マイホームは「人生最大の買い物」ともいわれます。一度購入すると簡単には手放せないため、「絶対に後悔したくない」と考える人も多いのではないでしょうか。希望条件が決まらない場合は、理想の暮らしをイメージして物件を探すのがおすすめです。 この記事では、マイホームの物件種類や選び方を購入経験者のアンケート結果と併せて紹介します。 そもそも購入できるマイホームの物件種類は? マイホームの物件種類は、大きく「戸建て」と「マンション」の2つに分けられます。それぞれの特徴とメリット・デメリットを理解すれば、物件を探しやすくなるでしょう。 戸建て 戸建てのメリットは以下のとおりです。 間取りや設備を自由に決められる リフォームや建て替えが自由にできる 専用の庭や駐車場を持てる 管理費・修繕積立金、駐車場代が発生しない 騒音トラブルが起きにくい 戸建ては、マンションに比べて自由度が高いのが魅力です。注文住宅なら間取りや設備を決められます。建売住宅でもリフォームや建て替えは自由にできます。 管理費・修繕積立金、駐車場代などの固定費用はかかりません。また、近隣と一定の距離があることから、騒音トラブルが起こりにくいのもメリットです。 続いて、戸建てのデメリットは以下のとおりです。 リフォームや建て替えで将来まとまったお金がかかる 庭や外まわりの手入れに手間がかかる 防犯性が弱い 高齢になると階段の移動に負担がかかる(平屋を除く) 売却しにくい 戸建ては外壁や屋根などのリフォームでまとまったお金がかかることがあります。また、マンションに比べると防犯面が脆弱で、万全に備えるにはホームセキュリティを入れるなどの対応が必要です。 他にも築年数が経過すると建物部分が市場で評価されにくくなり、購入価格と比べた時の値下がりが大きくなる点もデメリットと言えるでしょう。 マンション マンションのメリットは以下のとおりです。 共用部分の管理・清掃を管理会社に任せられる セキュリティ対策が充実している 耐久性や耐火性に優れている まとまった修繕費用が発生しにくい 室内に階段がなく高齢になっても暮らしやすい マンションは、建物管理やセキュリティ、耐久性・耐火性に優れているのが魅力です。共用部分の管理や清掃は管理会社が行ってくれます。オートロックなどのセキュリティも充実しているため、防犯面で安心です。構造上、地震や火災などに強いのもメリットです。 また、大規模修繕工事の費用は、毎月支払う修繕積立金でまかなわれます。突発的にまとまった費用がかかることは少ないため、資金計画を立てやすいでしょう。 続いて、マンションのデメリットは以下のとおりです。 リフォームの自由度が低い 建物管理や修繕、建て替えの方針を自由に決められない 管理費・修繕積立金、駐車場代を毎月支払う必要がある 専用の庭がないことが多い ペットを飼えないことが多い 騒音トラブルが起こりやすい 一方で、マンションは戸建てに比べるとリフォームの自由度が低く、建て替えなどは所有者の一定数以上の合意が必要となります。 一階や屋上を除き、専用の庭として利用できるスペースがなく、ペット不可などの条件が付いている物件も珍しくありません。「ガーデニングを楽しみたい」「大型犬を飼いたい」といった希望がある場合は不向きといえるでしょう。 また、左右や上下の住戸と接しているので、騒音トラブルが起こりやすい点にも注意が必要です。 まずは理想の暮らし方を考えてみる マイホーム購入で後悔しないためには、物件を探す前に理想の暮らし方を考えてみることが大切です。「自分や家族にとっての理想の暮らし」が明確になれば、希望条件の優先順位は自然と決まるため、物件を選びやすくなります。 ①理想の暮らしを書き出してみる まずは理想の暮らしのイメージを書き出してみましょう。具体例は以下のとおりです。 都心に住んで生活利便性を上げたい 勤務先の近くに住んで通勤時間を短くしたい 日当たりがよく、明るい家で暮らしたい 両親と同居したい 趣味を満喫できるエリアに住みたい 自然豊かな場所でのんびり暮らしたい ガーデニングや野菜作りを楽しみたい 大型犬を飼いたい 休日は友人を招待してホームパーティを楽しみたい 実現できるかは考えず、思いつくまま書いていくのが大切です。できるだけたくさん書いてみましょう。 ②絶対に譲れないポイントを考える 理想の暮らしのイメージを書き出したら、「絶対に実現したい」「これは譲れない」と思う項目をピックアップして優先順位をつけてみましょう。この作業により、マイホーム選びで絶対に譲れないポイントがはっきりします。 例えば、生活利便性や通勤時間の短さを重視したいなら、都心のマンションが候補になるかもしれません。自然豊かな場所でのんびり暮らしたいなら、郊外の戸建てが向いている可能性があります。 絶対に譲れないポイントを基準に、どんな物件がよいか検討してみましょう。 マイホーム購入の決め手を紹介 実際にマイホームを購入した人は何が決め手になり、どんなことに後悔しているのでしょうか。ここでは、購入経験者を対象としたアンケート調査の結果を紹介します。 マイホーム購入時に重視したこと 「マイホーム購入時に重視したこと」への回答結果は以下のとおりです。 1位:立地のよさ(296人) 2位:騒音・治安などの周辺環境(93人) 3位:価格が予算内か(83人) 4位:間取り・生活動線のよさ(81人) 5位:日当たりがよいか(63人) 6位:外観・デザインが好みか(23人) 7位:断熱・耐震などの機能性(22人) 出典)訳あり物件買取プロ「後悔!マイホーム購入時に注意しておけばよかったことランキング】男女501人アンケート調査」 立地のよさを重視する人が圧倒的に多く、次いで周辺環境、予算、間取りの順となりました。外観やデザイン、機能性を重視した人は少ないようです。 マイホーム購入での注意点 「マイホーム購入時にもっと注意すればよかったこと」への回答結果は以下のとおりです。 1位:間取り・生活動線のよさ(93人) 2位:騒音・治安などの周辺環境(70人) 3位:立地のよさ(53人) 4位:外構のデザイン・使い勝手(50人) 5位:コンセント・スイッチの位置(44人) 5位:周辺住民の雰囲気(44人) 7位:日当たりがよいか(41人) 8位:収納の使い勝手(36人) 9位:コスト面の検討(34人) 10位:住宅設備の使い勝手(22人) 出典)訳あり物件買取プロ「後悔!マイホーム購入時に注意しておけばよかったことランキング】男女501人アンケート調査」 最も多いのは「間取り・生活動線のよさ」でした。実際に住んでみると「使いにくい」と感じ、「間取りや生活動線を工夫すればよかった」と後悔している人が多いようです。 また、「コンセント・スイッチの位置」「周辺住民の雰囲気」「収納の使い勝手」は、「マイホーム購入時に重視したこと」では挙がっておらず、実際に住んでみて「購入前にしっかり確認しておけばよかった」と後悔している人が一定数いるようです。これからマイホームを購入する人は、この辺りもしっかり確認しておくと良いかもしれません。 まとめ マイホーム選びでは、理想の暮らしをイメージすると、希望に合った物件を見つけやすくなるでしょう。購入者を対象としたアンケートでは、「間取りや生活動線に注意すればよかった」と後悔している人が多いようです。 戸建てとマンションの違いを理解し、絶対に譲れないポイントを明確にした上で、理想のマイホームを探してみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マイホーム購入の必要性とは? マイホームは「人生で最も高い買い物」といわれます。購入時には住宅ローンを利用できますが、頭金や諸費用としてある程度のお金を準備しなくてはなりません。また、ローン返済は長期にわたるため、購入す...記事を読む
