用語・制度のことが知りたい

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「用語・制度」の記事一覧

  • 不動産買取保証とは?メリット・デメリットや注意点を解説

    不動産仲介で物件を売却する場合、買主がなかなか見つからず、売却が予定通りに進まないことで現金化できないリスクがあります。このリスクを回避する手段として、「不動産買取保証」を利用することが選択肢の一つとなるでしょう。この記事では、不動産買取保証の仕組みとメリット・デメリットを詳しく解説します。 不動産買取保証とは 不動産買取保証とは、不動産仲介と不動産買取を組み合わせた売却方法です。「買取保証付き仲介」と呼ばれることもあります。まずは仲介で売却活動を行い、一定期間が経過しても売却できない場合に不動産会社が物件を買い取る仕組みです。 ※筆者作成 不動産の売却方法は、主に不動産会社が買主を探す「仲介」と、不動産会社が直接物件をを買い取る「買取」の2種類があります。仲介は相場に近い価格で売却できますが、買主が見つかるまでに時間がかかることがあります。買取は速やかに現金化できますが、売却価格は相場より安くなる傾向にあります。 不動産買取保証は、まずは相場で売却できるように販売活動を行い、売れない場合は最終的に不動産会社が買い取るため、仲介と買取の併用型といえるでしょう。 関連記事はこちら不動産買取のメリット・デメリットとは?不動産業者の選び方も解説 不動産買取保証のメリット・デメリット 不動産買取保証には次のようなメリット・デメリットがあります。両者を比較して、自分の意向に適しているかを確認しましょう。 メリット 不動産買取保証のメリットは、不動産が売却できないリスクを回避できる点にあります。仲介で一定期間が経過しても売却できない場合、不動産会社が買い取ってくれるため、現金化が必要な際にも計画通りに売却を進めることが可能です。 また、買取となった場合は買主が不動産会社になるため、「仲介手数料が無料になる」「契約不適合責任が免責になる」といったメリットがあります。 仲介手数料の上限額は「(売買価格×3%+6万円)+消費税(税率10%)」です(売買価格400万円超の場合)。売買価格が3,000万円であれば、仲介手数料の上限額は税込105.6万円となります。 契約不適合責任とは、売却した不動産が契約内容に適合していない場合に、売主が買主に対して負わなくてはならない責任のことです。不動産買取の場合、この契約不適合責任が免責となるため、売却後に修繕費用の負担や損害賠償が生じるリスクを避けられます。 関連記事はこちら不動産売買の仲介手数料とは?相場と上限額や計算方法を解説 デメリット 不動産買取保証のデメリットは以下のとおりです。 あらかじめ決めた仲介期限を迎えたら買取になる 取り扱える不動産会社は限られる 積極的に売却活動をしてもらえない恐れがある 仲介で一定期間が経過しても売却できない場合は、買取に切り替わり、相場よりも安い価格で現金化することになります。不動産買取保証を取り扱っている不動産会社は多くないため、依頼先を探すのに苦労するかもしれません。 また、不動産会社が「自社で買い取り再販したい」と考えている場合、仲介での売却活動が積極的に行われない恐れもあります。 不動産買取保証が向いている場合 不動産買取保証が向いているのは、できるだけ高い価格で物件を売却したいが、売却期限が決まっている場合です。具体的には、次のような状況が当てはまります。 新居への住み替えまでに売却したい 転勤日までに売却したい 離婚による財産分与のため期限を設けながらもできるだけ高く売却したい 相続した不動産を売却して現金で財産分与したい 住宅ローンの返済が困難で任意売却したい いずれもスケジュールを見据えながら、確実に不動産の売却を進めることが重要です。相続は相続税の納付期限があるため、納税資金を確保しなくてはなりません。任意売却では、売却価格などを決めたうえで金融機関の同意を得る必要があります。 関連記事はこちら競売を回避する「任意売却」とは?注意点や流れを解説 不動産買取保証での売却の流れ 不動産買取保証での売却の流れは以下のとおりです。 不動産会社を選ぶ 不動産会社と媒介契約を締結する 売却活動を行う 売却できなければ買取の手続きを行う 不動産買取保証を取り扱っている不動産会社を探し、安心して依頼できる会社が見つかったら媒介契約(専属専任媒介契約)を締結します。不動産会社と協力しながら、売買価格の設定や物件情報の掲載、内覧対応などの売却活動を行いましょう。 売却活動の期間中に買主が見つかれば、一般的な売買契約締結に向けて手続きを進めます。一定期間が経過しても売却できない場合には、不動産会社による買取手続きを行うことになります。 関連記事はこちら自宅売却の流れや損をしないためのポイントを解説 不動産買取保証を利用するときの注意点 不動産買取保証では専属専任媒介契約を締結するため、一度不動産会社を決めると媒介契約の期間である3か月程度は仲介会社の変更ができません。そのため、複数の不動産会社を比較検討して、契約する会社を選ぶことが大切です。 エリアや物件種別によって不動産会社ごとに得意とする分野が違うので、慎重に見極めましょう。不動産会社選びでは、営業担当者の対応が丁寧で信用できるかも重要なポイントになります。 まとめ 不動産買取保証は、仲介で一定期間が経過しても売却できなければ不動産会社が買い取るため、期限までに不動産を売却しなくてはならない場合に向いています。不動産買取保証を利用する場合は、複数の不動産会社を比較検討して信頼できる会社を選びましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説 不動産売買の際には、購入する側と売却する側のそれぞれに税金がかかります。不動産売買の予定がある場合は、あらかじめどのような税金が発生するのか知っておくことが重要です。 この記事では、不動産の...記事を読む

  • プロパー融資と保証付き融資とは?違いと特徴を解説

    銀行などの金融機関の融資は、「プロパー融資」と「保証付き融資」の2つに分けられます。自営業者が銀行から融資を受けようとする場合、どちらの方法を利用すればよいのでしょうか。金融機関に相談する前に、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。 この記事では、プロパー融資と保証付き融資の仕組みと違い、銀行融資が難しい場合の資金調達方法を紹介します。 プロパー融資とは プロパー融資とは、銀行などの金融機関が信用保証協会(第三者機関)の保証を付けずに行う融資のことです。 保証を付けずに直接融資を行うため、債務者の貸し倒れリスクは金融機関が負うことになります。万が一、借主が返済できなくなった場合は、金融機関は大きな損害を被ることになるので、融資審査は厳しい傾向にあります。 プロパー融資は、基本的に信用度の高い事業者しか利用できません。その分、好条件で融資を受けられる可能性があります。 保証付き融資とは 保証付き融資とは、銀行などの金融機関が信用保証協会の保証を利用して行う融資のことです。万が一、借主が返済できなくなった場合は、信用保証協会が金融機関に立て替え払いを行います。 プロパー融資とは異なり、金融機関は債務者の貸し倒れリスクを負わずに済みます。そのため、「事業の実績がない」「金融機関との取引歴が浅い」自営業者が融資申し込みをすると、保証付き融資を勧められるのが一般的です。 保証付き融資を利用する際、借主は所定の信用保証料を支払う必要があります。 出典)一般社団法人 全国信用保証協会「初めての融資と信用保証」 プロパー融資と保証付き融資の利用割合 日本政策金融公庫の「第222回 信用保証利用企業動向調査」によると、2024年7-9月期における保証利用状況は以下のとおりです。 保証を利用した企業の割合:54.6% 保証利用がない企業の割合:45.4% 「保証利用がない=プロパー融資」とすると、該当期間中に借り入れを実施した企業のうち、概算で全体の45%がプロパー融資を利用しており、この割合は2024年4-6月期よりもやや増加しています。 出典)日本政策金融公庫「第222回 信用保証利用企業動向調査結果の概要P.4」 プロパー融資と保証付き融資の違い プロパー融資と保証付き融資は、貸主である金融機関が債務者の貸し倒れリスクを負うかどうかが大きな違いです。 前述のとおり、プロパー融資は信用保証協会の保証を付けずに直接融資を行います。金融機関が債務者の貸し倒れリスクを負うため、融資審査は厳しい傾向にあります。「金融機関との取引歴が長い」「長期にわたって業績が安定している」など、金融機関からの信用度が高い事業者でなければ利用するのは難しいでしょう。 一方、保証付き融資は、万が一借主が返済できなくなっても信用保証協会が弁済してくれるため、金融機関としては融資がしやすくなります。このような特徴から、一般的にプロパー融資のほうが借りづらく、保証付き融資のほうが借りやすいといえます。 特に開業して間もない自営業者は金融機関との取引歴がなかったり、決算書で売上などの実績を示すことができなかったりするため、プロパー融資を受けるのは難しくなります。金融機関から融資を受けるなら、通常は保証付き融資となるでしょう。 保証付き融資も難しい場合は? 開業して間もない自営業者の場合、たとえ保証付き融資であっても断られてしまうかもしれません。「事業の実績がない」という理由で銀行から融資を受けるのが難しい場合、次のような方法であれば資金調達できる可能性があります。 政府系金融機関からの借り入れ 政府系金融機関の日本政策金融公庫では、新規開業資金の融資を行っています。新たに事業を始める人、または事業開始後概ね7年以内の人が対象です。適正な事業計画を策定し、その計画を遂行する能力が十分あると認められれば融資を受けられます。 新たに事業を始める人、または税務申告を2期終えていない人については、原則として無担保・無保証人で融資を受けられ、金利引き下げなどの優遇措置も用意されています。 ただし、融資審査があるため、審査結果によっては利用できないこともあります。まずは最寄りの日本政策金融公庫の支店に相談してみるといいでしょう。 出典)日本政策金融公庫「新規開業資金」 ビジネスローン ビジネスローンとは、主にノンバンクが取り扱っている事業者向けのローンです。無担保・無保証で申し込みできるローンもあるため、実績がない事業者でも利用しやすいでしょう。ただし、比較的金利は高く、少額しか借りられない傾向にあります。 不動産担保ローン 不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保に借り入れができる商品です。自宅などの不動産を所有している場合、実績がなくても融資を受けられる可能性があります。 ノンバンクのビジネスローンに比べて、まとまったお金を低金利で借りられるのがメリットです。金融機関によっては、家族名義の不動産を担保に融資を受けることも可能です。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 リースバック リースバックとは、自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も自宅に住み続けられるサービスです。 リースバックは金融機関などのローン商品とは異なり、不動産取引となるため、与信面よりも「不動産の価値」「家賃の支払能力」などが重視されるため、売却できる自宅があれば、事業の実績がなくても資金調達ができます。引っ越しが不要で、住環境を変える必要がないのもメリットです。 ただし、自宅の売却価格は市場価格より安くなるのが一般的です。また、売却後は毎月家賃を支払う必要があります。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 まとめ プロパー融資は好条件で借り入れができますが、金融機関が債務者の貸し倒れリスクを負うため、基本的に信用度の高い事業者しか利用できません。自営業者の場合は、保証付き融資のほうが利用しやすいといえます。 開業して間もない自営業者で、銀行の保証付き融資を利用するのが難しい場合は、政府系金融機関や不動産担保ローン、リースバックなどを検討しましょう。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産担保ローンにおける銀行とノンバンクの違い 不動産担保ローンで資金調達する場合、銀行とノンバンクのどちらを利用すべきか悩むかもしれません。ノンバンクとは、銀行のように預金業務を行わず、与信業務(融資)に特化した金融機関のことです。銀行...記事を読む

