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iDeCo(イデコ)は、公的年金だけでは不足する老後資金を準備するための制度です。iDeCoについて聞いたことはあっても、その特徴はよくわからない方もいるのではないでしょうか。iDeCoは2022年に制度改正が予定されているため、その内容を理解しておくことも大切です。 この記事では、iDeCoの仕組みやメリット・デメリット、加入手続きの流れ、制度改正の内容について詳しく解説します。 iDeCo(イデコ)とは iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、自分で掛金を拠出し、商品を選んで運用する私的年金です。運用した掛金は、原則60歳以降に一時金または年金として受け取ることができます。 iDeCoには税制上の優遇措置が講じられており、一般的な貯蓄や運用では得られない節税効果が期待できるのが特徴です。公的年金(国民年金・厚生年金)に上乗せして加入できるため、老後資金を準備する手段として活用できます。 加入資格 iDeCoの加入資格は以下のとおりです。 自営業者や会社員、公務員など多くの人が加入対象となっています。ただし、会社員は勤務先の年金制度によっては加入できない場合があります。詳しくは、勤務先の担当者に確認するといいでしょう。 出典)iDeCo公式サイト iDeCo(イデコ)の仕組み 掛金の上限額 iDeCoの掛金額は、加入資格に応じて以下のように上限額が決まっています。 加入資格掛金の上限額 自営業者月額6.8万円(年額81.6万円)※国民年金基金または付加保険料との合算 企業年金がない会社員月額2.3万円(年額27.6万円) 企業型DCに加入している会社員月額2.0万円(年額24.0万円) DB(確定給付年金)のみに加入している会社員DBと企業型DCに加入している会社員公務員等月額1.2万円(年額14.4万円) 専業主婦(夫)月額2.3万円(年額27.6万円) 国民年金のみの自営業者は、会社員や公務員に比べて掛金の上限額が大きくなっています。ただし、国民年金基金または国民年金付加保険料との合算となる点に注意が必要です。たとえば、付加年金に加入している場合、iDeCoの掛金上限額は月額6.7万円となります。 iDeCoは月々5,000円から始められ、1,000円単位で自由に設定できます。掛金額は1年(12月分~翌年11月分)に1回のみ変更可能です。 運用商品 iDeCoは、金融機関が提示する運用商品の中から、自分で商品を選んで運用する必要があります。運用商品は投資信託が中心ですが、定期預金や保険などの元本保証商品も用意されています。 運用商品を選定する際は、自分の運用方針に沿って配分比率(どの商品に掛金の何%を振り向けるか)を決めます。 掛金の給付 iDeCoの掛金は、原則として60歳以降に老齢給付金として受け取れます。受け取り方法は以下3つから選択可能 です。 一時金として一括で受け取る 年金として受け取る 一時金と年金を組み合わせて受け取る 一時金は、70歳までの間に受け取ります。年金は、5年以上20年以下の期間で金融機関(運営管理機関)が定める方法で受け取ることになります。金融機関によっては、一時金と年金を組み合わせて受け取ることも可能です。 iDeCoの通算加入期間が10年以上の場合は、60歳から受給を開始できます。通算加入期間が10年に満たない場合は、加入期間に応じて受給開始年齢が61~65歳に繰り下げられます。 出典)iDeCo公式サイト iDeCo(イデコ)の給付(受取方法)について 年金制度間の移換(ポータビリティ) iDeCoは、転職や離職の際に年金制度間での移換(ポータビリティ)が可能です。たとえば、会社員から自営業者になる場合、加入していた企業型DCやDBの資産をiDeCoに持ち運ぶことができます。移換手続きについては、金融機関の窓口で相談しましょう。 iDeCoの3つの節税メリット iDeCoは税制上の優遇措置が講じされており、節税効果が高いのが魅力です。具体的には、以下3つの節税メリットがあります。 掛金は全額所得控除 iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となるため、所得税と住民税が軽減されます。たとえば、掛金額が月額1万円で、所得税率と住民税率がそれぞれ10%だとすると、年間2.4万円の節税となります。 ただし、もともと税金を払っていない専業主婦(夫)は、所得控除のメリットを受けられないので注意が必要です。 自営業者は、国民年金基金連合会が発行する「小規模企業共済等掛金払込証明書」を使って確定申告を行いましょう。会社員は勤務先で年末調整を受けることが可能です。 運用益は非課税 投資信託などの金融商品の利益には、通常約20%の税金がかかります。しかし、iDeCoの運用益は非課税であるため、税金はかかりません。通常なら差し引かれる税金分を投資に回せるので、効率的に資産を増やせます。 受取時は所得控除の適用対象 iDeCoは、60歳以降に給付を受け取るときにも所得控除が適用されます。一時金で受け取るときは「退職所得控除」、年金の場合は「公的年金等控除」が適用されるため、一定額は非課税になります。 受け取り方法によって控除額が変わるため、状況に応じて有利な方法を選択することが大切です。自分で判断できない場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。 出典)iDeCo公式サイト iDeCo(イデコ)の3つの税制メリット iDeCoのデメリット・注意点 iDeCoは老後資金づくりに適した制度ですが、以下のようなデメリット・注意点もあります。 原則60歳まで引き出せない iDeCoの掛金は原則60歳まで引き出せません。掛金を無理に増やすと、手元資金が不足する恐れがあります。将来への備えは大事ですが、無理のない範囲で掛金を設定することが大切です。 運用成績によっては給付額が減少する iDeCoは、運用成績によって将来もらえる給付額が変動します。投資信託には価格変動リスクがあるので、運用がうまくいけば給付額は増えますが、資産価格の下落によって元本割れする可能性もあります。 運用のリスクを軽減するには、国内外の資産に分散投資ができる低コストの投資信託を選び、短期の値動きに一喜一憂せずに積み立てを長く続けることが大切です。 金融庁の資料によれば、資産や地域を分散した積立投資を長期間続けることで、結果的に元本割れの可能性が低くなる傾向にあります。どうしても元本割れを避けたい場合は、定期預金などの元本保証商品を検討しましょう。 出典)金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」 手数料がかかる iDeCoは加入時や運用期間中に手数料がかかります。手数料は国民年金基金連合会に支払うものと、金融機関(運営管理機関)に支払うものの2種類があります。国民年金基金連合会の手数料は以下のとおりです。 加入・移換手数料(初回1回のみ):2,829円 加入者手数料(掛金納付の都度):105円 金融機関の手数料は、各機関によって異なります。比較検討した上で、なるべく手数料が安い金融機関を選ぶといいでしょう。 出典)iDeCo公式サイト 国民年金基金連合会の手数料について 金融機関によって運用商品が異なる iDeCoは投資信託や定期預金、保険商品などで運用できますが、金融機関によって運用商品の種類や数が異なります。特に投資信託は、商品によって投資対象資産や手数料(信託報酬など)に違いがあります。 複数の金融機関を比較して、自分の運用方針に合った商品を扱っている金融機関を選びましょう。iDeCoの金融機関は途中で変更も可能です。 iDeCoの加入手続きの流れ iDeCoの加入手続きの流れは以下のとおりです。 事前準備を行う 取扱金融機関へ申込書類を提出する ID・パスワードを受け取る 運用開始 まずは加入資格を確認し、掛金額や運用方針を決めます。複数の金融機関に資料請求を行い、手数料や商品ラインナップを比較しましょう。加入する金融機関が決まったら、申込書類を提出して加入手続きを行います。 国民年金基金連合会で確認・手続きが完了すると、加入者サイトにログインするためのID・パスワードが発行され、運用が開始されます。手続きについてわからないことがあれば、金融機関のコールセンターなどに確認しましょう。 企業型DC加入者は注意! 企業型DCに加入している会社員がiDeCoに加入するには、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金、これらの合計額について以下の要件を満たす必要があります。 企業型DCに加入している人がiDeCoに加入する場合企業型DCとDBに加入している人がiDeCoに加入する場合 企業型DCの事業主掛金(①)55,000円以内27,500円以内 iDeCoの掛金(②)20,000円以内12,000円以内 合計(①+②)55,000円以内27,500円以内 実際にiDeCoへの加入を検討する場合は、まず勤務先の担当者に確認するといいでしょう。 出典)厚生労働省「令和4(2022)年10月から企業型DC加入者がiDeCoを利用しやすくなります」 iDeCoの制度改正予定 iDeCoは法改正により、2024年12月1日から以下の制度変更が予定されています。 掛金上限の見直し 現状企業型DCやDBなどに加入している人がiDeCoにも加入する場合、iDeCoの掛金上限は12,000円となっています。この上限が、2024年12月1日より20,000円まで引き上げられることが決まっています。 ただし、企業型DC、DB、iDeCo等の合計金額の上限は55,000円です。そのため、iDeCo以外の制度での掛金合計額が35,000円を超えてしまう場合には、iDeCoの掛金の上限が20,000円を下回ってしまうので、注意が必要です。 出典)iDeCo公式サイト「2022年の制度改正について」 まとめ iDeCoは「掛金が全額所得控除」などの税制優遇があり、節税効果が高いのが魅力です。原則60歳まで掛金を引き出せませんが、公的年金だけでは不足する老後資金を確保できます。老後の生活費に不安がある場合は、iDeCoの活用を検討しましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 個人事業主などの自営業者は年金が少ない?年金対策も解説 個人事業主などの自営業者は、会社員に比べて年金が少ないと言われます。しかし、具体的にはどのくらい異なるのでしょうか。年金額が少ないと言われる理由は、自営業者と会社員では、適用される年金制度が...記事を読む
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者向けの退職金制度です。自営業の方が、国民年金以外の老後資金を準備する手段として活用できます。一方で、小規模企業共済は、状況によっては損をする恐れもあるため、加入前に仕組みを理解しておくことが大切です。 この記事では、小規模企業共済の概要やメリット・デメリット、加入すべきかどうかについて詳しく解説します。 小規模企業共済とは 小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の経営者・役員を対象とした積み立てによる退職金制度です。中小企業基盤整備機構が運営しており、廃業や退職時の生活資金の準備、年金対策などに活用できます。 小規模企業共済の加入人数は2023年3月末時点で、約162万人、資産運用残高は約11兆1,313億円です。 出典)中小企業基盤整備機構「小規模企業共済(現況)」 加入資格 小規模企業共済の加入資格は、以下のとおりです。 建設業、製造業、運輸業、宿泊業、娯楽業、不動産業、農業を営み、常時使用する従業員数が20人以下の個人事業主または会社役員 卸売業、小売業、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営み、常時使用する従業員数が5人以下の個人事業主または会社役員 事業に従事する組合員数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員数が20人以下の協業組合の役員 常時使用する従業員数が20人以下で、農業経営を主とする農事組合法人の役員 常時使用する従業員数が5人以下の弁護士法人、税理士法人などの士業法人の社員 1と2に該当する場合は、個人事業主1人につき共同経営者2人まで加入できます。「常時使用する従業員」には、家族従業員と共同経営者(2人まで)は含まれません。2つ以上の業種を行っている事業主・共同経営者は、主たる事業の業種で加入します。 掛金 小規模企業共済の掛金は、積み立て途中の掛金の増減額も可能で、月額1,000円から70,000円の範囲内で、一口を500円単位で自由に設定できます。掛金の前納にも対応しており、前納すると一定割合の前納減額金を受け取れます。 納付方法は個人の預金口座からの振替で、「月払い」「半年払い」「年払い」の3つから選択できます。なお、業績悪化や災害などで掛金を払うのが難しい場合は、一時的に支払いを停止する「掛け止め」も可能です。 小規模企業共済はいつ支払われるのか 小規模企業共済に一定期間以上加入し、個人事業の廃業や会社の解散などの事態が生じた場合に、掛金額と納付月数に応じた共済金が支払われます。そして、共済金は共済事由や掛金の納付月数によって額が変わります。 共済事由 共済事由とは、共済金や解約手当金が支払われる理由のことをいいます。共済事由は以下の4種類です。 共済事由の詳細 共済事由内容 A共済事由 (共済金A) ・個人事業の廃止・個人事業主・共同経営者の死亡・個人事業の廃業に伴う共同経営者の退任・会社の解散 B共済事由 (共済金B)・老齢給付(65歳以上で180ヵ月以上の掛金納付)・会社役員の疾病・負傷・65歳以上による退任・会社役員の死亡 準共済事由 (準共済金) ・法人成り(その会社の役員に就任しなかった場合)・会社役員の退任(疾病・負傷・65歳以上・死亡・解散を除く) 解約事由 (解約手当金) ・任意解約・12ヵ月以上の掛金滞納 共済金の返戻率 共済事由によって受け取れる共済金額の割合(返戻率)は変わります。各共済事由の返戻率は以下のとおりです。 各共済事由の返戻率 納付年数A共済事由B共済事由準共済事由 5年103.6%102.4%100.0% 10年107.6%105.1%100.0% 15年111.7%107.8%100.0% 20年116.1%110.8%100.0% 30年120.8%117.0%100.0% 納付年数が長くなると返戻率が上がります。例えば、毎月1万円ずつ掛金を払った人が20年間納付した後、事業の廃止によって共済金を受け取る(A共済事由に該当する)場合、掛金合計金額の240万円に返戻率の116.1%を掛け合わせた約279万円となります。 ・上記の算式 1万円/月 × 12回 × 20年 × 116.1% = 約279万円 なお、共済事由が任意解約に該当し、納付月数が20年(240ヵ月)未満の場合、解約手当金の額は掛金合計額を下回るので注意しましょう。 