日本は「地震大国」と言われており、過去には巨大地震が発生して住宅が倒壊するなどの被害が生じています。地震による建物や家財の被害に備えるには、地震保険を付帯するのが有効です。万が一被害にあった場合は、保険金が生活再建の助けとなります。 この記事では、地震保険の仕組みや火災保険との違い、補償内容について解説します。 地震保険とは 地震保険とは、地震や噴火、それらによる津波を原因とする住宅や家財の損害を補償するための保険です。「地震保険に関する法律」に基づき、政府と民間の保険会社が共同で運営しています。 大地震が起こった場合は多額の保険金が発生し、民間の保険会社だけで引き受けるのは困難となります。そのため、政府が再保険を引き受けることにより、大地震の際は政府も保険金支払いを分担する仕組みになっています。なお、再保険とは、保険会社が再保険料を支払い、保険金の支払い責任の一部を他に転嫁する仕組みです。 地震保険の加入方法 地震保険は単独では契約できないため、火災保険と一緒に加入します。また、地震保険は火災保険に原則自動付帯となっています。 しかし、火災保険加入時に地震保険を付帯しているか覚えていない場合は、念のため契約内容を確認しておくといいでしょう。火災保険のみに加入している場合は、途中から地震保険を加えることも可能です。 地震保険と火災保険との違い 地震保険と火災保険には、以下のような違いがあります。 ①補償内容 火災保険は、火災や自然災害などで損害を受けた建物や家財を補償する保険です。一方で、地震保険は、地震や噴火、これらによる津波を原因とする火災や損壊、埋没、流失などの損害を補償しています。この補償内容の違いが、火災保険と地震保険の大きな違いです。 ②保険料 火災保険の保険料は、保険会社が自由に設定できるため、保険会社によって異なります。それに対して地震保険は、前述のとおり政府と民間の保険会社が共同で運営しているため、保険料の設定方法が統一されています。(地震保険の保険料についてはこの後詳しく解説します。)つまり、地震保険は火災保険と異なり、保険会社ごとに比較検討する必要がありません。 ③所得控除の対象かどうか 火災保険は所得控除の対象外ですが、地震保険は対象内です。(地震保険の所得控除についてはこの後詳しく解説します。)火災保険も過去に所得控除の対象でしたが、平成18年の税制改正によって平成19年分から廃止されました。 地震保険の対象とは 地震保険は、以下のような場合に支払い対象となります。 地震による火災で家が焼失した 地震により家が倒壊した 津波により家が流失した 地震による地盤沈下で家が傾いた 以下のような場合は、保険金支払いの対象外となります。 地震発生日から10日以上経過した後に生じた損害 地震等の際に生じた紛失・盗難の損害 故意や重大な過失、法令違反による損害 戦争、内乱などによる損害 地震保険で支払われる保険金 地震保険で支払われる保険金は、建物や家財の損害状況によって変わります。損害の程度を「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4つに区分し、その区分に応じて保険金が決まる仕組みです。損害の程度は保険会社が判断します。 出典)政府広報オンライン「被災後の生活再建を助けるために。もしものときの備え「地震保険」を。」 地震保険の契約金額(保険会社が支払う保険金の限度額をいいます。)は、火災保険の30~50%の範囲内で自由に決められます。ただし、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限です。 地震保険の保険料 地震保険の保険料は、保険対象の建物の構造や所在地によって決められています。地震の発生確率は地域によって差があり、人口分布や建物の強度により被害の程度も異なるためです。 表:契約金額1,000万円あたりの年間保険料(割引適用なし)の例 出典)政府広報オンライン「被災後の生活再建を助けるために。もしものときの備え「地震保険」を。」 北海道と東京都を比較すると、建物が同じイ構造(主として鉄筋、コンクリート造り)であっても、年間保険料は東京都のほうが約3.7倍高くなります。また、同じ東京都でも、ロ構造(主として木造)はイ構造より約1.5倍高くなっています。 保険期間ごとの保険料 地震保険の保険期間は短期契約(1年未満)、1年契約および長期契約(2~5年)があります。長期契約の保険料は、前述の年間保険料に対して以下の長期係数を乗じて算出する仕組みです。 期間 係数 2年 1.90 3年 2.85 4年 3.75 5年 4.70 出典)財務省「地震保険制度の概要」 仮に1年間の保険料が1万円の場合、保険期間5年の一括払いであれば、計算式は「1万円×4.70」となり、4万7,000円が契約金額となります。係数は期間に応じて割り引かれていくので、長期契約にしたほうがお得になる設計になっています。 保険料の割引制度 地震保険には、建物の免震、耐震性能に応じた保険料の割引制度があります。詳細は以下のとおりです。 出典)政府広報オンライン「被災後の生活再建を助けるために。もしものときの備え「地震保険」を。」 保険対象となる住宅が上記割引制度の要件を満たしていれば、保険料の負担軽減が期待できます。ただし、割引制度の適用を受けるには、所定の確認資料を提出する必要があります。また、各割引制度の重複適用は認められません。 地震保険料は所得控除の対象となる 支払った地震保険料のうち、一定額は「地震保険料控除」として所得から控除できるため、所得税や住民税の負担が軽減されます。控除額は以下のとおりです。 年間支払保険料の合計 控除額 所得税 5万円以下 支払金額の全額 5万円超 一律5万円 住民税 5万円以下 支払金額×1/2 5万円超 一律2万5,000円 所得税は最高5万円、住民税は最高2万5,000円が所得から控除されます。勤務先の年末調整または確定申告で控除を受けることが可能です。 地震保険はいらない? 地震保険の加入を検討する際に、「地震保険は必要ない」という意見を見かけた人もいるのではないでしょうか。その理由は、「保険料に対して被災後に受け取る保険金が小さい」と言われるためです。 確かに、地震保険の契約金額は火災保険の30~50%の範囲内であるため、損害の程度が全損壊であったとしても、同じ家を建て替えるだけの保険金が支払われることはほとんどありません。 加えて、損害の程度が低ければ支払われる保険金も小さくなるので、「保険料を払った割にあまり保険金を受け取れなかった」となる恐れもあります。以上の理由から「地震保険は必要ない」という意見が間違っているとは言い切れません。 結局のところ、地震保険が必要かどうかは、自分が地震によって大きな被害を受けるリスクをどう捉えるか次第です。どちらを選択するとしても、判断は慎重に行いましょう。 Appendix:少額短期保険に加入する選択肢 地震保険に関連して、「地震による損害を支払い対象とした少額短期保険」を紹介します。この少額短期保険は、本記事で解説した「地震保険」とは別の商品として扱われ、火災保険と一緒に加入する等の制約がありません。 少額短期保険は、地震保険とより保険金の限度額が少なくなるものの、支払う保険料も少なく済みます。「保険料を抑えたいが、何も保険がないのも不安だ」という人は、地震保険には加入せず、少額短期保険に加入するのも選択肢のひとつです。 また、少額短期保険は地震保険と併用も可能です。そうすることで、地震保険の保険金をある程度補うことが期待できます。「備えが地震保険だけでは不十分だ」という人は、併用を検討してもいいでしょう。 ただし、支払った少額短期保険の保険料は所得税の控除対象外です。地震保険と違って税制面でのメリットは享受できないので、注意しましょう。 まとめ 火災保険のみでは、地震による火災や地盤沈下で建物や家財に被害が出た場合に補償の対象外となってしまいます。日本は地震が多く、過去には巨大地震も発生しています。マイホームなどの不動産を購入する際は、火災保険に地震保険を付帯しておき、あらかじめリスクに備えておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む