  • 総量規制とは?利用者保護の仕組みと対象外のローンを詳しく解説

    総量規制とは、過度な借り入れから利用者を守るための仕組みです。貸金業者からの借り入れには、年収を基準に上限額が設けられています。ただし、借入先やローンの種類によっては、総量規制の対象外となることもあります。 この記事では、総量規制の概要や仕組み、総量規制の対象外のローンについて解説します。 総量規制とは 総量規制とは、借り入れができる金額の総額に制限を設ける規制です。貸金業法の改正により、平成22年(2010年)6月18日から実施されています。 個人が貸金業者から借り入れを行う場合、原則として年収の3分の1が上限となります。例えば、年収300万円の人が貸金業者から借り入れできる合計額は最大100万円です。住宅ローンなど、総量規制の対象外となる貸付もあります(詳細は後述)。 貸金業者とは、お金を貸し付ける業務を行っており、財務局または都道府県に登録されている業者です。具体的には、消費者金融や信販会社など(いわゆるノンバンク)が該当します。銀行もさまざまな融資を行っていますが、貸金業者ではありません。 出典) ・金融庁「貸金業法のキホン」 ・日本貸金業協会「お借入れは年収の3分の1まで(総量規制について)」 ・日本貸金業協会「貸金業法について」 ノンバンクと銀行の違い ノンバンクとは、銀行のように預金業務を行わず、与信業務(融資)に特化した金融機関です。貸金業法が適用されるため、ノンバンクが行う融資は総量規制の対象となります。 一方、銀行は貸金業法ではなく「銀行法」が適用されるため、総量規制の対象外です。銀行のローンなら、会社員でも年収の3分の1を超える借り入れができる可能性があります。 「何となく銀行のほうが安心」と思うかもしれませんが、ノンバンクと銀行では融資条件等の商品性が異なるため、自身の状況に合わせて最適な金融機関を選ぶことが大切です。詳しくは、以下の記事をご確認ください。 関連記事はこちら不動産担保ローンにおける銀行とノンバンクの違い 総量規制の対象となる貸付 総量規制は、貸金業者からの個人の借り入れに適用されます。具体的には、消費者金融のカードローン、クレジットカードのキャッシングなどが該当します。原則として、担保や保証人の有無、資金使途にかかわらず総量規制の対象です。 ただし、銀行のカードローンなど貸金業者以外の借り入れ、法人名義での借り入れは対象外となります。個人事業者が事業資金などを調達するために事業計画を提出し、返済能力があると認められる場合も年収の3分の1を超えて借り入れが可能です。 なお、クレジットカードのリボ払いや分割払い、ボーナス払いについては「割賦販売法」が適用されるため、総量規制の対象外となります。 出典) ・金融庁「カシキン Q&A(事業者編)」 ・日本貸金業協会「お借入れは年収の3分の1まで(総量規制について)」 総量規制の除外貸付 次の貸付は、「総量規制になじまない」という理由で総量規制の「除外貸付」に分類されます。総量規制にかかわらず、年収の3分の1を超える借り入れが可能です。 不動産購入のための貸付(住宅ローン) 自動車購入時の自動車担保貸付(自動車ローン) 高額療養費の貸付 有価証券を担保とする貸付 不動産(個人顧客または担保提供者の居宅などを除く)を担保とする貸付 売却予定不動産の売却代金により返済される貸付 など 総量規制になじまないとは、定型的で貸付金額が高額であるなど、「年収の3分の1基準」を適用するのが不適当と考えられるものを指します。 除外貸付は借入額が借入残高に算入されないため、その後の借り入れに影響は生じません。例えば、年収300万円の人(総量規制の上限は100万円)が除外貸付の契約で100万円を借り入れても、上限は100万円のままです。 出典)日本貸金業協会「2 総量規制にかかわらず、お借入れできる貸付けの契約があります」 総量規制の例外貸付 次の貸付は、「顧客の利益保護に支障が生じない」として総量規制の「例外貸付」に分類されます。総量規制にかかわらず、年収の3分の1を超える借り入れが可能です。 顧客に一方的に有利となる借り換え 借入残高を段階的に減少させるための借り換え 顧客やその親族などの緊急に必要と認められる医療費を支払うための資金の貸付 社会通念上、緊急に必要と認められる費用を支払うための資金(10万円以下、3か月以内の返済などが要件)の貸付 配偶者と併せた年収3分の1以下の貸付(配偶者の同意が必要) 個人事業者に対する貸付(事業計画などで返済能力があると認められる場合) など 除外貸付とは異なり、例外貸付は借入残高の算定に影響が生じます。借入残高が総量規制の基準を超えた場合、その後は「除外貸付」「例外貸付」を除いて借り入れができなくなります。 総量規制に関する注意点とポイント 年収の3分の1を超える借り入れに対する制限 貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超えても、すぐに返済する必要はありません。ただし、新たな借り入れは制限されます。 出典)金融庁「貸金業法Q&A」 複数の貸金業者からの借り入れ 複数の貸金業者からの借り入れを行う場合、1社単独での借入額だけでなく、全体の合計が年収の3分の1以内であることが必要です。借入残高が年収の3分の1を超えると、新たな借り入れはできなくなります。 貸金業者が借入残高と年収を確認する方法 貸金業者からの借入残高のデータは、「指定信用情報機関」に集約されています。貸金業者は、指定信用情報機関を利用して借り手の借入残高を確認します。年収については、借り手から「年収を証明する書類」を取得して把握しています。 まとめ 個人が貸金業者から借り入れを行う場合、総量規制により年収の3分の1が上限です。ただし、住宅ローンや銀行のカードローンなど、総量規制の対象外となる借り入れもあります。金融機関のローンを利用する前に、総量規制について理解を深めておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

    2024.10.16用語
  • 住宅ローンの保証会社とは?役割や種類、利用時の注意点を解説

    銀行で住宅ローンを組む時、保証会社を利用することが一般的です。住宅ローンにおいて、保証会社はどのような役割を果たしているのでしょうか。この記事では、住宅ローンの保証会社の役割や種類、利用時の注意点について解説します。 住宅ローンの保証会社とは 保証会社とは、住宅ローン申込者の信用を補完する会社です。住宅ローンでは長期かつ多額の借り入れを行うため、貸主である金融機関は融資金を回収できないリスクを抱えます。 住宅ローンを組む時に債務者となる借主が保証会社を利用すれば、万が一返済できなくなったとしても、保証会社が借主の代わりに返済してくれるため、金融機関の抱えるリスクはなくなります。 保証契約の仕組み 保証会社を利用する場合、住宅ローンを組む債務者と保証会社とで保証契約を締結します。保証契約とは、住宅ローンの契約者が金融機関に債務を返済できなくなった場合に、契約者に代わって保証会社が債務を一括返済(代位弁済)する契約です。 住宅ローンを滞納すると、貸主である金融機関は借主である住宅ローン契約者に対して督促を行います。それでも返済されない場合、金融機関は保証会社に債務の返済を求め、代位弁済が行われます。その後、保証会社から借主に対して立て替えた金額が請求されます。 ※筆者作成 関連記事はこちら代位弁済とは?仕組みや流れ、考えられるリスクについて解説 なお、保証会社というと、賃貸住宅を借りるときに利用する「賃貸保証会社」を指すこともあります。入居者が家賃を払えなくなった場合は、賃貸保証会社が入居者に代わって貸主に家賃を立て替え払いする仕組みです。 保証会社を利用するときの流れ 住宅ローンで保証会社を利用するときの流れは以下のとおりです。 金融機関に住宅ローンの申し込み 金融機関から保証会社へ保証申し込み 保証会社による審査・保証承諾 融資実行 住宅ローン契約者から保証会社へ保証料の支払い 保証会社が連帯保証を引き受け 金融機関に住宅ローンを申し込むと、保証会社は審査を行います。審査に通過した場合は、融資実行の際に保証会社に対して保証料を支払います。なお、保証会社を利用するかどうかは金融機関が提供する住宅ローンの商品説明などに記載されています。 住宅ローンにおける保証会社の役割 住宅ローンにおける保証会社の役割は、主に「保証審査」と「保証履行」の2つです。 保証審査 保証審査とは、住宅ローンの申込者の保証を引き受けるかを審査することです。多くの金融機関では、保証会社の保証を受けられることを住宅ローンの利用条件にしています。住宅ローンの本審査として実施されるため、保証審査に通らないと住宅ローンを利用できません。 保証履行 保証履行とは、住宅ローンの契約者が返済できなくなった場合に、その契約者に代わって金融機関にローン残債を一括返済することです。契約者が滞納しても保証会社が代位弁済してくれるので、金融機関にとっては大きなメリットといえます。 住宅ローンの契約者にとっては返済先が金融機関から保証会社に変わるだけであり、返済義務がなくなるわけではありません。 住宅ローンの保証会社の種類 保証会社の種類は、「金融機関の系列の保証会社」と特定の金融機関グループに属さない「独立系の保証会社」の2つに分けられます。 メガバンクや地方銀行などで住宅ローンを組む場合、その系列の保証会社を利用することが多いでしょう。具体的には、メガバンクの系列として「三菱UFJローンビジネス」「みずほ信用保証」「SMBC信用保証」「りそな保証」などの会社があります。 独立系の保証会社は、銀行や信用金庫など多くの金融機関と提携して住宅ローン保証を行っています。代表的な会社は「全国保証」で、全期間固定金利型住宅ローンのフラット35にも対応しています。 フラット35(保証型)の仕組み フラット35には、一般的な買取型のほかに「保証型」と呼ばれるタイプもあります。 保証型では、金融機関が提供する住宅ローンに対して住宅金融支援機構が保険を付けます。そして、フラット35の利用者が返済できなくなった場合は、住宅金融支援機構が金融機関に対して保険金を支払う仕組みです。 フラット35の買取型と保証型の違いは、以下の記事で詳しく説明しています。 関連記事はこちらフラット35の買取型・保証型の違いを徹底比較!どっちがいい? 住宅ローンの保証料の支払方法 住宅ローン保証料の支払方法は、「外枠方式」と「内枠方式」の2つがあります。 外枠方式 外枠方式とは、住宅ローンを組む時に保証料を一括で支払う方式です。借入金額と返済期間に応じて保証料の金額が決まります。通常は、借入金額が多く返済期間が長いほど保証料は高くなります。 外枠方式のメリットは、後述する内枠方式よりも毎月の返済額や総返済額が少なくなることです。一方で、借入時にまとまった支出が発生します。 内枠方式 内枠方式とは、住宅ローンの金利に上乗せして保証料を支払う方式です。一般的には、外枠方式の金利におおよそ0.2%程度が上乗せされます。例えば、外枠方式の借入金利が年0.6%であれば、内枠方式では年0.8%の金利でローンを返済することになります。 内枠方式のメリットは、外枠方式に比べて借入時の支出が抑えられることです。ただし、毎月の返済額や保証料を含めた総返済額は外枠方式よりも多くなります。 住宅ローンの保証会社を利用する際の注意点 保証会社を利用する住宅ローンを組むと、保証料を支払わなくてはなりません。前述のとおり、保証料の支払方法は外枠方式と内枠方式の2つがあります。両者の違いを理解して、自分に合った住宅ローンを選ぶことが大切です。 また、保証会社を利用するにあたって審査があります。審査に通過できない場合、住宅ローンを組むことができません。クレジットカードやカードローンなどを滞納すると、審査に影響が出る恐れがあるので注意しましょう。 まとめ 保証会社は、住宅ローン利用者の信用力を判断する「保証審査」と、利用者が返済できない場合に金融機関へ代位弁済する「保証履行」の2つの役割を担っています。保証会社の選択や保証料の支払い方式によっては、住宅ローンの総返済額に影響を与えることもあるため、金融機関や専門家のアドバイスを参考にしながら慎重に比較検討しましょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンの5年ルールと125%ルールとは?メリット・デメリットを解説 住宅ローンを変動金利型で組んだ場合、金利が上昇し、返済額が増えるのではないか、と不安に感じるかもしれません。 しかし、多くの金融機関では、金利が上昇しても急に返済額が変わらない「5年ルール」...記事を読む

  • 年金未納や税金滞納で差し押さえを受けたらどうなる?

