用語・制度のことが知りたい

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「用語・制度」の記事一覧

  • 住宅購入時の優遇制度を解説、2022年以降の変更点も紹介

    住宅購入時の優遇制度を解説

    住宅を購入するときは、「住宅ローン控除」をはじめとしたさまざまな優遇制度が用意されています。一方で、どのような優遇制度があるのか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。 この記事では、住宅購入で得られるさまざまな優遇制度について詳しく解説します。 住宅ローン控除 住宅ローンを借りて住宅を購入する場合は、住宅ローン控除が利用できる可能性があります。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、住宅取得者の住宅ローン金利負担の軽減を図るための制度です。住宅ローン年末残高の0.7%が10年間所得税から控除され、控除額と納税額に応じて所得税が還付されます。所得税から控除しきれない場合は、住民税から控除することも可能です。 関連記事はこちら【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 印紙税の軽減措置 住宅を購入する際は、売買契約書に収入印紙を貼付して印紙税を納めなくてはなりません。不動産売買契約書の印紙税は、軽減措置によって税率が引き下げられています。2024年3月31日までに作成される契約書については、以下の軽減税率が適用されます。 表 印紙税の軽減措置(単位:円) 契約金額 本則税率 軽減税率 100万円超 500万円以下 2,000 1,000 500万円超 1,000万円以下 10,000 5,000 1,000万円超 5,000万円以下 20,000 10,000 5,000万円超 1億円以下 60,000 30,000 1億円超 5億円以下 100,000 60,000 5億円超 10億円以下 200,000 160,000 印紙税は、物件価格(契約金額)が高くなるほど税負担も増える仕組みです。軽減措置の適用期間中に売買契約を締結すれば、印紙税の節税になります。 出典)国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」 登録免許税の軽減措置 登録免許税とは、購入した住宅(土地、建物)の登記を行うときに納める税金です。課税標準額(固定資産税評価額)に税率を掛けて税額を計算します。 購入した住宅の所有権を設定するため、新築住宅は所有権保存登記、中古住宅の場合は所有権移転登記を行わなくてはなりません。住宅ローンを利用する場合は、抵当権設定登記も必要です。 住宅購入に関する登録免許税の軽減措置は以下のとおりです。 表 登録免許税の軽減措置(単位:%) 登記の書類 本則税率 軽減税率 土地の所有権移転登記 2.0 1.5 住宅用家屋の所有権保存登記 0.4 0.15 住宅用家屋の所有権移転登記 2.0 0.3 抵当権設定登記 0.4 0.1 土地は2023年3月31日、住宅用家屋と抵当権は2022年3月31日まで軽減税率が適用される予定でしたが、令和5年度の税制改正により、その適用期限がが令和8年3月31日まで3年延長されました 出典)国税庁「登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」 不動産取得税の軽減制度 不動産取得税とは、住宅などの不動産を取得したときに課される税金です。税額は、課税標準額(固定資産税評価額)に税率を掛けて計算し、税率は土地・家屋ともに3.0%です。 住宅購入では、土地・家屋にかかる不動産取得税の軽減制度があります。2024年までに取得した土地については、課税標準額が1/2となり、「土地を取得後3年以内に住宅が新築されている」などの要件を満たすと、さらに税額が軽減されます。家屋については、以下の床面積要件を満たす新築住宅を購入した場合、課税標準額から1,200万円が控除されます。 表 新築住宅の床面積要件 住宅の種類 床面積要件 一戸建て 50㎡以上 240㎡以下 一戸建て以外(マンションなど) 40㎡以上 240㎡以下 中古住宅についても同様の軽減措置がありますが、現行の耐震基準に適合していることが要件です。住宅が新築された日に応じて、100万円から1,200万円の間で課税標準額から控除されます。 固定資産税の軽減制度 住宅を所有すると、毎年固定資産税が課税されます。固定資産税の税額は、土地・家屋ともに課税標準額(固定資産税評価額)の1.4%です。ただし、住宅用地には課税標準の特例措置があり、小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡までの部分)は課税標準額の1/6、一般住宅は課税標準額の1/3で税額を計算します。 家屋については、新築住宅で「50㎡以上 280㎡以下」という床面積要件を満たす場合、固定資産税額の2分の1が減額されます。減額期間は一戸建てが3年間、マンションが5年間で、2022年3月31日までに新築された住宅が対象となります。 なお、税制改正により、2024年3月31日までに延長されました。 出典)国土交通省「新築住宅に係る税額の減額措置」 住宅取得等のための資金にかかる贈与税非課税措置 父母や祖父母などの直系尊属から自ら居住する住宅の新築・購入、増改築のために金銭の贈与を受けた場合、以下の金額まで贈与税が非課税になります。 一般住宅:1,000万円 質の高い住宅:1,500万円 本措置を申請する受贈者(贈与を受ける人)は、下記の要件を満たす必要があります。 贈与年の1月1日で20歳以上 贈与年の合計所得金額が2,000万円以下 贈与年の翌年3月15日までにその家屋に居住する また、対象となる家屋は、床面積50㎡以上240㎡以下で中古住宅は耐震基準に適合するものである必要があります。なお、「質の高い住宅」とは下記のような要件を満たす住宅です。 断熱等性能等級4又は一次エネルギー消費量等級4以上の住宅 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上又は免震建築物の住宅 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上の住宅 本措置を受けるには、確定申告時に税務署に申請する必要があります。申請の際は「受贈者の戸籍謄本」「贈与年の所得金額を証明する書類」「売買契約書」「登記事項証明書」などが必要です。手続きの詳細は税務署に確認しましょう。 出典)国土交通省「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」 まとめ 個人の住宅取得を後押しするため、国はさまざまな優遇制度を用意しています。この記事で紹介した優遇制度を利用すれば、住宅購入費用の負担軽減が期待できます。なお、それぞれの制度には終了期限が設けられているので、常に最新の情報をチェックするようにしてください。住宅購入を検討しているなら、優遇制度を最大限に活用しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 住宅ローン控除(住宅ローン減税ともいいます)とは、住宅ローンを利用して住宅の新築、取得又は増改築等をした場合に利用できる、所得税額等を控除する制度です。住宅ローン控除を利用する場合、自身の状...記事を読む

  • 建物状況調査とは?診断項目やメリット・デメリット、利用方法を解説

    建物状況調査とは?メリット・デメリットと手続きの流れを解説

    中古住宅は新築より割安な価格で購入できるのが魅力です。しかし、元の所有者の維持管理や築年数などによって、品質に差が生じるため、購入する際には、性能や品質に問題がないか不安を感じるのではないでしょうか。そのような時、建物状況調査を利用すれば、購入前に建物の状況や不具合を確認することができます。 この記事では、建物状況調査の概要や診断項目、メリット・デメリットについて詳しく解説します。 建物状況調査とは 建物状況調査とは、宅建業法で定められた基準をもとに実施する検査のことです。一定以上の知識や技術力を有する「既存住宅状況調査技術者」が実施します。既存住宅状況調査技術者とは、国の定める講習を修了した建築士のことです。 建物状況調査が生まれた背景 建物状況調査は2018年の宅建業法改正に伴い、従来の「ホームインスペクション」とは一線を画す形で生まれました。宅建業法改正により、中古住宅の売買に関する手続きについて、以下3つが宅建業者に義務付けられています。 媒介契約締結時に建物状況調査のあっせんに関する書面を依頼者に交付する 買主に対して建物状況調査の結果を重要事項として説明する 売買契約成立時に売主と買主の双方が確認した事項を書面で交付する 宅建業者に義務付けられているのは、あくまでも「説明」や「あっせん」です。「実施」が義務付けられているわけではないので、注意しましょう。 建物状況調査の診断項目 建物状況調査の診断項目は、「構造耐力上主要な部分」と「雨水の侵入を防止する部分」の2つに分かれます。たとえば、木造2階建ての戸建て住宅の場合は以下のとおりです。 <構造耐力上主要な部分> 基礎 壁 柱 小屋組 土台 斜材 床版 屋根版 横架材 <雨水の侵入を防止する部分> 屋根 外壁 開口部 国土交通省の定める基準に従い、検査機器を使用して目視や非破壊検査を行います。物件の状態や規模によりますが、所要時間は3時間程度が一般的です。 建物状況調査とホームインスペクションの違い 建物状況調査に関連して、ホームインスペクションという言葉があります。ホームインスペクションとは、住宅に関する検査全般を意味する言葉で、業者によって検査員の資格の有無や検査内容が異なります。 一方で、建物状況調査は、既存住宅状況調査技術者の資格を有している検査員が、宅建業法で定められた基準に基づく検査内容を行います。つまり、広義の住宅検査全般をホームインスペクションと言い、有資格者による一定の基準に基づいて行われる検査を建物状況調査と言います。 建物状況調査のメリット 中古住宅の売買に建物状況調査を活用することには、売主と買主の双方にメリットがあります。 買主のメリット 買主には、以下のようなメリットがあります。 安心して購入できる 購入後のメンテナンスの予定が立てやすい 専門家からアドバイスを受けられる 専門家の調査によって、建物の状況や不具合の有無を確認できるので、安心して物件を購入できます。あらかじめ修繕の必要性を把握することで、購入後のリフォームや修繕といったメンテナンスや、費用の見積もりが立てやすくなるでしょう。調査結果に応じて、専門家からアドバイスを受けることも可能です。 売主のメリット 売主には、以下のようなメリットがあります。 引渡し後のトラブル回避が期待できる 競合物件との差別化につながる 建物状況調査の結果を買主に伝えてから売却できるので、引渡し後のトラブルを回避しやすくなります。建物状況調査を実施したことをアピールすれば、(調査を受けていない)競合物件との差別化にもつながるでしょう。 建物状況調査のデメリット 一方で、建物状況調査には以下のようなデメリットもあります。 買主のデメリット 調査費用を買主が負担する場合、コストがかかるのがデメリットです。また、建物状況調査は、あくまで目視や非破壊検査で行われるため、壁の中などの見えないところまで細かく調査することはできません。建物状況調査の結果に問題がなかったとしても、全く不具合がないと保証できるわけではない点に注意が必要です。 売主のデメリット 調査費用を売主が負担する場合は、物件売却で得られる収益が減少します。また、建物状況調査を実施すると、物件に不具合が見つかるかもしれません。調査結果によっては、補修費用の負担や値下げの必要性が生じる場合があります。 建物状況調査の利用方法 建物状況調査を利用する場合は、「既存住宅状況調査技術者検索サイト」で調査実施者を探します。不動産業者が提携している調査実施者がいる場合は、あっせんを希望する旨を伝えて対応してもらう方法もあります。 調査実施者を選定したら、見積もりをとって診断内容や料金を確認しましょう。見積もりの内容に問題がなければ、診断日時を決定します。検査当日までに、以下のような書類が必要です。 間取り図 販売図面 確認済証 検査済証 住宅性能評価証 新耐震基準適合証明書 また、マンションの場合は、上記に加えて管理規約や長期修繕計画の写しなども必要です。調査を依頼する業者に確認して準備を進めましょう。 検査当日は基本的に依頼者も立ち合い、その場で説明を受けます。後日報告書が送られてくるので、不明点があれば問い合わせて確認しましょう。 出典)住宅リフォーム推進協議会「既存住宅状況調査技術者検索サイト」 まとめ 建物状況調査を活用すれば、取引前に建物の状況を把握できるので、中古住宅を安心して売買できます。広義のホームインスペクションとの違いを理解したうえで、依頼する調査実施者を探しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マンション管理計画認定制度とは?メリット・デメリットを解説 2022年4月から「マンション管理計画認定制度」がスタートします。マンション管理適正化の推進を目的に創設された制度で、マンションの管理や資産価値などに影響を与える可能性があります。 本制度の...記事を読む

    2022.05.04制度
  • 雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?適用要件や失業給付、手続きの流れをわかりやすく解説

    雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?内容をわかりやすく解説

    2022年1月1日から65歳以上の労働者を対象に「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されました。雇用保険に加入できる条件が緩和されたため、非正規社員として短時間の勤務をする場合でも、失業に備えることが出来るようになりました。 この記事では、雇用保険マルチジョブホルダー制度の概要や適用要件、失業給付についてわかりやすく解説します。 雇用保険マルチジョブホルダー制度とは 雇用保険マルチジョブホルダー制度とは、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、2つの事業所において一定の要件を満たす場合に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)になれる制度です。 従来の制度では、65歳以上の労働者が雇用保険に加入するには「労働時間週20時間以上、かつ31日以上の雇用期間」などの条件を満たす必要がありました。 現在は少子高齢化が進み、「老後資金の確保」「労働力不足の解消」が課題となっています。雇用保険の加入条件緩和によって高齢者の労働機会が増加すれば、勤労収入を老後の生活費を充てられます。また、若年層だけでは足りない労働力を補う効果も期待できます。 出典)厚生労働省「マルチジョブホルダー制度とは」 雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用要件 雇用保険マルチジョブホルダー制度を利用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること 2つの事業所の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満) 2つの事業所それぞれの雇用見込みが31日以上であること 3つ以上の事業所で勤務している場合は、労働時間や賃金などを考慮して、マルチ高年齢被保険者として申出をする本人が2つの事業所を選択します。 加入後の取扱いは通常の雇用保険と同じで、原則として任意脱退はできません。上記の適用要件を満たさなくなった場合を除き、加入する事業所を任意に切り替えることもできないので注意しましょう。 雇用保険マルチジョブホルダー制度の資格取得手続きの流れ 通常の雇用保険は、事業主が資格取得・喪失の手続きを行います。一方、雇用保険マルチジョブホルダー制度では、適用を希望する本人が手続きをする必要があります。手続きの流れは以下のとおりです。 ハローワークまたは厚生労働省HPから「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届(マルチ雇入届)」などを入手する 2つの事業所にマルチ雇入届の記入、確認資料(雇用契約書など)の交付を依頼する 本人の住居所を管轄するハローワークへ必要書類を提出する ハローワークから本人および2つの事業所に通知される ハローワークで申請内容を確認のうえ、問題がなければ申出日に被保険者の資格を取得します。必要書類の入手方法や手続きのやり方がわからない場合は、ハローワークに問い合わせて確認しましょう。 ハローワークに提出する書類一覧 手続きの際は、ハローワークへ以下の書類を提出します。 事業主から交付されたマルチ雇入届と確認資料(2社分) 個人番号登録・変更届 被保険者資格取得時アンケート 本人確認資料・個人番号の確認できる資料 また、事業所に依頼する主な確認資料は以下のとおりです。 賃金台帳 出勤簿(記載年月日の直近1ヵ月分) 労働者名簿 雇用契約書 労働条件通知書 雇入通知書 雇用主との関係(親族の会社に勤めているなど)によっては、別途確認資料が必要になる場合があります。 雇用保険マルチジョブホルダー制度のメリット 雇用保険マルチジョブホルダー制度は事業主と労働者の双方にメリットがあります。 事業主のメリット 事業主は、雇用保険資格の取得・喪失手続きが簡便化されるのがメリットです。雇用保険マルチジョブホルダー制度では労働者自身が手続きを行うため、事業主は必要事項の記載や証明などを行うだけで済みます。 労働者のメリット マルチ高年齢被保険者であった労働者が失業した場合、一定の要件を満たすと高年齢求職者給付金を一時金で受給できます。給付額(基本手当日額×支給日数)は以下のとおりです。 <基本手当日額> 離職以前6ヵ月の賃金合計÷180×(50~80%) <支給日数> 被保険者期間1年未満:基本手当日額の30日分 被保険者期間1年以上:基本手当日額の50日分 「離職日以前1年間に被保険者期間が通算6ヵ月以上あること」が受給要件です。2つの事業所のうち、1つのみを離職した場合でも受給できます。 ただし、3つ以上の事業所で勤務している場合、3つ目の事業所と併せてマルチ高年齢被保険者の要件を満たす場合は、被保険者期間が継続されるので受給できません。 また、2つの事業所のうち1つのみを離職した場合、基本手当日額の計算に離職していない事業所の賃金は含まれないので注意しましょう。 雇用保険マルチジョブホルダー制度の注意点 雇用保険マルチジョブホルダー制度では、資格取得の日から雇用保険料の納付義務が発生します。申出日より前にさかのぼって被保険者となることはできません。 事業主には、手続きの際に必要な証明を行う義務があります。申出を理由に労働者に対して不利益な取り扱い(解雇、雇止め、労働条件の不利益変更など)を行うことは認められません。もし事業主の協力を得られない場合はハローワークに相談しましょう。 まとめ 65歳以上で2つ以上の事業所で働いている場合、一定の条件を満たせば雇用保険に加入できます。また、短時間勤務で働いている場合であっても、雇用保険マルチジョブホルダー制度を利用できるように別の企業で働くことで、雇用保険に加入できます。より安心して働き続けるために、本制度の積極的活用をおすすめします。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 老齢年金の繰り上げと繰り下げ、どっちがお得? 老齢年金の受給開始年齢が近づいてくると、受給開始年齢の繰り上げや繰り下げを検討する人も多いのではないでしょうか。受給開始年齢を変更することで、受け取れる年金の見込み額は大きく変わります。 こ...記事を読む

    2022.04.20制度
  • 定期借家契約と普通借家契約の違いとは?

    定期借家契約と普通借家契約の違いとは?

    不動産の賃貸借契約には、「定期借家契約」と「普通借家契約」があります。しかし、両者は契約の更新方法などに違いがあるので、賃貸住宅に安心して住めるように、それぞれの契約の仕組みを理解しておくことが大切です。 この記事では、定期借家契約と普通借家契約の違いについて詳しく解説します。 定期借家契約と普通借家契約の概要 定期借家契約とは 定期借家契約とは、契約期間があらかじめ決められている賃貸借契約です。契約の更新がないため、契約期間が満了すると借主は退去しなくてはなりません。ただし、貸主と借主の双方が合意すれば、期間満了後の再契約は可能です。 定期借家契約の場合、貸主側の都合で契約期間が定められるため、普通借家契約に比べると割安な家賃で設定されることが多いです。貸主側は定めた期間で貸主に退去してもらえるため、「一時的に不在となる物件を賃貸に出す」「現在空き家の実家を自分が住むまで賃貸に出す」といった場面での活用ができます。 普通借家契約とは 普通借家契約は、一般的な不動産賃貸で利用される賃貸借契約です。契約期間は通常2年で設定され、期間満了後も借主が希望すれば契約は更新されるため、長く住み続けることが可能です。借主が手厚く保護される契約形態であるため、貸主からの一方的な都合による退去はありません。 普通借家契約の場合、貸主側の都合で契約期間を定められますが、借主が希望する限り更新を拒むことができません。そのため、貸主側が短期間で退去してほしい場合には、適していません。 定期借家契約と普通借家契約の主な違い 定期借家契約と普通借家契約の主な違いは以下の2つです。 契約の更新 前述のとおり、定期借家契約は期間満了によって契約が終了します。貸主と借主の双方で合意できた場合のみ再契約が可能なので、借主が住み続けたいと思っても、貸主が再契約を認めなければ退去する必要があります。 一方で、普通借家契約は借主が希望する限り、契約を更新し、住み続けることができます。「建物に問題がある」、「借主が契約を違反する」などの正当事由がない限り、貸主は契約更新を拒絶できません。 賃料の増減額請求権 賃料の増減額請求権とは、現在支払っている、または受け取っている家賃が賃料相場と比較して不相当となった場合に、賃貸借契約の相手方に対して家賃の減額、増額を請求できる権利です。 賃貸住宅の賃料相場は、景気動向や需供バランスによって変動します。そのため、同じ物件に長く住んでいると、入居時に定めた家賃が賃料相場と合わなくなることがあります。 定期借家契約と普通借家契約ともに、原則として賃料の増減額請求権が認められます。ただし、定期借家契約は賃料の増減額請求権を排除する特約を定めることが可能です。(借地借家法第38条) 一方で、普通借家契約は賃料の増減額請求権を排除する特約は無効ですが、家賃を増額しないことについての特約のみ認められます。(借地借家法第32条) 定期借家契約と普通借家契約のその他の違い 定期借家契約と普通借家契約は、以下のような点でも違いがあります。 契約方法や説明 普通借家契約を締結するには口頭でも可能ですが、定期借家契約は公正証書などの書面で行う必要があります。また、定期借家契約は賃貸借契約書とは別に、契約の更新がないことを書面で交付して説明しなくてはなりません。 契約期間や通知義務 普通借家契約は1年以上で設定する必要があり、1年未満の賃貸借契約の場合は、期間の定めのない賃貸借とみなされます。一方で、定期借家契約は契約期間に制限がなく、1年未満の契約も有効となります。 1年以上の定期借家契約の場合、貸主は契約期間満了の1年から6ヵ月前までに借主に対して契約終了を通知する義務があります。通知をしない場合、貸主は契約終了を借主に対抗できません。借主は、通知の日から6ヵ月を経過するまでは同条件で住み続けられます。 中途解約 普通借家契約は一般的に中途解約に関する条項が記載されており、借主からの中途解約はその条項の範囲内で可能ですが、貸主からの場合は正当事由が必要です。一方で、定期借家契約では、貸主と借主のどちらも中途解約は原則認められません。 ただし、床面積200㎡未満の居住用建物でやむを得ない事情がある場合は、借主からの中途解約は可能です。なお、普通借家と定期借家ともに、中途解約に関する特約がある場合はその定めに従うこととなります。 定期借家契約と普通借家契約の違い一覧 定期借家契約と普通借家契約の違いは下表のとおりです。 定期借家契約と普通借家契約の違い 定期借家契約普通借家契約 契約方法公正証書等の書面*口頭、書面 更新の有無期間満了により終了し、更新がない(ただし、再契約は可能)正当事由がない限り更新 期間を1年未満とする賃貸借の効力1年未満の契約も有効期間の定めのない賃貸借とみなされる 賃料の増減請求特約の定めに従う特約にかかわらず、請求可能 賃借人の中途解約の可否・床面積200㎡未満の居住用建物でやむを得ない事情がある場合は、 借主からの中途解約が可能・中途解約に関する特約があればその定めに従う中途解約に関する特約があればその定めに従う ※賃貸人は「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書等とは別に、予め書面を交付して説明しなければならない 出典)国土交通省「定期借家制度」 定期借家契約と普通借家契約の利用割合 国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」によると、定期借家契約は普通借家契約と比較してほとんど利用されていません。 ※国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査 P.27」より引用 また、同調査では令和4年度に民間賃貸住宅に住み替えた世帯の定期借家制度の認知度が「知っている」が12.3%、「名前だけは知っている」が25.5%に留まっており、半数以上が「定期借家契約」を知らないまま、賃貸住宅に住み替えていたことも分かっています。 定期借家契約は利用数、認知度ともに低いのが現状ですが、知らなければ後々トラブルの原因になる恐れもあります。 出典)国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」 まとめ 定期借家契約は貸主の合意を得られなければ再契約ができず、退去する必要があります。短期間の入居なら家賃が安く済むかもしれませんが、長く住むには不向きです。賃貸住宅を借りたり、リースバックを利用したりする場合は、定期借家契約と普通借家契約の違いを理解しておきましょう。 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。※SBIスマイルのHPに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説 終身建物賃貸借契約は、高齢者が安心して賃貸住宅に居住できる仕組みです。老後も賃貸暮らしを続けるなら、終身建物賃貸借契約に対応している賃貸住宅も選択肢のひとつです。この記事では、終身建物賃貸借...記事を読む

