切です。 「できることは本人にやってもらう」のが基本 介護というと、なんでもかんでもお世話をするものと思いがちですが、手を出し過ぎるとその人の機能低下を招くことにもなりかねません。「できることは本人にやってもらう」のが基本です。そのためには、衰えた機能ばかりに目を向けるのではなく、その人ができることは何かを見つけて、その能力を引き出すような援助を心がけましょう。また、介護を受ける人は、それまで自力でできていたことが他人の手を借りなければできなくなっていることに負い目を感じている場合もあります。その人ができることを見つけ、何かの役に立っているという自己有用感を持ってもらうことも大切です。それが生きる喜び、生きたいという意欲にもつながります。いたずらに「頑張れ」と励ますだけではなく、その人の意に沿った具体的な目標を決め、達成できたらそれを一緒に喜び合うという姿勢を持ちましょう。 その人らしさ、その人らしい暮らしを大切に ここに挙げたのは一般的にいわれていることです。人にはそれぞれ個性があります。杓子定規に考えて決めつけることはせず、一人ひとりに合った対応を心がけましょう。本人の意志、その人らしい暮らし方を尊重することが、より良い関係を築くためにとても重要です。 よくある事例への対応 物を盗られたと訴える 物を盗られたと訴える「物盗られ妄想」は、アルツハイマー型認知症に多く見られる症状で、一番身近な介護者を疑うことも多いのです。このような場合、本人に理屈を説明しても納得してもらうことはむずかしく、介護者が見つけるとより疑いが強まる場合もあります。一緒に探し、本人が見つけるように誘導しましょう。 入浴や着替えをいやがる 服を脱がされることが恥ずかしくて拒否していることも考えられます。その場合は、同性の家族が一緒に服を脱いであげると抵抗感がなくなることもあります。また、入浴は浴室でするということにこだわらず、部分的な清拭を行ったり、ベッドサイドで足浴をしたりすることでもよいでしょう。無理をすると思わぬ事故につながることもあるので、介護サービスなどの入浴サービスを利用することも一案です。 知らない間に出て行き、帰れなくなる 昔住んでいた家や思い出深い場所に行ってみたくなり、知らない間に出て行き、帰る場所がわからなくなって徘徊し保護されるケースも…。このような場合は無理に止めず、一緒に出かけて近所を一周すると落ち着くこともあります。また「今日はもう遅いので、明日にしましょう」などと声がけをし、延期してもらうことで落ち着くこともあります。声がけで止めるのがむずかしい場合、玄関などにセンサーをつけておく、夜間などは二重ロックをかけるなどの対応策をとることも考えましょう。 介護をする人自身が健康を損なわないように まじめな人ほど、介護の手を抜いたり他人任せにすることに罪悪感を感じ、頑張ってしまいがちです。しかしそれが続くと、介護をする人が体調を崩したり、精神的に追い詰められたりしてしまいます。ここでは、介護をする人の心身を守るために心がけておきたいことを紹介します。 周りに協力を求め、一人で抱え込まない もっとも大切なのは、ひとりで抱え込まないことです。協力してくれる人を周りにたくさんつくっておくことで精神的な余裕が生まれます。家族内で分担をする、それが無理ならば離れている兄弟や近所の人、あるいは介護ヘルパーなどのプロの手もぜひ借りましょう。 介護を支援する制度をうまく利用する 介護保険制度だけではなく、その他の公的なサービスも徐々に増加しています。まずは自治体の窓口で、どのようなサービスが利用できるのかを相談してみましょう。各自治体ごとに提供されるサービスが異なりますので、情報収集をしっかりと行うことが大切です。また、福祉用具や機器の貸し出しなど、経済的な負担を軽減する制度もあるので上手に利用しましょう。 家族だからできる介護とは? 介護のための技術を習得しているプロの手を借りたほうが安全であったり、介護される人も気が楽だったりする場合もあるでしょう。しかし家族には、苦楽をともにしてきた経験や時間という、他人には共有できないものがあります。あるベテランのヘルパーは「私たちがどんなに頑張っても、家族の間でのやりとりから生まれる自然な笑顔を引き出すことはできない」と言います。公的サービスも大いに活用すべきですが、家族だからこそできることを同時に考えていくことが、より良い介護につながります。 広がり始めた「見守りサービス」 超高齢社会を迎え、一人暮らしの高齢者や高齢の夫婦のみといった「高齢者だけの世帯」が増えています。離れて暮らす家族にとって、高齢の親や親族の安否をつねに確認できることは、安心につながります。高齢者が住み慣れた土地で自立して暮らし続けるには、周囲の見守りが欠かせません。現在、地方自治体や多くの民間事業者などが、効果的な高齢者の「見守りサービス」に取り組んでいます。 見守りサービスには、安否の確認や通報、駆けつけを代行してくれるものなど、さまざまなタイプがあります。自治体が実施している見守り関連事業には「安否確認」「緊急通報システム」「配食サービス」「コミュニティ活動や学習活動」「サロンの運営・管理」などがあります。介護保険によるサービスに加え、多くの自治体では、民生委員や地域包括支援センターによる一人暮らしの高齢者への見守り活動、民間事業者と連携した支援の提供などに取り組んでいます。 サービスの情報 新型コロナウイルスの影響により、離れて暮らす高齢の家族を訪ねることが困難な状況の中で、カメラ型やセンサー型などの見守り装置の設置が注目されています。パソコンやスマホを使って、遠隔で家族を見守ることが可能です。 自治体が行う支援やサービスについては、内容や要件などが各自治体によってそれぞれ異なります。利用する際は、居住する市区町村の福祉課や地域包括支援センターなどに問い合わせてください。民間事業者が手がけるサービスについては、企業の公式サイトなどで情報を入手することができます。自治体と連携しているサービスでは、機器の設置などが助成対象になる場合があります。 出典)一般社団法人日本保健情報コンソシウム発行 『介護をする家族のための介護と保健ガイドブック』より引用