環境問題への意識の高まりから、マイホームの建築・購入の際に「低炭素住宅」を選ぶ人が増えています。環境にやさしい住宅であり、税制優遇を受けることもできますが、認定を受ける際の注意点もあります。低炭素住宅の取得を検討する場合には、事前に特徴を理解しておくことが大切です。 この記事では、低炭素住宅の認定基準やメリット・デメリット、認定手続きの流れを解説します。 低炭素住宅とは 低炭素住宅とは、二酸化炭素(CO2)の排出量を抑制する仕組みのある住宅です。一般的な住宅に比べて、地球温暖化の原因となるCO2の排出を抑えられるため、環境にやさしい住宅といえます。 社会経済活動に伴い発生するCO2の多くは、都市部で発生しているのが現状です。この状況を改善するため、2012年12月に「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」が施行されました。 本法律に基づき「低炭素建築物認定制度」が創設され、都道府県などの所管行政庁が低炭素住宅の認定を行っています。 低炭素住宅の認定状況 低炭素住宅の認定状況は以下のとおりです。 2019年度 2020年度 2021年度 戸建て住宅 5,189件 5,932件 16,464件 共同住宅等 2,036件 2,168件 4,127件 複合建築物※ 46件 45件 72件 ※1階が事務所、2階以上がマンション(住宅)のように、1つの建物を複数の用途で使用している建築物のこと 2021年度の認定実績は、戸建て住宅が前年比約2.8倍の16,464件、共同住宅等は前年比約1.9倍の4,127件、複合建築物は前年比1.6倍の72件となっています。 2021年度に認定実績が急増したのは、2020年10月に政府がカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)を目指すことを宣言し、低炭素住宅の普及を推進していることや、2021年度辺りから燃料不足等による電力不足が話題になったことなどが理由だと考えられます。 低炭素住宅の認定基準 低炭素住宅の認定基準は以下のとおりです。 省エネ法の省エネ基準に比べ、一次エネルギー消費量が-(マイナス)20%以上になること 再生可能エネルギー利用設備が設けられていること 省エネ効果による削減量と再生可能エネルギー利用設備で得られるエネルギー量の合計値が、基準一次エネルギー消費量の50%以上であること(戸建住宅のみ) その他の低炭素化に資する措置(選択項目)が講じられていること 上記4の選択項目については、次のいずれかの措置を講じる必要があります。 貯水対策(節水型機器の採用など) エネルギーマネジメント(HEMSの導入など) ヒートアイランド対策(敷地や屋上の緑化など) 建築物(躯体)の低炭素化(住宅の劣化軽減措置など) V2H充放電設備の設置 HEMS(ヘムス)とは、「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」の略です。エネルギー使用量を見える化し、無駄なく使うためのシステムを意味します。 V2H充放電設備とは、住宅から電気自動車等への充電、および電気自動車等から住宅への給電ができる装置のことです。 低炭素住宅のメリット 低炭素住宅には次のようなメリットがあります。 住宅ローン控除が利用できる 住宅ローン控除は、「住宅ローンの年末残高×0.7%」を所得税等から控除する制度です。住宅の省エネ性能によって、住宅ローン控除が適用される借入限度額が異なります。2023年6月時点での、低炭素住宅の借入限度額は5,000万円で、一般住宅(3,000万円)よりも2,000万円上乗せされます。 なお、2024年以降、一般住宅は住宅ローン控除の対象外となりますが、低炭素住宅は引き続き控除を受けることが可能です(借入限度額は4,500万円に変更)。 関連記事はこちら【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 登録免許税の優遇措置がある 低炭素住宅は、所有権登記にかかる登録免許税も軽減されます。そもそも住宅にかかる登録免許税は、個人の住宅の用に供される床面積50㎡以上の家屋に対して、軽減税率が適用されています。低炭素住宅であれば、それよりもさらに低い税率が適用されます。なお、この制度は2024年3月31日までなので、注意が必要です。 登記の種類 本則税率 軽減税率(一般住宅) 軽減税率(低炭素住宅) 所有権保存登記 0.4% 0.15% 0.1% 所有権移転登記 2.0% 0.3% 0.1% 容積率が緩和される 容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合です。低炭素住宅では、低炭素化に必要な設備にかかる床面積の容積率が緩和されます(延べ床面積の20分の1が限度)。敷地面積が同じ場合、一般住宅よりも広い家を建てることが可能です。 補助金の対象となる可能性がある 低炭素住宅は、国土交通省の「地域型住宅グリーン化事業」の補助金がもらえる可能性があります。 地域型住宅グリーン化事業とは、地域材を用いた省エネ性能等に優れた木造住宅への支援制度です。低炭素住宅であることに加えて、主要構造部が木造である、などの追加要件を満たすことが条件となります。令和5年度(2023年度)の補助限度額は140万円/戸となっています。 補助金の対象となるかは、事前にハウスメーカーや工務店に確認するといいでしょう。 出典)令和5年度地域型住宅グリーン化事業 グループ募集の開始について フラット35の金利が下がる 住宅金融支援機構のフラット35では、省エネ性能を備えた住宅を取得する際に金利優遇を受けられます。 低炭素住宅は「フラット35S」の金利Aプランに該当し、当初10年間は通常より0.25%低い金利が適用されるため、住宅ローンの返済負担の軽減が期待できます。 低炭素住宅のデメリットと注意点 低炭素住宅には次のようなデメリットがあります。 建築コストが高くなる 低炭素住宅は、認定基準を満たすための省エネ設備を導入する必要があるため、その分の費用が一般住宅よりもかかってしまいます。税制優遇や住宅ローン金利の引き下げ、補助金により、どの程度コストを吸収できるかを試算しておくことが大切です。 対応エリアが限られる 低炭素住宅は、原則として市街化区域内に建築される住宅が対象です。建築予定の土地が市街化区域内であるかを、自治体が公表している都市計画図などから確認しておきましょう。 関連記事はこちら市街化区域とは?市街化調整区域との違いを解説 低炭素住宅の認定手続きの流れ 低炭素住宅の認定手続きの流れは以下のとおりです。 審査機関に事前の技術的審査を依頼する 審査期間から適合証が発行される 所管行政庁に認定申請書を提出する(適合証を添付) 所管行政庁より認定証が交付される ただし、着工後の建築物は認定を受けられません。低炭素住宅を検討する場合は、ハウスメーカーや工務店に申請のサポートを受けられるかを確認しておきましょう。 まとめ 低炭素住宅は断熱性に優れており、1年中快適な環境で生活できるのが特徴です。税制優遇や住宅ローン金利の引き下げ、光熱費の削減など金銭面のメリットも期待できます。ただし、設備導入に費用がかかる点は注意が必要です。メリットとデメリットを比較したうえで、低炭素住宅の取得を検討してみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 長期優良住宅とは?認定制度の概要やメリット・デメリットを解説 住宅を購入しようとするときに、「長期優良住宅」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。長期優良住宅であることで、税制優遇措置や住宅ローンの金利引き下げなどのメリットがあるため、これ...記事を読む