共済契約者が死亡した場合 共済契約者が死亡した場合は、遺族が共済金を受給できます。請求順位は配偶者(事実婚も含む)が第一順位者で、次いで子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他の親族の順となります。また、法定相続と異なり、第一順位の人がすべての共済金を受給することとなります。 ただし、子以下は共済契約者の収入によって生計を維持されていた者が優先されます。小規模企業共済法に規定された受給権者が存在しない場合、共済金は支給されません。 出典)中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 加入者のしおり及び約款」 小規模企業共済のメリット 小規模企業共済には、主に以下2つのメリットがあります。 税金対策になる 納付時 小規模企業共済の掛金は全額を課税所得から控除できるので、所得税と住民税の税金対策になります。例えば、課税所得金額が400万円、掛金月額が10,000円であれば年36,500円、30,000円なら年109,500円が節税額の目安です。 自身の節税額が気になる方は、小規模企業共済制度の加入シミュレーションをお試しください。 受取時 共済金の受取方法は、「一括」「分割」「一括と分割の併用」の3種類があります。 一括で受け取る場合は「退職所得控除」、分割の場合は「公的年金等控除」が適用されるため、所得税・住民税の負担軽減が期待できます。 資金の借り入れができる 小規模企業共済の貸付制度とは、掛金納付期間に応じた貸付限度額の範囲内で事業資金などの借り入れができる制度です。「一般貸付制度」のほかに、「緊急時経営安定貸付け」「傷病災害時貸付け」なども用意されています。 一般貸付の場合、2023年8月時点では、貸付限度額は掛金の7~9割が目安で、利率は年1.5%です。経済環境の変化により資金繰りが悪化したり、病気やケガで入院したり、災害で被害を受けたりした場合は、一般貸付よりも低金利で借り入れが可能です。例えば、「緊急時経営安定貸付け」は、2023年8月時点では、利率は年0.9%です。 小規模企業共済のデメリット・注意点 小規模企業共済には、主に以下のようなデメリット・注意点もあります。 元本割れすることもある 12ヵ月未満の任意解約 小規模企業共済は、加入期間12ヵ月未満で任意解約すると掛け捨てとなります。また、掛金納付月数が6ヵ月未満の場合は、共済事由に該当しても受け取れません。そのため、小規模企業共済は、長期にわたって掛金を納付する前提で加入することが前提といえます。 20年未満の任意解約は元本割れする 小規模企業共済は、掛金納付月数が20年未満で任意解約をした場合は元本割れします。業績悪化などにより掛金の支払いが厳しい場合は、掛金の減額や掛け止めをして、できる限り任意解約を避けるほうがいいでしょう。 なお、加入期間20年未満で元本割れするのは任意解約のみです。個人事業の廃止などに該当する場合は、加入期間20年未満でも元本割れしません。 事業規模が大きいと加入できない 小規模企業共済の加入資格には、常時使用する従業員数などの要件があります。事業規模が大きく、多くの従業員がいる場合は要件を満たさないため加入できません。 掛金は事業上の損金・必要経費に算入できない 小規模企業共済の掛金は、共済契約者が自身の収入から納付する必要があります。事業上の損金や必要経費には算入できないので注意しましょう。 小規模企業共済の加入手続きの流れ 小規模企業共済の加入手続きの流れは以下のとおりです。 必要書類を準備する 書類を窓口へ提出する 中小企業基盤整備機構から書類を受け取る 必要書類のうち、「契約申込書」と「預金口座振替依頼書」の2つは中小企業基盤整備機構に資料請求すると入手できます。その他に、加入希望者の立場に応じて必要になる書類があります。 例えば、個人事業主の場合は確定申告書の控えが必要です。開業したばかりで確定申告書がない場合は開業届の控えを提出します。会社役員は履歴事項全部証明書、共同経営者は確定申告書の控えや共同経営契約書の写しなどが必要になります。 必要書類が準備できたら、金融機関の窓口などで申込手続きを行いましょう。初回の掛金を現金で支払う場合は、払込区分に応じた現金が必要です。申込日から40日程度で、中小企業基盤整備機構から「共済手帳」や「加入者のしおり」などの各種書類が届きます。 小規模企業共済に加入すべきかどうか 小規模企業共済に加入すべきかどうかは、加入年数や退職金積み立てにおける自身の価値観によって異なります。小規模企業共済では、加入期間が12か月未満の場合や、解約が20年未満の場合には元本割れのリスクが存在します。 個人事業主や経営者にとっての退職金積み立ての方法は、小規模企業共済以外にも個人型確定拠出年金(iDeCo)や自己積み立て型のNISA、民間の個人年金保険などがあります。 もし自身で運用の自由を重視する価値観を持っているならば、iDeCoやNISAの方が適しているかもしれません。逆に、支払いを行うだけで運用を専門家に任せたいのであれば、民間の保険会社が提供する年金保険が適している可能性があります。 単に「個人事業主だから」や「加入資格があるから」といった理由だけでなく、競合する商品の知識を深めた上で、総合的な観点から判断することが重要です。 関連記事はこちらiDeCo(イデコ)の仕組みとは?メリット・デメリットを解説 まとめ 小規模企業共済を利用すれば、退職金がない自営業者でも老後資金を準備できます。掛金は全額所得控除となり、もしものときは貸付制度も利用できるので、加入資格を満たすなら活用したい制度です。一方で、価値観によってはより優れていると感じる商品もあるかもしれません。視野を狭めず、ライフスタイルに合った老後資金づくりを考えてみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 個人事業主などの自営業者は年金が少ない?年金対策も解説 個人事業主などの自営業者は、会社員に比べて年金が少ないと言われます。しかし、具体的にはどのくらい異なるのでしょうか。年金額が少ないと言われる理由は、自営業者と会社員では、適用される年金制度が...記事を読む
登記簿謄本(登記事項証明書)は、登記記録の全部または一部の事項を証明する書類です。不動産の情報が記載されている「不動産登記簿謄本」と、法人の情報が記載されている「法人登記簿謄本」の2種類に分かれます。登記簿謄本には、どのようなことが書かれていて、どのように取得できるのか、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。 この記事では、登記簿謄本の記載内容や取得方法、費用について紹介します。 登記簿謄本とは 登記簿謄本とは、上述のとおり、登記記録の全部または一部の事項を証明する書類で、不動産取引やローンを利用する際などに求められます。このような場面で、登記簿謄本ではなく「登記事項証明書」を求められることがありますが、基本的には同じ書類を指していると考えて差し支えないでしょう。 登記簿謄本も登記事項証明書も証明内容自体は同じで、作成元である登記情報の保存方法に違いがあります。登記情報は、以前まで紙で保管されていましたが、現在は電子データとして保管されるようになりました。 そのため、紙で保管されているものと電子データで保管されているものができ、紙で作成された登記用紙を複写したものを登記簿謄本、コンピュータで管理されたデータを印刷したものを登記事項証明書と呼んでいます。 出典)松山地方法務局 よくある質問「登記簿謄本と登記事項証明書の違いは?」 不動産登記簿謄本の記載内容 不動産登記の情報が記載されている書類が、不動産登記簿謄本です。不動産登記簿謄本の記載事項は、下図のように大きく4つの項目に分かれます。 出典)法務省「全部事項証明書(不動産登記)の見本」 表題部 権利部(甲区) 権利部(乙区) 共同担保目録 表題部 表題部では土地や建物の所在地や状態など、「どのような不動産であるのか」が記載されています。所在地や面積だけでなく具体的な建物の種類や構造・地番が記載されています。 権利部(甲区) 権利部は甲区と乙区に分かれます。甲区では、「だれが不動産の所有者か」が記載されています。所有者の住所や氏名・取得日などが記載されており、いつ誰が誰から不動産を相続したなどの入手の経緯まで把握できます。 権利部(乙区) 乙区では、所有権以外の権利に関しての記載がされています。たとえば、抵当権や地上権などの、その不動産にどのような権利が設定されているのかはこの部分を見ると分かります。不動産によっては、利用に制限があるため、購入前にどんな権利が設定されている不動産なのか、確認することが重要です。 共同担保目録 抵当権が複数の不動産に設定されている場合、この共同担保目録にその旨が記載されています。不動産を購入し住宅ローンを組む場合は、一般的には購入する不動産を担保として抵当権が設定されます。この時、基本的に建物と土地の両方に抵当権が設定されるので、それぞれの共同担保目録に記載されます。 関連記事はこちら不動産登記とは?概要や手続きの流れ、必要書類、費用を徹底解説 法人登記簿謄本の記載内容 法人の情報が記載されているのが、法人登記簿謄本です。法人登記簿謄本は、以下の画像のように法人に関する様々な情報が記載されています。 出典)法務省「登記事項証明書記載例1」 記載されている内容を大まかにまとめると、大きく4つの項目に分類できます。 法人の基本情報 商号や会社法人等番号だけでなく、いつから(会社成立の年月日)どこで(本店、支店の住所)何を(目的)行っている法人であるかが記載されています。加えて、公告をする方法、設置機関(取締役会、監査役会)の設置状況、法人の存続期間といった、法人の運営に関わる内容も記載されています。 株式に関する情報 株式について、単元株式数や発行可能株式総数、株式の譲渡制限に関する規定と、そもそも株券を発行するのかどうかが記載されています。加えて、発行済み株式の総数、種類、数も記載されています。法人登記簿謄本を見ることで、その法人がどのように株式を取り扱っているのかが分かるようになっています。 役員に関する情報 法人の役員(取締役、監査役等)の氏名と、役員となった年月日が記載されています。また、代表取締役のみ住所も記載されています。 法人登記簿謄本の種類 法人登記簿謄本は、以下の4つの種類があります。ここでは、どのような場面で登記簿謄本の交付請求が必要になるのかについて紹介します。 現在事項証明書 履歴事項全部証明書 閉鎖事項証明書 代表者事項証明書 現在事項証明書 現在事項証明書とは、現時点で有効な登記事項のみが記載された証明書で、過去の情報は含まれていません。現在の会社情報や不動産情報の確認が必要な場合に利用されます。 履歴事項全部証明書 履歴事項全部証明書とは、その不動産や法人に関する全ての登記事項が記載された証明書です。一般的に「会社の登記簿謄本」と呼ばれる場合、この履歴事項全部証明書を指します。法人登記では、役員情報や事業内容など、不動産登記では所有者や抵当権の情報が含まれます。 閉鎖事項証明書 閉鎖事項証明書は、すでに閉鎖された不動産や法人の登記事項が全て記載された証明書です。会社が合併により消滅した場合や本社が移転した場合など、登記簿が閉鎖される際に利用されます。 代表者事項証明書 代表者事項証明書には、会社の代表者の氏名や住所、会社法人番号などが記載されており、法人の取引先や契約先に対して代表者の情報を提示する際に利用されます。 必要な情報に応じて、適した種類の証明書を取得することが大切です。 登記簿謄本の取得方法と費用 不動産登記簿謄本と法人登記簿謄本は、以下の方法で取得できます。 登記所の窓口 郵送 オンライン 登記所の窓口 法務局や地方法務局・支所などの窓口で申請することで取得できます。以前は、取得する不動産の管轄地域の法務局でしか取得できませんでしたが、登記の電子化により、管轄外であっても最寄りの法務局で取得可能です。窓口申請の場合、手数料として600円が必要です。 郵送 法務局に出向けないという場合は、郵送での申請・受け取りも可能です。申請書類に記載し、手数料と返信封筒を同封し郵送すれば、返送されます。郵送の場合は、手数料として500円と返信封筒用の切手代が必要です。 オンライン オンラインでの申請であれば、いつでも申請できるので便利です。法務局のホームページから申請し、郵送か窓口受け取りで取得できます。オンラインで申請する場合、窓口で受け取る場合は480円、郵送で受け取る場合は500円と送料が必要です。郵送であれば、申請してから手数料の納付後1~2日で発送されるのが一般的です。 登記簿謄本を取得する際の注意点 登記簿謄本を取得する際に、注意すべき点がいくつかあります。不動産登記簿謄本と法人登記簿謄本に分けて紹介します。 不動産登記簿謄本の場合 いずれの申請方法であっても、取得する不動産の土地の所在地を示す「地番」が必要です。地番は普段目にしている住所表示とは異なることが多いので注意しましょう。正確な地番は、以下のような方法で調べられます。 不動産の権利書 固定資産税評価 法務局への問い合わせ ブルーマップ*の確認 なお、ブルーマップとは、株式会社ゼンリンが提供する地図帳のことで、住居表示だけでなく地番も確認できるサービスです。その他、用途地域・容積率・建ぺい率なども確認することができます。 法人登記簿謄本の場合 法人登記簿謄本を取得する場合は、必要な情報が「現在」だけでいいのか、「履歴」も必要なのかをあらかじめ確認しておくことが大切です。現在の登記情報のみ確認したい場合は「現在事項(全部)証明書」で足りますが、過去の登記情報も含めて確認したい場合は「履歴事項(全部)証明書」が必要になります。 なお、履歴事項(全部)証明書には現在の登記情報も記載されています。困った場合は履歴事項(全部)証明書を取得しておくのも手段のひとつです。 まとめ 登記簿謄本の記載内容や取得方法、費用について紹介しました。不動産登記簿謄本は不動産の状態や所有者・権利などが記載された重要な記録です。また、法人登記簿謄本は資金調達など、会社運営において重要な記録です。登記簿謄本が必要になった際には、オンラインなどを活用して準備するようにしましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説 融資や自治体のサービス、車検などを申し込むとき、納税証明書を求められることがあります。そもそも、納税証明書とはどのような書類なのでしょうか。日常生活で納税証明書が必要になる場面は多くないので...記事を読む
