海外送金を行う際、利用するサービスによって手数料や着金までのスピードに大きな差が生じます。銀行・ネット銀行・資金移動業者など、選択肢が多い中で「どれを選べば手数料を安く抑えられるのか?」と悩む方も多いのではないでしょうか。 この記事では、海外送金にかかる手数料の種類と仕組みをわかりやすく解説し、主要サービスの比較や手数料を安くするためのポイント、注意すべき点まで網羅的に紹介します。送金コストをできるだけ抑えたい方は、ぜひ参考にしてください。 海外送金にかかる手数料の種類と仕組み 海外送金にはさまざまな手数料が発生しますが、主に「送金手数料」「中継銀行手数料」「受取手数料」の3つに分類されます。これらの手数料は、利用するサービスや送金ルートによって金額や負担者が異なるため、事前に仕組みを理解しておくことが重要です。 また、送金時には為替レートやスプレッド(為替手数料)もコストに影響するため、総額でどれくらいかかるのかを把握することが、賢く送金するための第一歩となります。 送金手数料の仕組みと確認方法 海外送金にかかる「送金手数料」は、国内でいう振込手数料に相当しますが、利用するサービスや送金方法によって金額が大きく異なります。銀行の店頭窓口、インターネットバンキング、ネット銀行、資金移動業者など、選択肢によって手数料の設定が異なるため、事前に各社の公式サイトで最新の料金を確認しておくことが重要です。 送金手続きには、本人確認書類(運転免許証・パスポートなど)やマイナンバーが確認できる書類の提出が求められます。また、受取人の情報として、送金先の国・住所、銀行名・支店名・所在地、口座名義、口座番号、SWIFTコードやIBANコードなどの詳細が必要です。 さらに、送金目的(例:学費・生活費・仕送りなど)によっては、金融機関から証明書類の提出を求められる場合もあります。スムーズな手続きを行うためにも、必要書類を事前に準備しておきましょう。 関連記事はこちら海外送金 完全ガイド|仕組み・手数料・安全性・おすすめサービスを徹底比較 中継銀行・受取手数料の違いと注意点 海外送金で銀行を利用する場合、送金人の銀行口座から受取人の口座へ直接送金されることは少なく、通常は複数の中継銀行を経由して資金が移動します。この際に発生するのが「中継銀行手数料(コルレス手数料)」です。 中継銀行手数料は、送金人が支払う場合もありますが、多くの場合は送金額から差し引かれる形で処理されます。経由する銀行の数や使用する通貨によって手数料の金額は異なり、事前に正確な金額を把握するのが難しいケースもあります。 一方、「受取手数料」は、送金された資金を受け取る際に受取人が負担する手数料です。こちらも金融機関によって金額が異なり、受取人の口座に着金するまでに差し引かれることがあります。 これらの手数料は送金額に直接影響するため、送金前に利用するサービスの手数料体系を確認し、必要に応じて受取人にも事前に説明しておくと安心です。 為替レートの仕組みとスプレッドの影響 海外送金では、為替レートの変動が送金額に大きく影響します。為替レートとは、異なる通貨を交換する際に適用される比率のことで、外国為替市場の動きに応じて日々変動しています。金融機関のホームページなどで最新のレートが公開されているため、送金前に確認しておくことが重要です。 送金時の為替レートは、送金契約が成立した時点の水準が適用されるのが一般的です。為替が大きく動いているタイミングでは、送金額が想定より少なくなることもあります。 また、為替レートには「スプレッド(為替手数料)」が含まれており、これは金融機関や送金サービスが設定する上乗せ分です。スプレッドの幅はサービス提供者や通貨の種類によって異なり、実質的な手数料として送金コストに影響します。 複数のサービスを比較する際は、単純な送金手数料だけでなく、スプレッドを含めた「実質的な為替コスト」も確認するようにしましょう。 送金サービス別の手数料の比較と注意点 海外送金にかかる手数料の仕組みを理解したら、次は利用する金融機関や送金方法による違いを確認しましょう。銀行・ネット銀行・資金移動業者など、サービスごとに手数料体系や着金スピードが異なるため、比較検討が欠かせません。 また、送金するタイミングによって為替レートが変動し、受取金額に差が生じることもあります。ここでは、各サービスの手数料の違いや、送金時に注意すべきポイントを詳しく解説します。 銀行・ネット銀行・資金移動業者の手数料を比較 海外送金を行う際は、銀行・ネット銀行・資金移動業者のいずれかのサービスを利用することになります。それぞれのサービスには、送金手数料や対応通貨、送金スピード、サポート体制などに違いがあるため、目的や優先事項に応じて選ぶことが重要です。 以下の表では、主要な送金サービスごとの手数料や特徴を比較しています。 table { border-collapse: collapse; width: 100%; table-layout: fixed; /* 列幅固定 */ margin-bottom: 20px; } th, td { border: 1px solid #ccc; width: 20%; /* 5列なので均等割り */ height: 60px; /* 行の高さ固定 */ padding: 8px; text-align: left; vertical-align: top; overflow: hidden; } th { background-color: #f4f4f4; } 銀行 送金手数料 対応通貨 送金スピード(着金日) サポート体制 三井住友銀行 店頭窓口:7,000~7,500円/件 インターネットバンキング:2,500~3,500円/件 6通貨 未記載 電話・窓口 三菱UFJ銀行 店頭窓口:7,000~7,500円/件 インターネットバンキング:2,500~3,000円/件 12通貨 未記載 電話・窓口 みずほ銀行 個人:8,000~8,500円/件 法人:7,000~7,500円/件 みずほダイレクトアプリ:5,000円 7通貨 送金手続きから一週間程度 オンライン・チャット ※以下の出典元より筆者作成 出典) ・三井住友銀行「海外への送金・海外からの送金・外貨建て送金」 ・MUFG「外国送金」 ・みずほ銀行「外国への送金・受け取り」 ネット銀行 送金手数料 対応通貨 送金スピード(着金日) サポート体制 楽天銀行 750円/件 67通貨 送金日から1営業日~5営業日程度 電話・メール ソニー銀行 3,000円/件 11通貨 送金実行から3営業日~4営業日以上 電話・チャット 住信SBIネット銀行(法人) 2,500円/件 10通貨 SWIFT発信日からおおむね1日~3日程度 WEBフォーム ※以下の出典元より筆者作成 出典) ・楽天銀行「海外送金」 ・ソニー銀行「ソニー銀行からの外貨送金」 ・住信SBIネット銀行「法人のお客さま 外貨送金・外貨受取サービス」 資金移動業者 送金手数料 対応通貨 送金スピード(着金日) サポート体制 Wise(ワイズ) 0.33%~ 24通貨 送金手続きから最短即日~最長5日 電話・メール・チャット Revolut(レボリュート) 送金手数料は無料 41通貨 送金手続きから最短即日~最長2営業日 チャット PayPal(ペイパル) 499円/件 22通貨 即時振替:数分(最長30分) 標準振替:約3~6営業日 電話・メール SBIレミット 460円~/1件 13通貨 送金方法、着金方法、送金先国により変化 ■現金受取の場合 最短:10分 通常:1~3時間程度 ■銀行口座の場合 最短:10分 通常:1~2営業日 電話・メール ※以下の出典元より筆者作成 出典) ・wise:公式サイト ・Revolut:公式サイト ・PayPal:公式サイト ・SBIレミット:公式サイト 各サービスにはそれぞれの強みがあります。例えば、銀行は信頼性が高くサポートが充実している一方で、資金移動業者は手数料が安くスピードも速い傾向があります。送金先の国や目的、金額に応じて最適なサービスを選びましょう。 手数料が高くなるケース 海外送金では、利用するサービスや送金方法によって手数料に大きな差が生じます。特に銀行の店頭窓口を利用する場合は、ネット銀行や資金移動業者と比べて送金手数料が高くなる傾向があります。一方で、銀行のインターネットバンキングを利用すれば、店頭よりも手数料を抑えられるケースが多く見られます。 また、多くの銀行では、国際送金を行う際に「SWIFT(スイフト)」というネットワークを利用しています。SWIFTは、世界中の金融機関が安全に送金指示をやり取りするための通信システムであり、資金を直接移動させる仕組みではありません。 実際の資金移動は、送金元の銀行と受取先の銀行の間で行われます。しかし、両銀行が直接提携していない場合、複数の銀行を経由する必要があり、これが「中継銀行」です。中継銀行は送金ルートをつなぐ役割を果たしますが、その分、中継銀行手数料(コルレス手数料)が追加で発生する可能性があります。 中継銀行の数が多いほど、手数料も高くなる傾向があり、事前に利用者側で中継銀行の数や手数料をコントロールすることは難しい場合があります。そのため、送金前に「中継銀行手数料が発生する可能性があるか」「受取人が負担する手数料があるか」を確認しておくことが重要です。 出典)一般社団法人 全国銀行協会「SWIFT」 為替レートによる送金コストの変動 海外送金では、サービスごとの手数料に加えて、為替レートの変動によるコストも見逃せません。為替レートとは、異なる通貨を交換する際の比率であり、日々の市場動向によって変化します。日本から海外へ送金する場合、円高・円安の状況によって、実際に受け取れる金額が大きく変わる可能性があります。 例えば、1米ドル=100円のときに10万円を送金すれば、1,000米ドルになります。しかし、円安が進み1米ドル=150円になった場合、同じ10万円でも約667米ドルしか送れません。このように、為替レートの変動は送金額に直接影響するため、円高傾向のタイミングで送金をすれば、コストを抑えることができます。 また、「手数料無料」とうたうサービスでも、実際には為替レートに手数料分のスプレッド(上乗せ)が含まれているケースがあります。送金コストを正確に把握するには、送金手数料だけでなく、為替レートの設定やスプレッドも含めた「実質的なコスト」を確認するようにしましょう。 海外送金の手数料を安くする方法 海外送金にかかるコストをできるだけ抑えるためには、送金方法やタイミング、利用するサービスの選び方など、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。手数料の違いだけでなく、為替レートや送金回数によっても総コストが変わるため、事前の比較と計画が重要です。 ここでは、海外送金において手数料を安くするための具体的な方法を、わかりやすく解説します。 為替レートの変動に注意して送金コストを抑える 海外送金では、為替レートの変動が送金額に大きく影響します。詳細な例は前章で紹介しましたが、円高・円安の状況によって、同じ金額を送っても受取額が変わり、円高傾向のタイミングで送金をすれば、コストを抑えることができます。 しかし、為替の動きを正確に予測するのは専門家でも難しいため、一般の方が無理にタイミングを狙うよりも、為替の変動が落ち着いている時期を選ぶのが現実的です。 また、送金サービスによっては、為替レートと手数料を含めた送金額のシミュレーション機能を提供している場合があります。こうしたツールを活用することで、実際にいくら送れるのかを事前に把握でき、損をしない送金タイミングを選びやすくなります。 手数料を安く抑えるサービスの選び方と比較ポイント 海外送金にかかる手数料は、利用するサービスによって大きく異なります。 銀行を利用する場合は、店頭窓口よりもインターネットバンキングを活用することで、手数料を抑えられるケースが多く見られます。また、ネット銀行や資金移動業者は、送金手数料が比較的安く、為替レートも比較的有利に設定されていることが多いため、選択肢として検討する価値があります。 また、サービスを比較する際は、手数料だけではなく以下のポイントをチェックしましょう。 送金手数料の金額 為替レートのスプレッド(上乗せ幅) 対応通貨と送金先の国 送金スピード(着金までの日数) サポート体制(電話・メール・チャットなど) これらの要素を総合的に比較することで、自分の送金目的に合った、コストパフォーマンスの高いサービスを選ぶことができます。 定期・まとめ送金で手数料を節約する 毎月の生活費や学費など、定期的に海外送金を行う場合は、定期送金の設定を活用することで手数料を抑えられる可能性があります。送金サービスによっては、定期送金を利用することで割引が適用されるケースもあり、長期的なコスト削減につながります。 また、送金上限額が高めに設定されているサービスを利用すれば、複数回に分けて送金するよりも、まとめて送金する方が手数料を節約できる場合があります。海外送金では、送金のたびに「送金手数料」「中継銀行手数料」「受取手数料」などが発生するため、回数を減らすことで総コストを抑えることができます。 特に、資金移動業者や一部のネット銀行では、まとめ送金や定期送金に対応したプランが用意されていることもあるため、事前にサービス内容を確認しておくと安心です。 海外送金の手数料で損しないために知っておきたいこと 海外送金を行う際には、送金手数料だけでなく、為替レートや中継銀行手数料など、さまざまなコストが発生します。