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  • リ・バース60とは?メリット・デメリットを解説

    リ・バース60とは?メリット・デメリットを解説

    老後生活への準備として住み替えやリフォームをする場合、まとまった資金が必要になります。しかし、高齢になると、一般的な住宅ローンやリフォームローンの審査に通りにくくなります。 このような時に活用できる、満60歳以上の人向けの住宅ローンである「リ・バース60」という商品をご存じでしょうか。リ・バース60は一般的な住宅ローンとは、商品性が異なるため、高齢の人でも住宅ローンを借り入れできる可能性があります。 この記事では、リ・バース60の仕組みやメリット・デメリット、利用事例について説明します。 リ・バース60とは? リ・バース60とは、満60歳以上の方を対象とした住宅ローンの一種です。あくまで住宅ローンであるため、資金使途は「住宅の購入」「建築」「リフォーム」「住宅ローンの借換」などに限定されます。 一般的な住宅ローンは、毎月元金と利息を返済する「元利均等返済」や「元金均等返済」が基本です。一方で、リ・バース60は、毎月の支払いが利息のみで、元金は債務者が亡くなったときに一括返済する仕組みです。一括返済する元金は、「担保不動産を売却して返済する」か「現金で返済する」かを選択できます。 ・住宅ローンとリ・バース60の返済方法の違い 出典)【リ・バース60】:住宅金融支援機構 関連記事はこちらリ・バース60と住宅ローンの違いとは リ・バース60には2つの商品タイプがある リ・バース60は、元金を死亡後に一括返済するという仕組みから、「ノンリコース型」と「リコース型」の2種類があります。ノンリコース型を選択すると、担保不動産の売却だけで元金を一括返済できなくても、相続人が残った債務を返済する必要がなくなります。一方で、リコース型を選択すると、担保不動産の売却だけで元金を一括返済できなかったとき、残った債務の返済義務が生じます。 ノンリコース型は、リスクを避けるためには有用ですが、リコース型に比べて適用金利が高くなることがあります。なお、2022年度において、ノンリコース型の利用割合が99.0%を占めており、ほとんどすべての方がノンリコース型を選択しています。 リ・バース60のメリット リ・バース60には以下のようなメリットがあります。 高齢者でも借り入れができる 一般的な住宅ローンは安定収入が求められ、年齢制限も設けられているため、高齢になると借りるのは難しくなります。しかし、リ・バース60はそもそも60歳以上の人向けの住宅ローンなので、年齢を理由に住宅ローンを借りるのが難しい人でも借りられる可能性があります。また、借り入れ時の年齢に上限がなく、収入が公的年金のみでも利用可能です。 返済が利息のみで月々の返済負担が小さい 一般的な住宅ローンは元金と利息を返済するため、月々の返済が重荷になるかもしれません。しかし、リ・バース60の返済は利息のみなので、月々の返済負担が小さくなります。このように、高齢になって収入が減少しても、無理なく返済ができるよう設計されています。 ノンリコース商品を選択できる 一般的な住宅ローンは団体信用生命保険があるため、万が一亡くなった時の元金の心配は必要ありません。しかし、リ・バース60は元金が据え置きとなるため、亡くなったときの元金返済についてリスクを負うこととなります。しかし、ノンリコース型を選択すれば、担保不動産の売却だけで元金を一括返済できなかったとしても、債務が残らないため安心です。 リ・バース60のデメリット リ・バース60には、以下のようなデメリットもあります。 融資限度額が小さい 一般的な住宅ローンでは、不動産を購入する際、満額融資を受けることも可能です。しかし、リ・バース60の借入限度額は、担保評価額の50~60%が目安です。そのため、住宅の新規購入資金や建築資金を借りる際に、自己資金が必要となります また、住宅ローンが残っている自宅を担保として、リフォーム資金や借換資金を利用する場合に、住宅ローンが担保評価の50%以上残っていると、リ・バース60をそもそも利用できないでしょう。 元金が減らない 一般的な住宅ローンは元金と利息を返済するため、いずれ完済する商品です。しかし、リ・バース60は債務者が亡くなったときに元金を一括返済するので、長生きすればするほど利息の総支払額は増えます。そのため、完済時には、利息の総支払額が多額になってしまう恐れがあります。 