融資や自治体のサービス、車検などを申し込むとき、納税証明書を求められることがあります。そもそも、納税証明書とはどのような書類なのでしょうか。日常生活で納税証明書が必要になる場面は多くないので、種類や取得方法がよくわからない人もいるでしょう。 この記事では、納税証明書の概要や種類ごとの記載事項、取得方法などについて詳しく解説します。 納税証明書とは 納税証明書とは、納付すべき税額や納付した税額、所得金額などを証明する書類です。住宅ローンの審査を受けたり、自治体のサービスを利用したりする際に、提出を求められることがあります。 しかし、一言に納税証明書と言っても、証明する税金の種類(税目)によって記載事項や交付請求先が異なるので注意が必要です。納税証明書ごとの記載事項や取得方法の詳細は後述します。 納税証明書と課税証明書や所得証明書の違い 納税証明書と類似する書類として「課税証明書」や「所得証明書」があります。課税証明書は対象税目の課税額を証明する書類で、所得証明書は1年間(1月1日~12月31日)の所得金額を証明する書類です。 一方で、納税証明書は、対象税目の課税額の納付状況を証明する書類です。納税証明書が求められる場面では、税金の納付漏れがないかを確認されます。そのため、納税証明書を求められた際に、課税証明書や所得証明書を提出しても要件を満たさないので注意しましょう。 納税証明書の種類と対象税目 納税証明書は、課税主体に応じて「国税」「県税(都税)」「市税」の3種類に分けられます。その名のとおり、国税は国、県税(都税)は都道府県、市税は市区町村が課税・徴収する税金です。国税に対して、県税(都税)と市税を合わせて「地方税」といいます。主な対象税目は、それぞれ以下のとおりです。 国税:所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税など 県税(都税):住民税(県民税)、事業税、自動車税、不動産取得税など 市税:住民税(市民税)、固定資産税・都市計画税、軽自動車税など 納税証明書を取得する際は、対象税目を管轄する窓口に申請する必要があります。国税は現在の住所地を所轄する税務署、県税は県税事務所(都税は都税事務所)、市税は市区町村役場が窓口です。 ただし、東京23区内では市町村税も都税として課税されているため、市区町村役場ではなく、一律で都税事務所で取得する点には注意が必要です。 最近では、国税はオンラインでの交付請求にも対応しています。地方税は、マイナンバーカードを利用したコンビニ交付サービスに対応している自治体もあります。詳しくは、居住地の自治体のホームページを確認しましょう。 出典) ・財務省「税金には、どういった種類のものがありますか」 ・東京都主税局 納税証明書(国税)の記載事項と取得方法 ここでは、国税の納税証明書の記載事項と取得方法を解説します。 納税証明書(国税)の記載事項 国税の納税証明書は、税目や証明内容によって「その1」「その2」といった名称で分類がされます。国税の納税証明書の種類と主な記載事項は下表のとおりです。 国税の納税証明書の種類と主な記載事項 納税証明書の種類証明内容 その1納付すべき税額、納付した税額及び未納税額等 その2所得金額(所得税、復興特別所得税、法人税) その3未納税額がないこと その3の2所得税、復興特別所得税、消費税・地方消費税(個人用) その3の3法人税、消費税・地方消費税(法人用) その4証明期間に滞納処分を受けたことがないこと 国税は、税目や証明内容によって納税証明書の種類が変わります。そのため、国税の納税証明書が必要な場合は、証明内容に応じた納税証明書の種類を選ぶ必要があります。 金融機関や地方自治体から国税の納税証明書を求められた場合、取得書類を間違えてしまうと再取得が必要となるため、取得の前に必ず確認しておきましょう。 出典)国税庁「[手続名]納税証明書の交付請求手続」 納税証明書(国税)の取得方法 国税の納税証明書は、オンラインで請求する方法と、書面(納税証明書交付請求書)で請求する方法の2つがあります。どちらの場合でも、現在の住所地を所轄する税務署が請求先です。 交付請求の際は、手数料が必要です。請求方法、納税証明書の種類によって金額が異なるので注意しましょう。必要な金額は下表のとおりです。 証明書の種類オンラインで請求書面で請求 その1・その2税目数×年度数×枚数×370円税目数×年度数×枚数×400円 その3・その4枚数×370円枚数×400円 上記の金額を、オンラインで請求する場合は電子納付、窓口や郵送など、書面で請求する場合は収入印紙で納付します。証明書を窓口で直接受け取る場合は現金での納付も可能です。 また、交付請求の際は本人確認書類も必要となります。個人の場合は個人番号確認書類も必要となるので忘れず用意しましょう。 出典) ・国税庁「平成28年1月から、納税証明書交付請求時の本人確認書類が変わります」 ・国税庁「納税証明書を請求される方へ」 納税証明書(都税・県税)の記載事項と取得方法 ここでは、都税・県税の納税証明書の記載事項と取得方法を解説します。 納税証明書(都税・県税)の記載事項 東京都が課税・徴収している各税目について、納付すべき税額や納付した税額、未納額などが証明されます。主な記載項目は以下のとおりです。 納税義務者の住所(所在地) 氏名(名称) 税目 年度 課税額 未納額 課税事務所等 一例として、都税について説明していますが、その他の道府県が発行する納税証明書も記載事項に大きな違いはありません。 都税の納税証明書は、当年度分を含めて6年度分を発行でき、証明書に納付日の記載はありません。また、「未納税額がないことの証明」や「完納証明」という名目の証明書は東京都主税局では発行していないため、納税証明書で代用する必要があります。 なお、都で発行している「滞納処分を受けたことがないことの証明」は、「未納がないことの証明」にはならないので注意しましょう。このように、自治体により書類の扱いが異なる場合もあるので、納税証明書を求められた場合には詳細を確認するようにしましょう。 出典)東京都主税局「よくあるお問合せ」 自動車税の納税証明書 自動車税は、都道府県が課税・徴収する税金です。納税証明書には、自動車登録番号や車体番号などが記載されています。車検を受ける際は、運輸支局・自動車検査登録事務所にて納税確認を電子的に行えるようになったため、平成27年4月から、車検時の自動車税納税証明書の提示が省略可能になりました。 一方で、自動車税の納付間もない場合など、納付してからすぐに車検を受けるときなどには、紙の納税証明書が必要な場合があります。自動車税の納税通知書は、金融機関やコンビニで納付して領収日付印が押されると「納税証明書」として利用できます。 出典) ・東京都主税局「よくあるお問合せ」 ・千葉県「車検のとき、納税証明書がいらなくなったと聞きましたが。」 納税証明書の取得方法(都税・県税) 都税や県税の納税証明書も、オンラインで請求する方法と、書面(納税証明書交付請求書)で請求する方法の2つがあります。どちらの場合でも、現在の住所地を所轄する都道府県税事務所が請求先です。 交付請求の際は、手数料が必要です。国税の納税証明書とは異なり、請求方法等によらず一律で1税目につき400円です。また、国税の納税証明書とは異なり、収入印紙での支払いができない点にも注意しましょう。例えば、郵送で申請する場合は収入印紙ではなく定額小為替を用意する必要があります。 出典) ・東京都主税局「各証明の申請について」 ・東京都主税局「都税に関する証明等申請時の「本人確認」方法について」 納税証明書(市税)の記載事項と取得方法 ここでは、市税の納税証明書の記載事項と取得方法について解説します。 納税証明書(市税)の記載事項 市区町村が課税・徴収する税金について、納付すべき金額や納付した税額が証明されます。たとえば、横浜市の納税証明書には以下の事項が記載されています。 納税義務の確定した納付すべき税額 納付済の税額 滞納処分を受けたことがないこと* 法定納期限等* ※申出がない場合は記載なし 他の市区町村が発行する納税証明書についても、記載内容に大きな違いはありません。市税の納税証明書は、市区町村役場の担当窓口に申請すれば取得できます。証明内容によっては申出が必要だったり、別の書類が必要になったりする場合もあります。証明が必要な内容を窓口で伝えた上で、申請することが大切です。 出典)横浜市「納税証明書」 納税証明書(市税)の取得方法 市税の納税証明書は、市区町村役場が請求先です。ただし、東京23区内であれば都税事務所が請求先になります。たとえば、さいたま市の場合、窓口に行かない方法として納税証明書の種類によって異なるものの、コンビニ、電子申請、郵送申請があります。 市税の証明書も手数料が必要ですが、市区町村によって異なります。そのため、市区町村のホームページなど確認しておく必要があります。あくまで目安ですが、1税目につきおおよそ300~400円です。その他マイナンバーカードでの取得だと200円になる場合もあります。 出典)さいたま市「市税の証明書等を取得したいときは」 まとめ 納税証明書は、証明内容や税目によって証明書の種類や取得方法が異なります。必要なときに問題なく手続きができるように、納税証明書の内容や申請窓口を理解しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 住宅ローン控除(住宅ローン減税ともいいます)とは、住宅ローンを利用して住宅の新築、取得又は増改築等をした場合に利用できる、所得税額等を控除する制度です。住宅ローン控除を利用する場合、自身の状...記事を読む
自営業者は景気悪化などで経営不振に陥り、資金繰りに悩むこともあるでしょう。借入金の返済に困ったときは、金融機関にリスケ(リスケジュール)を依頼する方法があります。ただし、リスケにはデメリットもあるので、特徴を理解してから計画的に進めることが大切です。 この記事では、融資のリスケのメリットとデメリット、リスケ以外の資金繰り改善方法について解説します。 リスケとは リスケとは、リスケジュール(reschedule)の略語です。ビジネス用語として「スケジュールの見直し」の意味でよく使われますが、「返済計画の見直し」という意味でも使われます。 一般的に、銀行などの金融機関が使う「リスケ」は、後者を意味しており、借入金の返済が困難になった際に返済条件を変更するという意味で使われます。資金繰りが厳しくなった際には、金融機関と交渉することで融資のリスケができる可能性があります。具体的なリスケの方法は以下のとおりです。 一定期間、返済額を減額する 一定期間、元本支払いを据え置きする 返済期間を延長し、返済額を減額する 融資のリスケの申込件数 金融庁の調査によると、2020年3月10日~2024年6月末の期間にリスケの申込みを行った中小企業者の数は、銀行分で約166万件(約1,055件/日)、協同組織金融機関分(信用金庫など)で約135万件(約858件/日)です。多くの中小企業者が、金融機関にリスケの相談や交渉を行っていることがわかります。 この背景にあるのは、2009年に施行された中小企業金融円滑化法です。中小企業金融円滑化法は2013年3月末で期限を迎えていますが、金融庁は金融機関に対して、引き続き円滑な資金供給や貸付条件等の変更に努めるように要請しています。そのため、現在もリスケに応じてもらいやすい状況が続いています。 実際に、同期間内の審査中や取下げを除くリスケの実行率は、銀行分が95.4%、協同組織金融機関分が96.3%です。実行率が非常に高いことから、正当な理由があればリスケに応じてもらえることがわかります。 出典) ・金融庁「金融機関における貸付条件の変更等の状況について」 ・(銀行分)貸付条件の変更等の状況について ・(協同組織金融機関分)貸付条件の変更等の状況について 融資のリスケをするメリット・デメリット 融資のリスケをするメリット 借入金の返済に困ったときに融資のリスケをするメリットは以下の2つです。 借り換えをするよりも余計な費用がかからない 経営立て直しのための時間的猶予を確保できる 資金繰りを改善するには、借り換えという選択肢もありますが、借り換えは既存借入の全額返済手数料、新規借入の事務手数料などの費用が発生します。一方で、融資のリスケによる支払条件の変更であれば、余計な費用はかかりません。 また、融資のリスケをすると資金繰りが楽になるので、経営の立て直しに集中して取り組むことができます。経営課題の改善に取り組んで業績が回復すれば、今までどおり事業を継続できるでしょう。 融資のリスケをするデメリット 融資のリスケをするデメリットは以下の2つです。 新規の融資を受けづらくなる 返済が長期化する 通常、融資のリスケが行われている期間は、その金融機関からは追加融資を受けられません。返済原資を明確に示すことができなければ、他の金融機関から融資を受けるのも難しいでしょう。新規融資を受けられないと手元資金のみで資金繰りをしなくてはならないため、追加融資を考えている場合は、融資のリスケの前に運転資金を確保する必要があります。 融資のリスケは、返済が長期化するのもデメリットです。返済条件の見直しによって、一時的に資金繰りは楽になるかもしれません。しかし、長い目で見るとかえって返済負担が増し、経営にマイナスの影響を与える場合もあります。 融資のリスケ交渉のポイントと注意点 融資のリスケにあたり、最も大切なのは「どのようにして経営を立て直すか」です。融資のリスケはあくまでも返済条件の見直しであり、債務や利息が免除されるわけではありません。加えて、融資のリスケによって返済条件が見直されるのは、一般的に半年~1年程度の一定期間のみです。 金融機関にリスケ交渉を行う場合は、直近の実績と今後の予測を立てた資金繰り表、事業計画書、経営改善計画書などの作成や担保や保証人に関する資料を準備し、金融機関側に納得してもらうことが大切です。 融資のリスケに応じてもらったとしても、その後の対策を講じなければ根本的な解決にはならないため、融資のリスケを行うことで、本当に経営を立て直すことができるのかをしっかりと考えたうえで利用しましょう。 融資のリスケ中に可能な不動産を活用した資金調達方法 リスケを行っている期間は一般的に新たな融資を受けることが難しくなりますが、不動産を所有していればその不動産を活用して資金を確保できるかもしれません。具体的には、以下のような方法があります。 不動産担保ローン まずは、不動産担保ローンで資金調達をする方法です。不動産担保ローンは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保にすることで、運転資金や既存借入の借り換えとしても利用することができます。借り換えによって毎月の返済額を減らすことができれば、資金繰りを改善して経営の立て直しに注力できます。 不動産担保ローンは、信用力と担保不動産の価値を総合的に判断して審査を行うため、融資のリスケ中でも借入れができる可能性があります。また、金融機関によっては家族所有物件などの不動産も担保として申込みできます。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 リースバック 次に、リースバックで資金調達をする方法です。リースバックとは、不動産売買と賃貸借契約が一体となったサービスのことです。自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けることができます。 リースバックで売却した不動産は将来的に買い戻しができるので、経済状況が安定した後に再購入することも可能です。一方で、リースバックは、基本的に売却価格が市場価格よりも安くなります。加えて、所有権がリースバック運営会社に移転するので、リフォームや建て替えなどが自由にできなくなってしまう点に注意が必要です。