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ローンの返済が返済期日に間に合わず滞納した場合、金融機関などから代位弁済の通知が届く場合があります。代位弁済という言葉を聞いたことはあっても、その意味を正しく理解している人は少ないのではないでしょうか。 この記事では、代位弁済の仕組みや流れ、リスクについて詳しく解説します。 代位弁済とは まずは、代位弁済の仕組みと種類について確認していきましょう。 代位弁済の仕組み ※筆者作成 代位弁済とは、保証会社などの第三者がローンを滞納している債務者に代わって、金融機関に一括返済することです。代位弁済が行われた後は、債権者は金融機関から保証会社に代わります。 代位弁済によって、ローン残債(借金)がなくなるわけではなく、代位弁済を行った保証会社には求償権が生じます。求償権とは、代位弁済を行った場合に、債務者に対してその弁済額の返還を求める権利です。 つまり、代位弁済が行われると債務者は、ローンの返済を保証会社に行う必要があります。代位弁済は、債務者の返済を先延ばしにするものではなく、金融機関等の債権者の貸し倒れリスクを下げ、お金を貸しやすくするための仕組みといえるでしょう。 債権法の改正について 明治29年(1896年)に民法が制定された後、債権関係の内容については約120年間ほとんど改正がされていなかったことから、社会・経済の変化への対応と実務で通用している基本的なルールを適切に明文化するため、2020年4月1日に債権法が改正されました。 代位弁済に関わる旧法での問題点は以下の2点です。 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができない 債権者は利害関係を有しない第三者からの弁済を拒むことができない これらの問題点に対し、改正後の民法では、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったとしても、債権者が受けた弁済は有効となりました。また、見知らぬ第三者からの弁済を行いたい旨の申し出を債権者は拒絶できるようになりました。 なお、旧法での「利害関係を有しない第三者」の表現は「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」に変更されました。 出典) ・民法第474条(第三者弁済) ・法務省「弁済に関する見直し(第三者弁済)」 代位弁済が行われるときの流れ 代位弁済が行われる場合は、一般的には以下のような流れで手続きが進められます。 貸主から借主への督促 ローンを滞納すると、まずは貸主である金融機関から借主に対して督促が行われます。電話や督促状の送付などの方法が一般的です。督促状が届くまでの期間は金融機関によって異なり、ホームページの「よくある質問等」に記載されている場合もあるので、確認してみるといいでしょう。 この段階で適切に対応し、滞納しているローンを返済すれば代位弁済を回避できるでしょう。 保証会社が貸主に代位弁済 貸主から借主へ督促を行っても返済がなされない場合、貸主が保証会社に対して借金残高の返済を求める代位弁済が行われます。なお、このタイミングで「期限の利益喪失」の予告通知も届きます。 関連記事はこちら期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 保証会社が借主へ返済の請求 代位弁済が行われると、債務者は金融機関から保証会社に代わります。保証会社から「代位弁済通知」が届き、借主に対して返済の請求が行われます。 代位弁済された時の時効はいつ? 代位弁済の消滅時効期間は、原則、権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時から10年です。2020年3月以前は、職業別や商事などで起算点が異なっていましたが、2020年4月の民法改正により、シンプルに統一化されました。 民法上は以下のように定めています。 民法第166条(債権等の消滅時効) 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。 二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。 2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。 出典)民法第166条「債権等の消滅時効」 権利を行使することができることを知った時と、権利を行使することができる時とが基本的に同一時点である場合の消滅時効期間は下記の図のとおりです。 【例】売買代金債権、飲食料債権、宿泊料債権など契約上の債権 ※筆者作成 出典)法務省「消滅時効に関する見直し」 代位弁済で生じるリスク 代位弁済が行われると、債務者には次のようなリスクが生じます。 一括返済の請求 代位弁済が行われ、債権者が保証会社に代わると残債の一括返済を求められます。数百万円~数千万円のローンが残っている場合、一括で返済するのは難しいでしょう。 遅延損害金の発生 遅延損害金とは、ローンを期日までに返済できなかったときに発生する賠償金です。代位弁済が行われるということは、滞納期間が長期化し、遅延損害金の額も高額になっている恐れが高いでしょう。 滞納している元本と利息だけでなく、遅延損害金も含めて返済する必要があります。 保証人への督促 ローンを組む際に保証人を設定している場合、代位弁済を行った保証会社は債務者本人だけでなく、保証人にも督促を行います。債務者が返済できない場合、保証人が一括返済を求められる恐れもあります。 代位弁済が行われたら、保証人と今後の返済について相談する必要があるでしょう。 信用情報の登録 代位弁済が行われると、信用情報機関に事故情報が登録されてしまいます。具体的には、「クレジットカードの新規発行ができない」「新たなローンを借りられない」などの影響が出ます。 なお、指定信用情報機関は以下の3つです。 株式会社日本信用情報機構(JICC) 株式会社シー・アイ・シー(CIC) 全国銀行個人信用情報センター 財産の差し押さえ 保証会社からの請求に対応せず放置していると、最終的には強制執行により財産の差し押さえが行われます。給与や預貯金、生命保険、不動産、自動車など、幅広い財産が差し押さえの対象となります。 まとめ ローンを滞納して代位弁済の通知を受けた場合は、弁護士に相談するといいでしょう。また、不動産担保ローンを提供している金融機関や任意売却を扱う不動産会社に相談することで、ローン返済の資金を調達できる可能性もあります。 ローンを組む際は現在の収入や支出を正確に把握し、無理のない返済計画を立てることが大切です。万が一、返済が困難になった場合は放置せず、早めに専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 債権回収会社(サービサー)とは?仕組みや債権回収方法について解説 債権回収会社(サービサー)とは、金融機関等に代わって債権の管理や回収を行う民間業者のことです。ローンの返済が困難になると、サービサーとのやり取りが発生する場合があります。 この記事では、サー...記事を読む
債権回収会社(サービサー)とは、金融機関等に代わって債権の管理や回収を行う民間業者のことです。ローンの返済が困難になると、サービサーとのやり取りが発生する場合があります。 この記事では、サービサーの概要や仕組み、債権回収の方法などについて解説します。 債権回収会社(サービサー)とは サービサーとは、金融機関等から委託を受け、または譲り受けて、特定金銭債権の管理回収を行う法務大臣の許可を得た民間の債権管理回収専門業者です。(特定金銭債権の詳細は後述します。) 例えば、フラット35の融資を受けている債務者が全額繰上償還請求を行ったときの回収業務は、住宅金融支援機構が行うのではなく、以下のサービサーが行うものとされています。 エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社 オリックス債権回収株式会社 株式会社住宅債権管理回収機構 三菱HCキャピタル債権回収株式会社 出典)住宅金融支援機構「委託先債権回収会社について(機構が行う個人向け融資)」 債権回収業務は、従来は弁護士法の規定により、弁護士または弁護士法人以外の者が債権管理回収業務を行うことはできませんでした。しかし、1991年のバブル崩壊により発生した不良債権の処理等を促進するため、1999年に弁護士法の特例として「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」が施行され、債権管理回収業が民間業者に解禁されました。 出典)法務省「債権回収会社(サービサー)制度 -債権管理回収業に関する特別措置法-」 債権者である金融機関等にとっては、サービサーを利用することで回収交渉などの業務負担の軽減、債権譲渡による不良債権の解消などが期待できます。 特定金銭債権とは 特定金銭債権とは、サービサーが取り扱うことができる以下のような金銭債権です。 <主な特定金銭債権> 金融機関等が有する、または有していた貸付債権 リース契約・クレジット契約に基づく金銭債権 資産の流動化に関する金銭債権 ファクタリング業者が有する金銭債権 法的倒産手続中の者が有する、または有していた金銭債権 求償権その他の債権 出典)法務省「債権管理回収業に関する特別措置法の概要」 特定金銭債権の範囲は、サービサー法によって規定されています。不良債権の処理等を促進する観点から、サービサーが取り扱える金銭債権の範囲を限定しています。 債権回収会社(サービサー)の種類 法務省の資料によれば、2023年12月31日時点で、営業を行っているサービサー73社に調査した結果、出資母体等別の内訳は以下のとおりとなっています。 金融機関系(20社) 信販・貸金・リース系(16社) 外資系(4社) 不動産・独立系・その他(33社) 出典)法務省「債権回収会社(サービサー)の業務状況について(概要)」 債権管理回収業の営業許可を受けている業者は、法務省のホームページで確認でき、2024年4月1日時点では、72社となっています。 出典)法務省「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」 債権回収会社(サービサー)の仕組み サービサーはどのように運営され、どのような方法で債務者から債権を回収しているのでしょうか。ここでは、サービサーの仕組みと債権回収の方法について紹介します。 サービサーの仕組み ※筆者作成 出典)法務省「債権管理回収業に関する特別措置法の仕組み」 サービサーとして債権管理回収業を行うには、法務大臣の許可が必要です。許可を受けるには、以下の3つの要件を満たさなくてはなりません。 資本金が5億円以上あること 常務に従事する取締役の1名以上に弁護士が含まれていること 暴力団員等反社会的勢力の関与がないこと 法務大臣が日本弁護士連合会に意見を聴取し、弁護士会が取締役となる弁護士を推薦することで、サービサーの業務全般を適正に監督しています。 暴力団員等の排除については、法務大臣が警察庁長官に意見聴取、警察庁長官がサービサーに立入検査や援助等を行う仕組みになっています。 債権回収会社(サービサー)の業務 サービサーは金融機関等からの委託、債権譲渡を受けて次のような業務を行います。 債権管理 債務者への督促 法的手段の検討 債権回収後の処理 債権者である金融機関等に代わって、担当窓口として債務者への債権額の確認、返済交渉などを行います。債権を譲り受けた場合は債権者として自ら回収を行い、状況によっては法的手段も検討することになります。 サービサーとファクタリングの違い サービサーは前述のとおり、銀行や貸金業者などの金融会社が特定金銭債権の回収業務を委託され、後から債権を回収するものです。これに対し、ファクタリングは、企業がファクタリング会社に売掛債権(売掛金など)を買い取ってもらうことで、本来の回収より前に資金調達を行えるという違いがあります。 詳しくは関連記事をご確認ください。 関連記事はこちらファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介 サービサーと債務者の関係 サービサーと債務者の関係は、債権者から債権回収を委託されるか、債権を譲渡される(買い取る)かによって異なります。 