これらの仕組みを理解しておかないと、思わぬ損失につながることもあります。ここでは、送金時に注意すべきポイントや誤解されがちな点について、事前に知っておきたい情報を整理して解説します。 「手数料ゼロ」は本当にお得? 一部の送金サービスでは「手数料無料」と表示されていることがありますが、実際には為替レートに手数料相当のスプレッド(上乗せ)が含まれているケースもあります。送金コストを正確に把握するには、送金手数料だけでなく、為替レートの設定も確認することが重要です。 海外送金と消費税の関係 海外送金そのものには消費税はかかりません。これは、消費税が国内消費に対して課される税金であるためです。ただし、送金の目的や取引内容によっては税務上の取り扱いが異なる場合もあるため、詳細は税務署や専門家に確認するといいでしょう。 出典)国税庁「国外取引」 送金キャンセルを行った場合でも手数料が返金されるケースもある 送金手続きが完了していない場合や、キャンセルが可能なタイミングであれば、手数料が返金されるケースもあります。ただし、返金には別途手数料がかかる場合があるため、事前に各サービスの規約を確認しておきましょう。 手数料が不明な場合の確認方法 中継銀行を経由する送金では、手数料の総額が事前に分かりづらいことがあります。サービスのサポート窓口に問い合わせて、受取人負担の有無、概算の目安を確認しておくと安心です。ただし、送金経路が確定するまで正確な金額は提示できないケースが多いため、目安として把握することが現実的です。 まとめ|手数料を理解して賢く送金しよう 海外送金には、送金手数料・中継銀行手数料・受取手数料・為替レートのスプレッドなど、さまざまなコストが関係しています。これらの仕組みを理解せずに送金を行うと、思わぬ手数料負担や受取金額の減少につながる場合があります。 この記事では、手数料の種類や計算方法、主要な送金サービスの比較、コストを抑えるためのポイント、そして誤解されがちな注意点までを網羅的に解説しました。 送金目的や送金先の国、金額、頻度によって最適なサービスは異なります。銀行・ネット銀行・資金移動業者それぞれにメリット・デメリットがあるため、事前に比較検討し、自分に合った方法を選ぶことが大切です。 安心・便利な海外送金ならSBIレミット SBIレミットの国際送金について、webサイトで詳しく説明いたします。※SBIレミットのWEBサイトに遷移します。 安心・便利な海外送金ならSBIレミット SBIレミットの国際送金について、webサイトで詳しく説明いたします。 ※SBIレミットのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。前回の記事(【フラット35】11月金利は1.90%に決定|千日太郎の予測と機構債分析!)では、【フラット35】の11月金利を1.89%~1.92%と予想し、結果は1.90%となりました。予測は的中しましたが、その背景には国債利回りや機構債の動き、そして住宅金融支援機構の「激変緩和」策がありました。 今回は、2025年12月の【フラット35】金利を予想します。11月20日に発表された機構債の表面利率は2.30%と大幅に上昇し、新発10年国債利回りも1.79%まで急伸。さらに、逆ザヤ問題が過去最大に拡大する中、住宅金融支援機構がどこまで金利を抑えられるのかが焦点です。 この記事では、12月の金利予想レンジと2つのシナリオ、その背景にある国債利回り・機構債・ローンチスプレッド・E55債の影響をわかりやすく解説します。 【フラット35】2025年11月金利予想の結果とその検証 2025年11月の金利は1.90%に決定|金利予想は的中 2025年11月の【フラット35】金利は1.90%に決定しました。これは、前回の記事で提示した予想レンジ(1.89%~1.92%)の下限に収まる結果です。 予想が的中した背景には、国債利回りや機構債の動き、そして住宅金融支援機構による「激変緩和」策がありました。急激な金利変動を避けるため、機構は過去の事例同様、上昇幅を最小限に抑える調整を行ったと考えられます。 フラット35金利の決定ロジックと背景 【フラット35】の金利は、以下の簡易式で説明できます。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) 2025年10月の主要データは以下のとおりです。 新発10年国債利回り:1.64%(前月比+0.03ポイント) 機構債の表面利率:2.15%(前月比+0.03ポイント) ローンチスプレッド:0.51%(横ばい) このデータから、機構債の表面利率は前月比で0.03ポイント上昇していますが、【フラット35】の10月から11月にかけての金利は、住宅金融支援機構が調整幅を広げることで、0.01ポイントの上昇で抑えられました。これは、住宅ローン利用者の負担増を避けるための政策的判断といえます。 なぜ金利上昇が抑えられたのか? 最大の理由は、住宅金融支援機構が逆ザヤを許容して低金利を維持していることです。 逆ザヤとは、機構債の「仕入れ金利」が【フラット35】の「貸出金利」を上回る状態を指します。 2025年10月の機構債の表面利率が2.15%に対し、2025年11月の【フラット35】は1.90%。その差は0.25ポイントで、過去最大の逆ザヤ幅となっています。営利を目的としない住宅金融支援機構だからこそ可能な調整ですが、この状態が長期化すれば、今後の金利政策に影響を与える可能性があります。 逆ザヤの推移(機構債 vs フラット35) 月 機構債表面利率(機構債発表日) フラット35金利 金利差(逆ザヤ) 2025年6月1.94%(5月22日)1.89%-0.05ポイント 2025年7月1.88%(6月20日)1.84%-0.04ポイント 2025年8月2.02%(7月18日)1.87%-0.15ポイント 2025年9月2.08%(8月21日)1.89%-0.19ポイント 2025年10月2.12%(9月19日)1.89%-0.23ポイント 2025年11月2.15%(10月17日)1.90%-0.25ポイント ※出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 【フラット35】2025年12月金利予想 2025年12月の金利予想レンジは1.90%~1.95% 2025年11月は、新発10年国債利回りが1.79%まで急上昇し、機構債の表面利率も2.30%と過去半年で最大の上昇幅を記録しました。 通常であれば、この水準の機構債利率に連動して【フラット35】の金利も大きく上昇するはずですが、住宅金融支援機構は過去の傾向から急激な変化を避ける調整を行うと見られます。 そのため、2025年12月の【フラット35】金利は1.90%~1.95%と予想します。これは、前月比で最大でも+0.05ポイント程度の上昇にとどまる見込みです。 【フラット35】金利推移と2025年12月予想 9月 10月 11月 12月 【フラット35】の金利(※) 1.89% 1.89% 1.90% 千日太郎の予想1.90%~1.95% ※出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 シナリオ①:1.90%「激変緩和」 このシナリオでは、住宅金融支援機構が国債利回りや機構債の急騰をあえて反映させず、金利を据え置く、または最小限の上昇に抑えると想定します。 背景には、住宅ローン利用者の負担増を避ける政策的意図があります。過去の事例でも、急騰局面では「激変緩和」が適用され、金利上昇幅は0.00~0.03ポイント程度に抑えられたケースが多く見られます。この場合、2025年12月の金利は前月と同じ1.90%となる可能性があります。 シナリオ②:1.95%「マイナス幅の限度+激変緩和」 もう一つのシナリオは、逆ザヤの限度を考慮しつつ、過去の調整パターンを踏まえたものです。2025年10月の機構債の表面利率と2025年11月の【フラット35】の金利差は0.25ポイントと過去最大に拡大しました。 もしこの差を維持するなら、2025年12月の【フラット35】金利は2.05%になる計算ですが、これは前月比で+0.15ポイントと急激な上昇です。過去の事例では、こうした急騰局面では「激変緩和」により上昇幅を0.05ポイント程度に抑える傾向があるため、1.95%が現実的な上限と考えられます。 主要データ(機構債・国債・ローンチスプレッドの推移) 主要データ(2025年11月20日時点) 機構債発表日 2025年8月21日 2025年9月19日 2025年10月17日 2025年11月20日 機構債の表面利率(※1) 2.08% 2.12% 2.15% 2.30% 新発10年国債利回り(※2) 1.61% 1.61% 1.64% 1.79% ローンチスプレッド(※1) 47bps(0.47%) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) ※1 出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2 10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 【フラット35】2025年12月金利予想の背景にある4つの要素 新発10年国債利回りの急上昇(+0.15ポイント) 2025年10月から11月にかけて、新発10年国債利回りは1.64%から1.79%へ急伸しました。この背景には、高市政権による積極的な財政出動と、インフレ期待の高まりがあります。 特に、2025年度補正予算案の規模拡大が議論され、国債増発観測が強まったことで、長期金利に上昇圧力がかかりました。国債利回りは【フラット35】の金利決定に直結するため、この急騰は12月金利予想において最も重要な要素です。 機構債の表面利率と逆ザヤ問題(過去最大0.25ポイント) 機構債の表面利率は、2025年10月の2.15%から11月には2.30%へと0.15ポイント上昇しました。これに対して、【フラット35】の金利は10月から11月に1.90%へわずかに上昇しただけで、両者の差は0.25ポイントに拡大しました。 この「逆ザヤ」は過去最大であり、住宅金融支援機構が収益を犠牲にして低金利を維持している状態です。非営利の政策機関だからこそ可能な対応ですが、この状況が長期化すれば、今後の金利政策に影響を与える可能性があります。 ローンチスプレッドの横ばい傾向と意味 ローンチスプレッドとは、機構債の表面利率と新発10年国債利回りの差であり、2025年12月時点で0.51%の横ばいです。この横ばい傾向は、機構債のリスクプレミアムが安定していることを示し、市場が長期金利の急騰を一時的な現象と見ている可能性を示唆します。 つまり、スプレッドが拡大していないことは、【フラット35】の金利が急騰するリスクをやや緩和する要因となっています。 E55債の登場|低コスト資金調達の可能性 2025年10月に導入されたE55債は、住宅金融支援機構が新たに採用した資金調達手段です。従来の機構債と同様、住宅ローン債権を裏付けに発行されますが、特徴はより低コストである点にあります。 具体的には、表面利率が1.63%と機構債よりも低く、ローンチスプレッドも0.36%と小さいため、発行額が拡大すれば、機構はより安価に資金を調達でき、【フラット35】の低金利維持に寄与する可能性があります。今後、E55債の発行動向は、フラット35の金利動向を占う重要な指標となるでしょう。 E55債の概要 発表日 表面利率 10年国債利回り ローンチスプレッド 2025年10月22日1.63%1.27%0.36% ※1 出典)住宅金融支援機構「貸付債権担保E55債発行条件」 【フラット35】2025年12月金利予想の再確認と今後の見通し 住宅ローン利用者への影響|返済額はどう変わる? 2025年12月の【フラット35】金利は、前月比で最大+0.05ポイント程度の上昇が見込まれます。仮に金利が1.90%から1.95%に上昇した場合、借入金額3,000万円・返済期間35年のケースでは、月々の返済額が764円増加します。 一見すると小幅な増加ですが、長期的には総返済額で約320,000円の差が生じるため、金利動向を注視することが重要です。 借り換え検討のタイミングと注意点 今後の金利上昇局面では、以下のポイントを押さえておく必要があります。 固定金利の早期確保:変動金利から固定金利への切り替えを検討するタイミング 借り換えシミュレーションの実施:金利差だけでなく、諸費用や残債額を考慮した総合判断 フラット35の特徴を理解:長期固定で安心感がある一方、借り換え時の手数料や団信条件も確認 特に、今後の国債利回りの動向次第では、民間銀行の固定金利が先に上昇する可能性があるため、早めの行動がリスク回避につながります。 低金利はいつまで続く?政策と市場動向を徹底分析 高市政権の積極財政とインフレ圧力により、長期金利は上昇傾向にあります。しかし、住宅金融支援機構は政策的役割を担う非営利機関であり、「住宅金融の円滑化」を目的に、急激な金利上昇を抑える調整を続けています。 さらに、2025年10月に導入されたE55債による低コスト資金調達が進めば、【フラット35】の低金利維持に寄与する可能性があります。ただし、逆ザヤが長期化すれば、将来的には金利引き上げ圧力が強まるため、2026年以降は緩やかな上昇トレンドに入る可能性も視野に入れておくべきでしょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。