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 自宅売却 自宅を売却して資金調達を行う方法もあります。ただし、自宅を売却すると転居先を探す必要があるなど、生活環境を大きく変えることになるので、現実的には難しいかもしれません。また、住宅ローンの残債がある場合には、そもそも売却価格が住宅ローンの残債を上回っていなければ、売却することが難しいでしょう。 これらの理由から、自宅売却は不動産担保ローンやリースバックなどの選択肢を取れない場合の最終的な手段になるかもしれません。 その他の資金調達や対策 不動産を利用する以外にも資金調達や経営状況を改善するための対策もとれます。 ファクタリング ファクタリングとは、企業が保有している売掛債権(売掛金など)をファクタリング会社が一定の手数料を差し引いて買い取るサービスです。売掛債権の支払期日が到来する前に資金化できます。 ファクタリングの法的な位置づけは、「債券譲渡契約(売買契約)」のため金融機関からの融資とは異なり、貸借対照表上の借入金(負債)が増えません。 関連記事はこちらファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介 ABL(動産・債権担保融資) ABLとは、「Asset Based Lending」という英単語のそれぞれの頭文字を取った略称で、企業が保有する在庫や売掛金、機械設備などの事業資産を担保にした融資の一種です。 企業が金融機関から事業資金を借り入れる場合、経営者による個人保証をつけたり、不動産を担保に入れたりするのが一般的ですが、ABLなら担保となる不動産がなくても、企業が保有している在庫などの資産を有効活用して事業資金を調達できます。 関連記事はこちらABL(動産・債権担保融資)とは?仕組みや特徴をわかりやすく解説 日本政策金融公庫の融資制度 日本政策金融国庫は、「国民生活事業」、「農林水産事業」、「中小企業事業」の3つの事業を主軸に支援を行う政府系金融機関です。経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)や事業再生・企業再建支援など経営再建が必要な企業への融資制度が用意されています。 金融機関でのリスケが難しそうな場合は、日本政策金融国庫の融資制度への借り換えを検討するのも良いでしょう。それぞれ利用できる融資制度や諸条件が異なるため、まずは窓口で相談してみましょう。 出典)日本政策金融国庫「中小企業事業」 中小企業庁による支援 全国の商工会議所等が運営する中小企業活性化協議会では、収益力低下、借入増加のおそれのある中小企業を対象に収益力改善支援を実施しています。具体的には、1~3年間の収益力改善計画と資金繰り計画の作成と、その後の定期的なモニタリングなどを行ってくれます。 計画作成にあたって融資のリスケが必要と判断された場合は、1年間の収益力改善計画を作成してくれます。融資のリスケを検討している場合や、今後経営をどう立て直すか悩んでいる場合は、収益力改善支援の利用を検討しても良いかもしれません。 出典)中小企業庁「収益力改善支援」 まとめ 借入金の返済に困ったときは、金融機関に融資のリスケを申込むことで返済条件を見直してもらえる可能性があります。融資のリスケをして一時的に資金繰りが楽になれば、経営立て直しに集中して取り組むことが可能です。 不動産を所有している場合は、融資のリスケ以外の選択肢としてノンバンクの不動産担保ローンやリースバックも検討してみましょう。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 物上保証人と連帯保証人の違いとは? 「保証人」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。一方で、保証人が「どのような責任を負うことになるか」理解をしている人は少ないかもしれません。また、一口に「保証人」と言っても、「物上保...記事を読む
ここ数年、”DINKsマンション”や”コンパクトマンション”の供給戸数が再び増加しており、今後さらに人気が高まる可能性があります。DINKsマンションを購入するメリットがある一方で、購入する際に注意すべき点もあります。そこでこの記事では、DINKsマンションを購入するメリットや注意点を解説します。 DINKsマンションについて DINKsマンションとは? DINKsとは、「Double Income No Kids」の頭文字を並べた言葉で、結婚後も子供を持たずに夫婦とも職業活動に従事するライフスタイルを指します。 つまり、DINKsマンションとは、夫婦二人で暮らすために適した間取りになっており、単身者向けよりも広く、ファミリー向けよりも狭い30~50㎡程度の大きさのマンションを指します。 出典)知恵蔵2015『DINKs 』 - コトバンク - 執筆:山田昌弘、2007年 DINKsマンションは増加傾向にある 2019年3月に株式会社不動産経済研究所から出されたプレスリリースによれば、首都圏のコンパクトマンションのシェアは、2009年の10.5%から2014年の供給が3.7%に右肩下がりに減少した後、2018年は8.7%に右肩上がりに増加しています。
「老後破産」は、日本人の高齢化などにより、取り上げられるようになったテーマの一つです。様々なメディアなどで目にする機会も増え、老後の生活を不安に感じる人もいるでしょう。 この記事では、老後破産の原因やその実態、老後破産に陥らないための準備や対策を解説します。 老後破産とは まず、「老後破産」という言葉に明確な定義はありません。そのため、この記事では「定年後の生活の中で、家計を維持できなくなること」と定義します。 自分はそれなりに貯蓄もあるし、関係のない話と思う人もいるかもしれません。しかし、仮に貯蓄が豊富にあったとしても、定年後20年、30年と暮らしていくことで、老後破産に陥るかもしれません。定年後は現役時代よりも収入が少なくなる、という人は多いでしょう。そうすると、現役時代と同じ生活水準を続けるには、貯蓄を切り崩しながら生活することになります。つまり、老後破産に陥る人は貧しい人ではなく、身の丈に合わない生活水準で、亡くなるまでに所有資産が尽きてしまう人とも言えます。 老後破産の実態 公的機関が行った調査から、老後破産の実態を探ります。 老後破産の割合は増加傾向 まずは、破産者における高齢者の割合を見てみましょう。「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、60歳以上の破産債務者の割合が増加しています。2002年調査では約17%でしたが、2020年調査では約25%となっています。一方で、あくまで「高齢者の割合」なので、件数が増加しているとも限りません。また、人口動態として、高齢者の割合が増加していることも、この結果の要因となるでしょう。 出典)内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」 老後の所得や貯蓄額 最後に、世帯主が65歳以上の世帯の所得や貯蓄を見てみましょう。先ほどの「令和4年版高齢社会白書(全体版)」によると、高齢者世帯の平均所得は312.6万円、貯蓄の中央値は1,555万円です。この結果から、所得にある程度余裕があると思うかもしれません。 しかし、最も多い所得階層は、150~200万円の12.3%、次いで100~150万円の12.0%です。さらに50万未満の2.0%、50~100万円の10.7%を足せば、高齢者世帯の37%の所得が150万円以下であることがわかります。 この結果から、貯蓄を切り崩しながら生活している人が多数いると考えられます。つまり、これらの所得が少ない人の貯蓄額によっては、老後破産予備軍は、先ほどの7%という結果よりも多くなるのかもしれません。 出典)
昨今の経済情勢は変化が激しく、中小企業や小規模事業者の経営課題は多様化・複雑化しています。今後も売上や事業規模を拡大し、安定した経営を続けていくには、商品・サービスの品質向上はもちろん、企業財務や経理、税務に関する取り組みも不可欠です。 しかし、多くの中小企業・小規模事業者は、会計や税務の専門知識を有する人材が不足しているため、単独では経営課題に十分な対応ができない状況にあります。そのような状況であったとしても「認定経営革新等支援機関」を利用すれば、経営に関するサポートを受けることが出来ます。 この記事では、認定経営革新等支援機関の概要や利用するメリット・デメリット、支援機関を選ぶポイントについて説明します。 認定経営革新等支援機関とは 認定経営革新等支援機関とは、中小企業や小規模事業者の経営課題の解決を支援する機関です。 2012年8月に施行された「中小企業経営力強化支援法」に基づき、専門知識や一定の実務経験を持つ支援機関(税理士、弁護士、金融機関など)を国が審査し、「経営革新等支援機関」として認定しています。 「売上を拡大したい」「生産性の向上を図りたい」といった経営課題を抱えている中小企業・小規模事業者は、認定経営革新等支援機関に相談することで、財務分析や事業計画の作成・実行などのサポートを受けることができます。 また、事業計画の内容によっては、国から費用の補助や税制優遇を受けられる可能性もあります。 出典)中小企業庁「認定経営革新等支援機関」 認定経営革新等支援機関を利用するメリット 認定経営革新等支援機関を利用するメリットは以下のとおりです。 費用の補助や税制優遇がある 本制度は幅広い施策に対応しており、認定支援機関を利用することで費用の補助や税制優遇を受けられる可能性があります。 たとえば、「経営改善計画策定支援事業」では、経営改善が必要な中小企業・小規模事業者が認定支援機関のサポートを受けて経営改善に取り組む場合、経営改善計画の策定とモニタリング費用の一部を国に負担してもらうことができます。 また、生産性向上特別措置法に基づく「先端設備等導入計画」を策定し、設備投資を行うと、固定資産税が一定期間軽減されます。 認定支援機関からサポートを受けることで、国が提供しているさまざまな施策を活用しながら経営課題を解消することができます。 出典) ・中小企業庁「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業に関する手引き 」 ・中小企業庁「経営サポート「生産性向上特別措置法による支援」 専門家から経営支援を受けられる 認定支援機関は、専門知識や一定の実務経験があることを国が審査しています。経営に関する専門知識やノウハウを持つ専門家に相談し、財務分析や経営課題の抽出を依頼することで、経営状況の把握が可能となります。 また、事業計画の作成・実行についての助言や支援も受けられるので、売上拡大や人手不足解消といった、中小企業・小規模事業者ならではの課題を解消できる可能性があります。 認定経営革新等支援機関の種類 主な認定支援機関の種類は以下のとおりです。 税理士・税理士法人(公認会計士) 弁護士・弁護士法人 商工会・商工会議所 銀行 経営コンサルタント 中小企業診断士・社会保険労務士・行政書士 2021年2月25日現在、30,000超の機関が認定を受けています。中でも税理士・税理士法人が大きな割合を占めており、中小企業・小規模事業者の経営支援において重要な役割を担っています。 出典)中小企業庁「経営革新等支援機関認定一覧について」 認定経営革新等支援機関のサポートを受けるまでの流れ 認定支援機関のサポートを受けるまでの流れは以下のとおりです。 相談する認定支援機関を選定する 認定支援機関に相談する 経営状況の把握、事業計画の作成・実行のサポートを受ける 事業計画の実現 モニタリング・フォローアップ(巡回監査、改善案の提案) まずは経営上の課題について、相談する認定支援機関を選定します。中小企業庁のホームページに設置されている「認定支援機関検索システム」を利用すれば、都道府県や支援機関の種類、相談内容、業種などの条件を指定して検索できます。 相談する認定支援機関が決まったら、財務分析や経営課題の抽出、事業計画の作成などのサポートを受けましょう。事業計画を実行して実現した後も、巡回監査や改善策の提案といったフォローを依頼できます。 出典)中小企業庁「認定支援機関検索システム」 認定経営革新等支援機関を選ぶポイント 認定支援機関に相談する際は、事業内容や解消したい経営課題に合った専門家を選ぶことが大切です。 たとえば、会計や税務に関する相談であれば、税理士や税理士法人がよいでしょう。しかし、人手不足の解消が目的であれば、税理士ではなく、商工会や経営コンサルタント、中小企業診断士のほうがよいかもしれません。 また、認定支援機関選びでは、支援実績が豊富であることも判断基準となります。認定支援機関検索システムの検索結果には支援実績も表示されるので、実績が豊富な機関を選ぶといいでしょう。 なお、認定支援機関を利用することで追加で費用がかかる場合があるので、注意が必要です。 まとめ 中小企業や小規模事業者が経営上の課題を抱えている場合、認定経営革新等支援機関に相談すれば課題を解決できるかもしれません。今後も安定した経営を続けていくために、認定支援機関の利用を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 事業資金の種類とそれぞれの特徴を紹介 事業資金は商売をする上で必要になる資金ですが、何に使うかによって呼び方が異なります。融資を受ける際には基本的に「どんなことに、いくら資金が必要なのか」を明確にさせなければ融資を受けられません...記事を読む