金融機関等がサービサーに債権回収を委託する場合、サービサーが窓口として債務者と返済に関する交渉を行います。債権者は金融機関のまま変わりません。 金融機関等がサービサーに債権回収を委託する場合 ※筆者作成 一方、金融機関等がサービサーに債権を譲渡する場合、サービサーは債権者として債務者と回収交渉を行います。債権譲渡後、債務者は金融機関に対する返済義務はなくなりますが、サービサーへの返済義務が生じます。 金融機関等がサービサーに債権を譲渡する場合 ※筆者作成 債権回収会社(サービサー)の債権回収方法 サービサーは、次のような方法で債権回収を行います。 電話や面会での交渉 支払督促 内容証明郵便での督促 民事調停手続き 通常訴訟・少額訴訟 強制執行 まずは電話や書面などで通知が来るのが一般的です。その段階で対応しなければ、民事調停や訴訟などの法的手続きに移り、最終的には財産を差し押さえられるなどの強制執行が行われます。 ローン返済が滞った場合など、サービサーから通知が来たら、法務大臣の許可を受けている業者かどうかを確認しましょう。サービサーの名前をかたった業者による債権の架空請求などが発生しているため、心当たりのない請求には応じないことが大切です。 実際に返済が遅れているなど、サービサーからの通知に心当たりがある場合は、必要に応じて弁護士などの専門家に相談しながら返済について交渉するといいでしょう。 まとめ ローンの返済が困難となった場合、返済交渉の窓口が借入先である金融機関等から民間業者のサービサーに移る場合があります。 サービサーは債権回収の専門知識を有しており、通知を無視していると最終的には財産を差し押さえられる恐れがあります。サービサーから連絡がきたら、まずは法務大臣の許可を受けた登録業者であることを確認することが大切です。 そのうえで、自身だけで返済交渉をするのが難しい場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。
もし離婚をすることになった場合、財産分与をすることになるでしょう。円満に離婚を進めるためにも、財産分与の制度内容を知っておくことが大切です。 この記事では、財産分与の概要や対象となる財産、注意点などについて解説します。 財産分与とは 財産分与とは、夫婦が婚姻中に築いた財産を離婚する際、または離婚後に分けることです。財産分与は、離婚をした夫婦の一方が他方に対して財産を分与するように請求でき、次の3つの目的・性質があります。 夫婦が共同で築いた財産の公平な分配 離婚後の生活保障 離婚原因を作ったことへの損害賠償 「財産の公平な分配」が財産分与の基本的な考え方で、実際には「離婚後の生活保障」や「損害賠償」の要素も考慮しながら、財産の分け方を決めることになります。 財産分与は、離婚から2年の期間制限があります。例外はありますが、原則離婚から2年を経過した後は、相手の意思にかかわらず権利が消滅してしまうため、注意しましょう。 出典)法務省 財産分与 財産分与の対象となる財産 財産分与を円滑に進めるには、対象となる財産を把握しておく必要があります。財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦の協力によって築いた「共有財産」です。具体的には、以下のような財産が該当します。 預貯金 不動産 有価証券 保険 自動車 家具、家電 貴金属 退職金 年金 夫婦のいずれか一方の名義になっている場合でも、実際は夫婦で形成したものであれば財産分与の対象です。たとえば、婚姻中に購入した不動産が単独名義の場合でも、家事などを分担していれば、実質的には夫婦の共有財産といえるでしょう。 状況によっては、退職金や年金も財産分与の対象となる可能性があります。 年金について 年金分割とは、離婚した場合に婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。年金分割の方法は2種類あります。 合意分割制度 3号分割制度 合意分割制度とは、夫婦の一方または双方からの請求によって年金を分割する方法です。分割の割合は双方の合意、または裁判手続きによって決まります。 3号分割制度とは、国民年金第3号被保険者からの請求により、年金を分割する方法です。国民年金第3号被保険者とは、会社員や公務員などに扶養されている配偶者の方です。分割の割合は2分の1ずつとなります。 どちらの制度も原則として、離婚をした日の翌日から2年を経過すると請求できなくなるので注意が必要です。詳しくは、管轄する年金事務所に問い合わせましょう。 出典) ・法務省 年金分割 ・日本年金機構 離婚時の年金分割 不動産について 離婚をしたときに現在住んでいる自宅をどうするか、という点は重要です。しかし、夫婦の一方が自宅に住み続けたい場合には、高額な財産である不動産は「公平に分配する」という点で難しいかもしれません。 また、住宅ローンが残っている場合には、今の自宅に住み続けたい人とローンを借り入れている人が同じとも限らないので、その点でも財産分与は難しいかもしれません。 そのような時にリースバックが解決策になるかもしれません。リースバックとは、リースバック運営会社と、不動産の売買契約および賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けることができるサービスです。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 財産分与の対象とならない財産 次の財産は、夫婦で協力して築いた財産とはいえないため、財産分与の対象となりません。 結婚前から所有している財産:特有財産 夫婦の一方が結婚前から所有している「特有財産」は、財産分与の対象外で、民法上以下のように定義されています。 民法第762条(夫婦間における財産の帰属) 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。 2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。 出典)民法第762条(夫婦間における財産の帰属) たとえば、独身のときに購入した株式や自動車、貯めたお金などが該当します。結婚後に親族からの贈与・相続で取得した預貯金や不動産なども、特有財産として財産分与の対象外となります。 しかし、例外として特有財産のうち、結婚後に夫婦の協力で価値が維持・増加したと考えられるものは、その貢献度に応じて財産分与の対象に含まれる可能性があります。特有財産の財産分与について、話し合いで解決しない場合には、弁護士などの専門家に相談しましょう。 出典)民法第768条第3項(財産分与) 財産分与の額の算定方法 財産分与の額は、「夫婦間で協議」するか「家庭裁判所の調停」で決定します。 夫婦間で協議 まずは夫婦で協議し、分配割合や受け取る財産の種類などを決めます。分配割合は原則として2分の1ずつと考えられますが、夫婦で合意できるなら割合は問いません。 離婚後の生活保障、財産形成への寄与分(貢献度)を考慮して分配割合を決めるのも1つの方法です。また、夫婦の一方が主に離婚原因を作った場合は、解決金や損害賠償の要素を加味することも可能です。 いずれにせよ、夫婦でしっかりと話し合い、お互いに納得できる割合で合意できるのが理想といえます。 家庭裁判所の調停 夫婦で協議をしても合意に至らない場合、話し合いができない場合は、家庭裁判所に調停の申立てを行います(財産分与請求調停)。 調停手続きでは、共有財産の額や内容、財産形成に対する貢献度などの事情を夫婦双方から聴取し、必要資料等を確認したうえで解決案や助言などが提示されます。それでも合意できずに調停が成立しない場合は、裁判官の審判によって結論が示されます。 財産分与の注意点 離婚が決まって財産分与を行う場合は、次の点に注意しましょう。 話し合いは早めに始める 制度上は、離婚後に財産分与を請求することも可能です。しかし、離婚が成立すると話し合いの機会を作ることが難しくなり、共有財産を把握できなくなるリスクが高まります。また、離婚は、財産分与以外にも勤務先への報告や子どもの親権をどちらが持つかなど、やるべきことがたくさんあります。 財産分与をスムーズに進めるためにも、離婚が決まったら早めに話し合いを始めましょう。 証拠資料を準備する 財産分与では、証拠資料を準備することも重要です。資料があれば、どのような財産があるかを客観的に把握できます。万が一裁判になった場合は、必要に応じて資料を提出することが可能です。 預貯金なら通帳や取引履歴、不動産なら登記事項証明書など、財産の内容や価値を証明できる資料を準備しておきましょう。 専門家に相談する 離婚による財産分与は、どの財産が対象になるのか、価値はどのように考えればいいのかなどの専門知識が必要です。離婚準備を進める際に何から着手すべきか、わからない人もいるでしょう。 財産分与でトラブルを避けるには、弁護士などの専門家に相談する方法もあります。財産分与だけでなく、離婚協議書の作成などトータルでサポートを受けられます。 基本的に、財産分与で贈与税がかかることはありません。ただし、状況によっては「分与された財産の額が多すぎる」とみなされ、課税されることもあるため、税務についても相談しておくと安心です。 出典)国税庁 No.4414 離婚して財産をもらったとき まとめ 離婚による財産分与では、共有財産を2分の1ずつ分け合うのが原則ですが、夫婦で話し合って分配割合を決めることも可能です。話し合いで合意できない場合は、裁判所の手続きを通して決めることになります。 夫婦だけで財産分与を進めるのが難しい場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 ペアローンは離婚したらどうなる?よくある問題と対処法を紹介 住宅を購入する際にペアローンを組むことで、夫婦のどちらか一方が単独で住宅ローンを組むより借入額を増やせるなどのメリットがあります。しかし、ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、自宅の扱いや住...記事を読む
ファクタリングとは、事業者の資金調達方法の1つです。保有している売掛債権を早期に資金化できるため、うまく活用すれば資金繰りの改善が期待できます。一方で、ファクタリングを巡って悪質なトラブルも発生しているため、十分に注意して利用することが大切です。 この記事では、ファクタリングの仕組みや種類、注意点について詳しく紹介します。 ファクタリングとは ファクタリングとは、企業が保有している売掛債権(売掛金など)をファクタリング会社が一定の手数料を差し引いて買い取るサービスです。売掛債権の支払期日が到来する前に資金化できるため、事業者の資金調達方法として活用されることがあります。 ファクタリングの法的な位置づけは、「債券譲渡契約(売買契約)」です。金融機関からの融資とは異なり、貸借対照表上の借入金(負債)が増えません。 融資のように、毎月利子という形で負担は発生しませんが、ファクタリングを利用する際に手数料が発生するので、頻繁に利用すると業績や財務の悪化につながる恐れがあります。 ファクタリングの仕組み 基本的なファクタリングは「買取ファクタリング」と呼ばれており、これを応用した仕組みとして「保証ファクタリング」や「一括ファクタリング」があります。ここでは、3種類のファクタリングの概要と仕組みを紹介します。 買取ファクタリング 買取ファクタリングとは、ファクタリング会社がサービスを利用する企業から売掛債権を買い取り、企業に対して資金を提供する仕組みです。ファクタリング会社は、売掛債権から手数料を差し引いた金額をサービス利用企業に支払います。 保有している売掛債権を譲渡するため、売掛債権の回収リスクはファクタリング会社に移転します。売掛債権の管理や回収に関する業務を効率化できるのも特徴です。 ファクタリングで調達した資金で借入金などの有利子負債を返済すれば、オフバランス化によって、貸借対照表に影響を与えずに済むこともできるでしょう。 保証ファクタリング 保証ファクタリングとは、ファクタリング会社と保証契約を結ぶことで、売掛債権の回収について保証を受ける仕組みです。万が一売掛先が倒産した場合は、企業はその売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、決められた保証の範囲内で保証金額を受け取ります。 