用語・制度のことが知りたい

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「用語・制度」の記事一覧

  • 設備資金とは?具体例や運転資金との違い、融資を受ける方法を解説

    設備資金とは?具体例や運転資金との違い、融資を受ける方法を解説

    企業の創業時や事業の拡大時など、事業運営では設備投資が必要になる場面があります。まとまった費用がかかるため、資金調達に悩む経営者や個人事業主の方も多いのではないでしょうか。この記事では、設備資金の概要や運転資金との違い、融資を受ける方法などを解説します。 設備資金とは 設備資金とは、事業用の設備の購入に必要となる資金のことです。創業時や事業の拡大時などは、設備や施設の購入などに伴い、一時的にまとまった費用が発生します。設備投資に必要な資金を自己資金でまかなうのが難しい場合は、設備資金として金融機関から資金を調達する方法もあります。 設備資金の具体例 設備資金の内容は業種によって異なり、例えば以下のような資金が設備資金として該当します。 業種設備資金の例 製造業事務所の敷金・保証金、事務所や工場などの増設、拡張など 建設業事務所の敷金・保証金、建設機械、事業用車両の購入など 飲食業店舗の敷金・保証金、厨房機器、テーブル、椅子の購入費など 小売業店舗の敷金・保証金、陳列棚、什器購入費など 設備資金に含まれないもの 事業に関連して一時的に発生する支出であっても、以下の資金は設備資金に含まれません。あくまでも、事業をする上で必要となる設備に対しての支出が設備資金となります。 法人設立の資本金 増資のための出資金 個人使用が目的の乗用車 設備資金と運転資金を比較 設備資金と混同しやすい資金として、運転資金があります。 運転資金とは 運転資金とは、事業を継続するために必要な資金です。具体的には、人件費や仕入れ代金、家賃、光熱費など事業を継続するうえで必要な資金が運転資金に該当します。 設備資金と運転資金の違い 設備資金と運転資金は、主に支払いのタイミングや継続性に違いがあります。設備資金は、設備などを購入する際に、一時的にまとまった費用がかかるのが特徴です。一方、運転資金は、事業を運営している限り継続的にかかります。 設備資金の融資を受ける方法 設備資金の融資を受ける方法は、主に以下の3つがあります。 銀行融資 銀行などの民間金融機関では、設備資金の融資を行っています。経営状況や事業計画、返済能力などを審査されます。事業の将来性や財政状態を審査したうえで、融資条件が決定されます。 公的融資 公的融資の一つである日本政策金融公庫は、主に中小企業や個人事業主の資金調達支援を行っている政府系金融機関です。設備資金の融資も取り扱っており、すでに事業を行っている企業だけでなく、これから新規開業する個人も利用できる可能性があります。 ノンバンクからの融資 銀行ではないノンバンクを利用して設備資金の融資を受ける方法もあります。無担保での融資だけでなく不動産担保ローンを利用する方法もあり、商品としてはビジネスローンに該当します。 不動産担保ローンは、土地や建物などの不動産を担保に借り入れができるローン商品です。資金使途が幅広く、設備資金としても利用できます。「開業したばかりで事業の実績がない」「赤字決算で資金調達が難しい」といったケースでも、担保不動産に価値があれば融資を受けられるかもしれません。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 設備資金の融資申し込みの必要書類 設備資金の融資を受けるには、借入先の審査に通過する必要があります。ここでは、融資申し込み時の必要書類について説明します。 調達した資金の使用目的がわかる書類 設備資金の融資に限らず、融資を受ける際には資金使途を明確にする必要があります。設備資金のみの融資を受けるのであれば、もちろん資金使途は設備投資に限られます。そのため、調達した資金を何に使うのか、使用目的や金額が記載された書類が必要になります。主な書類は以下のとおりです。 購入する設備の見積書 領収書 売買契約書 経営状況や事業の見通しがわかる書類 借主の財務の健全性や返済能力なども審査の判断基準になるため、経営状況や事業の見通しがわかる書類も必要です。主な書類は以下のとおりです。 決算書(直近3期分程度) 資金繰り表 事業計画書 設備資金の融資を受けるときの注意点 設備資金の融資を受ける際は、以下の点に注意しましょう。 無理のない返済計画を立てる 借入金額や返済期間は、経営状況に合わせて慎重に判断する必要があります。借入金額を増やしすぎたり、返済期間を短くしすぎたりすると、資金繰りの悪化を招く恐れがあります。事業運営に支障が出ることがないように、無理のない返済計画を立てましょう。 資金の使い道を変更しない 設備資金として融資を受けた資金は、設備投資にしか使えません。運転資金など、その他の目的に使用すると契約違反になる可能性があります。 まとめ 設備資金は、事業の成長・拡大に不可欠な設備投資に必要な資金です。 自己資金でまかなうのが難しい場合は、金融機関から融資を受ける必要があります。金融機関によって特徴が異なるため、経営状況にあわせて最適な借入先を選択しましょう。 無料相談してみる 不動産担保ローンの疑問にお答えします。 無料相談をしてみる 不動産担保ローンの疑問にお答えします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 事業資金の種類とそれぞれの特徴を紹介 事業資金は商売をする上で必要になる資金ですが、何に使うかによって呼び方が異なります。融資を受ける際には基本的に「どんなことに、いくら資金が必要なのか」を明確にさせなければ融資を受けられません...

    2025.04.09用語
  • 旧耐震基準とは?新耐震基準との違いやリスク、確認方法を解説

    旧耐震基準とは?新耐震基準との違いやリスク、確認方法を解説

    地震大国である日本において、耐震基準は住宅の安全性を左右する重要な要素です。旧耐震基準で建てられた住宅は、現行の新耐震基準に比べて耐震性能が劣る可能性があります。この記事では、旧耐震基準の概要や新耐震基準との違い、リスク、確認方法を解説します。 旧耐震基準とは 旧耐震基準とは、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた建物に適用される耐震基準です。建築確認は、建築工事に着手する前に設計内容が法令に適合しているかを確認する手続きを指します。旧耐震基準では、震度5程度の地震に対して建物が倒壊しないような構造基準として設定されています。 新耐震基準との違い 新耐震基準とは、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物に適用される耐震基準です。新耐震基準は、1977年に「新耐震設計法(案)」が公表されたのち、1978年(昭和53年)に発生した宮城県沖地震(震度5、マグニチュード7.4)により妥当性が実証されたこともあり、建築基準法の体系に盛り込まれることになりました。この地震では、現在の仙台市域で住宅の全半壊4,385戸、一部損壊86,010戸の甚大な被害が生じました。 新耐震基準では、震度5程度の地震では建物が損傷せず、震度6強~7程度でも倒壊しないような構造基準として設定されています。また、木造建築物について壁量の見直しや基礎の基準強化も実施されました。 過去に発生した大地震では、旧耐震基準と新耐震基準で被害状況に大きな差がみられます。例えば、下図は平成7年の阪神・淡路大震災における建築年別の被害状況ですが、旧耐震基準に比べて、新耐震基準は「軽微・無被害」の割合が小さいことがわかります。 出典)国立研究開発法人 建築研究所「「新耐震基準」から40年を振り返る」 出典)国土交通省「参考資料集」 旧耐震基準の住宅が抱えるリスク 旧耐震基準の住宅は、現行の基準を満たす住宅と比較して次のようなリスクを抱えています。 建物が損傷・倒壊するリスク 地震発生時に建物が損傷・倒壊するリスクが新耐震基準に比べて高いです。新耐震基準で想定されている震度6強~7程度の地震が発生した場合、旧耐震基準の建物は耐えきれず、人命に関わる重大な事故につながる恐れがあります。 資産価値が下落するリスク 旧耐震基準の住宅は、大地震で損壊・倒壊するリスクが新耐震基準の住宅に比べて高いため、新耐震基準の住宅よりも資産価値が低く評価される傾向にあります。 補修コストが増大するリスク 旧耐震基準の建物は築年数が経過しているため、耐震性以外の部分でも劣化が進んでいる可能性があります。地震による損傷がなかったとしても、将来的に大規模な修繕が必要になるかもしれません。そのため、新耐震基準の建物に比べて補修コストが高くなる場合があります。 旧耐震基準の確認方法 所有中の住宅や購入を検討している住宅が、旧耐震基準で建てられたものかどうかを確認する方法が次の2つです。 建築確認日で判断する 建築確認日とは、行政が建築確認の申請を受理した日のことです。建築基準法に基づいて確認が行われるため、建築確認日が1981年5月31日以前なら旧耐震基準、1981年6月1日以降なら新耐震基準だと判断できます。建築確認日は建築確認済証などに記載されています。 耐震診断を受ける 住宅の耐震性をより正確に把握するには、耐震診断を受けるのが有効です。耐震診断では、専門家が建物の構造や劣化状況などを調査し、耐震性の有無を評価します。耐震診断を受けるには費用がかかりますが、一定の要件を満たすと国や自治体の支援制度を利用できる場合があります。詳しくは、自治体の担当窓口などにご確認ください。 旧耐震基準の住宅の対策方法は? 旧耐震基準の住宅であることが判明した場合は、まずは耐震診断を実施したうえで、耐震性が不十分であった場合は、以下のような対策を講じることが重要です。 耐震改修工事を実施する 建物の耐震性を向上させるには、耐震改修工事を実施するのが有効です。例えば、木造住宅の場合は基礎や柱、壁などの補強、屋根の軽量化などを行う方法があります。耐震改修を行うことで、新耐震基準相当の耐震基準に近づけることが可能です。工事費用はかかりますが、国や自治体の支援制度を利用できる場合があるので、自治体の担当窓口に相談してみましょう。 建て替えを行う 建物の老朽化が進んでいる場合など、耐震改修に高額な費用がかかる場合などは、建て替えを行うのも選択肢です。建て替えであれば、生活環境を変えることなく、最新の耐震基準を満たす安全性の高い住宅を建てることができます。 耐震性の高い住宅へ住み替えをする 旧耐震基準の住宅から、新耐震基準を満たした住宅へ住み替える方法もあります。建て替えとは異なり、現居の売却代金を新居の購入資金に充てることが可能です。また、工事期間中の仮住まいが不要で、速やかに新居での生活をスタートできます。 一方で、旧耐震基準の住宅は売却しにくく、買い手が見つかっても高値で売却できない可能性があります。現居の住宅ローンが残っている場合、残債を一括返済する必要があることにも注意が必要です。 関連記事はこちら住み替えの方法と成功させるポイント まとめ 旧耐震基準は、1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物に適用される耐震基準です。新耐震基準に比べて耐震性が劣り、地震による損壊・倒壊や資産価値の下落、補修コストの増大といったリスクを抱えています。 旧耐震基準の住宅に住んでいる場合は、安全性を確保するために耐震改修工事や建て替え、住み替えなどの対策を検討しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 日本は「地震大国」と言われており、過去には巨大地震が発生して住宅が倒壊するなどの被害が生じています。地震による建物や家財の被害に備えるには、地震保険を付帯するのが有効です。万が一被害にあった...