住宅ローンは金利が低く、住宅ローン控除などの優遇措置もあるため、「投資用物件の購入に使えたら」と考える方もいるかもしれません。しかし、住宅ローンはあくまで自己居住用の住宅を購入するためのローンであり、投資目的での利用は契約違反となります。 この記事では、住宅ローンで不動産投資をすると「なぜばれるのか」、契約違反によって生じる影響、そしてやむを得ない事情がある場合に賃貸が認められる条件について解説します。 住宅ローンで不動産投資をしてはいけない理由 住宅ローンは、自己居住用の住宅を購入するためのローンです。投資目的で利用すると、契約違反となり、金融機関から一括返済の請求や信用情報への影響など、厳しい対応を受けることがあります。 たとえば、全期間固定金利のフラット35では、利用条件に「第三者に賃貸する目的の物件などの投資用物件の取得資金にはご利用いただけません」と明記されています。 このように、住宅ローンはあくまで「自分や親族が住む家」のためのローン商品であり、投資用物件の購入には使えません。 出典)【フラット35】「ご利用条件」 住宅ローンと不動産投資ローンの違い 住宅ローンと不動産投資ローンでは、資金使途や金利相場、税制優遇などに明確な違いがあります。 項目 住宅ローン 不動産投資ローン 主な担保対象 自己居住用住宅 賃貸用不動産 金利相場 一般的に低め 一般的に高め 住宅ローン控除 あり なし ※筆者作成 住宅ローンは金利が低く、一定の条件を満たせば住宅ローン控除も受けられます。一方、不動産投資ローンは住宅ローン控除の対象外で、金利も高めです。 つまり、住宅ローンを不正に使って投資を行うことは、制度の趣旨に反する行為であり、発覚した場合には重大なペナルティを受けるリスクがあります。 住宅ローンの不正利用が発覚する主な理由 金融機関は、住宅ローンの契約者の居住実態を複数の方法で確認しています。そのため、投資目的での不正利用は意外なところから発覚することもあります。 以下に、発覚する場合の具体例を紹介します。 金融機関からの郵便物が届かない 住宅ローンの返済中は、年末残高証明書や返済予定表などの書類が契約者宛に郵送されます。しかし、投資目的で物件を賃貸に出していると、これらの郵便物が届かず返送されることがあります。 これらの郵便物は「転送不要郵便」で送られるため、転送届を出しても新住所には届かず、結果として居住実態が明らかになる場合があります。 契約者の自宅訪問で発覚 金融機関の担当者が、居住確認のために現地を訪問する場合もあります。これは、ローン契約時や返済中の定期的な確認として行われることがあります。 このとき、契約者以外の人物が住んでいることや、空室であることが判明した場合、不正利用が疑われ、調査が行われることがあります。 確定申告で発覚 不動産投資による家賃収入がある場合、不動産所得として確定申告が必要です。住宅ローンを組んだ直後から不動産所得が発生していると、税務署が不正利用の疑念を持つ場合があります。 特に、住宅ローン控除を受けている場合は、「居住の実態」が要件となるため、家賃収入との整合性が取れないと、控除の否認や調査の対象になることもあります。 フラット35における不正利用事案と機構の対応 2018年、フラット35において「投資用物件を自己居住用と偽る」「住宅購入価格を水増しした売買契約書で融資申し込みを行う」といった不正利用の疑いが多数確認されました。 この問題を受けて、住宅金融支援機構は、特定の住宅売主や不動産仲介業者が関与した113件の融資案件について調査を実施し、その結果、105件で不適正利用の事実が確認されました。 ■不正利用の主な内容 投資目的での利用 自己居住用と偽ってフラット35を申し込み、実際には投資目的で物件を取得。 売買価格の水増し 実際の住宅購入価格より高額な売買契約書を作成し、過剰な融資を受ける。 出典)住宅金融支援機構「フラット35の不適正利用懸念事案に係る調査結果の公表」 住宅金融支援機構の対応 上記のような事案に対し、住宅金融支援機構は以下のような厳正な対応を行いました。 借入金の一括返済請求など、法的措置も含めた厳正な処置 関係機関の調査等への協力 再発防止策の実施(お客さまへの注意喚起の徹底・融資審査の強化) また、お客さまが融資住宅に居住していない可能性のある案件については、不適正利用のモニタリングも継続的に実施していく方針が示されています。 住宅ローンを使った不動産投資の契約違反による影響 住宅ローンを投資目的で利用することには、契約違反による重大な影響を受ける可能性があります。以下に、契約違反によって生じる主な影響を解説します。 一括返済を求められる 住宅ローン契約では「期限の利益の喪失条項」が設けられています。これは、契約違反があった場合に、分割返済の権利(期限の利益)を失い、残債の一括返済を求められるというものです。 「期限の利益」とは、契約通りに返済している限り、毎月の分割返済が認められる権利のことです。しかし、資金使途違反(=投資目的での利用)が発覚すると、この権利を失い、金融機関から残債の一括返済を迫られる場合があります。 関連記事はこちら期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 新たな借り入れが難しくなる 住宅ローンの不正利用が発覚し契約解除や延滞が発生した場合、その情報が個人信用情報に記録されます。金融機関はローン審査時に信用情報を確認するため、将来的な住宅ローンやその他の融資の審査に通りにくくなることがあります。 住宅ローンを利用していても賃貸が認められる条件 住宅ローンは基本的に自己居住用の住宅を対象としていますが、一定の条件を満たす場合に限り、賃貸が認められる場合もあります。ここでは、代表的な2つの賃貸が認められる場合について紹介します。 転勤などで自宅に住めなくなった場合 転勤や長期入院など、やむを得ない事情により契約者が住宅に居住できなくなった場合、金融機関の承諾を得ることで、一定期間の賃貸が認められる可能性があります。 ただし、対応は金融機関によって異なるため、事前に必ず相談することが重要です。また、居住していない期間は原則として住宅ローン控除の対象外となります。 なお、転勤後に再び住宅に戻って居住する場合は、一定の要件を満たせば、控除の再適用が認められる場合もあります。詳しくは所轄の税務署などに確認しましょう。 出典) ・【フラット35】「年収による借入額などの制限はありますか。」 ・国税庁「No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等」 賃貸併用住宅を取得する場合 賃貸併用住宅とは、自己居住スペースと賃貸用スペースが同じ建物内に共存する住宅のことです。この場合、以下のような条件を満たすことで住宅ローンの利用が認められる可能性があります。 居住部分の床面積が建物全体の床面積の2分の1以上であること 自己居住用としての利用が明確であること これらの条件を満たしていれば、住宅ローンの対象として認められる場合がありますが、金融機関によって判断基準が異なるため、事前に確認が必要です。 出典)【フラット35】「対象となる住宅・技術基準」 まとめ 住宅ローンは自己居住用を前提とした制度であり、賃貸などの投資目的での利用は契約違反となります。不正が発覚すれば、一括返済や信用情報への影響など、重大な契約違反の結果を招く恐れがあります。 一方で、住宅ローンを利用していても、転勤などやむを得ない事情がある場合や、賃貸併用住宅の条件を満たす場合には、金融機関の承諾を得て賃貸が認められることもあります。ただし、自己判断せず、事前に金融機関や税務署に相談し、正しい手続きを踏むことが重要です。 「金利が低いから」「控除があるから」と安易に住宅ローンを投資に使うのではなく、目的に合ったローンを選ぶことが、将来のトラブルを防ぎ、安心した資産形成につながります。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産担保ローンとは?仕組みやメリット・デメリットを徹底解説 不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保にして資金を借りるローンのことです。無担保ローンに比べて、まとまった金額を低金利で借りられる一方、返済が滞ると不動産が競売にかけられるリスク...
海外送金とは、ある国から別の国へお金を送ることであり、現金で持ち運ぶリスクを抑えて送金する方法をいいます。一口に海外送金といっても、銀行やオンラインサービスを利用するなど、多様な方法があります。 この記事では、海外送金の仕組みや種類、手数料、安全性などの基本的な点から各社のサービス比較まで、わかりやすく解説します。 海外送金とは?基本的な仕組み 海外送金を活用するためには、基本的な仕組みを理解しておく必要があります。ここでは、海外送金の定義や流れ、銀行からの送金と資金移動業者を通じた送金の違い、SWIFT(スイフト)コードやIBAN(アイバン)の役割について解説します。 海外送金の基本と流れ 海外送金とは、ある国から別の国へ資金を移動することを指します。個人の場合は、留学費用や生活費の送金、海外通販の支払いなどが主な目的です。法人では、国際取引における代金決済や報酬の支払いなど、広く利用されます。 送金方法には、銀行、ネット銀行、資金移動業者など複数の選択肢があり、それぞれの方法ごとに手続きの流れが異なります。一般的な流れとしては、以下のようなステップが共通しています。 1.受取人情報の準備 送金先の氏名、口座番号、銀行名、SWIFTコードなどを正確に確認します。 2. 送金手続きの実施 銀行窓口、インターネットバンキング、スマホアプリなどを通じて送金依頼を行います。資金移動業者によっては、専用の送金口座やアプリを利用できます。 3.為替レートの適用と送金処理 送金時点の為替レートで金額が換算され、送金先に送られます。中継銀行を経由する場合は、着金までに時間がかかることもあります。なお、中継銀行とは、送金銀行と受取銀行の間に立って、資金の移動を仲介する銀行です。送金銀行と受取銀行が直接の取引関係を持たない場合、中継銀行を経由して送金が行われます。 4. 着金確認 受取人の口座に資金が反映されるまで、数時間〜数営業日かかります。この期間は、送金方法や通貨、送金先の国によって異なります。 送金方法の違いと選び方 海外送金には、銀行(ネット銀行)を利用する方法と、資金移動業者を利用する方法に分かれます。それぞれの特徴や手続きの流れ、手数料などに違いがあるため、目的に応じて選ぶことが重要です。 銀行送金の特徴 銀行(メガバンク・地方銀行・ネット銀行など)を利用する場合、窓口やインターネットバンキングを通じて送金手続きを行います。銀行では、高額送金や法人取引に対応しているケースが多く、対面での相談が可能な点がメリットです。銀行ということで、心理的な安心感を抱く人もいるでしょう。 資金移動業者の特徴 旅行会社やIT企業などが提供する資金移動業者のサービスでは、スマートフォンやパソコンを使ってオンラインでの海外送金が可能です。手数料が相対的に安く、送金スピードも速い傾向があります。多言語対応のサポートを備えている事業者もあり、個人利用に適したサービスが多く展開されています。 資金移動業者のサービスは、さらに以下の3タイプに分類されます。 資金移動サービス 主な特徴 営業型 店舗から送金を依頼して、相手が別の店舗で受け取る方法 インターネット・モバイル型 送金専用口座を開設して、インターネットを通じてパソコン・携帯端末から振り込む方法 カード・証書型 カードや証書を利用して、送金する方法 出典)一般社団法人日本資金決済業協会「資金移動サービスを詳しく知る」 それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、送金金額や目的、送金先の国・地域に応じて最適な手段を選びましょう。 SWIFTコード・IBANとは? 海外送金を行う際には、送金先の銀行や口座を正確に指定するための情報が必要です。特に、SWIFTコードとIBANは、送金手続きにおいて重要な役割を果たします。 SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)コードは、銀行間の国際送金を行うための識別コードです。世界200以上の国と地域、11,000以上の金融機関が参加するネットワークで、送金先の銀行を特定するために使用されます。 一方、IBAN(International Bank Account Number)は、銀行口座の所在国・支店・口座番号などを統一形式で表したコードです。主にヨーロッパ諸国で使用されており、送金先の口座を正確に指定するために必要です。日本では一般的に使用されていませんが、欧州向け送金では必須となるケースがあります。 IBANの構造は以下のように定義されています。 IBANの構造 国コード(2桁英字) + チェックディジット(2桁数字) + BBAN (Basic Bank Account Number; 最大30桁英数字) 例えば、IBANが「DE 89 37040044 0532013000」の時には、以下のような意味を持ちます。 DE:国コード(ドイツ) 89:チェックディジット(誤り検出用) 37040044:銀行コード 0532013000:口座番号 ヨーロッパを中心とした多くの金融機関では、海外送金を行うときにSWIFTコードやIBANの指定が原則必須となっている点を押さえておきましょう。 