相続時精算課税制度は、両親や祖父母から財産の贈与を受けるときに選択できる制度です。この制度を利用することで、贈与時の負担軽減につながる可能性があります。 ただし、相続時精算課税制度にはデメリットもあるため、制度の内容を理解した上で利用を検討することが大切です。この記事では、相続時精算課税制度の概要やメリット・デメリットを紹介します。 相続時精算課税制度の概要 相続時精算課税制度とは 相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫に財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。同一の贈与者からの贈与であれば、2,500万円まで贈与税は課税されず、限度額に達するまで何回でも控除でき、限度額を超えた部分については、一律20%の贈与税率が適用されます。 また、相続時には、相続時精算課税制度の贈与財産と他の相続財産と合計して相続税を計算します。贈与税を支払っている場合は、相続税から支払済の贈与税を差し引くことができます。 相続時精算課税制度利用の流れ 相続時精算課税制度を利用する子または孫は、最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要です。戸籍謄本などの一定の書類とともに、贈与税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長に提出します。 出典)国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」 相続時精算課税制度のメリット 相続時精算課税制度のメリットと想定されるケースは以下のとおりです。 税金の支払いを先延ばしにできる 相続時精算課税制度で財産を贈与すれば、2,500万円までは贈与税がかかりません。また、制度を利用して相続が発生するまで贈与財産に対する税金の支払いを先延ばしにできます。あくまでも支払いの先延ばしであり、税金が免除されるわけではありません。 「生前贈与をしておきたいが、納税を先延ばしにしたい」という希望がある場合であれば、2,500万円までなら贈与税がかからないため、生前贈与を行いやすいでしょう。子どもがまとまったお金が必要なタイミングで生前贈与を行い、税金の支払いを先延ばしにすれば、財産を有効活用できるかもしれません。 収益性のある資産の生前贈与は相続税対策になる 相続時精算課税制度で収益を生み出す資産を生前贈与すると、相続税対策につながる可能性があります。たとえば、親が収益不動産を贈与せずに所有し続けると、収益不動産と生前得た家賃収入が相続税の課税対象となります。 しかし、相続時精算課税制度で収益不動産を子に生前贈与すれば、贈与後に生じる家賃収入は子に継承できるため、相続税の課税対象に含まれず、収益不動産のみが相続税の課税対象となります。そのため、相続時の収益不動産の時価が贈与時を下回らなければ、税金対策になります。* ただし、経年劣化によって贈与後に収益不動産の価値が下がると、価値減少分だけ相続税の負担が増えてしまうので、相続時精算課税制度の選択は慎重に判断する必要があるでしょう。 ※家賃収入に対する税金については勘案していません。 将来価値が上がる資産の贈与は相続税対策になる 相続時精算課税制度の贈与財産は、贈与時の時価が相続税評価額となります。そのため、将来価値が上がる資産を贈与すれば、「相続時の時価-贈与時の時価」について相続税の負担が軽減されます。「ほぼ確実に価値が上がる」と見込める資産がある場合は、相続税対策になります。 そのため、一時的に評価が下がっている自社株など「今後は確実に値上がりする」と判断できる資産がある場合にはメリットがあります。ただし、不動産などは基本的に経年劣化で資産価値が下がります。そもそも必ず値上がりするといえる資産は存在しないため、暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利かを判断するのは難しいでしょう。 相続時精算課税制度のデメリット 一方で、相続時精算課税制度には以下のデメリットもあります。 年110万円以下の贈与でも贈与税の申告が必要 暦年課税には基礎控除額が設定されており、贈与額が年110万円以下であれば贈与税はかかりません。また、贈与税の申告も不要です。しかし、相続時精算課税制度を選択すると、年110万円以下の贈与であっても、贈与を受けた翌年に贈与税の申告をしなくてはなりません。少額で複数回の贈与を受ける場合は、贈与税申告の手間がかかります。 一度選択すると暦年課税に戻すことはできない 相続時精算課税制度を選択すると、選択した年分以降は永久的に適用され、暦年課税に戻すことができなくなります。暦年課税では、年間110万円までの基礎控除額があるため、計画的に利用することで大きなメリットとなるケースもあるため、相続時精算課税制度の選択は慎重に判断する必要があるでしょう。 小規模宅地等の特例が利用できなくなる 小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす土地を相続した場合に、相続税評価額が最大80%減額される制度です。相続時精算課税制度を選択すると、小規模宅地等の特例を利用できなくなります。状況によっては、小規模宅地等の特例の適用を受けることで相続税対策になります。 出典)国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」 令和5年度税制改正の内容 令和5年度税制改正によって、相続時精算課税制度も一部改正されます。改正内容は以下のとおりです。 ①年110万円の基礎控除の創設 相続時精算課税制度を選択した受贈者が、両親もしくは祖父母から2024年1月1日以降に贈与によって取得した財産に係るその年分の贈与税については、贈与税の課税価格から基礎控除額110万円が控除されるようになります。 ②相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例の創設 災害によって相続時精算課税制度を選択した受贈者が贈与によって取得した土地や建物が一定の被害を受けた場合、その災害による被災価額を控除する特例が創設されます。適用を受けるには、災害によって被害を受けた日が2024年1月1日以降であり、かつ贈与の日から贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間である必要があります。 なお、贈与の日が2024年1月1日以前である場合でも、災害によって被害を受けた日が2024年1月1日以降であれば、本特例の適用対象となります。 出典)国税庁「令和5年度『相続税及び贈与税の税制改正のあらまし』」 相続時精算課税制度は選ぶべきでない? 税制改正前は、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除がなかったため、基本的には暦年課税で少しずつ贈与をする方が税制メリットが大きい状況でした。しかし、今回の税制改正によって相続時精算課税制度でも同様に年110万円の基礎控除が適用されるようになったため、相続時精算課税制度を選択しやすい状況になったといえます。 ここでは、税制改正後に暦年課税と相続時精算課税制度のどちらを選ぶべきかについての考え方を紹介します。 贈与税の観点 相続時精算課税制度でも暦年課税でも、年110万円の基礎控除の範囲内であれば、贈与税がかかることはありません。しかし、年110万円の基礎控除の範囲を超えると、相続時精算課税制度はさらに合計2,500万円まで贈与税がかからないのに対し、暦年課税は超えた金額すべてに対して贈与税がかかります。 そのため、贈与税だけを考えると、基本的に相続時精算課税制度の方が納付金額が少なくなります。 相続税の観点 贈与時の年110万円の基礎控除分の金額について、相続時精算課税制度の場合は、相続財産に加算されることはありません。それに対して暦年課税の場合は、相続発生時から7年前までの贈与については、年110万円の基礎控除分の金額についても相続税の対象となります。 一方、贈与時の年110万円の基礎控除分を超えた金額については、相続時精算課税制度の場合、全て相続財産として加算されます。それに対して暦年課税の場合は、相続発生から8年より前の贈与は相続財産として扱われません。 そのため相続税については、贈与を行った期間がある程度長くなると、暦年課税の方が納付金額が少なくなります。 より詳細な試算が大切 相続時精算課税制度と暦年課税制度のどちらが税制メリットが大きいかを判断するためには、贈与税と相続税を併せて試算する必要があります。基本的には、贈与を行う期間が短く金額が小さければ相続時精算課税制度、贈与を行う期間が長く金額が大きければ暦年課税が、税制メリットが大きくなる傾向にあります。 ただし、相続開始日がいつになるかは予想することができず、必ずしも毎年一定の贈与を継続するとも限らないでしょう。ご自身の状況に合わせて、可能な限り詳細に試算してみることが大切です。より適切な判断を行うには、税理士などの専門家へ相談するといいでしょう。 まとめ 相続時精算課税制度を利用することで、納付する贈与税や相続税を抑えることができる可能性があります。ただし、一度選択すると暦年課税には戻せないので、相続時精算課税制度の選択は慎重に判断しなければなりません。相続時精算課税制度について理解を深め、相続時精算課税制度を利用すべきかどうか検討してみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 終活とは?終活では何を準備すればいい? 昔に比べて平均寿命が延びて老後の期間が長くなったことから、「終活」を行う人が増えています。終活と聞くと、葬儀やお墓、相続など自分が亡くなった後のことをイメージするかもしれません。しかし、実際...記事を読む
2020年12月21日に閣議決定された2021年度(令和3年度)税制改正の大綱において、住宅ローン減税及び住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置の延長等が盛り込まれました。今回の措置は、新型コロナウイルス感染症の影響により落ち込んだ経済の回復を図るために策定されたものです。 今後の国会で関連税制法が成立することが前提にはなりますが、マイホーム取得にかかる税負担を軽減できる可能性があります。マイホーム取得を検討しているのであれば、税制改正の内容を理解しておくことが大切です。 この記事では、住宅ローン減税の仕組みや緩和される適用要件について詳しく解説します。 そもそも住宅ローン減税とは 住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)とは、個人がマイホームの新築や取得、増改築等を行う場合、一定の要件を満たすと住宅ローン年末残高の1%が所得税から控除される制度です。所得税から控除しきれない場合は、住民税から控除することも可能です。 マイホームの取得で住宅ローン減税が適用されれば、住宅ローン金利の負担軽減が期待できます。なお、住宅ローン減税の適用を受けるには確定申告が必要ですが、会社員(給与所得者)の場合は、2年目以降は年末調整で控除の適用を受けられます。 出典)国税庁「No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」 住宅ローン減税の控除期間13年の適用要件について 2019年10月に実施された消費税率の引き上げ(8%→10%)に伴い、住宅ローン減税の控除期間が従来の10年から13年に延長されました。控除期間の延長は、建物購入価格の消費税増税分の負担を軽減することが目的で、特別特定取得にあたる場合に適用されます。 特別特定取得とは、消費税率10%が適用される新築や中古住宅の取得を指し、その住宅に「2019年10月1日~2020年12月31日」の間に居住を開始した場合に適用されます。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響で入居が期限に遅れた場合は、一定の要件を満たした上で、2021年12月末までに入居すれば特別措置の対象となります。 控除額は、10年目までは「住宅ローン年末残高×1%(控除限度額50万円)」です。11~13年目は、「住宅ローン年末残高×1%」または「建物価格(消費税を除く)×2%÷3」のいずれか低い金額が控除額となります。 出典)国土交通省「消費税率引上げに伴う住宅取得に係る対応について」」 2021年度税制改正の概要 2021年度税制改正の概要は以下のとおりです。 住宅ローン減税 住宅ローン減税については、現行の特別特定取得における控除期間13年の措置について、契約期限と入居期限をともに1年延長することが盛り込まれました。 具体的には、契約期限(注文住宅は2020年10月~2021年9月、分譲住宅等は2020年12月~2021年11月)と入居期限(2021年1月~2022年12月)を満たす者に、現行の控除期間13年が適用されます。 また、上記の措置については、新たに床面積要件がこれまでの「50㎡以上」から「40㎡以上」に緩和されます。ただし、「40㎡以上50㎡未満」の住宅については、「合計所得金額1,000万円以下」の所得制限が設けられている点に注意が必要です。 住宅ローン減税 改正概要 改正前 改正後 50㎡以上 (特別特定取得) 13年控除 *1 期限延長:13年控除 *1 50㎡以上 10年控除 *1 変更なし:10年控除 *1 40㎡以上50㎡未満 (特別特定取得) 対象外 拡充:13年控除 *2 40㎡以上50㎡未満 対象外 変更なし:対象外 ※1:「合計所得金額3,000万円以下」の所得制限あり ※2:「合計所得金額1,000万円以下」の所得制限あり 住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置 住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置とは、父母や祖父母などの直系尊属から住宅の新築や取得、増改築等の資金として贈与を受けた場合に、一定額まで贈与税が非課税になる制度です。 住宅取得等資金については、2021年4月~12月の住宅取得等に係る契約について、2020年度と同額の非課税限度額(最大1,500万円)を適用することが盛り込まれました。 また、2021年1月以後の贈与については、床面積要件がこれまでの「50㎡以上」から「40㎡以上」に緩和されます。ただし、「40㎡以上50㎡未満」の住宅については、住宅ローン減税の場合と同様に「合計所得金額1,000万円以下」の所得制限が設けられています。 出典) ・国土交通省「住宅ローン減税等が延長されます!」 ・国土交通省「令和3年度住宅税制改正概要(住宅ローン減税・贈与税非課税措置)」 適用要件の緩和で今までと何が変わる? 2021年度税制改正において、住宅ローン減税や住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置の適用要件が緩和されることで、40㎡台のマンションが値上がりする可能性があります。 40㎡台のマンションは、今まで住宅ローン減税の適用外であることがハードルとなっていました。しかし、適用要件が緩和されたことで、今後は購入を検討する人が増えると予想されます。 40㎡台の物件は、単身者やDINKs世帯(子供がいない共働き世帯)からすれば問題ない広さです。比較的価格が抑えられていることから購入しやすく、住宅ローン減税が適用されれば、購入のハードルはさらに下がるでしょう。 まとめ 住宅ローン減税の控除期間13年の措置が延長されるなど、2021年税制改正では個人の住宅取得を支援する内容が盛り込まれています。適用要件が緩和され、今までは対象外だった40㎡台の物件にも住宅ローン減税が適用されるのは重要なポイントです。 住宅ローン減税が適用されれば、長期的にはまとまった金額の節税が期待できます。マイホームの取得を検討しているなら、今回の税制措置をうまく活用しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 自営業の自宅購入で住宅ローンの審査に落ちた!次なる手段は? 住まいにこだわりを持って暮らす方はとても多いですよね。特に最近、働き方の多様化で増えているフリーランスなど自営業の中で、自宅や離れにアトリエなど仕事場を持ちたいと思っている方もよく見かけます...記事を読む