    2025.04.02用語
  • 家財保険とは?補償内容と必要性を解説

    家財保険とは?補償内容と必要性を解説

    家財保険とは、火災保険のうち家財を補償対象とする契約のことです。例えば、火災などが発生した場合、建物だけでなく、その建物の中にある家具や家電など(家財)も損害を受ける可能性があります。この時、家財も補償の対象としている火災保険に加入していれば、建物及び家財の損害についても補償されます。 この記事では、家財保険の概要と補償内容、必要性について解説します。 家財保険とは 火災保険の補償対象は、「建物」と「家財」の2つに分けられます。このうち、家財に生じた損害を補償する契約のことを、一般的に「家財保険」といいます。家財とは、建物に付属している設備(浴槽、調理台など)ではなく、引っ越すときに運び入れるようなものです。例えば、イスやテーブル、ベッドなどの家具、衣類、本、家電製品などが家財にあたります。 火災保険は、火災や自然災害などで被害を受けたときに、その損害を補償してくれる保険です。 しかし、建物のみを補償対象としている契約の場合、家財の損害は補償してもらえません。もしものときの損害に備えるなら、家財も補償対象に加えておく必要があります。 火災保険との違い 家財保険は、火災保険の一部です。火災保険の補償対象は建物と家財に分かれており、それぞれ保険金額を決めて契約します。建物と家財の両方を補償対象とすることも、どちらか一方のみを補償対象とすることも可能です。 家財保険の補償内容 家財保険の一般的な補償対象は以下のとおりです。 家財保険の補償対象補償対象となる原因 右記の事象により家財に生じた直接的な損害火災、落雷、破裂・爆発、風災・雹(ひょう)災・雪災、水災、外部からの飛来物、水漏れ、盗難など 出典)一般社団法人 日本損害保険協会「火災保険」をもとに作成 ただし、保険会社や保険商品によって補償範囲が異なる場合があります。そのため、契約前に補償範囲について確認しておくことが大切です。 家財保険の補償対象外となるもの 地震や噴火、これらを原因とする津波で家財に損害が生じた場合、家財保険(火災保険)では補償されません。別途、地震保険に加入する必要があります。また、提供会社によって異なりますが、一般的に以下のようなものは家財保険の補償対象には含まれません。 家財保険の補償対象外となる主なもの 現金・小切手・有価証券 パソコン・スマホ等のデータ 動植物 自動車 現金やデータなどは、保管場所や管理方法を検討することが大切です。自動車は自動車保険(車両保険)の補償対象であるため、自宅の車庫で被害にあっても家財保険では補償されません。 なお、高価な貴金属や宝石、書画、骨董などは家財に含まれませんが、これらは保険会社へ申告することで、家財とは別枠で補償をつけることが可能です(明記物件)。明記物件を家財保険の補償対象にしたい場合は、事前に保険会社の担当者に相談しましょう。 家財保険の特約 家財保険(火災保険)は、特約として「借家人賠償責任補償」や「個人賠償責任補償」をつけることが可能です。それぞれの補償内容を確認していきましょう。 借家人賠償責任補償 借家人賠償責任補償とは、賃貸物件の借主が貸主に法律上の損害賠償責任を負ったときに補償される保険です。借主には原状回復義務があり、事故の内容によっては多額の損害賠償が生じるリスクがあります。そのため、賃貸物件に入居する際は、借家人賠償責任補償への加入を求められるのが一般的です。 補償対象となる事例として、「ストーブを消し忘れてボヤを起こした」「洗濯機のホースが外れた」などの理由で室内の床や壁を損壊させてしまったケースが考えられます。 個人賠償責任補償 個人賠償責任補償とは、日常生活において「他人にケガをさせてしまった」「他人のものを壊してしまった」などの理由で法律上の損害賠償責任を負ったときに補償される保険です。被保険者本人だけでなく、その家族も補償対象となります。補償対象となる事例として、「家族が自転車で通行人にケガをさせた」「水漏れで階下の部屋を水浸しにしてしまった」などが考えられます。 家財保険のほかに、自動車保険や傷害保険の特約として個人賠償責任補償に加入できるケースもあります。加入中の保険の補償内容を確認のうえ、必要に応じて家財保険に特約としてつけることを検討しましょう。 家財保険加入の必要性 ここでは、「賃貸物件」「持ち家」「リースバック」の3パターンについて、家財保険加入の必要性を紹介します。 賃貸物件の場合 賃貸物件の場合、一般的には貸主が建物の火災保険に加入するため、借主は家財のみを補償対象とする家財保険に加入します。その際、借家人賠償責任補償を付帯することが入居の条件になっているケースが多いです。貸主としては、借主が火災などを起こし、原状回復義務を履行できなくなるリスクに備える必要があります。そのため、賃貸物件では家財保険(特に借家人賠償責任補償)の必要性は高いといえます。 持ち家の場合 火災で建物に被害が生じると、通常は家財も損害を受けることになるでしょう。家具や家電などをすべて買い替えることになれば、多額の費用がかかる可能性があります。買い替えに必要な費用を見積もったうえで、家財保険の必要性を検討することが大切です。 リースバックの場合 リースバックは、自宅をリースバック運営会社に売却して現金を得て、売却後は賃料を支払うことで引き続き同じ家に住むことができるサービスです。リースバックの場合、自宅の売却と同時に賃貸借契約を締結するため、賃貸物件の場合と基本的には同じで、借主は賃貸住宅用の家財保険に加入します。詳しくは、契約時にリースバック運営会社に確認しましょう。 関連記事はこちらリースバックの契約までの流れと必要書類、注意点を解説 まとめ 火災や自然災害で建物が損壊すると、通常は建物内にある家財にも損失が生じます。家具や家電をすべて買い替えるとまとまった費用がかかるため、不安な場合は家財保険を検討しましょう。 賃貸物件の場合は、借家人賠償責任補償がセットになった家財保険の加入を求められるケースがほとんどです。貸主から案内された家財保険の補償内容を確認し、不明点があれば契約前に確認しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 日本は「地震大国」と言われており、過去には巨大地震が発生して住宅が倒壊するなどの被害が生じています。地震による建物や家財の被害に備えるには、地震保険を付帯するのが有効です。万が一被害にあった...

    2025.03.26用語
  • 固定資産税評価証明書とは?必要な場面や取得方法、手数料などを解説

    固定資産税評価証明書とは?必要な場面や取得方法を解説

    固定資産税評価証明書は、不動産の取引や手続きで必要となる公的な書類です。普段の生活ではあまりなじみのない書類のため、どのように活用すればよいかわからない人は多いのではないでしょうか。 この記事では、固定資産税評価証明書の概要や必要な場面、取得方法、手数料などについて詳しく解説します。 固定資産税評価証明書とは 固定資産税評価証明書とは、市区町村が作成する固定資産課税台帳に登録された固定資産の評価額を証明する書類です。 固定資産税は、土地や家屋(建物)などの固定資産を所有している人に課税される税金です。課税対象となる固定資産の評価額に基づいて、市区町村 が税額を算出します。固定資産税評価証明書を取得すれば、固定資産税の算出根拠となる土地・家屋などの固定資産税評価額を確認できます。 固定資産税評価証明書の記載事項 固定資産税評価証明書の見本は以下です。 出典)東京都主税局「固定資産税・都市計画税 各種閲覧・証明の様式」 様式は自治体によって異なりますが、固定資産税評価証明書には主に次のような事項が記載されています。 土地・家屋の所有者の住所、氏名 土地・家屋の所在地、価格(評価額)、課税標準額 土地の地積(面積)、地目(利用状況)、共有持分 家屋の家屋番号、建物番号、床面積、種類(使用目的)、構造、敷地権(区分所有の場合)、共有持分 公課証明書には、評価証明書の記載事項に加えて税相当額も記載されています。固定資産課税台帳(名寄帳)は証明を目的としたものではなく、記載内容は納税通知書の課税明細書とほぼ同じです。名称は似ていますが、それぞれ記載内容や目的が異なるため、混同しないように注意しましょう。 固定資産税評価証明書はどんなときに必要? ここでは、固定資産税評価証明書が必要になる場面を紹介します。 不動産登記 不動産売買、相続、贈与などで不動産登記(所有権移転・保存登記など)を行う際は、登録免許税がかかります。その登録免許税の算定に必要になるため、固定資産税評価証明書の提出が求められます。 相続税や贈与税の申告 相続税や贈与税の申告では、土地・家屋の評価額を証明する書類として固定資産税評価証明書の提出が必要なケースがあります。 相続税・贈与税の計算において、土地は「路線価方式」と「倍率方式」のいずれかで評価します。路線価が設定されておらず、倍率方式で評価する場合は固定資産税評価額をもとに評価額を算出します。また、家屋は「固定資産税評価額×1.0」が評価額です。 不動産に関する訴訟 不動産に関する訴訟を起こす場合、裁判所に申立手数料を納めなくてはなりません。手数料は、訴訟の対象となる不動産の固定資産税評価額をもとに算出するため、固定資産税評価証明書の提出が必要です。 固定資産税評価証明書の取得方法 固定資産税評価証明書はどのように取得すればよいのでしょうか。申請場所や取得できる人、必要書類、手数料などについて説明します。 申請・取得できる場所 固定資産税評価証明書は、自治体の窓口で申請が可能です。窓口であれば、基本的にその場ですぐに交付されます。自治体によっては、郵送による申請や電子申請にも対応していますが、窓口よりも取得に時間がかかる点に注意が必要です。 取得できる人 固定資産税評価証明書を取得できるのは、原則として、不動産の所有者本人または住民票上同一世帯の親族です。ただし、所有者本人の代理人や相続人が取得することも可能です。代理人は委任状、相続人は戸籍謄本などが必要となります。 取得時の必要書類 固定資産税評価証明書を取得する際は、自治体に交付申請書を提出します。また、申請者に応じて以下の書類が必要です。 申請者 必要書類 本人本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど) 住民票上同一世帯の親族申請者の本人確認書類 代理人委任状代理人の本人確認書類 相続人所有者(被相続人)との相続関係がわかる書類(戸籍謄本など)相続人の本人確認書類 法人法人の実印を押印した申請書窓口に来た人の本人確認書類 借地借家人権利関係が確認できる書類(賃貸借契約書など)窓口に来た人の本人確認書類 出典)八王子市「固定資産評価証明書(土地・家屋)」 なお、固定資産税評価証明書の取得にかかる手数料は、1通あたり300円程度です(自治体によって異なる)。 まとめ 固定資産税評価証明書は、土地や家屋の評価額を証明する公的な書類です。不動産売買や相続、贈与などで提出を求められることがあります。取得方法や手数料は自治体によって異なるため、必要な場合は事前に確認しておきましょう。 無料相談してみる 不動産担保ローンの疑問にお答えします。 無料相談をしてみる 不動産担保ローンの疑問にお答えします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説 不動産売買の際には、購入する側と売却する側のそれぞれに税金がかかります。不動産売買の予定がある場合は、あらかじめどのような税金が発生するのか知っておくことが重要です。 この記事では、不動産の...