一般的な買取ファクタリングは、資金調達と売掛債権のリスク移転を同時に達成できるのに対し、保証ファクタリングは売掛債権のリスク移転のみとなります。 保証ファクタリングのスキームは次の2つです。 個別保証方式個々の売掛債権について保証額を決定し、回収の保証を行う 根保証方式個々の売掛先について保証極度額を決定し、その極度額の範囲内で回収の保証を行う(債権を特定しない) どちらの方式も、売掛債権の金額や極度額に応じて保証料が発生します。 一括ファクタリング 一括ファクタリングとは、企業は売掛債権の回収側ではなく、代金を支払うことで保証を受ける仕組みです。企業、仕入先(買掛先)、ファクタリング会社の3社が合意のうえ、仕入先が企業に対して保有している売掛債権をファクタリング会社に一括譲渡します。 企業は、売掛債権に関する代金をファクタリング会社に一括で支払います。仕入先ごとに支払っていた代金を、ファクタリング会社に一括で支払いが済むため、多数の仕入先を抱えている場合は支払業務の効率化につながるでしょう。 仕入先にとっては、売掛債権回収に関する事務の効率化、決済期日前の割引による迅速な資金調達が可能になります。 出典)経済産業省 国立国会図書館デジタルコレクション「地域金融人材育成システム開発事業 : 創業・起業促進型人材育成システム開発等事業」P.27~P.30 ファクタリングの注意点 事業者にとって、ファクタリングは資金調達や事務作業の効率化などが期待できる一方で、次のような注意点もあります。また、ファクタリングを悪用し、個人に対して貸付けを行う事例も発生しています。 偽装ファクタリング 偽装ファクタリングとは、貸金業登録のない業者がファクタリングを装って行う違法な貸付けです。次のようなケースに当てはまる場合は、偽装ファクタリングの恐れがあります。 売掛債権の買取代金が債権額に比べて著しく低額で、高額な手数料が差し引かれる 契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」であることが明記されていない 売掛先の倒産などで債権を回収できない場合、売主に債権の買戻しを行わせる 出典) ・日本貸金業協会【注意喚起】悪質な金融業者にご注意! ・金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起 これらはファクタリングに見えても、実態は貸付けです。貸金業登録がされていない無登録業者のヤミ金融であり、悪質な取り立てにあうリスクもあるため注意が必要です。 給与ファクタリング 給与ファクタリングとは、「給与(個人の賃金債権)の買取」を称して個人に行われる違法な貸付けです。「債権の買い取りなので金銭の貸付けではない」と説明していても、実態は貸付けであり、次のようなトラブルが発生しています。 年率換算で数百%にもなる高額な手数料の請求 本人や家族、勤務先への悪質な取り立て 高額な遅延損害金の請求 出典)独立行政法人国民生活センター 給与のファクタリング取引と称するヤミ金に注意!-高額な手数料や強引な取り立ての相談が寄せられています- 貸金業登録を行わずに給与の買い取りを行う業者は、違法なヤミ金融業者であるため、絶対に利用しないことが大切です。 ファクタリングの相談窓口 万が一ファクタリングを巡るトラブルに巻き込まれた場合は、一人で抱え込まず、以下の相談窓口に連絡しましょう。 相談窓口 電話番号 金融庁 金融サービス利用者相談室 0570-016811(IP電話からは03-5251-6811) 多重債務相談窓口連絡先 左記のリンク先を参照 日本貸金業協会貸金業相談・紛争解決センター 0570-051-051(IP電話からは03-5739-3861) 警察署 #9110(各都道府県警察相談ダイヤル) 消費者ホットライン 188 まとめ 本記事で紹介したように、ファクタリング自体は違法なものではなく、うまく活用すれば事業の資金繰りの改善が期待できます。一方で、ファクタリングを装った違法な貸付けを行うヤミ金融業者の存在が確認されており、金融庁や消費者庁などが注意喚起を行っています。 ファクタリングを利用する際は、少しでも不安がある場合は弁護士や専門家に相談し、業者が貸金業登録をしているか確認するなど、違法な取引に巻き込まれないよう十分に注意しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 事業資金の種類とそれぞれの特徴を紹介 事業資金は商売をする上で必要になる資金ですが、何に使うかによって呼び方が異なります。融資を受ける際には基本的に「どんなことに、いくら資金が必要なのか」を明確にさせなければ融資を受けられません...記事を読む
会社を退職した時に、退職金額はいくらなのか、どのようにもらえるのかご存じでしょうか。退職金制度の種類は複数あるため、自身が勤める会社がどんな制度を採用しているかを把握しておくことが重要です。 この記事では、退職金制度の種類とそれぞれの特徴について詳しく解説します。 退職金制度とは 退職金制度とは、企業に一定期間働いた場合、勤続年数や役職、在職期間中の業績などに応じてお金が支給される制度のことです。しかし、退職金制度は労働基準法での取り決めがないため、必ずしも企業に制度導入の義務はありません。 退職金制度がある場合は、会社の就業規則や退職金に関する規程に明記されているため、確認しておきましょう。 退職金の相場 厚生労働省の調査によると、定年退職者の勤続年数別の平均退職給付額は以下のとおりです。 勤続年数 退職一時金 企業年金現価額 退職給付額 20年 394.9万円 222.9万円 617.8万円 30年 634.8万円 815.7万円 1,450.5万円 40年 1,269.2万円 888.1万円 2,157.4万円 出典)厚生労働省「令和3年民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)」 勤続年数が長くなるにつれて、退職給付額(退職一時金と企業年金の合計)も増加していることがわかります。勤続年数が長ければ長いほど、受け取れる退職金も多くなるのが一般的といえるでしょう。 退職金の使い道 退職金は老後の生活設計に大きく関わります。安心して老後生活を送るには、あらかじめ退職金の使い道を検討し、計画的に使うことが重要です。ここでは、退職金の使い道として代表的なものを4つ紹介します。 住宅ローンの返済 住宅ローンがまだ残っている場合、退職金を使って一括返済するか、引き続き毎月返済していくかを検討するかもしれません。 住宅ローンを一括返済した場合、月々の返済負担はなくなりますが、残債によっては退職金がほとんど手元に残らない場合もあるでしょう。残債や残返済期間、退職後の勤労収入の有無などを考慮して、一括返済するべきか判断することが大切です。 関連記事はこちら老後資金を確保するための住宅ローン返済術(60歳以上編) 住み替え・リフォームの資金 退職金を受け取る年齢になると、ライフスタイルの変化により住み替えやリフォームを検討するかもしれません。「子どもが独立したので自宅をダウンサイジングしたい」、「自宅が古くなったので住み替えたい」などの希望に沿って、退職金を住み替えやリフォーム資金に充てられます。 リフォームでは補助金が出る場合もあるほか、60歳以上の住宅ローンであるリ・バース60などを活用すれば手元資金を残すこともできます。いずれにしてもまとまったお金が必要になるので、計画的に行いましょう。 関連記事はこちらリ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 老後の生活資金 退職金は、老後の生活費として残しておくと安心です。特に公的年金だけで生活するのが難しい場合、退職金は重要な老後の生活資金になります。 老後は娯楽費などを含めた日々の生活費に加えて、事故や病気、介護などでまとまった資金が必要になることもあるため、ゆとりをもって資金を確保することが大切です。 関連記事はこちら夫婦の老後資金はいくら必要?足りない時の対処法も紹介 関連記事はこちら老後の一人暮らしに生活費はいくら必要? 資産運用 退職金のうち、すぐに使う予定のない余剰資金は資産運用に回すのも選択肢です。株式や投資信託等の金融商品として保有することで、預貯金よりも資産が長持ちする効果が期待できます。 たとえば、65歳から2,000万円を毎月10万円(年120万円)取り崩す場合、81歳で資産は底をつきますが、利回り3%で運用しながら取り崩せば88歳まで資産は長持ちします。 資産運用は株式、投資信託、不動産投資など複数の方法があります。うまく運用できれば利益が出る一方で、損をすることもあるため、リスクのとりすぎに注意しましょう。金融機関や専門家などに相談する場合も、相談先は慎重に選ぶことが重要です。 退職金制度の種類とそれぞれの特徴 退職金制度は、主に次の4種類に分類されます。 退職一時金制度 退職金共済制度 確定給付企業年金制度(DB) 企業型確定拠出年金制度(DC) それぞれ制度内容や特徴について見ていきましょう。 退職一時金制度 退職一時金制度とは、会社を辞める際に一度にまとめて退職金が支給される制度です。支給額は勤務先の退職金規程に基づいて計算されます。退職一時金制度は自由度が高く、企業ごとに退職金の計算方法が異なるのが特徴です。 企業によって制度内容が異なるため、勤務先の退職金規程の内容を理解しておくことが重要です。わからないことがあれば、あらかじめ社内の担当者に確認しておきましょう。 退職金共済制度 退職金共済制度とは、主に中小企業を対象とした国の制度です。代表的なものに「中小企業退職金共済(中退共)」、「特定退職金共済」があります。 企業が外部機関に毎月掛金を支払い、退職金の積み立てを行います。そして従業員の退職時に、積み立てた掛金をもとに外部機関から退職金が直接従業員に支払われる仕組みです。退職金を受け取る際は、従業員本人が退職金請求の手続きを行う必要がある点に注意しましょう。 出典)独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部 確定給付企業年金制度(DB) 確定給付企業年金制度(DB)とは、会社を辞めるときに一時金または年金が給付される制度です。退職時に全額を一時金で受け取るか、一定期間にわたって年金で受け取るかを選択できます。 企業は契約に基づいて金融機関などに掛金を拠出し、年金資産の管理・運用を依頼します。将来の給付額があらかじめ決まっているため、従業員にとっては将来の見通しを立てやすいでしょう。 企業型確定拠出年金制度(DC) 企業型確定拠出年金制度(DC)とは、企業が掛金を拠出し、その掛金を従業員本人が管理・運用する制度です。従業員は投資信託などから運用商品を自ら選択し、その運用成果に応じて給付額が決まる仕組みになっています。 企業型確定拠出年金(DC)では、拠出限度額である月額55,000円の範囲で、会社が拠出する掛金に加えて、従業員本人が掛金を上乗せして拠出することができます。これをマッチング拠出制度といいます。 従業員掛金は会社の拠出金を超えることはできませんが、全額所得控除の対象となるため税制面でも優遇されます。 しかし、運用がうまくいけば給付額を増やすことができる一方で、選択した商品によっては元本割れの恐れがあるので注意が必要です。積立金は、原則として60歳以降に一時金または年金として受け取ることができます。企業によっては、一時金と年金を併用することも可能です。 退職金の税金・所得控除の計算方法 退職金は、「退職所得」として所得税や住民税の課税対象となります。ただし、退職所得控除が適用されるため、退職金額が退職所得控除額の範囲内に収まっていれば課税されません。 <退職所得金額の計算方法> 退職所得金額=(退職金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2 <退職所得控除額の計算方法> 勤続年数20年以下 40万円×勤続年数※80万円未満の場合は80万円 勤続年数20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年) たとえば、30年勤務していた会社を退職する場合、退職所得控除額は1,500万円(800万円+70万円×10年)です。仮に退職金が2,000万円であれば、退職所得金額250万円(2,000万円-1,500万円)×1/2)に対して税金がかかります。 退職金の税金は、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば退職金支給時に源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。詳しくは、勤務先の担当部署に確認しましょう。 なお、退職金を年金で受け取る場合、国民年金や厚生年金などの公的年金と含めて「公的年金等控除」が適用されます。控除額を超える部分は、雑所得として所得税や住民税がかかります。 まとめ 退職金制度には複数の種類があり、どの制度を採用しているかは企業によって異なります。退職金を無計画に使ってしまうと、老後の生活費が不足するリスクがあります。退職金の見込額が把握できたら、住宅ローンの返済や住み替えなど、あらかじめ使い道を決めておきましょう。 また、退職金制度がない場合や老後資金に不安がある場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用するなど、計画的に資産を増やすことも大切です。退職後により豊かな生活を送るためにも、まずは自社の退職金制度を理解し将来の資金計画を早めに立てることが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 iDeCo(イデコ)の仕組みとは?メリット・デメリットを解説 iDeCo(イデコ)は、公的年金だけでは不足する老後資金を準備するための制度です。iDeCoについて聞いたことはあっても、その特徴はよくわからない方もいるのではないでしょうか。iDeCoは2...記事を読む