  • <介護と保健ガイドブック>家庭での介護

    <介護と保健ガイドブック>家庭での介護

    起き上がりと移動の介助 寝返りや起き上がり、ベッドから車イスへの移乗など、「移動」は、日常のさまざまな場面で必要となる介助です。力任せに動かそうとすると、介助する人が腰を痛める原因にもなってしまいます。無理な力を使わず、介護をする人にとっても介護をされる人にとっても安心で楽な方法を覚えましょう。 起きて座ることの意味 人にとって「起きる」ということは非常に重要な意味を持っています。まず、「起きて」「座る」ことは「食べる」「歩く」といった日常生活の基本となる行動です。起きて髪をとかす、座って食事をとるなど、自分でできることを自分で行えることは、自信の回復や生きる意欲にもつながります。 また、「起きて」「座る」ことは、意識を覚醒させるため、脳の活性化にもつながります。さらに、「起きる」ということは、重力に逆らって姿勢を保つ筋力を使います。寝たきりになってしまうと、この筋力が衰え、骨の弱化、換気障害なども起こしやすくなります。 体の一部にずっと重みが加わることによって褥瘡(床ずれ)の原因にもなります。生活にメリハリとリズムをつけるためにも、少しでも「起きて」「座って」過ごす時間を増やすような介助を行いましょう。 【2時間に1回を目安に】 寝返りの介助は、床ずれを防止するためにもとても大切です。できれば2時間に1回を目安に、こまめに体の向きを変えるようにしましょう。 【本人に動作を説明し、協力してもらう】 介助をされる人にも、始めようとする動作を説明し、協力してもらうとスムーズになり、お互い楽に動くことができます。 寝返りの介助-仰向けから横向きに 起き上がりの介助 生活の質を保つためには、できるだけ離床時間をつくることが大切です。近年は、介助する人が腰を痛めぬよう、高さの調整機能、背上げ機能があるベッドを利用することも多くなっています。自身で動ける場合はできるだけ自分の力で起き上がってもらうようにして、介助者は最低限の手助けをするようにします。 介助用ベッドを使用する場合 【動作と動作の変わり目には声がけを!】 「移動」は一気にしようとすると転倒などの恐れがあります。動作と動作の変わり目では必ず動きを止め、安定してから次の動作に移るようにしましょう。次の動作を言葉で伝えることも大切です。 【座ることは自立した生活への第一歩】 移動が楽にできるようになれば、ベッドで寝たまま過ごす時間が短くなり、生活の行動範囲も広がります。座ることによって大脳が刺激され、表情が生き生きとしてくることもあります。 【腰を痛めないコツと注意点】 起き上がりの介助は腰痛の原因になりがちです。腰痛を防ぐコツと注意点を紹介します。 足を広げて、重心を低くする。 腕の力や背筋の一部ではなく、全身の大きな筋肉を使う。力で動かそうとするのではなく、てこの原理を利用したり、体重移動で動かす。 水平移動、平行移動を心がけ、体を変な方向にねじらないようにする。 介助用ベッドを使用しない場合 ベッドから車いすに移乗する ベッドから車イスに移動する場合、少しでも自分で動ける場合はトランスファーボードの使用がおすすめです。全介助の場合はスライディングシートを使う方法もあります。 トランスファーボードを使った移乗 ベッドを車イスよりも5センチ程度高くし、ベッドに座ってもらう。この時、足の裏がしっかり床についているか確認。 車イスのアームバーは外しておく。 体を前に傾け、片方に体重をかけ、お尻を浮かせる。その隙間にトランスファーボードを差し込む。 骨盤を前傾させ、進行方向に体重を移動させる。 本人ができなければ、後ろから骨盤を持って移動を介助する。または、前から膝を押さえて移動を介助する方法もある。 ボードを抜く前に姿勢を直す。ボードを立てるようにして引き抜く。 これがコツ! 力まかせにしない!身体の自然な動きを考えよう。 動作と動作の間は、必ず1回止まってから! これから行う動作について、言葉で伝えることも大切! 【リフトで移動する福祉用具も上手に利用しよう】 持ち上げなければ移動が難しくなった場合、リフトを利用する方法もあり、介護者の腰痛防止にもなります。リフトにはベッド固定型、レール走行型、床走行型などがあり、目的、要介護者・介護者の状態、部屋の状況、費用などを考慮して選ぶことが大切です。 食事の介助 「食べること」は栄養をしっかりとることも大切な目的ですが、生きるうえでの大きな楽しみのひとつでもあります。加齢とともに噛む力や飲み込む力は低下しがちですが、食材選びや調理法をよく考え、楽しくおいしく食べられる工夫を心がけましょう。 気を付けたい「低栄養」と「過栄養」 高齢者で注意すべきポイントのひとつは「低栄養」です。低栄養とは身体に必要なエネルギーやたんぱく質などが不足している状態。それは噛めない、飲み込めない、偏食や食欲不振などにより食べる量が減る、また、あっさりした食事が中心で肉や卵、脂質が十分に摂取できていないことなどによって起こります。そしてもうひとつ注意したのは「過栄養」です。 加齢によりどうしてもエネルギー消費は低下し、過栄養となりがちです。過栄養は、肥満、脳卒中、心疾患を引き起こす要因にもなります。量よりも質を考えて、バランスのよい栄養を摂取することが大切です。 低栄養化どうかをチェック □最近、急に体重が減ってきた □食事がおいしいと感じない □食事はあっさりしたものが中心で、卵、肉はあまり食べない □脂っぽいもの、揚げものなどはあまり食べない □お菓子ばかり食べて、ちゃんとした食事をしていない □お酒とおつまみで食事を終えている □食事は好きなものばかり食べている □歯や歯茎が痛くて食べられない 食べる環境を整える 生活にメリハリをつけるためにも、食事はベッドから離れ、テーブルで食べるようにしたいもの。また、おいしく、楽しく食べるには姿勢も大切です。そのためにはテーブルやイス、食事の道具など、食べるための環境を整えることが重要です。そのポイントを紹介しましょう。 【注意したいポイント】 ・寝たままでの食事は、誤嚥の危険性あり!できるだけ上体を起こすように。 ・食器は手の届くところに置きましょう。 ・テーブルに置かれた食器と口との距離が遠い場合は、食器の下に台を置きましょう。 ・こぼしやすい場合には、ナプキンやタオルを。 【介護用の食器、道具をうまく活用しよう】 食事は使い慣れた食器、道具を使えれば良いのですが、つかみにくい、使いにくいなど、食べることがめんどうになってしまっては本末転倒。柄や色がきれいなものも増えていますので、介護用の食器、道具を上手に取り入れましょう。 食事をするときの姿勢 ・イスと背もたれの間にクッションなどを入れ、身体を安定させる ・姿勢は、イスの背にもたれず、少し前かがみがよい ※イスの背にもたれて食べると、食べ物が気管に入りやすくなるので注意 ・テーブルは、座ったときに肘をつけられる高さに調節する ・イスが高く、足が床に届かない場合は、雑誌や新聞などを重ねて置き、その上に足を置くようにすると安定する これはやっちゃダメ 食べるのが遅かったり、手が震えてこぼしたりしているのを見ると、つい、食べさせてあげたくなってしまうもの。でも、自分でできることは自分でしたほうが本人の機能維持にも役立ちます。自分のペースで食べられるよう、見守ることが大切です。 誤嚥を防ぐ  食事の介助でとくに気をつけたいのは「誤嚥」です。「誤嚥」は飲み込んだ食べ物が、食道ではなく気管に入ってしまうこと。肺炎や窒息の原因にもなりかねません。注意するポイントを紹介しましょう。 【誤嚥を防ぐためのポイント】 ポイント 1 ゆっくり噛んで食べるようにする。噛む力が落ちている場合、食材を細かくきざむ、すりつぶした状態にするなどの工夫をする。 ポイント 2 水のようにサラサラとしたものは誤嚥しやすい。食べ物にとろみをつける、すぐに飲み込まないで、一度、口の中にためてから飲み込むようにする。 ポイント 3 食べたものが逆流する場合もある。食後1〜2時間は上体を起こした姿勢にする。 嚥下体操 舌を出したり、引っ込めたりする。それを3回くらい繰り返す。 舌で左右の口角をさわるようにする。これも3回くらい繰り返す。 首をゆっくり左右に曲げる。3 回繰り返す。 顔をゆっくり左右に向ける。3 回繰り返す。 最後に唾をゴクンと飲み込んでみる。 出典)『今スグ役立つ!よくわかる!家庭の介護ハンドブック』(鎌田ケイ子監修、新星出版社) 食事中の事故への対応 食事中、急に元気がなくなり息が荒くなった、何を聞いても答えない、けわしい表情をしている、咳が止まらない…などの状態が見られたら誤嚥の可能性があります。その場合は次のように対処しましょう。 ・口を下に向ける。 ・口を大きく開き、咳や痰と一緒に吐き出すように促す。咳やむせを我慢させない。タオル やティッシュを渡して、咳や痰を吐くのを遠慮しなくてよいようにするという配慮も。 ・大きな咳払いを数回するように促す。 調理の工夫 飲み込む機能が低下している場合、選ぶ食材や調理法を工夫することによって、食べやすくすることができます。ただし、食べることは楽しみのひとつ。例えば、魚の場合は魚の形のままお皿にのせ、本人が食べやすい大きさを確かめながら、本人の前で切り分けるようにすることも一案です。 【嚥下障害のある人が食べにくいもの】 ・ベタベタと粘り気のあるもの  例)もち、団子 など ・水分がなくてパサパサとしたもの  例)パン、クッキー、ゆでたまご、のり など ・固くて噛み切りにくいもの  例)タコ、イカ、厚切りの肉、ゴボウ、寒天 など 【嚥下障害のある人が食べやすいもの】 ・のどごしがよいもの  例)ゼリー、プリン、卵豆腐、茶碗蒸し など ・とろみのあるもの  例)おかゆ、カレー、シチュー など ・口の中で、バラバラになりにくいもの  例)うどん ・適度な水分、油分が含まれているもの 飲み込みにくい症状のほか、「むせやすい」「口の中が乾いている場合」など、その人の状態によって食べやすいもの、食べにくいものがあります。避けたほうがよいものを挙げましょう。 ◎むせやすいとき  酢の物、麺類(すすって食べるのでむせやすい)  細かくきざんだもの ◎口の中が乾いているとき  パン、クッキー、ゆでたまご など 排泄の介助 排泄の介助は、介護する人にとっても介護される人にとっても精神的、肉体的に大きな負担になりがちなケアです。介護される人の尊厳を保ちつつ、介護する人の負担を軽減するためにも、適切な介助のポイントを心得ておきましょう。 トイレ介助のポイントとは? 「排泄」はデリケートな問題です。排泄の機能が正常で、トイレまで歩行や車イスによって移動が可能な場合は、できるだけトイレで排泄が行えるようにします。そのためには、トイレの環境を整え、トイレまで行きやすいようにすることを考えましょう。 一方、身体が不自由でベッドから動くことができない、排泄障害があるという場合は、排泄用 具を適切に選んで使用することを考えます。 排泄障害とは? 排泄障害とは、排便、排尿に関して、何らかの問題がある症状をいいます。具体的には「尿失禁」「便秘」「下痢」などの症状が挙げられます。「尿失禁」は加齢によって尿道を締める筋肉が弱まり、くしゃみやお腹に力を入れることで尿漏れを起こしてしまう、尿意が大脳に伝わらずに漏れてしまう…などのケースがあります。 「下痢」は神経性のもの、アレルギー性のもの、細菌によるものなど、さまざまな原因が考えられます。それぞれの原因によって適切な対応が必要です。「便秘」は加齢により腸の働き、腹筋などが弱くなることによって起きやすくなります。また、食事や水分、あるいは運動が少ないことでも起きやすくなります。 負担を軽減するために環境を整備する トイレまで行きやすいようにする環境整備 自力歩行ができる、車イスや介助があればトイレまで行けるという場合は、トイレまで行きやすくするための環境を整えましょう。下図に示すような点がポイントです。 トイレ内の環境整備 トイレの中で、立ったり、座ったりしやすいようにすることが大切です。例えば、下図に示すような点に気をつけましょう。 排泄用具を使う ポータブルトイレを使用する場合 ベッドから起き上がることはできるけれど、トイレまで行くことがむずかしい場合は、ポータブルトイレをベッドサイドなどに用意し、使用するとよいでしょう。 ・ひとりでズボンや下着を下ろせない場合、自分に寄りかかってもらい下ろしてあげる。あるいは、壁や手すりにつかまり立ってもらい、後ろから脱がせてあげる。 ・自分に寄りかかってもらい、抱きかかえるようにして便座の中央に座らせる。 ・ひとりで排泄ができる場合は、便座に身体が安定して座っているのを確認したら、カーテンや衝立などで囲い、排泄中はプライバシーが守れるようにする。排泄が終わったら声をかけてもらうようにする。 ベッド上で排泄する場合 腰のあたりに防水布を敷き、肛門の中央にくるように差し込み便器をあてがう。腰を浮かせることができない場合は、本人に横向きになってもらい、便器をあてて、仰向けになってもらう。 女性の場合は、尿が飛び散らないように、トイレットペーパーを股の間に挟んでおく。あらかじめ便器の中に2〜3枚、トイレットペーパーを入れておくと後始末がしやすい。 排便が終わったら陰部の洗浄をする。便器を取るときは、腰を浮かせることができる場合、声がけをして腰を上げてもらう。上げられない場合は、本人の膝を片方の手で手前に倒すようにして横に向ける。このとき、便器のふちをもう片方の手で押さえるようにすると、排泄物がこぼれない。 ここがポイント 陰部の洗浄は手際よく。尿でおむつが汚れた場合、 汚れたおむつの上でシャワーボトルにお湯を入れ て陰部を洗い流します。 便の場合は、ウェットティッシュで便を拭き取り、新しいパッドを敷いてから洗浄するとよいでしょう。 おむつの交換 まったく動けない、尿意がない、尿もれの量が多いなどの場合は、おむつの使用を考えます。使用する人の状態、尿の量、使用する時間帯、ベッドで過ごす時間の長さ、介助する人の負担などを考えて選びます。 おむつの種類 ・テープ式おむつ 寝たきり、あるいは介助があれば起き上がれる人の場合。 ・パンツタイプおむつ 介助があれば座れるが、昼間の排泄は主におむつでするという人の場合に使用する。中に尿取りパッドを重ねるとよい。介助があれば立てる、トイレまで行ける、ポータブルトイレで排泄ができるという人の場合も、パンツタイプのおむつを単体で使用する。心配な場合は、尿取りパッドを併用する。 ・軽失禁パッド 尿もれはあるが、量が少ない人 の場合に使用する。 【ニオイが気になるとき】 汚物は、確認したら手早く処理する。 部屋の換気も忘れずに。 差し込み便器、尿器、ポータブルトイレなどに、 あらかじめニオイを防ぐ薬剤などを入れておく。また、時間をおくとニオイがとれなくなるので、こまめに洗浄する。 使用済みのおむつは小さく丸め、テープで止めてから処理する。フタ付きの容器を使用するなどしてニオイを防ぐ。 消臭剤、脱臭剤などを活用する。 ここがポイント 排泄介助を受ける人は、恥ずかしい気持ち、申し訳ない気持ちを持っていることが多いもの。おむつ交換のときは、腰のあたりをバスタオルで覆うなどの配慮を。そして、作業は手早くすることが基本です。 パンツタイプのおむつ交換 テープ式おむつの交換 入浴の介助 入浴は身体を清潔に保つだけではなく、血行を良くしリラックス効果もあるため、介護される人にとっては楽しみのひとつです。しかし、急激な温度変化が身体に負担をかけたり、浴室内での転倒は大きなケガにつながる恐れもあります。つねに安全を保つよう、十分に配慮しましょう。 安全な環境づくり 【入浴をする前に気をつけること】 ・体調の確認をする(体温、脈拍、血圧、顔色、 呼吸数などをチェック。心配な点がある 場合は、取りやめる判断も大切)。 ・食前・食後の1時間は避ける。 ・お湯の温度を確認する。適温は40度ぐらい。 心臓病、高血圧がある場合は40度以下に。 ・入浴は体力を消耗するので、入浴時間は10〜 15分程度に。 ・すべり止めマットを敷くなどして転倒しないように気をつける。 ここがポイント ・あらかじめ浴槽のフタを開けておく。 ・温水のシャワーを流すなどして、浴室を前もって温めておく。 ・バスボードには、あらかじめお湯をかけておくとヒヤッとしないですみます。 ・浴槽内は浮力があるので、姿勢が不安定になる恐れがあります。頭が後ろにいくとバランスが崩れるので、足の裏を浴槽の壁に当ててもらいます。また、両手で風呂のふちを持ち、前かがみの姿勢になってもらうと安定します。 浴槽に入るときの介助 浴槽の横にシャワーチェアを置いて座ってもらう。片マヒがある場合、マヒのない側から入ってもらうようにする バスボードに腰を移す。介助する人は腰を支え、腰を回転させながら、片足ずつ湯船の中に入れる。 バスボードに腰を移す。介助する人は腰を支え、腰を回転させながら、片足ずつ湯船の中に入れる。 ! 出るときは逆の動作で。マヒした側を先に出すことになるので、介助する人は気をつけること。 湯船に入れないときは、シャワー浴や足浴も シャワー浴 浴槽に入れない場合や浴槽に入ると体力を消耗する場合など。 シャワーイスに座ってもらう。お湯を張ったバケツを用意し、足を入れてもらう。 肩、腰にタオルをかける。 シャワーのお湯は、手足にかけてから胴体へ。石けんで洗う場合、手が届く範囲は本人に。届かない部分は介助する。 足浴 お風呂まで行けず入浴できない場合、ベッドサイドでもできる。 バケツ、または洗面器にお湯を張る。 防水マットかタオルを敷き、その上にお湯を張ったバケツ・洗面器を置く。 足を入れてもらう。 身体の清潔のための介助 洗髪や洗顔、着替えなど、身体を清潔に保つための介助は衛生面だけではなく、介護される人にとって、さっぱりとした気持ちで心地よく過ごすためにもとても大切なケアです。上手なコツを覚えて、できるだけこまめなケアを心がけましょう。 洗顔(ベッドから起きることができない場合) 目頭から目尻に向かって拭く。 額と頬を顔の内側から外側に向かって拭く。 鼻は上から下に向かって拭く。鼻のわきも内側から外側に向かって拭き取るように。 口のまわりを円を描くように拭く。 ※仕上げに熱めの蒸しタオルを当てるとさっぱりする。 ※しわとしわの間、耳、あごの下も忘れずに。 ※耳の中もときどき掃除を。綿棒に植物油をつけて掃除をすると、耳垢がやわらかくなり掃除しやすい。 【蒸しタオルのつくり方】 タオルを水でぬらして軽く絞ってからポリ袋に入れて電子レンジで加熱(加熱時間の目安はハンドタオル1本の場合500Wで30秒程度)。相手の身体に当てる前に、必ず自分の手に当てて熱さを確かめましょう。 洗髪(ドライシャンプー) ケープをかけたり、タオルなどで肩から下を覆う。 蒸しタオルを1本用意し、頭部を覆う。 1〜2分蒸した後、ドライシャンプーを髪につけ、頭皮をマッサージするように洗う。 蒸しタオルでシャンプーを拭き取る。これを何度か繰り返す(頭部を蒸しタオルで蒸すのは最初だけでOK)。 最後に、乾いたタオルでよく拭き取る。 ブラシで整髪する。 ベッドから移動できない場合の洗髪は、用意する道具も多く大変です。通常は、入浴サービスのときに行うのがよいでしょう。家族が洗髪を行う場合は、お湯で流す必要のないドライシャンプーが手軽でおすすめです。 全身を拭く〜清拭〜 室温は22〜24度ぐらいにしておく。拭き始める前に、熱い蒸しタオルで身体を包み、温める。タオルの温度は43度ぐらいが適温。 仰向けになってもらい、顔→両腕→首〜胸〜腹→両足の順に拭いていく。手は指先から心臓に向かって拭く。指の間、脇の下も忘れずに。お腹は強く押さえず、下腹部は「の」の字を書くように拭く。 横向きになってもらい、背中→腰→臀部を拭く。背中は円を描くように、下から上に向かって拭く。臀部は、外側から円を描くように内側に向かって拭いていく。背中、腰、臀部は褥瘡(床ずれ)ができやすいので、マッサージも兼ねて拭くように心がけるとよい。 もう一度、仰向けになってもらい、足のかかと→下腿部→太もも→陰部を拭く。膝の後ろは汚れやすいのでていねいに拭く。 最後に乾いたタオルで水分を拭き取る。 ※拭いている部分以外は寒くないよう、また羞恥心を感じさせないよう、タオルで覆っておくとよい。 口腔ケア 口の中は雑菌が繁殖しやすい環境なので、朝と食後には、必ずケアを行いましょう。むし歯や歯周病を防ぐことはもちろん、繁殖した菌を食べ物、あるいは唾液と一緒に誤嚥し、肺炎を発症するリスクを減らすという目的もあります。 入れ歯の場合 毎食後外して、ブラシでしっかり水洗いをする。研磨剤が入っている練り歯みがきは使用しない。外すときは下から、装着するときは上から先に入れる 寝たまま行う口腔ケア 片側にマヒがある場合、マヒしている側に食べ物のカスが残っていることがあるので、割り箸にガーゼを巻いたものなどを用意し拭き取るようにする。 イスに座って行う口腔ケア 介護される人が上向きになると、あごが上がり、誤嚥の恐れがある。介護される人があごを引く姿勢になるように、介助する人は立つ位置を調節する。 介護される人の歯を磨くときは角度や方向などがむずかしく、少し時間がかかります。そんなときは短時間で上手に磨ける電動歯ブラシがおすすめです。また、使用する介護者にとっても楽な姿勢でブラッシングができ、腰痛などの予防にもなります。 介助される人が寝た状態でのシーツ交換 介助する人が立つ側と反対側に転落防止柵を立てる。介助される人には、介助する人と反対側のベッドの端に移動してもらう ベッドの手前側から、古いシーツをはずし、扇子折りにして介助される人の下に入れていく。 シーツをはがしたマットレスを掃除したら、その上に新しいシーツを広げ、マットレスと角を合わせてマットレスを包み込む。反対側の端は古いシーツの下に入れ込む。 手前の転落防止柵を上げてから、介助される人に新しいシーツの上に移動してもらう。古いシーツをはずし、マットレスを掃除してから新しいシーツを広げ、同じように角を合わせてマットレスを包み込む。 ここがポイント 新しいシーツが敷けたら各コーナー部分を持ち、対角線の方向に引っ張るようにするとしわが伸びます(シーツは角にゴムが入ったものを利用すると便利です)。 マットレスの掃除は、ガムテープを使うとほこりを立てずにゴミを取ることができます。 介助する人が腰を痛めないように、ベッドの高さを調整してから作業するとよいでしょう。 着替え ズボンをはかせる(寝たきりの場合) 仰向けになってもらい、扇子折りにしておいたズボンを足に通す。片足ずつ、かかとを支え、ひざまでズボンを上げる。 片手でズボンのすそをくるぶしの位置で押さえ、もう片方の手でズボンを足のつけ根まで引き上げる。反対側も同じように。 ひざを立て、ハの字になるように両足を開いてもらう。お尻の下に手を入れ、ズボンの後ろの中心線に沿って扇子折りにする。 介助される人に足でベッドを踏み込んでもらい、腰を浮かせる。その間にズボンをお尻の側から引き上げる。踏み込めない場合はひざをくっつけ、足のつま先の方に押すと腰を浮かせることができる。 座れる人の場合は、49ページで紹介した「パンツタイプのおむつ ! 交換」と同じ要領でズボンをはかせる。 服を着替えることは生活にメリハリをつけるためにとても大切です。寝ている間にも人はかなり汗をかくもの。着替えを行うことでベッド周りも清潔に保つことができます。なお、片マヒがある場合は、マヒのある側から着て、マヒのない側から脱ぐのが原則。マヒのない側がズボンやシャツなどに通っていない方が、動きが制限されにくいためです。 前あきのシャツを着る(寝たきりの場合) 袖を扇子折りにし、介助する人の腕に通してから介助される人と握手をするようにして袖を通し、肩まで上げる。 介助する人に背中を向ける姿勢で横になってもらい、シャツの中心線と背骨を合わせる。反対の身ごろを体の下に入れる。 介助する人の側に顔を向けてもらい、体の下に押し込んだ部分を引き出す。❶と同じように、袖に手を通す。 腕が通ったら仰向けになってもらい、ボタンを留める。両脇の下の部分を足の方向に斜めに引っ張ると、背中側に寄ったしわが伸びる。 【ここがポイント】 着替えは、マヒがあったり認知症だったりする場合、動作がゆっくりになりがちです。つい手伝いたくなることもありますが、時間がかかっても、本人ができたり、やる気があれば、できるだけ本人にやってもらうことが基本です。ボタンを留めたりする動作はリハビリにもなるので、必要以上に手伝わないことも大切です。 老老介護・認認介護 日本では、配偶者の介護をする高齢者夫婦や、年老いた子がより高齢の親を介護するというような高齢者が高齢者の介護を行うケースが増えています。65歳以上の要介護者を 65歳以上の人が介護している場合を、いわゆる「老老介護」といいます。 厚生労働省の「令和元年国民生活基礎調査」によれば、老老介護は 59.7%と介護全体の 5割を超えています。老老介護の増加は介護者と要介護者がともに高齢化しているためです。 主な介護者は配偶者で、全体の約4分の1を占めています。介護の担い手が高齢の場合は、経済的、肉体的な負担はもちろん、精神的にも大きなストレスを抱えてしまうことが多く、「生活の質」の維持が心配されます。 また、さまざまな事例がある老老介護の中には、認知症の高齢者を介護する高齢者自身が認知症になり、適切な介護ができなくなる「認認介護」もあります。この場合は、第三者による早急なケアが必要です。いずれにせよ、老老介護を続けるにはひとりで抱え込まないことが大切です。 介護者自身の健康を守るためにも、周囲の人に頼ったり、身近な公的機関を活用することが必要です。最近では、介護者や要介護者を支える在宅サービスの整備も進んできています。介護で困ったときは、地域包括支援センターに相談しましょう。 常駐しているケアマネジャーや保健師などの専門家から適切なアドバイスや支援策を受けることができます。必要に応じて、レンタル用品やデイサービスなどの介護サービスの情報提供もあります。相談する際は、介護の悩みや気づいたことなどを書いたメモを持参することが大切。専門家の視点により、問題を解決する方法が見つかる可能性が高くなります。 出典)一般社団法人日本保健情報コンソシウム発行 『介護をする家族のための介護と保健ガイドブック』より引用