昔に比べて平均寿命が延びて老後の期間が長くなったことから、「終活」を行う人が増えています。終活と聞くと、葬儀やお墓、相続など自分が亡くなった後のことをイメージするかもしれません。しかし、実際は家族や友人関係、医療・介護、財産など、生前のうちに確認し、準備しておくべきことはたくさんあります。 老後の不安を解消し、残りの人生を自分らしく生きるには、終活について理解しておくことが大切です。この記事では終活ですることや始めるタイミング、老後資金の準備について解説します。 終活とは 終活は週刊誌によって作られた言葉で、「人生の最期を迎えるための活動」といった意味に加え、「残りの人生をより前向きに自分らしく生きるための活動」という意味もあります。 終活が注目されるようになった背景には、高齢化によって老後破産や孤独死、認知症、相続トラブルなどの増加が社会問題化していることがあります。厚生労働省の簡易生命表(2019年)によれば、男性の平均寿命は81.41年、女性は87.45年です。また、90歳まで生存する人の割合は男性27.2%、女性51.1%となっています。 このような背景から「老後生活の不安を解消したい」「家族に負担をかけたくない」と考える人が増え、終活に取り組む人が増えていると考えられます。 出典)厚生労働省「2019年(令和元年)生命簡易表の概況」 終活はいつから準備する? 終活を始めるタイミングは人それぞれで正解はありません。「仕事を辞めて年金生活になった」「一定の年齢に達した」など、人生の転機を迎えたときや死を意識したタイミングで、少しずつ進めていくといいでしょう。 ただし、認知症を患うなど、意思表示ができなくなると始めるのは難しくなります。そのため、まだ元気なうちに、「少し早いかな」と思うぐらいのタイミングで始めるのがおすすめです。 終活では何を準備する? 終活では、現在の状況と将来するべきことを整理するために、エンディングノートを作成するといいでしょう。エンディングノートに法的な効力はなく、書き方のルールもないので、好きな方法で作成して構いません。エンディングノートでは、主に以下の内容について整理します。 自身や家族、友人のこと 自身の基本情報(氏名、生年月日、住所、本籍地など)や趣味などを書いておけば、誰が書いたものかが一目でわかります。スマホやインターネットなど、自身が契約しているサービスについても伝えておくと家族は助かるでしょう。また、家族や友人の連絡先、自身との関係なども書いておくと、必要に応じて連絡をとることができます。 医療や介護のこと 判断力が低下したり、意思表示ができなくなったりしたときのために、かかりつけ医や持病、飲んでいる薬、アレルギーなどについて書いておくといいでしょう。また、介護や延命治療に関する希望を伝えておくと、もしものときに家族が判断しやすくなります。 財産に関すること 老後生活が長くなるほど、財産を適切に管理することの重要性は高まります。収入や支出の項目・金額を整理して、老後の家計収支を把握しましょう。また、預貯金や不動産、金融資産など保有中の資産を一覧にしておくことも大切です。 葬儀やお墓のこと 最近では、葬儀やお墓に対する考え方が多様化しており、その様式もさまざまです。たとえば、葬儀は一般葬の他に、参列者が親族のみの家族葬や一日葬などもあります。また、お墓も代々受け継いでいく家族墓だけでなく、永大供養墓や散骨といった形もあります。そのため、葬儀やお墓についての希望、連絡先のリストなどを書いておくといいでしょう。 相続のこと 相続トラブルを避けるには、相続人や相続財産について整理する必要があります。また、預貯金や不動産といった資産だけでなく、借金などの負債も相続財産に含まれる点に注意が必要です。相続について希望がある場合は、遺言書の作成も検討しましょう。 終活をするメリット 終活をするメリットとしては下記のようなことが挙げられます。 万が一の備えになる 医療や介護に関する希望を家族に伝えておいたり、エンディングノートに記載をしておくことは万が一の際の備えになります。例えば、認知症になって判断力が低下したり、意識不明や重篤な状態に陥ってしまった場合に、延命治療や介護の希望などを伝えておくと、家族が判断をしやすくなります。 また、エンディングノートに自身のアレルギーや持病、常備薬を記載しておくことももしものときの備えになります。 相続をスムーズに進められる 財産の整理や相続の準備をしておくことで、残された家族が相続をスムーズに進められます。例えば、エンディングノートに保有している金融資産や不動産などをまとめて記載しておくと、残された家族が財産を把握しやすくなります。 また、相続について希望がある場合は、遺言書を作成しておくことも有効です。財産の整理や遺言書の作成をしておくことで相続をスムーズに進められるだけでなく、トラブルを回避することにもつながります。 葬儀やお墓の手配をスムーズに進められる 葬儀やお墓の希望について家族に伝えておくことで、手配をスムーズに進めることができます。自身の死後、葬儀やお墓のことなど残された家族には決めるべきことが多くあります。そこで、葬儀やお墓について希望を伝えておくことで、家族が段取りをしやすくなり、負担を軽減することができます。 また、事前に自身でお墓を用意しておいたり葬儀費用を準備しておくことも、残された家族の負担を軽減することができます。 自身の経済状況を把握できる エンディングノートに自身の財産等をまとめることで経済状況を把握できます。そして、自身の経済状況を把握することは、健全な家計収支の維持にもつながります。 自身の経済状況を把握し、今後の人生をどのように過ごすのか改めて見直すことは充実した老後生活を送るためにも大切です。 備忘録になる エンディングノートに保有している銀行口座や保険、株式をまとめておくと備忘録になります。また、各種暗証番号等を記載しておけるエンディングノートなどもあります。 このようにエンディングノートを備忘録として活用するのも一つの有効な方法であると言えます。 人生の振り返りができる 終活は自身の人生を振り返る良い機会でもあります。エンディングノートには様々な種類があり、中には自分史や思い出について記載できるものもあります。このようなことを改めて整理することで、今までの自身の人生を振り返ることができます。 今後の人生をより良く生きるためにこれまでの自身の人生を振り返ることもおすすめです。 生きがいや目標を発見できる 終活では、残された家族の負担を軽減することにフォーカスされることが多いです。しかし、自身の人生を振り返り、今後の人生をより良く自分らしく生きることができるようにするというのも終活を行う目的の一つです。 終活に際しては、これからのセカンドライフで何をしたいか、だれと会いたいかなどを整理してみるとよいでしょう。そうすることで、新たな生きがいや目標を発見することができるかもしれません。 終活をしなかった場合に生じる問題 終活をしなかった場合、下記のような問題が生じる可能性があります。 医療や介護に関する希望を把握できない 年を重ねるにつれて医療や介護が必要になる可能性が高くなります。万が一意識不明や重篤な状態に陥り意思表示が難しくなった場合に、延命治療や介護の希望がわからないと家族が判断をしにくくなります。 相続トラブルが発生する 終活によって自身の財産の整理や相続に関する希望を遺しておかなかった場合、相続トラブルが生じる可能性が高くなります。相続トラブルは遺産内容が不透明であることや遺産分割の割合に偏りがあることに起因するケースが多いです。 葬儀やお墓の準備に手間がかかる 自身の死後、葬儀やお墓のことなど残された家族には決めるべきことが多くあります。例えば、葬儀の日程や形式、寺院の選定、訃報を知らせるべき方の選定などです。これらのことを一から決めるのは非常に手間がかかります。 残された家族が財産を把握できない 自身の財産をまとめて記録しておかないと、残された家族が財産を把握しにくくなります。近年ではパソコンやスマートフォンなどに保存しているデジタルデータなど目に見えない財産も増えています。これらの財産は、家族に伝えておいたり、エンディングノートに記載をしておかないと把握できない可能性が高いです。 十分な老後資金が準備できているかを確認する 終活の中でも、優先的に取り組んでおきたいのが老後資金の問題です。残された家族のことを思えば、自身が亡くなった後のことについて考えるのは大切なことです。しかし、終活では、自身の老後生活に問題がないかを確認するのが、最優先で取り組むべき課題です。 現在の家計収支や資産状況を整理・把握して、十分な老後資金が準備できているかを確認しましょう。もし老後資金が不足するようなら、早急に対策をたてる必要があります。 終活に「リースバック」という選択肢も 老後資金が足りない場合、持ち家があるなら「リースバック」という選択肢があります。リースバックとは、自宅を売却してまとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるサービスです。 リースバックはローン商品ではなく、売却と賃貸が一体となった不動産取引であるため、利用にあたって年齢や収入の制限はありません。また、持ち家を売却すると、通常は別の住居を確保する必要がありますが、リースバックならそのまま住み続けることが可能です。 加えて、リースバックを利用して不動産を現金化すれば財産を分配しやすくなるため、相続トラブルを回避するための手段としても活用できます。 終活に関するよくある質問 終活をしている人はどのような理由で始めますか? インターネット調査会社マクロミルの調査によると、終活を始めている人のうち約89%の方が「家族に迷惑をかけたくないから」と回答しました。また、約48%の方が「病気やけがなどで寝たきりになったりした場合に備えて」、約35%の方が「自分の人生の終わり方は自分で決めたいから」と回答しています。 出典)PRTIMES「デジタル終活知っている?希望するお墓のカタチは?20~70代にきく終活に関する意識調査(マクロミル調べ)」 生前整理として残しておくべきものはどういうものですか? 生前整理として残しておくべきものには、生活必需品などの現在使用しているものに加え、相続にかかわる財産、形見として残したいものなどがあります。特に、相続にかかわる財産は自身の死後に保管場所がわかるようエンディングノートに記載しておくなど工夫が必要です。 終活として断捨離しておくと良いものはありますか? 不用なものやしばらく使用していないものは処分をしてしまうことをおすすめします。特に、家具などの処分に労力を要するものは、事前に処分しておくと残された家族の負担を減らすことができます。また、目に見えるものだけでなく、パソコンに保管されたデータなどのデジタルデータも整理しておくと良いでしょう。 終活をする上での注意点は何ですか? 終活をする人を狙った詐欺や悪徳商法が増加しています。お金が絡むものは、自身で決めるのではなく、家族と相談するなど慎重に判断することをおすすめします。 出典)消費者庁 「第1部 第1章 第4節(4)高齢者が巻き込まれる詐欺的なトラブル」 《Appendix》エンディングノートの記載例 以下はエンディングノートに記載する内容の一例です。 自分自身や家族、友人のこと 自分自身の基本情報(氏名、生年月日、住所、本籍地など)や家族、友人についての記載例です。下記の内容以外にも自身で書きたいことがあれば記載しておくと誰が書いたのか分かりやすくなります。また、家族や友人については、自身の死後に連絡を希望するかまで記載をしておくと家族が判断をしやすくなるでしょう。 自分のこと 名前山田 太郎 生年月日1950年1月1日 住所〒〇〇〇ー〇〇〇〇東京都新宿区西新宿〇ー〇〇 本籍地〒〇〇〇ー〇〇〇〇東京都渋谷区道玄坂〇ー〇〇ー〇〇 血液型A型 趣味釣り読書 家族・友人のこと 氏名関係住所連絡先訃報について 山田 花子妻東京都新宿区〇〇・・・〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇知らせる 山田 次郎子東京都世田谷区〇〇・・・〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇知らせる 山田 二郎弟埼玉県〇〇市・・・〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇知らせない 佐藤 三郎友人福島県〇〇市・・・〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇知らせない 医療や介護のこと 医療や介護についての記載例です。持病については、常備薬やかかりつけの病院まで記載をしています。また、万が一の際に備えて延命治療や介護の希望についても記載をしておくと良いでしょう。 医療や介護のこと 持病高血圧 常備薬〇〇、〇〇〇〇 かかりつけの病院〇〇病院 〇〇科 担当医:〇〇 アレルギー卵、えび、かに、いか 延命治療希望しない 介護の希望自宅で家族に介護をしてもらいたい 財産のこと 財産についての記載例です。下記では、預貯金と株式について記載していますが、それ以外でも、資産を保有している場合は一覧にしてまとめておくと良いでしょう。 預貯金のこと 金融機関名〇〇銀行支店名〇〇支店 口座番号〇〇〇〇〇〇〇口座名義山田 太郎 口座種別普通備考 株式のこと 預入証券会社〇〇証券口座番号〇〇〇〇〇〇〇 名義人山田 太郎備考〇〇の株式を100株保有 葬儀やお墓のこと 葬儀やお墓についての記載例です。葬儀については、下記のような事項について記載をしておくと葬儀の準備がスムーズに進みやすいです。また、下記以外にも葬儀に参列してほしい人を表にしてまとめておいたり、納棺時の服装や棺に入れてほしいものなどを記載することもあります。 葬儀のこと 葬儀を希望する/しない希望する 葬儀会社・斎場株式会社〇〇住所:東京都新宿区〇ー〇〇 費用について準備している 葬儀の種類家族葬 宗教の希望仏教 遺影についてあり(机の引き出しの一番上) 戒名についてこだわりはありません お墓のこと お墓の有無先祖代々のお墓 埋葬方法の希望永代供養墓 お墓がある場合墓地・霊園の名称:〇〇霊園住所:東京都練馬区〇〇ー〇〇連絡先:〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇 相続のこと 下記は遺言書についての記載例です。遺言書がある場合は、保管している場所まで記載をしておくと良いでしょう。また、遺言書の有無以外にも、遺産分割や遺品の処分について希望がある場合は、記載をしておくことをおすすめします。 相続のこと 遺言書の有無有 遺言書の種類自筆証書遺言(机の一番下の引き出し) 遺言書の関係者弁護士:〇〇連絡先:〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇 まとめ 終活は、家族の負担を減らせるのはもちろん、残りの人生を自分らしく生きることにも役立ちます。終活ですることはたくさんありますが、最優先して取り組むべきことは財産整理です。家計収支や資産状況を整理した結果、持ち家があって老後資金が不足しそうな場合はリースバックの活用を検討しましょう。 リースバックならSBIスマイル もっと詳しく知りたい方はこちら SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定も無料で受け付けています。