    2025.03.19用語
  • 住宅ローンの団体信用生命保険とは?保障内容や特約を解説

    金融機関で住宅ローンを組む場合、通常は「団体信用生命保険(以下、団信)」への加入を求められます。団信に加入すれば、住宅ローン契約者に万が一のことがあっても、家族にローンの返済を残さずに済むため安心です。 この記事では、住宅ローンの団信の仕組みと保障内容について解説します。 団体信用生命保険とは? 団信とは、住宅ローン契約者が死亡または所定の高度障害状態になったときに、住宅ローンが完済される保険です。契約形態は、債権者である銀行が保険契約者および保険金受取人となり、住宅ローン契約者(債務者)が被保険者となります。 住宅ローン契約者に万が一のことがあった場合、家族が返済に困るケースがあります。団信に加入していれば、保険金で住宅ローンが完済されるため、家族にローンのない家を残すことができます。 保険金が支払われることで、金融機関側としても債務の回収リスクが抑えられるため、多くの民間金融機関では、住宅ローン契約時に団信加入が必須となっています。 団体信用生命保険の保障内容と加入条件 団信の保障内容は金融機関によってさまざまです。死亡や高度障害に加えて、3大疾病などを保障するタイプもあります。また、団信加入には保険会社による審査があり、健康状態などの告知が必要です。 団信に加入できるのは、住宅ローンの新規借り入れまたは借り換えを行うタイミングに限られるため、どのタイプに加入するか慎重に判断する必要があるでしょう。 団体信用生命保険の保障内容 一般的な団信(以下、一般団信)では、契約者が死亡または所定の高度障害になった場合に保障されます。高度障害とは、両眼の視力や言語機能を永久に失った状態などを指します。また、一般団信に特約を付けることによって、保障内容を充実させることが可能です。 特約付き団信には次のようなものがあります。 特約の種類 詳細 がん がんに罹患し、所定の状態に該当した場合に保障される特約 3大疾病 3大疾病(がん・脳卒中・急性心筋梗塞)に罹患し、 所定の状態に該当した場合に保障される特約 所定の身体障害状態 所定の身体障害状態(心臓ペースメーカーを装着している、 人工透析を受けているなど)に該当した場合に保障される特約 要介護状態 公的介護保険制度で要介護認定を受けた場合などに保障される特約 (要介護の条件は金融機関によって異なる) 基本的に、一般団信の保険料は金融機関が負担します。特約を付ける場合は、住宅ローン金利に上乗せするかたちで契約者(債務者)が負担することが一般的です。 団体信用生命保険の審査基準 団信に加入するには、保険会社に健康状態などを告知し、審査に通過する必要があります。団信の審査基準は公開されていませんが、一般的には年齢や職業、健康状態などをもとに審査が行われます。最も重要視されると考えられるのは健康状態です。 申込時点での健康状態(病気の有無)や健康診断の結果、過去の病歴など、一般的な告知事項についてできる限り正確に伝える必要があります。病歴を告知しなかったり、虚偽の告知を行ったりすると告知義務違反となり、保障を受けられなくなるため注意が必要です。 健康上の問題で一般団信に加入できない場合は、通常よりも引受範囲が広い「ワイド団信」を利用する方法もあります。高血圧などの持病で一般団信に加入できなくても、ワイド団信であれば加入できる可能性があるでしょう。保障内容は一般団信と変わりませんが、保険料として住宅ローン金利に一定幅が上乗せされるのが一般的です。 出典)公益財団法人生命保険文化センター「団体信用生命保険について知りたい」 住宅金融支援機構の新機構団体信用生命保険 新機構団体信用生命保険(以下、新機構団信)とは、全期間固定金利型の住宅ローン「フラット35」で利用できる住宅金融支援機構の団信です。加入者が死亡または所定の身体障害状態となった場合、以後のローン返済は不要となります。 新機構団信の保障内容については、以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事はこちらフラット35の新機構団信と一般団信の違いとは?保障内容と3大疾病保障について解説 民間金融機関の住宅ローンとは異なり、加入は任意です。新機構団信なしのフラット35に比べて、融資金利は+0.20%となります。 出典) ・住宅金融支援機構「新機構団体信用生命保険制度のご案内」 ・フラット35「健康上の理由その他の事情で新機構団信制度に加入しない場合も、【フラット35】は利用できますか。Q&A番号:599」 新機構団体信用生命保険の審査基準 新機構団信の加入要件は次の2つです。 「新機構団体信用生命保険制度申込書兼告知書」の記入・入力日現在、満15歳以上満70歳未満であること 幹事生命保険会社の加入承諾があること 一般団信と同じく健康状態などについて告知を行い、保険会社の審査に通過する必要があります。なお、住宅金融支援機構にはワイド団信の取り扱いはありません。 前述のとおり、フラット35は団信加入が任意のため、団信に加入できなくても借り入れは可能です。ただし、万が一のときに返済できなくリスクが高まります。必要に応じて、民間生命保険会社の引受基準緩和型の死亡保険を検討するとよいでしょう。 出典)住宅金融支援機構「新機構団信の加入要件・保障内容」 新3大疾病付機構団信とデュエット(ペア連生団信) フラット35では、基本プランである新機構団信のほかに以下2つのプランが用意されています。 新3大疾病付機構団信 デュエット(ペア連生団信) 新3大疾病付機構団信は、死亡・所定の身体障害状態に加えて3大疾病が原因で一定の要件に該当したとき、公的介護保険制度に定める要介護2以上の状態になったときなども以後のローン返済が不要となります。融資金利は、新機構団信付きの融資金利+0.24%です。 ペア連生団信は、夫婦で連帯債務者となる場合に利用できる団信です。夫婦のどちらかに万が一のことがあった場合、住宅の持分や返済割合にかかわらず、以後のローン返済が不要となります。融資金利は、新機構団信付きの融資金利+0.18%です。 出典)住宅金融支援機構「新機構団信の加入要件・保障内容」 団体信用生命保険の保険料は生命保険料控除の対象外 生命保険料控除は、保険金受取人が「自己または配偶者その他の親族」である生命保険契約などが対象となります。 団信の保険金受取人は、債権者である金融機関です。そのため、住宅ローン契約者が団信の保険料を負担しても、生命保険料控除を受けることはできません。 出典)住宅金融支援機構「特約料は生命保険料控除の対象にはならないのですか?Q&A番号:173」 まとめ 団信は、住宅ローン契約者に万が一のことがあったときに、保険金でローンが完済される保険です。多くの金融機関では、住宅ローン契約時に団信加入が必須となっています。健康上の問題で一般団信への加入が難しい場合は、通常よりも引受範囲が広いワイド団信であれば加入できるかもしれません。 また、団信加入が任意のフラット35を利用するのも選択肢の一つです。その場合はリスクへの備えとして、民間生命保険会社の引受基準緩和型の死亡保険などへの加入を検討しましょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35は団信なしだと金利はどれくらい変わる?注意点も解説 一般的に住宅ローンを組む時は、団体信用生命保険(以下「団信」という)の加入が必要となります。しかし、住宅金融支援機構の提供するフラット35は団信が任意加入です。団信なしの場合、フラット35の...

  • 住宅ローンの保証料型と融資手数料型の違いとは?

    住宅ローンを借りるときは、保証料や融資手数料などの諸費用がかかります。支払方式に応じて「保証料型」と「融資手数料型」の2つに分けられますが、どのような違いがあるのでしょうか。 この記事では、住宅ローンの保証料型と融資手数料型の違い、返済シミュレーションの比較を紹介します。 住宅ローンの保証料型とは 住宅ローンの保証料とは、保証会社の保証を受けるために支払う費用です。契約者がローンを返済できなくなった場合、保証会社が契約者に代わってローンの残債を支払う仕組みです。 保証料型は、契約者が保証会社へ保証料を支払う必要がありますが、基本的に融資手数料はかかりません。保証料型の住宅ローンは、「一括前払い型」と「金利上乗せ型」の2種類があります。 一括前払い型(外枠方式) 一括前払い型(外枠方式)とは、住宅ローンの借入時に一括で保証料を支払うタイプです。保証料は、借入金額や借入期間によって変動します。一括で支払うため、初期費用は増えますが、金利上乗せ型に比べると毎月の返済額を抑えることが可能です。 途中で繰り上げ返済をすると、一括前払いをした保証料の一部が返還されます。これを戻し保証料と言います。戻し保証料を受け取る際は、手数料がかかることがあります。 金利上乗せ型(内枠方式) 金利上乗せ型(内枠方式)とは、住宅ローンの借入時に保証料を支払わない代わりに、毎月の金利が上乗せされるタイプです。一般的には、借入金利に0.2%程度が上乗せされます。仮に借入金利が年0.6%の場合、0.2%上乗せされて年0.8%となります。 借入時の初期費用は軽減されますが、外枠方式に比べると毎月の返済額が増える点に注意が必要です。 住宅ローンの融資手数料型とは 融資手数料とは、住宅ローンを借りる際に金融機関に支払う手数料です。金融機関によっては「事務手数料」と呼ばれることもあります。 融資手数料型は、契約者が金融機関に融資手数料を支払うタイプの住宅ローンです。保証会社への保証料は、契約者から受け取った融資手数料の中から金融機関が支払います。 融資手数料型の住宅ローンは、「定額型」と「定率型」の2種類があります。 定額型 定額型とは、借入金額にかかわらず一定金額の融資手数料を支払う方式です。借入金額が増えるほど、定率型と比較してお得になります。金融機関によって異なりますが、融資手数料は3~5万円程度が一般的です。 ただし、通常は定率型より適用金利は高くなります。そのため、融資手数料を含めた総支払額を比較して、定額型と定率型のどちらが有利かを判断する必要があるでしょう。 定率型 定率型とは、借入金額に対して一定の割合(例:2.2%)を手数料として支払う方式です。借入金額が増えるほど、手数料も比例して増加します。 例えば、融資手数料が借入金額の2.2%、借入金額3,000万円の場合、融資手数料は66万円(3,000万円×2.2%)です。 定額型よりも適用金利は低めですが、初期費用は高くなります。 住宅ローンの保証料型と融資手数料型の主な違い 保証料型の内枠方式を利用する場合、金利が上乗せされるという点で融資手数料型と大きな違いはありません。また、保証料と融資手数料は、どちらも住宅ローンを借りる金融機関に支払う諸費用という点では同じです。 しかし、保証料型の外枠方式は、以下2つが融資手数料型とは異なります。 借入期間が長いほど諸費用(保証料)は高額になり、短いほど少額になる 繰り上げ返済をした際にお金が戻ってくる なお、繰り上げ返済については、住宅ローンの借り換えも含まれます。そのため、保証料型(外枠方式)で借りた住宅ローンを借り換える場合は、保証料が返還されるでしょう。詳細は住宅ローンを利用する金融機関に確認してみましょう。 住宅ローンの保証料型と融資手数料型の比較 ここでは、住宅ローンの保証料型と融資手数料型の違いをイメージするために、以下の条件で保証料、融資手数料、総返済額(元金+利息)の合計額の比較を紹介します。 <比較条件> 「借入金額4,000万円、金利1.0%、借入期間35年、元利均等返済」で住宅ローンを借りるケースについて、以下4つの条件を比較 保証料型(外枠方式):保証料は借入金額100万円あたり20,000円 保証料型(内枠方式):保証料として金利に+0.2%上乗せ 融資手数料型(定額型):融資手数料は33,000円、加えて金利に+0.2%上乗せ 融資手数料型(定率型):融資手数料は借入金額×2.2% 保証料型(外枠方式) 保証料型(内枠方式) 融資手数料型(定額型) 融資手数料型(定率型) 保証料 800,000円 融資手数料 33,000円 880,000円 総返済額 47,453,342円 49,041,316円 49,041,316円 47,453,342円 合計 48,253,342円 49,041,316円 49,074,316円 48,333,342円 ※2024年12月1日付で試算 出典)住信SBIネット銀行「住宅ローン 新規借入シミュレーション」 上記条件では、保証料型(外枠方式)が最も有利な結果となりました。しかし、どのタイプが有利かは、借入期間や借入金額によって異なります。 また、金融機関によって金利や諸費用に違いがあるため、シミュレーションを行ったうえで自分にあったタイプを選択することが重要です。 まとめ 住宅ローンは、大きく「保証料型」と「融資手数料型」の2つがあります。さらに保証料型は「外枠方式」と「内枠方式」、融資手数料型は「定額型」と「定率型」に分けられます。 それぞれメリット・デメリットがあり、どのタイプが諸費用を抑えられるかは借入金額や借入期間などによって異なります。住宅ローンを借りる際は事前にシミュレーションを行い、どの手数料タイプが自分に向いているかを見極めましょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅ローンの保証会社とは?役割や種類、利用時の注意点を解説 銀行で住宅ローンを組む時、保証会社を利用することが一般的です。住宅ローンにおいて、保証会社はどのような役割を果たしているのでしょうか。この記事では、住宅ローンの保証会社の役割や種類、利用時の...