出典) ・一般社団法人 全国銀行協会「SWIFT」 ・SWIFT「International Bank Account Number (IBAN)」 ・金融庁「決裁をめぐる欧州の動向~企業財務の観点を中心に~」 海外送金の必要書類と受取人情報 海外送金をスムーズに行うためには、事前に必要な書類や受取人の情報を正確に準備しておくことが重要です。金融機関や送金サービスによって求められる内容が異なる場合もあるため、送金前に確認を怠らないようにしましょう。 送金人が準備すべき本人確認書類 海外送金を行う際には、以下のような本人確認書類の提出が求められます。 運転免許証 パスポート(所持人記入欄に現住所の記載があるもの) マイナンバーカード 在留カード 特別永住者証明書 受取人に関する英文情報 送金先の受取人に関する情報は、英語表記で正確に記載する必要があります。以下の項目を事前に確認・準備しておきましょう。 銀行名・支店名・住所(英語表記) SWIFTコード IBAN(欧州向け送金の場合) 口座名義(英語表記) 受取人の住所(英語表記) 事前確認のポイント 海外送金を行う前には、いくつかの重要なポイントがあります。まず、金融機関によって必要な書類が異なる場合があるため、事前に公式サイトや窓口で確認しておくことが大切です。 書類に不備があると、送金が遅れることがあるため注意が必要です。また、受取人に関する英文情報は、スペルミスや表記ミスがないよう慎重に記載しましょう。正確な情報を準備することで、スムーズな送金につながります。 海外送金の方法別のメリット・デメリット 海外送金のそれぞれの方法には特徴があり、目的や送金先によって適した手段が異なります。ここでは、各方法のメリット・デメリットを明確に整理しながら、選び方のポイントを解説します。 銀行からの海外送金 銀行(メガバンク・地方銀行など)を利用した海外送金は、昔から広く使われている方法です。窓口での対面相談が可能なため、初めての送金でも安心して手続きできるのが大きな魅力です。また、インターネットバンキングを活用すれば、自宅からでも送金が可能です。 メリット 銀行送金の利点は、高額な送金にも対応できる点です。法人取引やまとまった金額の送金を行う場合には、銀行の信頼性と対応力が役立ちます。さらに、窓口で直接相談できるため、送金に関する不安や疑問をその場で解消できるのも安心材料です。 デメリット 一方で、銀行送金には相対的に手数料が高いというデメリットがあります。1件あたり数千円〜1万円程度かかることもあり、頻繁に送金する場合は負担が大きくなります。また、中継銀行を複数経由することで、着金までに時間がかかることがある点にも注意が必要です。 ネット銀行からの海外送金 ネット銀行は、店舗を持たずオンラインでサービスを提供する銀行です。海外送金もスマートフォンやパソコンから手続きできるため、忙しい方や遠方に住んでいる方にとって非常に便利な選択肢です。 メリット ネット銀行の魅力は、手数料の安さと手続きの手軽さにあります。事務コストが抑えられているため、銀行よりも安価な手数料で送金できる場合が多く、送金回数が多い方には適しています。また、スマホアプリを使って簡単に送金できるサービスもあり、利便性の高さが際立ちます。 デメリット 一方で、ネット銀行には送金限度額や対応通貨に制限がある場合があります。1回・1日・1ヶ月ごとの上限が設定されていることもあるため、事前に確認しておくことが重要です。また、すべてのネット銀行が個人向けの海外送金に対応しているわけではなく、サービスの有無を事前に確認する必要があります。サポート体制も電話やメールが中心で、対面相談ができない点は人によっては不安に感じるかもしれません。 資金移動業者からの海外送金 資金移動業者は、銀行とは異なる形で送金サービスを提供する企業です。オンラインで手続きが完結するため、スピーディーかつ低コストで送金できるのが特徴です。 メリット 資金移動業者のメリットは、送金スピードの速さと手数料の安さです。最短で1時間もかからず着金するサービスもあり、急ぎの送金にも対応できます。また、市場の為替レートに近いレートをリアルタイムで表示するなど、為替レートの透明性が高く、実質的なコストを抑えやすいのも魅力です。さらに、現金受け取りに対応しているサービスもあり、銀行口座を持たない受取人にも送金可能です。 デメリット 一方で、資金移動業者は預金口座としての利用ができないため、送金専用の使い方に限られます。また、送金上限が相対的に低く設定されている場合があり、高額送金には不向きなケースもあります。対応している国や通貨が限られていることもあるため、送金先が特殊な地域の場合は事前確認が必要です。 選び方のポイント 送金方法を選ぶ際は、送金目的・金額・送金先の国・通貨・スピード・サポート体制などを総合的に判断することが重要です。 例えば、学費や生活費などの個人送金であれば、手数料が安くスマホで手続きできるネット銀行や資金移動業者が便利です。急ぎの送金には、即日対応可能な資金移動業者が適しています。一方、高額の法人送金や対面での相談を希望する場合は、銀行の窓口サービスが安心です。 海外送金の手数料と為替レートの仕組み 海外送金を行う際には、手数料や為替レートの仕組みを理解しておくことが非常に重要です。送金額だけでなく、手数料や為替の影響によって、実際に受け取れる金額が大きく変わることもあります。 ここでは、海外送金にかかる手数料の種類や、為替レートの基本的な仕組み、そしてコストを抑えるための具体的な工夫について解説します。 関連記事はこちら海外送金の手数料を安くするには?主要サービス比較と注意点を解説 海外送金にかかる手数料の種類と仕組み 海外送金には、国内送金とは異なる手数料も存在します。送金の際にかかる主な手数料として、以下の4つを把握しておきましょう。 手数料 詳細 送金手数料 送金人が金融機関に支払う基本的な手数料で、国内の振込手数料に相当します。 中継銀行手数料(コルレス手数料) 送金が複数の銀行を経由する場合に発生する手数料で、送金額から差し引かれることが一般的です。 受取手数料 受取人が資金を受け取る際に、現地の金融機関で発生する手数料です。 為替手数料 送金時に適用される為替レートには、金融機関が設定する手数料が含まれています。これは「スプレッド」と呼ばれ、市場の為替レートとの差額が実質的な手数料となります。 これらの手数料は、送金方法や利用するサービスによって大きく異なります。例えば、銀行送金では、中継銀行手数料が高額になることもあり、資金移動業者では手数料が一律または低めに設定されているケースもあります。 為替レートの基本とスプレッドの意味 海外送金では、異なる通貨間の交換比率である「為替レート」が適用されます。為替レートは日々変動しており、金融機関のホームページやニュースなどで最新情報が公開されています。 送金時には、契約が成立した時点の為替レートが適用され、受取人が受け取る金額が決まります。ここで注意したいのが「スプレッド(為替手数料)」の存在です。 スプレッドとは、金融機関が提示する為替レートに含まれる手数料のことで、実際の市場レートとの差額を指します。例えば、1ドル=150円の市場レートに対して、送金時のレートが1ドル=152円であれば、2円分がスプレッドとして加算されていることになります。 スプレッドの幅は、通貨の種類や送金タイミングによって異なるため、複数のサービスを比較することが重要です。 海外送金のコストを抑える方法 海外送金にかかる手数料は、送金方法やサービスによって大きく異なります。少しの工夫でコストを抑えることができるため、事前にポイントを押さえておくことが重要です。ここでは、送金時に意識したい4つの工夫を紹介します。 複数のサービスを比較する まず基本となるのが、複数の送金サービスを比較することです。単に「送金手数料」だけを見るのではなく、中継銀行手数料やスプレッド(為替手数料)を含めた総コストで判断することがポイントです。 例えば、銀行送金では中継銀行を複数経由することで手数料が高くなることがありますが、資金移動業者では一律料金や低コストで提供されている場合もあります。 「手数料無料」の表記に注意する 「手数料無料」と表示されているサービスでも、実際には為替レートに手数料が上乗せされているケースがあります。表面上の手数料がゼロでも、実質的なコストが発生していることになります。 そのため、送金前には「為替レートが市場価格とどれくらい乖離しているか」を確認し、実質的な負担額を把握することが大切です。 送金タイミングを工夫する 為替レートは日々変動しており、送金タイミングによってコストが変わることがあります。例えば、円高のタイミングで送金すれば、同じ円額でもより多くの外貨を送ることができるため、結果的に手数料を抑えることにつながります。 ただし、為替の動きを正確に予測するのは難しいため、無理にタイミングを狙うよりも、ある程度の目安を持って計画的に送金することが現実的です。 送金回数をまとめる 頻繁に少額を送金するよりも、複数回の送金をまとめて一度に送ることで、手数料を節約できる場合があります。特に送金手数料が固定されているサービスでは、回数が増えるほど負担が大きくなるため、まとめて送る方が効率的です。 送金目的(学費・生活費・ビジネス取引など)や頻度に応じて、最適な送金方法とタイミングを選ぶことが、コスト削減の鍵となります。 安全な海外送金のための詐欺・マネロン対策 海外送金を行う際には、サービスの利便性だけでなく、安全性にも十分な注意が必要です。特に、詐欺やマネー・ローンダリング(資金洗浄)といったリスクを避けるためには、信頼できる送金業者の選定や、個人情報の管理、セキュリティ対策が欠かせません。 ここでは、安全な送金業者の見分け方や、実際に起きた詐欺事例、マネロン対策として重要なKYC(本人確認)のポイントについて解説します。 安全な送金業者の選び方 信頼できる送金業者を選ぶことは、安全な海外送金の第一歩です。特に、金融庁に登録されている資金移動業者であるかどうかは、確認すべき重要なポイントです。金融庁の公式サイトでは、以下の情報を公開しています。 所管 登録番号 登録年月日 資金移動業者名 法人番号 郵便番号 本店等所在地 代表等電話番号 業務の種別 出典)金融庁「資金移動業者一覧」 送金業者の公式サイトに記載されている情報と、金融庁の登録情報に齟齬がないかを事前に確認することで、悪質な業者を避けることができます。 海外送金に潜む詐欺の手口と防止策 海外送金に関連する詐欺の中でも、近年増加しているのがBEC(Business Email Compromise)=偽ビジネスメール詐欺です。これは、取引先を装った人物が偽のメールを送り、送金を指示するという手口です。 実際の事例 アメリカのFBIによると、2016年〜2021年の5年間でBECによる被害件数は約24万件、被害総額は約433億米ドルにのぼるという報告があります。日本でも、長年取引のある仕入先から「送金先口座が変更になった」と連絡を受け、疑わずに送金してしまったという事例があります。 出典)独立行政法人情報処理推進機構セキュリティセンター「ビジネスメール詐欺(BEC)の特徴と対策p.3」 防止策 送金の際には以下のような防止策を取ることで、未然に防ぐことができます。 メールだけで送金先の変更を受けた場合は、電話やFAXなど別の手段で確認する。 不審なメールを受け取った場合は、社内のセキュリティ担当者に報告する。 パソコンやネットワーク環境のセキュリティソフトを定期的に更新・点検する。 KYCとは?個人情報保護とマネロン対策の重要性 KYC(Know Your Customer)は、金融機関が顧客の本人確認を行う手続きのことであり、マネー・ローンダリング(通称マネロン)対策の柱となるものです。海外送金を行う際には、以下のような対策が求められます。 顧客情報(氏名・住所・本人確認書類など)の提出 送金目的や資金の出所の確認 不審な取引のモニタリング また、オンラインで送金手続きを行う場合は、パソコンやスマートフォンのセキュリティ対策も重要です。ウイルス対策ソフトの導入や、公共Wi-Fiの利用を避けるなど、日常的な情報管理が詐欺被害の防止につながります。 マネー・ローンダリングの仕組みや対策について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。 関連記事はこちら資金洗浄(マネー・ローンダリング)とは?仕組みや対策を解説 海外送金の方法別サービス比較 海外送金をスムーズに行うためには、各社が提供するサービスの特徴や手数料、対応通貨、送金スピードなどを事前に把握しておくことが重要です。送金の目的や頻度によって、選ぶべきサービスは異なります。 ここでは、中立的な視点から主要な銀行・ネット銀行・資金移動業者のサービスを比較し、それぞれの特徴を整理します。 ※本記事では、2025年11月時点で公式サイトにて海外送金サービスの提供を明示している企業を対象に、編集部が独自に情報を整理しています。特定の企業を優遇する意図はなく、情報の正確性と中立性を重視しています。最新のサービス内容は各社公式サイトをご確認ください。 手数料・対応通貨・スピード・サポート体制で比較 海外送金における各社の主なサービスの違いについて、送金手数料・対応通貨・送金スピード・サポート体制の有無を比較すると、次のとおりです。 