※SBIスマイルのHPに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 リースバックとは「セール・リースバック」や「セール・アンド・リースバック」とも称される取引手法で、所有している資産を第三者に売却し、リース契約を締結することで、それまでと同じ資産を利用し続け...記事を読む { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "終活をしている人はどのような理由で始めますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text": "インターネット調査会社マクロミルの調査によると、終活を始めている人のうち約89%の方が「家族に迷惑をかけたくないから」と回答しました。その次に約48%の方が「病気やけがなどで寝たきりになったりした場合に備えて」、約35%の方が「自分の人生の終わり方は自分で決めたいから」と回答しています。" } }, { "@type": "Question", "name": "生前整理として残しておくべきものはどういうものですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"生前整理として残しておくべきものには、生活必需品などの現在使用しているものに加え、相続にかかわる財産、形見として残したいものなどがあります。特に、相続にかかわる財産は自身の死後に保管場所がわかるようエンディングノートに記載しておくなど工夫が必要です。" } }, { "@type": "Question", "name": "終活として断捨離しておくと良いものはありますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"不用なものやしばらく使用していないものは処分をしてしまうことをおすすめします。特に、家具などの処分に労力を要するものは、事前に処分しておくと残された家族の負担を減らすことができます。また、目に見えるものだけでなく、パソコンに保管されたデータなどのデジタルデータも整理しておくと良いでしょう。" } }, { "@type": "Question", "name": "終活をする上での注意点はありますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"終活をする人を狙った詐欺や悪徳商法が増加しています。お金が絡むものは、自身で決めるのではなく、家族と相談するなど慎重に判断することをおすすめします。 " }} ] }
約40年ぶりに民法(相続法)が改正され、2020年4月から「配偶者居住権」が施行されました。現在夫婦で持ち家に暮らしているのであれば、相続が発生する時のために配偶者居住権について理解しておくことが大切です。 この記事では、配偶者居住権の概要やメリット・デメリット、成立要件について詳しく解説します。 配偶者居住権とは 配偶者居住権とは、残された配偶者が被相続人の所有する建物に居住していた場合に、被相続人が亡くなった後も、賃料の負担なく、その建物に住み続けられる権利です。 遺言で配偶者に配偶者居住権を遺贈することで、配偶者居住権を設定することができます。このとき、被相続人と配偶者が婚姻してから20年以上の夫婦である場合、配偶者居住権を設定しても、原則として遺産分割協議配偶者の取り分が減らされません。 また、被相続人が遺言をしないまま亡くなったとしても、他の相続人との遺産分割協議によって、配偶者居住権を取得できます。仮に、遺産分割協議が調わないとしても、家庭裁判所に審判の申立てることで、取得できる可能性もあります。 配偶者居住権施行の背景 近年の高齢化の進行により平均寿命が延びたことから、夫婦の一方が亡くなった後も、残された配偶者が長期間にわたり生活を継続することも多くなりました。その際には、配偶者が住み慣れた住居で生活を続けるとともに、老後資金も確保したいと希望することも多いと考えられます。そこで、遺言や遺産分割の選択肢を広げるために制度が導入されました。 配偶者居住権のメリット 配偶者居住権は、以下のようなメリットがあります。 被相続人が亡くなった後も自宅に住み続けられる 配偶者居住権の制度を利用すれば、被相続人が亡くなった後も引き続き自宅に無償で居住できます。本制度が施行されるまでは、相続財産の分割などの要因により、残された配偶者が夫婦で暮らしていた自宅を相続できず、自宅に住み続けられないことがありました。 しかし、配偶者居住権を利用することで、建物の所有権を取得するよりも低い価額で居住権を確保でき、自宅に住み続けられる可能性が高まりました。 不動産以外の財産が受け取りやすくなる 配偶者居住権は、不動産以外の財産が受け取りやすくなります。たとえば、被相続人が夫、相続人が妻と子一人の場合、法定相続分は妻と子の相続割合は1対1です。仮に相続財産が自宅と預貯金のみで、それぞれの価値が同じとき、均等に分けようとすると妻は自宅を相続すると、預貯金は取得できなくなってしまいます。 しかし、婚姻20年以上の夫婦であり、遺言による遺贈を行っていれば、原則として遺産分割で配偶者の取り分が減らされることはありません。 配偶者居住権のデメリット 配偶者居住権には、以下のようなデメリットもあります。 自宅の売却ができない 配偶者が所有権を保有している場合、本人の意思に基づいて自由に自宅を売却できます。一方で、配偶者居住権は、あくまで自宅に居住する権利です。そのため、配偶者居住権を保有しているだけでは、第三者に自宅を売却できません。 また、自宅の所有権を保有する配偶者以外の相続人が、売却しようと思っても売却できません。なぜなら、その自宅には配偶者居住権が設定されており、第三者が購入しても住めないためです。 上述のような問題の対処法として、配偶者居住権を合意解除や放棄する事はできます。しかし、配偶者が認知症になるなど、意思表示ができなくなると、大きな問題になる恐れがあります。 所有者の税負担が大きい 配偶者にとっては、所有権ではなく居住権だけを取得できるのでメリットです。一方で、所有権者にとっては、居住権がないのにも関わらず、固定資産税を支払わなければなりません。改正相続法では、配偶者居住権を取得した配偶者は、建物の必要費を負担する義務がありますが、これはあくまで建物部分に限られます。土地の固定資産税の負担は、所有権者が行わなければならないので、不公平感も生まれやすいでしょう。 これらのデメリットは、従来の所有権では生まれなかったので、配偶者居住権を設定する際には、あらかじめよく話し合っておくことが大切です。 配偶者居住権の成立要件 配偶者居住権が成立するには、以下3つの要件を満たす必要があります。 相続開始時に被相続人の所有する建物に居住していたこと 相続開始時に被相続人が配偶者以外の者と建物を共有していないこと 以下のいずれかに該当(ア)遺産の分割により配偶者居住権を取得するものとされたこと(イ)配偶者居住権が遺贈の目的とされたこと 配偶者居住権は、遺産分割協議で取得できますが、遺産分割協議を行うことになった場合、配偶者短期居住権で保護されます。配偶者短期居住権とは、相続が発生した時点で、被相続人と同居していた配偶者が、遺産分割の確定まで、最短でも相続開始から6か月間、引き続き住み続けられる権利です。 まとめ 前述のとおり、配偶者居住権は配偶者にとって、大きなメリットがありますが、配偶者以外の相続人にとってはデメリットもあります。そのため、配偶者居住権の設定の際には、配偶者と子の折り合い必要です。また、配偶者居住権がどの程度の評価を持つかなど、素人には算定が難しいです。 配偶者居住権は、開始間もない制度です。配偶者居住権の成立要件や評価方法は複雑で、まだ不透明な部分が多いのが現状です。配偶者居住権を検討する場合は、相続に強い税理士などの専門家に相談しておくと安心でしょう。 出典) ・法務局「配偶者居住権とは何ですか?」 ・一般社団法人 全国銀行協会「「配偶者居住権」は配偶者にどんなメリットがあるのですか?」 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 相続した不動産に不動産取得税がかかるケースとは? 自宅の購入など、不動産を取得したときには不動産取得税がかかります。では、相続で不動産を取得した場合には、不動産取得税はかかるのでしょうか。 相続により不動産を取得した場合、原則不動産取得税は...記事を読む
不動産を担保とするローンの返済が困難になると、最悪の場合、競売によって担保不動産が強制的に売却されてしまいます。競売にはデメリットがあるので、ローンの返済が困難になったとしても、絶対に回避すべきです。また、不動産を担保にローンを借りるのであれば、もしものときの備えとして、競売について理解しておくことが大切です。 この記事では、競売を回避すべき理由や回避する方法について解説します。 競売とは 競売とは、債務者の所有する不動産などを売却し、その代金を債務の弁済にあてる手続きです。この手続きは、債権者の申し立てにより、裁判所が不動産などを差し押さえることで行われます。 競売は3種類に分類される 一口に「競売」といっても、競売に至るまでの経緯によって、3種類に分類されます。なお、手続きそのものの流れについては、3種類とも同様です。 強制競売 強制競売は、判決や裁判所での和解又は調停で決まった内容を実現したり、公証人が作成した公正証書の内容を実現したりするための手続きです。 担保不動産競売 担保不動産競売は、不動産に設定された担保権(主に抵当権)を実行するための手続きです。 形式競売 形式競売は、債務の清算としてではなく、遺産分割や共有物分割、破産手続上の換価など、不動産を売却してお金に換える必要があるときに、競売手続をその手段として利用するものです。 公売と競売の違い 競売は債権の回収を図る手続きであるのに対して、公売は滞納税金の回収を図る手続きです。根拠法も競売が民事執行法であるのに対し、公売は国税徴収法となります。また、競売は主に裁判所が手続きを進行しますが、公売は国税局や税務署が手続きを進行します。 競売の流れ 一般的に住宅ローンなどの保証会社がついている融資の場合、競売の大まかな流れは以下のとおりです。 金融機関から一括返済を求められる(督促状・催告状が届く) 保証会社が金融機関に一括返済を行う(代位弁済) 債権者が裁判所に競売申立てを行う 裁判所から競売開始決定通知が届く(差押え) 不動産の現況調査が行われる 競売の入札が実施される 落札者に不動産が売却される(退去) 上述のような流れで競売手続きが開始され、最終的には担保不動産が売却されます。競売の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事はこちら担保不動産競売までの流れをわかりやすく解説 競売を回避すべき3つの理由 競売は主に以下の3つの理由から、回避すべきと言えます。 落札価格(売却価格)が市場価格よりも安くなる 競売物件は買主にとってリスクが高いため、落札価格(売却価格)は市場価格を下回るのが一般的です。市場価格より落札価格が安くなる理由は以下のとおりです。 落札した建物に欠陥が見つかれば、買主が修繕費を負担しなくてはならない 前の所有者が落札後も退去しなければ、退去してもらうための交渉や手続きも必要になる 「競売物件」に対する抵抗感がある 通常の不動産取引に比べて、競売は手続きが煩雑である 競売での落札価格に大きく関わるのが、「売却基準価額」と「買受可能価額」です。上述のとおり、競売は落札者の負担が大きいことから、競売にかけられる不動産の売却基準価額は、市場価格の約7~8割程度に設定されます。 そして、最低落札価格を表す買受可能価額は、売却基準価額の8割です。落札価格の基準となる価額がこのように決定されているため、一般的に落札価格は市場価格を下回ってしまいます。 余計な費用がかかる 競売では、通常の不動産取引ではかからない、余計な費用がかかります。競売が実行されるまでには、各種書面の送付や現況調査など、さまざまな費用が発生しますが、これらの費用は予納金によって賄われます。予納金とは、裁判所に競売の手続きを申立てるときに債権者が納めるお金です。たとえば、競売物件が東京23区の場合、予納金の額は以下のとおりです。 請求債権額 予納金の額 2,000万円未満 80万円※ 2,000万円以上 5,000万円未満 100万円 5,000万円以上 1億円未満 150万円 1億円以上 200万円 ※令和2年3月31日以前に受理された申立てについては60万円 出典)裁判所|不動産競売事件(担保不動産競売,強制競売,形式的競売)の申立てについて 予納金は競売手続きを開始するときは債権者が債務者に代わって立替をしますが、最終的には売却代金から差し引かれて債権者に返還されるため、実質的には債務者が負担することになります。 また、ローンの延滞が始まってから競売で売却されるまでは、延滞分の遅延損害金も発生します。延滞から競売による売却まで一年以上かかる場合もあるため、残債によってはかなりの額になります。こうした費用が重なり債務者の負担金額が増加するため、競売で不動産を売却しても、残債を完済できない恐れもあります。 競売にかけられたことを知られてしまう 不動産を競売にかけられると、周囲に知られてしまう恐れがあります。なぜなら、裁判所による競売・差押えは公示され、所在地や外観、室内写真など、物件の詳細がホームページ上に掲載されるからです。名前が公開されることはありませんが、近所の人や会社などが見れば、競売にかけられていることはすぐにわかります。 また、競売の手続きが進むと、裁判所の執行官による現地調査が行われ、占有者や物件状態の確認、外観や室内の写真撮影、周辺住民への聞き取りなども行われます。また、ホームページなどに掲載された情報をもとに、落札目的の不動産業者が物件確認に訪れることも多いです。 競売で残債を完済できないとどうなる? 上述のとおり、競売は落札価格(売却価格)が市場価格よりも安くなるうえに、余分な費用も掛かってしまうため、競売後も残債を完済できない恐れがあります。 競売で完済できなかった残債については、引き続き、債権者に返済をすることになります。このときの債権者は、ローンを融資した金融機関や途中で「代位弁済」をした保証会社となりますが、債権管理回収を専門に行う「サービサー」という業者になることもあります。サービサーは、競売後、それまでの債権者から債権を譲渡され、債務者からの債権回収を行ないます。 このように、債権者は変わる可能性はありますが、債務者の残債に対する返済義務はそのままです。実際の返済方法については、債権者との交渉になりますが、分割払いとなるケースが多いようです。 競売を回避する方法 債権者から申立てによって、競売手続きが開始されたとしても、開札期日の前日までは取り下げの手続きができます。しかし、申立てを取り下げるように交渉するのは簡単ではありません。債権者に競売の申立てられた場合には、以下のような対策を行いましょう。 ①不動産担保ローン 他の金融機関から新たに融資を受け、残債を返済することができれば、債権者は競売の手続きを取り下げてくれます。しかし、延滞歴や資産状況を考えると現実的には難しいです。 一方で、不動産担保ローンを提供している金融機関の中には審査が柔軟な会社もあり、不動産に評価余力があれば融資を受けられるかもしれません。不動産担保ローンを利用して返済期間を延長できれば、毎月の返済額を低減できる可能性があります。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 ②任意売却 次に、任意売却とは、債権者と債務者の間で合意したうえで不動産を売却する方法です。債権者の合意を得ること以外は一般的な売却と同じなので、市場価格に近い値段で売却できる可能性があります。まずは、任意売却の相談に乗ってくれる不動産会社や弁護士を探しましょう。 関連記事はこちら競売を回避する「任意売却」とは?注意点や流れを解説 ③リースバック 最後に、同じ家に住み続けたい場合はリースバックも選択肢のひとつです。リースバックは自宅をリースバック運営会社に売却し、その運営会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けられます。債権者から売却価格の同意が得られれば利用できるかもしれません。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 まとめ 競売の申立てが行われると、取り下げてもらうのは簡単ではありません。競売で自宅を売却されてしまうと、市場価格よりも安くなるだけでなく、余計な費用がかかるなどのデメリットがあります。ローン返済の見通しが立たないときには、必ず借り入れした金融機関に相談しましょう。 自宅の売却相談はこちらから SBIシニアの住まいとお金なら、金融と不動産の両方の知識で丁寧にアドバイスいたします 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 「金銭消費貸借契約証書」の重要性とは? 金融機関から借入れた不動産担保ローンの返済が困難になってしまうと、担保として提供している不動産は金融機関によって売却されることになります。これは、不動産担保ローンを借入れるときの〝常識〟です...記事を読む