  • 介護保険制度<介護と保健ガイドブック(2)>

    <介護と保健ガイドブック>介護保険制度

    制度の概要 介護保険制度について 高齢による身体機能の衰えや、病気やケガなどによって介護が必要となったときには、介護サービスを提供する公的介護保険制度を利用することができます。新たな社会保険制度として平成12 年4月にスタートしたもので、介護が必要な人とその家族をできる限り社会全体で支えるための公的なサービスです。 介護保険は自治体が保険者となって制度を運営しています。40歳以上の人が被保険者となって保険料を負担し、介護が必要と認定されたときに介護サービスを利用する仕組みです。 介護保険では、利用者がサービスの種類や事業者を選ぶことができます。利用料は利用限度額の範囲内であれば、1割(一定以上の所得者の場合は2割あるいは3割*)の利用者負担で介護サービスを受けることができます。 ※詳細は本記事内「2021~2023年度の主な改正内容」を参照ください。 必要な介護サービスを受けながら、住み慣れた地域で安心してその人らしい生活を実現していくために、上手に利用していきましょう。現在、介護サービスの基盤強化のために、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム*」の構築に向けた取り組みが進められています。 ※詳細は「家族を介護する必要が生じたなら…<介護と保健ガイドブック(1)>『地域包括ケアシステム』を参照ください。 介護サービスを利用できる人は? 公的介護保険の介護サービスは、介護保険に加入し保険料を納めている被保険者の内、下図の条件を満たし要介護認定を受けた人が利用できます。なお、実際に介護サービスを利用する場合は、介護サービス事業者との契約が必要になります。また、介護保険料額は、居住地域や被保険者の所得によって各自異なります。 申請方法から要介護認定までの流れ 介護サービスを受けるには 介護サービスを受けるには、要介護認定の申請が必要です。要介護認定とは、介護を必要としている人が「どの程度の要介護状態、要支援状態にあるか」を判断するものです。保険者である市区町村が調査を行い、要介護度を判定します。家族を介護する必要を感じたら、申請の手続きをしましょう。 介護保険の申請方法 相談できる窓口 介護される人が居住の市区町村役場の窓口(介護保険課など)で申請を行います。申請時は、申請書、本人の介護保険証(40〜64歳の特定疾病の人は健康保険証)と個人番号(マイナンバー)の確認ができるもの、主治医意見書を依頼するための主治医の情報、印鑑などが必要です(※詳細は自治体に要確認)。 主治医の情報は、申請書に主治医の名前・医療機関名・所在地などを記入します。主治医がいない場合は役所に相談し、高齢者医療に理解がある医師を紹介してもらいましょう。申請は家族が代理で申請することもできます。「地域包括支援センター」で申請の受付や代行も可能なので、所在 を確認して相談しましょう。 訪問調査 申請後、本人のもとへ市区町村の「認定調査員」(指定居宅介護支援事業者などに委託していることが多い)が訪れ、心身の状況などについて聞き取り調査(認定調査)を行い、その結果および主治医意見書に基づくコンピュータ判定(一次判定)を行います。 介護認定審査会 一次判定データは、市区町村に設けられた介護認定審査会にかけられ、保健、医療、福祉の専門家などが一次判定、訪問調査の結果と主治医意見書を基に、どの程度の介護が必要かを全国一律の基準により審査します。 要介護・用支援の認定 申請日から30日以内に「認定通知書」と「被保険者証」が届きます。要介護度区分に合わせて、ケアマネジャーが介護サービスの利用計画(ケアプラン)を作成していきます。 《主治医意見書について》 主治医意見書は、医学的な見地から認知症の有無や在宅介護で必要な配慮や介護の中身について、主治医が記入する書類です。主治医には、要介護者の普段の様子を把握している内科、老年内科、神経内科、整形外科などのかかりつけ医が適任です。区分の判定時に大きな影響を及ぼしますので、普段から主治医とのコミュニケーションを図っておきましょう。 要介護認定(要介護度の判定) 要介護認定について 要介護認定は、「非該当」と介護保険の対象となる「要支援1・2」「要介護1〜5」に区分されます。区分によって、受けられるサービスや利用限度額が異なります。要介護度認定は、どのくらい介護を必要としているかを判断するもので、本人の病気の重さと要介護度の重さが必ずしも一致しない場合があります。要介護認定の判定に不服がある場合は、再認定を要求することができます。 認定ごとの状態とサービス 非該当(自立) 歩行や起き上がりなどの日常生活上の基本的動作を自分で行うことが可能。薬の内服、電話の利用などの手段的日常生活動作を行う能力もある状態。社会的支援がなくとも生活ができる状態。介護保険を利用することはできないが、65歳以上であれば、市区町村で開催している一般介護予防事業に参加することができます。また、地域包括支援センターで基本チェックリストを用いた審査を受けることによって事業対象者と判定された場合には、介護予防・生活支援サービス事業を利用することができます。 要支援1・2 身体上または精神上の軽度の障害があるために、6か月継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態。訪問看護や福祉用具のレンタル・購入などのサービスが利用できる。 要介護1~5 身体上または精神上の障害があるために、6か月継続して、日常生活における基本的な動作の全部または一部について常時介護を要すると見込まれる状態。在宅あるいは施設入所での介護サービスを利用することができる。 図:要介護状態の区分(心身の状態の一例) ケアプランを作成する ケアプランを作成 要介護認定の通知を受け取ったら、ケアプラン(サービス利用計画書)を作成します。ケアプランは「これからどのような生活を送りたいか」という目標を設定し、その目標達成のためにどんなサービスをどれくらい使うかを計画するものです。ケアプランは、民間業者である「居宅介護支援事務所」に所属する介護支援専門員であるケアマネジャーに依頼して作成してもらうことができます。 介護サービスを利用するには、このケアプランの作成が必要になります。ケアマネジャーは、毎月1回以上に自宅を訪問し、利用者の希望を聞き、症状の変化に合わせてケアプランを作成、変更してくれます。家族は、本人の普段の様子や家族の要望などを伝えましょう。なお、ケアプラン作成には利用者負担はありません。 セルフケアプランという方法 ケアプランは、ケアマネジャーに依頼して作成してもらうケースがほとんどですが、自分でも作成することができます。複雑なサービスをコーディネートする必要がない場合などは、利用する本人が各種の介護サービスを自ら選択して調整したケアプラン(いわゆるセルフケアプラン)を作成することが可能です。セルフケアプランはあらかじめ市区町村に届け出て、認められた場合に介護保険の給付が受けられます。 図:ケアプラン作成の流れ 介護サービスの種類 サービスの種類(在宅・施設・地域密着型) 介護保険で利用できる介護サービスは、介護を受ける場所によって、大きく3つのスタイルに分けることができます。ひとつは自宅で生活しながら利用できる在宅サービス、もうひとつは施設に入所して受ける施設サービスです。さらに、在宅と施設の両方で受けられる地域密着型サービスもあります。 在宅で利用できるサービス 住み慣れた自分の家で受けられる在宅サービスには、「訪問」「通所」「宿泊」の3つの柱があり、これに福祉用具貸与など、その他のサービスを組み合わせます。サービスを利用することで介護する側とされる側、両方の負担が軽減されます。 訪問系サービス ・訪問介護 訪問介護事業所のヘルパーが自宅を訪問。身体介護や生活援助など日常生活のサポートを受ける ・訪問リハビリテーション 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訪問。自宅で機能回復訓練を受ける ・訪問入浴介護 専用浴槽や巡回入浴車で、入浴時のバイタルチェックも含め自宅での入浴をサポート ・居宅療養管理指導 医師や歯科医師、薬剤師などの専門家が自宅を訪問。指導やアドバイスを受ける ・訪問看護 看護師や保健師などの専門家が自宅を訪問。かかりつけ医の指示に合わせた医学的な世話や処置を受ける 通所系サービス ・通所リハビリテーション ・通所介護(デイサービス) 日帰りで施設に通い、食事や入浴など、日常生活上の介護や機能訓練などを受ける 短期滞在系サービス ・短期入所生活介護(ショートステイ) 短期的に施設へ入所し、日常生活の介護や機能訓練などの介護を受ける ・短期入所療養介護(医療型ショートステイ) 短期的に施設へ入所し、必要な医療を受けつつ日常生活の介護や機能訓練などを受ける 福祉用具をレンタル・購入するサービス 住宅の一部を改修したり、必要な福祉用具をレンタル・購入することで在宅での介護環境を整える ➡介護用品の支給や貸与(詳細はこちら) ➡住宅改修費の支給(詳細はこちら) 施設・居住系サービス ・特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、ケアハウスなど) 介護が必要になった場合に、指定を受けた有料老人ホームなどの施設(自宅扱い)に入居したまま介護サービスを受ける 施設を利用できるサービス 介護保険制度で利用できる「施設サービス」には、さまざまな種類や入居の条件があります。専門家による介護を受けられることや、緊急時にも安心できる対応など、多様なニーズに応えています。 介護老人保健施設 老人保健施設、いわゆる「老健」。病状が安定期にあり、入院治療の必要はないが介護や医療を必要とする人を対象に、家庭復帰に向け介護、医療ケア、リハビリテーションを行う施設 介護老人福祉施設 特別養護老人ホーム、いわゆる「特養」。常に介護が必要で在宅介護が困難と認められた人のための生活施設。入浴、排せつ、食事などの介護、そのほかの日常生活上の世話、機能訓練、健康管理および療養上の世話を行う施設 介護療養型医療施設 病院または診療所であり、要介護者のために必要な医療などを提供する長期療養施設。療養病床などに入院する人に、療養上の管理、看護、医学的管理下での介護やケア、リハビリテーションなどの機能訓練、そのほか必要な医療を行うことを目的とする施設 介護医療院 長期療養が必要な人を対象とした施設で、2018年に創設。長期療養のための日常的な医学管理や看取り、ターミナルケアなどの医療機能と、日常生活上の世話(介護)を提供する生活施設としての機能を兼ね備えた施設。プライバシーに配慮した環境整備などが特徴 特定施設 該当する施設は、有料老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)、養護老人ホーム、有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅。入居者を対象に特定施設入居者生活介護(日常生活上の世話や機能訓練、療養上の世話)が受けられる。特定施設入居者生活介護の指定を受ける特定施設を「介護付きホーム」という 地域密着型サービス 認知症高齢者や一人暮らしの高齢者が要介護状態になっても、できる限り住み慣れた地域で生活が継続できるように支援を行うサービスです。在宅と施設利用の両方のサービスがあり、地域密着で介護を支えます。居住している市区町村が提供しているサービスを利用することができます。 在宅サービス ・定期巡回、随時対応型訪問介護・看護 日中・夜間を通じて1日に複数回の定期訪問と随時対応を受けられる ・小規模多機能型居宅介護 日帰りの施設へのデイサービス、ショートステイ、訪問の3つのサービスを組み合わせて利用。自宅での生活の支援を受けられる ・看護小規模多機能型居宅介護 訪問看護と小規模多機能型居宅介護を組み合わせた、介護と看護を一体的に利用できるサービス。施設への「通い」を中心に、短期間の宿泊や訪問介護、訪問看護を利用者のニーズに応じて組み合わせて利用することができる。かかりつけ医との密接な連携のもと、医療行為も含めた多様なサービスが24時間365日受けられる ・夜間対応型訪問介護 夜間に定期的に自宅を訪問。おむつの交換やトイレ介助の支援を受けられる ・認知症対応型通所介護 日帰りで施設に通い、認知症に対応した介護や支援を受け、機能訓練を行う 施設サービス ・認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 認知症の高齢者が9人以下の少人数で入居し、入居者同士の交流など家庭的な雰囲気の中で共同生活をしながら、入浴や食事などの介護や支援、機能訓練などを受けられる 生活環境を整えるサービス 福祉用具貸与(レンタル) 加齢や疾病などで身体機能が低下した際、歩行器や車椅子などが必要になります。介護保険では、ケアプランで必要とされている福祉用具に限り1割(一定以上所得者の場合は2〜3割)負担でレンタルすることができます。担当のケアマネジャーに相談して、福祉用具の利用を検討しましょう。レンタル料金は、その他の介護サービス提供費用と合算して計算されます。 レンタルできるもの ・手すり ・歩行器 ・車いす ・特殊寝台(介助用ベッド) ・床ずれ防止用具 ・認知症老人徘徊感知機器 ・自動排せつ処理装置 ・スロープ ・歩行補助つえ ・車いす付属品 ・特殊寝台付属品 ・体位変換機 ・移動用リフト 特定福祉用具の購入 直接肌に触れるシャワーチェアなど、レンタルに不向きなものは購入する必要があります。「特定福祉用具」に定められているものであれば、1割(一定以上所得者の場合は2〜3割)負担で購入できます。費用の限度額は年10万円(毎年4月1日から翌年3月31日まで)。10万円を超えた額については全額自己負担となります。また、同じ種目の用具の再購入は、用途や機能が異なる場合や破損した場合には可能です。 購入できるもの ・腰掛け便座 ・自動排泄処理装置の交換可能部品 ・入浴補助用具 ・簡易浴槽 ・移動用リフトの釣り具の部分 住宅改修 在宅で介護をする際に「バリアフリーにしたい」「段差を解消したい」「手すりをつけたい」という要望が出てきたら、要介護者がより安全・快適に生活できるよう住宅改修を検討しましょう。保険給付の対象となる住宅改修費の支給があり、利用が可能です。費用の限度額は20万円で、自己負担は1割(一定以上所得者の場合は2〜3割)。 費用を支払った後に、市区町村から給付費分が支給される、いわゆる「償還払い」が一般的です。要介護度が3段階以上重くなった場合や引っ越しした場合は、再度申請が可能です。 2021~2023年度の主な改正内容 今回の見直しの背景 介護保険制度は円滑に保険給付を実施していくため、3年ごとに見直しを行い、介護保険事業計画を策定、運営しています。新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中で、2021年度からの制度改正が施行されました。 今回の見直しでは、日本の人口構造の急速な変化を見据えた対応がとられています。現在は75歳以上の高齢者の急増が目立ちますが、2025年以降には局面が変化し、現役世代の急減が予想されます。それは介護保険事業の支え手が減少していくことを意味します。高齢人口がピークを迎える2040年には、介護サービスの需要の増加が予想されます。 また、各地域の高齢化の状況は異なるため、利用者数の増減など個々の特性に 沿った対応も必要です。こうした状況に対応できるよう、3年に1度の見直しが行われています。 今期の改正のポイント 介護サービスを利用するうえで関わりの深い改正項目について、見ていきましょう。高齢化が進むなかで、負担の公平性と制度の持続可能性を高めるために、それぞれの状況に応じた負担を求める見直しが行われました。 介護保険施設における負担限度額の見直し 令和3年8月から、介護保険施設(介護老人保健施設、介護老人福祉施設、介護療養型医療施設、介護医療院)や短期入所施設(ショートステイ)を利用する際の食費・居住費の助成制度が変更になりました。食費・居住費については自己負担が原則ですが、低所得の人への助成(補足給付)を行い、食費・居住費の負担が軽減されています。今回の改正で、助成の認定要件および食費の負担限度額が変更になりました。 『認定要件の変更』では、単身・夫婦それぞれの預貯金額が変更になりました。今回の変更により補足給付の対象外となる場合も、預貯金額が減少して認定要件を満たしたときは申請することで負担軽減の対象となります。負債(借入金・住宅ローンなど)は、預貯金額から差し引いて計算します。預貯金等に含まれるものがある場合は、申請書に預貯金や負債額を記載して、必要な書類を添付します。その後、保険者が必要に応じて金融機関などに照会を行います。預貯金等に含まれるものは以下の①〜⑤になります。 ①預貯金(普通・定期)は、通帳などの写しで確認(インターネットバンクであれば口座残高ページの写し) ②有価証券(株式・国債・地方債・社債など)は、証券会社や銀行口座残高の写しで確認(ウェブサイトの写しも可) ③金・銀(積立購入を含む)など購入先の口座残高によって時価評価額が把握できる貴金属の確認は、購入先の銀行などの口座残高の写しで確認(ウェブサイトの写しも可) ④投資信託は、銀行、信託銀行、証券会社などの口座残高の写しで確認(ウェブサイトの写しも可) ⑤現金は自己申告。なお、預貯金等に含まれないものは、生命保険、自動車、腕時計、宝石といった時価評価額の把握が難しい貴金属、絵画、骨董品、家財などになります。 また、不正に受給した場合には、それまでに受けた給付額に加え、最大2倍の加算金(給付額と併せて最大3倍の額)の納付を求められる場合があります。『食費の負担限度額の変更』では、施設入所者、ショートステイに対する助成が見直されました。 年金収入など一定額以上の収入や預貯金がある人は、食費の負担額が変更になりました。平均的な食事の費用額(基準費用額)は、1日1,392円から1,445円に変わりました。居住費の負担限度額は変更ありません。生活保護受給者や老齢福祉年金受給者等(第1段階)の負担限度額は、食費・居住費ともに変更ありません。 高額介護サービス費の負担限度額 介護サービスを利用した際は、自己負担割合に応じた利用料を負担しています。1か月に支払った利用料の合計が負担限度額を超えた場合は、高額介護サービス費として差額分が払い戻されます。 負担限度額は一般的な所得の人は月額44,400円です。令和3年8月から、医療保険の高額療養費制度の負担上限額に合わせて、負担限度額が見直され一部変更になりました。対象になるのは一定年収以上の高所得者で、介護サービスの利用者または同一世帯に課税所得380万円(年収約770万円)以上の65歳以上の人がいる場合です。 それ以外の市区町村民税非課税世帯の場合は、負担上限額に変更はありません。また、医療費や介護サービス費ともに高額で、高額介護合算療養費制度(年間の医療費・介護サービス費が負担限度額を超えた場合に払い戻しを行う制度)による払い戻しを受けている人の場合は、収入や介護サービス費などに変更がなければ、実質的な負担額は変わりません。 知っておきたい今期の見直し 介護報酬は0.7%引き上げ 法改正とともに、3年ごとに介護報酬改定が行われています。2021年4月に施行された改定では2期続く引き上げとなり、全体で0.7%のプラス改定となりました。そのうちの0.05%は、新型コロナウイルス感染症に対応するための経費として、2021年9月末までの半年間、介護サービス事業者を支援するものでした。 介護報酬とは、介護サービス事業者が利用者に、介護保険が適用されるサービスを提供した際に支払われる費用です。介護事業者は利用者からサービス費用の1割(原則)を受け取り、自治体に残りの9割分を請求、介護報酬が支払われます。介護報酬は利用者の状況やサービス提供体制に応じて、サービスごとに設定されています。介護報酬の引き上げによって利用者の負担額が増えるサービスもあり影響があります。 介護職員の賃上げがスタート 介護人材の確保は、介護保険制度を持続していくうえで非常に重要です。介護職員の離職防止・定着促進を図ることは喫緊の課題です。そのため介護の現場では、介護職員の処遇改善や職場環境の改善に取り組んでいます。 処遇改善については「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(2021年11月19日閣議決定)に基づいて、2022年2月から9月までの間「介護職員処遇改善支援補助金」により、収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための措置が実施されます。10月分以降については、臨時の報酬改定を行い、収入を引き上げるための措置を講じる方向で調整が行われています。このほか、介護現場を革新するために、テクノロジーの活用や人員基準・運営基準を緩和することで業務を効率化し、負担の軽減を目指しています。 遠距離介護 離れて暮らす親の介護が必要になったときは、電話やビデオ通話などを使ってコミュニケーションを密にし、親の健康状態などに気を配ることが大切です。親の要介護度が進んだときには、食事介助やトイレ介助などの身体介護を誰がどのように担うのかといった問題が生じてきます。介護のために子どもが親元に戻るか親を呼び寄せるか、そんな悩みを抱える人も出てきます。親の介護に直面する世代は、40〜50代の働き盛りが中心です。 現在、介護を理由とする離職者が年間約10万人を超えています。国は、一億総活躍社会を実現するため、必要な介護サービスの確保や働く環境の改善、家族への支援を行い、介護離職ゼロを目指しています。育児・介護休業法で定められているのが「仕事と介護の両立のための制度」です。この制度を利用することによって、介護を行う期間だけでなく、仕事と介護が両立できる体制を整えるための期間にも介護休業を取ることが可能です。 介護保険サービスを受けるための準備期間への活用で、家族の介護をしながら仕事を続ける体制づくりが行えます。制度の内容には、通算して93日まで休業でき、休業前の賃金の67%が支給される「介護休業制度」、介護休業や年次有給休暇とは別に、時間単位で休暇の取得ができる「介護休暇制度」、短時間勤務や時差出勤が可能になる「介護のための短時間勤務等の制度」、残業を免除する「介護のための所定外労働の制限」があります。※ 育児・介護休業法は2021年に改正され、2022年4月から施行されます。雇用形態にかかわらず育児・介護休業を容易に取得できるよう、有期雇用労働者について「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件が廃止されます。なお、労使協定を締結した場合は、雇用期間が1年未満の人は対象から除外されます。 ※育児・介護休業法に関する相談窓口:都道府県労働局雇用環境・均等部(室) 出典)一般社団法人日本保健情報コンソシウム発行 『介護をする家族のための介護と保健ガイドブック』より引用