    国民年金保険料や税金などを滞納すると、財産を差し押さえられる恐れがあります。そもそも「差し押さえ」とはどういうもので、どのような財産が差し押さえの対象となるのでしょうか。 この記事では、差し押さえの原因や対象資産、手続きの流れ、回避する方法を紹介します。 差し押さえとは 差し押さえとは、不動産や預貯金などの財産の処分を禁止して、取り立てや売却ができる状態にする手続きのことです。 例えば、国民年金保険料や税金を納付せずに滞納を続けると、市区町村から財産を差し押さえられます。最終的には、その財産を公売等により換価され、滞納している年金保険料や税金に充てるために強制的に処分されてしまいます。 滞納したからといって、すぐに差し押さえられるわけではありません。通常はまず督促状や催告書が届いたり、電話や訪問で支払いを促されたりするため、この段階で適切に対処すれば差し押さえを回避できます。 出典) ・柏崎市「財産差し押さえ」とはどういうことですか? ・習志野市「法令に基づく「滞納処分」をやむを得ず行う場合があります」 ・今治市「市税等を滞納すると」 差し押さえの効力 国民年金保険料や税金の未納による差し押さえは、国税徴収法や地方税法などの法律に基づいて行われます。国税徴収法および地方税法では、「督促状を発した日から起算して10日経過した日までに完納しないときは、滞納している人の財産を差し押さえなければならない」と規定されています。 そのため、督促状を受け取ったら速やかに納付しなくてはなりません。なお、借金返済を滞納し、債権者の申立てによって行われる差し押さえは、裁判所による強制執行手続に該当します。 強制執行手続とは、裁判で勝訴したときや、相手と裁判上の和解が成立したにもかかわらず、相手が支払いをしない場合や建物の引き渡しに応じない場合に、裁判所が相手方(債務者)に対する請求権を強制的に実行するための手続きです。 ※筆者作成 出典) ・国税徴収法第47条(e-Gov法令検索) ・裁判所「民事執行手続」 差し押さえの原因 前述のとおり、国民年金保険料や各種税金(固定資産税、所得税、住民税など)の未納は差し押さえの原因となります。 国民年金第1号被保険者(自営業者、学生など)は、国民年金保険料を納付しなくてはなりません。支払う能力があるにも関わらず滞納を続けると、財産の差し押さえが行われます。 税金を滞納した場合は、国や自治体から法令に基づく「滞納処分」が行われます。滞納者の財産が差し押さえられ、公売などによって処分されます。その他に、住宅ローンやクレジットカードの滞納も差し押さえの原因です。 出典) ・日本年金機構「日本年金機構の取り組み(国民年金保険料の強制徴収)」 ・習志野市「法令に基づく「滞納処分」をやむを得ず行う場合があります」 差し押さえの対象になるものは? 金銭的価値のある財産は、基本的に差し押さえの対象です。ただし、中には対象外となるものもあります。ここでは、差し押さえの対象資産と対象外の資産を紹介します。 差し押さえの対象となる財産 差し押さえの対象となる財産は主に以下のようなものです。 不動産 給与 預貯金 生命保険 有価証券 債権(売掛金など) 動産(現金、自動車、電化製品、貴金属、骨董品、絵画など) 家賃収入 給与については全額ではなく、原則として手取り額の4分の1までとされています。ただし、33万円を超える部分は差し押さえの対象です。 出典) ・民事執行法第152条(e-Gov法令検索) ・民事執行法施行令第2条(e-Gov法令検索) 動産は、現金や自動車など不動産以外のものを指します。現金については、66万円以上が差し押さえの対象です。預貯金については金額の上限が定められていませんが、滞納者が通常必要とする生活費については差し押さえが禁止されています(詳細は後述)。 出典)民事執行法第131条第3号(e-Gov法令検索) 差し押さえの対象外の財産 次の財産は、差し押さえの対象になりません。 衣服、寝具、家具、台所用品など (国税徴収法75条第1項第1号、民事執行法第131条第1項第1号) 生活に必要な食料および燃料(国税徴収法75条第1項第2号:3か月間、民事執行法第131条第1項第2号:1か月間) 66万円までの現金(民事執行法施行令第1条) 給与(手取り額)の4分の3(民事執行法152条) 国民年金、厚生年金、生活保護給付金など(国民年金法第24条、厚生年金保険法第41条、生活保護法第58条) 上記のほかに、職業に欠くことができないもの(器具、印鑑など)、仏具、子どもの勉強に必要な書籍・文房具なども差し押さえの対象外となっています。 出典)国税庁「第75条関係 一般の差押禁止財産」 差し押さえの流れ ここでは具体例として、国民年金保険料を滞納した場合の差し押さえの流れを紹介します。 国民年金保険料が期限までに納付されない場合、納付勧奨が実施される 納付勧奨を実施しても滞納が続く場合は最終催告状が送付される 最終催告状に記載された指定期限までに納付されない場合は督促状が送付される 督促状で指定された期限までに納付されない場合は財産の差し押さえが行われる 滞納者に連帯納付義務者(世帯主、配偶者)がいる場合は、連帯納付義務者に対しても督促状の送付および財産の差し押さえが行われます。また、督促状で指定された期限までに納付しない場合は、納期限からの滞納日数に応じた延滞金の支払いも必要です。 出典)日本年金機構「日本年金機構の取り組み(国民年金保険料の強制徴収)」 差し押さえを回避するには 公的機関に相談する 国民年金保険料や税金を納付するのが難しい場合は、放置しないで自治体の窓口や最寄りの年金事務所などに相談することが大切です。 経済的に困難な状況にある場合、国民年金には保険料免除・納付猶予制度があります。なお、学生の場合は学生納付特例の承認を受けると保険料納付の猶予を受けることが可能です。 未納のままにしておくと、万が一のときに障害年金や遺族年金を受け取れなく恐れがあるので、早めに相談しましょう。税金についても、やむを得ない理由があれば納付方法などの相談に乗ってもらえるかもしれません。 出典)日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」 不動産を活用する 不動産を所有している場合は、以下のような方法で資金を準備できるかもしれません。 不動産担保ローン リースバック 任意売却 不動産担保ローンは無担保ローンに比べてまとまった資金を長期間借り入れすることが可能なため、差し押さえを回避することができるかもしれません。 また、リースバックで自宅を売却すれば、まとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで売却後も同じ家に住み続けることが可能です。 住宅ローンの残債などの要因で不動産担保ローンやリースバックを利用できないときは、任意売却を行う方法もあります。元の自宅に住み続けることはできませんが、不動産仲介で売却できればリースバックよりも高値で売却できる可能性があります。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 関連記事はこちら競売を回避する「任意売却」とは?注意点や流れを解説 まとめ 国民年金保険料や税金、住宅ローンなどの滞納を続けると、最終的には財産の差し押さえを受ける恐れがあります。納付や支払いが困難な場合は放置せず、早めに自治体や金融機関に相談することが大切です。 不動産を所有している場合は、必要に応じてリースバックや任意売却などを検討しましょう。 もっと詳しく知りたい方はこちら SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定も無料で受け付けています。※SBIスマイルのHPに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 競売とは?競売を回避すべき理由とその回避方法 不動産を担保とするローンの返済が困難になると、最悪の場合、競売によって担保不動産が強制的に売却されてしまいます。競売にはデメリットがあるので、ローンの返済が困難になったとしても、絶対に回避す...記事を読む

    2024.10.02用語
  • 在職老齢年金とは?仕組みや年金額の計算方法、確定申告の必要性を解説

    経済的な負担を軽減するために、年金受給が始まる65歳以降も働き続ける人が増えています。仕事をしながら老齢年金を受け取る場合、その年金額はどのように計算するのでしょうか。この記事では、在職老齢年金の仕組みや年金額の計算方法、確定申告の必要性について解説します。 在職老齢年金制度とは 在職老齢年金制度とは、一定以上の収入を得ている60歳以上の人が老齢厚生年金を受け取る際に、年金額や給与・賞与の額に応じて年金の一部または全部が支給停止となる仕組みです。この制度には、主に次の2つの目的があります。 年金が支給されている人が働いても不利にならないようにする 現役世代とのバランスから、一定以上の賃金を得ている人には年金制度の支え手に回ってもらう 在職老齢年金制度とは厚生年金に加入しながら働く人、厚生年金の加入事務所で70歳以降も働く人を対象とした制度のため、個人事業主やフリーランスは対象外です。また、支給停止となるのは老齢厚生年金のみで、老齢基礎年金(国民年金)は給与等にかかわらず全額受給できます。 出典) ・日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」 ・日本年金機構「働きながら年金を受給する方へ」 公的年金(国民年金・厚生年金)の仕組みについては、以下の記事で詳しく説明しています。 関連記事はこちら公的年金の仕組みとは?国民年金・厚生年金の基礎知識を解説 定年後の就業者数が増加 内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によると、労働力人口比率の推移は下図のとおり増加傾向にあります。 出典)内閣府「令和6年版高齢社会白書」 令和5年(2023年)は65~69歳が53.5%、70~74歳が34.5%、75歳以上が11.5%となりました。 年金は原則65歳から受給開始となります。しかし、65歳以降も働き続ける人は増加傾向にあり、60代後半は男性の6割以上、女性の4割以上が就業している状況です。この結果から、年金を受け取りながら働く人は増えているといえるでしょう。 在職老齢年金の計算方法 以下は、在職老齢年金の計算方法のフローチャートです。 ※令和6年度の支給停止調整額 出典)日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」 <用語説明> ・基本月額:老齢厚生年金の月額(加給年金額を除く) ・総報酬月額相当額:(その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12 老齢厚生年金と給与等の合計が50万円(支給停止調整額)以下であれば、老齢厚生年金は全額受給できます。50万円を超える場合は、上記の計算式に基づいて老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となります。 <具体例:給与等50万円(月額:賞与含む)、老齢厚生年金14万円(月額)の場合> (50万円+14万円-50万円)÷2=7万円 ※老齢厚生年金14万円のうち7万円が支給停止となる(老齢基礎年金は全額受給できる) なお、令和4年(2022年)3月以前の65歳未満の年金支給停止基準は28万円でしたが、制度改正によって、令和4年4月以降は65歳以上と同じ基準に見直されました。 出典) ・日本年金機構「働きながら年金を受給する方へ Bさんの場合」 ・日本年金機構「令和4年4月から年金制度が改正されました」 支給停止期間や支給停止額の変更時期 在職老齢年金の支給停止期間は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が支給停止調整額(令和6年度は50万円)を超えている期間です。なお、支給停止調整額は年度が切り替わるタイミングで変更される場合があります。 支給停止額の変更時期は、総報酬月額相当額が変わった月または退職日の翌月となります。ただし、退職日の翌月については、退職後1カ月以内に再就職して厚生年金に加入した場合を除きます。 老齢年金を受給した際の確定申告の要否 働きながら年金を受け取る場合、確定申告が必要なのか気になる人もいるでしょう。 老齢年金は、所得税法の「雑所得」として課税対象となりますが、一定額以上を受給するときは税金が源泉徴収されます。次の2つの要件にすべて当てはまる場合は、「確定申告不要制度」によって確定申告を行う必要がなくなります。 <確定申告不要制度の対象者> ・公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下で、その全部が源泉徴収の対象 ・公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下 確定申告不要制度の対象であっても、医療費控除の適用などにより所得税の還付を受ける場合は確定申告が必要です。 出典)政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」 また、参考までに老齢年金の税金に関するよくある質問を紹介します。 老齢年金の受給額と所得税の課税基準 老齢年金は、雑所得として所得税の課税対象となります。65歳未満でその年の支払額が108万円以上、65歳以上で158万円以上の場合は原則として所得税がかかり、支払時に源泉徴収されます。 しかし、これらの金額を超える場合でも、65歳未満で月額9万円まで、65歳以上で月額13.5万円までの受給額の場合は所得税が差し引かれません。 出典) ・日本年金機構「Q年金から税金が差し引かれています。どうしてですか。」 ・日本年金機構「Q年金から税金が差し引かれていません。どうしてですか。」 年金に課される所得税の計算方法 年金から差し引かれる税金は、支払う年金額から社会保険料や住民税など各種控除を行った残額に5%(復興特別所得税を含めて5.105%)の税率を掛けて計算します。年金から各種控除を受けるには、年金受給者に送付される「扶養親族等申告書」に必要事項を記入して提出する必要があります。 出典)日本年金機構「年金から差し引かれている税金の計算方法を教えてください」 まとめ 年金を受け取りながら会社で働く場合、老齢厚生年金と給与・賞与の月額合計が50万円を超えると、在職老齢年金制度によって老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となります。老齢基礎年金は制度対象外のため、給与等にかかわらず全額受給できますが、老齢厚生年金は繰下げ受給ができないため、どのくらい働くかを決めることも重要になります。 経済的な不安を解消し、より豊かな老後生活を送るためにも、在職老齢年金制度への理解を深めておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 老齢年金とは?受給要件や年金額、請求手続きについて解説 老齢年金は、老後の生活を支える重要な収入源です。公的年金に加入している人は、一定の年齢に達すると老齢年金を受け取れます。老齢年金はどんな仕組みで、いくら受け取れるのでしょうか。 この記事では...記事を読む