金利上昇リスクがある リ・バース60を変動金利で借りる場合、金利が上昇することで月々の返済額が増加する恐れがあります。そのため、借入時点だけでなく、金利が上昇したとしても返済できるようにしておくことが大切です。もしくは、固定金利型のリ・バース60を利用すれば、金利上昇リスクを回避することができます。 リ・バース60の利用事例 リ・バース60には以下のような場面で利用できます。 老朽化した自宅のリフォーム 自宅が老朽化すると、徐々に使い勝手が悪くなったり、設備の入れ替えが必要になったりします。健康状態によってはバリアフリー対応も必要かもしれません。しかし、収入が減少した老後生活において、まとまったお金を使うことに不安を感じるかもしれません。リ・バース60なら手元資金を使用せず、月々の返済負担を抑えながら、リフォームができます。 新居への住み替え 子供の独立や、離別・死別などによって、生活に適した広さの家への転居を検討するかもしれません。しかし、高齢になると、まとまったお金を支払うことや、一般的な住宅ローンを借りるのは難しいでしょう。リ・バース60なら、月々の返済負担を抑えながら、住み替えができます。 住宅ローンの借り換え 高齢になってから住宅ローンの残債がある場合、安定した収入がないと月々の返済が苦しくなります。予定どおり返済ができなければ、最悪の場合は自宅を手放すことになりかねません。しかし、リ・バース60を利用すれば、住宅ローンを借り換え、返済負担を軽減できます。 関連記事はこちらリ・バース60の活用事例を4つ紹介 債務者が亡くなった後の手続き リ・バース60は元金が債務者が亡くなってから返済されるため、自身の死後の返済や手続きを不安に感じるかもしれません。ここでは、債務者が亡くなった後の手続きについて確認していきましょう。 担保物件の売却はどのように行われるのか 債務者が亡くなった後、元金一括返済のために担保物件を売却することになります。債務者が亡くなった後の担保物件の売却は、「相続人が担保物件を自ら売却する」か「住宅金融支援機構が競売により売却する」かのどちらかです。 相続人は、どちらの方法も選択できますが、一般的には、競売よりも相続人自らが売却活動を行うほうが、高く売却できる可能性があります。そして、担保物件が残った債務以上の金額で売却できた場合は、売却益を相続人が受け取ることができます。反対に、担保物件の売却による返済後に債務が残った場合でも、「ノンリコース型」を選択しておけば、残った債務の返済義務はありません。 なお、相続人が残った債務を一括で返済する場合や、債務者が生前に元金を繰上返済した場合は、担保物件を売却する必要がありません。 残された配偶者はどうなるのか リ・バース60を利用した債務者に配偶者があり、債務者が配偶者より先に亡くなった場合、残された配偶者が担保物件に住み続けられるかどうかは、契約内容によって異なります。 連帯債務の借り入れ 主債務者が亡くなったとしても、配偶者が連帯債務者として契約を継続します。元金の返済は、あくまで連帯債務者が亡くなった後にされるため、配偶者は変わらず住み続けることが可能です。 債務者単独の借り入れ 債務者が単独で契約していた場合は、配偶者が契約を引き継ぐことで家に住み続けることが可能です。ただし、契約を引き継ぐには審査が必要です。審査結果によっては、契約を引き継げない場合もあります。 関連記事はこちらリ・バース60を利用中に債務者が亡くなると配偶者はどうなる? リ・バース60の固定金利型について 元々リ・バース60は変動金利型しか取り扱いがありませんでしたが、令和7年1月6日(月)から、新たに固定金利型の取り扱いが開始されました。 リ・バース60に固定金利型が導入された背景 住宅支援機構が行った令和4年12月の利用者アンケートによると、利用にあたり不安だった点について、回答者の半数以上が「将来、金利が変動した場合、月々の支払額が変わること」と回答したようです。 リ・バース60は返済期日がいつになるかが分からないことや、収入が年金収入のみの利用者が多いことから、金利変動に対する不安を感じる利用者が多かったと考えられます。こうした背景から、月々の支払いを一定にできる固定金利型が新たに導入されることとなりました。 出典)PressRelease【リ・バース60】 全期間固定金利タイプ新登場(令和7年1月) リ・バース60の変動金利型と固定金利型の違い リ・バース60の変動金利型と固定金利型は、金利以外の基本的な仕組みは同じですが、いくつか違いもあります。 ①固定金利型はリコース型の選択ができない 上述のとおり、リ・バース60の商品タイプには「リコース型」と「ノンリコース型」の2種類があります。変動金利型の場合はどちらかを選択できますが、固定金利型の場合は「ノンリコース型」しか選択ができません。 ②抵当権者が住宅金融支援機構となる リ・バース60を利用する場合、対象の住宅に抵当権が設定されます。変動金利型の場合の抵当権者は取扱金融機関となりますが、固定金利型の場合の抵当権者は住宅金融支援機構となります。 ③固定金利型は保証人が不要 変動金利型の場合、取扱金融機関によっては、保証人の設定を求められる場合もあります。しかし、固定金利型であれば、保証人の設定を求められることはありません。 出典)【リ・バース60】ご利用条件 リ・バース60の固定金利型を検討する際の注意点 まだ導入から間もないため、リ・バース60の固定金利型を取り扱う金融機関は、2025年1月9日時点で、SBIアルヒ、全宅住宅ローン、オリックス・クレジット、日本モーゲージサービスの4機関しかありません。リ・バース60の変動金利型を取り扱う金融機関が必ずしも固定金利型も取り扱っているとは限らないので、利用を検討する際には注意が必要です。 リ・バース60のよくある質問 リ・バース60のよくある質問は以下のとおりです。 リ・バース60とリバースモーゲージの違いは何ですか? リ・バース60とリバースモーゲージは資金使途に違いがあります。一般的なリバースモーゲージは老後の生活費や医療費、介護費用などに利用できるのに対して、リ・バース60は住宅に関連する費用に限定されています。 リ・バース60は住宅ローン控除の対象ですか? リ・バース60は、住宅ローン控除の適用対象外です。リ・バース60は、債務者が亡くなるか元本を繰上返済しない限り、返済がずっと続く商品です。償還期間(返済期間)が明確に決まっておらず、住宅ローン控除の要件である「割賦償還・割賦期間が10年以上であること」を満たさないためです。 >リ・バース60で受けられる優遇制度についてはこちら リ・バース60はいくらまで借りることができますか? リ・バース60の融資限度額は、次のうち最も低い額となります。 (1)8,000万円 (2)所要金額の100% (3)担保評価額の50%または60% 契約できる年齢の制限はありますか? リ・バース60は満60歳以上の方が対象で上限年齢はありません。また、満50歳以上60歳未満の方でも利用できる場合がありますが、融資限度額が担保評価額の30%までに制限されます。 関連記事はこちらリ・バース60のよくある質問 まとめ リ・バース60は、満60歳以上の方向けの住宅ローンです。月々の負担を抑えられる一方で、住み替えの利用などでは、ある程度の頭金が必要になります。この記事で紹介したメリット・デメリットを比較して、リ・バース60の利用を検討してみるといいでしょう。 出典)【リ・バース60】:住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫) SBIエステートファイナンスのリ・バース60の商品詳細はこちら SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 老後資金を確保するための住宅ローン返済術(60歳以上編) 近年、60歳を過ぎて老後を迎えても、住宅ローンを完済していない人が増えています。定年後も働いて安定収入がある人や預貯金が十分にある人であれば、住宅ローンが残っていても問題なく生活できるかもし... { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "リ・バース60とリバースモーゲージの違いは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text": "リ・バース60とリバースモーゲージは資金使途に違いがあります。一般的なリバースモーゲージは老後の生活費や医療費、介護費用などに利用できるのに対して、リ・バース60は住宅に関連する費用に限定されています。 一方で、自宅を担保とする点や毎月の返済が利息のみの点など、共通点もあります。" } }, { "@type": "Question", "name": "いくらまで借りることができますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"リ・バース60の融資限度額は、次のうち最も低い額となります。 (1)8,000万円 (2)所要金額の100% (3)担保評価額の50%または60% (3)の担保評価額については、担保とする住宅の50%または60%程度のため、新居を購入する場合はある程度の頭金が必要です。" } }, { "@type": "Question", "name": "契約できる年齢の制限はありますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"リ・バース60は満60歳以上の方が対象です。また、満50歳以上60歳未満の方でも利用できる場合がありますが、融資限度額が担保評価額の30%までに制限されます。" } }, { "@type": "Question", "name": "債務者の死後、必ず担保物件は売却されますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"相続人が残債務を一括で返済する場合や債務者が生前に元金を繰上返済した場合は担保物件の売却を回避することも可能です。" } }, { "@type": "Question", "name": "債務者の死後、担保物件の売却はだれがどのような方法で行うのですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"債務者が亡くなった後の担保物件の売却は、以下の2つの方法があります。 相続人が担保物件を自ら売却する 住宅金融支援機構が競売により売却する 相続人は、どちらの方法で担保物件を売却するか選択できますが、競売よりも相続人が自ら売却活動を行うほうが、高く売却できる可能性があります。" } }, { "@type": "Question", "name": "担保物件が残債務以上の金額で売却できた場合はどうなりますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"担保物件が残債務以上の金額で売却できた場合、その余剰金は相続人が受け取ることができます。" } }, { "@type": "Question", "name": "担保物件の売却による返済後に債務が残った場合どうなりますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"担保物件の売却による返済後に債務が残った場合、次のうちいずれかの取扱いとなります。 ノンリコース型:相続人は残った債務を返済する必要がない リコース型:相続人は残った債務を返済する必要がある 2021年度においては、ノンリコース型の利用割合が99%以上を占めており、大多数がノンリコース型を選択しています。" }} ] }

  • 配偶者居住権とは?概要やメリット・デメリット、成立要件について解説

    配偶者居住権とは?成立要件や設定するメリット・デメリットを解説

    約40年ぶりに民法(相続法)が改正され、2020年4月から「配偶者居住権」が施行されました。現在夫婦で持ち家に暮らしているのであれば、相続が発生する時のために配偶者居住権について理解しておくことが大切です。 この記事では、配偶者居住権の概要やメリット・デメリット、成立要件について詳しく解説します。 配偶者居住権とは 配偶者居住権とは、残された配偶者が被相続人の所有する建物に居住していた場合に、被相続人が亡くなった後も、賃料の負担なく、その建物に住み続けられる権利です。 遺言で配偶者に配偶者居住権を遺贈することで、配偶者居住権を設定することができます。このとき、被相続人と配偶者が婚姻してから20年以上の夫婦である場合、配偶者居住権を設定しても、原則として遺産分割協議配偶者の取り分が減らされません。 また、被相続人が遺言をしないまま亡くなったとしても、他の相続人との遺産分割協議によって、配偶者居住権を取得できます。仮に、遺産分割協議が調わないとしても、家庭裁判所に審判の申立てることで、取得できる可能性もあります。 配偶者居住権施行の背景 近年の高齢化の進行により平均寿命が延びたことから、夫婦の一方が亡くなった後も、残された配偶者が長期間にわたり生活を継続することも多くなりました。その際には、配偶者が住み慣れた住居で生活を続けるとともに、老後資金も確保したいと希望することも多いと考えられます。そこで、遺言や遺産分割の選択肢を広げるために制度が導入されました。 配偶者居住権のメリット 配偶者居住権は、以下のようなメリットがあります。 