離職や廃業によって、家賃の支払いに困ったとき、自治体に申請すると住居確保給付金を受給できる可能性があります。住居確保給付金は失業者向けの制度でしたが、2020年4月20日から受給資格が緩和されました。これまでは受給資格を満たさなかった人でも、やむを得ない休業等が理由で、家賃が払えない場合は、住居確保給付金を受給できるかもしれません。 この記事では、住居確保給付金の概要や支給対象拡大のポイント、手続きの流れについて解説します。 住居確保給付金とは 住居確保給付金とは、離職や廃業などにより住居を失った、または住居を失う恐れがある人に対して、一定期間支給される給付金のことです。仕事を失って家賃が払えない状態になっても、住居確保給付金を受給できれば、家賃の補填ができます。 従来は失業者支援が目的の制度でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、受給資格が緩和されました。住居確保給付金の主な支給要件(受給資格緩和後)は以下のとおりです。 離職・廃業をした日から2年以内、またはやむを得ない休業等により、収入が減少していること 収入が基準額を超えていないこと 資産が一定額以下(100万円を超えない額)であること 上記の状態になる前に世帯の生計を主として維持していたこと ハローワークに求職の申し込みをすること※ ※追記 2020年4月30日の支給要件緩和に伴い、これまで必要だったハローワークへの求職申し込みの条件が撤廃されました。 「やむを得ない休業等により収入が減少していること」という要件があるため、新型コロナウイルス感染拡大が理由の失業・収入減少で家賃が払えない場合も、住居確保給付金を受給できる可能性があります。受給するには、各自治体が定めている収入・資産の基準額を下回ることが条件になります。たとえば、東京都23区の収入基準額(月額)、資産基準額、支給家賃額(上限額)は下表のとおりです。 単身世帯 2人世帯 3人世帯 収入基準額(月額) 138,000円 194,000円 241,000円 資産基準額 504,000円 780,000円 1,000,000円 支給家賃額(上限額) 53,700円 64,000円 69,800円 収入・資産基準額や支給家賃額の上限は自治体によって異なるため、住居確保給付金の受給を希望する場合は申請予定の自治体に確認しましょう。支給期間は原則3か月間ですが、一定の要件を満たす場合は最長9か月間まで延長される可能性があります。 住居確保給付金の対象におけるポイント 厚生労働省が住居確保給付金の受給対象を拡大した点について、以下のようなポイントがあります。 年齢制限が撤廃された 離職と同程度の状況にある人も受給対象になった 求職活動の要件も緩和された これまでは「65歳未満」という年齢制限がありましたが、今回の緩和で年齢制限が撤廃されました。また、離職・廃業から2年内の人のみが対象でしたが、やむを得ない休業などで、離職と同程度の状況にある人(自営業者・フリーランスなど)も対象に追加されています。 さらに、「ハローワークで月2回以上の職業相談」「自治体で月4回以上の面接支援」といった求職活動の要件も緩和されました。申請時にハローワークへの仮登録を行う必要はありますが、フリーランスや自営業者は現在の就業形態を維持しつつ、アルバイトなどで当面の生活費をまかなうことも可能です。 住居確保給付金の手続きの流れ 住居確保給付金の受給を希望する場合は、必要書類を用意したうえで、各自治体の担当窓口に相談しましょう。申請に必要な書類の一例(世田谷区)は以下のとおりです。 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、住民票・戸籍謄本など) 離職関係書類(離職票など、2年以内に離職したことが確認できる書類) 収入関係書類(申請者および同居親族の給与明細、年金の通知など) 金融資産関係書類(申請者および同居親族の預金通帳) 求職受付票(ハローワークで発行されるもの)※ ※追記 2020年4月30日の支給要件緩和に伴い、これまで必要だったハローワークへの求職申し込みが不要となったことで、求職受付表が不要となりました。 自営業者やフリーランスなどやむを得ない休業等で収入が減少した人は、「離職と同程度の状況にあること」の証明として、以下のような書類が必要になります。 労働条件が確認できる労働契約書類 勤務日数や勤務時間の縮減が確認できるシフト表 店舗の営業日や営業時間の減少が確認できる書類 注文主からの発注取り消し・減少が確認できる書類 社会福祉協議会の特例貸付が行われたことがわかる書類 状況によって必要書類は異なるため、手続きをする前に、まずは自治体の担当窓口に確認してみましょう。 まとめ 厚生労働省が受給資格を緩和したことで、これまでは支給対象外だった人も住居確保給付金を受給できるようになりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で収入が減少し、自宅の家賃が払えなくて困っている場合は、自治体の窓口に相談してみましょう。 出典) ・厚生労働省「くらしや仕事の情報」【PDF】 ・世田谷区社会福祉協議会「住居確保給付金」【PDF】 ・厚生労働省「住居確保給付金 今回の改正に関する QA vol 4」【PDF】 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 コロナウイルスの影響で生活資金不足に!公的支援で足りないときは 新型コロナウイルスの影響で、家計に大きなダメージを受けた人も少なくないでしょう。国からの給付金や貸付制度などもあるものの、それでも足りない時はどうすればいいでしょうか。家計が立ち直るまでの資...記事を読む
「保証人」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。一方で、保証人が「どのような責任を負うことになるか」理解をしている人は少ないかもしれません。また、一口に「保証人」と言っても、「物上保証人」「連帯保証人」では、責任範囲が異なることをご存知でしょうか。 この記事では、ローンなどの債務における「保証人」や「物上保証人と連帯保証人の違い」について解説します。 そもそも保証人とは 保証人とは、債務者が債務不履行となったときに、その履行の責任を負う人です。融資とその返済を例に挙げると、債務者が返済できなくなった時に、債務者に代わって返済義務を負う人のことを言います。 ところで、何故保証人を立てる必要があるのでしょうか?例えば、金融機関から担保融資を受ける際、債務者本人が担保を提供して、その評価の範囲内でお金を借りることが一般的です。 しかし、返済ができなくなった時に、担保の価値が減少していたら、金融機関は融資金を回収できなくなります。これは金融機関にとっての大きなリスクです。 このようなリスクを避けるために、保証人を立てることで、追加で担保を提供することや、債務を保証人が引き受けることができます。そのため、担保融資では、担保提供と共に保証人が必要になります。 一方で、充分な担保が提供されている場合や、保証協会の保証付き融資などは、保証人が免除されることもあります。 出典)内閣府「保証人とは(法的整理)」 関連記事はこちら住宅ローンの保証会社とは?役割や種類、利用時の注意点を解説 物上保証人とは 物上保証人とは、自分の財産を他人の債務の担保に提供する人のことです。一般的には担保提供者と呼ばれます。あくまで「担保の提供」であり、債務を負担するわけではないため、物上保証人の負担割合は、自身が提供した担保以上の返済義務を負いません。 担保融資を受ける際、債務者に担保として提供する物がない場合は、家族や親戚などが物上保証人になる方法もあります。その際は、物上保証人となることに同意し、本人の所有物である担保を提供することが必要です。 物上保証人になると、債務者が返済できなくなった際には抵当権が実行され、自分が提供した担保の範囲内で物的有限責任を負うという特徴があります。 たとえば、債務者のAさんが3,000万円の借り入れを金融機関から行い、物上保証人のBさんが2,000万円の担保を提供したとします。債務者のAさんが返済できなくなり、債務不履行となった場合、金融機関は抵当権を実行して、物上保証人のBさんの担保から債権回収を行います。 この場合、1,000万円の債務が残りますが、物上保証人のBさんは、残った債務まで返済する義務はありません。 連帯保証人とは 連帯保証人は、「催告の抗弁」「検索の抗弁」「分別の利益」という、通常「保証人」が持つ権利が認められない保証人のことです。順に説明します。 「催告の抗弁」とは、保証人が債権者から債務の履行を請求されたときに、まずは債務者に請求するよう求めることを指します。「検索の抗弁」とは、保証人が債権者に対し、債務者が弁済可能な資産などを所有しているときに、保証債務の履行を拒否できることを指します。 「分別の利益」とは、保証人が複数存在する場合、その頭数で割った金額についてのみ支払義務が生じることです。 これらのことから、連帯保証人の責任範囲は債務者と同等となります。つまり、「連帯保証人」は、本来債務者が負担すべき債務についても、履行せざるを得なくなる恐れがあり、通常の「保証人」よりも重い責任が課されます。 住宅ローンを組む際は保証人が不要 通常、単独で住宅ローンを組む際は購入する家が担保となり、抵当権が設定されるため保証人を立てる必要はありません。例外として、購入する不動産が共有名義の場合や土地の所有者と建物の所有者が異なる場合などは担保提供が必要となります。 例えば、親の所有する土地に子どもが家を建てる場合は、担保提供として金融機関から連帯保証人となることを求められます。住宅ローンの返済が滞った場合や万が一の場合に、金融機関は家だけの抵当権を設定しても担保としての意義がほとんどないからです。 親子間で担保提供が発生する場合は、将来親が亡くなった際に相続人とのトラブルに発展する場合があるため、家を建てる前に話し合うことが重要です。 夫婦で借りる住宅ローン 夫婦で借りる住宅ローンは、ペアローンやフラット35の収入合算を利用する方法があります。フラット35の収入合算には連帯保証型と連帯債務型があります。連帯保証型では夫婦のうち一人が借主となり住宅ローンの返済義務を負い、もう一人がその連帯保証人となって借主が住宅ローンを返済できなくなった際に代わりに返済義務を負います。 夫婦で住宅ローンを組む場合は、それぞれの商品の返済責任義務について確認しておくことが大切です。 物上保証人と連帯保証人の違い 債務者が債務不履行となった場合で考えてみましょう。物上保証人は自身が差し入れた担保の評価範囲内にのみ返済義務が生じます。一方で、連帯保証人は、債務者の債務が完済されるまで返済責任義務が生じます。 つまり、担保提供の有無にかかわらず、金融機関に返済を命じられたら、すべての債務の返済義務が生じます。そのため、物上保証人と比べると責任範囲が広く、リスクも大きくなることがわかります。 このような違いがあるので、保証人となる依頼を受けている場合は、保証内容の範囲やリスクを充分理解しておく必要があります。安易に連帯保証人となることを引き受けないことが大切です。 不動産担保ローンでは保証人が必要? 不動産担保ローンでは、債務者の所有不動産である場合、保証人が原則不要という会社も多いです。なぜなら、担保として提供する不動産の評価が高ければ、債務者自身が責任を負うことができるからです。仮に債務不履行となったとしても、担保として提供している不動産の売却により、融資金を回収できるので、保証人は必要ないのです。 ただし、債務者以外の第三者から担保提供を受ける場合は、保証人が不要とは限りません。この場合、担保の提供者が物上保証人もしくは連帯保証人のどちらかになることが一般的です。 物上保証人になるか、連帯保証人になるかは、金融機関がリスクをどのように考えるかによって分かれます。物上保証人の場合、返済の責任は担保の評価内となります。そのため、債務不履行になったとき、担保の評価が債務残高を下回っていれば、残債分を回収できなくなります。 一方で、連帯保証人の場合、担保の評価が債務残高を下回っていたとしても、その残債までも支払う義務が発生します。このように、債務者自身の与信が低いと判断される場合などに、連帯保証人となることを求められるかもしれません。 まとめ 担保融資では、債務者以外の第三者から担保提供してもらう場合、担保の提供者に物上保証人または連帯保証人になってもらうことが一般的です。物上保証人の責任範囲が担保の評価内なのに対して、連帯保証人は債務が完済するまでが責任範囲となるので、連帯保証人のほうが物上保証人に比べると責任が重くなります。 保証人の違いを正しく理解し、契約後に後悔しないよう気をつけましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保として借り入れを行うローン商品のことです。不動産を担保にすることで、無担保ローンに比べてまとまった金額を低金利で借りることができます。 一方...記事を読む