  • 家族を介護する必要が生じたなら...<介護と保健ガイドブック(1)>

    <介護と保健ガイドブック>家族を介護する必要が生じたなら…

    介護保険の利用を考える そろそろ介護が必要? 両親が高齢になってきた、離れて住む高齢の親がひとりで暮らしている、などという人は、 介護のことが身近な問題として気になり始めるのではないでしょうか。 高齢による身体機能の衰えや、認知症などの病気やケガなどにより介護が必要となったときには、介護サービスを提供する公的な介護保険制度を利用することができます。 家族や親族の高齢化により気になることが増えてきたら、介護保険の認定申請についてそろそろ考えたほうがよい時期かもしれません。 ☑「要介護」はここをチェック! □ 高齢者のみの世帯である □ 外出したがらない □ 歩行が困難になってきた □ よくつまずくようになった □ 食事の量が減っている □ 視力や聴力が衰えてきた □ 起き上がりや立ち上がりが難しい □ 入浴や排せつ、食事での介助が必要 □ 衣服の着脱で手伝いが必要 □ 物忘れやひきこもりなどの行動がある 介護に関して利用できる制度、サービス 介護をする側の心構え 自立支援を目指して 病気や障害、高齢のために家族を介護する必要が生じたなら、日常生活における起き上がり、移動、食事、排泄や入浴など、身体的な支援だけではなく、精神的な支援も必要です。介護をするうえで、どんな方針を立てて取り組めばいいのかをよく考えて実行していきましょう。 介護される人の多くは、住み慣れた地域や住まいで暮らし続けたい、可能な限り自宅で暮らしたいと願っています。自分で立てたスケジュールに沿って日常生活を営み、起床や就寝時間も自分の都合や体調に合わせ、食事も自分の自由にできる暮らしがしたいのです。 つまり、生活全般にわたってできるだけ長く「その人らしく暮らしていくことができる」ように支援の仕方を考えていくことが大切です。介護が必要な人の尊厳を保ちながら生活の質を高め、できるだけ自立した生活ができるように、押しつけではなく寄り添うような支援をすることが介護の基本になります。 介護をする際は、精神的な満足度や価値観の尊重、社会参加など、その人がその人らしくあるために望むことが可能な限りできているかどうかを、ときどきチェックしてみましょう。また、介護をする人がなるべく無理をせず、負担がかかりすぎないようにすることも大切です。 すべての重荷をひとりで背負い込まず、周囲に介護を頼める人がいれば遠慮をすることなくお願いし、利用できるサービスがあれば積極的に活用していきましょう。大切なことは、介護についての手続きや知識、役立つ情報などをよく調べ、自身の健康や生活面を犠牲にせず済むように工夫することです。 コミュニケーション、団欒を大切に 介護が必要になると特別な献立が必要になったり、食事に時間がかかることなどから、介護される人はひとりで食事を済ますことが多くなりがちです。ひとりきりの食事は味気なく、食欲の減退につながります。 食事の時間は食べることを楽しむ時間であるばかりでなく、家族と一緒の時間を過ごすことができる大切な時間です。本人が家族の一員であることが実感できるように、食事はできるだけ一緒にとるようにしましょう。 コミュニケーションを心がけることで、介護される人であっても楽しみや生きがいをもって生活することができます。ときにはお茶を飲みながら、昔の思い出話や相手が好きな話題についておしゃべりしたり…。そうした団らんの時間を持つことが、とても大切です。 別居していたり、施設へ入居している場合には、日々の忙しさに紛れてコミュニケーションがおろそかになりがちです。定期的に訪問することが難しい場合は、電話をかけて会話をしたり、介護をしてくれている人に積極的に連絡を取りましょう。 1日に5分でも電話で家族の声を聞くだけで「自分のことを気にかけてくれている」と、介護される人も喜んでくれるはずです。介護が必要な人は、思うように動けないことで、不安や寂しさを感じながら日々を過ごしています。そんな中で「自分を支えてくれる家族の存在」があれば、心強く感じて安心することができるのではないでしょうか。 介護者の役割分担 リーダーの下で介護を 多くの人が望んでいるのが、介護が必要になっても、住み慣れた自宅や地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けたいということです。その望みを実現するには、家族などの協力が欠かせません。 兄弟や配偶者、子ども、友人などの協力者がチームを組むことや、介護サービスを上手に利用していくことが求められます。 介護が必要な人の最も身近にいる人が介護のリーダーになることで、スムーズな介護を行うことができます。ケアマネジャーや介護事業所への連絡や家族の話し合い、介護サービスの依頼や管理、介護に必要なお金の出し入れなどを、リーダーになる人が責任を持って行いましょう。 介護分担はより具体的に決める 少子化や核家族化、晩婚化、共働きなどにより、家族を取り巻く状況はさまざま。また、子どもの教育費がかかる、住宅ローンを組んでいるなど、介護を担う側もいろいろな事情を抱えています。介護費用のことや介護内容、今後のことなどについて、よく話し合っておくことが大切です。 それぞれの役割分担や協力体制について、具体的に決めておきましょう。遠くに住んでいて介護の手助けができない場合には、金銭的負担をしたり、時間がとれる週末だけ介護を受け持ったり、毎日の電話による安否確認などを担当しましょう。自分にできること、できないことを率直に話し合って分担していきます。不公平感のない分担を目指すことが大切です。 協力者を考える かかりつけ医、地域の連携病院 普段から風邪や腹痛などで診てもらっている身近なかかりつけ医は、気軽に相談できる存在です。既往歴や現在の疾患、生活実態などを把握したうえで、健康管理のアドバイスもしてくれます。かかりつけ医の多くは入院設備を持たないクリニック(医院)で、検査などが必要になれば、入院設備を持つ一般病院や高度な治療を行う専門の病院の紹介も可能です。緊急時には往診もしてくれる体制があると、より安心です。 公的支援サービス どのようなサービスが利用できるのか、居住地の市区町村役場に積極的に問い合わせてみましょう。介護保険制度によるサービスを受けるには、要介護認定の申請を行います。そのほか、介護保険制度以外の各自治体独自の福祉サービスもあります。 民間支援サービス 有償ボランティア団体が提供するサービスなど、さまざまな民間支援サービスがあります。家事代行や配食などのサービスを活用することで、介護の負担を減らすことができます。 ご近所や地域の力も借りて 介護をする人もされる人も、親しいご近所の人の存在は心強いものです。気持ちのよいおつきあいが継続できるよう、隣り近所の人たちに声をかけ、普段からコミュニケーションを心がけるようにしましょう。また、地域によっては、ゴミ出しや見守りなど、ちょっとしたサービスを行っていることがあります。老人クラブや自治会、ボランティア、NPOなどの情報を集め、自治会や民生委員など相談しやすいところへ積極的に声をかけ、利用できるサービスを探しましょう。 介護の環境づくり 将来の介護を担う地域包括ケアシステム 高齢者など介護や医療が必要な人へ、切れ目のない介護・医療サービスを提供するための「地域包括ケアシステム」。その内容を充実させるための取り組みが各自治体で進められています。 地域包括ケアシステムにより、住まい・医療・介護・生活支援・介護予防が一体的に提供され、要介護となっても住み慣れた地域で暮らしを続けることが可能になっていきます。今後、増加が見込まれる認知症高齢者の生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築は重要です。このシステムは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(中学校区)を単位として構築することとされています。 地域包括ケアシステムの取り組み 各自治体によりその進み度合いは異なりますが、主に次の❶〜❺のサービス構築が推進されています。 受けられるサービス ❶医療との連携強化 ・24時間対応の在宅医療、訪問看護やリハビリテーションの充実強化 ・介護職員による痰(たん)の吸引などの医療行為の実施 ❷介護サービスの充実強化 ・特養などの介護拠点の緊急整備 ・24時間対応の定期巡回・随時対応サービスの創設等在宅サービスの強化 ❸予防の推進 ・要介護状態にならないための予防の取り組み ・自立支援型の介護の推進 ❹見守り、配食、買い物等多様な生活支援サービスの確保や権利擁護等 ・一人暮らしや高齢夫婦のみの世帯の増加、認知症の増加を踏まえ、さまざまな生活支援(見守り、配食などの生活支援や財産管理などの権利擁護)サービスを推進 ❺高齢期になっても住み続けることのできる高齢者住まいの整備(国土交通省・厚生労働省連携) ・一定の基準を満たした有料老人ホームと高齢者専用賃貸住宅を、サービス付高齢者住宅として高齢者住まい法に位置づけ 一人暮らしの人への介護 住み慣れた地域で「要介護2」までなら、必要なときに手を貸してもらえば一人暮らしを続けることはそれほどむずかしくはありません。日中なら、ホームヘルプサービスやデイサービスを利用していれば人の出入りもあります。 しかし、さまざまな介護サービスの利用が必要になると、「家の中で転んでケガをして起き上がれなかったら、誰にも気づいてもらえないのではないか」といった不安が大きくなってきます。 要介護度が重度化して「要介護3」になると、「一人暮らしの限界」となります。個人差はありますが、一般的には「ひとりでトイレに行けなくなる」と、一人暮らしは厳しくなると考えられます。しかし、施設ではなく、可能な限り住み慣れた環境の中で今までと変わらない生活を続けたいという願いを持つ人は多く、昨今、居住型サービスへの関心が高まっています。 そして、そのような背景から在宅に「365日・24時間の安心」を届けることのできる新しい在宅介護サービスの仕組みが注目されています。その内容は、日中の通いや一時的な宿泊、夜間や緊急時の訪問サービス、介護スタッフが居住するといった「通う」「泊まる」「訪問を受ける」「住む」などの複数のサービスが、介護が必要な人や家族の要望に応じて提供されるというものです。 要介護者の心身の状態を継続的に把握しているスタッフによって継続的なサービスの提供が行われることにより、本人の「在宅で過ごしたい」という希望をかなえることが可能になります。このような切れ目のないサービスを利用者の生活圏域で行うには、一体的・複合的に提供できる小規模・多機能サービス拠点が整備されていくことが必要です。 出典)一般社団法人日本保健情報コンソシウム発行 『介護をする家族のための介護と保健ガイドブック』より引用