    2022.04.13用語
  • マンション管理計画認定制度とは?認定基準やメリット・デメリットを解説

    マンション管理計画認定制度とは?メリット・デメリットを解説

    2022年4月から「マンション管理計画認定制度」がスタートします。マンション管理適正化の推進を目的に創設された制度で、マンションの管理や資産価値などに影響を与える可能性があります。 本制度の開始によって、具体的にどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。この記事ではマンション管理計画認定制度の概要や認定基準、手続きの流れについて詳しく解説します。 マンション管理計画認定制度とは? マンション管理計画認定制度とは、マンション管理計画が一定の基準を満たす場合に地方公共団体の認定を受けられる制度です。「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」の改正により、2022年4月から開始されます。 マンションは重要な居住形態ですが、国土交通省によると、2022年末時点で、築40年超のマンションは125.7万戸あります。10年後には260.8万戸(約2.1倍)、20年後には445.0万戸(約3.5倍)に増加する見込みです。築年数が古いマンションが増加傾向にあり、維持管理には多くの課題があります。 マンション管理計画認定制度の創設は、マンション管理の適正化を推進することが目的です。マンションの管理水準を底上げするため、必要に応じて地方公共団体が管理組合に指導や助言、勧告を実施します。 なお、認定を受けることができるのは、地方公共団体が「マンション管理適正化推進計画」を作成している地域にあるマンションです。 マンション管理計画の認定基準 マンション管理計画認定制度の創設を踏まえ、2021年9月には「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な指針(管理適正化指針)」が策定されました。本指針では、管理計画認定制度の認定基準などが定められています。主な認定基準は以下のとおりです。 修繕その他管理の方法 修繕その他の管理にかかる資金計画 管理組合の運営状況 管理適正化指針・市区独自の管理適正化指針に照らして適正なものであること 「長期修繕計画の計画期間が一定期間あるか」「計画に基づいて修繕積立金が設定されているか」「定期的に総会を開催しているか」といった点が審査されます。また、管理適正化指針や市区独自の指針に照らして、管理計画が適正なものであるかも判断されます。 助言・指導・勧告の判断基準の目安 地方公共団体は、管理適正化指針や市区独自の指針に基づき、必要に応じて管理組合の管理者などに助言や指導、勧告を行います。助言・指導・勧告の判断基準の目安は以下のとおりです。 助言・指導・勧告の判断基準の目安 判断項目助言・指導・勧告の判断基準の目安 管理組合の運営管理者が定められていない総会が開催されていない 管理規約管理規約が存在しない 管理組合の経理管理費と修繕積立金額が区分されていない 長期修繕計画の作成および見直し修繕積立金が積み立てられていない その他組合員名簿、居住者名簿がない 上記のような状況の場合、マンション管理が不適切と判断される恐れがあります。 マンション管理計画認定制度のメリット マンション管理計画認定制度のメリットは以下のとおりです。 マンション管理水準の維持向上につながる 市場評価・地域価値の向上が期待できる 購入希望者がマンション管理状況を把握しやすくなる 金利優遇を受けられる(新築の場合) 管理者や区分所有者のマンション管理に対する意識が高まり、管理水準の維持向上につながります。地方公共団体の認定を受けたマンションであることをアピールすれば、市場評価や立地している地域価値の向上も期待できるでしょう。 現在は、購入希望者がマンションの管理状況を把握するのは簡単ではありません。しかし、今後は認定の有無を確認すれば、一定の管理水準を満たしているかを把握できるようになります。 また、中古だけでなく、新築マンションにも管理計画を認定する制度が開始される予定です(予備認定)。予備認定を受けた新築マンションを取得する場合は、住宅金融支援機構の「フラット35」の金利が一定期間引き下げられます。 出典)住宅金融支援機構 「【フラット35】令和4年4月の制度変更事項のお知らせ」より マンション管理計画認定制度のデメリット マンション管理計画認定制度のデメリットは、マンション管理組合の事務負担が増えることです。 認定を受けるには認定申請書や長期修繕計画を作成し、必要書類を準備して地方公共団体に申請しなくてはなりません。一度認定を受けたら終わりではなく、5年ごとの更新もあります。管理水準の底上げは期待できますが、管理組合の負担は大きなものになるでしょう。 ただし、マンション管理センターによる「管理計画認定手続き支援サービス(オンライン申請)」を利用すれば、事務負担の軽減が期待できます(詳細は後述)。 マンション管理計画認定の流れ マンション管理計画の認定申請方法は、「オンライン申請」と「窓口への直接申請」の2つがあります。オンライン申請の流れは以下のとおりです。 マンション管理センターへ認定申請依頼 マンション管理士の事前確認 事前確認適合通知(適合証)の発行 地方公共団体へ認定申請 認定(マンション管理センターの閲覧サイトで公表) オンライン申請でマンション管理士の事前確認を受けて適合証が発行されると、地方公共団体が審査の事務手続きを省略できる仕組みになっています。オンライン申請のほうが、申請手続きをスムーズに進められるでしょう。 窓口への直接申請は地方公共団体によって手続きの流れが異なるため、申請する地方公共団体に直接確認してください。事前確認や認定申請では手数料がかかる可能性もあるので、申請前に確認しておくことが大切です。 認定申請の必要書類 認定申請に必要な書類は以下のとおりです(神奈川県の場合)。 認定申請書 総会議事録の写し 管理規約の写し 貸借対照表 収支決算書 各戸の修繕積立金滞納額がわかる書類 長期修繕計画の写し 組合員・居住者の名簿の保証書 必要書類を準備する際は、記載内容や事業年度などの諸条件を地方公共団体に確認しておきましょう。神奈川県の場合、長期修繕計画については「計画期間30年以上」「残存期間内に大規模修繕工事2回以上含まれている」といった要件があります。 マンション長寿命化促進税制が与える影響 令和5年度税制改正の大綱にて、マンション長寿命化促進税制の創設が決定しました。この制度は、一定の条件を満たしたマンションを所有する区分所有者の固定資産税を減額できる制度です。 マンション長寿命化促進税制の適用を受けるには、マンションと管理計画の面で、条件を満たす必要があります。マンション管理計画認定制度の認定を受けることで、管理計画の面での適用条件を満たすことができます。 マンション長寿命化促進税制の創設により、マンション管理計画認定制度利用件数の増加が期待されます。 関連記事はこちらマンション長寿命化促進税制とは?概要やメリットを解説 まとめ マンション管理計画認定制度を利用して地方公共団体から認定を受けると、マンションの価値向上につながるかもしれません。ただし、認定基準はマンションを適切に維持管理するうえで最低限の基準を定めているものなので、認定を受けることが必ずしも価値の向上に寄与するとは限りません。 マンション管理組合の事務負担が増えるデメリットがあり、認定制度の効果には不透明な部分もあります。認定制度創設の影響は冷静に見極める必要があるでしょう。 出典) ・神奈川県県土整備局「マンション管理計画認定制度管理組合向け説明会」 ・国土交通省 「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」の策定について 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ DINKsマンションとは?メリットや注意点を解説 ここ数年、”DINKsマンション”や”コンパクトマンション”の供給戸数が再び増加しており、今後さらに人気が高まる可能性があります。DINKsマンションを購入するメリットがある一方で、購入する...記事を読む

    2022.03.02制度
  • 確定申告とは?手続きの流れとやり方をわかりやすく解説

    確定申告とは?手続きの流れや方法を解説

    個人で事業を営んでいなくとも、「副業収入がある」「ふるさと納税をした」などの際に、確定申告が必要になることもあります。一方で、どのような時に、どのような手続きが必要なのか、正確に理解していない人も多いかもしれません。 この記事では確定申告の概要や手続き、申告方法を解説します。 確定申告とは 確定申告とは、定められた期間内に確定申告書を提出する手続きです。確定申告書には、1月1日から12月31日の1年間に生じた、すべての所得金額と所得税額を記載する必要があります。確定申告をすることで、源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金と、実際に納めるべき税金との過不足が調整されます。 このように、納税者自らが税金を計算して納税するため、「申告納税方式」と呼ばれます。確定申告期間は、毎年2月16日から3月15日であり、申告期限が土日祝日の場合は、その翌営業日が期限となります。 確定申告と還付申告の違い 確定申告と似たような言葉に「還付申告」があります。還付申告とは、納めすぎた税金を受け取るための申告です。納めた税金が不足している場合、確定申告は義務が生じますが、還付申告に義務は生じません。また、確定申告期間とは関係なく、1月1日から5年間提出することが可能です。 出典)国税庁「No.2030 還付申告」 確定申告が必要な人 確定申告は、「確定申告をしなければならない人」と「確定申告をしなくてもよい人」に分かれます。ここでは、どのような人が確定申告をする必要があり、どのような人が確定申告をする必要がないか、を説明します。 確定申告をしなければならない人 まずは、確定申告をしなければならない人について、「会社員」「年金受給者」「それ以外の人(個人事業主等)」に分けて説明します。 会社員 会社員は勤務先で年末調整を受けられるので、基本的には確定申告は不要です。ただし、以下の要件に当てはまる人は、確定申告をする必要があります。 年収が2,000万円を超える人 給与を1か所から受けていて、かつ、給与所得以外(副業など)の所得が年20万円を超える人 給与を2カ所以上から受け取り、かつ、年末調整をされなかった給与収入と給与所得以外(副業など)の所得の合計が20万円を超える人 副業をしている場合でも、所得が20万円を超えなければ、確定申告は不要です。また、給与を2か所以上から受け取っていても、所得が20万円を超えるか否か、が境界線となります。 年金受給者 年金受給者は確定申告不要制度が設けられているため、多くの人が確定申告をする必要がありません。ただし、以下の要件に当てはまる場合は、確定申告をする必要があります。 公的年金等の収入金額(2か所以上ある場合は合計額)が400万円超 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円超 年金受給者も、会社員と同様に、公的年金以外の所得が20万円を超えるか否か、が境界線となります。ただし、異なる点として、公的年金等の収入が400万円を超えた場合にも、確定申告が必要となります。 出典)政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」 それ以外の人(個人事業主等) 会社員、年金受給者以外の人は、基本的に確定申告をする必要があります。具体的には以下のような人です。 事業所得や不動産所得などがある人 退職所得がある人 個人事業主やフリーランスなど、事業所得がある人は、原則として毎年確定申告をしなければなりません。退職金については「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、源泉徴収による課税が済みます。ただし、外国企業から受け取った退職金など、源泉徴収されないものがあるので注意しましょう。 出典)国税庁「確定申告が必要な方」 確定申告をしなくてもよい人 確定申告をしなくてもよい人は、前述の「義務がある人」以外の人を指します。しかし、その中には、「確定申告をしたほうが良い人」が存在します。「確定申告をしたほうが良い人」とは、一口に言うなれば、確定申告をすることで、経済的なメリットがある人です。たとえば、以下のような人が該当します。 医療費が10万円を超えた人 寄附やふるさと納税をした人 住宅ローンを借りた人 事業で赤字を出した人 FXや株で損を出した人 医療費控除や寄付金控除は、所得控除に該当し、所得が減少することで減税できます。住宅ローン控除は、税額控除に該当し、所得税や住民税から直接的に減税されます。事業赤字や投資の損失は、損失の繰越控除ができるため、翌年以降の利益を圧縮できる場合があります。 確定申告の方法 確定申告は以下の手続きで進めます。順に説明していきます。 必要書類の準備 確定申告書の作成 確定申告書の提出 納税、還付手続き 必要書類の準備 まずは確定申告に必要な書類を準備しましょう。主な必要書類は以下のとおりです。 確定申告書(AまたはB) 源泉徴収票 各種控除証明書 金融機関の口座情報 マイナンバーカード 確定申告書はAとBの2種類があります。確定申告書Aは、申告できる所得が限定されている簡易版です。確定申告書Bは、すべての所得の申告に使用できます。会社員や年金受給者が医療費控除などを受ける場合は、確定申告書Aを使うといいでしょう。 確定申告書の作成 必要書類が準備できたら、書類の内容に基づいて確定申告書を作成します。主な作成方法は以下のとおりです。 国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成する 会計ソフトで作成する 確定申告会場や税務署で作成する 税理士に依頼する 給与所得者などが、医療費控除や寄付金控除などを行う場合は、国税庁の確定申告書等作成コーナーが便利です。個人事業主やフリーランスの人は、市販の会計ソフトを使うと帳簿や青色申告決算書なども一緒に作成できます。 自分で作成することが難しいときは、確定申告会場や税務署で、作成方法を教えてもらうこともできます。また、申告内容が複雑な場合などは、税理士の代行サービスを検討しましょう。 確定申告書の提出 確定申告書の作成が完了したら税務署に提出します。提出方法は以下3つです。 郵送 税務署に持参 e-Tax(電子申告) パソコンやスマホの操作に慣れている人にとっては、e-Taxが最も手軽な方法です。紙で作成した場合など、所管の税務署に持参や郵送する方法もあります。いずれの方法においても、申告期間は毎年2月16日から3月15日です。 納税、還付手続き 納税義務がある人は、納税手続きを行いましょう。納税方法は以下6つです。 ダイレクト納付 インターネットバンキング等 クレジットカード納付 コンビニ納付 振替納税 窓口納付 個人で事業を営んでいる人など、毎年確定申告を行う場合は振替納税が便利です。一度手続きを行うと、次回以降も振替納税とすることができます。一度限りや、毎年するわけではないという人は、e-Taxを利用して、パソコンやスマホから納税することも可能です。 納税ではなく還付の場合は、確定申告書に記入するだけで、別途手続きは不要です。確定申告書に記入した口座に還付金が振り込まれます。通常、還付手続きまでは1か月から1か月半程度かかりますが、e-Taxの場合は3週間程度で処理されることもあります。 出典)国税庁「[手続名]国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法)」 確定申告の注意点 申告義務がある人は、必ず期限内に確定申告を行いましょう。確定申告をしないと。無申告加算税や延滞税が課されることがあります。また、申告義務がなくとも確定申告をすることで、減税や損失の繰越控除が利用できる人も、申告をするようにしましょう。 確定申告の内容に間違いがあった場合は、「修正申告」をする必要があります。税額を少なく申告をしているときは、必要な税額に延滞税が上乗せされて課されることもあります。一方で、税額を多く申告しているときは、「更正の請求」を行いましょう。請求内容が認められると、納めすぎた税金が還付されます。 まとめ 確定申告の義務がある人は、必ず期限内に、正しく申告しましょう。また、義務がなくとも、減税メリットがある人もいます。まずは、自身が確定申告の必要があるのか、ない場合でも受けられる控除はないか、などを確認するところから始めてみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説 融資や自治体のサービス、車検などを申し込むとき、納税証明書を求められることがあります。そもそも、納税証明書とはどのような書類なのでしょうか。日常生活で納税証明書が必要になる場面は多くないので...記事を読む

    2022.01.19用語
  • 自営業者が加入可能な国民年金基金とは?