  • 不動産買取保証とは?メリット・デメリットや注意点を解説

    不動産仲介で物件を売却する場合、買主がなかなか見つからず、売却が予定通りに進まないことで現金化できないリスクがあります。このリスクを回避する手段として、「不動産買取保証」を利用することが選択肢の一つとなるでしょう。この記事では、不動産買取保証の仕組みとメリット・デメリットを詳しく解説します。 不動産買取保証とは 不動産買取保証とは、不動産仲介と不動産買取を組み合わせた売却方法です。「買取保証付き仲介」と呼ばれることもあります。まずは仲介で売却活動を行い、一定期間が経過しても売却できない場合に不動産会社が物件を買い取る仕組みです。 ※筆者作成 不動産の売却方法は、主に不動産会社が買主を探す「仲介」と、不動産会社が直接物件をを買い取る「買取」の2種類があります。仲介は相場に近い価格で売却できますが、買主が見つかるまでに時間がかかることがあります。買取は速やかに現金化できますが、売却価格は相場より安くなる傾向にあります。 不動産買取保証は、まずは相場で売却できるように販売活動を行い、売れない場合は最終的に不動産会社が買い取るため、仲介と買取の併用型といえるでしょう。 関連記事はこちら不動産買取のメリット・デメリットとは?不動産業者の選び方も解説 不動産買取保証のメリット・デメリット 不動産買取保証には次のようなメリット・デメリットがあります。両者を比較して、自分の意向に適しているかを確認しましょう。 メリット 不動産買取保証のメリットは、不動産が売却できないリスクを回避できる点にあります。仲介で一定期間が経過しても売却できない場合、不動産会社が買い取ってくれるため、現金化が必要な際にも計画通りに売却を進めることが可能です。 また、買取となった場合は買主が不動産会社になるため、「仲介手数料が無料になる」「契約不適合責任が免責になる」といったメリットがあります。 仲介手数料の上限額は「(売買価格×3%+6万円)+消費税(税率10%)」です(売買価格400万円超の場合)。売買価格が3,000万円であれば、仲介手数料の上限額は税込105.6万円となります。 契約不適合責任とは、売却した不動産が契約内容に適合していない場合に、売主が買主に対して負わなくてはならない責任のことです。不動産買取の場合、この契約不適合責任が免責となるため、売却後に修繕費用の負担や損害賠償が生じるリスクを避けられます。 関連記事はこちら不動産売買の仲介手数料とは?相場と上限額や計算方法を解説 デメリット 不動産買取保証のデメリットは以下のとおりです。 あらかじめ決めた仲介期限を迎えたら買取になる 取り扱える不動産会社は限られる 積極的に売却活動をしてもらえない恐れがある 仲介で一定期間が経過しても売却できない場合は、買取に切り替わり、相場よりも安い価格で現金化することになります。不動産買取保証を取り扱っている不動産会社は多くないため、依頼先を探すのに苦労するかもしれません。 また、不動産会社が「自社で買い取り再販したい」と考えている場合、仲介での売却活動が積極的に行われない恐れもあります。 不動産買取保証が向いている場合 不動産買取保証が向いているのは、できるだけ高い価格で物件を売却したいが、売却期限が決まっている場合です。具体的には、次のような状況が当てはまります。 新居への住み替えまでに売却したい 転勤日までに売却したい 離婚による財産分与のため期限を設けながらもできるだけ高く売却したい 相続した不動産を売却して現金で財産分与したい 住宅ローンの返済が困難で任意売却したい いずれもスケジュールを見据えながら、確実に不動産の売却を進めることが重要です。相続は相続税の納付期限があるため、納税資金を確保しなくてはなりません。任意売却では、売却価格などを決めたうえで金融機関の同意を得る必要があります。 関連記事はこちら競売を回避する「任意売却」とは?注意点や流れを解説 不動産買取保証での売却の流れ 不動産買取保証での売却の流れは以下のとおりです。 不動産会社を選ぶ 不動産会社と媒介契約を締結する 売却活動を行う 売却できなければ買取の手続きを行う 不動産買取保証を取り扱っている不動産会社を探し、安心して依頼できる会社が見つかったら媒介契約(専属専任媒介契約)を締結します。不動産会社と協力しながら、売買価格の設定や物件情報の掲載、内覧対応などの売却活動を行いましょう。 売却活動の期間中に買主が見つかれば、一般的な売買契約締結に向けて手続きを進めます。一定期間が経過しても売却できない場合には、不動産会社による買取手続きを行うことになります。 関連記事はこちら自宅売却の流れや損をしないためのポイントを解説 不動産買取保証を利用するときの注意点 不動産買取保証では専属専任媒介契約を締結するため、一度不動産会社を決めると媒介契約の期間である3か月程度は仲介会社の変更ができません。そのため、複数の不動産会社を比較検討して、契約する会社を選ぶことが大切です。 エリアや物件種別によって不動産会社ごとに得意とする分野が違うので、慎重に見極めましょう。不動産会社選びでは、営業担当者の対応が丁寧で信用できるかも重要なポイントになります。 まとめ 不動産買取保証は、仲介で一定期間が経過しても売却できなければ不動産会社が買い取るため、期限までに不動産を売却しなくてはならない場合に向いています。不動産買取保証を利用する場合は、複数の不動産会社を比較検討して信頼できる会社を選びましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説 不動産売買の際には、購入する側と売却する側のそれぞれに税金がかかります。不動産売買の予定がある場合は、あらかじめどのような税金が発生するのか知っておくことが重要です。 この記事では、不動産の...

  • プロパー融資と保証付き融資とは?違いと特徴を解説

    銀行などの金融機関の融資は、「プロパー融資」と「保証付き融資」の2つに分けられます。自営業者が銀行から融資を受けようとする場合、どちらの方法を利用すればよいのでしょうか。金融機関に相談する前に、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。 この記事では、プロパー融資と保証付き融資の仕組みと違い、銀行融資が難しい場合の資金調達方法を紹介します。 プロパー融資とは プロパー融資とは、銀行などの金融機関が信用保証協会(第三者機関)の保証を付けずに行う融資のことです。 保証を付けずに直接融資を行うため、債務者の貸し倒れリスクは金融機関が負うことになります。万が一、借主が返済できなくなった場合は、金融機関は大きな損害を被ることになるので、融資審査は厳しい傾向にあります。 プロパー融資は、基本的に信用度の高い事業者しか利用できません。その分、好条件で融資を受けられる可能性があります。 保証付き融資とは 保証付き融資とは、銀行などの金融機関が信用保証協会の保証を利用して行う融資のことです。万が一、借主が返済できなくなった場合は、信用保証協会が金融機関に立て替え払いを行います。 プロパー融資とは異なり、金融機関は債務者の貸し倒れリスクを負わずに済みます。そのため、「事業の実績がない」「金融機関との取引歴が浅い」自営業者が融資申し込みをすると、保証付き融資を勧められるのが一般的です。 保証付き融資を利用する際、借主は所定の信用保証料を支払う必要があります。 出典)一般社団法人 全国信用保証協会「初めての融資と信用保証」 プロパー融資と保証付き融資の利用割合 日本政策金融公庫の「第222回 信用保証利用企業動向調査」によると、2024年7-9月期における保証利用状況は以下のとおりです。 保証を利用した企業の割合:54.6% 保証利用がない企業の割合:45.4% 「保証利用がない=プロパー融資」とすると、該当期間中に借り入れを実施した企業のうち、概算で全体の45%がプロパー融資を利用しており、この割合は2024年4-6月期よりもやや増加しています。 出典)日本政策金融公庫「第222回 信用保証利用企業動向調査結果の概要P.4」 プロパー融資と保証付き融資の違い プロパー融資と保証付き融資は、貸主である金融機関が債務者の貸し倒れリスクを負うかどうかが大きな違いです。 前述のとおり、プロパー融資は信用保証協会の保証を付けずに直接融資を行います。金融機関が債務者の貸し倒れリスクを負うため、融資審査は厳しい傾向にあります。「金融機関との取引歴が長い」「長期にわたって業績が安定している」など、金融機関からの信用度が高い事業者でなければ利用するのは難しいでしょう。 一方、保証付き融資は、万が一借主が返済できなくなっても信用保証協会が弁済してくれるため、金融機関としては融資がしやすくなります。このような特徴から、一般的にプロパー融資のほうが借りづらく、保証付き融資のほうが借りやすいといえます。 特に開業して間もない自営業者は金融機関との取引歴がなかったり、決算書で売上などの実績を示すことができなかったりするため、プロパー融資を受けるのは難しくなります。金融機関から融資を受けるなら、通常は保証付き融資となるでしょう。 保証付き融資も難しい場合は? 開業して間もない自営業者の場合、たとえ保証付き融資であっても断られてしまうかもしれません。「事業の実績がない」という理由で銀行から融資を受けるのが難しい場合、次のような方法であれば資金調達できる可能性があります。 政府系金融機関からの借り入れ 政府系金融機関の日本政策金融公庫では、新規開業資金の融資を行っています。新たに事業を始める人、または事業開始後概ね7年以内の人が対象です。適正な事業計画を策定し、その計画を遂行する能力が十分あると認められれば融資を受けられます。 新たに事業を始める人、または税務申告を2期終えていない人については、原則として無担保・無保証人で融資を受けられ、金利引き下げなどの優遇措置も用意されています。 ただし、融資審査があるため、審査結果によっては利用できないこともあります。まずは最寄りの日本政策金融公庫の支店に相談してみるといいでしょう。 出典)日本政策金融公庫「新規開業資金」 ビジネスローン ビジネスローンとは、主にノンバンクが取り扱っている事業者向けのローンです。無担保・無保証で申し込みできるローンもあるため、実績がない事業者でも利用しやすいでしょう。ただし、比較的金利は高く、少額しか借りられない傾向にあります。 不動産担保ローン 不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保に借り入れができる商品です。自宅などの不動産を所有している場合、実績がなくても融資を受けられる可能性があります。 ノンバンクのビジネスローンに比べて、まとまったお金を低金利で借りられるのがメリットです。金融機関によっては、家族名義の不動産を担保に融資を受けることも可能です。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 リースバック リースバックとは、自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も自宅に住み続けられるサービスです。 リースバックは金融機関などのローン商品とは異なり、不動産取引となるため、与信面よりも「不動産の価値」「家賃の支払能力」などが重視されるため、売却できる自宅があれば、事業の実績がなくても資金調達ができます。引っ越しが不要で、住環境を変える必要がないのもメリットです。 ただし、自宅の売却価格は市場価格より安くなるのが一般的です。また、売却後は毎月家賃を支払う必要があります。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 まとめ プロパー融資は好条件で借り入れができますが、金融機関が債務者の貸し倒れリスクを負うため、基本的に信用度の高い事業者しか利用できません。自営業者の場合は、保証付き融資のほうが利用しやすいといえます。 開業して間もない自営業者で、銀行の保証付き融資を利用するのが難しい場合は、政府系金融機関や不動産担保ローン、リースバックなどを検討しましょう。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 無料の仮審査を申し込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産担保ローンにおける銀行とノンバンクの違い 不動産担保ローンで資金調達する場合、銀行とノンバンクのどちらを利用すべきか悩むかもしれません。ノンバンクとは、銀行のように預金業務を行わず、与信業務(融資)に特化した金融機関のことです。銀行...