    2024.09.25制度年金
  • 防火地域・準防火地域とは?特徴や建築制限、メリットをわかりやすく解説

    マイホームの取得を検討していると、「防火地域」「準防火地域」という言葉を聞くことがあるかもしれません。どちらも防火対策のために法律で指定されている地域ですが、何が違うのでしょうか。また、建物を建てる際にどのような制限があるのでしょうか。 この記事では、防火地域・準防火地域の特徴や建築制限、メリットなどをわかりやすく解説します。 防火地域・準防火地域とは 防火地域・準防火地域とは、都市計画法において市街地や住宅密集地での火災を防ぐために指定された地域です。都市計画法では次のように規定されています。 防火地域又は準防火地域は、市街地における火災の危険を防除するため定める地域とする。 出典)e-Gov法令検索「都市計画法第9条第21項」 防火地域・準防火地域はどちらも建築制限が設けられており、その内容は異なります。また、防火地域・準防火地域には指定されていなくても、火災を防ぐことを目的に「新たな防火規制区域(東京都の場合)」や「法22条区域」に指定されている地域もあります。 それぞれの地域(区域)の特徴を確認していきましょう。 関連記事はこちら都市計画法とは?概要や定められている内容を解説 防火地域の特徴・建築制限 防火地域は、都市の中心部で商業施設が建ち並び人通りや交通量の多い場所や災害時に緊急車両が通る幹線道路沿いなどが指定されます。火災による被害が拡大しやすく、防火対策の必要性が非常に高い地域です。 防火地域では、「3階以上の建物」「延べ面積100㎡超の建物」は耐火建築物としなくてはなりません。耐火建築物とは、建築基準法(第2条第9号の2)に定められた、「主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段)が耐火構造であること」などの基準に適合する建築物です。 また、「2階以下で延べ面積100㎡以下の建物」は準耐火建築物とする義務があります。準耐火建築物とは、建築基準法(第2条第9号の3)で定められた、「主要構造部を準耐火構造とすること」などの基準に適合する建築物です。 ※筆者作成 準防火地域の特徴・建築制限 準防火地域は、駅前の周辺など住宅が分布している地域などが指定されます。防火対策の必要性は高いものの、防火地域に比べると規制は緩やかです。 準防火地域では、「4階以上の建物」「延べ面積1,500㎡超の建物」は耐火建築物としなくてはなりません。また、「3階以下で延べ面積500㎡超1,500㎡以下の建物」は準耐火建築物とする義務があります。 延べ面積が500㎡以下であれば、一般的な木造2階の戸建住宅も建築可能です。ただし、屋根や外壁、開口部(換気扇など)、軒裏などに所定の防火措置を行う必要があります。 ※筆者作成 出典) ・国土交通省「防火地域等における建築物の規制【法第22条】【法第61条】【法第62条】」 ・国土交通省「耐火建築物・準耐火建築物」P.13 ・埼玉県「みんなで取り組もう 火災に強いまちづくり」 新たな防火規制区域とは 新たな防火規制区域とは、木造密集地域における災害時の安全性を確保するために、東京都が条例に基づいて指定する区域です。 対象区域では、原則として、すべての建築物は準耐火建築物以上としなくてはなりません。また、「延べ面積500㎡超の建物」は耐火建築物とする必要があります。 ※筆者作成 出典)東京都都市整備局「新たな防火規制について(制度の概要)」 法22条区域とは 法22条区域(建築基準法第22条指定区域)とは、火災による延焼を抑止するために、特定行政庁が防火地域・準防火地域以外の市街地に指定する区域です。法22条区域は、建物の屋根を不燃材料で造るか、不燃材で葺(ふ)くことを義務づけられています。 基本的に火は上に向かって燃え広がるため、火災を抑えるために定められた要件を満たす材料を用いて、屋根の防火性能を強化することが必要です。 耐火構造・準耐火構造・防火構造の違い 建物の防火性能を表す主な基準として、「耐火構造」「準耐火構造」「防火構造」の3つがあります。防火地域と準防火地域では、これらの基準が異なるため、それぞれの違いを理解しておきましょう。 耐火構造とは 耐火構造とは、火災が発生し一定時間の火熱が加えられても損傷などが生じない構造です。耐火建築物では、通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊や延焼を防止するため、主要構造部を耐熱構造とすることになっています。 建築物の階数や部分によって異なりますが、最上階から数えた階数が20以上の階の場合、柱とはりは最長3時間、損傷が生じない性能が求められます。 準耐火構造とは 準耐火構造とは、火災が発生し一定期間の火熱が加えられている間は損傷などが生じない構造です。耐火構造とは異なり、火災が終了した後に損傷が生じることは許容されます。 準耐火建築物では、通常の火災による延焼を抑制するため、主要構造部を準耐火構造とすることになっています。建築物の部分によって異なりますが、最長45分間、損傷が生じない性能が求められます。 防火構造とは 防火構造とは、防火地域・準防火地域において、比較的小規模の住宅を建てる場合に求められる構造です。 外壁に火熱が加えられた場合に、30分間は損傷が生じない性能が求められます。外壁と軒裏については、30分間は加熱面以外の温度が一定以上に上昇しないことも要件です。 出典) ・国土交通省「耐火建築物・準耐火建築物」P.13-14 ・建築基準法施行令「第四章 耐火構造、準耐火構造、防火構造、防火区画等」 耐火構造の建物建築のメリット 耐火構造の建物を建築すると、次のようなメリットを得られます。 建ぺい率の緩和 建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合です。防火地域・準防火地域において、建ぺい率が80%以外に指定されている場合は、次の要件を満たすと建ぺい率が10%加算されます。 防火地域:耐火建築物を建てる場合 準防火地域:耐火建築物または準耐火建築物を建てる場合 建ぺい率が高くなれば、建物を建てるときに使える敷地がより広くなります。 火災保険料の割引 火災保険の保険料率は、建物の構造によって異なります。火災が起きたときの燃え広がり方などによって、被害の程度や倒壊しやすさなどのリスクが異なるからです。 M構造 耐火性能を有する共同住宅(コンクリート造のマンションなど) T構造 M構造以外の耐火性能を有する建物および準耐火性能を有する建物(鉄骨造など) H構造 M構造、T構造以外の建物(木造など) 火災保険の保険料率は「M構造、T構造、H構造」の順に高くなるため、耐火構造の建物を建築することは火災保険料の節約につながります。 出典)損害保険料率算出機構「2023年度火災保険・地震保険の概況」P.16 防火地域・準防火地域を調べてみよう 自治体によっては、インターネットで防火地域・準防火地域を調べることが可能です。 東京都の場合、「都市計画情報等インターネット提供サービス」の都市計画情報で確認できます。地域を指定し、表示切替で「防火・準防火地域」を選択すると、地図上に情報が表示される仕組みです。 出典)東京都 都市整備局「都市計画情報等インターネット提供サービス」 その他に、自分が住む地域名と防火規制で検索する方法もあります。 まとめ 防火地域・準防火地域は、どちらも市街地での火災を防ぐために指定された地域です。建築費用が高くなる傾向にありますが、建ぺい率の緩和や火災保険料の割引を受けられるメリットもあります。マイホームの取得を検討する際は総合的に判断しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 敷地面積の制限とは?概要や目的、最低敷地面積の調べ方を解説 近年の土地価格の上昇に伴い、大きな土地のままでは不動産を購入できない人が増加しています。そのような背景から、大きな土地を分割(分筆)することで価格を抑えた、小規模住宅が増えています。しかし、...記事を読む

    2024.09.18制度
  • 資金洗浄(マネー・ローンダリング)とは?仕組みや対策を解説

    銀行口座の開設や送金、クレジットカードの発行などで金融機関を利用すると、資金洗浄(マネー・ローンダリング:以下「マネロン」)の対策として本人確認などを求められることがあります。マネロンが犯罪であることは知っていても、具体的にどのような行為を意味するのか十分に理解できていないかもしれません。 この記事では、マネロンの概要や仕組み、金融機関などで行われている対策についてわかりやすく解説します。 資金洗浄(マネー・ローンダリング)とは? 資金洗浄とは、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者をわからないようにして、捜査機関による収益の発見や検挙などを逃れようとする行為をいいます。 マネロンを放置すると、犯罪収益が将来の犯罪活動や犯罪組織の維持・強化に使用されるため、組織的な犯罪やテロ行為などを助長することにつながります。また、犯罪収益が移転して通常の事業活動に使われることにより、健全な経済活動に悪影響を与えます。 安全な暮らしを守り、健全な経済発展を実現するには、世界中の国々と連携しながらマネロン対策に取り組む必要があります。 出典)財務省「教えて!マネロン等対策」 FATF(金融活動作業部会)の役割 FATF(ファトフ)とは、Financial Action Task Forceの略称で、1989年のアルシュ・サミットでマネロン対策の国際基準策定と履行を担うために設立されました。FATFでは、マネロン対策の国際基準として定めた「FATF勧告」に基づき、参加国間の遵守状況や履行状況について監視(相互審査)を実施しています。 2019年10月から11月には、日本のFATF勧告の遵守状況について審査が実施され、2021年8月に第4次対日相互審査報告書が公表されました。その結果、「重点フォローアップ国」と評価されています。報告書の内容については、以下から確認できます。 出典)財務省「対日相互審査報告書の概要(仮訳・未定稿)」 政府は、この報告書の公表を契機として「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画」の策定・公表及び「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」を設置し、マネロン対策の強化を図っています。 出典) ・文化庁「FATF 第4次対日相互審査報告書の公表について」 ・金融庁「FATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査報告書の公表について」 マネロンの手口 マネロンは、主に次の3段階のプロセスを経て資金の浄化が行われます。 プレイスメント(placement) レイヤリング(layering) インテグレーション(integration) プレイスメントとは、犯罪によって得た収益を、金融システムや合法的な商取引の流れに取り込むプロセスです。偽名・架空名義の銀行口座に犯罪行為で得た資金を入金するなどの方法があります。 レイヤリングとは、金融システムに取り込んだ犯罪収益の出所をわからなくするためのプロセスです。銀行口座から複雑な送金取引を繰り返し、何度も資金を移動させるような方法があります。 インテグレーションとは、出所をわからなくした犯罪収益を合法的なビジネスによる収益のように偽造することで、通常の経済活動に戻すプロセスです。 これら3つのプロセスによって、犯罪によって得た資金を通常の経済活動で使用したり、再び犯罪行為に利用することが可能になります。 マネロンの事例 国家公安員会の「犯罪収益移転危険度調査書(令和5年12月)」によると、令和2~4年の3年間の検挙事例において、マネロンに悪用された主な取引の集計結果は以下のとおりです。 出典)国家公安員会「犯罪収益移転危険度調査書(令和5年12月)P.30」 最も多いのは内国為替取引の584件、次いで現金取引297件、預金取引160件となっています。内国為替取引とは、預金取扱金融機関(銀行、信用金庫、信用協同組合など)を利用した国内送金(預貯金の預入れ・払戻し、手形・小切手の利用は除く)のことです。預金取扱金融機関の商品・サービスが、マネロンに悪用された取引の多くを占めています。 マネロンを計画・実行しようとする者が、迅速で確実な資金移動が可能な内国為替取引を通じて、他人または架空名義の預金口座に犯罪収益を振り込ませる事例が多くみられます。最終的には、預金口座に入金された犯罪収益は現金化されるため、その後の追跡は難しくなります。 クレジットカードの不正利用の増加に伴い、クレジットカードがマネロンに悪用された取引も増加傾向です。また、前払式支払手段(商品券、磁気式・IC式プリペイドカード、インターネット上で利用できるプリペイドカードなど)、暗号資産、資金移動サービスなど、決済手段の多様化を悪用される場合もあります。 金融機関で行われるマネロン対策 前述のように、預金取扱金融機関の商品・サービスがマネロンに悪用されるケースが多発しています。そのため、金融機関で以下のような取引を行う場合は、マネロン対策の一環として取引内容や取引目的の確認を受けることがあります。 現金や小切手による高額の取引 収入や資産などに見合わない高額の取引 短期間のうちに何度も行われる取引 送金先、送金目的、送金原資などについて不明瞭な点がある取引 上記はあくまでも例示であり、実際には金融機関が個別・具体的に判断します。また、個人と法人によっても確認される事項は異なります。 個人の場合 個人が金融機関を利用する場合、取引内容や状況によっては次のような確認を求められる可能性があります。 氏名、住所、生年月日、職業などの本人確認 取引の目的 その際、各種書面の提示を求められることもあります。 法人の場合 法人が金融機関を利用する場合、取引内容や状況に応じて次のような確認を求められる可能性があります。 法人の住所、事業内容、株主情報など 法人の実質的支配者(氏名、住所、職業、居住国など) これらについて、窓口や書類郵送での再確認、各種書面の提示を求められることもあります。 まとめ 近年マネロンは複雑かつ高度化しており、日本および国際社会にとってマネロン対策は重要な課題です。私たちの身近にある預金口座やクレジットカードなどの取引が、マネロンに悪用されるケースが増えています。金融機関を利用する際に、マネロン対策として取引内容の確認などを求められる可能性があることを理解しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