    自営業者が加入可能な国民年金基金とは?

    自営業者やフリーランスは、会社員に比べて年金が少ないと言われています。しかし、国民年金に上乗せして国民年金基金に加入すれば、年金額を増やすことが可能です。 国民年金基金について名前は聞いたことがあっても、どんな制度なのかはよくわからないのではないでしょうか。国民年金基金にはデメリットもあるため、加入する前に特徴を理解しておくことが大切です。 そこでこの記事では、国民年金基金の仕組みやメリット・デメリットについて詳しく解説します。 国民年金基金とは 国民年金基金とは、自営業者やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者が安心して老後を過ごせるように、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして加入できる公的な年金制度です。掛金を納めた期間に応じた年金が将来支給されます。 国民年金のほかに厚生年金や企業年金に加入している会社員に比べると、国民年金のみに加入している自営業者の年金額は少ない傾向にあります。厚生労働省の資料によれば、2019年度の平均年金額は厚生年金が月額146,162円に対し、国民年金は月額56,049円です。 自営業者が国民年金基金に加入すれば、会社員との年金格差の解消が期待できます。 出典)厚生労働省「令和元年(2019年)度 厚生年金保険・国民年金事業の概況P8、P20」 国民年金基金に加入できる人 国民年金基金の加入資格は以下のとおりです。 20歳以上60歳未満の国民年金第1号被保険者 60歳以上65歳以下または海外居住者で、国民年金に任意加入している人 上記要件を満たしていれば、学生や主婦でも加入可能です。しかし、国民年金保険料を免除されている人は、国民年金基金には加入できません。 国民年金基金の成り立ち 1980年代後半に国会で「自営業者にも2階建ての年金を整備すべき」との議論が行われ、1989年に国民年金基金制度の導入が決定し、1991年に施行されました。当初は全国47都道府県で地域型国民年金基金、25の業種で職能型国民年金基金が設立されました。 その後の2019年には、加入員・受給者の利便性向上や運営基盤の安定性を図るために全国国民年金基金が成立し、全国47都道府県の地域型国民年金基金と22の職能型国民年金基金が合併しました。 国民年金基金の運営状況 2020年度末の国民年金第1号被保険者数(任意加入を含む)は1,449万人です。それに対して、国民年金基金の加入員数は2003年度末の約78万人をピークに減少が続いており、現存加入員数は約34万人にとどまります。 国民年金基金連合会の運用報告書によれば、2020年度の運用実績は国内外の株価上昇などもあって、年度ベースの収益率は24.44%で、1997年以降の累積実績では年率4.24%の収益率です。また、2021年3月末時点の積立金の運用残高は4兆6,679億円です。 足元の収益率の上昇の一方で、責任準備金は直近10年以上の不足が続いており、財政状況が好調とは言い難い状態が続いています。このまま加入員数の減少や財政運営の悪化が続くようであれば制度が破綻する可能性も低いとは言えなくなる恐れがあります。 出典) ・厚生労働省「令和2年(2020年)度の国民年金の加入・保険料納付状況P1」 ・国民年金基金「事業の概況・状況(現存加入員数の状況)」 ・国民年金基金連合会「2020年度 運用報告書」 国民年金基金のメリット 国民年金基金には以下3つのメリットがあります。 終身年金である 国民年金基金は、65歳から一生涯受け取れる終身年金が基本です。掛金によって将来受け取る年金額が確定するため、老後の資金計画を立てやすいでしょう。 終身年金のほかに、受取期間が決まっている確定年金も用意されています。終身年金に確定年金を組み合わせるなど、ライフプランに合わせて年金額や受取期間を自由に設計できます。 掛金の上限額は月額68,000円で、加入後も口数単位で年金額や掛金額の増減が可能です。iDeCo(個人型確定拠出年金)と併用できますが、その場合は国民年金基金とiDeCoを合わせて月額68,000円が掛金の上限額となります。 万が一のときには家族に一時金が出る 国民年金基金の掛金は掛け捨てではなく、万が一早期に亡くなったときには家族に遺族一時金が支給されます。年金受給前や保証期間中に亡くなった場合は、保証期間に応じた一時金を遺族に残すことができます。 税制優遇がある 国民年金基金には以下3つの税制優遇があります。 掛金は全額社会保険料控除の対象 受け取る年金も公的年金等控除の対象 遺族一時金は全額非課税 掛金は全額が所得控除の対象となるため、確定申告によって所得税・住民税が軽減されます。将来受け取る年金には「公的年金等控除」が適用され、一定額までは非課税で受け取れます。万が一のときに支給される遺族一時金も全額非課税です。 国民年金基金のデメリット・注意点 国民年金基金には以下のようなデメリット・注意点もあります。 任意脱退、中途解約ができない 国民年金基金への加入は任意ですが、自己都合での脱退や中途解約はできません。途中で掛金を払えなくなった場合は、払い込みの一時中断が可能です。年金額は未納期間に応じて減額されます。未納分は後から納付することも可能です(納付可能期間は2年以内)。 なお、自己都合の解約は認められませんが、国民年金第1号被保険者でなくなるなど、加入資格を失う場合は脱退となります。脱退した場合は加入期間の長さを問わず、納めた掛金は将来年金として給付されます。 加入期間中の死亡時には、遺族一時金が掛金を下回ることがある 国民年金基金は年金受給前や保証期間満了前に死亡すると、遺族に一時金が支給されます。しかし、遺族一時金の額は掛金を下回ることがあります。そのため、あらかじめ加入前に遺族一時金の額を確認しておきましょう。 破綻リスクがある 国民年金基金は国民年金法に基づいて運営されている公的な制度ですが、解散する可能性もあります。 上述のように好調な相場環境もあって、直近では収益率や積立金の額は上昇しています。しかし、加入者数は減少が続いており、ピーク時の半分程度に落ち込んでいます。財政運営も一時的に回復していますが、令和2年度の責任準備金の不足分は約8,000億円となっており、今後の状況によっては破綻リスクもゼロとはいえません。 もし解散する場合は、解散時点の残余財産を加入員および受給者で分配することになっており、分配額はそれまで支払った掛金額を下回ることがあります。 まとめ 国民年金基金は一生涯受け取れる終身年金であり、税制優遇を受けられるのが魅力です。国民年金に上乗せして加入できるので、自営業者やフリーランスの年金対策として活用できます。 ただし、任意脱退や中途解約はできないので、メリット・デメリットをよく比較した上で加入を検討しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 個人事業主などの自営業者は年金が少ない?年金対策も解説 個人事業主などの自営業者は、会社員に比べて年金が少ないと言われます。しかし、具体的にはどのくらい異なるのでしょうか。年金額が少ないと言われる理由は、自営業者と会社員では、適用される年金制度が...記事を読む