  • 総量規制とは?利用者保護の仕組みと対象外のローンを詳しく解説

    総量規制とは、過度な借り入れから利用者を守るための仕組みです。貸金業者からの借り入れには、年収を基準に上限額が設けられています。ただし、借入先やローンの種類によっては、総量規制の対象外となることもあります。 この記事では、総量規制の概要や仕組み、総量規制の対象外のローンについて解説します。 総量規制とは 総量規制とは、借り入れができる金額の総額に制限を設ける規制です。貸金業法の改正により、平成22年(2010年)6月18日から実施されています。 個人が貸金業者から借り入れを行う場合、原則として年収の3分の1が上限となります。例えば、年収300万円の人が貸金業者から借り入れできる合計額は最大100万円です。住宅ローンなど、総量規制の対象外となる貸付もあります(詳細は後述)。 貸金業者とは、お金を貸し付ける業務を行っており、財務局または都道府県に登録されている業者です。具体的には、消費者金融や信販会社など(いわゆるノンバンク)が該当します。銀行もさまざまな融資を行っていますが、貸金業者ではありません。 出典) ・金融庁「貸金業法のキホン」 ・日本貸金業協会「お借入れは年収の3分の1まで(総量規制について)」 ・日本貸金業協会「貸金業法について」 ノンバンクと銀行の違い ノンバンクとは、銀行のように預金業務を行わず、与信業務(融資)に特化した金融機関です。貸金業法が適用されるため、ノンバンクが行う融資は総量規制の対象となります。 一方、銀行は貸金業法ではなく「銀行法」が適用されるため、総量規制の対象外です。銀行のローンなら、会社員でも年収の3分の1を超える借り入れができる可能性があります。 「何となく銀行のほうが安心」と思うかもしれませんが、ノンバンクと銀行では融資条件等の商品性が異なるため、自身の状況に合わせて最適な金融機関を選ぶことが大切です。詳しくは、以下の記事をご確認ください。 関連記事はこちら不動産担保ローンにおける銀行とノンバンクの違い 総量規制の対象となる貸付 総量規制は、貸金業者からの個人の借り入れに適用されます。具体的には、消費者金融のカードローン、クレジットカードのキャッシングなどが該当します。原則として、担保や保証人の有無、資金使途にかかわらず総量規制の対象です。 ただし、銀行のカードローンなど貸金業者以外の借り入れ、法人名義での借り入れは対象外となります。個人事業者が事業資金などを調達するために事業計画を提出し、返済能力があると認められる場合も年収の3分の1を超えて借り入れが可能です。 なお、クレジットカードのリボ払いや分割払い、ボーナス払いについては「割賦販売法」が適用されるため、総量規制の対象外となります。 出典) ・金融庁「カシキン Q&A(事業者編)」 ・日本貸金業協会「お借入れは年収の3分の1まで(総量規制について)」 総量規制の除外貸付 次の貸付は、「総量規制になじまない」という理由で総量規制の「除外貸付」に分類されます。総量規制にかかわらず、年収の3分の1を超える借り入れが可能です。 不動産購入のための貸付(住宅ローン) 自動車購入時の自動車担保貸付(自動車ローン) 高額療養費の貸付 有価証券を担保とする貸付 不動産(個人顧客または担保提供者の居宅などを除く)を担保とする貸付 売却予定不動産の売却代金により返済される貸付 など 総量規制になじまないとは、定型的で貸付金額が高額であるなど、「年収の3分の1基準」を適用するのが不適当と考えられるものを指します。 除外貸付は借入額が借入残高に算入されないため、その後の借り入れに影響は生じません。例えば、年収300万円の人(総量規制の上限は100万円)が除外貸付の契約で100万円を借り入れても、上限は100万円のままです。 出典)日本貸金業協会「2 総量規制にかかわらず、お借入れできる貸付けの契約があります」 総量規制の例外貸付 次の貸付は、「顧客の利益保護に支障が生じない」として総量規制の「例外貸付」に分類されます。総量規制にかかわらず、年収の3分の1を超える借り入れが可能です。 顧客に一方的に有利となる借り換え 借入残高を段階的に減少させるための借り換え 顧客やその親族などの緊急に必要と認められる医療費を支払うための資金の貸付 社会通念上、緊急に必要と認められる費用を支払うための資金(10万円以下、3か月以内の返済などが要件)の貸付 配偶者と併せた年収3分の1以下の貸付(配偶者の同意が必要) 個人事業者に対する貸付(事業計画などで返済能力があると認められる場合) など 除外貸付とは異なり、例外貸付は借入残高の算定に影響が生じます。借入残高が総量規制の基準を超えた場合、その後は「除外貸付」「例外貸付」を除いて借り入れができなくなります。 総量規制に関する注意点とポイント 年収の3分の1を超える借り入れに対する制限 貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超えても、すぐに返済する必要はありません。ただし、新たな借り入れは制限されます。 出典)金融庁「貸金業法Q&A」 複数の貸金業者からの借り入れ 複数の貸金業者からの借り入れを行う場合、1社単独での借入額だけでなく、全体の合計が年収の3分の1以内であることが必要です。借入残高が年収の3分の1を超えると、新たな借り入れはできなくなります。 貸金業者が借入残高と年収を確認する方法 貸金業者からの借入残高のデータは、「指定信用情報機関」に集約されています。貸金業者は、指定信用情報機関を利用して借り手の借入残高を確認します。年収については、借り手から「年収を証明する書類」を取得して把握しています。 まとめ 個人が貸金業者から借り入れを行う場合、総量規制により年収の3分の1が上限です。ただし、住宅ローンや銀行のカードローンなど、総量規制の対象外となる借り入れもあります。金融機関のローンを利用する前に、総量規制について理解を深めておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

    2024.10.16用語
  • 住宅ローンの保証会社とは?役割や種類、利用時の注意点を解説

    銀行で住宅ローンを組む時、保証会社を利用することが一般的です。住宅ローンにおいて、保証会社はどのような役割を果たしているのでしょうか。この記事では、住宅ローンの保証会社の役割や種類、利用時の注意点について解説します。 住宅ローンの保証会社とは 保証会社とは、住宅ローン申込者の信用を補完する会社です。住宅ローンでは長期かつ多額の借り入れを行うため、貸主である金融機関は融資金を回収できないリスクを抱えます。 住宅ローンを組む時に債務者となる借主が保証会社を利用すれば、万が一返済できなくなったとしても、保証会社が借主の代わりに返済してくれるため、金融機関の抱えるリスクはなくなります。 保証契約の仕組み 保証会社を利用する場合、住宅ローンを組む債務者と保証会社とで保証契約を締結します。保証契約とは、住宅ローンの契約者が金融機関に債務を返済できなくなった場合に、契約者に代わって保証会社が債務を一括返済(代位弁済)する契約です。 住宅ローンを滞納すると、貸主である金融機関は借主である住宅ローン契約者に対して督促を行います。それでも返済されない場合、金融機関は保証会社に債務の返済を求め、代位弁済が行われます。その後、保証会社から借主に対して立て替えた金額が請求されます。 ※筆者作成 関連記事はこちら代位弁済とは?仕組みや流れ、考えられるリスクについて解説 なお、保証会社というと、賃貸住宅を借りるときに利用する「賃貸保証会社」を指すこともあります。入居者が家賃を払えなくなった場合は、賃貸保証会社が入居者に代わって貸主に家賃を立て替え払いする仕組みです。 保証会社を利用するときの流れ 住宅ローンで保証会社を利用するときの流れは以下のとおりです。 金融機関に住宅ローンの申し込み 金融機関から保証会社へ保証申し込み 保証会社による審査・保証承諾 融資実行 住宅ローン契約者から保証会社へ保証料の支払い 保証会社が連帯保証を引き受け 金融機関に住宅ローンを申し込むと、保証会社は審査を行います。審査に通過した場合は、融資実行の際に保証会社に対して保証料を支払います。なお、保証会社を利用するかどうかは金融機関が提供する住宅ローンの商品説明などに記載されています。 住宅ローンにおける保証会社の役割 住宅ローンにおける保証会社の役割は、主に「保証審査」と「保証履行」の2つです。 保証審査 保証審査とは、住宅ローンの申込者の保証を引き受けるかを審査することです。多くの金融機関では、保証会社の保証を受けられることを住宅ローンの利用条件にしています。住宅ローンの本審査として実施されるため、保証審査に通らないと住宅ローンを利用できません。 保証履行 保証履行とは、住宅ローンの契約者が返済できなくなった場合に、その契約者に代わって金融機関にローン残債を一括返済することです。契約者が滞納しても保証会社が代位弁済してくれるので、金融機関にとっては大きなメリットといえます。 住宅ローンの契約者にとっては返済先が金融機関から保証会社に変わるだけであり、返済義務がなくなるわけではありません。 住宅ローンの保証会社の種類 保証会社の種類は、「金融機関の系列の保証会社」と特定の金融機関グループに属さない「独立系の保証会社」の2つに分けられます。 メガバンクや地方銀行などで住宅ローンを組む場合、その系列の保証会社を利用することが多いでしょう。具体的には、メガバンクの系列として「三菱UFJローンビジネス」「みずほ信用保証」「SMBC信用保証」「りそな保証」などの会社があります。 独立系の保証会社は、銀行や信用金庫など多くの金融機関と提携して住宅ローン保証を行っています。代表的な会社は「全国保証」で、全期間固定金利型住宅ローンのフラット35にも対応しています。 フラット35(保証型)の仕組み フラット35には、一般的な買取型のほかに「保証型」と呼ばれるタイプもあります。 保証型では、金融機関が提供する住宅ローンに対して住宅金融支援機構が保険を付けます。そして、フラット35の利用者が返済できなくなった場合は、住宅金融支援機構が金融機関に対して保険金を支払う仕組みです。 フラット35の買取型と保証型の違いは、以下の記事で詳しく説明しています。 関連記事はこちらフラット35の買取型・保証型の違いを徹底比較!どっちがいい? 住宅ローンの保証料の支払方法 住宅ローン保証料の支払方法は、「外枠方式」と「内枠方式」の2つがあります。 外枠方式 外枠方式とは、住宅ローンを組む時に保証料を一括で支払う方式です。借入金額と返済期間に応じて保証料の金額が決まります。通常は、借入金額が多く返済期間が長いほど保証料は高くなります。 外枠方式のメリットは、後述する内枠方式よりも毎月の返済額や総返済額が少なくなることです。一方で、借入時にまとまった支出が発生します。 内枠方式 内枠方式とは、住宅ローンの金利に上乗せして保証料を支払う方式です。一般的には、外枠方式の金利におおよそ0.2%程度が上乗せされます。例えば、外枠方式の借入金利が年0.6%であれば、内枠方式では年0.8%の金利でローンを返済することになります。 内枠方式のメリットは、外枠方式に比べて借入時の支出が抑えられることです。ただし、毎月の返済額や保証料を含めた総返済額は外枠方式よりも多くなります。 住宅ローンの保証会社を利用する際の注意点 保証会社を利用する住宅ローンを組むと、保証料を支払わなくてはなりません。前述のとおり、保証料の支払方法は外枠方式と内枠方式の2つがあります。両者の違いを理解して、自分に合った住宅ローンを選ぶことが大切です。 また、保証会社を利用するにあたって審査があります。審査に通過できない場合、住宅ローンを組むことができません。クレジットカードやカードローンなどを滞納すると、審査に影響が出る恐れがあるので注意しましょう。 まとめ 保証会社は、住宅ローン利用者の信用力を判断する「保証審査」と、利用者が返済できない場合に金融機関へ代位弁済する「保証履行」の2つの役割を担っています。保証会社の選択や保証料の支払い方式によっては、住宅ローンの総返済額に影響を与えることもあるため、金融機関や専門家のアドバイスを参考にしながら慎重に比較検討しましょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅ローンの5年ルールと125%ルールとは?メリット・デメリットを解説 住宅ローンを変動金利型で組んだ場合、金利が上昇し、返済額が増えるのではないか、と不安に感じるかもしれません。 しかし、多くの金融機関では、金利が上昇しても急に返済額が変わらない「5年ルール」...