住宅を購入する際にペアローンを組むことで、夫婦のどちらか一方が単独で住宅ローンを組むより借入額を増やせるなどのメリットがあります。しかし、ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、自宅の扱いや住宅ローンの返済をどうするのかを決めなければなりません。 この記事では、ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合の問題点と対処法を詳しく解説します。 そもそもペアローンとは? ペアローンとは、一定の収入がある同居親族と一緒にそれぞれが主たる債務者として、同一物件の購入を目的に住宅ローンを組む方法です。夫婦の場合、夫と妻がそれぞれ住宅ローンを組み、それぞれが相手の連帯保証人となります。 2人の借入額を合わせることによって、夫婦のどちらか一方が単独で住宅ローンを組むより高額の住宅を購入できます。その他にも以下のようなメリットがあります。 夫婦の双方に住宅ローン控除が適用される 夫婦がそれぞれ異なる条件で住宅ローンを組める(固定金利と変動金利を分けるなど) 一方で、ペアローンには以下のようなデメリットもあります。 住宅ローンを2つ組むので諸費用も2倍になる 夫婦のどちらかの収入が減少すると返済が苦しくなる なお、ペアローンと似た方法として、夫婦の収入を合算した金額をもとに住宅ローンを借り入れる「収入合算」という方法があります。こちらは、夫婦のどちらか一方が連帯保証人となって1つの住宅ローンを組む点で異なります。 ペアローンを組んだのに離婚することになったら? ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、何もしなければ、それぞれが今までどおり返済を続けることになります。しかし、今後の2人の生活を考えると、以下の2点について検討したほうがいいでしょう。 自宅をどうするか 債務をどうするか まずは、離婚後はどちらも自宅に住まないのか、あるいはどちらか一方が住み続けるのかを話し合って決めましょう。そのうえで、状況に応じて債務をどうするか考える必要があります。 自宅にどちらも住まない場合の対処法 離婚後、自宅にどちらも住まない場合は、「売却する」「賃貸に出す」の2つの選択肢が考えられます。どちらを選ぶ場合も、双方の合意が必要です。 自宅を売却する場合 自宅を売却する場合は、売却代金で2人の債務を返済することになります。売却価格が債務を上回る「アンダーローン」であれば、売却代金で2人の債務を完済できます。完済後に残った売却益については、話し合って適切に分ければきれいに精算できるでしょう。 しかし、売却価格が債務を下回る「オーバーローン」の場合、売却代金でローンを完済することができません。この場合だと、そもそも債権者である金融機関に自宅売却の承諾を得られない恐れがあります。また、もし自宅を売却できたとしても、引き続き返済を続けなければなりません。 自宅を賃貸に出す場合 離婚後に住宅を賃貸に出す場合は、賃料収入などで引き続きローンを返済していくことになります。 ただし、住宅ローンは資金使途が住宅購入や借り換えに限られるため、賃貸用不動産に対応している事業用ローンへの借り換えが必要です。一般的に事業用ローンは住宅ローンより金利が高く、住宅ローン控除の適用外となります。 離婚後も不動産を共有したまま賃貸に出す場合、退去時の入居者募集や住宅の修繕はどうするかなど、協力して賃貸経営をしなければなりません。良好な関係を維持できず、定期的にコミュニケーションがとれない場合は難しいでしょう。 賃貸に出す場合は、夫婦の一方が賃貸用不動産も借りられるローン(単独債務)に借り換えるのが現実的といえます。 自宅にどちらかが住み続ける場合の対処法 離婚後に夫婦のどちらかが自宅に住み続ける場合は、「引き続き双方で返済を続ける」「一方が債務を引き受ける」の2つの選択肢があります。 引き続き双方で返済を続ける場合は、一方が住まない家のためにローンを払い続けることになります。出ていく側が、子どもの養育費や慰謝料の代わりにローン返済を続ける場合もあるでしょう。 しかし、基本的には住み続ける側が出ていく側の債務を引き受け、返済を続けるのが自然な流れといえます。ただし、「一方が債務を引き受けても滞りなく返済が行われる」と判断されなければ、金融機関の承諾は得られません。状況によっては、金融機関から断られる恐れもあります。 まずは金融機関と相談する必要がありますが、必ず許可されるとは限らないことを理解しておきましょう。 リースバックという選択肢 ペアローンを組んだのに離婚する場合、夫婦の一方は「自宅に住み続けたい」、もう一方は「住んでいない家の住宅ローンをなくしたい」という要望もあるでしょう。住み続けたい側が出ていく側の債務を引き受けるのが難しいときは、リースバックで問題が解消できる可能性があります。 リースバックを利用すれば、自宅を売った売却代金でペアローンを完済しつつ、住み続けたい側がリースバック運営会社と賃貸借契約を結んでその家に住み続けることが可能です。 ただし、リースバックもアンダーローンにならないと、サービスを利用できません。売却価格はリースバック運営会社によって異なるので、利用を検討する場合は、仮査定を依頼するといいでしょう。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 まとめ ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、何も対応しなければ、どちらもそのまま返済を続けなくてはなりません。まずはどちらも自宅に住まないのか、どちらか一方が住み続けるのかを決めたうえで、債務について検討することが大切です。 住み続けたい側が一方の債務を引き受けるのが難しい場合は、リースバックで問題を解消できないか検討してみましょう。 ご相談・仮査定はこちら リースバックのご相談・仮査定を無料で受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リースバックの契約までの流れと必要書類、注意点を解説 リースバックを検討するにあたり、どのように契約が進んでいくのか不安に思う人もいるのではないでしょうか。リースバックの契約が終わってから後悔することが無いように、契約がどのような流れで進み、何...記事を読む
住宅ローンを変動金利型で組んだ場合、金利が上昇し、返済額が増えるのではないか、と不安に感じるかもしれません。 しかし、多くの金融機関では、金利が上昇しても急に返済額が変わらない「5年ルール」や「125%ルール」が採用されています。住宅ローンを変動金利型で組む場合は、これらのルールや仕組みを理解しておくことが重要です。 この記事では、住宅ローンの5年ルール、125%ルールの概要やメリットとデメリットについて詳しく解説します。 5年ルールとは? 5年ルールとは、金利が上昇しても5年間は住宅ローンの返済額が変わらない措置です。住宅ローンの変動金利型は、通常半年ごとに適用金利が見直されるので、5年ルールがなければ、金利が変動するたびに半年単位で毎月の返済額が変わります。しかし、5年ルールによって、返済額が変更されるのは借り入れから6年目、11年目、16年目、のように5年ごととなります。 仮に変動金利の上昇が起こったとしても、返済額が急に増えないことが5年ルールのメリットといえるでしょう。5年間は毎月の返済額が一定のため、急に返済額が増えて家計が苦しくなることを避けられます。 一方で、5年ルールは、返済額が変わらなくても毎月の返済額に占める元金と利息の内訳が見直されています。つまり、金利が上昇すると返済額に占める利息の割合が増え、元金が減るペースが遅くなってしまうのがデメリットです。 加えて、金利が大幅に上昇すると、利息が毎月の返済額を上回って「未払利息」が発生する恐れもあります。もし未払利息が発生した場合、通常の返済とは別に支払いをしない限り、最終返済日まで繰り越しとなります。気づかないうちに未払利息が増加し、元金の返済が全く進まなくなるので注意が必要です。 出典)一般社団法人全国銀行協会「未払い利息が発生する仕組み」 未払い利息の計算方法は、金融機関によって異なるので、自身が組んでいる住宅ローンでは、どのように計算されるのか確認しておきましょう。 125%ルールとは? 125%ルールとは、金利が上昇しても返済額が125%を超えて増加しないようにする措置です。5年ルールによって5年ごとに返済額が増えるときは、それまでの返済額の1.25倍が上限となります。なお、金利が下がったときは、下限なく返済額は減ります。 125%のルールのメリットは、5年ルールでは防げない返済額の大幅な負担増を回避できることです。ただし、返済額が1.25倍に増えるのは金利が大きく上昇した場合に限られます。たとえば、借入額5,000万円、金利0.5%、借入期間35年で元利均等返済の条件で毎月の返済額が1.25倍に増える事例を考えてみましょう。 上述の条件で毎月の返済額をシミュレーションすると、毎月の返済額は129,792円となります。この返済額に125%ルールが適用されるとき、毎月の返済額は162,240円です。実際に金利が変動する場合を考えると、計算が複雑であるため、返済開始時の金利が何%のときに、この返済額になるかを考えてみましょう。 借入額5,000万円、借入期間35年、毎月の返済額は162,240円でシミュレーションすると、適用金利は1.867%となります。この結果からわかるように、125%ルールは金利が大幅に増加しないと適用されず、昨今の市中金利からは考えにくいほど大きな変動がないと、125%には当たらないことがわかります。 5年ルールや125%ルールの注意点 5年ルールと125%ルールは金利変動リスク対策ではない 5年ルールと125%ルールがあれば、金利が上昇しても返済額が急に増えることはありません。しかし、実際は利息の支払いが免除されるわけではなく、支払いが先送りされているだけです。 もし「5年ルールや125%ルールがあるから金利が上昇しても大丈夫」と考えているのであれば、それは誤りです。住宅ローンの金利変動リスクを完全に排除したい場合は、固定金利型で借り入れたほうが良いでしょう。 なお、住宅ローンの固定期間選択型は、固定期間が終了して変動金利へ切り替わっても、一般的には5年ルールや125%ルールは適用されないので注意が必要です。加えて、固定期間終了時点の金利で返済額が再計算されるため、金利が上昇すると返済額が大幅に増える恐れがあります。 5年ルールや125%ルールを採用していない金融機関もある 金融機関によっては5年ルールや125%ルールを採用していない場合もあります。その場合、通常は半年ごとに金利が見直され、その都度返済額が変わります。この場合は金利が大幅に上昇しても利息を先送りせずに支払うため、返済期間の終盤で未払利息の負担が生じることはありません。 5年ルールと125%ルールは一時的な家計の負担軽減にはつながりますが、利払いの支払いを先送りにしているだけに過ぎないということを念頭に置いておく必要があります。 まとめ 住宅ローンの変動金利型は、多くの金融機関で5年ルールと125%ルールが採用されているため、金利が大幅に上昇しても急に返済額が増えることはありません。 ただし、あくまでも利息の支払いが先送りされるだけで、返済総額が減るわけではないので注意が必要です。むしろ未払利息が発生し、返済期間の終盤で大きな負担が生じる恐れがあります。 住宅ローンを変動金利型で組む場合は、予め金利が上昇した場合の返済額を試算し、家計への負担を考慮しながら、その他の条件についても比較検討することが大切です。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンを比較する5つのポイント マイホームは、住宅ローンを利用して購入するのが一般的です。さまざまな金融機関が住宅ローンを扱っているので、どのように選べばよいかわからないのではないでしょうか。 自分に合った住宅ローンを選ぶ...記事を読む