    2024.09.04用語
  • ABL(動産・債権担保融資)とは?仕組みや特徴をわかりやすく解説

    「事業資金を借りたいが、担保となる資産もないから難しい」と考える中小企業の経営者もいるかもしれません。しかし、ABL(動産・債権担保融資)を利用すれば、企業が保有する在庫や売掛金などを担保に金融機関から融資を受けられる可能性があります。 この記事では、ABLの仕組みや特徴、利用までの流れをわかりやすく解説します。 ABL(動産・債権担保融資)とは ABLとは、「Asset Based Lending」という英単語のそれぞれの頭文字を取った略称で、企業が保有する在庫や売掛金、機械設備などの事業資産を担保にした融資の一種です。 企業が金融機関から事業資金を借り入れる場合、経営者による個人保証をつけたり、不動産を担保に入れたりするのが一般的です。しかし、ABLなら担保となる不動産がなくても、企業が保有している在庫などの資産を有効活用して事業資金を調達できます。 出典)経済産業省経済産業政策局産業資金課「ABLのご案内」 ABLの仕組み ※筆者作成 企業が保有する在庫や売掛金、機械設備などは収益を生み出すための大切な資産です。ABLでは、借り手となる企業は信用力を補完するために、事業価値に基づいてこれらの資産を担保として提供します。 対して貸し手となる金融機関は、提供された担保の価値や企業の事業価値を見極めて資金を融資します。担保となった在庫や機械設備は金融機関の名義になりますが、在庫の販売や設備の使用はこれまでどおり企業が行えます。売掛金も企業が回収して運転資金として活用できるため、事業に支障はありません。 ABLの特徴 ABLは以下のような特徴があります。 担保となる不動産がない企業でも融資を受けられる 経営管理の効率化ができる 在庫管理コストの低下につながる 金融機関の審査、企業側の登記手続きに時間がかかる 企業は金融機関に対して担保の状況(在庫や売掛金の増減など)を定期的に報告する義務がある ABLは、担保不動産に頼らず資金調達できるのが最大のメリットです。担保価値の評価の際は、在庫や売掛金などの管理体制も確認されます。管理体制の見直しに着手することで、経営管理の効率化・在庫管理コストの低下などの効果も期待できるでしょう。 一方で、担保にする在庫や売掛金の評価を受け、資産の登記を行う必要があるため、通常の融資よりも時間がかかります。金融機関への報告義務があることもデメリットとして挙げられます。 上記のほかに、貸し手との約束であるコベナンツを守る義務があることにも注意が必要です。ABLでの融資契約を締結する際に、「財務指標を一定以上に保つこと」「正確な決算書類を定期的に提出すること」などの事項について覚書を締結します。 ABLの評価におけるポイント ABLで融資申し込みをすると、金融機関は在庫や売掛金などの資産が担保としてどの程度の価値を持つか調査を行います。評価における主なポイントは以下のとおりです。 <売掛金の評価のポイント> 売掛先となっている企業数(売掛先が分散されているか) 売掛先の信用力 売掛金の管理方法 <在庫の評価のポイント> 市場規模や将来性 主要な販売先 在庫の保存状態・管理体制 これらの評価にあたり、金融機関は必要に応じて外部の動産評価会社を利用します。その場合、借り手である企業側が資産の評価にかかる費用を負担することもあります。ただし、東京都ではこの評価費や保証料用の必要経費について中小企業への補助を行っています。条件は以下のとおりです。 <東京都が行う中小企業への支援> 担保とするものが機械・設備の場合は融資額の4% 担保とするものが売掛債権・在庫の場合は融資額の3.5%(ただし、小規模企業者(※)が売掛債権を担保とした2,000万円未満の融資を利用する場合、70万円) 創業5年未満中小企業の場合は融資額の4%を上限として、必要経費の2分の1(小規模企業者、創業5年未満中小企業の場合は全額)を補助  ※小規模企業者とは、中小企業のうち、従業員数が製造業等30人以下(卸・小売・サービス業は10人以下)の事業者等です。 出典) ・東京都産業労働局「東京都動産・債権担保融資(ABL)制度」 ・東京都産業労働局「東京都動産・債権担保融資制度のご案内」 ABLが向いている企業 ABLは、農産物や製品、機械設備、売掛金などさまざまな資産を担保にできます。健全な経営を行い、担保として活用できる資産を保有していれば、幅広い企業がABLの対象となるでしょう。 特に次のような特徴を持つ企業は、ABLの利用が向いているといえます。 流動資産(売掛金、在庫など)を多く保有している企業 固定資産(機械設備など)の規模が大きい企業 売上高が急速に拡大した企業 在庫を多く保有する必要がある場合、その在庫を担保に融資を受けることで安定的に運転資金を確保できます。ABLなら、機械設備などの動産も担保として活用可能です。また、売上高が短期間で拡大し、在庫や売掛金が増加した場合の運転資金としての利用も想定されます。 ABLが向いているか確認したい場合は、以下のチェックリストを活用しましょう。 区分 No チェック項目 〇/✕ 企業の特徴 1 自社の商品・取り扱い製品の品質に自信を持っている 2 市場性のある在庫や、信用力がある取引先の売掛金等の流動資産を保有している 3 不動産がない、または少ないが、機械等の固定資産を保有している 資金ニーズ 4 原材料を一定の時期にまとめて仕入れる必要がある 5 季節によって在庫の販売量に大きな差がある 6 原材料の仕入れから、製品化し販売・回収するまでの資金の立て替えが必要になる 7 規模拡大や業種部門の転換等により、運転資金の必要性が高まっている 経営管理 8 財務諸表を電子データで作成している/作成できる 9 在庫や売掛金等の残高について、パソコン等で正確なデータを管理している 10 貸し手に事業内容を深く理解してもらい、信頼関係を強化したい ※筆者作成 出典)経済産業省経済産業政策局産業資金課「ABLのご案内」P.22 ABL適正チェックテストの中で、〇の数が多い企業ほど、ABLに向いている可能性が高いといえます。適性があると判断できる場合は、取扱金融機関に問い合わせてみるといいでしょう。 ABLの利用事例 ABLで増加運転資金を確保し、商品ラインナップを拡大したA社の事例を紹介します。 <A社の詳細> 業種卸売・小売業(ベビー服と子ども服の卸売・販売) 創業数十年 資本金3,500万円 売上高15億円 従業員数80人 A社は健全な経営を行っており、小売店舗は幅広い品ぞろえが支持されて、地元では人気があります。しかし、少子化による将来的な市場規模の縮小が課題です。そこで金融機関に相談したところ、ABLによる資金調達の提案を受けました。 業種の特性上、A社は多くの在庫を保有する必要がありますが、その在庫は担保として評価対象となります。そこでABLで増加運転資金を確保し、新たにオーガニックコットン製品の取り扱いを開始しました。ネット販売も始めたことで新たな市場を開拓でき、売上増加にもつながりました。 出典)経済産業省経済産業政策局産業資金課「ABLのご案内」P.10 ABL利用までの流れ ABLの利用について金融機関に相談する際は、企業の概要や財務状況、在庫や売掛金などの資産状況がわかる書類を準備するといいでしょう。具体的には、組織図や決算書類、売掛金明細、在庫明細などが考えられます。 融資申し込みを行うと、審査を経て融資契約を結びます。また、担保となる資産について債権譲渡登記や動産譲渡登記を行います。これらの登記手続きは、資産の所有権が金融機関に移ったことを第三者に対して主張するための制度です。 まとめ 担保となる不動産がなくても、ABLを利用すれば在庫や機械設備、売掛金などを担保に融資を受けられるかもしれません。運転資金の確保や事業拡大を目的に資金調達をしたい中小企業の経営者は、ABL(動産・債権担保融資)の活用を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 ファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介 ファクタリングとは、事業者の資金調達方法の1つです。保有している売掛債権を早期に資金化できるため、うまく活用すれば資金繰りの改善が期待できます。一方で、ファクタリングを巡って悪質なトラブルも...記事を読む

  • 土地収用法とは?手続きの流れや補償内容をわかりやすく解説

    公共事業のために土地が必要な場合、その事業の施行者である起業者から立ち退きを求められることがあります。補償などで合意できない場合は、土地収用法による手続きが行われ、最終的には、土地を明け渡さなくてはならない場合がほとんどです。 この記事では、土地収用法の概要や手続きの流れ、補償内容について解説します。 土地収用法とは 土地収用法とは、土地を収用するための要件や手続き、損失の補償などを規定した法律です。公共の利益と私有財産の調整を図ることを目的としています。収用とは、国や地方公共団体などの起業者が、公共事業のために必要となる土地などを土地収用法に定められた手続きに基づいて取得することです。 公共事業のために土地を取得する場合、通常は起業者が土地所有者と話し合い、契約を締結してその土地を取得します。これを任意交渉といいます。 しかし、補償内容や土地の所有権などに関する話し合いがうまくいかず、同意が得られないこともあります。その場合、起業者が土地収用法に基づく手続きをすることで、土地の取得が可能になります。 出典) ・福島県収用委員会「土地収用のあらまし」 ・徳島県「収用」って何ですか?」 土地収用の流れ 土地の所有者に立ち退きを要求する前に、施行者は「事業認定手続」と「収用裁決手続」の2つの手続きを行います。 出典)東京都収用委員会「収用手続の流れ」 事業認定手続 事業認定手続とは、国土交通大臣または知事が、起業者から申請された事業に公益性があるかを判断する手続きです。申請事業が認定されると、起業者は土地を収用する権利が付与されます。 収用裁決手続 収用裁決手続とは、収用委員会が土地所有者に対する補償金の額、起業者が土地の権利を取得する時期、土地所有者が土地を明け渡す期限を裁決する手続きです。 収用委員会とは、土地収用法に基づいて各都道府県に置かれている行政委員会です。知事から独立し、公正中立な立場で審理や調査を行って裁決を下す権限を付与されています。収用裁決手続の流れは以下のとおりです。 裁決申請・明渡裁決申立て 収用委員会による審理 権利取得裁決・明渡裁決 1.裁決申請・明渡裁決申立て 起業者が、収用委員会に対して裁決申請と明渡裁決申立てを行います。裁決申請は土地の所有権などを取得するため、明渡裁決申立ては土地にある建物を移転させて、土地の明け渡しを求めるために行われるものです。 2.収用委員会による審理 収用委員会は申請書や申立書の内容が法令に適合していれば受理し、審理において起業者や土地所有者、関係人の意見を聞きます。明らかになった争点を整理し、必要な調査・検討を行ったうえで裁決を行います。 3.権利取得裁決・明渡裁決 権利取得裁決の裁決事項は、「収用する土地の区域」「土地に関する損失の補償」「権利取得の時期」の3つです。権利取得裁決により、起業者は権利取得の時期までに補償金を支払い、土地の所有権を取得します。 一方、明渡裁決の裁決事項は、「明け渡すべき土地の区域」「明渡しに関する損失の補償」「明渡しの期限」の3つです。明渡裁決により、起業者は明渡し期限までに補償金を支払います。権利者は土地にある建物を移転し、期限までに土地を明け渡す必要があります。 出典)東京都収用委員会「土地収用のあらまし」P.8 土地収用の補償内容 土地収用の補償は、「土地に関する補償」と「明渡しに関する補償」の2つに分けられます。 土地に関する補償 土地に関する補償には次のようなものがあります。 土地補償 収用する土地の対価に当たる補償。 補償金の額は近傍の類似した土地の取引価格などを考慮して算定する。 借地権などの権利消滅補償 収用により所有権以外の権利は消滅するため、その権利に対する額が補償される。 補償金の額は権利の取引価格や契約内容などを考慮して算定する。 残地補償 土地収用によって残地が生じたとき、利用価値の低下によって 損失が生じる場合は元の価格との差額が補償される。 金銭による補償が原則ですが、替地の取得が難しく、これまでの生活が維持できないなど特別な事情がある場合に限り、替地による補償が認められます。 明渡しに関する補償 明渡しに関する補償には次のようなものがあります。 建物補償 建物を移転するための費用 工作物補償 塀、門扉など建物以外の物件を移転するための費用 立竹木補償 庭木などの樹木を移植するための費用 動産移転補償 引越しに要する費用 借家人補償 建物の賃借人が家主との契約関係を続けるのが難しい場合に、 同種同等の建物を賃借するのに必要な費用 営業休止補償 営業休止期間中の収益減少額などの費用 仮住居補償 建物の居住者がいる場合、仮住居に必要な費用 家賃減収補償 建物の家主が賃貸していて、移転期間中に得ることができない賃料などの費用 移転雑費補償 新たに土地を取得し、建物を移転する場合、移転先の選定に必要な費用 収用する土地に建物がある場合、通常は移転するための費用が補償されます。ただし、事業認定後に建物を新築・増築した場合は、原則として損失の補償を請求することはできません。 出典)東京都収容委員会「収用制度の概要」 明け渡しを求められたらどうすればいい? 起業者から明け渡しを求められた場合、権利取得裁決前の交渉段階であれば拒否できます。「補償金の額に納得がいかない」など、受け入れられない理由があるなら拒否することも可能です。しかし、拒否し続けても、権利取得裁決および明渡裁決後は強制的に明け渡しとなります。 補償内容の異議申し立て 補償内容に異議がある場合、基本的には裁決前に交渉しなければなりません。ただし、裁決後も裁決書の正本の送達を受けてから6か月以内であれば、裁判所へ損失の補償に関する訴えを提起できます。その際、訴訟の相手方は起業者となります。 土地収用を求められた際には、補償金額などの交渉ができる場合もあるので、弁護士などの専門家に相談しておくと安心です。 出典)東京都収用委員会「収用手続の流れ」 まとめ 公共事業のために立ち退きを求められた場合、交渉段階であれば拒否できます。しかし、収用委員会による裁決が行われると、最終的には土地を明け渡さなくてはなりません。起業者から立ち退きの交渉があった場合は、土地収用の手続きを見据えたうえで、どのように対応するかを検討しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 区分所有法とは?概要や対象となる建物、主な規定内容について解説 区分所有法は、マンションの所有者や管理組合にとって重要な法律です。マンション暮らしを検討している人や既に住んでいる人は、区分所有法を理解しておくことで、安心して生活できるでしょう。 この記事...記事を読む