  • 老齢年金とは?受給要件や年金額、請求手続きについて解説

    老齢年金とは?受給要件や年金額、請求手続きについて解説

    老齢年金は、老後の生活を支える重要な収入源です。公的年金に加入している人は、一定の年齢に達すると老齢年金を受け取れます。老齢年金はどんな仕組みで、いくら受け取れるのでしょうか。 この記事では、老齢年金の受給要件や年金額、請求手続きについて詳しく解説します。 老齢年金とは 老齢年金とは、公的年金制度の加入者だった人に対して老後の保障として給付される年金です。原則65歳から支給開始となり、一生涯受け取れます。ただし、保険料納付済期間と保険料免除期間などを足した資格期間が10年以上あることが受給要件となります。 老齢年金は、加入していた年金制度により、国民年金の「老齢基礎年金」と厚生年金保険の「老齢厚生年金」の2種類が支給されます。 老齢基礎年金 老齢基礎年金は、国民年金もしくは厚生年金保険や共済組合等に加入していた人が受け取れます。20歳から60歳になるまでの40年間の国民年金加入期間などに応じて年金額が計算されます。 国民年金保険料を納付した期間のほか、会社員として厚生年金に加入していた期間や保険料の免除を受けた期間も年金額の計算に含まれます。 原則65歳から受給開始ですが、60歳から75歳の間で受給開始年齢を選択する「繰り上げ受給」や「繰り下げ受給」も可能です。 老齢厚生年金 老齢厚生年金は、会社員や公務員など厚生年金保険や共済組合等に加入していた人のみが対象です。厚生年金加入時の報酬額や加入期間などに応じて年金額が計算されます。老齢厚生年金も原則65歳から受け取ることができ、老齢年金と同様に「繰り上げ受給」や「繰り下げ受給」も可能です。 老齢年金の受給要件(資格期間) 老齢年金を受給するには、10年以上の資格期間が必要となります。資格期間とは、以下3つを合計した期間のことです。 保険料納付済期間 保険料免除期間 合算対象期間 国民年金保険料を納めた期間や厚生年金加入期間はもちろん、国民年金保険料の免除や納付猶予を受けた期間も資格期間に含まれます。厚生年金加入期間は、加入した月から加入をやめた日(退職日の翌日など)の前月までの月単位で計算します。 合算対象期間は、海外在住者が国民年金に任意加入しなかった期間、または任意加入したが保険料を納付しなかった期間などが該当します。保険料免除期間や合算対象期間は資格期間の対象にはなりますが、年金額には反映されない点に注意が必要です。 老齢年金の年金額 老齢年金の年金額は、老齢基礎年金と老齢厚生年金で異なります。 老齢基礎年金は、保険料の納付状況に応じて年金額が決定され、20歳から60歳の40年間の保険料をすべて納めると、満額の年金を受け取れます。令和5年度(2023年度)の年金額(満額)は年795,000円(月66,250円)です。 老齢厚生年金は、「報酬比例部分」と「定額部分」の合計が年金額となります。 報酬比例部分は、平均報酬月額に一定の給付率と加入期間の月数を乗じて計算します。定額部分は「1,657円×被保険者期間の月数」で計算します。ただし、昭和31年4月1日以前に生まれた方は、1,652円となります。老齢厚生年金は基本的に収入が高く、加入期間が長い人ほど年金額は増えます。 令和3年度(2021年度)の老齢年金受給者の平均年金月額は、国民年金の56,479円に対し、厚生年金は145,665円です。 厚生年金加入者は同時に国民年金の加入者でもあるため、65歳から老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取れます。国民年金のみの自営業者に比べて、厚生年金に加入する会社員の年金額は手厚い傾向にあります。 出典)厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況P8、P20」 老齢年金の請求手続き 老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取るには請求手続きが必要です。手続きの流れは下記のとおりです。 「年金請求書」が自宅に届く 「年金請求書」を年金事務所や市区町村に提出する 「年金証書」「年金決定通知書」などが自宅に届く 1~2ヵ月後に年金の受け取りが開始される 老齢年金の受給権が発生する年の誕生月の約3ヵ月前に、日本年金機構などから年金請求書が届きます。必要事項を記入して、受給開始年齢の誕生日の前日以降に提出しましょう。 提出先は、年金加入期間が国民年金のみの人は住所地のある市区町村、それ以外の人は最寄りの年金事務所です。 請求時には、戸籍抄本や住民票などの添付書類が必要です。同封されているパンフレットを確認し、添付書類を準備しましょう。年金請求書の提出から1ヵ月程度で年金証書や年金決定通知書が届き、その約1~2ヵ月後に年金の受給が開始されます。 年金の請求をせず、年金を受けとれるようになったときから5年を過ぎると、5年を過ぎた分の年金については時効により受け取れなくなる恐れがあるので、注意しましょう。 出典)日本年金機構「年金の時効」 繰り上げ受給と繰り下げ受給 老齢年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、希望すれば65歳より前に年金を受け取る「繰り上げ受給」、受給開始を65歳より後に受け取る「繰り下げ受給」も選択可能です。 繰り上げ受給は60歳から65歳の間に請求でき、「繰り上げた月数×0.4%」の年金額が減額されます。たとえば、60歳時点では最大で24%の減額となります。年金を早く受け取れますが、減額された年金額は生涯変わらない点に注意が必要です。 繰り下げ受給は65歳から75歳の間に請求でき、「繰り下げた月数×0.7%」の年金額が増額されます。たとえば、70歳時点では42%、75歳時点では84%の増額となり、増額された年金は生涯変わりません。65歳以降も一定の収入があり、当面は年金なしでも生活できるなら、繰り下げ受給を利用して年金額を増やすのも選択肢の一つでしょう。 関連記事はこちら老齢年金の繰り上げと繰り下げ、どっちがお得? 在職老齢年金 在職老齢年金とは、60歳以降に厚生年金に加入して働きながら受け取る老齢厚生年金のことです。給与や賞与の額と老齢厚生年金の額によっては、年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。 老齢厚生年金(比例報酬部分)の月額である「基本月額」と、給与や賞与をもとに計算する「総報酬月額相当額」の合計が48万円を超えると、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となります。 なお、「老齢基礎年金」は支給停止の対象外で全額支給されます。 まとめ 老齢年金は10年以上の資格期間が受給要件で、原則65歳から受け取れます。日本年金機構などから年金請求書が届いたら、忘れずに手続きを行うことが大切です。状況に応じて、繰り上げ受給や繰り下げ受給も検討しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 夫婦の老後資金はいくら必要?足りない時の対処法も紹介 「人生100年時代」や「老後2,000万円問題」などに起因して、「老後資金」という言葉が注目を集めています。老後破産に陥らないためにも、夫婦で必要な老後資金を把握し、なるべく早くから準備して...

  • 公的年金の仕組みとは?国民年金・厚生年金の基礎知識を解説

    公的年金の仕組みとは?国民年金・厚生年金の基礎知識を解説

    公的年金は、国民が安心して日常生活を送るために不可欠な制度です。老後だけでなく、病気・ケガで障害が残ったときや加入者が死亡したときも給付を受けられます。老後生活に備えて公的年金の仕組みについて理解を深めておくことが大切です。 この記事では、公的年金の概要や受け取り方、注意点などの基礎知識を解説します。 公的年金の仕組み 公的年金とは、国が運営する年金制度です。日本では、20歳以上60歳未満のすべての人が公的年金に加入する「国民皆保険」を採用しています。 公的年金は、現役世代が支払った保険料を高齢者などの年金給付に充てる「世代間扶養」が基本です。保険料収入を基本財源とし、そこに国庫負担金(税金)を組み合わせる「社会保険方式」によって、安定的に年金を給付できる仕組みになっています。 公的年金は国民年金と厚生年金の2種類 公的年金は、「国民年金」と「厚生年金」の2種類があります。 国民年金 国民年金とは、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する公的年金です。自営業や無職の人などは国民年金の保険料を自分で納める必要があります。 厚生年金 厚生年金とは、会社員や公務員が加入する公的年金です。厚生年金加入者は同時に国民年金の加入者でもあります。厚生年金保険の被扶養者は、勤務先などの事業主が支払いを行うため、年金の加入者が保険料を直接納めることはありません。 公的年金の受け取り方は3種類 公的年金は老後だけでなく、障害や被保険者の死亡も給付対象です。具体的には、「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3種類があります。それぞれの内容は以下のとおりです。 老齢年金 老齢年金とは、公的年金の加入者が一定の年齢に達したときに一生涯受け取れる年金です。 国民年金は、受給資格期間が10年以上ある場合に65歳から老齢基礎年金が支給されます。年金額は保険料の納付状況によって計算され、40年間(20~60歳)の保険料をすべて納めると満額の老齢基礎年金を受け取れます。 厚生年金では、65歳から老齢基礎年金に上乗せして厚生老齢年金が支給されます。そのため、老齢基礎年金の受給資格があることが要件です。年金額は厚生年金加入時の報酬額や加入期間などに応じて計算されます。 関連記事はこちら老齢年金とは?受給要件や年金額、請求手続きについて解説 老齢基礎年金と老齢厚生年金は、どちらも受給開始年齢の「繰り上げ」や「繰り下げ」が可能です。繰り上げは、受給開始を60~65歳に早めることで年金額が減額されます。繰り下げは、受給開始を66~75歳に遅らせることで年金額が増額されます。 関連記事はこちら老齢年金の繰り上げと繰り下げ、どっちがお得? 障害年金 障害年金とは、病気やケガなどで生活や仕事が制限される場合に受け取れる年金です。国民年金からは「障害基礎年金」、厚生年金からは「障害厚生年金」が支給されます。年金額は、保険の種類や障害の程度、家族構成などによって変わります。 障害基礎年金は、以下のすべての要件を満たしているときに支給されます。 障害の原因となった病気・ケガの初診日が以下のいずれかに該当する 1. 国民年金加入期間 2. 20歳前または60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間 障害の状態が障害等級1級または2級に該当する 被保険者期間のうち3分の2以上の納付済み期間があること 障害厚生年金は、以下のすべての要件を満たしているときに支給されます。 障害の原因となった病気・ケガの初診日が厚生年金保険の被保険者である間 障害の状態が障害等級1級から3級に該当する 被保険者期間のうち3分の2以上の納付済み期間があり、直近1年以内に未納がないこと 出典)※詳細はこちら(日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」)をご確認ください。 遺族年金 遺族年金とは、公的年金の被保険者(または被保険者だった人)が亡くなったときに、その人に生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。年金額は、保険の種類や家族構成などによって変わります。遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。 遺族基礎年金では、「子のいる配偶者」と「子」に遺族基礎年金が支給されます。子は18歳到達年度の3月31日まで(または20歳未満で一定の障害状態にあること)が条件です。 遺族厚生年金の場合は、「①配偶者・子」「②父母」「③孫」「④祖父母」のうち、優先順位が最も高い遺族に遺族厚生年金が支給されます。もし亡くなった人に配偶者や子がいなければ、第2順位の父母が受け取ります。 公的年金の被保険者の分類 公的年金の被保険者は、働き方によって以下の3つに分類されます。 第1号被保険者 第1号被保険者は、自営業者や学生など国民年金のみに加入する人です。国民年金保険料は、納付書や口座振替を利用して自分で納めます。令和5年度(2023年度)の1ヵ月あたりの保険料は16,520円です。 第2号被保険者 第2号被保険者は、会社員や公務員などの厚生年金加入者です。厚生年金保険料は、事業主と加入者で半額ずつ負担します。保険料は給与や賞与から天引きされ、事業主が納めてくれるので、納付手続きは不要です。 第3号被保険者 第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者(年収130万円未満)です。保険料は、配偶者が加入する年金制度が負担するため、個別に納める必要はありません。 公的年金の注意点 公的年金について、以下の注意点を把握しておきましょう。 保険料を納めなければ受給できない 年金の受給資格を満たすには、保険料を納めなくてはなりません。厚生年金は給与や賞与から天引きされますが、国民年金は自分で納めるので納付漏れがないように注意が必要です。 保険料を納めるのが難しい場合は、最寄りの年金事務所で免除や納付猶予について相談し、自己判断での未納は絶対に避けましょう。保険料の納付状況については、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。 関連記事はこちら「ねんきんネット」はこんなに便利!使い方を詳しくご紹介 自営業者は老齢年金が少ない 国民年金のみの自営業者は、会社員(厚生年金加入者)に比べて老齢年金が少ない傾向にあります。老後の生活資金に不安がある場合は、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「国民年金基金」などの私的年金に加入して年金額を増やすことを検討しましょう。 関連記事はこちら個人事業主などの自営業者は年金が少ない?年金対策も解説 まとめ 公的年金は老後だけでなく、病気やケガ、配偶者の死亡で仕事や生活が制限される場合にも給付を受けられます。ただし、保険料を納めていないと年金を受け取れないため、納付漏れのないように注意が必要です。 老後やもしものときに安心して生活できるように、公的年金への理解を深めておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 夫婦の老後資金はいくら必要?足りない時の対処法も紹介 「人生100年時代」や「老後2,000万円問題」などに起因して、「老後資金」という言葉が注目を集めています。老後破産に陥らないためにも、夫婦で必要な老後資金を把握し、なるべく早くから準備して...