被相続人が亡くなった後も自宅に住み続けられる 配偶者居住権の制度を利用すれば、被相続人が亡くなった後も引き続き自宅に無償で居住できます。本制度が施行されるまでは、相続財産の分割などの要因により、残された配偶者が夫婦で暮らしていた自宅を相続できず、自宅に住み続けられないことがありました。 しかし、配偶者居住権を利用することで、建物の所有権を取得するよりも低い価額で居住権を確保でき、自宅に住み続けられる可能性が高まりました。 不動産以外の財産が受け取りやすくなる 配偶者居住権は、不動産以外の財産が受け取りやすくなります。たとえば、被相続人が夫、相続人が妻と子一人の場合、法定相続分は妻と子の相続割合は1対1です。仮に相続財産が自宅と預貯金のみで、それぞれの価値が同じとき、均等に分けようとすると妻は自宅を相続すると、預貯金は取得できなくなってしまいます。 しかし、婚姻20年以上の夫婦であり、遺言による遺贈を行っていれば、原則として遺産分割で配偶者の取り分が減らされることはありません。 配偶者居住権のデメリット 配偶者居住権には、以下のようなデメリットもあります。 自宅の売却ができない 配偶者が所有権を保有している場合、本人の意思に基づいて自由に自宅を売却できます。一方で、配偶者居住権は、あくまで自宅に居住する権利です。そのため、配偶者居住権を保有しているだけでは、第三者に自宅を売却できません。 また、自宅の所有権を保有する配偶者以外の相続人が、売却しようと思っても売却できません。なぜなら、その自宅には配偶者居住権が設定されており、第三者が購入しても住めないためです。 上述のような問題の対処法として、配偶者居住権を合意解除や放棄する事はできます。しかし、配偶者が認知症になるなど、意思表示ができなくなると、大きな問題になる恐れがあります。 所有者の税負担が大きい 配偶者にとっては、所有権ではなく居住権だけを取得できるのでメリットです。一方で、所有権者にとっては、居住権がないのにも関わらず、固定資産税を支払わなければなりません。改正相続法では、配偶者居住権を取得した配偶者は、建物の必要費を負担する義務がありますが、これはあくまで建物部分に限られます。土地の固定資産税の負担は、所有権者が行わなければならないので、不公平感も生まれやすいでしょう。 これらのデメリットは、従来の所有権では生まれなかったので、配偶者居住権を設定する際には、あらかじめよく話し合っておくことが大切です。 配偶者居住権の成立要件 配偶者居住権が成立するには、以下3つの要件を満たす必要があります。 相続開始時に被相続人の所有する建物に居住していたこと 相続開始時に被相続人が配偶者以外の者と建物を共有していないこと 以下のいずれかに該当(ア)遺産の分割により配偶者居住権を取得するものとされたこと(イ)配偶者居住権が遺贈の目的とされたこと 配偶者居住権は、遺産分割協議で取得できますが、遺産分割協議を行うことになった場合、配偶者短期居住権で保護されます。配偶者短期居住権とは、相続が発生した時点で、被相続人と同居していた配偶者が、遺産分割の確定まで、最短でも相続開始から6か月間、引き続き住み続けられる権利です。 まとめ 前述のとおり、配偶者居住権は配偶者にとって、大きなメリットがありますが、配偶者以外の相続人にとってはデメリットもあります。そのため、配偶者居住権の設定の際には、配偶者と子の折り合い必要です。また、配偶者居住権がどの程度の評価を持つかなど、素人には算定が難しいです。 配偶者居住権は、開始間もない制度です。配偶者居住権の成立要件や評価方法は複雑で、まだ不透明な部分が多いのが現状です。配偶者居住権を検討する場合は、相続に強い税理士などの専門家に相談しておくと安心でしょう。 出典) ・法務局「配偶者居住権とは何ですか?」 ・一般社団法人 全国銀行協会「「配偶者居住権」は配偶者にどんなメリットがあるのですか?」 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 相続した不動産に不動産取得税がかかるケースとは? 自宅の購入など、不動産を取得したときには不動産取得税がかかります。では、相続で不動産を取得した場合には、不動産取得税はかかるのでしょうか。 相続により不動産を取得した場合、原則不動産取得税は...

  • 住宅ローンを完済したがお金がない!そんな時の持ち家活用術とは?

    住宅ローンを完済したがお金がない!そんな時の持ち家活用術とは?