    2021.12.29制度年金
  • iDeCo(イデコ)の仕組みとは?メリット・デメリットを解説

    iDeCo(イデコ)は、公的年金だけでは不足する老後資金を準備するための制度です。iDeCoについて聞いたことはあっても、その特徴はよくわからない方もいるのではないでしょうか。iDeCoは2022年に制度改正が予定されているため、その内容を理解しておくことも大切です。 この記事では、iDeCoの仕組みやメリット・デメリット、加入手続きの流れ、制度改正の内容について詳しく解説します。 iDeCo(イデコ)とは iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、自分で掛金を拠出し、商品を選んで運用する私的年金です。運用した掛金は、原則60歳以降に一時金または年金として受け取ることができます。 iDeCoには税制上の優遇措置が講じられており、一般的な貯蓄や運用では得られない節税効果が期待できるのが特徴です。公的年金(国民年金・厚生年金)に上乗せして加入できるため、老後資金を準備する手段として活用できます。 加入資格 iDeCoの加入資格は以下のとおりです。 自営業者や会社員、公務員など多くの人が加入対象となっています。ただし、会社員は勤務先の年金制度によっては加入できない場合があります。詳しくは、勤務先の担当者に確認するといいでしょう。 出典)iDeCo公式サイト iDeCo(イデコ)の仕組み 掛金の上限額 iDeCoの掛金額は、加入資格に応じて以下のように上限額が決まっています。 加入資格掛金の上限額 自営業者月額6.8万円(年額81.6万円)※国民年金基金または付加保険料との合算 企業年金がない会社員月額2.3万円(年額27.6万円) 企業型DCに加入している会社員月額2.0万円(年額24.0万円) DB(確定給付年金)のみに加入している会社員DBと企業型DCに加入している会社員公務員等月額1.2万円(年額14.4万円) 専業主婦(夫)月額2.3万円(年額27.6万円) 国民年金のみの自営業者は、会社員や公務員に比べて掛金の上限額が大きくなっています。ただし、国民年金基金または国民年金付加保険料との合算となる点に注意が必要です。たとえば、付加年金に加入している場合、iDeCoの掛金上限額は月額6.7万円となります。 iDeCoは月々5,000円から始められ、1,000円単位で自由に設定できます。掛金額は1年(12月分~翌年11月分)に1回のみ変更可能です。 運用商品 iDeCoは、金融機関が提示する運用商品の中から、自分で商品を選んで運用する必要があります。運用商品は投資信託が中心ですが、定期預金や保険などの元本保証商品も用意されています。 運用商品を選定する際は、自分の運用方針に沿って配分比率(どの商品に掛金の何%を振り向けるか)を決めます。 掛金の給付 iDeCoの掛金は、原則として60歳以降に老齢給付金として受け取れます。受け取り方法は以下3つから選択可能 です。 一時金として一括で受け取る 年金として受け取る 一時金と年金を組み合わせて受け取る 一時金は、70歳までの間に受け取ります。年金は、5年以上20年以下の期間で金融機関(運営管理機関)が定める方法で受け取ることになります。金融機関によっては、一時金と年金を組み合わせて受け取ることも可能です。 iDeCoの通算加入期間が10年以上の場合は、60歳から受給を開始できます。通算加入期間が10年に満たない場合は、加入期間に応じて受給開始年齢が61~65歳に繰り下げられます。 出典)iDeCo公式サイト iDeCo(イデコ)の給付(受取方法)について 年金制度間の移換(ポータビリティ) iDeCoは、転職や離職の際に年金制度間での移換(ポータビリティ)が可能です。たとえば、会社員から自営業者になる場合、加入していた企業型DCやDBの資産をiDeCoに持ち運ぶことができます。移換手続きについては、金融機関の窓口で相談しましょう。 iDeCoの3つの節税メリット iDeCoは税制上の優遇措置が講じされており、節税効果が高いのが魅力です。具体的には、以下3つの節税メリットがあります。 掛金は全額所得控除 iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となるため、所得税と住民税が軽減されます。たとえば、掛金額が月額1万円で、所得税率と住民税率がそれぞれ10%だとすると、年間2.4万円の節税となります。 ただし、もともと税金を払っていない専業主婦(夫)は、所得控除のメリットを受けられないので注意が必要です。 自営業者は、国民年金基金連合会が発行する「小規模企業共済等掛金払込証明書」を使って確定申告を行いましょう。会社員は勤務先で年末調整を受けることが可能です。 運用益は非課税 投資信託などの金融商品の利益には、通常約20%の税金がかかります。しかし、iDeCoの運用益は非課税であるため、税金はかかりません。通常なら差し引かれる税金分を投資に回せるので、効率的に資産を増やせます。 受取時は所得控除の適用対象 iDeCoは、60歳以降に給付を受け取るときにも所得控除が適用されます。一時金で受け取るときは「退職所得控除」、年金の場合は「公的年金等控除」が適用されるため、一定額は非課税になります。 受け取り方法によって控除額が変わるため、状況に応じて有利な方法を選択することが大切です。自分で判断できない場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。 出典)iDeCo公式サイト iDeCo(イデコ)の3つの税制メリット iDeCoのデメリット・注意点 iDeCoは老後資金づくりに適した制度ですが、以下のようなデメリット・注意点もあります。 原則60歳まで引き出せない iDeCoの掛金は原則60歳まで引き出せません。掛金を無理に増やすと、手元資金が不足する恐れがあります。将来への備えは大事ですが、無理のない範囲で掛金を設定することが大切です。 運用成績によっては給付額が減少する iDeCoは、運用成績によって将来もらえる給付額が変動します。投資信託には価格変動リスクがあるので、運用がうまくいけば給付額は増えますが、資産価格の下落によって元本割れする可能性もあります。 運用のリスクを軽減するには、国内外の資産に分散投資ができる低コストの投資信託を選び、短期の値動きに一喜一憂せずに積み立てを長く続けることが大切です。 金融庁の資料によれば、資産や地域を分散した積立投資を長期間続けることで、結果的に元本割れの可能性が低くなる傾向にあります。どうしても元本割れを避けたい場合は、定期預金などの元本保証商品を検討しましょう。 出典)金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」 手数料がかかる iDeCoは加入時や運用期間中に手数料がかかります。手数料は国民年金基金連合会に支払うものと、金融機関(運営管理機関)に支払うものの2種類があります。国民年金基金連合会の手数料は以下のとおりです。 加入・移換手数料(初回1回のみ):2,829円 加入者手数料(掛金納付の都度):105円 金融機関の手数料は、各機関によって異なります。比較検討した上で、なるべく手数料が安い金融機関を選ぶといいでしょう。 出典)iDeCo公式サイト 国民年金基金連合会の手数料について 金融機関によって運用商品が異なる iDeCoは投資信託や定期預金、保険商品などで運用できますが、金融機関によって運用商品の種類や数が異なります。特に投資信託は、商品によって投資対象資産や手数料(信託報酬など)に違いがあります。 複数の金融機関を比較して、自分の運用方針に合った商品を扱っている金融機関を選びましょう。iDeCoの金融機関は途中で変更も可能です。 iDeCoの加入手続きの流れ iDeCoの加入手続きの流れは以下のとおりです。 事前準備を行う 取扱金融機関へ申込書類を提出する ID・パスワードを受け取る 運用開始 まずは加入資格を確認し、掛金額や運用方針を決めます。複数の金融機関に資料請求を行い、手数料や商品ラインナップを比較しましょう。加入する金融機関が決まったら、申込書類を提出して加入手続きを行います。 国民年金基金連合会で確認・手続きが完了すると、加入者サイトにログインするためのID・パスワードが発行され、運用が開始されます。手続きについてわからないことがあれば、金融機関のコールセンターなどに確認しましょう。 企業型DC加入者は注意! 企業型DCに加入している会社員がiDeCoに加入するには、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金、これらの合計額について以下の要件を満たす必要があります。 企業型DCに加入している人がiDeCoに加入する場合企業型DCとDBに加入している人がiDeCoに加入する場合 企業型DCの事業主掛金(①)55,000円以内27,500円以内 iDeCoの掛金(②)20,000円以内12,000円以内 合計(①+②)55,000円以内27,500円以内 実際にiDeCoへの加入を検討する場合は、まず勤務先の担当者に確認するといいでしょう。 出典)厚生労働省「令和4(2022)年10月から企業型DC加入者がiDeCoを利用しやすくなります」 iDeCoの制度改正予定 iDeCoは法改正により、2024年12月1日から以下の制度変更が予定されています。 掛金上限の見直し 現状企業型DCやDBなどに加入している人がiDeCoにも加入する場合、iDeCoの掛金上限は12,000円となっています。この上限が、2024年12月1日より20,000円まで引き上げられることが決まっています。 ただし、企業型DC、DB、iDeCo等の合計金額の上限は55,000円です。そのため、iDeCo以外の制度での掛金合計額が35,000円を超えてしまう場合には、iDeCoの掛金の上限が20,000円を下回ってしまうので、注意が必要です。 出典)iDeCo公式サイト「2022年の制度改正について」 まとめ iDeCoは「掛金が全額所得控除」などの税制優遇があり、節税効果が高いのが魅力です。原則60歳まで掛金を引き出せませんが、公的年金だけでは不足する老後資金を確保できます。老後の生活費に不安がある場合は、iDeCoの活用を検討しましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 個人事業主などの自営業者は年金が少ない?年金対策も解説 個人事業主などの自営業者は、会社員に比べて年金が少ないと言われます。しかし、具体的にはどのくらい異なるのでしょうか。年金額が少ないと言われる理由は、自営業者と会社員では、適用される年金制度が...記事を読む

  • 小規模企業共済とは?メリット・デメリットと加入までの流れを解説

    小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者向けの退職金制度です。自営業の方が、国民年金以外の老後資金を準備する手段として活用できます。一方で、小規模企業共済は、状況によっては損をする恐れもあるため、加入前に仕組みを理解しておくことが大切です。 この記事では、小規模企業共済の概要やメリット・デメリット、加入すべきかどうかについて詳しく解説します。 小規模企業共済とは 小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の経営者・役員を対象とした積み立てによる退職金制度です。中小企業基盤整備機構が運営しており、廃業や退職時の生活資金の準備、年金対策などに活用できます。 小規模企業共済の加入人数は2023年3月末時点で、約162万人、資産運用残高は約11兆1,313億円です。 出典)中小企業基盤整備機構「小規模企業共済(現況)」 加入資格 小規模企業共済の加入資格は、以下のとおりです。 建設業、製造業、運輸業、宿泊業、娯楽業、不動産業、農業を営み、常時使用する従業員数が20人以下の個人事業主または会社役員 卸売業、小売業、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営み、常時使用する従業員数が5人以下の個人事業主または会社役員 事業に従事する組合員数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員数が20人以下の協業組合の役員 常時使用する従業員数が20人以下で、農業経営を主とする農事組合法人の役員 常時使用する従業員数が5人以下の弁護士法人、税理士法人などの士業法人の社員 1と2に該当する場合は、個人事業主1人につき共同経営者2人まで加入できます。「常時使用する従業員」には、家族従業員と共同経営者(2人まで)は含まれません。2つ以上の業種を行っている事業主・共同経営者は、主たる事業の業種で加入します。 掛金 小規模企業共済の掛金は、積み立て途中の掛金の増減額も可能で、月額1,000円から70,000円の範囲内で、一口を500円単位で自由に設定できます。掛金の前納にも対応しており、前納すると一定割合の前納減額金を受け取れます。 納付方法は個人の預金口座からの振替で、「月払い」「半年払い」「年払い」の3つから選択できます。なお、業績悪化や災害などで掛金を払うのが難しい場合は、一時的に支払いを停止する「掛け止め」も可能です。 小規模企業共済はいつ支払われるのか 小規模企業共済に一定期間以上加入し、個人事業の廃業や会社の解散などの事態が生じた場合に、掛金額と納付月数に応じた共済金が支払われます。そして、共済金は共済事由や掛金の納付月数によって額が変わります。 共済事由 共済事由とは、共済金や解約手当金が支払われる理由のことをいいます。共済事由は以下の4種類です。 共済事由の詳細 共済事由内容 A共済事由 (共済金A) ・個人事業の廃止・個人事業主・共同経営者の死亡・個人事業の廃業に伴う共同経営者の退任・会社の解散 B共済事由 (共済金B)・老齢給付(65歳以上で180ヵ月以上の掛金納付)・会社役員の疾病・負傷・65歳以上による退任・会社役員の死亡 準共済事由 (準共済金) ・法人成り(その会社の役員に就任しなかった場合)・会社役員の退任(疾病・負傷・65歳以上・死亡・解散を除く) 解約事由 (解約手当金) ・任意解約・12ヵ月以上の掛金滞納 共済金の返戻率 共済事由によって受け取れる共済金額の割合(返戻率)は変わります。各共済事由の返戻率は以下のとおりです。 各共済事由の返戻率 納付年数A共済事由B共済事由準共済事由 5年103.6%102.4%100.0% 10年107.6%105.1%100.0% 15年111.7%107.8%100.0% 20年116.1%110.8%100.0% 30年120.8%117.0%100.0% 納付年数が長くなると返戻率が上がります。例えば、毎月1万円ずつ掛金を払った人が20年間納付した後、事業の廃止によって共済金を受け取る(A共済事由に該当する)場合、掛金合計金額の240万円に返戻率の116.1%を掛け合わせた約279万円となります。 ・上記の算式 1万円/月 × 12回 × 20年 × 116.1% = 約279万円 なお、共済事由が任意解約に該当し、納付月数が20年(240ヵ月)未満の場合、解約手当金の額は掛金合計額を下回るので注意しましょう。 共済契約者が死亡した場合 共済契約者が死亡した場合は、遺族が共済金を受給できます。請求順位は配偶者(事実婚も含む)が第一順位者で、次いで子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他の親族の順となります。また、法定相続と異なり、第一順位の人がすべての共済金を受給することとなります。 ただし、子以下は共済契約者の収入によって生計を維持されていた者が優先されます。小規模企業共済法に規定された受給権者が存在しない場合、共済金は支給されません。 出典)中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 加入者のしおり及び約款」 小規模企業共済のメリット 小規模企業共済には、主に以下2つのメリットがあります。 税金対策になる 納付時 小規模企業共済の掛金は全額を課税所得から控除できるので、所得税と住民税の税金対策になります。例えば、課税所得金額が400万円、掛金月額が10,000円であれば年36,500円、30,000円なら年109,500円が節税額の目安です。 自身の節税額が気になる方は、小規模企業共済制度の加入シミュレーションをお試しください。 受取時 共済金の受取方法は、「一括」「分割」「一括と分割の併用」の3種類があります。 一括で受け取る場合は「退職所得控除」、分割の場合は「公的年金等控除」が適用されるため、所得税・住民税の負担軽減が期待できます。 資金の借り入れができる 小規模企業共済の貸付制度とは、掛金納付期間に応じた貸付限度額の範囲内で事業資金などの借り入れができる制度です。「一般貸付制度」のほかに、「緊急時経営安定貸付け」「傷病災害時貸付け」なども用意されています。 一般貸付の場合、2023年8月時点では、貸付限度額は掛金の7~9割が目安で、利率は年1.5%です。経済環境の変化により資金繰りが悪化したり、病気やケガで入院したり、災害で被害を受けたりした場合は、一般貸付よりも低金利で借り入れが可能です。例えば、「緊急時経営安定貸付け」は、2023年8月時点では、利率は年0.9%です。 小規模企業共済のデメリット・注意点 小規模企業共済には、主に以下のようなデメリット・注意点もあります。 元本割れすることもある 12ヵ月未満の任意解約 小規模企業共済は、加入期間12ヵ月未満で任意解約すると掛け捨てとなります。また、掛金納付月数が6ヵ月未満の場合は、共済事由に該当しても受け取れません。そのため、小規模企業共済は、長期にわたって掛金を納付する前提で加入することが前提といえます。 20年未満の任意解約は元本割れする 小規模企業共済は、掛金納付月数が20年未満で任意解約をした場合は元本割れします。業績悪化などにより掛金の支払いが厳しい場合は、掛金の減額や掛け止めをして、できる限り任意解約を避けるほうがいいでしょう。 なお、加入期間20年未満で元本割れするのは任意解約のみです。個人事業の廃止などに該当する場合は、加入期間20年未満でも元本割れしません。 事業規模が大きいと加入できない 小規模企業共済の加入資格には、常時使用する従業員数などの要件があります。事業規模が大きく、多くの従業員がいる場合は要件を満たさないため加入できません。 掛金は事業上の損金・必要経費に算入できない 小規模企業共済の掛金は、共済契約者が自身の収入から納付する必要があります。事業上の損金や必要経費には算入できないので注意しましょう。 小規模企業共済の加入手続きの流れ 小規模企業共済の加入手続きの流れは以下のとおりです。 必要書類を準備する 書類を窓口へ提出する 中小企業基盤整備機構から書類を受け取る 必要書類のうち、「契約申込書」と「預金口座振替依頼書」の2つは中小企業基盤整備機構に資料請求すると入手できます。その他に、加入希望者の立場に応じて必要になる書類があります。 例えば、個人事業主の場合は確定申告書の控えが必要です。開業したばかりで確定申告書がない場合は開業届の控えを提出します。会社役員は履歴事項全部証明書、共同経営者は確定申告書の控えや共同経営契約書の写しなどが必要になります。 必要書類が準備できたら、金融機関の窓口などで申込手続きを行いましょう。初回の掛金を現金で支払う場合は、払込区分に応じた現金が必要です。申込日から40日程度で、中小企業基盤整備機構から「共済手帳」や「加入者のしおり」などの各種書類が届きます。 小規模企業共済に加入すべきかどうか 小規模企業共済に加入すべきかどうかは、加入年数や退職金積み立てにおける自身の価値観によって異なります。小規模企業共済では、加入期間が12か月未満の場合や、解約が20年未満の場合には元本割れのリスクが存在します。 個人事業主や経営者にとっての退職金積み立ての方法は、小規模企業共済以外にも個人型確定拠出年金(iDeCo)や自己積み立て型のNISA、民間の個人年金保険などがあります。 もし自身で運用の自由を重視する価値観を持っているならば、iDeCoやNISAの方が適しているかもしれません。逆に、支払いを行うだけで運用を専門家に任せたいのであれば、民間の保険会社が提供する年金保険が適している可能性があります。 単に「個人事業主だから」や「加入資格があるから」といった理由だけでなく、競合する商品の知識を深めた上で、総合的な観点から判断することが重要です。 関連記事はこちらiDeCo(イデコ)の仕組みとは?メリット・デメリットを解説 まとめ 小規模企業共済を利用すれば、退職金がない自営業者でも老後資金を準備できます。掛金は全額所得控除となり、もしものときは貸付制度も利用できるので、加入資格を満たすなら活用したい制度です。一方で、価値観によってはより優れていると感じる商品もあるかもしれません。視野を狭めず、ライフスタイルに合った老後資金づくりを考えてみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 個人事業主などの自営業者は年金が少ない?年金対策も解説 個人事業主などの自営業者は、会社員に比べて年金が少ないと言われます。しかし、具体的にはどのくらい異なるのでしょうか。年金額が少ないと言われる理由は、自営業者と会社員では、適用される年金制度が...記事を読む