    2024.08.07制度
  • 不動産売買の仲介手数料とは?相場と上限額や計算方法を解説

    不動産仲介で売買を行う場合、一般的に仲介手数料が発生します。不動産売買の仲介手数料は、不動産会社に対する成功報酬や手続の代行費用といった意味合いがあり、その金額は法律で上限が定められています。 この記事では、不動産売買の仲介手数料の計算方法や支払うタイミングについて解説します。 不動産売買の仲介手数料とは 一般の人がマンションや戸建て、土地などの不動産を売買する場合、不動産会社に仲介を依頼することが多いでしょう。不動産仲介会社に依頼すると、物件の案内から引き渡しまで不動産会社を介して取引を進めます。 仲介手数料は、不動産会社の不動産売買に関わる活動に対して支払う成功報酬として位置付けられており、売買が成立しない場合は支払う必要はありません。 仲介手数料の上限額 不動産売買における仲介手数料は、宅地建物取引業法第46条で上限が定められています。そのため、上限を超える額を請求することは法令違反となりますが、上限額を超えない範囲であれば不動産会社が自由に仲介手数料の金額を決めることが可能です。 出典)全日本不動産協会 埼玉県本部「不動産売買の仲介手数料はいくら必要?計算方法や値引き交渉の可否などを徹底解説!」 上限は法律で決まっていますが、下限は定められていないため、仲介手数料の値引きは不可能ではありません。物件の売却に併せて購入も依頼する場合や、そもそも物件の価格が高い場合などは、交渉できる余地があるでしょう。 一方で、不動産会社にとって仲介手数料は、不動産売買の仲介に関わる人件費、広告費、交通費などの諸経費をまかなう重要な収入源となります。そのため、価格の安い物件や流通性の低い物件では、手数料の値引きが物理的に困難なこともあります。 不動産売買の仲介手数料の計算方法 仲介手数料の上限額は、不動産売買価格によって異なります。売買価格が200万円以下であれば価格の5%、200万超から400万円以下であれば価格の4%、400万円を超える場合は売買価格の3%に消費税を足した金額が上限額です。 不動産売買価格(税別) 仲介手数料の上限額 200万円以下 売買価格×5%+消費税 200万円超〜400万円以下 売買価格×4%+消費税 400万円超 売買価格×3%+消費税 速算式での計算方法 仲介手数料の計算は、前述のとおり不動産の売却価格を200万円以下、200万円超から400万円以下、400万円超の3つに分類し、それぞれに対応する割合をかけて足し合わせると求められます。 しかし、この計算には時間がかかるため、より簡単に仲介手数料を求められる「速算式」が存在します。速算式の計算方法は以下のとおりです。 不動産売買価格(税別) 仲介手数料の上限額(消費税率10%の場合) 200万円以下 (売買価格×5%)×1.1 200万円超〜400万円以下 (売買価格×4%+2万円)×1.1 400万円超 (売買価格×3%+6万円)×1.1 たとえば、売買価格が3,000万円(税別)の場合、表の400万円超に当てはまるので、上限額は105.6万円{(売買価格:3,000万円×3%+6万円)×1.1}と計算できます。 売買価格ごとの仲介手数料の上限 前述のとおり、仲介手数料は法律で定められている上限を超えなければ、自由に設定できます。速算表で計算した売買価格ごとの仲介手数料の上限額は下表となります。 仲介手数料の上限早見表 不動産売買価格(税別) 仲介手数料の上限額(税込) 1,000万円39万6,000円 2,000万円72万6,000円 3,000万円105万6,000円 4,000万円138万6,000円 5,000万円171万6,000円 6,000万円204万6,000円 7,000万円237万6,000円 8,000万円270万6,000円 9,000万円303万6,000円 10,000万円336万6,000円 ※費用は目安であり、実際の金額は不動産仲介会社に確認してください。 不動産取引で仲介手数料を支払うタイミング 仲介手数料は、契約成立に対する成功報酬という位置づけなので、不動産売買が成立した以後に支払う必要が生じます。支払う時期は、売買契約時や物件の引き渡し時の2回に分けて支払うことが一般的です。 また、仲介手数料を支払う人は売主か買主かを問わず、不動産仲介を不動産会社に依頼した人が支払います。売主と買主の個人間で取引をする場合や、売主か買主の一方しか不動産仲介会社へ依頼していない場合には、依頼をしていない人に仲介手数料は発生しません。 しかし、取引でトラブルが生じた場合は当人同士での解決が必要になります。また、不動産会社の知見やネットワークを利用することで、不動産の売買が円滑に進むことが多いでしょう。 出典)全日本不動産協会 埼玉県本部「不動産売買の仲介手数料はいくら必要?計算方法や値引き交渉の可否などを徹底解説!」 不動産取引で仲介手数料のほかに必要な費用 不動産売買に際して物件費用や仲介手数料のほかにもかかる費用があります。売主側と買主側でそれぞれかかる税金については、こちらからご確認ください。 関連記事はこちら不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説 なお、土地と建物の固定資産税について、年度の途中で売主から買主に不動産を引き渡した際は、買主が固定資産税相当額(固定資産税精算金)を支払うことが一般的です。引き渡し後の日数分の税額を日割りで計算し、買主が日割り精算金を売買価格に上乗せして売主に支払います。 出典)公益社団法人 全日本不動産協会「賃貸不動産の売買における固定資産税精算金の取扱いについて」 税金以外にかかる費用 税金以外については、取引によって異なりますが、主に以下のような費用がかかります。 【売主・買主の双方にかかる費用】引越し費用 買主が新たに家を購入し引越しをする場合、すぐに新居に住み替えられないことがあります。仮住まいが必要になる場合は、現在の家から仮住まい、仮住まいから新居と2回引越しすることになり負担も大きくなるため注意しましょう。 売主は現在住んでいる家を売却する際、引越し費用のほか引越し時のごみの廃棄やハウスクリーニング費用についても必要な場合があるので、余裕を持って準備しましょう。 【売主にかかる費用】土地の測量費用 土地の測量費用は、売主が土地を売却する際に隣地との土地の境界を確定するために必要です。測量は義務ではありませんが、買主としては測量された土地を購入することで隣地とのトラブルを回避できるため、土地の売却時に測量を行うことは一般的といえるでしょう。 費用は土地の大きさ、境界の数、隣地所有者の数などにより異なります。自宅によっては測量費用が高額になることもあるので、事前に不動産会社や土地家屋調査士に相談するとよいでしょう。 【買主にかかる費用】住宅ローン関連費用 買主が住宅ローンを組む場合は以下の費用がかかります。家の購入金額だけではなく、借り入れに伴う諸費用についても念頭に入れておきましょう。 住宅ローン事務手数料 住宅ローン保証料 火災保険料(地震保険は任意) 団体信用生命保険料 関連記事はこちらマイホームの購入予算はどう決める?頭金や住宅ローンの考え方 【その他必要に応じてかかる費用】 .bold-text { font-weight: bold; } ・建物の解体費用 売主が土地を売却する際、建物の解体費は、売主が更地にして土地を売る時に発生します。たとえば、国土交通省の公表する「我が国の住生活をめぐる状況等について」によれば、関東の木造住宅の解体費用の相場は1坪あたり3.7万円、50坪で185万円とされています。 出典)国土交通省「我が国の住生活をめぐる状況等について(前回までの補足)」P.7 ・住宅ローンの返済事務手数料 売主に住宅ローンの残債があり、ローンの一括返済を行う場合は手数料がかかる金融機関もあるので予め確認しておきましょう。 まとめ 不動産を売買する際には仲介手数料が必要となります。仲介手数料は、法律で上限が定められているため、不動産売買価格をもとに上限額を算出することも可能です。 仲介手数料が無料になったり、上限額よりも低く抑えられたりするケースもありますが、仲介手数料の金額だけでなく、実際に営業担当に話をしてみたり、手続きの対応スピードをみたりして、不動産会社を選ぶのがおすすめです。 仲介手数料のほかにも税金の支払いや引っ越し費用なども、不動産売買には必要になります。トラブルを避けるためにも、どんな費用がどのように発生するのかを理解してから、実際に不動産取引をするようにしましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マイホーム選びのポイントは?購入経験者のアンケート結果もご紹介 マイホームは「人生最大の買い物」ともいわれます。一度購入すると簡単には手放せないため、「絶対に後悔したくない」と考える人も多いのではないでしょうか。希望条件が決まらない場合は、理想の暮らしを...記事を読む

  • 三為契約とは?不動産仲介との違いや注意点を解説

    三為(さんため)契約は、不動産売買で用いられることがある契約形態の1つです。一般的な不動産仲介とは仕組みが異なるため、不動産を売買する予定があるなら三為契約の仕組みを理解しておくと安心です。 この記事では、不動産売買における三為契約の概要や不動産仲介との違い、注意点について解説します。 三為契約とは 三為契約とは、「第三者の為にする契約」という言葉の略称で、民法537条および538条に規定されています。 民法537条(第三者のためにする契約) 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。 2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。 3 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。 民法538条(第三者の権利の確定) 前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。 2 前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。 出典)民法(e-Gov法令検索) 不動産売買では、売主と買主で売買契約を締結するのが一般的です。しかし、三為契約では売主と買主の間に不動産業者が入り、売主と不動産業者、不動産業者と買主がそれぞれ売買契約を締結します。 三為契約を用いた不動産取引を扱う不動産業者は「三為業者」と呼ばれます。 三為契約の仕組み 上述のとおり、三為契約では売主と買主の間に三為業者が入り、それぞれと売買を行います。不動産売買が行われると、通常は所有権の移転登記を行います。しかし、三為契約では不動産業者への所有権移転登記を省略し、買主に直接所有権の移転登記を行う点で異なります。 ※筆者作成 このように、間に入っている不動産業者を省略し、売主から買主へ直接所有権を移転することを「中間省略登記」といいます。 中間省略登記について 中間省略登記は、原則禁止されています。これは取引の当事者をそれぞれA、B、Cとしたときに、物件の所有権がA⇒B⇒Cと移転しているのであれば、不動産登記もA⇒B⇒Cと移転していることを明示すべきであるという考えからです。 しかし、これには例外があり、法務省から法務局、地方法務局に対する通知がされています。(平成19年1月12日法務省民二第52号民事第二課長通知) 出典)一般社団法人 不動産適正取引推進機構「最近の判例から(5) 登記情報と登記原因証明情報の不一致を理由とする中間省略登記申請の却下処分が適法とされた事例」 不動産登記の申請情報(A⇒Cへの所有権移転)と登記原因証明情報(A⇒B⇒Cの取引の経緯)の合致という基本理念を踏まえつつ、A、B、C三者間で「第三者のためにする契約」又は「買主の地位の譲渡」により、AからCへの直接の所有権移転があったと認められる場合は、直接AからCへの所有権移転登記が可能とされています。 三為契約と一般的な不動産仲介との違い 不動産仲介は、不動産仲介会社が売主と買主の間に入って両者の売買契約を成立させる方法です。売主と買主とをつなぐという意味では、三為契約と不動産仲介は同じです。 しかし、三為契約は不動産業者が売主と買主それぞれと売買契約を行うのに対し、不動産仲介は売買契約ではなく媒介契約を行います。不動産仲介にも売主と買主それぞれの仲介となる「両手仲介」、一方の仲介となる「片手仲介」が存在します。 ※筆者作成 なお、不動産仲介では不動産業者が受け取れる仲介手数料は以下のように上限額が決められていますが、三為契約では不動産業者の売買差益の上限は定められていません。 仲介手数料の上限額 契約金額(税別) 仲介手数料の上限額 200万円以下 (契約金額×5%)+消費税10% 200万円超 400万円以下 (契約金額×4%+2万円)+消費税10% 400万円超 (契約金額×3%+6万円)+消費税10% 三為契約における三為業者のメリット 三為契約を用いた不動産売買は、三為業者にとって以下のようなメリットがあります。 仕入コストを下げられる 一般的な買取再販事業の場合、物件を仕入れする際に仕入資金が必要となります。しかし、三為契約の場合、仕入れにあたっての手付金は必要ですが、残金は買主が決済時に支払うことで精算されるため、仕入れにかかる費用を大幅に削ることが可能です。 売買に係る諸費用を軽減できる 一般的な買取再販事業の場合、物件の仕入れ時と販売時に登記費用等の諸費用が発生します。しかし、三為契約であれば、物件の登記費用が発生しないため、費用を抑えることができます。 在庫の保有リスクがない 一般的な買取再販事業の場合、在庫の売れ残りリスクを抱えます。在庫が売れ残ると、仕入資金をローンで賄っている場合には、大きな赤字となるリスクを抱えます。しかし、三為契約では、物件を所有することがないので、在庫の保有リスクがありません。 三為契約における買主の注意点 三為契約を用いた不動産売買は、買主にとって以下のような注意点があります 利用できる融資が限られる 一般的な不動産取引では、物件の売買と同時に登記が行われるため、仕入れや販売、最終的な買主への決済、登記までの一連の取引が明確です。 一方で、三為契約の場合、不動産業者は売買契約を締結するものの、所有権登記は行われません。売主から買主へ物件の所有権が直接移転することから、取引全体の流れが把握しにくいという特徴があります。 このような特徴から、金融機関によって三為契約への融資を取り扱わないことも珍しくありません。 通常より割高な物件を購入する恐れがある 一般的な不動産取引では、売主と買主が双方確認できる売買価格にて合意して取引が行われます。 一方で三為契約の場合、買主は売主の売却価格を把握できず、売主も買主の購入希望価格を知りません。そのため、売主と買主の双方が適正価格を把握していないと、売主は割安に売却し、買主は割高に購入してしまう恐れがあります。 本人確認を徹底する 売主と買主の間に三為業者が入ることで、売主に疑義がある(身元詐称、行為能力制限者)ことを悪意で隠される、過失で見逃す場合でも所有権自体が覆る恐れがあります。売主の顔が直接見えない分、司法書士などにしっかりと双方の本人確認をしてもらいましょう。 また、宅建業者が三為業者として入ることで、不動産の隠れたる瑕疵は三為業者が負うことになるため、不動産取引における売主、買主双方のメリットにもなり得ます。 まとめ 不動産売買における三為契約は、違法な契約ではありません。ただし、一般的な不動産仲介とは仕組みが異なり、買主に不利益が生じる恐れもあります。不動産を購入する際は売買契約書の内容を十分に確認し、不明点を解消してから契約を締結しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 契約不適合責任とは?請求できる権利や期間について解説 不動産取引において、物件の引き渡し後に不具合が発覚する場合があります。物件が契約内容に適合しない場合、売主は買主に対して契約不適合責任を負います。不動産の購入を考えているのであれば、契約不適...記事を読む