住宅を購入する際、新築と中古のどちらにするかで悩む人も多いかもしれません。この記事では、国土交通省の調査から、日本国内の中古住宅市場について分析したうえで、どのような理由で新築と中古を選んでいるのかを紹介します。 日本は国際的に見ても新築志向 日本は国際的に見ても中古住宅より新築住宅を好む国民性であることが、国土交通省の「平成30年住宅・土地統計調査の集計結果」から分かっています。調査結果は以下のとおりです。 図:中古住宅流通シェアの国際比較 ※調査結果から著者が作成 市場規模は国によって異なりますが、日本は中古住宅が占める流通戸数の割合が、海外と比較して圧倒的に大きくなっています。この結果から日本は国際的に見ても新築志向であることが分かります。 出典)国土交通省「平成30年住宅・土地統計調査の集計結果」 中古住宅を選ばない理由は"新築が良いから" 国土交通省が実施した「令和4年度住宅市場動向調査」では、新築の戸建(分譲)と集合住宅(分譲)に住み替えた人が、なぜ中古住宅を選ばなかったのかを集計しています。それぞれの結果から、日本で中古住宅が選ばれない理由を見ていきましょう。 分譲住宅に住み替えた人の回答 まず、分譲住宅(戸建)に住み替えた人の回答は以下のとおりです。 図:分譲住宅(戸建)に住み替えた人の回答結果 ※調査結果から著者が作成 続いて、分譲住宅(集合住宅)に住み替えた人の回答は以下のとおりです。 図:分譲住宅(集合住宅)に住み替えた人の回答結果 ※調査結果から著者が作成 戸建と集合住宅に共通して、「せっかくのマイホームは新築にしたい」がかなり多いことが分かります。特に戸建の方が顕著で、戸建を検討する人は特に、中古より新築と考えている人が多いことが分かります。 一方集合住宅では、戸建と比べて「給排水管などの老朽化が懸念されたから」がやや多くなっています。集合住宅の場合、大規模な給排水管工事を行うのは困難なため、不安に感じてしまう人が多いと推測されます。 出典)国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」 中古住宅を選ばない理由 戸建と集合住宅の2つに分けて結果を確認しましたが、ここでも「せっかくのマイホームは新築にしたい」という理由が多くを占めることが分かりました。 それ以外の理由として多いのは、隠れた不具合があるのではないか、その後のリフォーム費用やメンテナンス費用が結局かなりかかるのではないか、といった理由でした。こうした中古住宅に対する不安が、日本の新築志向にも繋がっているのではないでしょうか。 日本の中古住宅取引数の推移 ここまでの結果を踏まえると、日本国内の中古住宅取引は需要があまりなく、衰退しているかのように思えますが、実態は異なります。国土交通省の「平成30年住宅・土地統計調査の集計結果」によると、日本国内の新築住宅と中古住宅の取引戸数は以下のように推移しています。 図:日本の中古住宅取引数の推移(万戸) ※調査結果から著者が作成 このように、新築住宅が多数を占めますが、中古住宅の取引戸数はずっと横ばいとなっています。このように、日本は新築志向である一方で、中古住宅にも常に一定の需要があることが分かります。 出典)国土交通省「平成30年住宅・土地統計調査の集計結果」 中古住宅を選んだ理由は"手頃感" 国土交通省が実施した「令和4年度住宅市場動向調査」では、中古住宅に住み替えた人が、なぜ中古住宅を選んだのかについても集計しています。集計結果から、中古住宅が常に一定の需要がある理由について分析します。 中古住宅を選んだ人の回答 まず、中古住宅(戸建)に住み替えた人の回答は以下のとおりです。 図:中古住宅(戸建)に住み替えた人の回答結果 ※調査結果から著者が作成 続いて、中古住宅(集合住宅)に住み替えた人の回答は以下のとおりです。 図:中古住宅(集合住宅)に住み替えた人の回答結果 ※調査結果から著者が作成 戸建と集合住宅に共通して、「予算的に見て中古住宅が手頃だったから」が多数を占めています。新築の値上がりが激しく、予算の都合で中古住宅を選ぶ人が多いことが推測されます。 また、そういった現状の中で、リフォームを前提に購入した人や、リフォーム済みの中古住宅を購入した人が多数を占めており、中古住宅に対する不安や不満をリフォームによって解消している人が多いことも分かります。 出典)国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」 中古住宅を選んだ理由 中古住宅を選んだ理由で最も多いのは、「予算的に見て中古住宅が手頃だったから」でした。「令和4年度住宅市場動向調査」によると、各住宅の全国平均取得金額は以下のとおり推移しています。 図:各住宅の全国平均取得金額(万円) ※調査結果から著者が作成 出典)国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」 見てのとおり、中古と新築では金額にかなりの差が生まれていることが分かります。令和4年度の結果で比較すると、戸建では1,622万円、集合住宅では2,414万円もの差があります。ここまで金額の差が生まれている以上、予算面で中古を選ばざるを得ない状況も十分に考えられます。 まとめ 日本は新築志向である一方で、予算面の都合から中古住宅も一定の取引戸数を保っていることが分かりました。新築志向は未だ根強いですが、中古住宅を選んで予算を抑えつつ、リフォーム等を行うことで不安を解消し、理想の住まいを実現するのも一つの選択肢ではないでしょうか。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 建物状況調査とは?メリット・デメリットと手続きの流れを解説 中古住宅は新築より割安な価格で購入できるのが魅力です。しかし、元の所有者の維持管理や築年数などによって、品質に差が生じるため、購入する際には、性能や品質に問題がないか不安を感じるのではないで...記事を読む