  • 不動産の登記簿謄本とは?取得方法とその費用を紹介

    登記簿謄本(登記事項証明書)とは?取得方法や記載内容を解説

    登記簿謄本(登記事項証明書)は、登記記録の全部または一部の事項を証明する書類です。不動産の情報が記載されている「不動産登記簿謄本」と、法人の情報が記載されている「法人登記簿謄本」の2種類にわかれます。登記簿謄本には、どのようなことが書かれていて、どのように取得できるのか、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。 この記事では、登記簿謄本の記載内容や取得方法、費用について紹介します。 登記簿謄本とは 登記簿謄本とは、上述のとおり、登記記録の全部または一部の事項を証明する書類で、不動産取引やローンを利用する際などに求められます。このような場面で、登記簿謄本ではなく「登記事項証明書」を求められることがありますが、基本的には同じ書類を指していると考えて差し支えないでしょう。 登記簿謄本も登記事項証明書も証明内容自体は同じで、作成元である登記情報の保存方法に違いがあります。登記情報は、以前まで紙で保管されていましたが、現在は電子データとして保管されるようになりました。 そのため、紙で保管されているものと電子データで保管されているものができ、紙で作成された登記用紙を複写したものを登記簿謄本、コンピュータで管理されたデータを印刷したものを登記事項証明書と呼んでいます。 出典)松山地方法務局 よくある質問「登記簿謄本と登記事項証明書の違いは?」 不動産登記簿謄本の記載内容 不動産登記の情報が記載されている書類が、不動産登記簿謄本です。不動産登記簿謄本の記載事項は、下図のように大きく4つの項目に分かれます。 出典)法務省「全部事項証明書(不動産登記)の見本」 表題部 権利部(甲区) 権利部(乙区) 共同担保目録 表題部 表題部では土地や建物の所在地や状態など、「どのような不動産であるのか」が記載されています。所在地や面積だけでなく具体的な建物の種類や構造・地番が記載されています。 権利部(甲区) 権利部は甲区と乙区に分かれます。甲区では、「だれが不動産の所有者か」が記載されています。所有者の住所や氏名・取得日などが記載されており、いつ誰が誰から不動産を相続したなどの入手の経緯まで把握できます。 権利部(乙区) 乙区では、所有権以外の権利に関しての記載がされています。たとえば、抵当権や地上権などの、その不動産にどのような権利が設定されているのかはこの部分を見ると分かります。不動産によっては、利用に制限があるため、購入前にどんな権利が設定されている不動産なのか、確認することが重要です。 共同担保目録 抵当権が複数の不動産に設定されている場合、この共同担保目録にその旨が記載されています。不動産を購入し住宅ローンを組む場合は、一般的には購入する不動産を担保として抵当権が設定されます。この時、基本的に建物と土地の両方に抵当権が設定されるので、それぞれの共同担保目録に記載されます。 関連記事はこちら不動産登記とは?概要や手続きの流れ、必要書類、費用を徹底解説 法人登記簿謄本の記載内容 法人の情報が記載されているのが、法人登記簿謄本です。法人登記簿謄本は、以下の画像のように法人に関する様々な情報が記載されています。 出典)法務省「登記事項証明書記載例1」 記載されている内容を大まかにまとめると、大きく4つの項目に分類できます。 法人の基本情報 商号や会社法人等番号だけでなく、いつから(会社成立の年月日)どこで(本店、支店の住所)何を(目的)行っている法人であるかが記載されています。加えて、公告をする方法、設置機関(取締役会、監査役会)の設置状況、法人の存続期間といった、法人の運営に関わる内容も記載されています。 株式に関する情報 株式について、単元株式数や発行可能株式総数、株式の譲渡制限に関する規定と、そもそも株券を発行するのかどうかが記載されています。加えて、発行済み株式の総数、種類、数も記載されています。法人登記簿謄本を見ることで、その法人がどのように株式を取り扱っているのかが分かるようになっています。 役員に関する情報 法人の役員(取締役、監査役等)の氏名と、役員となった年月日が記載されています。また、代表取締役のみ住所も記載されています。 登記簿謄本の取得方法と費用 不動産登記簿謄本と法人登記簿謄本は、以下の方法で取得できます。 登記所の窓口 郵送 オンライン 登記所の窓口 法務局や地方法務局・支所などの窓口で申請することで取得できます。以前は、取得する不動産の管轄地域の法務局でしか取得できませんでしたが、登記の電子化により、管轄外であっても最寄りの法務局で取得可能です。窓口申請の場合、手数料として600円が必要です。 郵送 法務局に出向けないという場合は、郵送での申請・受け取りも可能です。申請書類に記載し、手数料と返信封筒を同封し郵送すれば、返送されます。郵送の場合は、手数料として500円と返信封筒用の切手代が必要です。 オンライン オンラインでの申請であれば、いつでも申請できるので便利です。法務局のホームページから申請し、郵送か窓口受け取りで取得できます。オンラインで申請する場合、窓口で受け取る場合は480円、郵送で受け取る場合は500円と送料が必要です。郵送であれば、申請してから手数料の納付後1~2日で発送されるのが一般的です。 登記簿謄本を取得する際の注意点 登記簿謄本を取得する際に、注意すべき点がいくつかあります。不動産登記簿謄本と法人登記簿謄本に分けて紹介します。 不動産登記簿謄本の場合 いずれの申請方法であっても、取得する不動産の土地の所在地を示す「地番」が必要です。地番は普段目にしている住所表示とは異なることが多いので注意しましょう。正確な地番は、以下のような方法で調べられます。 不動産の権利書 固定資産税評価 法務局への問い合わせ ブルーマップ*の確認 なお、ブルーマップとは、株式会社ゼンリンが提供する地図帳のことで、住居表示だけでなく地番も確認できるサービスです。その他、用途地域・容積率・建ぺい率なども確認することができます。 法人登記簿謄本の場合 法人登記簿謄本を取得する場合は、必要な情報が「現在」だけでいいのか、「履歴」も必要なのかをあらかじめ確認しておくことが大切です。現在の登記情報のみ確認したい場合は「現在事項(全部)証明書」で足りますが、過去の登記情報も含めて確認したい場合は「履歴事項(全部)証明書」が必要になります。 なお、履歴事項(全部)証明書には現在の登記情報も記載されています。困った場合は履歴事項(全部)証明書を取得しておくのも手段のひとつです。 まとめ 登記簿謄本の記載内容や取得方法、費用について紹介しました。不動産登記簿謄本は不動産の状態や所有者・権利などが記載された重要な記録です。また、法人登記簿謄本は資金調達など、会社運営において重要な記録です。登記簿謄本が必要になった際には、オンラインなどを活用して準備するようにしましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説 融資や自治体のサービス、車検などを申し込むとき、納税証明書を求められることがあります。そもそも、納税証明書とはどのような書類なのでしょうか。日常生活で納税証明書が必要になる場面は多くないので...記事を読む