  • シニアが自宅売却と物件購入を同時に実現する難しさ

    シニアが自宅売却と物件購入を同時に実現する難しさ

    定年退職や子どもの自立などによって、現役世代とはライフスタイルが大きく変化する高齢者世帯は多いのではないでしょうか。ライフスタイルが変化すると、より快適な家を求めて住み替えを検討するかもしれません。 そこでこの記事では、現在持ち家所有者である60歳以上の男女104名を対象に、住み替えに関するアンケートを実施した調査結果をご紹介します。 住み替えたい理由はリフォームでは対応できないから Q1. 住み替えたい理由を教えてください(複数回答可) 「建物の老朽化」と「間取りへの不満(広すぎる、狭すぎる)」がともに38%と、簡易なリフォームでは解決しにくい建物への不満であることがわかりました。これらの不満を解決するには建て替えや間取り変更を伴うリフォームが必要であるため、そういった手間や費用をかけるのであれば、自宅を住み替える選択をするのかもしれません。 住み替えで最も重視する点は利便性、最大の不安は資金面 Q2. 住み替えにあたって不安に感じることはありますか?(複数回答可) やはり「資金面」に不安を抱える方が最も多く、38%が不安を感じていました。次点は「荷物の整理・処分」で35%、「生活環境の変化」が30%と続いています。 Q3.住み替えで最も重要視するのはどこですか? 最も重視するのは「買い物、交通、病院などの利便性」の41%で他の選択肢を大きく引き離した結果となりました。シニア世代が普段の生活のしやすさを重視していることが分かります。一方で、住み替え先を選ぶ基準として、「家族との同居・近居」や「物件の資産価値」、「バリアフリー整備の充実」などの優先順位は低いようです。 約半数が住み替えの予定が立っていない、最大の理由は資金面 Q4. 実際に住み替える予定はいつですか? 「住み替え意向がある」にもかかわらず、「実際に住み替える予定は立っていない」人が45%となりました。「10年以内」というやや住み替えへの意識が低い方も含めれば、半数以上の人が住み替えへの目途が立っていないようです。 Q5. 住み替える予定が立っていないのはなぜですか? 住み替える予定が立っていない理由を見てみると、「希望に合う住み替え先がないから」が約半数という結果となりました。続いて、「住み替え費用が用意できないから」が36%となりました。 多くは住み替え先が見つからないためですが、資金不足が原因で積極的に情報収集に取り掛かれていないのかもしれません。なお、Q3でシニアが重視するのは圧倒的に利便性の高い物件でしたが、希望の利便性と購入可能予算内で物件を探すのは、シニアにとって非常に難しいことかもしれません。 住み替え資金を自宅の売却で考えるとハードルが高い Q6. 住み替えの費用をどのように捻出する予定ですか? 「自宅の売却」で住み替え費用を捻出しようとしている割合は約半数にのぼりました。 その一方、「住宅ローン」を利用しようとしている人はたった5%にとどまっています。 【考察】 一連のアンケートから、住み替え意向がある60歳以上の方の多くが、実際には”住み変えられない”という結果が得られました。約半数は希望に合う物件がないという理由でしたが、次いで資金面の課題が多いことがわかりました。 住み替え資金が用意できないという理由には、住み替え予算に自宅の売却資金を見込んでいることが原因でしょう。新居に自宅の売却資金を使うためには、新居の購入前に自宅を売却するか、購入と同時に自宅を売却することが一般的です。 上記のような一般的な売却を行うと、仮住まいが必要になってしまうこと、新居の選定か自宅の売却価格に妥協せざるを得ない場合があること、購入と売却のスケジュール調整が難しいことなど、いくつかの課題が発生します。これらがシニアの住み替えを難しくしている要因ではないでしょうか。 まとめ 住み替え意向がある60歳以上の人の約半数が、「実際に住み替える予定がない」という結果となりました。さらに、利便性を求めることで希望に合う住み替え先が見つからないほか、自宅の売却と住み替えの両立が難しいという理由で、住み替える予定が立たないことがわかりました。 資金面や仮住まいの問題のため住み替えが出来ないシニア世代の方々は、高齢者向けの住宅ローンであるリ・バース60やリースバックなどのサービス利用を検討してみましょう。既存のサービスでは実現出来なかった、スムーズで賢い住み替えができるかもしれません。 SBIシニアの住まいとお金で『住まいとお金ガイドブック』無料進呈中 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 老後の住まいはどうすべき?ポイントを徹底解説 老後に豊かな生活を送るには、ライフスタイルに合わせて住まいを選ぶ必要があります。しかし、住まいを選ぶ際には多くの選択肢があるので、どのように選べばよいかわからないのではないでしょうか。 老後...

  • 介護リフォームが必要な理由とは?費用の目安や利用できる補助金を紹介

    介護リフォームが必要な理由とは?費用の目安や補助金制度も紹介

    突然のケガなどによって介護が必要になる場面だけでなく、家族の中に高齢者がいると自宅のリフォームを検討するかもしれません。スムーズにリフォームを進めるには、事前に工事にかかる費用をある程度把握しておくことが大切です。また、利用できる補助金についても押さえておけば、いざというときに頼りになるでしょう。 この記事では、介護を行うために必要なリフォーム費用の目安や工事のポイントなどを解説します。 介護リフォームが必要な理由 介護を行うためにリフォームが必要な理由としては、被介護者を守るためだけでなく、介護者の負担を減らすためという点が挙げられます。介護を受ける側も行う側も気持ちよく過ごせる環境を整えるためには、必要なリフォームを実施することが大切です。 それぞれのポイントについて、さらに詳しく見ていきましょう。 被介護者を守るため 高齢者の視点から考えると家の中には階段や段差、お風呂場、トイレなど、ケガの原因となる場所が無数に点在しています。身体の状態にもよりますが、それまであまり気にならなかった小さな段差でも、つまずいて転倒につながるリスクは十分にあります。 介護が必要な状態といっても、その介護レベルは様々で、室内であれば問題なく自分で移動できるというケースも多いものです。そうした方にとっては、できるだけ自分の力で安心して行動できるような室内環境を整えることが、健康や自信を維持するためにも重要なポイントとなります。 上記のように、まずは「高齢者を守る」という観点から、バリアフリーを目的とした介護リフォームは重要です。 介護者の負担を減らすため 介護リフォームのもうひとつの目的は介護者側の負担をできるだけ減らすことにあります。介護を行うためには被介護者自身が快適と感じられるだけでなく、介護者にとってもサポートをしやすいと感じられる環境が求められます。 たとえば、被介護者の横について排泄のサポートをする場面を考えると、トイレには二人分のゆったりとしたスペースが必要です。十分な広さがなければ、介護者の身体に負担がかかるだけでなく、心理面においてもストレスを感じてしまう原因になります。 また、簡単に玄関や窓のカギが開かないような工夫をするなど、被介護者の安全を守る仕組みが、介護者自身の精神的な負担を軽減させてくれることもあります。そのため、介護リフォームを行ううえでは、介護者の目線からも快適と感じられる設計や工夫が重要です。 出典)「一般社団法人 住宅金融普及協会」 リフォームの需要は高齢者世帯に多い 介護リフォームについて考えるのは、ある程度の年齢を重ねてからとイメージされるでしょう。実際のところ、住宅におけるリフォームの需要は、若い世代よりも65歳以上の高齢者に多い傾向があります。 『住宅土地統計調査』(総務省・2018年)のデータによれば、2014年以降に増改築・改修工事などが行われた持ち家の件数901.4万戸のうち、施主が65歳以上のケースは532.9万戸であり、全体の60%近くを占めることがわかります。 一方で、65歳以上の高齢者が住む住宅2253万4千世帯のうち、一定水準のバリアフリー化が済んでいる世帯は955万6千世帯で、全体の42.4%とされています。 これらの結果から、リフォームの需要は加齢や築年数が古くなることに伴うが、介護に備えた「バリアフリー化」は思ったよりも進んでいないことがわかります。また、築年数が古いほどバリアフリー化率が低く、今後も介護リフォームの需要は高まっていきそうです。 出典)総務省「住宅土地統計調査」 介護リフォームにかかる費用相場 介護リフォームの費用は、どの部位を施工するかによっても大きく異なります。また、水回りの入れ替えを行う場合、新たに導入する設備のグレードによっても費用に大きな差が生まれます。 一般的な介護リフォームを行う場合、主な部位の目安金額は以下のとおりです。 リフォームを行う箇所費用の目安 洗面所の改装20~100万円 トイレ全体の改装20~100万円 システムバスへの交換60~150万円 手すりの設置1~20万円 廊下の改修20~100万円 和室→洋室(バリアフリー仕様)へ改装70~300万円 段差の解消(床のかさ上げ)8~20万円 合計額199~790万円 上記のように、介護リフォームに必要な費用の目安には一定の幅があります。ただ、国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査報告」(2012~2014年度)によれば、リフォーム工事の価格帯は、500万円未満が全体の80%程度を占めるとされています。 太陽光発電システムの導入や基礎から行う耐震補強のように、あまり大がかりな施工を依頼しなければ、通常のリフォームより費用が安く収まるケースも少なくありません。ただし、リフォーム業者によって費用は変わるため、必ず「相見積もり」をとって複数の会社を比較しましょう。 出典) ・国土交通省 部位別リフォーム費用一覧 資料5-2 ・国土交通省 軽微な工事(リフォーム工事等)に関する対応の検討 失敗しないための介護リフォームのポイントを紹介 介護リフォームで失敗しないためには、それぞれの工事箇所で見落としがちな点を細かくチェックすることが必要です。介護のためのリフォームは初めてという方もめずらしくないため、一つ一つ確認をしていきましょう。 玄関のリフォーム 玄関のリフォームで意識したいのは以下のポイントです。 出入りがしやすい(車椅子でも入れる) 靴を履いたり脱いだりするときに座る場所がある 手すりがある 雨の日でも滑らない 段差がない まずは間口の広さに着目し、車椅子でも問題なく出入りができるかをチェックしましょう。玄関口と廊下には段差が生まれてしまうのが通常のため、上り下りを補助するための台や手すりを設置することも大切です。 また、意外と見落としてしまいがちなポイントとして、床の材質が挙げられます。雨の日の転倒事故を防ぐために、濡れても滑りにくい材質を導入しましょう。 トイレのリフォーム トイレのリフォームで意識したいのは以下のポイントです。 出入りがしやすい トイレ内が広い 用を足しやすい スリッパを履かずに済む トイレは場合によって、被介護者と介護者が一緒に入る可能性もあります。そのため、二人同時に入るケースを想定して、出入りのしやすさやトイレ内の広さを確保することが大切です。 また、便座の高さや向き、ドアからの動線を考慮して、用を足しやすいつくりを心がけることも重要です。被介護者の状態によっては、身体の向きを変えるだけでも苦労してしまうことがあるため、体勢を変えずに利用できる設計を検討しましょう。 つまずき防止を考えて、スリッパを履く必要がない床材を導入するのもコツです。 お風呂のリフォーム お風呂のリフォームで意識したいのは以下のポイントです。 出入りがしやすい 濡れても滑らない 浴槽に入りやすい 段差がない お風呂もその他のスペースと同様に、まずは出入りのしやすさを考えることが大切です。浴室は特に転倒しやすいスペースなため、少しの段差でもケガにつながることがあります。 車椅子を使うことも想定して、脱衣所との段差はなるべく解消しておきましょう。さらに、転倒防止の基本として床材を滑りにくいものに変更するのも重要なポイントです。 また、お風呂においては、浴槽の高さに目を向ける必要もあります。またいだときの転倒リスクを軽減させるためにも、浴槽部分を少し掘り下げて、床との高低差を小さく抑えることが大切です。段差が小さければ、介護者も入浴サポートがしやすくなります。 階段のリフォーム 階段のリフォームで意識したいのは以下のポイントです。階段は転倒・転落などの事故が起こらないように、安全面に目を向けることが大切です。 手すりがある 滑り止めがある 段差がゆるやかである 階段昇降機が設置してある まずは、上り下りでしっかりと身体を支えられるように、手すりを設置する必要があります。滑りにくくつかみやすい太さ・形状を心がけ、とっさのタイミングでもすぐにつかまれるようにしておくと安心です。 また、床には滑りにくい材質を用いるとともに、へりに滑り止めの加工を行うことも大切です。上記2つの施工内容であれば、それほど費用をかけずに実現できるため、優先的に取り入れたいポイントといえるでしょう。 そのうえで、階段スペースの広さを十分に確保できるのであれば、段差をゆるやかに設計し直すのもひとつの方法です。傾斜を抑える分だけ、階段のスペースは広がってしまいますが、上り下りの負担を軽減する有効な手段となります。 さらに、費用にゆとりがあるなら被介護者を乗せられる階段昇降機を設置すると便利です。費用は高額になりますが、レンタルを行っている会社もあるため、選択肢のひとつとして考えてみてもいいかもしれません。 介護リフォームは介護保険の補助金を活用しよう 介護リフォームに取り組む際は介護保険から受けられる補助を活用することが大切です。費用の一部に充てられるため、必要な介護リフォームをスムーズに進めやすくなるでしょう。 以下では介護保険を利用してリフォームを行う流れを解説します。 介護保険の支給限度基準額 介護保険制度では要介護者などが一定の介護リフォームを行うときに、必要な手続きを行うことで一定金額の補助を受けることができます。具体的には、最大で20万円の限度額を基準に支給される仕組みです。 ただし、実際には改修費用の1~3割は自己負担となるため注意しましょう。なお、介護リフォームのうち、介護保険制度の対象となるのは以下の工事です。 手すりの取り付け 段差の解消 床や通路における滑り防止のための材料の変更 引き戸などへの扉の取り替え 洋式便器などへの便器の取り替え 上記5つの施工のために必要な工事 また、国の制度である介護保険とともに、自治体独自の取り組みもあります。制度の仕組みは自治体によって違い、介護保険と併用できるかどうかも異なります。 たとえば、東京都の場合は「住宅改善事業」という制度が設けられており、細かな仕組みや運用のルールは市区町村ごとに決められています。 出典)東京都 住宅改善事業 介護保険を利用してリフォームを行う流れ 介護保険の支給制度を利用するためには、決められた流れに沿って手続きを行う必要があります。リフォームの前に行う「事前申請」と施工後に行う「事後申請」のどちらも必要となるため、全体の流れをきちんと把握しておきましょう。 なお、助成金の支給が行われるのはリフォームの工事完了後になる点にも注意が必要です。 ケアマネジャーへの相談 介護リフォームを検討したら、まずは福祉センターのケアマネジャーにどのような介護リフォームが必要であるかを相談し、ケアプランを作成してもらいます。ケアマネジャーが作成する「住宅改修が必要な理由書」がなければ、支給の申請自体が行えないため注意しましょう。 市区町村への書類の申請 介護保険制度を利用する際は、市区町村にて工事前に申請する必要があります。申請には以下の書類が必要となります。 支給申請書 工事費見積書 住宅改修が必要な理由書 住宅改修後の完成予定の状態がわかるもの(日付入り写真や住宅間取り図など) 工事費見積書については金額の妥当性を確かめるためにも、複数の施工会社での相見積もりが推奨されています。ケアマネジャーによっては介護リフォームを得意とする施工会社を紹介してもらえることもあるため、不安な方は相談しておくといいでしょう。 施工の開始・完成 事前申請が終われば、施工会社による工事が実施されます。工事の期間は作業内容や範囲によっても異なるものの、介護保険における補助金の対象工事にはそれほど大規模なものはないため、比較的短いスケジュールで完成します。 工事費の支払い 施工が完了してからは実際の状態を確認し、プランとの差異がないかを確認します。そのうえで、問題がなければ工事費の支払いへと移ります。 このとき、リフォームの工事費用は一度自己負担しなければならない点に注意が必要です。支払い時に受け取る領収書は事後申請時に必要なため、きちんと保管しておきましょう。 介護保険の申請と改修費の支給 工事費の支払いが終わり、改めて市区町村に必要書類を提出すると、介護保険の正式な支給申請として取り扱われることとなります。このときに必要な書類は以下のとおりです。 住宅改修にかかった費用の領収書 工事費内訳書 完成後の状態を確認できる書類(改修前と改修後のそれぞれの写真など) 事前申請で提出された書類との確認や、適切な工事が行われたかの確認が終わると正式に申請が受理され、改修費が支給されます。 出典)厚生労働省 介護保険における住宅改修 まとめ 病気やケガなどで家族の介護が必要になったとき、介護リフォームを検討することもあるでしょう。大まかな費用相場を把握していれば、必要なリフォームを進めやすくなります。 介護保険をうまく活用してリフォームを進めることで、経済的な負担を軽減できるはずです。基本的な流れをきちんと押さえたうえで、介護リフォームを進めてみましょう。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リフォーム費用の相場と安く抑えるコツ 住み始めた頃は問題ないと感じていても、月日の経過に伴って住まいに不便さを感じる場面も出てきます。今後の生活を快適にするためには、リフォームを検討してみるのも選択肢の1つです。しかし、実際にリ...