  • 年金未納や税金滞納で差し押さえを受けたらどうなる?

    国民年金保険料や税金などを滞納すると、財産を差し押さえられる恐れがあります。そもそも「差し押さえ」とはどういうもので、どのような財産が差し押さえの対象となるのでしょうか。 この記事では、差し押さえの原因や対象資産、手続きの流れ、回避する方法を紹介します。 差し押さえとは 差し押さえとは、不動産や預貯金などの財産の処分を禁止して、取り立てや売却ができる状態にする手続きのことです。 例えば、国民年金保険料や税金を納付せずに滞納を続けると、市区町村から財産を差し押さえられます。最終的には、その財産を公売等により換価され、滞納している年金保険料や税金に充てるために強制的に処分されてしまいます。 滞納したからといって、すぐに差し押さえられるわけではありません。通常はまず督促状や催告書が届いたり、電話や訪問で支払いを促されたりするため、この段階で適切に対処すれば差し押さえを回避できます。 出典) ・柏崎市「財産差し押さえ」とはどういうことですか? ・習志野市「法令に基づく「滞納処分」をやむを得ず行う場合があります」 ・今治市「市税等を滞納すると」 差し押さえの効力 国民年金保険料や税金の未納による差し押さえは、国税徴収法や地方税法などの法律に基づいて行われます。国税徴収法および地方税法では、「督促状を発した日から起算して10日経過した日までに完納しないときは、滞納している人の財産を差し押さえなければならない」と規定されています。 そのため、督促状を受け取ったら速やかに納付しなくてはなりません。なお、借金返済を滞納し、債権者の申立てによって行われる差し押さえは、裁判所による強制執行手続に該当します。 強制執行手続とは、裁判で勝訴したときや、相手と裁判上の和解が成立したにもかかわらず、相手が支払いをしない場合や建物の引き渡しに応じない場合に、裁判所が相手方(債務者)に対する請求権を強制的に実行するための手続きです。 ※筆者作成 出典) ・国税徴収法第47条(e-Gov法令検索) ・裁判所「民事執行手続」 差し押さえの原因 前述のとおり、国民年金保険料や各種税金(固定資産税、所得税、住民税など)の未納は差し押さえの原因となります。 国民年金第1号被保険者(自営業者、学生など)は、国民年金保険料を納付しなくてはなりません。支払う能力があるにも関わらず滞納を続けると、財産の差し押さえが行われます。 税金を滞納した場合は、国や自治体から法令に基づく「滞納処分」が行われます。滞納者の財産が差し押さえられ、公売などによって処分されます。その他に、住宅ローンやクレジットカードの滞納も差し押さえの原因です。 出典) ・日本年金機構「日本年金機構の取り組み(国民年金保険料の強制徴収)」 ・習志野市「法令に基づく「滞納処分」をやむを得ず行う場合があります」 差し押さえの対象になるものは? 金銭的価値のある財産は、基本的に差し押さえの対象です。ただし、中には対象外となるものもあります。ここでは、差し押さえの対象資産と対象外の資産を紹介します。 差し押さえの対象となる財産 差し押さえの対象となる財産は主に以下のようなものです。 不動産 給与 預貯金 生命保険 有価証券 債権(売掛金など) 動産(現金、自動車、電化製品、貴金属、骨董品、絵画など) 家賃収入 給与については全額ではなく、原則として手取り額の4分の1までとされています。ただし、33万円を超える部分は差し押さえの対象です。 出典) ・民事執行法第152条(e-Gov法令検索) ・民事執行法施行令第2条(e-Gov法令検索) 動産は、現金や自動車など不動産以外のものを指します。現金については、66万円以上が差し押さえの対象です。預貯金については金額の上限が定められていませんが、滞納者が通常必要とする生活費については差し押さえが禁止されています(詳細は後述)。 出典)民事執行法第131条第3号(e-Gov法令検索) 差し押さえの対象外の財産 次の財産は、差し押さえの対象になりません。 衣服、寝具、家具、台所用品など (国税徴収法75条第1項第1号、民事執行法第131条第1項第1号) 生活に必要な食料および燃料(国税徴収法75条第1項第2号:3か月間、民事執行法第131条第1項第2号:1か月間) 66万円までの現金(民事執行法施行令第1条) 給与(手取り額)の4分の3(民事執行法152条) 国民年金、厚生年金、生活保護給付金など(国民年金法第24条、厚生年金保険法第41条、生活保護法第58条) 上記のほかに、職業に欠くことができないもの(器具、印鑑など)、仏具、子どもの勉強に必要な書籍・文房具なども差し押さえの対象外となっています。 出典)国税庁「第75条関係 一般の差押禁止財産」 差し押さえの流れ ここでは具体例として、国民年金保険料を滞納した場合の差し押さえの流れを紹介します。 国民年金保険料が期限までに納付されない場合、納付勧奨が実施される 納付勧奨を実施しても滞納が続く場合は最終催告状が送付される 最終催告状に記載された指定期限までに納付されない場合は督促状が送付される 督促状で指定された期限までに納付されない場合は財産の差し押さえが行われる 滞納者に連帯納付義務者(世帯主、配偶者)がいる場合は、連帯納付義務者に対しても督促状の送付および財産の差し押さえが行われます。また、督促状で指定された期限までに納付しない場合は、納期限からの滞納日数に応じた延滞金の支払いも必要です。 出典)日本年金機構「日本年金機構の取り組み(国民年金保険料の強制徴収)」 差し押さえを回避するには 公的機関に相談する 国民年金保険料や税金を納付するのが難しい場合は、放置しないで自治体の窓口や最寄りの年金事務所などに相談することが大切です。 経済的に困難な状況にある場合、国民年金には保険料免除・納付猶予制度があります。なお、学生の場合は学生納付特例の承認を受けると保険料納付の猶予を受けることが可能です。 未納のままにしておくと、万が一のときに障害年金や遺族年金を受け取れなく恐れがあるので、早めに相談しましょう。税金についても、やむを得ない理由があれば納付方法などの相談に乗ってもらえるかもしれません。 出典)日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」 不動産を活用する 不動産を所有している場合は、以下のような方法で資金を準備できるかもしれません。 不動産担保ローン リースバック 任意売却 不動産担保ローンは無担保ローンに比べてまとまった資金を長期間借り入れすることが可能なため、差し押さえを回避することができるかもしれません。 また、リースバックで自宅を売却すれば、まとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで売却後も同じ家に住み続けることが可能です。 住宅ローンの残債などの要因で不動産担保ローンやリースバックを利用できないときは、任意売却を行う方法もあります。元の自宅に住み続けることはできませんが、不動産仲介で売却できればリースバックよりも高値で売却できる可能性があります。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 関連記事はこちら競売を回避する「任意売却」とは?注意点や流れを解説 まとめ 国民年金保険料や税金、住宅ローンなどの滞納を続けると、最終的には財産の差し押さえを受ける恐れがあります。納付や支払いが困難な場合は放置せず、早めに自治体や金融機関に相談することが大切です。 不動産を所有している場合は、必要に応じてリースバックや任意売却などを検討しましょう。 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。※SBIスマイルのHPに遷移します。 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。 ※SBIスマイルのHPに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 競売とは?競売を回避すべき理由とその回避方法 不動産を担保とするローンの返済が困難になると、最悪の場合、競売によって担保不動産が強制的に売却されてしまいます。競売にはデメリットがあるので、ローンの返済が困難になったとしても、絶対に回避す...

    2024.10.02用語
  • 在職老齢年金とは?仕組みや年金額の計算方法、確定申告の必要性を解説

    経済的な負担を軽減するために、年金受給が始まる65歳以降も働き続ける人が増えています。仕事をしながら老齢年金を受け取る場合、その年金額はどのように計算するのでしょうか。この記事では、在職老齢年金の仕組みや年金額の計算方法、確定申告の必要性について解説します。 在職老齢年金制度とは 在職老齢年金制度とは、一定以上の収入を得ている60歳以上の人が老齢厚生年金を受け取る際に、年金額や給与・賞与の額に応じて年金の一部または全部が支給停止となる仕組みです。この制度には、主に次の2つの目的があります。 年金が支給されている人が働いても不利にならないようにする 現役世代とのバランスから、一定以上の賃金を得ている人には年金制度の支え手に回ってもらう 在職老齢年金制度とは厚生年金に加入しながら働く人、厚生年金の加入事務所で70歳以降も働く人を対象とした制度のため、個人事業主やフリーランスは対象外です。また、支給停止となるのは老齢厚生年金のみで、老齢基礎年金(国民年金)は給与等にかかわらず全額受給できます。 出典) ・日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」 ・日本年金機構「働きながら年金を受給する方へ」 公的年金(国民年金・厚生年金)の仕組みについては、以下の記事で詳しく説明しています。 関連記事はこちら公的年金の仕組みとは?国民年金・厚生年金の基礎知識を解説 定年後の就業者数が増加 内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によると、労働力人口比率の推移は下図のとおり増加傾向にあります。 出典)内閣府「令和6年版高齢社会白書」 令和5年(2023年)は65~69歳が53.5%、70~74歳が34.5%、75歳以上が11.5%となりました。 年金は原則65歳から受給開始となります。しかし、65歳以降も働き続ける人は増加傾向にあり、60代後半は男性の6割以上、女性の4割以上が就業している状況です。この結果から、年金を受け取りながら働く人は増えているといえるでしょう。 在職老齢年金の計算方法 以下は、在職老齢年金の計算方法のフローチャートです。 ※令和6年度の支給停止調整額 出典)日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」 <用語説明> ・基本月額:老齢厚生年金の月額(加給年金額を除く) ・総報酬月額相当額:(その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12 老齢厚生年金と給与等の合計が50万円(支給停止調整額)以下であれば、老齢厚生年金は全額受給できます。50万円を超える場合は、上記の計算式に基づいて老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となります。 <具体例:給与等50万円(月額:賞与含む)、老齢厚生年金14万円(月額)の場合> (50万円+14万円-50万円)÷2=7万円 ※老齢厚生年金14万円のうち7万円が支給停止となる(老齢基礎年金は全額受給できる) なお、令和4年(2022年)3月以前の65歳未満の年金支給停止基準は28万円でしたが、制度改正によって、令和4年4月以降は65歳以上と同じ基準に見直されました。 出典) ・日本年金機構「働きながら年金を受給する方へ Bさんの場合」 ・日本年金機構「令和4年4月から年金制度が改正されました」 支給停止期間や支給停止額の変更時期 在職老齢年金の支給停止期間は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が支給停止調整額(令和6年度は50万円)を超えている期間です。なお、支給停止調整額は年度が切り替わるタイミングで変更される場合があります。 支給停止額の変更時期は、総報酬月額相当額が変わった月または退職日の翌月となります。ただし、退職日の翌月については、退職後1カ月以内に再就職して厚生年金に加入した場合を除きます。 老齢年金を受給した際の確定申告の要否 働きながら年金を受け取る場合、確定申告が必要なのか気になる人もいるでしょう。 老齢年金は、所得税法の「雑所得」として課税対象となりますが、一定額以上を受給するときは税金が源泉徴収されます。次の2つの要件にすべて当てはまる場合は、「確定申告不要制度」によって確定申告を行う必要がなくなります。 <確定申告不要制度の対象者> ・公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下で、その全部が源泉徴収の対象 ・公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下 確定申告不要制度の対象であっても、医療費控除の適用などにより所得税の還付を受ける場合は確定申告が必要です。 出典)政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」 また、参考までに老齢年金の税金に関するよくある質問を紹介します。 老齢年金の受給額と所得税の課税基準 老齢年金は、雑所得として所得税の課税対象となります。65歳未満でその年の支払額が108万円以上、65歳以上で158万円以上の場合は原則として所得税がかかり、支払時に源泉徴収されます。 しかし、これらの金額を超える場合でも、65歳未満で月額9万円まで、65歳以上で月額13.5万円までの受給額の場合は所得税が差し引かれません。 出典) ・日本年金機構「Q年金から税金が差し引かれています。どうしてですか。」 ・日本年金機構「Q年金から税金が差し引かれていません。どうしてですか。」 年金に課される所得税の計算方法 年金から差し引かれる税金は、支払う年金額から社会保険料や住民税など各種控除を行った残額に5%(復興特別所得税を含めて5.105%)の税率を掛けて計算します。年金から各種控除を受けるには、年金受給者に送付される「扶養親族等申告書」に必要事項を記入して提出する必要があります。 出典)日本年金機構「年金から差し引かれている税金の計算方法を教えてください」 まとめ 年金を受け取りながら会社で働く場合、老齢厚生年金と給与・賞与の月額合計が50万円を超えると、在職老齢年金制度によって老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となります。老齢基礎年金は制度対象外のため、給与等にかかわらず全額受給できますが、老齢厚生年金は繰下げ受給ができないため、どのくらい働くかを決めることも重要になります。 経済的な不安を解消し、より豊かな老後生活を送るためにも、在職老齢年金制度への理解を深めておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 老齢年金とは?受給要件や年金額、請求手続きについて解説 老齢年金は、老後の生活を支える重要な収入源です。公的年金に加入している人は、一定の年齢に達すると老齢年金を受け取れます。老齢年金はどんな仕組みで、いくら受け取れるのでしょうか。 この記事では...