    2021.10.27用語
  • 納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説

    納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説

    融資や自治体のサービス、車検などを申し込むとき、納税証明書を求められることがあります。そもそも、納税証明書とはどのような書類なのでしょうか。日常生活で納税証明書が必要になる場面は多くないので、種類や取得方法がよくわからない人もいるでしょう。 この記事では、納税証明書の概要や種類ごとの記載事項、取得方法などについて詳しく解説します。 納税証明書とは 納税証明書とは、納付すべき税額や納付した税額、所得金額などを証明する書類です。住宅ローンの審査を受けたり、自治体のサービスを利用したりする際に、提出を求められることがあります。 しかし、一言に納税証明書と言っても、証明する税金の種類(税目)によって記載事項や交付請求先が異なるので注意が必要です。納税証明書ごとの記載事項や取得方法の詳細は後述します。 納税証明書と課税証明書や所得証明書の違い 納税証明書と類似する書類として「課税証明書」や「所得証明書」があります。課税証明書は対象税目の課税額を証明する書類で、所得証明書は1年間(1月1日~12月31日)の所得金額を証明する書類です。 一方で、納税証明書は、対象税目の課税額の納付状況を証明する書類です。納税証明書が求められる場面では、税金の納付漏れがないかを確認されます。そのため、納税証明書を求められた際に、課税証明書や所得証明書を提出しても要件を満たさないので注意しましょう。 納税証明書の種類と対象税目 納税証明書は、課税主体に応じて「国税」「県税(都税)」「市税」の3種類に分けられます。その名のとおり、国税は国、県税(都税)は都道府県、市税は市区町村が課税・徴収する税金です。国税に対して、県税(都税)と市税を合わせて「地方税」といいます。主な対象税目は、それぞれ以下のとおりです。 国税:所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税など 県税(都税):住民税(県民税)、事業税、自動車税、不動産取得税など 市税:住民税(市民税)、固定資産税・都市計画税、軽自動車税など 納税証明書を取得する際は、対象税目を管轄する窓口に申請する必要があります。国税は現在の住所地を所轄する税務署、県税は県税事務所(都税は都税事務所)、市税は市区町村役場が窓口です。 ただし、東京23区内では市町村税も都税として課税されているため、市区町村役場ではなく、一律で都税事務所で取得する点には注意が必要です。 最近では、国税はオンラインでの交付請求にも対応しています。地方税は、マイナンバーカードを利用したコンビニ交付サービスに対応している自治体もあります。詳しくは、居住地の自治体のホームページを確認しましょう。 出典) ・財務省「税金には、どういった種類のものがありますか」 ・東京都主税局 納税証明書(国税)の記載事項と取得方法 ここでは、国税の納税証明書の記載事項と取得方法を解説します。 納税証明書(国税)の記載事項 国税の納税証明書は、税目や証明内容によって「その1」「その2」といった名称で分類がされます。国税の納税証明書の種類と主な記載事項は下表のとおりです。 国税の納税証明書の種類と主な記載事項 納税証明書の種類証明内容 その1納付すべき税額、納付した税額及び未納税額等 その2所得金額(所得税、復興特別所得税、法人税) その3未納税額がないこと その3の2所得税、復興特別所得税、消費税・地方消費税(個人用) その3の3法人税、消費税・地方消費税(法人用) その4証明期間に滞納処分を受けたことがないこと 国税は、税目や証明内容によって納税証明書の種類が変わります。そのため、国税の納税証明書が必要な場合は、証明内容に応じた納税証明書の種類を選ぶ必要があります。 金融機関や地方自治体から国税の納税証明書を求められた場合、取得書類を間違えてしまうと再取得が必要となるため、取得の前に必ず確認しておきましょう。 出典)国税庁「[手続名]納税証明書の交付請求手続」 納税証明書(国税)の取得方法 国税の納税証明書は、オンラインで請求する方法と、書面(納税証明書交付請求書)で請求する方法の2つがあります。どちらの場合でも、現在の住所地を所轄する税務署が請求先です。 交付請求の際は、手数料が必要です。請求方法、納税証明書の種類によって金額が異なるので注意しましょう。必要な金額は下表のとおりです。 証明書の種類オンラインで請求書面で請求 その1・その2税目数×年度数×枚数×370円税目数×年度数×枚数×400円 その3・その4枚数×370円枚数×400円 上記の金額を、オンラインで請求する場合は電子納付、窓口や郵送など、書面で請求する場合は収入印紙で納付します。証明書を窓口で直接受け取る場合は現金での納付も可能です。 また、交付請求の際は本人確認書類も必要となります。個人の場合は個人番号確認書類も必要となるので忘れず用意しましょう。 出典) ・国税庁「平成28年1月から、納税証明書交付請求時の本人確認書類が変わります」 ・国税庁「納税証明書を請求される方へ」 納税証明書(都税・県税)の記載事項と取得方法 ここでは、都税・県税の納税証明書の記載事項と取得方法を解説します。 納税証明書(都税・県税)の記載事項 東京都が課税・徴収している各税目について、納付すべき税額や納付した税額、未納額などが証明されます。主な記載項目は以下のとおりです。 納税義務者の住所(所在地) 氏名(名称) 税目 年度 課税額 未納額 課税事務所等 一例として、都税について説明していますが、その他の道府県が発行する納税証明書も記載事項に大きな違いはありません。 都税の納税証明書は、当年度分を含めて6年度分を発行でき、証明書に納付日の記載はありません。また、「未納税額がないことの証明」や「完納証明」という名目の証明書は東京都主税局では発行していないため、納税証明書で代用する必要があります。 なお、都で発行している「滞納処分を受けたことがないことの証明」は、「未納がないことの証明」にはならないので注意しましょう。このように、自治体により書類の扱いが異なる場合もあるので、納税証明書を求められた場合には詳細を確認するようにしましょう。 出典)東京都主税局「よくあるお問合せ」 自動車税の納税証明書 自動車税は、都道府県が課税・徴収する税金です。納税証明書には、自動車登録番号や車体番号などが記載されています。車検を受ける際は、運輸支局・自動車検査登録事務所にて納税確認を電子的に行えるようになったため、平成27年4月から、車検時の自動車税納税証明書の提示が省略可能になりました。 一方で、自動車税の納付間もない場合など、納付してからすぐに車検を受けるときなどには、紙の納税証明書が必要な場合があります。自動車税の納税通知書は、金融機関やコンビニで納付して領収日付印が押されると「納税証明書」として利用できます。 出典) ・東京都主税局「よくあるお問合せ」 ・千葉県「車検のとき、納税証明書がいらなくなったと聞きましたが。」 納税証明書の取得方法(都税・県税) 都税や県税の納税証明書も、オンラインで請求する方法と、書面(納税証明書交付請求書)で請求する方法の2つがあります。どちらの場合でも、現在の住所地を所轄する都道府県税事務所が請求先です。 交付請求の際は、手数料が必要です。国税の納税証明書とは異なり、請求方法等によらず一律で1税目につき400円です。また、国税の納税証明書とは異なり、収入印紙での支払いができない点にも注意しましょう。例えば、郵送で申請する場合は収入印紙ではなく定額小為替を用意する必要があります。 出典) ・東京都主税局「各証明の申請について」 ・東京都主税局「都税に関する証明等申請時の「本人確認」方法について」 納税証明書(市税)の記載事項と取得方法 ここでは、市税の納税証明書の記載事項と取得方法について解説します。 納税証明書(市税)の記載事項 市区町村が課税・徴収する税金について、納付すべき金額や納付した税額が証明されます。たとえば、横浜市の納税証明書には以下の事項が記載されています。 納税義務の確定した納付すべき税額 納付済の税額 滞納処分を受けたことがないこと* 法定納期限等* ※申出がない場合は記載なし 他の市区町村が発行する納税証明書についても、記載内容に大きな違いはありません。市税の納税証明書は、市区町村役場の担当窓口に申請すれば取得できます。証明内容によっては申出が必要だったり、別の書類が必要になったりする場合もあります。証明が必要な内容を窓口で伝えた上で、申請することが大切です。 出典)横浜市「納税証明書」 納税証明書(市税)の取得方法 市税の納税証明書は、市区町村役場が請求先です。ただし、東京23区内であれば都税事務所が請求先になります。たとえば、さいたま市の場合、窓口に行かない方法として納税証明書の種類によって異なるものの、コンビニ、電子申請、郵送申請があります。 市税の証明書も手数料が必要ですが、市区町村によって異なります。そのため、市区町村のホームページなど確認しておく必要があります。あくまで目安ですが、1税目につきおおよそ300~400円です。その他マイナンバーカードでの取得だと200円になる場合もあります。 出典)さいたま市「市税の証明書等を取得したいときは」 まとめ 納税証明書は、証明内容や税目によって証明書の種類や取得方法が異なります。必要なときに問題なく手続きができるように、納税証明書の内容や申請窓口を理解しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 住宅ローン控除(住宅ローン減税ともいいます)とは、住宅ローンを利用して住宅の新築、取得又は増改築等をした場合に利用できる、所得税額等を控除する制度です。住宅ローン控除を利用する場合、自身の状...記事を読む

    2021.10.20用語
  • 融資のリスケとは?メリットやデメリットを解説!

    融資のリスケとは?メリットやデメリットを解説!

    自営業者は景気悪化などで経営不振に陥り、資金繰りに悩むこともあるでしょう。借入金の返済に困ったときは、金融機関にリスケ(リスケジュール)を依頼する方法があります。ただし、リスケにはデメリットもあるので、特徴を理解してから計画的に進めることが大切です。 この記事では、融資のリスケのメリットとデメリット、リスケ以外の資金繰り改善方法について解説します。 リスケとは リスケとは、リスケジュール(reschedule)の略語です。ビジネス用語として「スケジュールの見直し」の意味でよく使われますが、「返済計画の見直し」という意味でも使われます。 一般的に、銀行などの金融機関が使う「リスケ」は、後者を意味しており、借入金の返済が困難になった際に返済条件を変更するという意味で使われます。資金繰りが厳しくなった際には、金融機関と交渉することで融資のリスケができる可能性があります。具体的なリスケの方法は以下のとおりです。 一定期間、返済額を減額する 一定期間、元本支払いを据え置きする 返済期間を延長し、返済額を減額する 融資のリスケの申込件数 金融庁の調査によると、2020年3月10日~2024年6月末の期間にリスケの申込みを行った中小企業者の数は、銀行分で約166万件(約1,055件/日)、協同組織金融機関分(信用金庫など)で約135万件(約858件/日)です。多くの中小企業者が、金融機関にリスケの相談や交渉を行っていることがわかります。 この背景にあるのは、2009年に施行された中小企業金融円滑化法です。中小企業金融円滑化法は2013年3月末で期限を迎えていますが、金融庁は金融機関に対して、引き続き円滑な資金供給や貸付条件等の変更に努めるように要請しています。そのため、現在もリスケに応じてもらいやすい状況が続いています。 実際に、同期間内の審査中や取下げを除くリスケの実行率は、銀行分が95.4%、協同組織金融機関分が96.3%です。実行率が非常に高いことから、正当な理由があればリスケに応じてもらえることがわかります。 出典) ・金融庁「金融機関における貸付条件の変更等の状況について」 ・(銀行分)貸付条件の変更等の状況について ・(協同組織金融機関分)貸付条件の変更等の状況について 融資のリスケをするメリット・デメリット 融資のリスケをするメリット 借入金の返済に困ったときに融資のリスケをするメリットは以下の2つです。 借り換えをするよりも余計な費用がかからない 経営立て直しのための時間的猶予を確保できる 資金繰りを改善するには、借り換えという選択肢もありますが、借り換えは既存借入の全額返済手数料、新規借入の事務手数料などの費用が発生します。一方で、融資のリスケによる支払条件の変更であれば、余計な費用はかかりません。 また、融資のリスケをすると資金繰りが楽になるので、経営の立て直しに集中して取り組むことができます。経営課題の改善に取り組んで業績が回復すれば、今までどおり事業を継続できるでしょう。 融資のリスケをするデメリット 融資のリスケをするデメリットは以下の2つです。 新規の融資を受けづらくなる 返済が長期化する 通常、融資のリスケが行われている期間は、その金融機関からは追加融資を受けられません。返済原資を明確に示すことができなければ、他の金融機関から融資を受けるのも難しいでしょう。新規融資を受けられないと手元資金のみで資金繰りをしなくてはならないため、追加融資を考えている場合は、融資のリスケの前に運転資金を確保する必要があります。 融資のリスケは、返済が長期化するのもデメリットです。返済条件の見直しによって、一時的に資金繰りは楽になるかもしれません。しかし、長い目で見るとかえって返済負担が増し、経営にマイナスの影響を与える場合もあります。 融資のリスケ交渉のポイントと注意点 融資のリスケにあたり、最も大切なのは「どのようにして経営を立て直すか」です。融資のリスケはあくまでも返済条件の見直しであり、債務や利息が免除されるわけではありません。加えて、融資のリスケによって返済条件が見直されるのは、一般的に半年~1年程度の一定期間のみです。 金融機関にリスケ交渉を行う場合は、直近の実績と今後の予測を立てた資金繰り表、事業計画書、経営改善計画書などの作成や担保や保証人に関する資料を準備し、金融機関側に納得してもらうことが大切です。 融資のリスケに応じてもらったとしても、その後の対策を講じなければ根本的な解決にはならないため、融資のリスケを行うことで、本当に経営を立て直すことができるのかをしっかりと考えたうえで利用しましょう。 融資のリスケ中に可能な不動産を活用した資金調達方法 リスケを行っている期間は一般的に新たな融資を受けることが難しくなりますが、不動産を所有していればその不動産を活用して資金を確保できるかもしれません。具体的には、以下のような方法があります。 不動産担保ローン まずは、不動産担保ローンで資金調達をする方法です。不動産担保ローンは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保にすることで、運転資金や既存借入の借り換えとしても利用することができます。借り換えによって毎月の返済額を減らすことができれば、資金繰りを改善して経営の立て直しに注力できます。 不動産担保ローンは、信用力と担保不動産の価値を総合的に判断して審査を行うため、融資のリスケ中でも借入れができる可能性があります。また、金融機関によっては家族所有物件などの不動産も担保として申込みできます。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 リースバック 次に、リースバックで資金調達をする方法です。リースバックとは、不動産売買と賃貸借契約が一体となったサービスのことです。自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けることができます。 リースバックで売却した不動産は将来的に買い戻しができるので、経済状況が安定した後に再購入することも可能です。一方で、リースバックは、基本的に売却価格が市場価格よりも安くなります。加えて、所有権がリースバック運営会社に移転するので、リフォームや建て替えなどが自由にできなくなってしまう点に注意が必要です。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 自宅売却 自宅を売却して資金調達を行う方法もあります。ただし、自宅を売却すると転居先を探す必要があるなど、生活環境を大きく変えることになるので、現実的には難しいかもしれません。また、住宅ローンの残債がある場合には、そもそも売却価格が住宅ローンの残債を上回っていなければ、売却することが難しいでしょう。 これらの理由から、自宅売却は不動産担保ローンやリースバックなどの選択肢を取れない場合の最終的な手段になるかもしれません。 その他の資金調達や対策 不動産を利用する以外にも資金調達や経営状況を改善するための対策もとれます。 ファクタリング ファクタリングとは、企業が保有している売掛債権(売掛金など)をファクタリング会社が一定の手数料を差し引いて買い取るサービスです。売掛債権の支払期日が到来する前に資金化できます。 ファクタリングの法的な位置づけは、「債券譲渡契約(売買契約)」のため金融機関からの融資とは異なり、貸借対照表上の借入金(負債)が増えません。 関連記事はこちらファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介 ABL(動産・債権担保融資) ABLとは、「Asset Based Lending」という英単語のそれぞれの頭文字を取った略称で、企業が保有する在庫や売掛金、機械設備などの事業資産を担保にした融資の一種です。 企業が金融機関から事業資金を借り入れる場合、経営者による個人保証をつけたり、不動産を担保に入れたりするのが一般的ですが、ABLなら担保となる不動産がなくても、企業が保有している在庫などの資産を有効活用して事業資金を調達できます。 関連記事はこちらABL(動産・債権担保融資)とは?仕組みや特徴をわかりやすく解説 日本政策金融公庫の融資制度 日本政策金融国庫は、「国民生活事業」、「農林水産事業」、「中小企業事業」の3つの事業を主軸に支援を行う政府系金融機関です。経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)や事業再生・企業再建支援など経営再建が必要な企業への融資制度が用意されています。 金融機関でのリスケが難しそうな場合は、日本政策金融国庫の融資制度への借り換えを検討するのも良いでしょう。それぞれ利用できる融資制度や諸条件が異なるため、まずは窓口で相談してみましょう。 出典)日本政策金融国庫「中小企業事業」 中小企業庁による支援 全国の商工会議所等が運営する中小企業活性化協議会では、収益力低下、借入増加のおそれのある中小企業を対象に収益力改善支援を実施しています。具体的には、1~3年間の収益力改善計画と資金繰り計画の作成と、その後の定期的なモニタリングなどを行ってくれます。 計画作成にあたって融資のリスケが必要と判断された場合は、1年間の収益力改善計画を作成してくれます。融資のリスケを検討している場合や、今後経営をどう立て直すか悩んでいる場合は、収益力改善支援の利用を検討しても良いかもしれません。 出典)中小企業庁「収益力改善支援」 まとめ 借入金の返済に困ったときは、金融機関に融資のリスケを申込むことで返済条件を見直してもらえる可能性があります。融資のリスケをして一時的に資金繰りが楽になれば、経営立て直しに集中して取り組むことが可能です。 不動産を所有している場合は、融資のリスケ以外の選択肢としてノンバンクの不動産担保ローンやリースバックも検討してみましょう。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 物上保証人と連帯保証人の違いとは? 「保証人」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。一方で、保証人が「どのような責任を負うことになるか」理解をしている人は少ないかもしれません。また、一口に「保証人」と言っても、「物上保...記事を読む