    50代になると、子どもの教育費もピークを迎えます。また、親も70代を超え、入院したり、介護が必要になったりすることも。あるいは、不動産投資や事業を始める資金が必要になるケースもあるかもしれません。何らかの理由でまとまった資金が必要になったとき、持ち家があれば資金を工面できる場合があります。どのような活用法が可能か、考えてみましょう。 仲介会社を利用して売却する 持ち家がある世帯で、資金を作り出す方法としてまず考えられるのは、持ち家を売却して現金化する方法でしょう。ご主人に先立たれ、広すぎる家を売却してUR賃貸住宅など入り、売却資金はいずれ介護が必要になったときの資金として温存する、といった方もいました。 住宅の売却で動きが出やすいのは、通常だと、転勤などの節目となる春(1~3月頃)、秋(9~11月頃)ではないでしょうか。買い手が見つかって売買が終了するまでは、通常だと2カ月~6カ月程度かかりますが、売り出すタイミングによっては時間がかかることも知っておきましょう。実勢価格(時価)が5,000万円程度の物件の場合、5,000万円程度の資金を取り出すことができます。ニーズさえあれば、物件の場所は問われません。 実際に住宅を売却する際には、売却を依頼した不動産会社が物件情報を「レインズ(不動産情報ネットワーク)」と呼ばれる専用サイトに登録します。そのため、依頼する不動産会社の規模による優劣は特にないといわれます。査定を依頼して、高額査定を出してきても、それで売れるとは限りません。最後は担当者の人柄や経験、仕事ぶりで満足度が変わるように思います。 売却時には、次のようなコストがかかります。 仲介手数料:不動産売却価格の3%+6万円+消費税 印紙税:不動産売買契約書に収入印紙を貼り、割印。1,000万円超5,000万円以下で1万円など。 登記費用:住宅ローンが残っていて「抵当権抹消登記」を行う場合は登記費用がかかります(登録免許税と司法書士の報酬) ハウスクリーニング費:広さや依頼する人数により5万~15万円程度。自分で行えば無料。 引越費用:業者や荷物の量、移動距離、サービス内容で異なります。数万円~数十万円まであります。 なお、売却後は家がなくなりますが50代であれば新たに住宅ローンを借りて今後の生活に合わせた家を購入する、賃貸住宅を借りるなどの選択を取ることが可能となりますので、売却する際には併せて考えておく必要があります。 <持ち家を売却(仲介)>のポイント 仲介で個人に売却して現金化 物件の場所は問わない 入手できる金額は5,000万円程度(時価5,000万円の物件の場合) 売却のためのコストがかかるほか、住み替える住宅も必要 納得できる価格で売却しようと考える場合、時間がかかる 不動産会社へ売却する 持ち家を売却して現金化する際、仲介で個人間の売買を行うには時間がかかりすぎる場合には、不動産会社に買い取りを依頼する方法もあります。仲介で売却する場合と異なり、時期などに関係なく、しかもスピーディに売却することができます。ニーズさえあれば、物件の場所は問われません。 ただし、不動産会社が買い取る際には、市場価格の6~8割程度になります。時価5,000万円の物件の場合、3,500万円前後の売却額となる可能性が高いでしょう。不動産会社は、買い取った物件をリフォームやリノベーションをして付加価値をつけて再販して利益を得ているためです。 一方で、相手が不動産会社のため、売却時にかかるコストのうち、仲介ではないため仲介手数料がかからず、不動産取得税や登録免許税は不動産会社の負担になり、登記費用も不動産会社の負担になります。また、リフォームなどを行うことから、ハウスクリーニングもせずに売却できるといったメリットもあります。 仲介で売却する際と同じく、売却後は家がなくなりますので新たな家を購入する、賃貸住宅を借りるなど考えておく必要があります。 <持ち家を売却(不動産会社)>のポイント 不動産会社の買い取りで現金化 物件の場所は問わない 入手できる金額は3,500万円程度(時価5,000万円の物件の場合) 売却のためのコストがかかるほか、住み替える住宅も必要 スピーディな売却が可能 賃貸に出し、毎月一定の収入を得る 自宅を賃貸に出すことで、収入を得ることもできます。