ねんきんネットは、自身の年金情報をインターネットで簡単に確認できるサービスです。将来の年金見込額もわかるので、老後の資金計画を立てるのに役立ちます。うまく使いこなせば、将来のお金に対する不安を解消できるでしょう。 この記事では、ねんきんネットでできることや年金見込額を調べる手順、注意点を紹介します。 ねんきんネットとは ねんきんネットとは、インターネットを通じて自身の年金情報を手軽に確認できるサービスです。日本年金機構が運営しており、パソコンやスマートフォンから年金に関するさまざまな情報を閲覧できます。 日本年金機構のホームぺ―ジまたはマイナポータルから登録すれば、すぐに利用可能です。 ねんきんネットの利用対象者は、基礎年金番号を持っている人です。ただし、1986年(昭和61年)4月以前に年金受給権が発生した老齢年金受給者は利用できません。 ねんきんネットでできること ねんきんネットでは、将来の年金見込額や年金記録をはじめ、年金に関するさまざまな手続きができます。具体的には以下のとおりです。 将来の年金見込額の確認 ねんきんネットには、将来の年金額を試算する機能が2つあります。 かんたん試算:現在の加入条件が60歳まで継続すると仮定して見込額を自動的に試算 詳細な条件で試算:職業、収入および期間、受給開始年齢などの条件を入力して試算 試算結果では、年齢ごとの年金見込額や金額の内訳を表やグラフで確認できます。まずは「かんたん試算」で大まかに試算したうえで、必要に応じて「詳細な条件で試算」も利用してみましょう。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による年金見込額試算」 年金記録の確認 「年金記録の確認」機能では、「国民年金や厚生年金の加入履歴」「国民年金保険料の納付状況」などの最新の記録が確認できます。 加入していた年金制度の種類や納付状態が月別に記録されており、確認が必要と思われる月はアイコンなどでわかりやすく表示されます。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」によるご自身の年金記録の確認」 「ねんきん定期便」「通知書」の内容確認 ねんきん定期便とは、毎年誕生月に保険料納付の実績や将来の年金給付に関する情報をハガキや封書で通知するものです。 ねんきんネットを使うと、電子版「ねんきん定期便」をダウンロードできます。パソコンやスマートフォンから内容を確認できるので、紛失の心配がありません。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による電子版「ねんきん定期便」」 また、以下の通知書もねんきんネット内で確認できます。 年金振込通知書 年金支払通知書 年金額改定通知書 年金決定通知書、支給額変更通知書 公的年金等の源泉徴収票 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による年金支払いに関する通知書の確認」 通知書の再交付申請 ねんきんネットでは、以下の通知書の再交付申請が可能です(本人分のみ)。 年金振込通知書 公的年金等の源泉徴収票 支給額変更通知書 年金額改定通知書 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書 年金事務所などに訪問する必要がないため便利です。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による通知書再交付申請」 届書の作成 ねんきんネットを使って、年金の手続きで必要となる各種届書を作成できます。作成したい届書を選択し、必要な情報を入力して自宅のプリンターで印刷する仕組みです。基礎年金番号などの情報が自動で反映されるため、作成の手間を省くことが可能です。ただし、電子申請ではないため、印刷して作成した届書は最寄りの年金事務所へ提出する必要があります。 具体的には、以下の届出書を作成することができます。 国民年金保険料に関する届書 年金を請求している方、受給している方向けの届書 年金を受給している方が亡くなったときの届書 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による届書作成」 持ち主不明記録検索 持ち主不明記録検索とは、国が保存している年金記録のうち、現在持ち主がわからなくなっているものを検索できる機能です。例えば、年金加入状況に記録漏れがあった場合に、持ち主不明記録検索で自身のものと思われる記録がないかを確認する、といった活用法が考えられます。検索条件と一致する年金記録があった場合は、最寄りの年金事務所などが調査を行い、探している年金記録と本当に合致しているかを判断します。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による持ち主不明記録検索」 通知書のペーパーレス化 マイナポータルからねんきんネットを利用すると、日本年金機構から送付される以下の通知書のペーパーレス化が可能です。 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書 公的年金等の源泉徴収票 ねんきんネットにログインし、トップページの「通知書のペーパーレス化(入力)」で設定を行うと、マイナポータルの「お知らせ」で電子データを受け取れます。 出典)日本年金機構「通知書の電子データをマイナポータルで受け取る設定」 ねんきんネットで年金見込額を調べる手順(画像付き) ここでは、ねんきんネットで将来の年金見込額を調べる手順を画像付きで説明します。なお、手順の説明に用いる画像はすべて日本年金機構のホームページからの引用です。 ▼まずはねんきんネットにログインし、トップページにある「将来の年金額を試算する」を押しましょう。 ▼次に「かんたん試算」を選びます。「詳細な条件で試算」を選び、職業などの条件を入力して試算することも可能です。 ▼試算条件を確認し、問題がなければ「試算する」ボタンを押します。 ▼年金見込額が表示されました。「金額の内訳」ボタンを押すと、年金見込額(月額)の詳細内容を確認できます。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による年金見込額試算」 ねんきんネットの2つの利用登録方法 ねんきんネットは、以下2つの利用登録方法があります。 マイナポータルと連携する ユーザIDを取得する マイナンバーカードがある場合は、マイナポータルにログインするとねんきんネットにアクセスできます。マイナポータルにログインし、トップページにある「年金記録・見込額を見る(ねんきんネット)」を押して利用規約等に同意すると連携されます。 マイナンバーカードがない場合は、基礎年金番号とメールアドレスを用意し、ねんきんネットにアクセスしてユーザIDを取得しましょう。「ねんきん定期便」などに記載されている「アクセスキー」があると、ユーザIDの即時発行が可能です。 ねんきんネットを利用する際の注意点 ねんきんネットを利用する際の注意点は以下の2つです。 第三者との共有PCを使わない 利用端末のセキュリティ対策を行う ねんきんネットでは、年金記録という重要な情報を扱うため、第三者による不正利用を防ぐ必要があります。 入力・閲覧した情報が残ってしまうことがあるので、第三者との共有PCを使わないことが大切です。また、利用端末から情報が流出しないようにセキュリティ対策を行いましょう。 まとめ ねんきんネットを利用すれば、年金記録や年金見込額を簡単に確認できます。また、電子版「ねんきん定期便」の確認、届書の作成、通知書のペーパーレス化なども可能です。 公的年金は老後の重要な収入源となるので、今のうちにねんきんネットの使い方を押さえておきましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 公的年金の仕組みとは?国民年金・厚生年金の基礎知識を解説 公的年金は、国民が安心して日常生活を送るために不可欠な制度です。老後だけでなく、病気・ケガで障害が残ったときや加入者が死亡したときも給付を受けられます。老後生活に備えて公的年金の仕組みについ...記事を読む