    2021.10.13用語
  • DINKsマンションとは?メリットや注意点を解説

    DINKsマンションとは?メリットや注意点を解説

    ここ数年、”DINKsマンション”や”コンパクトマンション”の供給戸数が再び増加しており、今後さらに人気が高まる可能性があります。DINKsマンションを購入するメリットがある一方で、購入する際に注意すべき点もあります。そこでこの記事では、DINKsマンションを購入するメリットや注意点を解説します。 DINKsマンションについて DINKsマンションとは? DINKsとは、「Double Income No Kids」の頭文字を並べた言葉で、結婚後も子供を持たずに夫婦とも職業活動に従事するライフスタイルを指します。 つまり、DINKsマンションとは、夫婦二人で暮らすために適した間取りになっており、単身者向けよりも広く、ファミリー向けよりも狭い30~50㎡程度の大きさのマンションを指します。 出典)知恵蔵2015『DINKs 』 - コトバンク - 執筆:山田昌弘、2007年 DINKsマンションは増加傾向にある 2019年3月に株式会社不動産経済研究所から出されたプレスリリースによれば、首都圏のコンパクトマンションのシェアは、2009年の10.5%から2014年の供給が3.7%に右肩下がりに減少した後、2018年は8.7%に右肩上がりに増加しています。

    2021.06.23用語
  • 老後破産とは?その原因と事前の対策を解説

    老後破産とは?その原因と事前の準備・対策を解説

    「老後破産」は、日本人の高齢化などにより、取り上げられるようになったテーマの一つです。様々なメディアなどで目にする機会も増え、老後の生活を不安に感じる人もいるでしょう。 この記事では、老後破産の原因やその実態、老後破産に陥らないための準備や対策を解説します。 老後破産とは まず、「老後破産」という言葉に明確な定義はありません。そのため、この記事では「定年後の生活の中で、家計を維持できなくなること」と定義します。 自分はそれなりに貯蓄もあるし、関係のない話と思う人もいるかもしれません。しかし、仮に貯蓄が豊富にあったとしても、定年後20年、30年と暮らしていくことで、老後破産に陥るかもしれません。定年後は現役時代よりも収入が少なくなる、という人は多いでしょう。そうすると、現役時代と同じ生活水準を続けるには、貯蓄を切り崩しながら生活することになります。つまり、老後破産に陥る人は貧しい人ではなく、身の丈に合わない生活水準で、亡くなるまでに所有資産が尽きてしまう人とも言えます。 老後破産の実態 公的機関が行った調査から、老後破産の実態を探ります。 老後破産の割合は増加傾向 まずは、破産者における高齢者の割合を見てみましょう。「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、60歳以上の破産債務者の割合が増加しています。2002年調査では約17%でしたが、2020年調査では約25%となっています。一方で、あくまで「高齢者の割合」なので、件数が増加しているとも限りません。また、人口動態として、高齢者の割合が増加していることも、この結果の要因となるでしょう。 出典)内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」 老後の所得や貯蓄額 最後に、世帯主が65歳以上の世帯の所得や貯蓄を見てみましょう。先ほどの「令和4年版高齢社会白書(全体版)」によると、高齢者世帯の平均所得は312.6万円、貯蓄の中央値は1,555万円です。この結果から、所得にある程度余裕があると思うかもしれません。 しかし、最も多い所得階層は、150~200万円の12.3%、次いで100~150万円の12.0%です。さらに50万未満の2.0%、50~100万円の10.7%を足せば、高齢者世帯の37%の所得が150万円以下であることがわかります。 この結果から、貯蓄を切り崩しながら生活している人が多数いると考えられます。つまり、これらの所得が少ない人の貯蓄額によっては、老後破産予備軍は、先ほどの7%という結果よりも多くなるのかもしれません。 出典)

  • 認定経営革新等支援機関とは?利用するメリットや支援機関を選ぶポイント

    認定経営革新等支援機関とは?利用するメリット・デメリットを解説

    昨今の経済情勢は変化が激しく、中小企業や小規模事業者の経営課題は多様化・複雑化しています。今後も売上や事業規模を拡大し、安定した経営を続けていくには、商品・サービスの品質向上はもちろん、企業財務や経理、税務に関する取り組みも不可欠です。 しかし、多くの中小企業・小規模事業者は、会計や税務の専門知識を有する人材が不足しているため、単独では経営課題に十分な対応ができない状況にあります。そのような状況であったとしても「認定経営革新等支援機関」を利用すれば、経営に関するサポートを受けることが出来ます。 この記事では、認定経営革新等支援機関の概要や利用するメリット・デメリット、支援機関を選ぶポイントについて説明します。 認定経営革新等支援機関とは 認定経営革新等支援機関とは、中小企業や小規模事業者の経営課題の解決を支援する機関です。 2012年8月に施行された「中小企業経営力強化支援法」に基づき、専門知識や一定の実務経験を持つ支援機関(税理士、弁護士、金融機関など)を国が審査し、「経営革新等支援機関」として認定しています。 「売上を拡大したい」「生産性の向上を図りたい」といった経営課題を抱えている中小企業・小規模事業者は、認定経営革新等支援機関に相談することで、財務分析や事業計画の作成・実行などのサポートを受けることができます。 また、事業計画の内容によっては、国から費用の補助や税制優遇を受けられる可能性もあります。 出典)中小企業庁「認定経営革新等支援機関」 認定経営革新等支援機関を利用するメリット 認定経営革新等支援機関を利用するメリットは以下のとおりです。 費用の補助や税制優遇がある 本制度は幅広い施策に対応しており、認定支援機関を利用することで費用の補助や税制優遇を受けられる可能性があります。 たとえば、「経営改善計画策定支援事業」では、経営改善が必要な中小企業・小規模事業者が認定支援機関のサポートを受けて経営改善に取り組む場合、経営改善計画の策定とモニタリング費用の一部を国に負担してもらうことができます。 また、生産性向上特別措置法に基づく「先端設備等導入計画」を策定し、設備投資を行うと、固定資産税が一定期間軽減されます。 認定支援機関からサポートを受けることで、国が提供しているさまざまな施策を活用しながら経営課題を解消することができます。 出典) ・中小企業庁「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業に関する手引き 」 ・中小企業庁「経営サポート「生産性向上特別措置法による支援」 専門家から経営支援を受けられる 認定支援機関は、専門知識や一定の実務経験があることを国が審査しています。経営に関する専門知識やノウハウを持つ専門家に相談し、財務分析や経営課題の抽出を依頼することで、経営状況の把握が可能となります。 また、事業計画の作成・実行についての助言や支援も受けられるので、売上拡大や人手不足解消といった、中小企業・小規模事業者ならではの課題を解消できる可能性があります。 認定経営革新等支援機関の種類 主な認定支援機関の種類は以下のとおりです。 税理士・税理士法人(公認会計士) 弁護士・弁護士法人 商工会・商工会議所 銀行 経営コンサルタント 中小企業診断士・社会保険労務士・行政書士 2021年2月25日現在、30,000超の機関が認定を受けています。中でも税理士・税理士法人が大きな割合を占めており、中小企業・小規模事業者の経営支援において重要な役割を担っています。 出典)中小企業庁「経営革新等支援機関認定一覧について」 認定経営革新等支援機関のサポートを受けるまでの流れ 認定支援機関のサポートを受けるまでの流れは以下のとおりです。 相談する認定支援機関を選定する 認定支援機関に相談する 経営状況の把握、事業計画の作成・実行のサポートを受ける 事業計画の実現 モニタリング・フォローアップ(巡回監査、改善案の提案) まずは経営上の課題について、相談する認定支援機関を選定します。中小企業庁のホームページに設置されている「認定支援機関検索システム」を利用すれば、都道府県や支援機関の種類、相談内容、業種などの条件を指定して検索できます。 相談する認定支援機関が決まったら、財務分析や経営課題の抽出、事業計画の作成などのサポートを受けましょう。事業計画を実行して実現した後も、巡回監査や改善策の提案といったフォローを依頼できます。 出典)中小企業庁「認定支援機関検索システム」 認定経営革新等支援機関を選ぶポイント 認定支援機関に相談する際は、事業内容や解消したい経営課題に合った専門家を選ぶことが大切です。 たとえば、会計や税務に関する相談であれば、税理士や税理士法人がよいでしょう。しかし、人手不足の解消が目的であれば、税理士ではなく、商工会や経営コンサルタント、中小企業診断士のほうがよいかもしれません。 また、認定支援機関選びでは、支援実績が豊富であることも判断基準となります。認定支援機関検索システムの検索結果には支援実績も表示されるので、実績が豊富な機関を選ぶといいでしょう。 なお、認定支援機関を利用することで追加で費用がかかる場合があるので、注意が必要です。 まとめ 中小企業や小規模事業者が経営上の課題を抱えている場合、認定経営革新等支援機関に相談すれば課題を解決できるかもしれません。今後も安定した経営を続けていくために、認定支援機関の利用を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 事業資金の種類とそれぞれの特徴を紹介 事業資金は商売をする上で必要になる資金ですが、何に使うかによって呼び方が異なります。融資を受ける際には基本的に「どんなことに、いくら資金が必要なのか」を明確にさせなければ融資を受けられません...記事を読む

    2021.03.17制度

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