全国どこでも可能ではありますが、立地や不動産のタイプなどが、賃貸ニーズに合っていることが大前提です。 入手できる資金は、表面利回り4~5%と仮定した場合、年200万円~250万円。仮に同条件で20年借り手がついたとすると、4,000万円~5,000万円になり、しかもその時点の住宅の評価額分の価値が残ります。 自宅を賃貸に出すには、まずは自分たちが住む場所を確保して引越さなくてはなりません。また、貸出しができるようにリフォームをしたり、ハウスクリーニングを行ったりする必要があり、実際に家賃収入が発生するまでには、最低でも1カ月~3カ月以上(賃借人が見つからないと長期化する場合も)はかかります。そのため、ある程度の資金的ゆとりや時間的ゆとりが必要です。 <賃貸に出す>場合のポイント 自宅を賃貸に出すことで資金を作る 場所は限定されないものの、賃貸ニーズがあることが大前提 入手できる資金は表面利回り4~5%と仮定した場合、年200万円~250万円 賃貸に出すためのコストがかかるほか、住み替える住宅も必要 家賃収入が発生するまでには、最低でも1カ月~3カ月以上かかる(賃借人が見つからないと長期化する場合も) 不動産担保ローンでまとまったお金を借りる 不動産担保ローンとは、不動産を担保にして借りるローンのことです。実際には、担保となる不動産に抵当権を設定して借り入れをします。土地や一戸建て、マンション等が対象ですが、物件の立地は流動性の高い主要都市に限られる金融機関が多いようです。。 通常は本人名義の不動産が対象ですが、金融機関によっては配偶者や親名義の不動産でも担保にできるところもあります。使途が限定されないフリーローンですが、事業資金としては使えないことが多いようです。 不動産担保ローンの特徴としては、次のような点が挙げられます。 無担保のカードローンに比べ低金利で利用できる 借入限度額が大きい(時価5,000万円の場合、約3,500万円の借入が可能) 最長35年など長期で借りることもできる 一方で、次のような点に注意が必要なことも押さえておきましょう。 不動産の評価や審査に時間がかかり、融資実行まで1週間~1カ月程度かかる 不動産を担保とするため、事務手数料や不動産鑑定費用、印紙代、抵当権・根抵当権の登記費用などがかかる 返済不能になると担保不動産が処分される 完済時の年齢が70歳までなどと上限を設けている金融機関もある <不動産担保ローン>のポイント 所有する不動産を担保にお金を借りる 物件の場所は主要都市に限られる 入手できる金額は3,500万円程度(時価5,000万円の物件の場合) 融資実行まで1週間~1カ月程度かかる 完済時の年齢が70歳までなどと上限を設けている金融機関もある リースバックで持ち家を売却し、賃貸する 「リースバック」とは、自宅をリースバック専門の不動産会社へ売却し、売却代金を受け取る一方で、買主にリース料(家賃)を支払って元の自宅に住み続ける仕組みです。売却代金は一時金で受け取ることができ、使途に制限はありません。物件の立地は流動性の高い主要都市に限られ、リースバック会社によっては、最低物件価額が設定されている場合もあります。借地は対象外の不動産会社もありますので注意が必要です。 売却代金を受取るのは、2週間~1カ月程度と早めです。しかも、引越さずにこれまでの住まいに住み続けられる点は、突発的な事態に見舞われている状況下では大きなメリットと言えそうです。ただし、リースバックでは自宅を売却するため、所有権はなくなります。 売却価額は相場よりも低めで、時価5,000万円の物件の場合で最高3,500万円程度です。物件は買い戻すこともできますが、その際は通常、売却価額よりも高めになります。また、毎月の家賃(リース料)には、固定資産税や火災保険・地震保険料、マンションなら管理費・修繕積立金も含まれ、やや高めの水準になる場合も。 対象となる人の年齢条件が「50歳以上」などと設定されていたり、全く設定がなかったりと、リースバック会社によって細部が異なりますので、確認して利用しましょう。職業や年収などの条件は厳しくなく、年金収入のみの人でも利用できます。 <リースバック>のポイント 自宅をリースバック会社へ売却し、売却代金を受け取る一方で、買主にリース料(家賃)を支払って元の自宅に住み続ける仕組み 物件の場所は主要都市に限られる 入手できる金額は最高3,500万円程度(時価5,000万円の物件の場合) 売却代金を受取るのは2週間~1カ月程度かかる リバースモーゲージでお金を借りる 自宅に住み続けながら、自宅を担保にして一時金や月々の生活費を借りる仕組みが「リバースモーゲージ」です。一部の金融機関で扱っています。利用できる年齢は55~65歳以上などと高めです。何かの事情で資金不足になった人のほか、住宅ローン残債の返済から解放されたい人、夫婦の一方が入院したときに入院費用や生活費の不足分などを補うといったときにも利用できます。 借り入れには、毎月(または毎年)一定額の融資を受ける「年金型」、一時金としてまとまった金額を一括で借りる「一括融資型」、必要なタイミングで借りる「枠内自由引出型」があり、金融機関によって異なります。 リバースモーゲージは、金融機関によって、エリアや不動産の種類、最低評価額が決められていることがあります。エリアは首都圏中心と限定されていることが多く、不動産の種類も一定評価額以上の戸建てが中心であることが多くなっています。他にも、相続人全員の同意がないと利用できないなど、借入要件が厳しめです。 なお、リバースモーゲージを利用するには、1週間~1カ月程度かかります。時価5,000万円の不動産だった場合で、最高3,000万円程度までの借入ができます。実際には、「年100万円」「毎月8万円」などといった借り方もあります。利息だけを毎月返済するのか、借入期間は全く返済せずに満期や亡くなったときに住宅を売却して返済するのかなど、契約で異なります。 また、相続人全員の同意が必要であったり、連帯保証人を求められたりすることもあります。「55歳以上」など年齢制限があり、それより低いと利用できません。 あらかじめ設定した契約期間が満了したり、利用者が亡くなったりしたときに、自宅を売却して返済します。返済後に残金があれば遺族に支払われますが、逆に、売却しても残債が残る場合は遺族に請求がいく場合があります(リコースタイプ)。最近は、残債があっても請求されないノンリコースタイプも増えています。 <リバースモーゲージ>のポイント 自宅に住み続けながら、自宅を担保に一時金や月々の生活費を借りる仕組み 物件の場所は首都圏等に限られる 入手できる金額は合計で最高3,000万円程度(時価5,000万円の物件の場合) リバースモーゲージで資金を入手するには1週間~1カ月程度かかる 利息だけを毎月返済するタイプもある 設定した満期や亡くなったときに住宅を売却して返済する まとめ 以上、自宅を活用して資金を生み出す方法と目安額、それぞれの概要などを見てきましたが、それを整理したのが下表です。 どの方法が自分に合っているのかは、どれくらいの資金が必要で、どれくらい急いでいるのかなどによっても異なります。また、物件の状況(築年数、所在地、戸建てなのかマンションなのか)によって、一部の方法に利用が限られる場合もあります。 さらに、借り入れの場合は、実際に適用される金利も1つの判断材料となるかもしれませんし、自身の収入状況によっては利用できない場合もあります。 まずは各サービスを提供する会社に問い合わせをした上で、希望する方法が選択肢として選べるのか、手にできる資金の金額はいくらなのか、下記のような比較表を作成し、どの方法がご自身の状況に最適なのかを見極めることをお勧めいたします。 表 自宅を活用して資金を生み出す方法 不動産担保ローンならSBIエステートファイナンス リースバックならSBIスマイル SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リースバックと不動産担保ローンの違いとは リースバックと不動産担保ローンは、不動産を活用して資金調達するところは同じですが、特徴や仕組みには違いがあります。両者の違いを理解しておくことで、ご自身のライフスタイルや考え方に合わせて最適... 次に読むべき記事 【FP解説】不動産担保ローンとリバースモーゲージの違いとは? 「預貯金が十分にはなく、まとまったお金が用意できない」といった悩みを持つことがあるかもしれません。そんな時、持ち家であれば、不動産を活かしてお金を捻出できないか?と思う人もいるのではないでし...