table { border-collapse: collapse; width: 100%; table-layout: fixed; /* 列幅固定 */ margin-bottom: 20px; } th, td { border: 1px solid #ccc; width: 20%; /* 5列なので均等割り */ height: 60px; /* 行の高さ固定 */ padding: 8px; text-align: left; vertical-align: top; overflow: hidden; } th { background-color: #f4f4f4; } 銀行 送金手数料 対応通貨 送金スピード(着金日) サポート体制 三井住友銀行 店頭窓口:7,000~7,500円/件インターネットバンキング:2,500~3,500円/件 6通貨 未記載 電話・窓口 三菱UFJ銀行 店頭窓口:7,000~7,500円/件インターネットバンキング:2,500~3,000円/件 12通貨 未記載 電話・窓口 みずほ銀行 個人:8,000~8,500円/件法人:7,000~7,500円/件みずほダイレクトアプリ:5,000円 7通貨 送金手続きから一週間程度 オンライン・チャット ※以下の出典元より筆者作成 出典) ・三井住友銀行「海外への送金・海外からの送金・外貨建て送金」 ・MUFG「外国送金」 ・みずほ銀行「外国への送金・受け取り」 ネット銀行 送金手数料 対応通貨 送金スピード(着金日) サポート体制 楽天銀行 750円/件 67通貨 送金日から1営業日~5営業日程度 電話・メール ソニー銀行 3,000円/件 11通貨 送金実行から3営業日~4営業日以上 電話・チャット 住信SBIネット銀行(法人) 2,500円/件 10通貨 SWIFT発信日からおおむね1日~3日程度 WEBフォーム ※以下の出典元より筆者作成 出典) ・楽天銀行「海外送金」 ・ソニー銀行「ソニー銀行からの外貨送金」 ・住信SBIネット銀行「法人のお客さま 外貨送金・外貨受取サービス」 資金移動業者 送金手数料 対応通貨 送金スピード(着金日) サポート体制 Wise(ワイズ) 0.33%~ 24通貨 送金手続きから最短即日~最長5日 電話・メール・チャット Revolut(レボリュート) 送金手数料は無料 41通貨 送金手続きから最短即日~最長2営業日 チャット PayPal(ペイパル) 499円/件 22通貨 即時振替:数分(最長30分)標準振替:約3~6営業日 電話・メール SBIレミット 460円~/1件 13通貨 送金方法、着金方法、送金先国により変化■現金受取の場合最短:10分通常:1~3時間程度■銀行口座の場合最短:10分通常:1~2営業日 電話・メール ※以下の出典元より筆者作成 出典) ・wise:公式サイト ・Revolut:公式サイト ・PayPal:公式サイト ・SBIレミット:公式サイト 目的別おすすめ送金サービス|ビジネス・学費・生活費 送金の目的によって、選ぶべきサービスの種類は異なります。以下は代表的な利用シーンに応じた、銀行・ネット銀行・資金移動業者の選び方のポイントです。 ビジネス目的(法人送金・複数拠点への送金) ビジネス目的であれば、銀行や法人対応をしている資金移動業者が選択肢となるでしょう。銀行は高額送金や複数通貨への対応に優れており、法人向けのサポート体制も整っています。資金移動業者の中にも、法人利用に対応したサービスを提供しているところがあり、スピードやコスト面で優位な場合もあります。 学費・生活費などの個人送金 個人で学費や生活費を送る場合は、ネット銀行や個人向けの資金移動業者が便利です。これらのサービスは、スマートフォンやパソコンから簡単に手続きができ、手数料も比較的安価です。日本語対応のサポートがあるサービスを選ぶことで、初めての送金でも安心して利用できます。 急ぎの送金・現金受け取り 急ぎの送金や、受取人が銀行口座を持っていない場合には、即時送金や現金受け取りに対応している資金移動業者が適しています。最短で即日着金できるサービスもあり、スピード重視の送金ニーズに応えることができます。 送金金額・通貨・送金先の国・サポート体制・手数料の総額を比較し、目的に合ったサービス種別を選ぶことが、安心かつ効率的な海外送金につながります。 海外送金前に確認したい注意点とよくある疑問 初めて海外送金サービスを利用する際には、手続きや制度に関して不安や疑問を感じる方も多いでしょう。ここでは、特に問い合わせの多いポイントについて、わかりやすく解説します。 送金限度額や税金の注意点 海外送金の限度額は、利用する金融機関やサービスによって異なります。一般的には、1回あたり百万円から数千万円の範囲で設定されていることが多く、ネット銀行では1回・1日・1ヶ月ごとの上限が設けられている場合もあります。送金前に、各社の公式サイトで最新の限度額を確認しておきましょう。 また、3,000万円相当額以上の送金を行う場合は、外為法に基づき、金融機関が財務省に事後報告する義務があります。これは送金人が直接報告するものではありませんが、送金目的によっては税金が発生する場合があります。 特に注意したいのが贈与税です。年間110万円を超える贈与があった場合、課税対象となる場合があります。学費や生活費など、扶養義務者からの送金は非課税とされることが多いですが、娯楽費などの目的で送金された場合は課税対象になることもあるため、事前に確認しておくことが重要です。 出典) ・財務省「日本と海外との間の送金を行う際に必要な手続はどうなっていますか」 ・国税庁「贈与税がかかる場合」 着金までの日数と遅延の原因 送金してから着金するまでの日数は、送金方法や通貨の種類、送金先の国によって異なります。一般的には数営業日で着金しますが、以下のような要因で遅延することがあります。 中継銀行の数が多い場合 送金先の国の規制や金融機関の処理状況 送金手続きに不備がある場合 送金時点で正確な着金日時を把握するのは難しいため、余裕を持ったスケジュールで送金することが望ましいです。 トラブル時の対応方法 万が一、送金が完了しなかった場合は、原則として送金人に返金されます。ただし、組み戻し手数料が差し引かれることがあり、返金額が減る場合があります。 また、送金を依頼した金融機関では詳細な確認ができないケースもあるため、送金先の金融機関のサポート窓口に直接問い合わせる必要があります。送金前に、送金先の連絡先を控えておくと安心です。 まとめ 海外送金を行う際は、利用する金融機関や送金方法、送金先の国・地域によって、手数料や着金までの日数が異なります。また、為替レートやスプレッドの影響も受けるため、実際にかかる総コストを事前に把握しておくことが重要です。 各社が提供する海外送金サービスにはそれぞれ特徴があり、送金手数料の設定、対応通貨の種類、送金スピード、サポート体制などに違いがあります。送金の目的や頻度、送金先の条件に応じて、最適なサービスを選ぶようにしましょう。 例えば、オンラインでの手続きや多言語対応のサポートを重視する場合は、資金移動業者のサービスが選択肢となることもあります。一方で、高額の送金や対面での相談を希望する場合は、銀行の窓口サービスが適しているケースもあります。 初めて海外送金を利用する方は、複数のサービスを比較し、信頼性や利便性、コスト面を総合的に判断したうえで、安心して利用できる方法を選ぶことが大切です。 安心・便利な海外送金ならSBIレミット SBIレミットの国際送金について、webサイトで詳しく説明いたします。※SBIレミットのWEBサイトに遷移します。 安心・便利な海外送金ならSBIレミット SBIレミットの国際送金について、webサイトで詳しく説明いたします。 ※SBIレミットのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。
「転職して間もないけれど、住宅ローンは組めるのだろうか…」 そんな不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。実は、勤続年数が1年未満でも、条件次第では住宅ローンの審査に通る可能性があります。 この記事では、金融機関が審査で重視するポイントや、勤続年数が短くても通過しやすくなる対策について、わかりやすく解説します。 勤続年数と住宅ローン審査の関係 住宅ローンを利用するには、金融機関の審査に通過する必要があります。その審査項目の中でも「勤続年数」は、安定した収入を判断する重要な指標とされています。ここでは、勤続年数が審査に与える影響について詳しく見ていきましょう。 金融機関の9割以上が「勤続年数」を重視 国土交通省の調査によると、融資を行う際に考慮する項目の上位は以下のとおりです。 完済時年齢 98.4% 借入時年齢 96.0% 健康状態 95.1% 年収 93.4% 勤続年数 93.2% 出典)国土交通省「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査p.19」 このデータからもわかるように、勤続年数は年収や健康状態と並ぶ重要な審査項目であり、約9割の金融機関が重視しています。 勤続年数は「1年以上」が目安 では、具体的にどれくらいの勤続年数が求められるのでしょうか。以下は、金融機関が設定している勤続年数の基準です。 勤続年数の基準 回答数 回答率(複数回答) 3年以上 128 約14% 2年以上 53 約5% 1年以上 612 約67% その他 168 約18% ※回答機関数908 出典)国土交通省「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査p.32」をもとに筆者作成 この結果から、「勤続年数1年以上」がひとつの目安となっていることがわかります。もちろん、3年以上の勤続が望ましいとする金融機関もあります。しかし、1年未満でも条件次第では住宅ローンの審査に通る可能性があります。 勤続年数が短いと住宅ローン審査が難しい理由 住宅ローンの審査では、勤続年数は「収入の安定性」を判断するための重要な指標です。現在の勤務先で長く働いているほど、収入が途絶えるリスクが低いと見なされ、審査では有利になります。反対に、勤続年数が短い場合は「収入が安定していない」と判断され、審査に不利となる場合があります。 転職直後の申し込みは注意が必要 勤続年数が短い主な理由のひとつが「転職直後」です。近年は転職が一般的になってきましたが、住宅ローンの審査では依然として勤続年数が重視される傾向があります。そのため、転職してすぐのタイミングで住宅ローンを申し込むと、審査で不利に働く可能性が高いでしょう。 関連記事はこちら住宅ローンの本審査後に転職したらどうなる?リスクと注意点、対処法を紹介 勤続年数1年未満でも住宅ローンを組むための選択肢と対策 勤続年数が1年未満でも、住宅ローンの審査に通る可能性はあります。ここでは、審査に通過しやすくなるローンの選び方と対策方法をまとめてご紹介します。 フラット35なら勤続年数の条件なし 【フラット35】は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する、全期間固定金利型の住宅ローンです。勤続年数に関する条件が設けられておらず、年齢・総返済負担率・資金使途などの要件を満たせば、勤続年数が1年未満でも申し込み可能です。 申込要件の1つである「総返済負担率」は、以下の基準が設けられています。 年収400万円未満:30%以下 年収400万円以上:35%以下 この基準を満たしていれば、他の要件・審査項目(信用情報、物件評価など)と合わせて総合的に判断されます。 関連記事はこちらフラット35の審査基準を徹底解説!本当に審査が甘い? 勤続年数にこだわらない金融機関を選ぶ 勤続年数に厳格な基準を設けず、柔軟に審査する金融機関があります。そういった金融機関を選択したうえで、複数の住宅ローン商品を比較し、フラット35のような勤続年数の条件がないローン商品などを選ぶことで、審査通過の可能性を高めることができます。 勤続年数以外の条件を整える 勤続年数が短い場合でも、他の条件が良ければ審査に通る可能性は十分あります。例えば、以下のポイントを意識しましょう。 総返済負担率を抑える 年収に対する年間返済額を低めに設定する 信用情報に注意する 他のローンを返済する、クレジットカードの延滞を避ける 転職する場合は年収アップを狙う 収入が上がればプラス評価につながる可能性がある まとめ 住宅ローンの審査では、多くの金融機関が申込者の勤続年数を重視しています。転職などが理由で勤続年数が1年未満の場合、審査で不利になることはありますが、フラット35のように勤続年数の条件がないローン商品も存在します。 また、金融機関によって審査基準は異なるため、自分に合った選択肢を見つけることが大切です。勤続年数以外の条件(返済負担率、信用情報、年収など)を整えることで、審査通過の可能性を高めることもできます。 なお、勤続年数が短いからといって、虚偽の申告をするのは絶対に避けましょう。金融機関は審査の際に勤務先や勤務状況を確認します。虚偽が発覚すると、契約違反となり、債務の一括返済を求められるリスクもあるため、正確な情報で申し込むことが何より重要です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 期限の利益とは、住宅ローンを借り入れた際などに生じる債務者の利益のことです。債権者は期限が到来するまで履行を請求できず、債務者にとっては債務に猶予が生まれるため“利益”となります。一方で、契...