  • 契約不適合責任とは?請求できる権利や期間について解説

    不動産取引において、物件の引き渡し後に不具合が発覚する場合があります。物件が契約内容に適合しない場合、売主は買主に対して契約不適合責任を負います。不動産の購入を考えているのであれば、契約不適合責任について理解を深めておくことが重要です。 この記事では、契約不適合責任の概要と買主と売主の権利関係について解説します。 契約不適合責任とは 契約不適合責任とは、売主から買主に売買の目的物が引き渡されたときに、契約に基づいて果たすべき義務が守られていないことを理由とする責任です。 契約内容に適合していないことは債務不履行に当たるので、債務不履行を利用とする契約の解除・損害賠償請求ができます。これに加えて、追完請求、代金減額請求の2つが認められており、全部で4通りの方法があります。詳細は後述します。 出典) ・独立行政法人 国民生活センター「誌上法学講座第2回 契約の内容が守られないとき(2)」 ・法務省「売買,消費貸借,定型約款などの契約に関するルールの見直し」 契約不適合責任によって買主が請求できる権利 契約不適合責任により買主が請求できる権利は次の4つです。 追完請求権 代金減額請求権 損害賠償請求権 解除権 契約不適合責任特有の権利は、追完請求権と代金減額請求権です。損害賠償請求権と解除権については、債務不履行を理由とした請求権となります。それぞれの内容を確認していきましょう。 出典)独立行政法人 国民生活センター「誌上法学講座第2回 契約の内容が守られないとき(2)」P.32~33 追完請求権 追完請求権とは、引き渡された目的物に欠陥があるなど契約内容に適合しない場合に、売主に対して修補(建物の修繕など)や代替物・不足分の引き渡しを請求できる権利です。 買主に不相当な負担を課さなければ、売主は買主が請求した方法とは異なる方法で追完することも認められています。なお、買主の責めに帰すべき事由(買主の故意や過失)によって契約に適合しない場合、追完請求権は認められません。 ・民法562条(買主の追完請求権) 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。(後略) ・民法564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使) 前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。 出典) ・民法(e-Gov法令検索) ・独立行政法人 国民生活センター「誌上法学講座第2回 契約の内容が守られないとき(2)」P.33 代金減額請求権 代金減額請求権とは、引き渡された目的物が契約に適合しない場合に、適合しない分の代金の減額を請求する権利です。 基本的には、買主は契約不適合を知った時から1年以内に売主に履行の追完請求を行い、その期間内に売主が追完請求に応じなかったときに代金減額請求ができます。ただし、履行の追完ができないときは、催告せずに代金減額請求が可能です。 追完請求権と同様に、買主の責めに帰すべき事由によって契約に適合しない場合は、代金減額請求権は認められません。 民法563条(買主の代金減額請求権) 前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。 出典)民法(e-Gov法令検索) 損害賠償請求権および解除権 引き渡された目的物が契約に適合せず、売主に帰責事由がある場合は損害賠償を請求できます。買主は契約不適合を知った時から1年以内に売主に追完請求を行い、その期間内に売主が追完請求に応じない場合は契約解除が可能です。 民法541条(催告による解除) 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。 出典)民法(e-Gov法令検索) 債務の全部が履行されないなど、契約不適合の内容によっては催告することなく、直ちに契約を解除できます。 民法542条(催告によらない解除) 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。 債務の全部の履行が不能であるとき。 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。 (後略) 出典)民法(e-Gov法令検索) なお、損害賠償や契約解除は債務不履行の一般則に従って行えることが明示されました。 民法564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使) 前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。 出典)民法(e-Gov法令検索) 買主の救済方法 買主に帰責事由あり 双方とも帰責事由なし 売主に帰責事由あり 損害賠償 できない できない できる 解除 できない できる できる 追完請求 できない できる できる 代金減額 できない できる できる ※赤字は2020年に法改正がされた部分 出典)法務省「売買,消費貸借,定型約款などの契約に関するルールの見直し」P.3 契約不適合責任の対象と期間 例えば、不動産売買契約後、住宅の引き渡しを受けてから床が傾いたり、雨漏りがしたりするなど後から建物の欠陥に気が付いた場合、買主は下記の期間であれば、売主(請負業者)に対して前述の1~4の請求権を行使できます。 請負業者は、契約どおりに建物や土地の工作物等を作り、注文者に引き渡す義務があり、一定の期間、瑕疵(不完全な点)があれば対応しなければなりません。 民法562条(買主の追完請求権) 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。 (後略) 出典)民法(e-Gov法令検索) なお、住宅の場合は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」及び「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」により、住宅の構造耐力上主要な部分等については瑕疵担保責任を追及できることとなっています。 法律 契約不適合責任の対象と期間 契約書で定めた期間との関係 住宅の品質確保の促進等に関する 法律第95条、同法第97条 新築住宅の構造耐力上主要な部分等 (基礎、屋根、柱、床、壁、雨水侵入防止部分など)について、 業者に対して10年の瑕疵担保責任を義務付け。 瑕疵担保責任の期間は20年まで延長できる。(延長は任意) 構造耐力上主要な部分等は、 契約で10年より短い期間を定めても無効。 民法166条(債権等の消滅時効) 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 1.債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。 2. 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から 20年間行使しないときは、時効によって消滅する 民法637条 (目的物の種類又は品質に関する 担保責任の期間の制限) 注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、 注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、 報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。 出典)埼玉県庁「契約不適合責任(瑕疵担保責任)」 契約不適合責任における売主の免責 契約時に特約を締結している場合は、売主の契約不適合責任の免責(責任の免除)が認められます。ただし、不適合があることを売主が知りながら、契約までに買主に説明をしなかった場合は無効です。 民法572条(担保責任を負わない旨の特約) 売主は、第562条第1項本文又は第565条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。 出典)民法(e-Gov法令検索) 契約不適合責任の免責条件は売主によって異なります。売主が宅建業者の場合は、2年間は免責が無効となります。 ただし、売主が個人の場合は契約不適合責任をそのまま負うことが困難な場合もあることから、一般的に不動産売買契約書の契約不適合責任の条項に以下のように定めることが一般的に行われています。 民法の規定と異なる契約条項の例※1 売主の契約不適合責任を負う期間※2を一定期間(あるいは負わない※3)とする旨 売主が負う契約不適合責任は、修補請求に限り、買主は、代金減額請求、損害賠償請求ができないとする旨 買主の契約不適合による契約解除は、買主の契約目的が達成できない場合に限る旨 買主が契約時に契約不適合を知っていた場合、売主は契約不適合責任を負わない旨 ※1 売主が宅建業者の場合、担保責任を負う期間について目的物の引渡しの日から2年以上となる特約を除き、買主(買主が宅建業者の場合を除く)に不利となる特約を付すことはできない(宅地建物取引業法40条) ※2 買主は、契約不適合があることを知ってから1年以内にその旨を売主に通知しなければ、担保請求(履行の追完、代金の減額、損害賠償、契約の解除)をすることができない。また、請求権は、権利行使ができることを知った時から5年、目的物の引渡し時から10年で時効消滅する(民法566条、166条) ※3 売主が契約不適合責任を負わない旨の特約を置くことは可能。ただし契約不適合があることを知りながら買主に告げなかった場合には、売主はその責任を免れることはできない(民法572条) 出典)独立行政法人生活国民生活センター「第8回 不動産売買契約書(その2)」 免責条項が多いほど売主が有利となるので、契約時は特約の内容を確認しておくことが重要です。 まとめ 引き渡された目的物が契約内容に適合しない場合、売主は買主に対して契約不適合責任を負うことになります。民法改正により、従来の瑕疵担保責任から買主の権利や期間制限などが見直されています。契約後のトラブルを防ぐためにも、不動産取引を行う際は契約不適合責任の免責条項を必ず確認しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 期限の利益とは、住宅ローンを借り入れた際などに生じる債務者の利益のことです。債権者は期限が到来するまで履行を請求できず、債務者にとっては債務に猶予が生まれるため“利益”となります。一方で、契...記事を読む

    2024.07.17用語
  • フラット35を利用するために必要な適合証明書とは?