住宅ローンの返済を続けていると、毎月の返済を軽減できないかを考えることもあるでしょう。住宅ローンの借り換えを行うことで返済負担を減らせる可能性もありますが、タイミングを見誤ると、思ったより効果が得られないこともあります。 この記事では、実際に住宅ローンの借り換えを行った人を対象として住宅金融支援機構が行った、「2021年度住宅ローン借り換えの実態調査」の結果をご紹介します。直近住宅ローンの借り換えを行った人の実態を掴み、住宅ローンの借り換えは本当に効果が得られるのかについて考えてみましょう。 住宅ローン借り換えの実態調査の概要 住宅ローン借り換えの実態調査とは、住宅金融支援機構が毎年行っているインターネットによるアンケート調査です。2023年5月時点で最新の2021年度調査は、2021年4月から2022年3月に居住用の住宅ローンの借り換えを行った人(学生、無職の人を除く)を対象に調査が行われ、998人からの有効回答を得ました。 調査結果①:借り換え後の金利タイプ 借り換え後の金利タイプについて、回答結果は以下のとおりです。 出典)住宅金融支援機構「2021年度住宅ローン借り換えの実態調査」 借り換え後の金利タイプは、変動型が半分を占め比較的安定している一方で、固定期間選択型が増加傾向にあり、全期間固定型が減少傾向にあります。 続いて、借り換え前の金利タイプにも着目します。借り換え後にどの金利タイプを選択したかを、借り換え前の金利タイプ毎に分けると以下のとおりです。 (調査結果から著者が作成) 借り換え前の金利タイプが変動型もしくは固定期間選択型の人は、金利タイプを変えずに借り換える場合が最も多く、全期間固定型へ借り換える人が最も少ないことが分かります。一方で、全期間固定型は他2つとは異なり、借り換え前と違う金利タイプを選択している割合が大きいことが分かります。 以上のことから、借り換え前の金利タイプを変えずにより条件の良いローンで借り換えようと考える人が多数派である一方、全期間固定型は約半数が違う金利タイプに変更することが伺えます。また、借り換え前の金利タイプを変える場合は、変更先として変動型、固定期間選択型、全期間固定型の順番で多く選択されていることも分かります。 調査結果②:借り換えた理由 金利タイプごとの借り換えた理由の回答結果は以下のとおりです。 出典)住宅金融支援機構「2021年度住宅ローン借り換えの実態調査」 借り換えの理由として金利タイプ問わず多い理由は、「金利が低くなる」「返済額が少なくなる」と、月々の返済額を減らすためでした。一方で、今後変動型で借り続けることに対して不安に思い、一定数固定期間選択型や全期間固定型に借り換えていることも分かります。 調査結果③:毎月の返済額の増減 金利タイプごとの毎月の返済額の増減に関する回答結果は以下のとおりです。 出典)住宅金融支援機構「2021年度住宅ローン借り換えの実態調査」 どの金利タイプであっても大多数は月々の負担軽減に成功している一方で、かえって返済額が増加してしまった人も一定数いることが分かります。 変動型について 変動型に変更した人の月々の返済額の増減を見ると、返済額が結局変わらなかった、もしくは増加してしまった人が約3割を占めることが分かります。さらに返済額が減少した人の中でも、その7割近くは10,000円未満の減少に留まっています。 前述の調査結果より、変動型に変える人は月々の返済額を減らすことを目的として借り換える人がほとんどです。その割には十分な効果が得られなかった人や、目的を達成できなかった人が多い実態がこの調査結果から読み取れます。 固定期間選択型について 固定期間選択型に変更した人の月々の返済額の増減を見ると、返済額が結局変わらなかった人から20,000円以上減少した人まで満遍なく存在していることが分かります。また、返済額が増加してしまった人の割合が、他の金利タイプよりも少ないことも特徴です。 実態として、固定期間選択型を選択した人は、他の金利タイプを選択した人と比較して効果的に借り換えできていると言えるでしょう。ただし、固定期間選択型を選択すれば成功確率が高い、とは言い切れないので注意してください。 全期間固定型について 全期間固定型に変更した人の月々の返済額の増減を見ると、形状が変動型と類似していることが分かります。ただ、変動型と大きく異なるのは、返済額が増加した人がかなり多い点です。 なお、全期間固定型で返済額が増加した人の中には、返済額の増加を許容したうえで変動型への不安を理由に借り換えた人が含まれます。そのため、全期間固定型は変動型以上に「返済額を減らすつもりがかえって増えてしまった人が多い」とは言い切れません。一方で、全期間固定型に借り換えてすぐに返済額を減少させるのは、他の金利タイプと比較すると難しいと言えるでしょう。 住宅ローンの借り換えをなぜ行ったのか ここまでの調査結果を振り返ると、住宅ローンを借り換える理由として返済額の減少を目的としていた人が多いのに対し、毎月の返済額が変わらない、増加したという人が20%前後いることが分かりました。 毎月の返済額の減少額が変わらない、増加したと回答した人が借り換える理由は、金利が低い住宅ローンに借り換える際に、併せて返済期間を短くした結果、毎月の返済額減少という意味ではメリットがなくなったと考えられます。 そのほか、今回の調査結果では読み取ることができませんが、住宅ローンを借り換える理由として「金利タイプを変更したい」「団信の内容を拡充したい」という目的を持つ人も一定数いることが推察されます。 また、住宅ローンの借り換えの際には、以下のような費用がかかることには注意が必要です。 完済にかかる費用:繰り上げ返済手数料、抵当権抹消登記費用など 借入にかかる費用:保証料、事務手数料、抵当権設定費用、印紙税など 借り換え時には必ず上記費用が発生するので、目先の金利減少や毎月の返済額減少だけで判断するのではなく、総合的に判断することが重要となります。 また、費用以外でも、借り換えのための手続きには一定の労力がかかります。「労力に見合った借り換え効果を得られるか」という視点で考えることも大切です。 まとめ 住宅ローンの借り換えを適切なタイミングで行うことによって、月々の返済額を減らすことができる可能性があります。しかし、「2021年度住宅ローン借り換えの実態調査」から、住宅ローンの借り換えた人の多くが十分な効果を得られていないと推測されます。 こうした実態を踏まえると、住宅ローンの借り換えは必ずしも効果的であるとは言えないため、借り換えを検討する際には「本当に効果があるのか」を考慮する必要があります。費用や労力に見合った効果が得られるか、しっかりと試算したうえで判断しましょう。 出典)住宅金融支援機構「2021年度住宅ローン借り換えの実態調査」 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンの借り換えで忘れてはいけない注意点 住宅ローンの借り換えとは、新たな住宅ローンを借りて既存の住宅ローンを一括返済することです。現在より低金利の住宅ローンに借り換えることで、総返済額を減らせる可能性があります。 ただし、住宅ロー...記事を読む