債務超過になると、すぐに倒産することはなくても、さまざまなデメリットがあるため、早期に対策を講じる必要があります。債務超過に陥った場合、経営者はどのように対処すればよいのでしょうか。 この記事では、債務超過のデメリットや解消方法、中小企業が利用できる支援策について紹介します。 債務超過とは 債務超過とは、貸借対照表の負債が資産を上回り、純資産がマイナスの財政状態のことです。このような状態では、仮に会社を清算し保有資産を全て売却したとしても、借入金などが返済できず、負債が残ってしまいます。 出典)J-Net21「わが社の帳簿が債務超過の状態になってしまいました。解消するにはどうすればよいでしょうか?」 債務超過だからと言って、必ずしも倒産するわけではありませんが、さまざまなデメリットがあり、できるだけ早期に解消することが望ましいでしょう。 債務超過のデメリット 債務超過に陥ると、以下のようなデメリットがあります。 仕入先や販売先からの信用が低下する 銀行からの新規借り入れが難しくなる 銀行から既存借り入れの金利引き上げ、早期返済を要求される恐れがある 債務超過は企業の財政状態が悪化していることを意味するため、仕入先や販売先から取引を打ち切られる恐れがあります。 銀行からの信用度が低下するのも重要な問題です。返済能力が乏しいと判断されると、新規借り入れが困難になるうえに、借入金の早期返済を求められることもあります。 債務超過に陥っても、現金預金や売掛金などの流動資産に余裕があり、当面の支払いに対応できるならすぐに倒産することはないでしょう。しかし、上述のデメリットによって資金繰りがさらに苦しくなる恐れもあります。 債務超過を解消する方法 債務超過を解消するには、長期的な視点では経営体質を改善し、毎期利益が出るように体制を整えるしかありません。一方で、短期的な視点では以下のような解消方法があります。 増資を行う 代表者や役員からの借入金を資本金に振り替える 遊休資産を売却して借入金を返済する 増資とは、投資家から出資を受けて資本金を増加させることです。外部から出資を募る場合は経営権に影響し、手続き費用も発生する点に注意が必要です。 代表者や役員からの借入金を資本金に振り替える方法は、債務超過の解消に加えて、借入金の返済と利息の支払いが不要になるのがメリットです。一方で、役員からの借入金を資本金に振り替える場合、その役員の経営への影響力が強まる恐れもあります。 利益を生み出さない遊休資産を売却し、その売却代金で負債を返済すれば、債務超過の解消が期待できるでしょう。資産の圧縮によって総資本経常利益率などの指標が改善し、銀行からの信用度が上がる可能性もあります。 これらの方法は専門知識が求められるため、税理士などの専門家に相談したうえで実行するか判断しましょう。 債務超過でも活用できる中小企業支援策 債務超過が原因で銀行から融資を受けられず、資金繰りが苦しい中小企業向けに、次のような支援策が用意されています。 政府系金融機関の融資制度 セーフティネット貸付や事業再生支援資金など、事業再生支援を目的とした様々な融資制度が用意されています。債務超過であっても、一時的な運転資金や経営再建資金、災害復旧資金などに利用できる融資を受けられるかもしれません。 ただし、それぞれ利用できる融資制度や諸条件が異なるため、まずは各機関の窓口で相談してみましょう。 商工組合中央金庫の事業再生・経営改善制度 地域金融機関や中小企業活性化協議会等の事業再生支援機関、顧問税理士などの外部機関と連携し、過剰債務の対応や経営危機への改善支援があります。事業再生に向けた支援プログラムを作成することで、資金繰りのサポートが受けられる可能性があります。 出典)商工組合中央金庫「事業再生・経営改善」 地方自治体の融資制度 都道府県や市区町村が国の中小企業支援策と連動し、各自治体が独自に運用している融資制度です。地方自治体の制度融資では、債務超過であっても運転資金などの融資を受けられる可能性があります。まずは自治体の担当窓口に相談してみましょう。 中小企業等経営強化法の経営革新支援 中小企業等経営強化法に基づき、低利融資制度などの支援措置を利用できる可能性があります。支援措置を受けるには、具体的な数値目標を含んだ経営革新計画を作成し、都道府県(または国)の承認を得なくてはなりません。 ハードルは高いかもしれませんが、経営革新計画を立てることで課題が明確になり、経営体質の改善効果が期待できるでしょう。 出典)中小企業庁「経営サポート「経営革新支援」」 関連記事はこちら認定経営革新等支援機関とは?利用するメリット・デメリットを解説 都道府県の中小企業活性化協議会 中小企業活性化協議会とは、すべての都道府県に設置されている中小企業の支援機関です。商工会議所などが運営しており、収益力や財務の改善、保証債務の整理などについて相談できます。債務超過の解消を目的とした再生計画の作成支援を受けることも可能です。 出典)中小企業庁「中小企業活性化協議会連絡先一覧」 商工会議所の経営安定特別相談室 経営安定特別相談室とは、破産や倒産の不安を抱えている中小企業向けの相談窓口です。全国の主要商工会議所や都道府県の商工会連合会で設置されています。資金繰りが厳しいなどの経営難に直面している中小企業は、弁護士などの専門家に無料で相談できます。 出典)中小企業庁「経営安定特別相談事業」 まとめ 債務超過になったからといって、必ずしも倒産するとは限りません。しかし、取引先や銀行からの信用度が下がるため、売上や利益が減少したり、資金調達に支障が出たりする恐れがあります。 資金繰りの悪化による倒産を防ぐためにも、国や自治体の支援をうまく活用しながら、なるべく早く債務超過を解消するための対策を講じましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 赤字になったら確定申告は必要か? 個人事業主の中には、「事業が赤字で税金を払わなくてもいいから、確定申告は必要ないだろう」、「赤字申告だと融資を受けられなくなるから、確定申告をするのをやめよう」などと考えている方がいらっしゃ...記事を読む
土地や中古戸建ての物件情報を調べていると、「セットバック」という言葉を見かけるかもしれません。また、持ち家を建て替える際に、敷地と道路の状況によってはセットバックが必要になることもあります。 この記事では、セットバックの概要や2項道路と接道義務の意味、注意点などについて詳しく解説します。 セットバックとは セットバックとは、土地と前面道路の境界線を後退させることです。 住宅には、「建築基準法で定められている道路に敷地が2m以上接していなければならない」という接道義務があります。「要セットバック」の土地や中古住宅は、この接道義務に従って敷地と道路の境界線を後退させなくてはなりません。 建築基準法で定められている道路とは、幅が4m以上(特定行政庁の指定で6m以上となる場合あり)の道路を指します。防災対策として、緊急車両が通れるようにすることが目的です。 道路の幅が4m未満の場合、建築基準法の接道義務を満たしていないことになります。ただし、以下の道路については、幅が4m未満であっても建築基準法上の道路として認められます。 建築基準法の施行前に建築物があった道路 特定行政庁の指定を受けている道路 出典)e-Gov法令検索「建築基準法」第四十二条2項 このような道路は「2項道路」や「みなし道路」と呼ばれており、既に建っている住宅はそのままでも問題ありません。ただし、再建築や増築はできず、建て替えの際はセットバックをする必要があります。 セットバックのイメージ 以下の2つの場合でセットバックをしなければならない距離が異なります。 向かい側にも建物などがある場合 向かい側に川などがある場合 それぞれ詳しく見ていきましょう。 向かい側にも建物などがある場合 ※編集者作成 向かい側にも建物がある場合は、それぞれの土地で半分ずつセットバックします。例えば、前面道路の幅が3mの場合、それぞれ0.5mずつセットバックが必要です。これにより、4mの道路幅を確保できます。 向かい側に川などがある場合 ※編集者作成 向かい側に川などがある場合は、片側がセットバックして4m以上の道路幅を確保しなくてはなりません。前面道路の幅が3mなら、1mのセットバックが必要です。 つまり、向かい側が道路に対して後退できるかどうかによって、セットバックしなければならない距離が算出されます。 セットバックした部分の土地の扱い 要セットバックの土地は、セットバックする部分も含めて購入しなくてはなりません。塀や門などがある場合は撤去費用がかかる可能性もあるため、購入前に確認しておくことが大切です。 セットバックした部分には次のような選択肢があります。 自治体に寄付もしくは買い取ってもらう 所有権を維持したまま私道とする 自治体に寄付するのが一般的ですが、買い取ってもらえるケースもあるようです。また、買取ではなく奨励金や助成金が交付される自治体もあります。奨励金や助成金は申請が必要になるため、交付を受けられる場合は忘れずに手続きを行いましょう。 なお、所有権を維持したままであっても、セットバック部分を自由に使っていいわけではありません。基本的に土地所有者が維持管理を行うことになりますが、駐車場としたり、植木鉢などを置いたりすることはできないため注意が必要です。 固定資産税について セットバック部分の土地は、自治体に申告をすることによって固定資産税や都市計画税が非課税となります。自治体に非課税となることを申告しないと、セットバック部分にも固定資産税がかかってしまうので忘れずに手続きを行いましょう。 建蔽率・容積率の計算 セットバックした部分の土地は、容積率や建蔽率の計算に用いる敷地面積に含まれません。セットバック部分には建物はもちろん、塀や門も建てられず、駐車場として利用することもできなくなります。 セットバックが必要な土地を購入する場合、見た目が広くても、実際に使える敷地は狭くなってしまう恐れがあるので要注意です。 セットバック物件はやめたほうがいい? セットバックが必要となる物件は、前面道路が狭い状況にあります。現地確認をすると、防災面や車の出し入れなどに不安を感じるかもしれません。 さらに、セットバック部分の工事費用についても確認する必要があります。助成金などが交付されず、全額自己負担となれば思わぬ出費となるでしょう。購入前に不動産業者や自治体に確認することが大切です。 上述のようなデメリットがあるため、セットバック部分には価値がないと判断され、後で売却するときに価値が下がってしまう恐れがあります。 ただし、既に建物が建っており、建て替えの予定もないのであれば、セットバックせずに住み続けるのも選択肢です。また、そもそも土地が広ければ、セットバックしても十分な敷地を確保でき、問題なく建て替えできるでしょう。 また、セットバックが必要な分、他の同じような土地よりも少し安く取得できる可能性もあります。セットバック物件のメリットとデメリットを理解したうえで、自身の希望に合った選択をすることが大切です。 まとめ 道路の幅が4m未満の「2項道路」「みなし道路」に接地している土地や中古戸建ては、住宅の建築や建て替え時にセットバックが必要です。 セットバックを行う場合は、費用負担や奨励金と助成金の有無について事前に確認しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 筆界特定制度とは?活用できる場面や申請の流れ、費用を解説 筆界特定制度は、法務省が管轄する制度の一つです。本制度が定められるまで、土地の境界に関する紛争が起きた際、従来は裁判で解決するしかありませんでした。しかし、「筆界特定制度」を利用することで、...記事を読む