    マイホームを建築・購入する際に、全期間固定型住宅ローンのフラット35を利用するには「適合証明書」の取得が必要です。適合証明書とはどのような書類で、どうすれば取得できるのでしょうか。 この記事では、フラット35の契約時に必要な適合証明書の概要と物件検査の流れ、注意点について解説します。 フラット35の適合証明書とは 実は、「適合証明書」という名称の書類は2種類あります。一つは、今回解説するフラット35の適合証明書で、住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合した住宅であることを証明する書類です。もう一つは、都市計画法の許可が不要である特定の建築行為であることや、開発許可済地における建築行為の際に、建築計画が開発許可の内容に適合していることなどを証明する書面です。 フラット35を契約する際は、取扱金融機関へ住宅金融支援機構が定める適合証明書を提出しなくてはなりません。第三者である適合証明検査機関、または適合証明技術者(適合証明技術者は中古住宅・借り換え対象の住宅のみ)による物件検査の結果、技術基準を満たしていれば適合証明書が発行される仕組みです。 出典)【フラット35】新築住宅の物件検査 適合証明書発行業者の一覧はこちらをご確認ください。 参考)住宅金融支援機構「適合証明機関一覧」 フラット35の適合証明書発行のための物件検査 フラット35の適合証明書を取得するために受ける物件検査は、新築住宅と中古住宅で手続きが異なります。 新築住宅の場合 新築住宅の物件検査の一般的な流れは以下のとおりです。 sup { font-size: 0.65em; vertical-align: super; } 設計検査 中間現場検査※ 竣工現場検査 適合証明書の交付  ※中間現場検査は一戸建てのみ 設計検査では、設計図面や仕様書などの書類をもとに、フラット35の技術基準を満たしているかを確認されます。新築戸建て住宅の場合、現場検査は2回です。1回目の中間現場検査は屋根工事が完了した時点以降に、2回目の竣工現場検査はすべての工事が完了した時点で行われます。 いずれも、目視できる範囲で技術基準に適合しているかをチェックされます。なお、新築マンションの場合は、中間現場検査の実施がありません。これらの検査に合格すると、適合証明書が交付されます。 また、新築住宅では、建築基準法に基づく検査済証が交付されていることも確認項目です。検査済証は、建物が完成した後に行われる検査後に発行されるもので検査済証の再発行はできないので注意しましょう。 出典) ・【フラット35】新築住宅の物件検査 ・【フラット35】技術基準・検査ガイドブック ・座間市「1 建築確認済証と検査済証について」 中古住宅の場合 中古住宅の物件検査は次の2つです。 書類審査 現地調査 書類審査では、設計図面や登記事項証明書などをもとに、フラット35の技術基準を満たしているかを確認されます。現地調査では、住宅の現状が技術基準に適合しているかを目視等で確認されます。 書類審査と現地調査に合格すれば、適合証明書が交付される仕組みです。 出典)【フラット35】中古住宅の物件検査の概要 なお、以下2つのいずれかに該当する中古住宅の場合、物件検査の省略できます。 1.中古マンションらくらくフラット35 フラット35の技術基準に適合していることを、あらかじめ確認した中古マンションです。物件情報検索サイト「中古マンションらくらくフラット35」を利用すれば、該当するマンションを検索できます。 2.一定の要件を満たす中古住宅 下表の1~4の中古住宅については、それぞれ対応する「【フラット35】中古住宅に関する確認書」を取扱金融機関に提出することで、物件検査を省略できます。また、下表の右欄に示す【フラット35】S及び【フラット35】維持保全型を利用できます。 ※住宅金融支援機構と協定を締結した団体が運営する中古住宅の登録制度の対象となる住宅 対象となる中古住宅 利用できる【フラット35】S 及び【フラット35】維持保全型 1 築年数が20年以内の中古住宅で、 長期優良住宅の認定を受けている住宅 ・【フラット35】S(金利Aプラン) ・【フラット35】維持保全型 2 安心R住宅である中古住宅で、 新築時に【フラット35】を利用している住宅※1 ・【フラット35】S(金利Bプラン) ・【フラット35】維持保全型 3 築年数が10年以内の中古住宅で、 新築時に【フラット35】を利用している住宅※1 ・【フラット35】S(金利Bプラン) 4 団体登録住宅※2である中古住宅で、当該団体があらかじめ 【フラット35】の基準に適合することを確認した住宅 ・【フラット35】S(ZEH・金利Aプラン・金利Bプラン) ・【フラット35】維持保全型 (注)基準に適合する場合のみ ※1 新築時のフラット35の融資が【フラット35(保証型)】であった場合、この確認書を利用して借入申込みができる金融機関は売主が新築時にフラット35(保証型)を利用した金融機関に限られます。 ※2 団体登録住宅とは、機構と協定を締結した団体が運営する中古住宅の登録制度の対象となる住宅です。 なお、上記の要件を満たす中古住宅は、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる「フラット35S」及び【フラット35】維持保全型を利用できます(金利引下げメニューは住宅によって異なる)。 関連記事はこちらフラット35Sとは?種類や金利、利用条件について解説 フラット35の技術基準となる項目 フラット35では、新築住宅と中古住宅でそれぞれ技術基準が定められています。 新築住宅の基準項目 新築住宅の基準項目とその概要は以下のとおりです。 一戸建て住宅など(※1) マンション 接道 原則として一般の道に2m以上接すること。 住宅の規模(※2) 70㎡以上 30㎡以上 住宅の規格 原則として2以上の居住室(家具等で仕切れる場合でも可)、炊事室、便所及び浴室の設置 併用住宅の床面積 併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上 戸建型式など 木造の住宅(※3)は一戸建てまたは連続建てのみ 断熱構造(※4) 次のいずれかに該当すること。 (1)断熱等性能等級4以上、かつ、一次エネルギー消費量等級4以上 (2)建築物エネルギー消費性能基準(別途、結露防止措置の基準あり) 住宅の構造 耐火構造もしくは準耐火構造(※5)であることまたは耐久性基準(※6)に適合すること。 配管設備の点検 点検口などの設置 共用配管を構造耐力上主要な壁の内部に設置しないこと。 区画 住宅相互間等を1時間準耐火構造などの界床・界壁で区画 床の遮音構造 - 界床を厚さ15cm以上(RC造の場合) 維持管理基準 管理規約 - 管理規約が定められていること。 維持管理基準 長期修繕計画 - 計画期間20年以上 ※1. 一戸建て住宅等には、連続建て住宅及び重ね建て住宅を含みます。 ※2. 住宅の規模とは、住宅部分の床面積をいい、車庫や共用部分(マンションの場合)の面積を除きます。 ※3. 木造の住宅とは、耐火構造の住宅及び準耐火構造(※5)の住宅以外の住宅をいいます。 ※4. 2023年4月1日以降に設計検査の申請を行う住宅であっても、建築確認検査を受けた日(建築確認検査不要な住宅は着工日)が2023年3月31日以前の場合は、従前の基準(断熱等性能等級2相当)を適用できます。 ※5. 準耐火構造には、省令準耐火構造を含みます。 ※6. 耐久性基準とは、基礎の高さ、床下換気孔等に関する基準です。 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】新築住宅の技術基準の概要」 後述する中古住宅にはありませんが、新築住宅では断熱構造や配管設備の点検、区画などが基準項目に含まれています。 中古住宅の基準項目 中古住宅の基準項目とその概要は以下のとおりです。 一戸建て住宅など(※1) マンション(※2) 接道 原則として一般の道に2m以上接すること。 住宅の規模(※3) 70㎡以上(共同建ての住宅は30㎡以上(※4)) 30㎡以上(※4) 住宅の規格 原則として2以上の居住室(家具等で仕切れる場合でも可)ならびに炊事室、便所及び浴室の設置 併用住宅の床面積 併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上 戸建型式等 木造の住宅(※5)は一戸建てまたは連続建てに限る 住宅の構造 耐火構造、準耐火構造(※6)または耐久性基準(※7)に適合 住宅の耐震性 建築確認日が昭和56年6月1日以後(※8)であること (建築確認日が昭和56年5月31日以前の場合(※9)は、耐震評価基準などに適合) 劣化状況 土台、床組等に腐朽や蟻害がないこと等 外壁、柱等に鉄筋の露出がないこと等 維持管理基準 管理規約 - 管理規約が定められていること。 維持管理基準 長期修繕計画 - 計画期間20年以上 ※1. 一戸建て住宅等には、連続建て住宅、重ね建て住宅及び地上2階以下の共同建ての住宅を含みます。 ※2. マンションとは、地上3階以上の共同建ての住宅をいいます。 ※3. 住宅の規模とは、住宅部分の床面積をいい、車庫やバルコニー等は含みません。 ※4. 共同建ての住宅の場合は、建物の登記事項証明書による確認においては、28.31㎡以上あれば構いません。 ※5. 木造の住宅とは、耐火構造の住宅及び準耐火構造(※6)の住宅以外の住宅をいいます。 ※6. 準耐火構造には、省令準耐火構造を含みます。 ※7. 耐久性基準とは、基礎の高さ、床下換気孔等に関する基準です。 ※8. 建築確認日が確認できない場合は、新築年月日(表示登記における新築時期)が昭和58年4月1日以後とします。 ※9. 建築確認日が確認できない場合は、新築年月日(表示登記における新築時期)が昭和58年3月31日以前とします。 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】中古住宅の技術基準の概要」 中古住宅は過去に人が居住したことがあるため、住宅の耐震性や劣化状況が基準項目に含まれています。 フラット35の適合証明書のメリットや注意点 適合証明書のメリット フラット35を利用するために、わざわざ物件検査を受けて適合証明書を取得しなくてはならないことを面倒だと思うかもしれません。しかし、第三者の物件検査を受けて合格し、所定の技術基準をクリアしていることが証明されれば、住宅を取得するうえで安心感につながります。 今後長い間マイホームに住むことを考えると、手間や費用をかけるだけの価値はあるのではないでしょうか。 適合証明書の注意点 適合証明書の発行にかかる費用と有効期限 フラット35の適合証明書の発行にかかる物件検査費用や発行までにかかる時間は、依頼した会社によって異なります。適合証明書がないと契約ができないため、スケジュールに余裕をもって物件検査の申請を行うことが大切です。 適合証明書の有効期限 フラット35の適合証明書には有効期限があります。新築住宅は、竣工から2年以内に借入れの申し込みをする必要があるため、適合証明書も竣工から2年以内に借入れの申し込みを行った場合のみ有効です。 中古住宅の場合、適合証明書の有効期限は以下のとおりです。 一戸建て:現地調査実施日から1年間 マンション(竣工から5年超):現地調査実施日から3年間 マンション(竣工から5年以内):現地調査実施日から5年間 また、物件検査が不合格で、適合証明書を発行できなくても費用はかかる点にも注意しましょう。 まとめ フラット35を利用するには、物件検査を受けて適合証明書を取得する必要があります。費用はかかりますが、第三者の物件検査を受けて合格し、所定の技術基準を満たしていることが証明されれば、住宅を取得するうえで安心感につながります。 物件検査の依頼先がわからない場合は、不動産会社や建築会社などの専門家に相談しましょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 フラット35の審査基準を徹底解説! フラット35は、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローンです。借入時に返済終了までの金利が確定するため、返済計画を立てやすく、金利変動リスクへの備えとなります。ただし、フラット3...記事を読む

  • 代位弁済とは?仕組みや流れ、考えられるリスクについて解説

    ローンの返済が返済期日に間に合わず滞納した場合、金融機関などから代位弁済の通知が届く場合があります。代位弁済という言葉を聞いたことはあっても、その意味を正しく理解している人は少ないのではないでしょうか。 この記事では、代位弁済の仕組みや流れ、リスクについて詳しく解説します。 代位弁済とは まずは、代位弁済の仕組みと種類について確認していきましょう。 代位弁済の仕組み ※筆者作成 代位弁済とは、保証会社などの第三者がローンを滞納している債務者に代わって、金融機関に一括返済することです。代位弁済が行われた後は、債権者は金融機関から保証会社に代わります。 代位弁済によって、ローン残債(借金)がなくなるわけではなく、代位弁済を行った保証会社には求償権が生じます。求償権とは、代位弁済を行った場合に、債務者に対してその弁済額の返還を求める権利です。 つまり、代位弁済が行われると債務者は、ローンの返済を保証会社に行う必要があります。代位弁済は、債務者の返済を先延ばしにするものではなく、金融機関等の債権者の貸し倒れリスクを下げ、お金を貸しやすくするための仕組みといえるでしょう。 債権法の改正について 明治29年(1896年)に民法が制定された後、債権関係の内容については約120年間ほとんど改正がされていなかったことから、社会・経済の変化への対応と実務で通用している基本的なルールを適切に明文化するため、2020年4月1日に債権法が改正されました。 代位弁済に関わる旧法での問題点は以下の2点です。 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができない 債権者は利害関係を有しない第三者からの弁済を拒むことができない これらの問題点に対し、改正後の民法では、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったとしても、債権者が受けた弁済は有効となりました。また、見知らぬ第三者からの弁済を行いたい旨の申し出を債権者は拒絶できるようになりました。 なお、旧法での「利害関係を有しない第三者」の表現は「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」に変更されました。 出典) ・民法第474条(第三者弁済) ・法務省「弁済に関する見直し(第三者弁済)」 代位弁済が行われるときの流れ 代位弁済が行われる場合は、一般的には以下のような流れで手続きが進められます。 貸主から借主への督促 ローンを滞納すると、まずは貸主である金融機関から借主に対して督促が行われます。電話や督促状の送付などの方法が一般的です。督促状が届くまでの期間は金融機関によって異なり、ホームページの「よくある質問等」に記載されている場合もあるので、確認してみるといいでしょう。 この段階で適切に対応し、滞納しているローンを返済すれば代位弁済を回避できるでしょう。 保証会社が貸主に代位弁済 貸主から借主へ督促を行っても返済がなされない場合、貸主が保証会社に対して借金残高の返済を求める代位弁済が行われます。なお、このタイミングで「期限の利益喪失」の予告通知も届きます。 関連記事はこちら期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 保証会社が借主へ返済の請求 代位弁済が行われると、債務者は金融機関から保証会社に代わります。保証会社から「代位弁済通知」が届き、借主に対して返済の請求が行われます。 代位弁済された時の時効はいつ? 代位弁済の消滅時効期間は、原則、権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時から10年です。2020年3月以前は、職業別や商事などで起算点が異なっていましたが、2020年4月の民法改正により、シンプルに統一化されました。 民法上は以下のように定めています。 民法第166条(債権等の消滅時効) 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。 二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。 2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。 出典)民法第166条「債権等の消滅時効」 権利を行使することができることを知った時と、権利を行使することができる時とが基本的に同一時点である場合の消滅時効期間は下記の図のとおりです。 【例】売買代金債権、飲食料債権、宿泊料債権など契約上の債権 ※筆者作成 出典)法務省「消滅時効に関する見直し」 代位弁済で生じるリスク 代位弁済が行われると、債務者には次のようなリスクが生じます。 一括返済の請求 代位弁済が行われ、債権者が保証会社に代わると残債の一括返済を求められます。数百万円~数千万円のローンが残っている場合、一括で返済するのは難しいでしょう。 遅延損害金の発生 遅延損害金とは、ローンを期日までに返済できなかったときに発生する賠償金です。代位弁済が行われるということは、滞納期間が長期化し、遅延損害金の額も高額になっている恐れが高いでしょう。 滞納している元本と利息だけでなく、遅延損害金も含めて返済する必要があります。 保証人への督促 ローンを組む際に保証人を設定している場合、代位弁済を行った保証会社は債務者本人だけでなく、保証人にも督促を行います。債務者が返済できない場合、保証人が一括返済を求められる恐れもあります。 代位弁済が行われたら、保証人と今後の返済について相談する必要があるでしょう。 信用情報の登録 代位弁済が行われると、信用情報機関に事故情報が登録されてしまいます。具体的には、「クレジットカードの新規発行ができない」「新たなローンを借りられない」などの影響が出ます。 なお、指定信用情報機関は以下の3つです。 株式会社日本信用情報機構(JICC) 株式会社シー・アイ・シー(CIC) 全国銀行個人信用情報センター 財産の差し押さえ 保証会社からの請求に対応せず放置していると、最終的には強制執行により財産の差し押さえが行われます。給与や預貯金、生命保険、不動産、自動車など、幅広い財産が差し押さえの対象となります。 まとめ ローンを滞納して代位弁済の通知を受けた場合は、弁護士に相談するといいでしょう。また、不動産担保ローンを提供している金融機関や任意売却を扱う不動産会社に相談することで、ローン返済の資金を調達できる可能性もあります。 ローンを組む際は現在の収入や支出を正確に把握し、無理のない返済計画を立てることが大切です。万が一、返済が困難になった場合は放置せず、早めに専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 債権回収会社(サービサー)とは?仕組みや債権回収方法について解説 債権回収会社(サービサー)とは、金融機関等に代わって債権の管理や回収を行う民間業者のことです。ローンの返済が困難になると、サービサーとのやり取りが発生する場合があります。 この記事では、サー...記事を読む

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