近年、環境問題や社会的課題の解決に貢献するために、「サステナビリティ・リンク・ローン」を利用して資金調達する企業が増えています。通常のローンとは何が違うのでしょうか。 この記事では、サステナビリティ・リンク・ローンの特徴とメリット・デメリットを解説します。 サステナビリティ・リンク・ローンとは サステナビリティ・リンク・ローンとは、借り手が野心的なサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)を達成することを奨励するローンです。 SPTsとは、環境問題や社会的課題の解決に向けたサステナビリティ活動に関する目標です。環境や社会にもたらすインパクトが大きく、定量的なものを事前に設定することが求められます。 SPTsの具体例は以下のとおりです。 温室効果ガス排出量の削減 再生可能エネルギーの生産量・使用量の増加 水消費量の削減、水のリサイクル率の改善 認証された持続可能な原材料・供給品の増加 天然資源投入量の増減、廃棄物処理におけるリサイクル率 ESG格付※の改善、ESG認証の達成 ※企業のESGへの取り組み状況や課題解決に向けた意欲、ビジネスに影響を及ぼしそうなリスクの度合いなどを分析・評価し、スコア化したもの 融資後に、借り手は年1回程度SPTsのレポーティングを行います。貸し手は、SPTsの達成状況に応じて融資条件を見直す仕組みになっています。 出典)環境省「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドラインサステナビリティ・リンク・ローン関係のポイント」 日本におけるローンの組成状況 環境省によると、日本におけるサステナビリティ・リンク・ローン組成額の推移は以下のとおりです。(2023年の値は2023年3月20日時点のものです。) 出典)グリーンファイナンスポータル「サステナビリティ・リンク・ローン発行データ 市場普及状況(国内・海外)」 日本では、2019年に初のサステナビリティ・リンク・ローンが組成されました。2021年以降は急速に普及が進み、2022年には融資額が6,500億円を超える規模まで拡大しています。 サステナビリティ・リンク・ローンの特徴 サステナビリティ・リンク・ローンには以下のような特徴があります。 SPTsの達成状況と融資条件が連動している 融資後のレポーティングを通じて透明性が確保される 調達資金の融資対象が特定のプロジェクトに限定されない 借り手のニーズに合わせた柔軟な商品設計が可能 サステナビリティ・リンク・ローンは成果報酬型のローンで、借り手のレポーティングによってSPTsの達成状況の透明性が確保される仕組みになっています。 サステナビリティ・リンク・ローンのメリット 借り手側のサステナビリティ・リンク・ローンのメリットは以下のとおりです。 サステナビリティ経営の強化につながる SPTsの達成状況と融資条件が連動するため、サステナビリティ経営を実行する強い動機となります。また、SDGs(国連の持続可能な開発目標)達成への貢献やサステナビリティ活動をPRできるため、取引先や投資家からの評価が高まる可能性があります。 資金使途が特定のプロジェクトに限定されない サステナビリティ・リンク・ローンの資金使途は「一般事業目的」とされています。特定のプロジェクトに限定されないため、サステナビリティ活動以外の事業にも利用可能です。 好条件で資金調達できる可能性がある サステナビリティ・リンク・ローンは成果報酬型で、SPTsの達成状況に応じて融資条件が変動します。SPTsの活動に注力し、目標を達成することで、適用利率が下がる可能性があります。 サステナビリティ・リンク・ローンのデメリット 一方で、借り手側のサステナビリティ・リンク・ローンのデメリットは以下のとおりです。 外部評価の取得や目標達成などの手間がかかる SPTsの設定やレポーティングにあたり、第三者評価機関による外部レビューを取得しなくてはなりません。また、SPTsの達成にも取り組まなくてはならないため、一般的なローンよりも手間がかかります。 通常のローンよりコストがかかる可能性がある サステナビリティ・リンク・ローンは、レポーティングや外部レビュー取得の際に費用が発生します。SPTsを達成できなければ、通常のローンよりコストがかかる恐れがあります。 サステナビリティ・リンク・ローンの借入の流れ サステナビリティ・リンク・ローンは通常の借入手続きに加えて、独自の手続きが必要になります。具体的な流れは以下のとおりです。 借入準備(SPTsの設定、融資条件の決定、外部レビュー取得、レポーティング方法の検討など) 金融機関の審査・契約・融資実行 返済・情報開示(SPTs達成状況の測定・レポーティング、外部機関による検証) SPTsの達成状況に応じて融資条件を見直し 借入準備では、事業計画や必要書類の作成の他に、SPTsの設定や第三者評価機関によるレビュー取得などを行います。 融資後はSPTsの達成状況を定期的に測定し、金融機関にレポーティングをしなくてはなりません。金融機関は、SPTsの達成状況に応じて融資条件を見直し、借り手に通知します。 サステナビリティ・リンク・ローンの事例 ここでは、サステナビリティ・リンク・ローンの事例を2つ紹介します。 日本郵船(2019年11月) 2019年11月29日、三菱UFJ銀行をアレンジャーとするシンジケート団は日本郵船にローンを実施しました(日本初の組成)。SPTsは、CDP(環境戦略や温室効果ガスの排出量の開示を求めているプロジェクト)において高ランクを維持することです。 日本郵船は、毎年CDPスコア結果を三菱UFJ銀行にレポーティングします。一定のスコアが維持される限り、返済期限までCDPランクに起因した金利上昇はないことが条件となっています。 SBIエステートファイナンス(2023年1月) 2023年1月23日には、百十四銀行がSBIエステートファイナンスに対してローンを実施しました。同社は子会社である「SBI スマイル」とともに、高齢化社会においてもお客様が安心してご自宅に住み続けられること、豊かさが維持出来ることを目的としています。SPTsは、子会社のSBIスマイルがリースバック事業において取得する物件の件数および取得額です。 SBIエステートファイナンスは、債務の履行完了まで年1回SPTsの達成状況を所定の書式で確認します。SPTsの達成状況の達成状況に応じて、金利を引き下げる仕組みが設定されています。 出典)グリーンファイナンスポータル「サステナビリティ・リンク・ローン発行データ」 まとめ サステナビリティ・リンク・ローンは、SPTsの達成を通じて環境問題や社会的課題の解決に貢献できるのが特徴です。サステナビリティ経営の強化につながり、企業価値の向上や金利優遇などのインセンティブが期待できます。 ただし、通常のローンににはない手間やコストがかかるため、利用は慎重に判断しましょう。 出典) ・グリーンファイナンスポータル「サステナビリティ・リンク・ローンとは」 ・環境省「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライングリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ グリーンリフォームローンとは?利用条件やメリット、注意点を解説 グリーンリフォームローンは、一定の基準を満たす省エネリフォーム専用のローン商品です。リフォームによって自宅の省エネ性能を高めれば、より快適な生活を実現できます。高齢者向けの返済特例もあるため...記事を読む