  • シニアがリフォームする際のポイントや間取り事例を紹介

    シニアがリフォームする際のポイントや間取り事例を紹介

    年齢を重ねてくると、購入当時の住まいでは生活のしづらさを感じる場面が増えてくるものです。ライフスタイルに合った住環境を作るために、選択肢の1つとしてリフォームを考えることもあるでしょう。しかし、実際にリフォームを行うとなると、どこから手をつければいいか悩んでしまいがちです。 この記事では、シニア世代がリフォームを行うときのポイントや間取りの事例、活用できる制度などを詳しく解説します。 シニアがリフォームを行う際のポイント 50歳以降にリフォームを考えるときには、老後の暮らしを見据えた住みやすい間取りにすることを念頭に置く必要があります。特に子どもが独立してからは、間取りはシンプルなほうが暮らしやすいでしょう。 加齢に伴う身体機能の低下やバリアフリー、生活動線やライフスタイルなどの点から総合的に考えていく必要があります。以下ではリフォームを行う際にポイントとなる部分をそれぞれ解説します。 1.玄関 まず、玄関のリフォームで重要な点は、安全に出入りができるかということです。間口が狭い場合は、車椅子がスムーズに出入りできるように広げることも検討してみましょう。 玄関付近で気をつけておきたいのは、敷居や玄関のアプローチなどの段差でつまずく転倒事故です。できるだけ段差をなくすようにして、スロープを設けると安心です。また、安全に通行するために手すりを設置することも安心につながります。 2.水回り設備 浴室や脱衣所、キッチンやトイレといった水回り設備は転倒につながりやすい箇所でもあるため、特に注意が必要です。浴室や脱衣所はイスやシャワーチェアを置くスペースを確保できるかを確認しましょう。 まず、浴室の床は滑りやすいタイルなどは避け、なるべく滑りにくい素材に変更しましょう。また、浴室と脱衣所の間にある段差の解消や、ヒートショック対策として暖房器具を設置するなどの対策を行いましょう。 次に、トイレは手すりを設置して、立ち座りの負担を軽減することが大事です。また、出入りをスムーズに行えるように、ドアは引き戸にするほうがよいでしょう。 最後に、キッチンは戸棚の位置を低くして、座りながら調理できるスペースを設けてみると負担が減ります。ガスコンロからIHに切り替えて、火の不始末が起こらないような工夫もしてみましょう。 3.生活動線・段差 室内の移動はちょっとした段差でもつまずきやすいため、できるだけ段差を解消しましょう。夜間は足元が暗くなるため、フットライトを取り付けておくと安心です。 廊下には行き来をするときにつかまりやすいよう、壁に手すりを設けておきましょう。車椅子を使用するときは、廊下の幅が85~90センチメートルほどは必要になるため、通行の妨げになるものがないかをチェックしておきましょう。 4.リビングのレイアウト リビングはくつろぐための空間であるため、日当たりや風通しに配慮したリフォームを心がけておきましょう。リビングからトイレや寝室までの距離は短くするなど、生活動線を考えた間取りの配置を考慮しましょう。 また、テーブルや食器棚などの家具の配置にも気を配る必要があります。一人掛けのソファなど、後から移動させやすい家具を選んでおくとよいでしょう。すぐに目につくように、家具の色はメリハリのある色づかいのものを選ぶのも良いかもしれません。 5.空調・採光・周辺環境 高齢になると室内で過ごすことが多くなるため、部屋の換気や採光に配慮しておくことが大切です。部屋ごとの室温に大きな差がないか、窓の開け閉めをしやすいかなどをチェックしておきましょう。 また、外に出るときのことを考えて、道路や車庫に出るまでのルートが安全であるかもチェックしておく必要があります。段差の解消や手すりの設置、フットライトの取り付けなど基本的な部分を点検してみましょう。 間取りごとのリフォーム事例を紹介 一口にリフォームといっても、物件の種類によって適した間取りは異なります。戸建てやマンション、二世帯住宅などそれぞれのパターンで、具体的な間取りの事例を見ていきましょう。 事例1:2階建て以上の戸建て 2階建て以上の戸建ての場合は、1階に寝室を配置するとよいでしょう。寝室とトイレの位置をできるだけ近くして、生活動線を考えた間取りの配置を行うことが大切です。 玄関にはイスを置けるスペースを確保し、階段下を収納として活用すると便利です。リビングにいる家族の気配が感じられるように、間口を広くしたり対面型のキッチンにしたりすると安心です。また、2階に上がる階段は転倒防止のために、手すりや滑り止めを設けておきましょう。 事例2:平屋・マンション 平屋やマンションの場合は、壁を取り払って広めのLDKにするのも1つの方法です。トイレと脱衣所、浴室などの水回りを1箇所にまとめてシンプルな設計にしてみると、移動がラクになります。 玄関は各部屋までの移動距離が短くなるように、間取りの中央部分にあるほうが望ましいといえます。ベランダやバルコニーは、外との出入りがしやすいように縁側やウッドデッキなどを設けると、採光や換気の調整も行いやすくなります。 事例3:二世帯住宅 二世帯住宅の場合は、それぞれのライフスタイルやプライバシーの確保に配慮した間取りにすることが重要です。トイレは年配の方が利用しやすい位置に配置し、玄関までの移動距離を短くするのがポイントです。 和室を作る場合は、ベッドが置けるように一部をフローリングにしてみるとよいでしょう。広々とした階段ホールに改良するなどして、各世帯の独立性を維持しながらも、ふれあえる空間を設けておくと良いでしょう。 リフォーム工事に活用できる制度 リフォームを行うにはまとまった費用がかかるため、各種ローンだけでなく国や地方自治体が設けている補助金制度を有効活用することが大切です。どのような補助金があるのか事前に把握しておけば、リフォームの計画を進めやすくなるでしょう。 ここでは、3つの補助金制度についてポイントを紹介します。 介護保険法にもとづく住宅改修(高齢者住宅改修費助成制度) 介護保険は40歳からの加入が義務付けられている保険制度であり、要支援・要介護認定を受けたときに、介護費用の一部を支援してもらえる仕組みです。住宅改修費用についても介護保険の適用が受けられるため、負担の軽減につながります。 自己負担割合は1~3割と決められていますが、最大20万円までの補助が受けられます。補助金の支給は実際に工事を行って、業者に代金を支払った後で償還される仕組みであり、利用する際はあらかじめ住んでいる自治体に確認をしておきましょう。 対象となる工事は開口部・外壁・屋根・床などの断熱改修やエコ住宅設備(太陽熱利用システム・節水型トイレ・高断熱浴槽など)の設置、子育て対応改修やバリアフリー改修などです。 出典)介護保険における住宅改修 長期優良住宅化リフォーム推進事業 「長期優良住宅化リフォーム推進事業」とは、子育てに取り組みやすい生活環境の整備や住宅の長寿命化・省エネ化を推進するために行うリフォームに対して支援を行うものです。三世代同居対応改修工事や子育て世帯向け改修工事などの費用を支援してもらえます。 バリアフリー改修工事や高齢期に備えた住まいの改修工事なども対象となっており、幅広い用途で利用できる仕組みです。補助金の上限額は長期優良住宅の認定を受けない場合は最大100万円、認定を受ける場合は最大250万円となっており、工事費用の3分の1までが補助の対象となります。 出典)長期優良住宅化リフォーム推進事業 総合トップページ こどもみらい住宅支援事業 「こどもみらい住宅支援事業」は子育て世帯や若者夫婦世帯が高い省エネ性能を持つ住宅を取得したり、リフォームを行ったりするときの費用を補助する仕組みです。住宅の新規購入時は、省エネ性能に応じて60~100万円の補助を受けられます。 リフォームの場合は、すべての世帯を対象として最大30万円の補助金が交付されます。さらに、子育て世帯や若者夫婦世帯の場合、最大60万円まで上限が引き上げられるので活用してみましょう。 出典)こどもみらい住宅支援事業 まとめ 年齢を重ねてからも住みやすい環境を維持するには、必要に応じてリフォームを行うことが大切です。物件の種類によって間取りや生活動線などが異なるため、この記事で紹介したリフォームのポイントや事例などを参考にして、自分に合った住まいに作り変えてみましょう。 大がかりなリフォームになると、費用もそれなりにかさんでくるため、国が設けている補助金制度を上手に活用することが重要です。これから年を重ねていったときの暮らしをイメージしながら、早めに取り組んでみましょう。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リフォームとリノベーションの違いとは?費用の目安も解説 建物の改装を検討するときには、リフォームとリノベーションのどちらが適しているのかを見極めることが大切です。この記事では、リフォームとリノベーションの基本的な違いについて解説します。 また、施...

  • グリーンリフォームローンとは?利用条件やメリット、注意点を解説

    グリーンリフォームローンとは?利用条件やメリット、注意点を解説

    グリーンリフォームローンは、一定の基準を満たす省エネリフォーム専用のローン商品です。リフォームによって自宅の省エネ性能を高めれば、より快適な生活を実現できます。高齢者向けの返済特例もあるため、条件を満たせば高齢の方でも利用可能です。 この記事では、グリーンリフォームローンの概要やメリットと注意点、利用の流れについて詳しく解説します。 グリーンリフォームローンとは? グリーンリフォームローンとは、自宅の省エネリフォームに利用できるローン商品です。住宅金融支援機構が、令和4年(2022年)10月から取り扱いを開始します。 国は脱炭素社会の実現に向けて、住宅の省エネルギー性能の向上に取り組んでいます。既存住宅については、省エネリフォームの推進が不可欠です。そこで、既存住宅の省エネ推進を資金面から支援するためにグリーンリフォームローンが創設されました。 ローンは2種類 グリーンリフォームローンでは、リフォームの内容に応じて以下の2種類のローンが用意されています。 ローンの種類リフォームの内容 グリーンリフォームローン・省エネ基準を満たす断熱改修・省エネ設備の設置 グリーンリフォームローンS・ZEH基準を満たす断熱改修 いずれも、一定の基準を満たす省エネリフォームに対する全期間固定金利の融資です。省エネ性能を著しく向上させるリフォームには「グリーンリフォームローンS」が適用され、金利が引き下げられます。 ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House)の略語です。外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅を意味します。 出典)環境省「平成30年度のZEH(ゼッチ)関連事業(補助金)について」 利用条件 グリーンリフォームローンの利用条件は以下のとおりです。 対象住宅自ら居住する住宅、セカンドハウス、親族が居住するための住宅 対象リフォーム断熱改修工事、省エネ設備設置工事 融資額最大500万円(リフォーム工事費が上限) 返済期間10年以内(1年以上、1年単位) 金利タイプ全期間固定金利(申込時点の金利を適用) 担保・保証不要 融資手数料不要 団体生命信用生命保険利用可能 現場検査工事要件への適合を確認(現場検査手数料がかかる) 申込者の主な要件・借入申込時の年齢が満79歳未満(親子リレー返済を除く)・総返済負担率の基準を満たしていること 省エネリフォームと一緒に行うその他リフォーム(キッチンの改修、外壁塗装、間取り変更など)もローンの対象です。ただし、その他リフォームの融資額の上限は、省エネリフォームに係る工事費の金額までとなります。 たとえば、リフォーム費用の総額が500万円かかったとしても、その内訳として、省エネリフォームが200万円、その他のリフォームが300万円、という場合には、融資の上限は400万円となります。 リフォームが省エネ工事の要件を満たしていることを確認するため、工事着工前に、適合証明の申請や工事家各内容の確認が必要なほか、適合証明検査機関による現場検査が必要です。 また、すべての借入に対して、総返済負担率(年収に占める年間合計返済額の割合)の基準を満たしていることが要件となります。年収400万円未満は30%以下、年収400万円以下は35%以下が基準です。 グリーンリフォームローンのメリットと注意点 グリーンリフォームローンには、以下のようなメリットがあります。 無担保・無保証で利用できる 全期間固定金利で家計の収支計画を立てやすい 団体信用生命保険を利用できる 住宅の省エネ性能を高められる 担保や保証が不要で、融資手数料もかからないため、比較的利用しやすいローンといえるでしょう。全期間固定金利は、借り入れたときに設定された金利が、完済するまで変わらないため、長期的な家計の収支計画を立てやすいです。団体信用生命保険は、死亡などにより支払いができなくなった場合、借入残高がゼロになります。また、リフォームで住宅の省エネ性能を高めれば、断熱性能に優れた住宅で快適に暮らすことができ、脱炭素社会の実現にも貢献できます。 一方で、グリーンリフォームローンは、工事要件を満たさなくてはならないのが注意点です。適合証明検査機関の現場検査を受けて適合証明書を取得する必要があり、検査手数料もかかります。 グリーンリフォームローンを利用する際の流れ グリーンリフォームローンを利用する際は、以下の流れで手続きを行います。 借り入れの申込み 適合証明の申請・工事計画内容の確認 融資の決定・工事着工 工事完了・現場検査 適合証明書の交付・提出 融資契約・資金受取 リフォーム工事着工前に、借り入れの申込みや適合証明の申請、住宅金融支援機構による工事計画内容の確認が必要となるので、注意しましょう。 適合証明手続の必要書類 適合証明申請時には、適合証明申請書のほかに工事内容に応じて以下のような書類を準備します。 リフォーム工事後の設計図書、計算書、平面図 断熱材の性能がわかる仕様書 設置する設備の性能がわかる製品カタログ 工事完了報告時には、住宅改良工事完了報告書を提出します。なお、報告書には工事前、工事中、工事後の写真を撮影し、添付する必要があります。 満60歳以上の方は高齢者向け返済特例が利用可能 高齢者向け返済特例とは、申込者(連帯債務者を含む)が亡くなるまでの間は利息のみを支払う返済方法です。元金は申込者全員が亡くなったときに、相続人が自己資金で一括返済するか、担保物件(住宅および土地)の売却代金より返済する仕組みになっています。いわゆる「リ・バース60」と同じ商品性です。 関連記事はこちらリ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 特例を利用した場合と利用しない場合の違い 高齢者向け返済特例を利用した場合と利用しない場合は以下のような違いがあります。 高齢者向け返済特例利用あり利用なし 担保必要不要 団体信用生命保険利用不可利用可 申し込み上限年齢制限なし満79歳未満 毎月の返済額利息のみ元金と利息 その他ノンリコース型- 高齢者向け返済特例は、毎月の支払いが利息のみなので、月々の返済額を抑えられます。また、ノンリコース型であるため、申込人が亡くなったときに担保物件の売却代金が残債務に満たなくても、相続人が残った債務を返済する必要がありません。相続人に負担を掛けずに済むので、高齢者でも利用しやすいでしょう。 一方で、高齢者向け返済特例を利用する場合は、担保が必要な点と団体信用生命保険が利用できません。担保が必要となる点や、返済総額が膨らむことを踏まえると、特例を利用しないと融資基準に当てはまらない人のための制度といえそうです。 まとめ グリーンリフォームローンは担保や保証が不要で、融資手数料もかからないのが魅力です。工事要件を満たす必要はありますが、省エネリフォームを考えているなら選択肢となります。ノンリコース型の高齢者向け返済特例もあるので、資金不足でリフォームをあきらめていた高齢者の方も利用を検討してみてはいかがでしょうか。 出典)住宅金融支援機構「グリーンリフォームローンの取扱いを開始」 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 次に読むべき記事 リフォーム費用の相場と安く抑えるコツ 住み始めた頃は問題ないと感じていても、月日の経過に伴って住まいに不便さを感じる場面も出てきます。今後の生活を快適にするためには、リフォームを検討してみるのも選択肢の1つです。しかし、実際にリ...