    2024.09.25制度年金
  • 防火地域・準防火地域とは?特徴や建築制限、メリットをわかりやすく解説

    マイホームの取得を検討していると、「防火地域」「準防火地域」という言葉を聞くことがあるかもしれません。どちらも防火対策のために法律で指定されている地域ですが、何が違うのでしょうか。また、建物を建てる際にどのような制限があるのでしょうか。 この記事では、防火地域・準防火地域の特徴や建築制限、メリットなどをわかりやすく解説します。 防火地域・準防火地域とは 防火地域・準防火地域とは、都市計画法において市街地や住宅密集地での火災を防ぐために指定された地域です。都市計画法では次のように規定されています。 防火地域又は準防火地域は、市街地における火災の危険を防除するため定める地域とする。 出典)e-Gov法令検索「都市計画法第9条第21項」 防火地域・準防火地域はどちらも建築制限が設けられており、その内容は異なります。また、防火地域・準防火地域には指定されていなくても、火災を防ぐことを目的に「新たな防火規制区域(東京都の場合)」や「法22条区域」に指定されている地域もあります。 それぞれの地域(区域)の特徴を確認していきましょう。 関連記事はこちら都市計画法とは?概要や定められている内容を解説 防火地域の特徴・建築制限 防火地域は、都市の中心部で商業施設が建ち並び人通りや交通量の多い場所や災害時に緊急車両が通る幹線道路沿いなどが指定されます。火災による被害が拡大しやすく、防火対策の必要性が非常に高い地域です。 防火地域では、「3階以上の建物」「延べ面積100㎡超の建物」は耐火建築物としなくてはなりません。耐火建築物とは、建築基準法(第2条第9号の2)に定められた、「主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段)が耐火構造であること」などの基準に適合する建築物です。 また、「2階以下で延べ面積100㎡以下の建物」は準耐火建築物とする義務があります。準耐火建築物とは、建築基準法(第2条第9号の3)で定められた、「主要構造部を準耐火構造とすること」などの基準に適合する建築物です。 ※筆者作成 準防火地域の特徴・建築制限 準防火地域は、駅前の周辺など住宅が分布している地域などが指定されます。防火対策の必要性は高いものの、防火地域に比べると規制は緩やかです。 準防火地域では、「4階以上の建物」「延べ面積1,500㎡超の建物」は耐火建築物としなくてはなりません。また、「3階以下で延べ面積500㎡超1,500㎡以下の建物」は準耐火建築物とする義務があります。 延べ面積が500㎡以下であれば、一般的な木造2階の戸建住宅も建築可能です。ただし、屋根や外壁、開口部(換気扇など)、軒裏などに所定の防火措置を行う必要があります。 ※筆者作成 出典) ・国土交通省「防火地域等における建築物の規制【法第22条】【法第61条】【法第62条】」 ・国土交通省「耐火建築物・準耐火建築物」P.13 ・埼玉県「みんなで取り組もう 火災に強いまちづくり」 新たな防火規制区域とは 新たな防火規制区域とは、木造密集地域における災害時の安全性を確保するために、東京都が条例に基づいて指定する区域です。 対象区域では、原則として、すべての建築物は準耐火建築物以上としなくてはなりません。また、「延べ面積500㎡超の建物」は耐火建築物とする必要があります。 ※筆者作成 出典)東京都都市整備局「新たな防火規制について(制度の概要)」 法22条区域とは 法22条区域(建築基準法第22条指定区域)とは、火災による延焼を抑止するために、特定行政庁が防火地域・準防火地域以外の市街地に指定する区域です。法22条区域は、建物の屋根を不燃材料で造るか、不燃材で葺(ふ)くことを義務づけられています。 基本的に火は上に向かって燃え広がるため、火災を抑えるために定められた要件を満たす材料を用いて、屋根の防火性能を強化することが必要です。 耐火構造・準耐火構造・防火構造の違い 建物の防火性能を表す主な基準として、「耐火構造」「準耐火構造」「防火構造」の3つがあります。防火地域と準防火地域では、これらの基準が異なるため、それぞれの違いを理解しておきましょう。 耐火構造とは 耐火構造とは、火災が発生し一定時間の火熱が加えられても損傷などが生じない構造です。耐火建築物では、通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊や延焼を防止するため、主要構造部を耐熱構造とすることになっています。 建築物の階数や部分によって異なりますが、最上階から数えた階数が20以上の階の場合、柱とはりは最長3時間、損傷が生じない性能が求められます。 準耐火構造とは 準耐火構造とは、火災が発生し一定期間の火熱が加えられている間は損傷などが生じない構造です。耐火構造とは異なり、火災が終了した後に損傷が生じることは許容されます。 準耐火建築物では、通常の火災による延焼を抑制するため、主要構造部を準耐火構造とすることになっています。建築物の部分によって異なりますが、最長45分間、損傷が生じない性能が求められます。 防火構造とは 防火構造とは、防火地域・準防火地域において、比較的小規模の住宅を建てる場合に求められる構造です。 外壁に火熱が加えられた場合に、30分間は損傷が生じない性能が求められます。外壁と軒裏については、30分間は加熱面以外の温度が一定以上に上昇しないことも要件です。 出典) ・国土交通省「耐火建築物・準耐火建築物」P.13-14 ・建築基準法施行令「第四章 耐火構造、準耐火構造、防火構造、防火区画等」 耐火構造の建物建築のメリット 耐火構造の建物を建築すると、次のようなメリットを得られます。 建ぺい率の緩和 建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合です。防火地域・準防火地域において、建ぺい率が80%以外に指定されている場合は、次の要件を満たすと建ぺい率が10%加算されます。 防火地域:耐火建築物を建てる場合 準防火地域:耐火建築物または準耐火建築物を建てる場合 建ぺい率が高くなれば、建物を建てるときに使える敷地がより広くなります。 火災保険料の割引 火災保険の保険料率は、建物の構造によって異なります。火災が起きたときの燃え広がり方などによって、被害の程度や倒壊しやすさなどのリスクが異なるからです。 M構造 耐火性能を有する共同住宅(コンクリート造のマンションなど) T構造 M構造以外の耐火性能を有する建物および準耐火性能を有する建物(鉄骨造など) H構造 M構造、T構造以外の建物(木造など) 火災保険の保険料率は「M構造、T構造、H構造」の順に高くなるため、耐火構造の建物を建築することは火災保険料の節約につながります。 出典)損害保険料率算出機構「2023年度火災保険・地震保険の概況」P.16 防火地域・準防火地域を調べてみよう 自治体によっては、インターネットで防火地域・準防火地域を調べることが可能です。 東京都の場合、「都市計画情報等インターネット提供サービス」の都市計画情報で確認できます。地域を指定し、表示切替で「防火・準防火地域」を選択すると、地図上に情報が表示される仕組みです。 出典)東京都 都市整備局「都市計画情報等インターネット提供サービス」 その他に、自分が住む地域名と防火規制で検索する方法もあります。 まとめ 防火地域・準防火地域は、どちらも市街地での火災を防ぐために指定された地域です。建築費用が高くなる傾向にありますが、建ぺい率の緩和や火災保険料の割引を受けられるメリットもあります。マイホームの取得を検討する際は総合的に判断しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 敷地面積の制限とは?概要や目的、最低敷地面積の調べ方を解説 近年の土地価格の上昇に伴い、大きな土地のままでは不動産を購入できない人が増加しています。そのような背景から、大きな土地を分割(分筆)することで価格を抑えた、小規模住宅が増えています。しかし、...