区分所有法は、マンションの所有者や管理組合にとって重要な法律です。マンション暮らしを検討している人や既に住んでいる人は、区分所有法を理解しておくことで、安心して生活できるでしょう。 この記事では、区分所有法の概要や対象となる建物、主な規定内容について解説します。 区分所有法とは 区分所有法とは、主に分譲マンションの権利関係や維持管理などについて定められた法律です。正式名称を「建物の区分所有等に関する法律」といいます。 マンションなどの区分所有建物は1つの建物が複数の部屋に区切られており、各部屋には「区分所有権」と呼ばれる所有権が設定されています。マンションの1室を購入すると、その部屋の区分所有権を有する「区分所有者」となります。 また、マンションはエントランスやエレベーターのように、区分所有者が共同で使用する「共用部分」があります。共用部分の修繕や建て替えなどは、区分所有者同士で話し合って実施方法などを決めなくてはなりません。 区分所有者や居住者の権利や財産を守り、マンションを円滑に運営、管理するために、区分所有法が定められています。 区分所有法の対象となる建物 区分所有法第一条では、適用対象となる建物を次のように定めています。 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。 出典)e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」 区分所有法の対象となる代表的な建物は分譲マンションです。各部屋が構造上区分されており、それぞれに区分所有権が設定されています。部屋が隣り合っていても室内から行き来することはできず、独立性を有していることから、上記の要件に当てはまるといえます。 一般的な分譲マンションであれば、区分所有法の対象になるため、マンションに住む人であれば、ほとんどの人が関係のある内容ということになります。 一戸建ても複数の部屋で構成されていますが、部屋と部屋の間は自由に行き来できるのが一般的です。また、通常は家族全員が1つの玄関を使って出入りし、共有スペースであるリビングなどを通らないと部屋に行けないこともあります。 物件ごとに判断する必要はありますが、基本的に一戸建ては区分所有法の適用対象外と考えられます。 区分所有法の主な規定内容 ここでは、区分所有法で定められている主な内容を解説します。 専有部分と共用部分 分譲マンションは、主に「専有部分」と「共用部分」の2つに区分できます。区分所有法第二条では、それぞれ次のように定義されています。 区分所有権の目的たる建物の部分 専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の付属設備及び管理規約により共用部分とされた附属の建物 出典)e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」 専有部分は、区分所有者が単独で所有している各部屋の内部です。一方、エントランスや廊下、エレベーター、バルコニーなど、区分所有者全員で利用している設備は共用部分に該当します。 共用部分の持分は専有部分の床面積の割合に応じて決まりますが、専有部分と分離して処分することはできません。例えば、区分所有しているマンションの1室(専用部分)を売却する場合、共用部分の持分も一緒に手放すことになります。 管理組合について 管理組合とは、マンションの建物や敷地などを維持管理するための組織です。区分所有法では、区分所有者は全員で建物や敷地、附属設備の管理を行うための団体である管理組合を構成する義務が明記されています。管理組合は、マンション管理の基本ルールとして「管理規約」を制定し、執行機関として、区分所有法の「管理者」にあたる理事長や理事を選任します。 理事長は少なくとも毎年1回集会を招集すること、共用部分の管理や修繕などに関する事項を決定して議事録を作成すること、なども区分所有法に定められています。区分所有者は管理組合の一員になる必要があり、原則として脱退はできません。 建て替え決議について 区分所有法には、マンションの建て替え決議に関する定めもあります。老朽化によりマンションを建て替える場合、現在は区分所有者の5分の4以上の賛成が必要です。 しかし、今後は築40年以上の老朽マンションの増加が見込まれています。マンションが老朽化すると適切な維持や管理が難しくなり、外壁の剥落や鉄筋の露出など、居住者や近隣住民に悪影響を与える事案が発生する恐れがあります。 そのため、住民の円滑な合意形成を促すことを目的に、マンション建て替えに必要な賛成の割合を「4分の3以上」に緩和するといった議題が、法務省で議論されています。2024年3月時点では未定ですが、将来は区分所有法が改正される可能性もあるでしょう。 区分所有法とマンション標準管理規約との関係性は? マンション標準管理規約とは、区分所有法に基づいて国が定めたマンション管理規約の作成や変更に関する指針のことです。国の標準管理規約をもとに、管理組合が作成した管理規約がそのマンションのルールとなります。 新築分譲マンションの場合、一般的には売主である販売会社が標準管理規約に準じた管理規約を準備して提示してくれるため、購入前に確認しておくといいでしょう。 まとめ 区分所有法には、区分所有者の権利義務や共用部分の取り扱い、管理組合の役割などについて定められているため、マンションに住む人にとっては重要な法律といえます。マンションの購入を検討している人、すでにマンション暮らしをしている人は、区分所有法について理解を深めておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マンションの資産価値の調べ方は?基準もあわせて紹介 マンションを購入する際には、将来的な資産価値の変化にも目を向けて判断することが大切です。この記事では、マンションの資産価値に影響を与える要因や、資産価値の調べ方について解説します。 マンショ...記事を読む
原野商法は、1970年から1980年代にかけて多発したこともある土地に関する不当勧誘のひとつです。近年では、原野商法によって取得した土地をめぐるトラブルが増えています。原野商法の二次被害を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。 この記事では、原野商法の概要や二次被害の事例、トラブルを避ける方法を紹介します。 原野商法とは? 原野商法とは、値上がりの見込みがほとんどない山林や原野について、「将来確実に高値で売れる」などと勧誘し、不当に販売する商法です。 実際には建設計画がないにもかかわらず、「開発計画がある」「もうすぐ道路ができる」などと虚偽の説明をするのが典型的な手口で、1970~1980年代に被害が多発しました。 原野商法の二次被害が増えている 近年、この原野商法の二次被害が増加しています。二次被害の手法は以下のとおりです。 かつて原野商法の被害にあった人が、「土地を高く買い取ります」などと勧誘される 契約の詳細を認識できないまま、新たな山林や原野を購入させられる 始めはすでに所有している不動産を買い取ることを勧誘しますが、巧妙な手口で売却額より高い山林や原野を新たに購入させられるトラブルが発生しています。 過去に原野商法に巻き込まれ、値上がりが期待できない土地を長年保有してきた高齢者の多くは「元気なうちに土地を手放したい」「相続で子どもに迷惑をかけたくない」という思いを持っているでしょう。悪徳業者はその気持ちにつけこんで、不当な勧誘や販売を行っていると考えられます。 具体的な事例を紹介 原野商法の二次被害について、具体的な事例を2件紹介します。 事例①:原野を売却したつもりが、新たな土地の契約をさせられていた(80代男性) 相続で子どもに迷惑をかけたくなかったので、所有する原野を手放したいと思っていたところ、不動産業者から自宅を訪問され「約800万円で買い取りたい」と勧誘された。その際、意味がわからないまま書類に署名させられた。 業者が「気にしないで」と言うので信用し、手続き費用として約400万円を支払い、住民票と印鑑証明書、土地の権利書を業者に渡した。実際は、自分の原野を約800万円で売り、遠方の原野を約1,200万円で購入する契約となっていた。 出典)独立行政法人国民生活センター「より深刻に!「原野商法の二次被害」トラブル 」 事例②:山林を購入したい人がいると説明され、調査・整地費用を支払った(60代男性) 40年前に30坪と100坪の山林を購入して所有している。「30坪のほうの山林を欲しがっている人がいる」と不動産業者から電話があり、売却することを了承した。その後、不動産業者から売却にあたって山林の調査や整地が必要と言われ、合計190万円を支払った。 30坪の山林を売却する前に、今度は「同じ人が100坪の山林も欲しがっているので調査費用80万円を支払ってほしい」と言われた。子どもは「原野商法の二次被害に手口が似ている」と言っている。 出典)政府広報オンライン「「原野商法」再燃!「土地を買い取ります」などの勧誘に要注意」 原野商法の二次被害を防ぐには? 原野商法の二次被害にあうと、契約後はその不動産業者と連絡がつかなくなる場合がほとんどで、一度お金を払ってしまうと、そのお金を取り戻すのは困難です。過去に原野商法に巻き込まれて取得した山林や原野の買い取り話を聞いてしまうと、二次被害に繋がる恐れがあります。 そもそも取得した山林や原野はこれまで値上がりせず、開発計画もなかった土地です。「確実に値上がりする」「買いたい人がいる」といったうまい話は、そうあるものではないでしょう。「土地を買い取る」と勧誘されても、きっぱりと断ることが大切です。不審な勧誘を受けて困っている場合は、消費生活センターに相談しましょう。 相談先:消費者庁「消費者ホットライン」 すでに持っている土地をどうすべき? 原野商法の二次被害を防止するには、「土地を買い取る」と勧誘を受けてもきっぱりと断ることが大切だと分かりました。では、すでに持っている山林や原野はどうすればよいのでしょうか。原野商法で手にした土地を処分したい場合は、「相続土地国庫帰属制度」の利用を検討しましょう。 相続土地国庫帰属制度とは、相続で取得した土地を手放して国庫に帰属させる制度です。土地の所有者本人ではなく、所有者の相続人が利用します。将来原野商法で取得した土地を相続させたとしても、相続土地国庫帰属制度の利用によって国に返せる可能性があります。 ただし制度対象となる土地の要件がいくつか定められているため、生前に要件を満たせるように整備したうえで相続する必要があります。加えて、相続人となる人に相続土地国庫帰属制度についてあらかじめ話しておくことが大切です。 なお、相続土地国庫帰属制度はまだ開始されて間もない制度であり、今後どのように運用されていくか不明瞭な点も多いので、法務局や専門家に相談しておくと安心です。 関連記事はこちら相続土地国庫帰属法とは?制度の概要や相続放棄との違いなどを解説 まとめ 原野商法の二次被害を防ぐには、「土地を買い取る」などの勧誘をきっぱりと断ることが大切です。うまい話は疑ってかかり、1人で即決せず、家族や友人、消費生活センターなどに相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 高齢者の自宅売却のトラブルが増加!回避するための対策とは? 「強引に勧誘された」「高額の違約金を請求された」など、高齢者の自宅売却に関するトラブルが増加しています。 相手に言われるがまま売買契約をしてしまうと、高齢者の場合は「住む場所が見つからない」...記事を読む