  • リフォーム予定のシニアは約4割、一方で2割が資金に悩む

    リフォーム予定のシニアは約4割、一方で2割が資金に悩む

    60歳を越えると、定年退職や子供の自立など、ライフスタイルが大きく変わる人も少なくないでしょう。自身が所有する住まいについても同様に、設備の故障や経年劣化によって、リフォームを検討する人も多いのではないでしょうか。 そこでこの記事では、持ち家がある60歳以上の男女500名を対象に、リフォームに関するアンケートを実施した調査結果をご紹介します。 詳細はこちら シニアのリフォーム予定は約4割、その半数が費用を200万円未満と想定、資金不足に悩むシニアは約2割!~SBIエステートファイナンスが「シニアのリフォーム」に関するアンケート調査を実施~ 約4割がリフォームを予定している Q. 今、住んでいる物件のリフォームを検討していますか? 「リフォームを予定している」と回答した方は約4割でした。この回答から、60代にもなるとリフォームの必要性を感じる方が多いことがわかります。 Q. 何年後にリフォームを予定していますか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォームの予定時期は「半年以内」が10%、「1年以内」が11%と、1年以内にリフォームを計画している人が約2割いることがわかりました。また、未定が4割であることから、いずれリフォームが必要と考えているが、それほど緊急度の高いリフォームではないことも推察されます。 リフォーム費用は約5割が200万円以下という結果に Q. リフォーム費用はどの程度で考えていますか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォームの費用は、最も多い回答が「100万円以上200万円未満」で30%、「100万円未満」が17%となり、200万円以下のリフォームに留める方が約半数であることがわかりました。このことから、大規模な修繕工事ではなく、最低限の修繕にとどめたリフォームを検討していることが多いことがわかります。 Q. リフォーム費用はどのように準備する予定ですか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォーム費用は、約8割の人が貯金から準備する予定であり、「資産(株、投資信託等)の売却」を足すと9割以上となります。このことから大半の人が保有する資産の中からリフォーム費用を準備することがわかりました。 一方で、リフォームを予定しているが、「ローン」を利用するという人が4%、「当てがない」という人も4%おり、リフォームは必要になると考えているものの、どのようにリフォーム資金を準備するか悩んでいる人も一定数いるようです。 全体の2割近くが資金面を理由にリフォームを予定していない Q. リフォームを予定していない理由はなぜですか?(リフォームを予定していないと回答した方) リフォームを予定していない理由は、「現在の住宅に全く不満がない」という理由が34%でした。また、既にリフォームを実施済の人も25%いることから、リフォームを予定していないシニアの方の約6割はライフスタイルに合った自宅に住んでいることが推察されます。 一方で、リフォームを予定していない理由の中には、「費用がかかりそう」が15%、「費用が用意できない」が15%といったように、資金面で悩みがあることもわかりました。この結果とリフォームを予定しているが資金面で悩んでいる人を足し合わせると、資金面でリフォームに悩んでいる人は回答者全体の約2割となることがわかりました。 まとめ 今回の調査によると、シニア世代のほとんどが貯金などからリフォーム費用を準備する一方で、資金面で悩んでいる人が全体の2割を占めることがわかりました。また、リフォーム費用を低く見積もる方も多く、どれくらいの費用をかければどの程度のリフォームができるかを正しく把握できていない可能性もありそうです。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 シニアがリフォームする際のポイントや間取り事例を紹介 年齢を重ねてくると、購入当時の住まいでは生活のしづらさを感じる場面が増えてくるものです。ライフスタイルに合った住環境を作るために、選択肢の1つとしてリフォームを考えることもあるでしょう。しか...

  • シニアが住み替える際の4つのポイント

    シニアが住み替える際の4つのポイント

    シニア世代は、子どもの独立や退職などをきっかけに生活環境が大きく変化します。今住んでいる家がライフスタイルに合わなくなると、将来を見据えて住み替えを検討することもあるでしょう。 この記事では、シニアが住み替える際に確認しておきたいポイントを4つ紹介します。 住み替えの目的を明確にする まずは住み替えの目的を明確にすることが大切です。シニアはどんなきっかけで住み替えを考えるのでしょうか。「エリア」「設備」「趣味・嗜好」の3つの観点から、シニアが住み替える目的を確認していきましょう。 エリア 居住エリアの変更を希望する場合は、「子どもと同居、近居したい」「利便性を向上させたい」といった場合が考えられます。 子ども世帯の近隣に住み替えることで、子どもや孫と支えあいながら楽しく暮らせます。また、スーパーや医療機関、公共交通機関などが充実しているエリアに住み替えれば、老後も不自由なく暮らせるでしょう。 設備 「建物や設備の経年劣化により長く住み続けるのが難しい」「バリアフリー化したい」といった理由で住み替えを検討するケースです。 住み替えることで建物や設備が新しくなり、バリアフリー化もできます。ただし、今住んでいる家の建て替えや「リフォームで対応することができないのか」改めて考えてみるといいでしょう。 趣味・嗜好 「趣味の読書や映画、音楽を楽しみたい」「一年中ゴルフをして過ごしたい」「スローライフを満喫したい」など、趣味・嗜好で住み替えを検討する場合も考えられます。戸建てやマンションだけでなく、高齢者向け住宅などの様々な住まいの候補があります。それぞれメリット・デメリットがあるので、後悔がないように物件を選定するといいでしょう。 より快適な老後を過ごすには、住環境を整える必要があります。自分の好みに合った家に住み替えることで、毎日を楽しく快適に過ごすことができるでしょう。 余裕を持った資金計画を立てる シニアが住み替えを成功させるには、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。具体的には以下の点を確認しましょう。 総資産額を把握して住み替え予算を決定する まずは手元にある資産や負債を把握して、住み替えの予算を決定します。 資産は預貯金のほかに自宅の売却価格、株や保険などの金融商品も確認しましょう。自宅の売却価格は住み替えの進め方や売却方法によって変わってくるため、保守的に見積もることが大切です。 負債は住宅ローンやその他の借入があるかを確認します。資産から負債を差し引いた金額が、現時点で手元にある本当の資産(純資産)となります。 借入可能額を見積もる 資金調達を利用する場合は、いくらまで借りられるかを見積もりましょう。 シニアの場合、年齢や収入によって利用できるローン商品が変わってきます。通常の住宅ローンは審査が通りにくく、借りられたとしても長期のローンを組むのは難しいでしょう。高齢者向け住宅ローンの「リ・バース60」も選択肢として検討を進めるといいでしょう。 関連記事はこちらリ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 預貯金として残す金額を決める 資産や負債、借入可能額がわかったら、預貯金として残す金額を決めます。年金だけで生活するのが難しい場合、預貯金は生活費を補う重要な財産となります。急にまとまった出費が生じる可能性もあるので、預貯金は多めに確保しておきましょう。 無理のないキャッシュフローにする 住み替え前と住み替え後でキャッシュフローは異なるケースが多いでしょう。借入を利用する場合は、毎月の返済が増え、マンションに住み替える場合は、毎月管理費・修繕積立金がかかります。住み替え後のキャッシュフローができるだけプラスになるか、手元の預貯金で賄えるかなどの視点から、無理のない収支計画を立てましょう。 賢く手段を選んで自宅を売却する シニアが住み替えを成功させるには、自宅をどのように売却するかも重要です。自宅の売却方法は、「買い先行」と「売り先行」の2つがあります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った方法を選択しましょう。 買い先行で住み替える 買い先行は、新居を購入してから自宅を売却する方法です。空室にしてから売却するので、内覧希望者に対応しやすく、高値で売却できる可能性があります。 ただし、今の住宅ローンを残したまま新居のローンを組むのは難しいため、資金に余裕がある人に向いています。 買い先行は「市街化区域外」「旧耐震」「再建築不可」「既存不適格」「借地権」「郊外」「マンションの1階」など、売りづらい物件に住んでいる場合は要注意です。自宅の売却に時間がかかると手元資金が不足する恐れがあります。 売り先行で住み替える 売り先行は、自宅を売却してから新居を購入する方法です。住み替え資金を確保しやすく、新居のローンを組みやすいので、資金に余裕がない場合は売り先行が向いています。 ただし、売り先行は新居に引っ越しするまでの仮住まいを確保しなくてはなりません。また、新居の購入スケジュールによっては早期に売却しなくてはならないため、買い先行に比べると自宅の売却価格が安くなりがちです。 少しでも高く売るために「仲介」で売却するのか、確実に売却するために「業者買取」を利用するのかを判断する必要があります。 目的に合った物件を選定する 資金計画や自宅の売却方法が決まったら新居を探します。目的に対応する物件を選ぶ際は、以下の点を意識するといいでしょう。 持ち家か賃貸か シニアの住み替えでは、持ち家だけでなく賃貸物件も選択肢となります。 持ち家は間取りなどの選択肢が広く、いざというときに有効活用できるのがメリットです。「売却する」「物件を担保に融資を受ける」などの方法で、まとまった資金を確保できます。 賃貸は毎月家賃がかかりますが、自宅の処分やローンを考慮せずに引っ越しができ、相続トラブルを回避しやすいのがメリットです。ただし、オーナーによっては高齢であることを理由に入居を断られる場合もあるので、老人ホームや高齢者向け賃貸住宅から選ぶといいでしょう。 戸建てかマンションか 住み替えの目的によって、戸建てとマンションのどちらが向いているかは変わってきます。 たとえば、子ども世帯と同居するなら間取りの自由度が高い戸建て、将来の売却や相続を考慮するなら売却しやすいマンションがよいかもしれません。目的に応じて、どちらがよいかを見極めましょう。 都市部か郊外か 都市部と郊外では、住環境が大きく異なります。都市部は生活に便利な設備がそろっていますが、物件価格や家賃は高い傾向にあります。一方、郊外は静かな環境で穏やかに暮らせますが、インフラ整備などの状況など生活するには不便な場所もあります。 都市部と郊外のどちら選ぶにせよ、売却しやすい物件に住み替えることを意識しましょう。 予算を超えたら? 条件に合致する土地や物件が見つかっても、予算を超えてしまうかもしれません。その場合は以下のような選択肢があります。 建て替え・リフォームに切り替える エリアを変える ダウンサイジングする 老後資金不足を招く恐れがあるため、予算を超える場合は住み替えを見送るのが無難です。住み替えにこだわらず、建て替えやリフォームで住環境を改善する方法もあります。 どうしても住み替えたい場合は、エリア変更やダウンサイジング(より小さな家への住み替え)を検討しましょう。 まとめ シニアが住み替えをする場合は、目的をはっきりさせたうえで資金計画を立てることが大切です。また、自分にあった売却方法や物件を選ぶことも重要なポイントとなります。快適なシニアライフを過ごすために、必要に応じて住み替えを検討しましょう。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住み替えの方法と成功させるポイント 持ち家に住んでいても、転勤や家族構成の変化などのライフスタイルの変化などを理由に住み替えを検討することがあるでしょう。 住み替えは新居の購入や自宅の売却、住宅ローンの手続きなど、同時に進めな...

  • 50代以上に聞いた!老後に対する不安は?

    老後に対する不安の1位は健康、2位は資金、約6割が老後資金不足で悩む

    近年「老後2,000万円問題」など、老後に対して不安を覚える情報が様々なメディアで取り沙汰されています。しかし、実際に老後資金としていくら必要と考えているのか、いくら用意できているのかは三者三様です。 そこで今回は、持ち家がある50歳以上の男女200名を対象に、老後の生活資金や持ち家の所有・管理についてどのような不安を抱いているのか、アンケート調査を実施しました。 老後の不安は「健康」「老後の生活資金」「介護」 Q1:老後の暮らしに不安がありますか?不安がある方は、どのようなことに不安を感じているか、選んでください。 老後の不安に対する調査をしたところ、91.0%が不安を感じていました。「健康面で不安がある」が51.5%で一番多く、「老後の生活資金について不安がある」が48.5%、「介護について不安がある(自身・配偶者・親など)」が41.5%と続いていました。老後の不安を解消するには、健康だけでなく、お金の面でも十分な準備をしておく必要がありそうです。 老後資金は「2,000万円以上」あると安心 Q2:老後の不安を解消するため、いくらくらいの老後資金があれば安心と考えていますか?(厚生年金などの年金を考慮しない場合) 老後の不安を解消するため「2,000万円以上必要」と回答した方は58.0%いました。価格帯別では「2,000万円以上~3,000万円未満」が21.0%と最も多く、「4,000万円以上~5,000万円未満」が12.5%、「3,000万円以上~4,000万円未満」が11.5%と続いています。 かつて、金融庁の報告書で「老後30年間で約2,000万円が不足する」と受け取れる試算が示され、大きな話題になりましたが、「わからない」を除くと約8割が2,000万円以上あれば安心と考えていることがわかりました。 老後資金を思うように準備できていない人は約6割 Q3:老後の資金について、現時点でいくらくらい準備できていますか? 老後資金を現時点で2,000万円以上準備できている方は27.0%にとどまっています。一方で、27.0%が「全く準備できていない」と回答したほか、14.5%が「500万円未満」と回答するなど、老後資金を思うように準備できていない方が6割近くになりました。 Q4:持ち家とその借入を除く、現金、預貯金、有価証券、不動産などの資産はどのくらいですか?なお、計算する際には、老後資金として準備している金額(Q3)も含めてください。 また、持ち家とその借入を除く資産額を調査したところ、2,000万円以上の資産を保有している方は27.0%にとどまりました。さらに気になるのは、32.5%の方が「わからない」と回答したことです。老後不安を解消するためには、必要な生活資金を早めに確保しておきたいところです。そのためにも、まずは自身の資産状況を把握しておきましょう。 持ち家に住み続けたいがリフォームに関して約半数が不安 Q5:今後、持ち家をどのように利用する予定ですか? 現在の持ち家を「住み続ける」と回答した方は66.5%で、そのほかには「売却する」が7.0%や「生前のうちに子どもに譲る」が5.5%など、具体的なプランをお持ちの方がいました。一方で13.5%が「考えたことがない」と回答しています。持ち家に長く住み続ける予定の方が多数を占めましたが、一方で約8割が持ち家に対して何らかの不安を抱いていました。 Q6:持ち家の今後についてどのような不安を抱いていますか? 具体的な不安として、最も多かったのは「修繕費やリフォーム代、固定資産税など維持をするための費用が心配」の48.5%でした。そのほかには「家は残したいが、誰も継いでくれない」が12.5%や「費用以外の問題で、今の家に住み続けるのが難しくなりそう」が11.0%など、切実な悩みを抱えている方もいました。 持ち家に資産価値がある人は過半数 Q7:持ち家はどのような経緯で取得しましたか? 持ち家を「住宅ローンで購入し、現在も返済中」と回答した方は19.5%でした。一方で、持ち家に抱いている不安は、6.5%が「住宅ローンを完済できるか心配」と回答しています。これらを重ね合わせてみると、住宅ローン返済中の3人に1人が「完済できるか不安」と感じており、家計が厳しい方も少なくないようでした。 約半数が持ち家の資産価値を「わからない」と回答 また、持ち家の資産価値を「住宅ローン残高のほうが多い」と回答した方は2.5%とわずかで、27.5%が住宅ローン残高を差し引いた資産価値で「1,000万円以上ある」と回答するなど、半数以上の方が持ち家に資産価値があると考えていました。 なお、持ち家を現金化できる方法を提示したところ約12人に1人が老後の不安が軽減したと回答しました。老後の不安の程度は「変わらない」が多数を占めましたが、持ち家を現金化することで不安が和らぐと考えている方は一定数いるようです。 一方で、持ち家を現金化できるかどうか以前に、持ち家の資産価値を把握していない方が約半数を占めていました。いざという時に持ち家を有効活用するため、自宅の資産価値を把握しておくことで、不安が解消される可能性もあると考えられそうです。 まとめ 老後の暮らしに多くの方が不安を抱いているものの、計画的に老後資金を用意できていない方は多いようです。一方、持ち家を使って老後資金を調達できれば、老後不安の解決につながると感じている方もいました。老後の暮らしや持ち家に対する考え方・悩みはそれぞれ違いますが、暮らし方やニーズが一致すれば、不動産を有効活用することで老後不安を解消できるかもしれません。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅ローンを完済したがお金がない!そんな時の持ち家活用術とは? 50代になると、子どもの教育費もピークを迎えます。また、親も70代を超え、入院したり、介護が必要になったりすることも。あるいは、不動産投資や事業を始める資金が必要になるケースもあるかもしれま...