住宅ローンの返済日、うっかり口座の残高が足りずに返済できなかった。そんな経験はありませんか?実は、住宅ローンの口座残高不足による延滞状態を放置すると、遅延損害金の発生や信用情報への悪影響など、思わぬリスクにつながることがあります。 この記事では、住宅ローンが口座残高不足で返済できなかったときの再引き落としの有無や延滞によるリスク、今すぐできる対処法について、わかりやすく解説します。 住宅ローンが口座残高不足で返済できなかったときどうなる? 住宅ローンの返済日に口座残高が不足して返済できなかったとしても、すぐに重大な問題になることはありません。しかし、遅延損害金の発生、信用情報への影響など、放置すると将来的に大きなリスクにつながる恐れがあります。 まずは、速やかに金融機関に連絡し、指示に従って対応することが大切です。 遅延損害金が発生する 住宅ローン返済が遅れると、遅延損害金が発生する場合があります。これは、元金の償還が遅れた場合などに、返済期日を過ぎた日数に応じて課されたりする費用です。遅延損害金は、未払いの返済額に加えて支払う必要があるため、放置せず、速やかに対応することが重要です。 遅延損害金の計算例 遅延損害金は、以下の計算式で求められます。 遅延損害金=元金×遅延損害利率(年率)×延滞日数÷365 例) 元金10万円、遅延損害利率14.0%、延滞日数12日の場合 10万円×14.0%×12日÷365日=約460円 一度の延滞が少額だとしても、繰り返すことで合計額が大きくなり、家計への負担が増加します。特に、複数回の延滞が続くと信用情報にも記録されることがあるため、金融機関への早めの連絡と入金が欠かせません。 出典)一般財団法人 住宅金融普及協会「住宅ローン用語集」 口座残高不足で返済できなかったとき再引き落としはできる? 住宅ローンの返済が口座残高不足でできなかった場合、再引き落としが行われるかどうかは金融機関によって異なります。 まずは、口座残高不足で引き落としができなかったことが判明した時点で、速やかに金融機関へ連絡し、どのように対応すればよいかを確認することが重要です。放置すると遅延損害金が発生するだけでなく、信用情報にも影響することがあるため、早めの行動がカギとなります。 再引き落としが行われるケースが多い 多くの金融機関では、返済日に口座残高が不足していた場合、各金融機関の定めるタイミングで再引き落としが行われます。再引き落としの実施前までに返済口座に不足額を入金することで、返済を行うことができます。また、延滞期間に応じた遅延損害金も同時に引き落とされる場合もあるため、事前に返済額がいくらになるかを確認しておくことが重要です。 引き落としのタイミングについてなどは、金融機関のホームページや問い合わせ窓口にて確認しましょう。 指定口座への振り込みを求められることもある 一部の金融機関や住宅ローン商品では、再引き落としではなく、指定口座への振り込みを求められるケースもあります。この場合は、振込先の口座情報や金額を正確に確認し、速やかに対応しましょう。 なお、返済期日を過ぎてからの振り込みは、すでに延滞扱いとなっている可能性があります。延滞による遅延損害金が発生する場合もあるため、金融機関からの指示を受けたら、できるだけ早く対応することが重要です。 住宅ローン返済を放置するリスク 口座残高不足に気づいた時点で、速やかに金融機関へ連絡し、返済資金を入金すれば、大きな問題に発展することはほとんどありません。しかし、そのまま放置してしまうと、住宅ローンの延滞が深刻化し、以下のような重大なリスクにつながることがあります。 一括返済を求められる 延滞が一定期間続くと、住宅ローンを分割で返済する権利(=期限の利益)を失い、残債の一括返済を求められることがあります。一括返済ができない場合は、任意売却や競売によって自宅を手放すことになるケースもあるため、早期対応が不可欠です。 関連記事はこちら期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 他の借り入れや住宅ローンの借り換えが難しくなる 住宅ローンの延滞情報は個人信用情報機関に登録され、いわゆる「ブラックリスト入り」状態になる場合があります。その結果、車のローンや教育ローンなどの新たな借り入れはもちろん、住宅ローンの借り換えも難しくなるため、将来の選択肢が大きく制限されてしまう恐れがあります。 関連記事はこちらブラックリストでも住宅ローンは組める?審査のポイントを解説 最終的には自宅を手放すことになる 住宅ローンの延滞が長期化すると、金融機関から督促状や催告状が送付されます。それでも対応しない場合、保証会社による代位弁済が行われ、競売の申立てを受ける場合があります。最終的には、自宅が差し押さえられ、強制的に競売にかけられて売却されることになり、家を失う結果につながります。 関連記事はこちら競売とは?競売を回避すべき理由とその回避方法 住宅ローンの返済が苦しいときの対処法 住宅ローンの返済をうっかり忘れただけでなく、そもそも今後の返済が厳しいといった場合には、早めに対策を講じることが重要です。ここでは、返済負担を軽減するための具体的な方法をいくつか紹介します。 返済スケジュールの見直し 住宅ローンの借り換え 任意売却 リースバック 返済スケジュールの見直し 金融機関によっては、返済期間の延長や毎月の返済額の調整など、返済スケジュールの見直しに応じてもらえる場合があります。たとえば、「フラット35」では、不況による収入減少などで返済が困難になった契約者を対象に、返済期間の延長や一時的な返済猶予の相談が可能です。 ただし、返済期間を延長することで、総返済額や利息が増えるため、事前にシミュレーションしておくと安心です。 住宅ローンの借り換え 他の住宅ローンに借り換えることで、金利や返済期間を見直し、毎月の返済額を抑えることができる場合があります。住宅ローンの借り換えが難しい場合は、不動産担保ローンや、シニア層向けのリ・バース60への借り換えも選択肢に入ります。 「リ・バース60」については、毎月の返済は利息のみで、元金は債務者の死後に一括返済される仕組みのため、老後の生活費の負担軽減が期待できます。 関連記事はこちら高齢者向け住宅ローン「リ・バース60」を徹底解説! 任意売却 任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった際に、債権者と債務者が合意のうえで担保不動産を売却する方法です。競売とは異なり、市場価格に近い金額で売却できる可能性があります。ただし、金融機関の同意が必要で、売却後も残債が残る場合があるため、事前に条件をよく確認しましょう。 関連記事はこちら競売を回避する「任意売却」とは?注意点や流れを解説 リースバック リースバックとは、自宅を売却したあとも、同じ家に住み続けられるサービスです。売却先のリースバック運営会社と賃貸借契約を結び、毎月家賃を支払うことで住み慣れた環境を維持できます。 「今の家を手放したくない」「生活環境を変えたくない」と考えている方には、リースバックも選択肢の一つとなるでしょう。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みからメリット・デメリットまで徹底解説 まとめ 住宅ローンの返済が口座残高不足でできなかった場合、時間が経つほど遅延損害金が増え、信用情報にも影響を及ぼす場合があります。多くの金融機関では、再引き落としが行われますが、対応方法は金融機関によって異なるため、必ず事前に確認しましょう。 住宅ローンをそのまま返済せずに放置すると、一括返済の請求や競売による自宅の売却など、深刻な事態に発展するリスクがあります。こうした事態を避けるためにも、口座残高不足で返済できなかったことに気づいたら速やかに金融機関へ連絡し、適切な対応を取ることが何よりも大切です。 不安な方は、まずは金融機関の窓口や相談センターに連絡してみましょう。また、住宅ローンの見直しや借り換えを検討している方は、専門家への相談もおすすめです。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅ローンを滞納したらどうなる?対処法も併せて解説 収入の減少や、まとまった支出の発生で、住宅ローンが払えなくなってしまう人もいるでしょう。住宅ローンを滞納すると、自宅が競売にかけられる恐れがあります。住宅ローンの返済が苦しいと感じたら、なる...
新築住宅の購入にあわせて、門扉や塀、駐車場などの外構工事を検討する方は少なくありません。ところが、外構工事費用は数十万円〜数百万円と高額になることもあり、「住宅ローンに組み込めるのか?」と悩む人も多いのではないでしょうか。 この記事では、外構工事費用を住宅ローンに含めるための条件や注意点、リフォームローンとの違いまでわかりやすく解説します。 外構工事とは 外構工事とは、住宅の建物本体以外に施す工事のことで、一般的には「エクステリア工事」とも呼ばれます。門扉や塀、駐車場、玄関アプローチなど、住まいの外回りを整える工事が対象となり、住宅の機能性・安全性・美観を高める重要な役割を担います。 代表的な外構工事には、以下のようなものがあります。 駐車場の舗装やカーポートの設置 門扉・塀・フェンスの設置 玄関アプローチの整備 ウッドデッキや庭の造園 外構工事費用は、工事の内容や範囲、デザイン、使用する素材などに応じて変動します。費用を正確に把握するには、複数の業者から見積もりをとることが重要です。 特に新築住宅の場合、外構工事の検討タイミングによって予算や工事がスムーズに進むかが左右されます。物件の引き渡し直前では打ち合わせの時間が限られるため、建物工事の着工前後に外構も含めて早めに相談することが理想的です。これにより、予算の確保や工事スケジュールの調整がしやすくなり、後々のトラブルも防ぎやすくなります。 外構工事費用は住宅ローンに組み込める? 外構工事費用を住宅ローンに組み込めるかどうかは、依頼方法と金融機関の取り扱い方針によって異なります。以下の2つの観点から確認しておきましょう。 依頼先による違い 外構工事の依頼方法には、主に以下の2つがあります。 住宅建築と外構工事を工務店やハウスメーカーに一括して依頼する方法 外構工事のみを別の専門業者に依頼する方法 一括依頼の場合は、外構工事費用も住宅ローンに含めることが可能なケースが多く、外構工事にかかる具体的な内容や費用が契約書等に明記されていれば金融機関も対応しやすくなります。 一方、外構工事を別の専門業者に依頼する場合は、住宅ローンに組み込めないことが一般的です。その場合は、リフォームローンやフリーローンなど、別の資金調達手段を検討する必要があります。 金融機関による取り扱いの違い 外構工事費用を住宅ローンに組み込めるかどうかは、金融機関の審査基準や契約書類等の内容によって異なります。 例えば、以下のような条件を満たすと、住宅ローンに外構工事費用を組み込める可能性があります。 請負契約書・売買契約書・注文書などに外構工事費用が明記されていること 物件の引き渡しまでに外構工事が完了していること 住宅購入資金と同時に外構工事費用を支払うこと これらの条件を満たす場合、金融機関に契約書類の原本を提示し、写しを提出することで、外構工事費用も住宅ローンの対象として認められることがあります。 出典)フラット35「対象となる住宅の建設費・購入価額とはどのようなものですか?」 外構工事費用を住宅ローンに組み込む際の注意点 外構工事費用を住宅ローンに組み込むことを検討する際は、返済負担、税制優遇、業者選定の自由度など、いくつかの重要なポイントに注意が必要です。 返済負担に問題がないか 外構工事費用を住宅ローンに含めると、当然ながら借入総額が増加します。これにより、月々の返済額や総返済額がどれくらい増えるのかを事前に試算し、家計への影響を確認しておくことが重要です。 目安として、住宅ローンの返済比率(年収に対する年間返済額の割合)は20%以内に抑えられているか確認しましょう。国土交通省の調査によると、注文住宅の平均返済比率は18.4%です。 将来的な教育費や老後資金などの支出も踏まえ、無理のない返済計画を立てましょう。 出典)国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査p.53」 住宅ローン控除の対象になるか 原則として、外構工事は住宅の取得費用には含まれないため、住宅ローン控除の対象外です。ただし、以下の条件を満たす場合は控除対象となる可能性があります。 外構工事費用が建物の建築費用の10%未満であること 住宅本体と外構工事を同一の事業者に一括して依頼していること(外構工事費用を住宅ローンに組み込んでいること) なお、リフォームローンで外構工事費用を支払った場合は、控除の対象にはなりません。控除の有無によって税負担が大きく変わる可能性があるため、事前に確認しておくことが大切です。 出典)国税庁「門や塀等の取得対価の額」 関連記事はこちら【令和7年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 施工のこだわりが満たされるか 住宅ローンに外構工事費用を組み込むには、基本的に住宅建築工事と外構工事を一括で依頼する必要があります。そのため、外構工事を自分で選んだ専門業者に依頼したい場合は、住宅ローンに含めるのが難しくなることがあります。 一括依頼には、スケジュール調整がしやすく、工事がスムーズに進むというメリットもありますが、依頼先の選択肢が限られることで、価格や品質の比較がしづらくなるリスクもあります。 自分にとって最適な方法を選ぶためには、外構工事の自由度と利便性のバランスをよく検討することが重要です。 外構工事における住宅ローンとリフォームローンの比較 外構工事費用の資金調達方法としては、住宅ローンに組み込む方法のほか、住宅ローンとは別にリフォームローンを利用する方法があります。どちらを選ぶかは、依頼先の専門業者の種類や金融機関の取扱方針、工事のタイミングなどによって異なります。 前述のとおり、住宅ローンは、建物の建築費用とあわせて外構工事費用を一括で借り入れる際に利用されるもので、一定の条件を満たせば外構工事費用も組み込むことが可能です。一方、住宅ローンに外構工事費用を組み込めない場合は、リフォームローンを別途利用することで資金を確保することができます。 以下の表で、住宅ローンとリフォームローンの主な違いを比較してみましょう。 住宅ローン リフォームローン 金利 低め 高め 住宅ローン控除 原則対象外(例外あり) 対象外 業者の自由度 低い 高い ※筆者作成 なお、住宅取得に関連するローンとして「諸費用ローン」があります。これは、住宅ローンに組み込めない事務手数料や登記費用などの借り入れに利用されますが、外構工事費用は基本的に対象外です。 また、資金使途に制限のない「フリーローン」を利用する方法もあります。こちらは外構工事費用にも使えますが、住宅ローンやリフォームローンに比べて金利が高めに設定されているため、慎重な検討が必要です。 まとめ 外構工事費用は、住宅ローンに組み込めるケースと組み込めないケースがあります。建築工事と外構工事を一括で依頼し、契約書類等で金額が確認できる場合は、住宅ローンに含められる可能性があります。一方、別の専門業者に依頼する場合は、リフォームローンなどの利用が必要です。 それぞれのローンには、金利や控除の対象、業者選定の自由度などに違いがあるため、返済負担や将来の支出も含めて慎重に検討しましょう。外構工事の内容や費用は早めに計画し、資金調達方法を含めて、自分に合った選択をすることが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 手取り30万円で月10万円返済はきつい?住宅ローンの適正額とは 手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済するのは、果たして現実的なのでしょうか? この記事では、返済負担率という指標から、無理なく返済できる借入額の目安(=適正額)を具体的にシミュレーショ...