登記情報提供サービスは、インターネット上で登記情報を確認できるサービスです。法務局に行かなくても登記の内容を把握できるため、情報取得にかかる時間や手間を省けます。この記事では、登記情報提供サービスの概要と使い方、利用料金について解説します。 登記情報提供サービスとは 登記情報提供サービスとは、登記所が保有する登記情報を、インターネットを使用してパソコンの画面上で確認できる有料サービスです。提供される登記情報は以下のとおりです。 不動産登記情報(全部事項) 不動産登記情報(所有者事項) 地図情報 図面情報 商業・法人登記情報 動産譲渡登記事項概要ファイル情報及び債権譲渡登記事項概要ファイル情報 請求した時点における登記情報を、リアルタイムで表示、保存できます。さらに、照会番号の発行も行っています。照会番号とは、登記事項証明書の代わりに添付できる番号のことです。行政機関等へのオンライン申請等の際に照会番号を添付することで、登記情報提供サービスで取得した登記情報を登記事項証明書に代えて申請できます。 登記情報提供サービスを利用するには 登記情報提供サービスを利用するには、パソコンを用意して、ネットを利用できる環境を整えることが前提となります。スマートフォンやタブレットは動作が保証されておらず、非推奨となっているので注意が必要です。そのうえで、以下3つの利用方法があります。それぞれの概要について解説します。 ①一時利用 一時利用とは、申込手続(登記情報提供契約の締結)をすることなく、一時的に利用する方法です。一時利用者登録を行うと、クレジットカードの即時決済ですぐに利用できます。登記情報を請求できるのは、初回ログインを行った当日のみです。翌日以降のログインは、マイページの利用に限られます。マイページでは、利用実績や利用明細の確認ができます。 ②登録利用 登録利用とは、あらかじめ申込手続を行い、利用登録をしたうえで利用する方法です。個人と法人で、利用方法は異なります。 個人は、申込単位にひとつの利用者ID(登記情報を請求できるID)が交付されます。同一IDで同時に複数ログインはできないため、複数名で利用する場合は、利用する口数分の申し込みが必要です。申込手続は約1週間で、手続完了後は「登録完了通知書(利用者ID)」が交付されます。料金の支払いは、登記情報を請求する都度、クレジットカードで決済されます。 法人は、申込単位にひとつの「管理者ID」が交付されます。管理者IDでは、登記上の請求はできません。管理者IDでログインし、利用人数分(最大200名分)の利用者IDの登録を行います。申込手続は約1ヵ月で、手続完了後は「登録完了通知書(管理者ID)」が交付されます。料金の支払いは、月ごとに預金口座からの引き落としです。 ③公共電子確認 照会番号の提供を受けた公共機関が、オンライン申請等の確認時に使用する方法です。法人の利用登録と同じく、発行された管理者IDでログインし、利用者ID(最大200名分)の登録を行います。 登記情報提供サービスにかかる費用 登記情報提供サービスでは、「登録手数料」と「利用料金」がかかります。それぞれの内容と料金を紹介します。 登録手数料 登録利用の場合、利用区分に応じて以下の登録手数料がかかります。 個人登録利用…300円(273円) 法人登録利用…740円(673円) 国、地方公共団体等…560円(510円) ※登録費用の()内の料金は、消費税不課税対象者(利用者の住所等が日本国外にある場合に、消費税法の課税対象外となり消費税が課されない方)の登録費用です。 出典)登記情報提供サービス「サービス概要」 一時利用と公共電子確認の場合、登録手数料はかかりません。 利用料金 利用料金は、確認する登記情報や内容に応じて以下の利用料金がかかります。 出典)登記情報提供サービス「サービス概要」 公共電子確認の場合、利用料金はかかりません。 登記情報提供サービス利用上の注意点 登記情報提供サービスを利用する際の注意点は以下のとおりです。 受付時間に制限がある 登記情報提供サービスはインターネット上で手続きを行いますが、以下の受付時間内しか利用できません。 <登記情報提供サービスの利用時間> 平日:8:30~23:00 土日祝日:8:30~18:00 ※地図及び図面情報については平日の8:30~21:00 また、年末年始(12月29日~1月3日)は休業日となります。利用終了時間になると途中で送受信が切断されることがあるので、時間に余裕をもって利用しましょう。 法的な証明書にはならない 登記情報提供サービスでは、利用者が請求した時点において登記所が保有する登記情報を確認できますが、あくまで「閲覧」と同等のサービスです。登記事項証明書とは異なり、証明文や公印等は付加されないため、PDF形式で受領したデータを印刷しても法的な証明書にはなりません。 ただし、行政機関等へのオンライン申請等は、登録事項証明書を添付する代わりに照会番号を利用できることもあります。詳細は、申請先の行政機関等へご確認ください。 関連記事はこちら登記簿謄本(登記事項証明書)とは?取得方法や記載内容を解説 まとめ 登記情報提供サービスは、インターネット上で登記情報を確認できる便利なサービスです。法務局で書面請求するよりも費用が安く済むのもメリットです。 ただし、データを印刷しても法的な証明書として認められず、契約時などには利用できません。「登記情報の確認に限定する」「行政機関等への申請には照会番号を添付する」など、状況に応じてうまく使い分けましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住所変更登記等の義務化はいつから?手続き方法や注意点も解説 不動産所有者の氏名や住所などに変更があった場合の、法務局での住所等の変更登記はこれまで任意でしたが、不動産登記法の改正により登記申請が義務化されることになりました。変更登記をしないと罰則を科...記事を読む
家族信託とは、財産の管理、運用、処分を家族に任せるための制度です。親の判断能力が低下した場合、子どもの判断で親の財産を運用、処分できるため、認知症対策として注目されています。家族信託をする場合、どのような費用や税金がかかるのでしょうか。 この記事では、家族信託にかかる費用や税金とその相場について解説します。 家族信託でかかる可能性がある税金 家族信託では、状況に応じて以下5つの税金がかかる場合があります。 贈与税 相続税 所得税(法人税) 固定資産税 登録免許税 それぞれ詳しく見ていきましょう。 贈与税 家族信託の場合、委託者と受益者が同じ人であれば贈与税は発生しません。しかし、委託者以外の人が受益者となった場合、財産を贈与したとみなされ、受益者に贈与税がかかります。 例えば、「父:委託者、子:受託者、母:受益者」とし、信託財産である収益不動産(信託前は父名義)の家賃収入を母(受益者)が受け取るような場合が考えられます。 相続税 家族信託では、信託財産から生じる利益を受け取る「受益者」が亡くなったときに相続が発生します。受益者の死亡によって信託契約を終了する場合は、信託財産を相続する人に相続税が課されます。受益者の死亡後も信託契約を継続する場合は、受益権を引き継ぐ人に相続税がかかります。 所得税(法人税) 信託財産から得られる収入(所得)については、受益者が所得税を納めなくてはなりません。また、受益者が受益権を売却した場合は、その利益に所得税がかかります。なお、受益者が法人であれば、法人税が発生します。 固定資産税 不動産を信託する場合、不動産の所有者が委託者から受託者に代わります。そのため、次年度からは受託者に固定資産税の納税義務が生じます。 ただし、信託契約において「固定資産税は受益者が負担する」と明記すれば、受託者の自己資金ではなく信託財産から納めることが可能です。 登録免許税 信託財産に不動産が含まれる場合、「信託による所有権移転登記」の登録免許税がかかります。 所有権移転登記は、不動産の名義人を委託者から受託者に変更するための手続きです。登録免許税額については後述します。 家族信託を手続きする場合の費用と相場 ここでは、家族信託を自分で手続きする場合と専門家に依頼した場合の費用相場を紹介します。 自分で手続きする場合の費用と相場 戸籍謄本、印鑑証明書、住民票などの資料取得費用 家族信託の手続きでは、戸籍謄本や印鑑証明書、住民票などの公的書類を取得しなくてはなりません。信託財産に不動産が含まれている場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)も必要です。取得費用はいずれも1通につき数百円程度です。 信託口口座開設費用 家族信託では、信託財産を管理するための信託口口座を開設します。金融機関によって異なりますが、開設費用は5~10万円程度が一般的です。正確な金額は金融機関に確認しましょう。 公正証書費用 家族信託では、信託口口座を開設する際に、金融機関から公正証書で作成された信託契約書の提出を求められる場合がほとんどです。そのため、信託契約書を公正証書にする必要があります。公正証書にかかる費用は以下のとおりです。 目的の価額 手数料 100万円以下 5,000円 100万円超 200万円以下 7,000円 200万円超 500万円以下 1万1,000円 500万円超 1,000万円以下 1万7,000円 1,000万円超 3,000万円以下 2万3,000円 3,000万円超 5,000万円以下 2万9,000円 5,000万円超 1億円以下 4万3,000円 1億円超 3億円以下 4万3,000円+5,000万円ごとに1万3,000円 3億円超 10億円以下 9万5,000円+5,000万円ごとに1万1,000円 10億円超 24万9,000円+5,000万円ごとに8,000円 出典)日本公証人連合会「手数料」 信託監督人・受益者代理人への報酬 家族信託では、状況に応じて信託監督人や受益者代理人を設定する場合があります。 信託監督人:受益者のために受託者の監督を行う者 受益者代理人:受益者のために受益者の権利を行使する者 信託監督人や受益者代理人を専門家に依頼すると、月額数万円程度の費用がかかります。 登録免許税 上述したように、信託財産に不動産が含まれている場合は、信託登記の登録免許税がかかります。税額は「不動産の固定資産税評価額×0.4%」です。ただし、土地については0.3%の軽減税率が適用されます(2026年3月31日まで)。 例えば、土地3,000万円、建物2,000万円の場合の登録免許税額は、以下のとおりです。 土地:3,000万円×0.3%=9万円 建物:2,000万円×0.4%=8万円 専門家に依頼した場合の費用と相場 専門家に依頼する場合は、上記の「自分で手続きする場合の費用」に加えて、以下の費用負担が発生します。 コンサルティング費用 信託契約書の作成費用 公正証書の手続き代行費用 不動産登記の代行費用 実際にかかる費用は専門家によって異なります。依頼の際に費用をしっかりと確認することが大切です。 家族信託の「損益通算禁止」とは 租税特別措置法第41条の4の2によると、信託財産から生じた損失は、信託財産以外から生じた所得との損益通算ができません。例えば、信託された収益不動産で赤字が生じても、信託財産以外の収益不動産の所得とは損益通算できないため、税負担が増える恐れがあります。 大規模修繕などで赤字の発生が見込まれる収益不動産がある場合は、信託する前に税理士などの専門家に相談しましょう。 出典)国税庁「第41条の4の2(特定組合員等の不動産所得に係る損益通算等の特例)関係」 まとめ 家族信託は、認知症などによる判断能力の低下に備えるには有効な手段です。ただし、専門家に手続きを依頼する場合はまとまった費用がかかります。家族信託でかかる税金・費用の相場を把握したうえで、利用するかを判断しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 家族信託とは?仕組みやメリット・デメリット、手続き方法を解説 親の判断能力が低下した場合、子どもの判断で親の財産を運用・処分することはできません。親の認知症対策としては「成年後見制度」が一般的ですが、近年では新たな財産管理方法として「家族信託」が注目さ...記事を読む