    2024.09.18制度
  • 資金洗浄(マネー・ローンダリング)とは?仕組みや対策を解説

    銀行口座の開設や送金、クレジットカードの発行などで金融機関を利用すると、資金洗浄(マネー・ローンダリング:以下「マネロン」)の対策として本人確認などを求められることがあります。マネロンが犯罪であることは知っていても、具体的にどのような行為を意味するのか十分に理解できていないかもしれません。 この記事では、マネロンの概要や仕組み、金融機関などで行われている対策についてわかりやすく解説します。 資金洗浄(マネー・ローンダリング)とは? 資金洗浄とは、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者をわからないようにして、捜査機関による収益の発見や検挙などを逃れようとする行為をいいます。 マネロンを放置すると、犯罪収益が将来の犯罪活動や犯罪組織の維持・強化に使用されるため、組織的な犯罪やテロ行為などを助長することにつながります。また、犯罪収益が移転して通常の事業活動に使われることにより、健全な経済活動に悪影響を与えます。 安全な暮らしを守り、健全な経済発展を実現するには、世界中の国々と連携しながらマネロン対策に取り組む必要があります。 出典)財務省「教えて!マネロン等対策」 FATF(金融活動作業部会)の役割 FATF(ファトフ)とは、Financial Action Task Forceの略称で、1989年のアルシュ・サミットでマネロン対策の国際基準策定と履行を担うために設立されました。FATFでは、マネロン対策の国際基準として定めた「FATF勧告」に基づき、参加国間の遵守状況や履行状況について監視(相互審査)を実施しています。 2019年10月から11月には、日本のFATF勧告の遵守状況について審査が実施され、2021年8月に第4次対日相互審査報告書が公表されました。その結果、「重点フォローアップ国」と評価されています。報告書の内容については、以下から確認できます。 出典)財務省「対日相互審査報告書の概要(仮訳・未定稿)」 政府は、この報告書の公表を契機として「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画」の策定・公表及び「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」を設置し、マネロン対策の強化を図っています。 出典) ・文化庁「FATF 第4次対日相互審査報告書の公表について」 ・金融庁「FATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査報告書の公表について」 マネロンの手口 マネロンは、主に次の3段階のプロセスを経て資金の浄化が行われます。 プレイスメント(placement) レイヤリング(layering) インテグレーション(integration) プレイスメントとは、犯罪によって得た収益を、金融システムや合法的な商取引の流れに取り込むプロセスです。偽名・架空名義の銀行口座に犯罪行為で得た資金を入金するなどの方法があります。 レイヤリングとは、金融システムに取り込んだ犯罪収益の出所をわからなくするためのプロセスです。銀行口座から複雑な送金取引を繰り返し、何度も資金を移動させるような方法があります。 インテグレーションとは、出所をわからなくした犯罪収益を合法的なビジネスによる収益のように偽造することで、通常の経済活動に戻すプロセスです。 これら3つのプロセスによって、犯罪によって得た資金を通常の経済活動で使用したり、再び犯罪行為に利用することが可能になります。 マネロンの事例 国家公安員会の「犯罪収益移転危険度調査書(令和5年12月)」によると、令和2~4年の3年間の検挙事例において、マネロンに悪用された主な取引の集計結果は以下のとおりです。 出典)国家公安員会「犯罪収益移転危険度調査書(令和5年12月)P.30」 最も多いのは内国為替取引の584件、次いで現金取引297件、預金取引160件となっています。内国為替取引とは、預金取扱金融機関(銀行、信用金庫、信用協同組合など)を利用した国内送金(預貯金の預入れ・払戻し、手形・小切手の利用は除く)のことです。預金取扱金融機関の商品・サービスが、マネロンに悪用された取引の多くを占めています。 マネロンを計画・実行しようとする者が、迅速で確実な資金移動が可能な内国為替取引を通じて、他人または架空名義の預金口座に犯罪収益を振り込ませる事例が多くみられます。最終的には、預金口座に入金された犯罪収益は現金化されるため、その後の追跡は難しくなります。 クレジットカードの不正利用の増加に伴い、クレジットカードがマネロンに悪用された取引も増加傾向です。また、前払式支払手段(商品券、磁気式・IC式プリペイドカード、インターネット上で利用できるプリペイドカードなど)、暗号資産、資金移動サービスなど、決済手段の多様化を悪用される場合もあります。 金融機関で行われるマネロン対策 前述のように、預金取扱金融機関の商品・サービスがマネロンに悪用されるケースが多発しています。そのため、金融機関で以下のような取引を行う場合は、マネロン対策の一環として取引内容や取引目的の確認を受けることがあります。 現金や小切手による高額の取引 収入や資産などに見合わない高額の取引 短期間のうちに何度も行われる取引 送金先、送金目的、送金原資などについて不明瞭な点がある取引 上記はあくまでも例示であり、実際には金融機関が個別・具体的に判断します。また、個人と法人によっても確認される事項は異なります。 個人の場合 個人が金融機関を利用する場合、取引内容や状況によっては次のような確認を求められる可能性があります。 氏名、住所、生年月日、職業などの本人確認 取引の目的 その際、各種書面の提示を求められることもあります。 法人の場合 法人が金融機関を利用する場合、取引内容や状況に応じて次のような確認を求められる可能性があります。 法人の住所、事業内容、株主情報など 法人の実質的支配者(氏名、住所、職業、居住国など) これらについて、窓口や書類郵送での再確認、各種書面の提示を求められることもあります。 まとめ 近年マネロンは複雑かつ高度化しており、日本および国際社会にとってマネロン対策は重要な課題です。私たちの身近にある預金口座やクレジットカードなどの取引が、マネロンに悪用されるケースが増えています。金融機関を利用する際に、マネロン対策として取引内容の確認などを求められる可能性があることを理解しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

    2024.09.04用語
  • ABL(動産・債権担保融資)とは?仕組みや特徴をわかりやすく解説

    「事業資金を借りたいが、担保となる資産もないから難しい」と考える中小企業の経営者もいるかもしれません。しかし、ABL(動産・債権担保融資)を利用すれば、企業が保有する在庫や売掛金などを担保に金融機関から融資を受けられる可能性があります。 この記事では、ABLの仕組みや特徴、利用までの流れをわかりやすく解説します。 ABL(動産・債権担保融資)とは ABLとは、「Asset Based Lending」という英単語のそれぞれの頭文字を取った略称で、企業が保有する在庫や売掛金、機械設備などの事業資産を担保にした融資の一種です。 企業が金融機関から事業資金を借り入れる場合、経営者による個人保証をつけたり、不動産を担保に入れたりするのが一般的です。しかし、ABLなら担保となる不動産がなくても、企業が保有している在庫などの資産を有効活用して事業資金を調達できます。 出典)経済産業省経済産業政策局産業資金課「ABLのご案内」 ABLの仕組み ※筆者作成 企業が保有する在庫や売掛金、機械設備などは収益を生み出すための大切な資産です。ABLでは、借り手となる企業は信用力を補完するために、事業価値に基づいてこれらの資産を担保として提供します。 対して貸し手となる金融機関は、提供された担保の価値や企業の事業価値を見極めて資金を融資します。担保となった在庫や機械設備は金融機関の名義になりますが、在庫の販売や設備の使用はこれまでどおり企業が行えます。売掛金も企業が回収して運転資金として活用できるため、事業に支障はありません。 ABLの特徴 ABLは以下のような特徴があります。 担保となる不動産がない企業でも融資を受けられる 経営管理の効率化ができる 在庫管理コストの低下につながる 金融機関の審査、企業側の登記手続きに時間がかかる 企業は金融機関に対して担保の状況(在庫や売掛金の増減など)を定期的に報告する義務がある ABLは、担保不動産に頼らず資金調達できるのが最大のメリットです。担保価値の評価の際は、在庫や売掛金などの管理体制も確認されます。管理体制の見直しに着手することで、経営管理の効率化・在庫管理コストの低下などの効果も期待できるでしょう。 一方で、担保にする在庫や売掛金の評価を受け、資産の登記を行う必要があるため、通常の融資よりも時間がかかります。金融機関への報告義務があることもデメリットとして挙げられます。 上記のほかに、貸し手との約束であるコベナンツを守る義務があることにも注意が必要です。ABLでの融資契約を締結する際に、「財務指標を一定以上に保つこと」「正確な決算書類を定期的に提出すること」などの事項について覚書を締結します。 ABLの評価におけるポイント ABLで融資申し込みをすると、金融機関は在庫や売掛金などの資産が担保としてどの程度の価値を持つか調査を行います。評価における主なポイントは以下のとおりです。 <売掛金の評価のポイント> 売掛先となっている企業数(売掛先が分散されているか) 売掛先の信用力 売掛金の管理方法 <在庫の評価のポイント> 市場規模や将来性 主要な販売先 在庫の保存状態・管理体制 これらの評価にあたり、金融機関は必要に応じて外部の動産評価会社を利用します。その場合、借り手である企業側が資産の評価にかかる費用を負担することもあります。ただし、東京都ではこの評価費や保証料用の必要経費について中小企業への補助を行っています。条件は以下のとおりです。 <東京都が行う中小企業への支援> 担保とするものが機械・設備の場合は融資額の4% 担保とするものが売掛債権・在庫の場合は融資額の3.5%(ただし、小規模企業者(※)が売掛債権を担保とした2,000万円未満の融資を利用する場合、70万円) 創業5年未満中小企業の場合は融資額の4%を上限として、必要経費の2分の1(小規模企業者、創業5年未満中小企業の場合は全額)を補助  ※小規模企業者とは、中小企業のうち、従業員数が製造業等30人以下(卸・小売・サービス業は10人以下)の事業者等です。 出典) ・東京都産業労働局「東京都動産・債権担保融資(ABL)制度」 ・東京都産業労働局「東京都動産・債権担保融資制度のご案内」 ABLが向いている企業 ABLは、農産物や製品、機械設備、売掛金などさまざまな資産を担保にできます。健全な経営を行い、担保として活用できる資産を保有していれば、幅広い企業がABLの対象となるでしょう。 特に次のような特徴を持つ企業は、ABLの利用が向いているといえます。 流動資産(売掛金、在庫など)を多く保有している企業 固定資産(機械設備など)の規模が大きい企業 売上高が急速に拡大した企業 在庫を多く保有する必要がある場合、その在庫を担保に融資を受けることで安定的に運転資金を確保できます。ABLなら、機械設備などの動産も担保として活用可能です。また、売上高が短期間で拡大し、在庫や売掛金が増加した場合の運転資金としての利用も想定されます。 ABLが向いているか確認したい場合は、以下のチェックリストを活用しましょう。 区分 No チェック項目 〇/✕ 企業の特徴 1 自社の商品・取り扱い製品の品質に自信を持っている 2 市場性のある在庫や、信用力がある取引先の売掛金等の流動資産を保有している 3 不動産がない、または少ないが、機械等の固定資産を保有している 資金ニーズ 4 原材料を一定の時期にまとめて仕入れる必要がある 5 季節によって在庫の販売量に大きな差がある 6 原材料の仕入れから、製品化し販売・回収するまでの資金の立て替えが必要になる 7 規模拡大や業種部門の転換等により、運転資金の必要性が高まっている 経営管理 8 財務諸表を電子データで作成している/作成できる 9 在庫や売掛金等の残高について、パソコン等で正確なデータを管理している 10 貸し手に事業内容を深く理解してもらい、信頼関係を強化したい ※筆者作成 出典)経済産業省経済産業政策局産業資金課「ABLのご案内」P.22 ABL適正チェックテストの中で、〇の数が多い企業ほど、ABLに向いている可能性が高いといえます。適性があると判断できる場合は、取扱金融機関に問い合わせてみるといいでしょう。 ABLの利用事例 ABLで増加運転資金を確保し、商品ラインナップを拡大したA社の事例を紹介します。 <A社の詳細> 業種卸売・小売業(ベビー服と子ども服の卸売・販売) 創業数十年 資本金3,500万円 売上高15億円 従業員数80人 A社は健全な経営を行っており、小売店舗は幅広い品ぞろえが支持されて、地元では人気があります。しかし、少子化による将来的な市場規模の縮小が課題です。そこで金融機関に相談したところ、ABLによる資金調達の提案を受けました。 業種の特性上、A社は多くの在庫を保有する必要がありますが、その在庫は担保として評価対象となります。そこでABLで増加運転資金を確保し、新たにオーガニックコットン製品の取り扱いを開始しました。ネット販売も始めたことで新たな市場を開拓でき、売上増加にもつながりました。 出典)経済産業省経済産業政策局産業資金課「ABLのご案内」P.10 ABL利用までの流れ ABLの利用について金融機関に相談する際は、企業の概要や財務状況、在庫や売掛金などの資産状況がわかる書類を準備するといいでしょう。具体的には、組織図や決算書類、売掛金明細、在庫明細などが考えられます。 融資申し込みを行うと、審査を経て融資契約を結びます。また、担保となる資産について債権譲渡登記や動産譲渡登記を行います。これらの登記手続きは、資産の所有権が金融機関に移ったことを第三者に対して主張するための制度です。 まとめ 担保となる不動産がなくても、ABLを利用すれば在庫や機械設備、売掛金などを担保に融資を受けられるかもしれません。運転資金の確保や事業拡大を目的に資金調達をしたい中小企業の経営者は、ABL(動産・債権担保融資)の活用を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 ファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介 ファクタリングとは、事業者の資金調達方法の1つです。保有している売掛債権を早期に資金化できるため、うまく活用すれば資金繰りの改善が期待できます。一方で、ファクタリングを巡って悪質なトラブルも...

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