住宅ローンを考えるとき、「最大でいくら借りられるか」ではなく、「将来も安心して返済できるか」が大切なポイントです。この記事では、年収1,400万円の方に向けて、借入可能額や月々の返済額のシミュレーションを具体的にご紹介します。 この記事は関連記事の「年収別・住宅ローンの借入適正額早見表」の中でも、年収1,400万円の方向けの解説記事です。「年収別・住宅ローンの借入適正額早見表」では、他の年収層の目安も確認できますので、併せてご覧ください。 関連記事はこちら【早見表】年収別・住宅ローンの借入適正額 年収1,400万円の返済負担率別にみる借入可能額と家計への影響 年収1,400万円の方が住宅ローンを検討する際、借入額は「返済負担率」によって大きく変わります。ここでは、返済負担率15%〜35%までの借入可能額の目安をシミュレーションします。 【条件】 返済期間:35年 適用金利:1.0% 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし) 返済負担率 年間返済額 借入可能額の目安 15% 210万円 約6,199万円 20% 280万円 約8,265万円 25% 350万円 約1億332万円 30% 420万円 約1億2,398万円 35% 490万円 約1億4,465万円 出典)住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成 ※本試算は、住宅保証機構株式会社の「住宅ローンシミュレーション」をもとに算出した参考値です。実際の借入可能額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。 返済負担率が高くなるほど借入可能額は増えますが、将来の支出やライフプランを踏まえた慎重な資金計画が重要です。無理のない返済額を見極めるためにも、複数のシミュレーションを行い、家計への影響を具体的に把握しておきましょう。 年収倍率から見る年収1,400万円の購入価格の目安 住宅購入の予算を考える際に参考になる指標のひとつが「年収倍率」です。これは、住宅購入にかかる所要資金を世帯年収で除した数値で、住宅金融支援機構の調査によると、フラット35利用者の年収倍率は、住宅の種類によって平均的な倍率が異なります。 住宅金融支援機構の調査データを基に年収1,400万円の場合を算出すると、各住宅の種類ごとに、過去の購入実績に基づく「平均的な購入価格」は以下のようになります。 住宅の種類 年収倍率 平均的な購入価格(年収×年収倍率) 土地付注文住宅 7.5倍 1億500万円 マンション 7.0倍 9,800万円 注文住宅 6.9倍 9,660万円 建売住宅 6.7倍 9,380万円 中古マンション 5.5倍 7,700万円 中古戸建 5.3倍 7,420万円 出典)住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査(年収倍率(融資区分別)の推移)p.12」をもとに筆者作成 ただし、年収倍率は住宅購入の予算を考える際に参考になる指標のひとつであり、実際に無理なく返済できる金額とは異なります。資金計画を立てる際には、返済負担率や将来の支出も踏まえたシミュレーションを併せて行うことが重要です。 頭金1,500万円で購入した場合の返済額シミュレーション 年収1,400万円の方であれば、土地付き注文住宅やマンションなど、比較的高額な物件も現実的な選択肢になります。実際、首都圏では新築マンションの平均価格が9,000万円を超えていますが、十分に手が届く水準です。 ここでは、頭金1,500万円を用意した場合に、物件価格ごとにどれくらいの借入額と月々の返済額になるのかを試算します。家計への影響をイメージするための参考にしてください。 【条件】 返済期間:35年 適用金利:1.0% 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし) 物件価格 借入額 月々の返済額 総返済額 8,000万円 6,500万円 183,485円 77,063,810円 9,500万円 8,000万円 225,828円 94,847,799円 1億1,000万円 9,500万円 268,171円 112,631,772円 出典)住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成 変動金利と固定金利で月々の返済額はどう変わる? 住宅ローンの金利タイプは、月々の返済額に大きく影響します。たとえば、変動金利は初期の返済額を抑えられる一方で、将来的に金利が上がると返済額も増えるリスクがあります。一方、固定金利は金利が一定のため、返済額が変わらず、長期的な資金計画を立てやすいのが特徴です。 将来の収入や支出の見通しを踏まえて、無理のない返済ができる金利タイプを選びましょう。 以下は、仮に変動金利型の当初の金利を0.5%、固定金利型の金利を1.5%とした場合の月々の返済額をシミュレーションしたものです。 【条件】 借入額:6,500万円 返済期間:35年 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし) 金利タイプ 金利 月々の返済額 変動金利型 0.5% 168,730円 固定金利型 1.5% 199,019円 出典)住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成 関連記事はこちら住宅ローンは変動から固定に借り換えるべき?金利上昇時の判断ポイントを解説 500万円の繰り上げ返済でどれだけの差が出る? 繰上返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの方法があります。どちらも住宅ローンの元金を前倒しで返済することで利息負担を軽減できますが、目的や効果が異なります。 特長 期間短縮型 返済額軽減型 返済期間 短縮される 変わらない 月々の返済額 変わらない 減少する イメージ図(例) ※筆者作成 関連記事はこちらフラット35の繰り上げ返済をする前に確認したい3つのポイント 以下の表は、5年後に500万円を繰上返済したとき、実際にどれくらいの差が出るのか、シミュレーションしたものです。 【条件】 借入額:6,500万円 適用金利:1.0% 返済期間:35年 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし) 通常返済 繰上返済 期間短縮型 返済額軽減型 月々の返済額 183,485円 183,485円 167,403円(軽減額16,082円) 返済期間 35年 約32年(約3年短縮) 35年 総返済額 77,063,810円 75,424,465円 76,274,287円 利息軽減額 ー 1,639,345円 789,523円 出典)住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成 繰上返済は、家計に余裕があるときに活用することで、将来の負担を軽くする有効な手段です。ライフプランや資金の流動性を踏まえ、無理のない範囲で計画的に進めましょう。 まとめ 年収1,400万円の方は、比較的高額な物件も選択肢に入るため、住宅購入の幅が広がります。しかし、借入額や返済額は慎重に検討することが重要です。返済負担率や年収倍率、金利タイプの違いによって、月々の返済額は大きく変わります。 また、繰上返済の活用によって、返済期間を短縮したり毎月の返済額を減らしたりすることも可能です。住宅ローンは長期にわたる支出だからこそ、ライフプランや将来の支出も見据えた資金計画が欠かせません。 複数のシミュレーションを行い、「無理なく返せるか」を軸に、納得のいく住宅購入を目指しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35で住宅ローンを組みたいときはどこに相談する?選び方と注意点を解説 住宅ローンの選択肢として人気の高い「フラット35」。その魅力は長期固定金利で、将来の金利変動リスクを避けられる点にあります。しかし、具体的にどの金融機関や相談先を選べば良いのか、迷う方も多い...