相続トラブルを避けるには、遺言書を作成するのが有効です。ただし、本人が自筆で作成する自筆証書遺言の場合、正しく作成しないと無効になる恐れがあります。また、盗難や紛失、偽造・改ざんの危険性もあります。このようなリスクを回避する方法として、「自筆証書遺言書保管制度」があります。 この記事では、自筆証書遺言書保管制度の概要やメリット、注意点、利用の流れを解説します。 自筆証書遺言書保管制度とは 自筆証書遺言書保管制度とは、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度です。2020年7月10日から開始され、全国312ヵ所の法務局で利用できます。 遺言書の原本はもちろん、画像データとしても長期間適正に管理されます。原本は遺言者死亡後50年間、画像データは同150年間保管されます。紛失の恐れがなく、遺言者が亡くなった際に相続人に通知してもらえるため、自宅で保管するよりも安全です。 自筆証書遺言書保管制度のメリット 自筆証書遺言書保管制度には、以下のようなメリットがあります。 適切な保管によって紛失や盗難、偽造、改ざんを防げる 自筆証書遺言は紙と筆記用具、印鑑があれば1人で気軽に作成できます。しかし、自宅に保管していると紛失や盗難リスクがあり、偽造や改ざんの危険性もあります。自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、法務局で遺言書の原本と画像データが適切に保管されるため、紛失や盗難の心配がなく、偽造や改ざんを防止できます。 無効な遺言書になりにくい 自筆証書遺言書保管制度は、法務局職員が民法に定める自筆証書遺言の形式に適合するかを確認してくれるため、無効な遺言書になりにくいです。ただし、遺言書の有効性を保証するものではなく、遺言の内容について相談することはできません。 相続人に発見してもらいやすくなる 自宅に遺言書を保管すると、相続人が遺言書を見つけられず、遺言者の意思に沿った遺産相続が行われない恐れがあります。自筆証書遺言書保管制度を利用することで、遺言者が亡くなった際に、あらかじめ指定した相続人に対して法務局に遺言書が保管されていることを通知してもらえます。これを死亡時通知と言います。 検認手続が不要になる 遺言者が亡くなった後に自筆証書遺言を発見した場合、偽造や改ざんを防止するため、開封する前に家庭裁判所に提出して、検認を受ける必要があります。検認を受けないと、遺言書の内容に沿った遺産分割はできません。 自筆証書遺言書保管制度を利用することで、この検認手続が不要になり、速やかに遺言の内容を実現することができます。 自筆証書遺言書保管制度の注意点 自筆証書遺言を法務局に提出する際、法務局の職員が民法で定められた形式に適合するかを確認します。しかし、遺言の記載方法まで確認してもらうことはできず、有効性は保証されません。 また、「用紙はA4サイズ、裏面には何も記載しない」など、自筆証書遺言書保管制度を利用するための様式が別に定められており、そういった記載ルールを守る必要があります。 自筆証書遺言書保管制度の利用の流れ 自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、遺言者本人が法務局に出向いて手続きを行います。利用の流れは以下のとおりです。 管轄の法務局を選ぶ 申請書を記入する 事前予約をする 必要書類を持参して法務局で申請する 遺言者の住所地、本籍地、所有する不動産所在地のいずれかを管轄する法務局で申請手続をします。申請書は法務局のホームページからダウンロードするか、最寄りの法務局窓口で入手できます。 手続は事前予約制のため、ホームページ内の予約専用ページ、電話または窓口であらかじめ予約します。必要書類を持参のうえ、予約した日時に法務局で申請を行いましょう。申請時の必要書類は以下のとおりです。 自筆証書遺言書 申請書 本人確認書類 住民票の写し(本籍と戸籍筆頭者の記載があるもの) 3,900円分の収入印紙(遺言書保管手数料) 申請内容に問題がなければ、原本と画像データが保管され、保管証が渡されます。 自筆証書遺言と公正証書遺言との違い 遺言書は、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。主な違いは以下の3つです。 自書(手書き)の有無 自筆証書遺言は、遺言者が財産目録以外の全文を手書きしなくてはなりません。公正証書遺言は、遺言者から告げられた内容を公証人が遺言書に記載するため、自書は署名のみです。 証明力 自筆証書遺言の内容は、遺言者の自己責任です。公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が法的な有効性をチェックするため、高い証明力を有します。 出張の有無 自筆証書遺言書保管制度を利用する際は、遺言者本人が法務局に出向かなくてはなりません。公正証書遺言は、遺言者が高齢などで公証役場に出向くのが困難な場合、公証人が遺言者の自宅などに出張して遺言書を作成できます。 どちらを利用するべき? 自筆証書遺言の一番のメリットは、公正証書遺言と比較して費用と手間が小さいことです。民法の要件を満たした遺言書を自ら作成できるなら、自筆証書遺言書保管制度を利用するのがいいでしょう。 ただし、遺言書が無効にならないか不安であれば、費用や手間をかけてでも、公正証書遺言を利用する方が確実です。 関連記事はこちら公正証書遺言とは?手続きの費用と必要書類を解説 自筆証書遺言書保管制度の利用状況 法務局によると、2022年の遺言書の保管申請は1万6,802件です。一方、日本公証人連合会によれば、公正証書遺言の作成件数は11万1,977件となっています。公正証書遺言が年10万件程度利用されていることを踏まえると、自筆証書遺言書保管制度の利用は少ないといえます。 ただし、自筆証書遺言を作成して自宅等に保管している人がどの程度いるのかは不明です。これから認知度が高くなることで、自筆証書遺言書保管制度の利用件数が増えていく可能性は十分に考えられます。 出典) ・法務局「遺言書保管制度の利用状況」 ・日本公証人連合会「令和5年の遺言公正証書の作成件数について」 まとめ 自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、自筆証書遺言の紛失や盗難、偽造、改ざんのリスクを避けられます。また、法務局職員が民法で定める形式に適合するかを確認してくれるのもメリットです。ただし、遺言書の有効性が保証されるわけではないため、不安な場合は公正証書遺言を検討しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 相続争いを生まないためのリースバックという選択肢 自宅を所有していると、老後も住み続けられる安心感がある一方で、相続に不安を感じることもあるのではないでしょうか。不動産は実物資産であるため、相続人が複数いると簡単に分けられません。また、相続...記事を読む
公正証書遺言は、自筆証書遺言に比べると無効になる可能性が低いのが特長です。では、相続に備えて公正証書遺言を作成する場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。 この記事では、公正証書遺言の特徴と手続き、その費用や必要書類について解説します。 公正証書遺言とは 公正証書遺言とは、公証役場において公正証書として作成する遺言です。証人2名以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に述べて、公証人の筆記により作成してもらいます。また、遺言書の内容について悩んでいる場合は、必要な助言を受けられます。 遺言者の真意を確認し、適切に手続きが行われたことを担保するため、証人2名以上の立会いが要件となっています。未成年者や相続人は証人になれないので、利害関係のない友人や知人にお願いするといいでしょう。依頼できる人がいない場合は、公証役場で紹介してもらうことも可能です。 公正証書遺言のメリット 公正証書遺言には以下のようなメリットがあります。 遺言書が無効になる可能性が低い 公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が遺言書を作成します。複雑な内容であっても内容を整理して、民法上の方式に沿った遺言書を作成してもらうことが可能です。そのため、遺言書が無効になる可能性は低いでしょう。 紛失や盗難、改ざんのリスクがない 公正証書遺言は、公証役場で原本が保管されます。遺言書が誤って破棄されたり、誰かに盗まれたり、書き換えられたりする恐れがないので安心です。 家庭裁判所での検認手続が不要 法務局に預けていない自筆証書遺言の場合、遺言書の保管者や相続人が家庭裁判所に遺言書を提出し、その検認を請求しなくてはなりません。検認を経ないで遺言を執行すると、5万円以下の過料が科される恐れがあります(民法第1,005条)。 公正証書遺言は検認手続が不要であるため、相続開始後は速やかに遺言の内容を実現できます。 身体が不自由でも利用できる 公正証書遺言は公証人に作成してもらえるため、体力が弱り、あるいは病気等のために、手書きが困難となった場合でも作成が可能です。 また、公正証書遺言は公証役場以外でも作成が認められています。身体が不自由で公証役場に出向くことが困難な場合でも、公証人が遺言者の自宅などに出張して遺言書の作成が可能です。 公正証書遺言の作成費用 公証役場に支払う手数料は、目的の価額(相続財産の価額)に応じて以下のように設定されています。 出典)日本公証人連合会「公証事務(2遺言)」 また、証人を依頼する場合は追加で費用がかかります。友人や知人なら謝礼は自由に決められますが、公証役場で紹介してもらう場合は1人あたり6,000円程度の費用がかかります。弁護士などに遺言書の作成を依頼する場合は、証人を手配してもらうことが可能です。費用は1人あたり1万円程度が相場となります。 公正証書遺言の作成手続きの流れ 公正証書遺言の作成手続きの流れは以下のとおりです。 公証人への遺言の相談や遺言書作成の依頼 相続内容のメモや必要資料の提出 公正証書遺言(案)の作成と修正 公正証書遺言の作成日時の確定 遺言の当日の手続 「遺言者がどんな財産を所有していて、誰にどのような割合で相続させたいか」といったメモを提出すると、その内容に基づいて公証人が遺言書(案)を作成します。 遺言書の内容と作成日時が確定したら、遺言当日に遺言者が証人2名の前で、遺言の内容を改めて口頭で告げます。内容に問題がなければ、遺言者および証人2名が原本に署名・押印します。さらに公証人も原本に署名し、職印を押捺すると公正証書遺言は完成です。 公正証書遺言を作成する際の必要書類一覧 遺言者本人の印鑑登録証明書(3か月以内に発行されたもの) 戸籍謄本、除籍謄本(遺言者と相続人との続柄がわかるもの) 登記事項証明書(登記簿謄本)、固定資産評価証明書など(不動産の相続の場合) 預貯金通帳等またはそのコピー(預貯金等の相続の場合) 受遺者の住民票(財産を相続人以外の人に遺贈する場合) 他にも資料が必要になる場合があるので、詳細は公証役場に確認しましょう。 自筆証書遺言より公正証書遺言をおすすめする理由 公正証書遺言の他に、「自筆証書遺言」という選択肢もあります。 自筆証書遺言は、遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自分で手書きして押印する遺言書です。作成に費用がかからず、いつでも手軽に書き直せるのが特長です。ただし、一定の要件を満たしていないと無効になる恐れがあり、紛失や盗難、改ざんの危険性もあります。 自筆証書遺言に比べると手間や費用はかかりますが、公正証書遺言なら「遺言が無効になる」「不正に書き換えられる」といった危険性が低くなります。自分の意志を遺すための遺言が無効になっては元も子もありません。確実性を重視するなら、公正証書遺言をおすすめします。 もし自筆証書遺言を作成される場合は、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を検討するといいでしょう。この制度を利用すれば、遺言自体の形式不備は防げないものの、紛失や盗難、改ざんの危険性は低くなります。 関連記事はこちら自筆証書遺言書保管制度とは?メリットと注意点、利用の流れを解説 まとめ 公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成してくれるため、遺言が無効になる可能性が低くなります。公証役場で原本が保管され、紛失や盗難、改ざんを避けられるのも特長です。 ただし、公正証書遺言の作成では、証人2名を手配しなくてはなりません。自分で手配するのが難しい場合は、公証役場や弁護士などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 相続争いを生まないためのリースバックという選択肢 自宅を所有していると、老後も住み続けられる安心感がある一方で、相続に不安を感じることもあるのではないでしょうか。不動産は実物資産であるため、相続人が複数いると簡単に分けられません。また、相続...記事を読む