住宅ローンを検討していると、「事務手数料はいつ支払うのか?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。実際、事務手数料は数十万~数百万円にのぼることもあり、支払時期や金額を把握しておくことは、資金計画を立てるうえで非常に重要です。 この記事では、住宅ローンの事務手数料の支払時期や負担を軽減する具体的な方法について、わかりやすく解説します。 住宅ローンの事務手数料とは 住宅ローンの事務手数料とは、ローン契約時に金融機関に支払う手数料のことです。「融資手数料」や「事務取扱手数料」と呼ばれることもあり、金融機関によって名称が異なります。 この手数料は、住宅ローンの審査や契約手続きなどにかかる事務コストをカバーするためのもので、借入金額や契約内容によって金額が異なります。 事務手数料には、主に以下の2種類があります。 定額型 借入金額にかかわらず、一定額の手数料を支払う方式 定率型 借入金額に対して、一定の割合で手数料が決まる方式 関連記事はこちら住宅ローンの保証料型と融資手数料型の違いとは? 事務手数料と保証料との違い 事務手数料とは別に、「保証料」が必要になる場合もあります。保証料は、借主が万が一返済できなくなった場合に、保証会社が代わりに返済を行うための費用です。 保証料の支払方法には、以下の2種類があります。 一括前払い方式(外枠方式) 住宅ローンの借入時に、保証料をまとめて支払う方式 金利上乗せ方式(内枠方式) 金利に一定割合の保証料を上乗せし、毎月の返済に含めて支払う方式 金融機関によっては、保証料が不要な場合もあれば、事務手数料と保証料の両方が必要な場合もあります。そのため、事務手数料と保証料の合計額を確認し、総額の費用として比較検討することが大切です。 関連記事はこちら住宅ローンの保証会社とは?役割や種類、利用時の注意点を解説 住宅ローンの事務手数料の支払時期と支払方法 支払時期 住宅ローンの事務手数料は、融資実行時に一括で支払うのが一般的です。この手数料は、融資を受けるための事務手続きにかかる費用であり、毎月のローン返済に含まれるものではありません。そのため、契約時点でまとまった金額を準備しておく必要があります。 支払方法の違い 事務手数料の支払方法は金融機関によって異なり、主に次の2つのパターンがあります。 借入金額から事務手数料を差し引いた金額が、振り込まれる方式 借入金額が全額振り込まれた後、事務手数料が引き落とされる方式 例えば、借入金額が3,000万円で事務手数料が66万円の場合、前者の方式では、実際に振り込まれる金額は2,934万円となります。対して、後者の方式では、一時的に3,000万円が振り込まれますが、すぐに手数料分の金額が引き落とされます。 どちらの方式になるかは金融機関によって異なるため、事前に確認しておきましょう。 出典)フラット35「融資金は、融資手数料等の諸経費が差し引かれて交付されるのですか?」 住宅ローンの事務手数料が支払えない場合の対処法 住宅ローンの事務手数料が高額になり、一括で支払うのが難しい場合は、以下のような方法を検討しましょう。 住宅ローンに組み込む 金融機関によっては、事務手数料をはじめとする諸費用(保証料、登記関連費用など)も含めて借り入れが可能です。この方法を選べば、契約時にまとまった金額を用意する必要がなくなります。ただし、借入金額の増加によって、総返済額が増加する点に注意しましょう。 諸費用ローンを組む 諸費用ローンとは、住宅ローンとは別に、登記費用や事務手数料など、住宅購入時に発生する諸費用をカバーするためのローンです。一般的に、住宅ローンよりも金利が高めに設定されています。そのため、検討する際は金利や返済期間を比較し、本当に必要かどうかも踏まえて検討することが大切です。 住宅ローンの事務手数料の負担を軽減する3つの方法 住宅ローンの事務手数料は、借入金額や契約内容によって高額になることがあります。少しでも負担を軽減するためには、以下の3つのポイントを押さえておくと安心です。 借入金額を抑える 手数料タイプが定率型の場合、借入金額に応じて事務手数料が決まります。そのため、借入金額を抑えることで、事務手数料の負担軽減につながります。以下は、事務手数料率2.2%とした場合のシミュレーションです。 【手数料率(2.2%)の場合】 借入金額 事務手数料 2,000万円 440,000円 2,500万円 550,000円 3,000万円 660,000円 ※筆者作成 上表のように、借入金額を500万円減らすと、11万円の手数料軽減につながります。また、借入金額を抑えることで利息の支払いも減るため、総返済額の軽減にも効果があります。 手数料が有利になる支払方式を選ぶ 金融機関によっては、定額型と定率型のどちらかを選べる場合があります。借入金額が多い場合は、定額型の方が割安になることもあるため、事前に比較しておきましょう。 例えば、借入金額が3,000万円で定率型の手数料率が2.2%の場合、事務手数料は66万円です。一方、定額型では手数料が一定(例:33万円など)であるため、借入金額が多いほど有利になる可能性があります。 ただし、定額型を選ぶと別途保証料が必要になるケースがあるほか、借入金利が定率型よりも高めに設定される傾向があります。そのため、事務手数料だけでなく、保証料を含めた総費用で比較することが重要です。 複数の金融機関を比較検討する 住宅ローンの事務手数料や保証料の設定は、金融機関によって大きく異なります。同じ借入金額でも、手数料の差で数万円〜十万円以上の違いが出ることもあります。 事務手数料だけでなく、保証料・金利・その他の諸費用も含めて、トータルコストで比較検討することが、負担を軽減するためのポイントです。比較サイトや金融機関の公式ページを活用し、複数社の条件を確認してから申し込むようにしましょう。 まとめ 住宅ローンの事務手数料は、融資実行時に一括で支払うのが一般的です。金額は数十万~数百万円にのぼることもあり、支払方法やタイミングを事前に把握しておくことで、資金計画に余裕が生まれます。 一括での支払いが難しい場合は、事務手数料を住宅ローンに組み込む、または諸費用ローンを利用するなどの対処法もあります。また、借入金額を抑える、支払方式を選ぶ、複数の金融機関を比較するなどの工夫によって、負担を軽減することも可能です。 事務手数料は金融機関によって条件が異なります。保証料などの諸費用も含めて総費用で比較検討し、自分にとって最適な住宅ローンを選びましょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 マイホームの購入予算はどう決める?頭金や住宅ローンの考え方 マイホームは高額の買い物であるため、あらかじめ予算を決めておく必要があります。資金計画を立てずに購入し、住宅ローンの返済が滞るようなことがあれば、最悪の場合はマイホームを手放すことになるかも...
住宅ローンを検討する際、「30年」と「35年」のどちらの返済期間を選ぶべきか迷う方は多いのではないでしょうか。毎月の返済額や総返済額、完済時の年齢などを比較し、自分のライフプランに合った期間を選ぶことが大切です。 この記事では、30年ローンと35年ローンの違いをわかりやすく解説し、選び方のポイントを具体的にご紹介します。 返済期間35年で住宅ローンを組む人が多い 住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査」によると、返済期間「30年超~35年以内」を選ぶ人が全体の45.8%と最も多く、次に多い「35年超~40年以内」でも18.4%にとどまっています。一方、「25年超~30年以内」は8.5%と少数派であり、35年ローンを選ぶ人が圧倒的に多いことがわかります。 これはあくまで「年数の範囲」での集計ですが、30年よりも長い返済期間を選ぶ傾向が強いことは明らかです。 返済期間 割合 10年以内 3.6% 10年超~15年以内 3.7% 15年超~20年以内 6.3% 20年超~25年以内 6.6% 25年超~30年以内 8.5% 30年超~35年以内 45.8% 35年超~40年以内 18.4% 40年超~50年以内 7.1% 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査 p.5」 住宅の種類ごとの返済期間の傾向 国土交通省の「住宅市場動向調査」によると、住宅の種類によって平均返済期間に差があることがわかります。 住宅の種類 平均返済期間 注文住宅(建築) 33.9年 注文住宅(土地) 35.6年 分譲戸建住宅 30.9年 分譲集合住宅 28.2年 既存(中古)戸建住宅 25.5年 既存(中古)集合住宅 27.7年 リフォーム住宅 12.3年 出典)国土交通省「住宅市場動向調査 p.53」 注文住宅は土地の購入が先行し、建築費が高額になりやすいため、返済期間が長くなる傾向があります。一方で、リフォーム住宅を含む中古住宅は購入費用を抑えられるため、短期間での返済が多いようです。 住宅ローンの返済額は30年と35年でどう変わる? 借入金額4,000万円と6,000万円のケースで、「元利均等返済、ボーナス払いなし」の条件で返済シミュレーションを行うと、以下のようになります。 毎月の返済額 毎月の返済額がどれくらい変化するか確認しましょう。 借入金額4,000万円の場合(元利均等返済・ボーナス払いなし) 適用金利 30年ローン(月額) 35年ローン(月額) 月額差 0.5% 119,675円 103,834円 ▲15,841円 1.0% 128,655円 112,914円 ▲15,741円 1.5% 138,048円 122,473円 ▲15,575円 2.0% 147,847円 132,505円 ▲15,342円 借入金額6,000万円の場合(元利均等返済・ボーナス払いなし) 適用金利 30年ローン(月額) 35年ローン(月額) 月額差 0.5% 179,513円 155,751円 ▲23,762円 1.0% 192,983円 169,371円 ▲23,612円 1.5% 207,072円 183,710円 ▲23,362円 2.0% 221,771円 198,757円 ▲23,014円 出典)住宅保証機構株式会社「返済額の試算」をもとに筆者作成。 返済期間を30年から35年に延ばすと、月々の返済額は軽減されます。借入金額が4,000万円の場合15,000円強、6,000万円の場合23,000円強と、借り入れが大きいほど月々の差額も増え、家計の負担を抑える効果があります。 総返済額 次に同様の条件で総返済額がどれくらい変化するかを確認しましょう。 借入金額4,000万円の場合(元利均等返済・ボーナス払いなし) 適用金利 30年ローン(総返済額) 35年ローン(総返済額) 総返済額差 0.5% 43,083,107円 43,610,126円 +527,019円 1.0% 46,315,920円 47,423,753円 +1,107,833円 1.5% 49,697,092円 51,438,816円 +1,741,724円 2.0% 53,225,058円 55,651,862円 +2,426,804円 借入金額6,000万円の場合(元利均等返済・ボーナス払いなし) 適用金利 30年ローン(総返済額) 35年ローン(総返済額) 総返済額差 0.5% 64,624,757円 65,415,305円 +790,548円 1.0% 69,473,978円 71,135,774円 +1,661,796円 1.5% 74,545,747円 77,158,299円 +2,612,552円 2.0% 79,837,661円 83,478,019円 +3,640,358円 出典)住宅保証機構株式会社「返済額の試算」をもとに筆者作成。 借入金額4,000万円では、金利2.0%の場合で約240万円、6,000万円では約364万円の差が生じます。借入金額の差も当然ながら、金利が高いほど差額は顕著に大きくなります。 このように長期にわたる住宅ローンでは、「毎月の返済額の減少」と「総返済額の増加」のバランスをどう取るかが重要になります。 住宅ローンの返済期間を決める4つのチェックポイント 住宅ローンの返済期間は、月々の支払いだけでなく、将来のライフプランにも大きく影響します。以下の4つの視点から、自分に合った返済期間を見極めましょう。 1. 完済時年齢 金融機関で設定されている住宅ローンの年齢制限(完済時年齢)は、75~80歳が一般的です。定年(65歳)までに完済したい場合は、現在の年齢から逆算して返済期間を設定するのがポイントです。たとえば、現在30歳なら35年ローン、35歳なら30年ローンを組むことで、定年までに完済可能です。 なお、35歳で35年ローンを組んだとしても、計画的に繰り上げ返済を活用することで、定年時に住宅ローンを完済するプランを立ててもいいでしょう。 2. 毎月の返済額と金利タイプ 返済期間が長くなるほど、毎月の返済額は少なくなります。ただし、長期のローンでは金利変動の影響を受けやすくなるため、金利タイプの選択が重要です。フラット35などの全期間固定金利なら毎月の返済額が固定され、変動金利なら金利次第で返済額が変動するため、将来的なリスクを抱えます。 関連記事はこちら住宅ローンは変動から固定に借り換えるべき?金利上昇時の判断ポイントを解説 3. 総返済額 同じ借入金額でも、返済期間が長くなるほど利息の支払いが増え、総返済額が高くなります。金利や借入金額によっては、30年と35年で数百万円の差が生じることもあるため、慎重な比較が必要です。 4. 収入の安定性とライフイベントとのバランス 長期にわたる住宅ローンでは、安定した収入が欠かせません。以下のようなライフイベントも踏まえて、無理のない返済期間を設定しましょう。 ・転職・独立・退職などの収入変化 ・教育費・車の買い替え・老後資金などの支出 ・将来の資産形成や貯蓄とのバランス 返済期間を長めに設定することで、毎月の負担を軽減し、他の支出に余裕を持たせる選択も可能です。 住宅ローンの返済期間は後から変更できる? 住宅ローンの返済期間は、契約時に決定するのが基本です。しかし、ライフスタイルや収入状況の変化に応じて、借入後でも返済期間を調整できるケースがあります。ここでは、主な2つの方法をご紹介します。 返済期間を延長する方法 収入の減少や支出の増加などで返済が厳しくなった場合、返済期間の延長を相談できる金融機関もあります。たとえば、【フラット35】では、返済中の金融機関にて返済期間の延長に関する相談を受け付けています。事前に制度の有無や条件を確認しておくことで、万が一のときにも安心です。 出典)【フラット35】「月々の返済でお困りになったときは」 繰り上げ返済で期間を短縮する方法 手元資金に余裕がある場合は、繰り上げ返済によって返済期間を短縮することが可能です。繰り上げ返済には、以下の2つのタイプがあります。 期間短縮型 返済期間を短くすることで、利息の支払いを減らす効果が大きいタイプです。総返済額を減らしたい人に向いています。 返済額軽減型 返済期間はそのままで、毎月の返済額を減らすタイプです。月々の負担を軽くしたい人に向いています。 まとめ 住宅ローンの返済期間は、30年と35年で毎月の返済額や総返済額に大きな違いが生じます。どちらを選ぶべきか迷ったときは、金利や借入金額によるシミュレーションをしながら、収入の安定性や将来のライフイベントも踏まえて判断することが大切です。 また、返済期間は契約後でも延長や繰り上げ返済によって調整できる場合があるため、柔軟な選択肢があることも知っておきましょう。自分のライフプランに合った返済期間を選ぶことが、安心して住宅ローンを返済していく第一歩です。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35は頭金・自己資金なしで組める? フラット35は、最長35年間の全期間固定金利の住宅ローンです。マイホーム購入でフラット35を検討する際に、「頭金なしでローンを組めるのか」という疑問を持つ人もいるでしょう。この記事では、頭金...