住宅ローン控除(住宅ローン減税ともいいます)とは、住宅ローンを利用して住宅の新築、取得又は増改築等をした場合に利用できる、所得税額等を控除する制度です。住宅ローン控除を利用する場合、自身の状況に合わせてどういった条件でどのような控除が受けられるかを把握しておくことが大切です。この記事では住宅ローン控除を、取得した住宅の状況に分けて解説します。 住宅ローン控除の4つの区分 住宅ローン控除は令和4年以降に居住の用に供した場合において、全部で11つの区分に分けられます。その中でも住宅の取得に関する以下4つの区分について解説します。 ①新築住宅を取得した場合 ②買取再販住宅を取得した場合 ③中古住宅を取得した場合 ④要耐震改修住宅を取得した場合 区分ごとに控除額や利用条件が異なる部分もあるため、ご自身の状況に合った区分の住宅ローン控除について、適切に理解しておくことが大切です。 出典)国税庁「令和4年分確定申告特集 住宅ローン控除を受ける方へ」 4つの区分に共通する利用条件 4つの区分に共通する住宅ローン控除の利用条件は、以下のとおりです。 1.住宅の取得日から6か月以内に入居していること 住宅ローン控除を利用するには、住宅を取得してから6か月以内に入居している必要があります。加えて、控除を受ける年の12月31日時点に、その住宅で居住している必要があります。住宅購入から引っ越しまでの期間が空いてしまう場合は、注意しましょう。 2.床面積が40平方メートル以上であり、その半分以上が居住用であること 住宅ローン控除を利用するためには、住宅の床面積が40平方メートル以上であり、かつその半分以上が居住用であることが必要です。そのため、住宅ローン控除を利用したい場合は、新居を探す段階で気を付けておく必要があります。なお、この床面積は登記簿に表示されている床面積により判断されます。購入前にあらかじめ不動産業者に確認しておくとよいでしょう。 3.控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること 住宅ローン控除を利用するには、自身の合計所得金額が2,000万円以下でなければなりません。ただし、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、合計所得金額の条件が1,000万円未満となるので、注意が必要です。住宅の床面積を確認したうえで、直近の源泉徴収票などで合計所得金額を確認しておきましょう。 出典)国税庁「専門用語集 合計所得金額」 4.住宅ローンの返済期間が10年以上であること 住宅ローン控除を利用するには、10年以上にわたり分割して返済する方法になっている、新築または取得のための一定の借入金または債務が必要です。ただし、勤務先からの無利子または0.2%(平成28年12月31日以前に取得した場合は1.0%)に満たない借入や、親族や知人からの借入は対象外です。 出典)国税庁「No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」 5.居住用として利用する住宅であること 2つ以上の住宅を保有している場合、主に居住用として利用する住宅である必要があります。例えば別荘として住宅を購入した場合だと、住宅ローン控除を利用することはできません。 6.譲渡所得の課税特例の適用がないこと 居住年および前2年以内に譲渡所得の課税の特例を受けていないことが条件です。また、居住年の後3年以内に、居住している住宅(住宅の敷地含む)以外の一定の資産を譲渡した場合も、譲渡所得の課税の特例を受けていないことが条件になります。 出典)国税庁「No.3223 譲渡所得の特別控除の種類」 7.贈与等による住宅取得ではないこと 住宅の取得時および取得後も引き続き生計を一にする者からの住宅取得でないことも条件です。また、贈与による住宅取得も対象外となります。 ①新築住宅を取得した場合 まずは、令和4年以降に新築住宅を居住の用に供した場合について解説します。 控除の内容 令和4年以降に新築住宅を居住の用に供した場合、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。ただし、計算に用いる住宅ローン残高には上限が設けられており、取得した住宅の環境等によって以下のように異なります。 住宅の環境性能 入居した年 令和4年・令和5年 令和6年・令和7年 認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅) 5,000万円 4,500万円 ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円 省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円 その他の一般新築住宅 3,000万円 2,000万円 例えば令和5年に認定住宅を取得した場合だと、1年間の最大控除額は35万円となります。 基本的に控除期間は13年間ですが、その他の一般新築住宅で入居した年が令和6年もしくは令和7年の場合のみ、10年間となります。 利用条件 新築住宅を取得した場合の利用条件については、前述の共通する利用条件のとおりです。 出典)国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合」 ②買取再販住宅を取得した場合 次に、令和4年以降に買取再販住宅を居住の用に供した場合について解説します。 控除の内容 令和4年以降に買取再販住宅を居住の用に供した場合も、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。計算に用いる住宅ローン残高の上限や、控除期間についても、新築住宅を取得した場合と同様です。 利用条件 利用条件については、前述の共通する利用条件に加えて、住宅が買取再販住宅に該当していることが必要となります。買取再販住宅とは、以下の条件を満たす住宅のことをいいます。 宅地建物取引業者が適切な特定増改築等をした住宅であること 宅地建物取引業者の既存住宅取得日から2年以内に取引された住宅であること 取引時点において、その住宅が新築された日から10年が経過していること 買取再販住宅と認定されるためには、宅地建物取引業者が定められた適切な特定増改築等を行っている必要があります。買取再販住宅に当てはまるかどうかを自分で判断するのは難しいので、事業者側に確認してもらうことが大切です。 出典)国税庁「No.1211-2 買取再販住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」 ③中古住宅を取得した場合 続いて、令和4年以降に中古住宅を居住の用に供した場合について解説します。 控除の内容 令和4年以降に中古住宅を居住の用に供した場合も、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。ただし、計算に用いる住宅ローン残高には上限が設けられており、前述の新築住宅および買取再販住宅を取得した場合と上限金額が異なります。 住宅の環境性能 入居した年 令和4年・令和5年 令和6年・令和7年 認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅) 3,000万円 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 その他の一般新築住宅 2,000万円 例えば令和5年に認定住宅を取得した場合だと、1年間の最大控除額は21万円となります。 中古住宅を取得した場合の控除期間は10年間です。新築住宅や買取再販住宅を取得した場合と比較して、上限金額も低く、控除期間も短くなります。 利用条件 利用条件については、前述の共通する利用条件に加えて、住宅が中古住宅に該当していることが必要となります。中古住宅とは、新築住宅や買取再販住宅に該当しない住宅のうち、新耐震基準に適合している住宅をいいます。 出典)国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」 ④要耐震改修住宅を取得した場合 最後に、令和4年以降に要耐震改修住宅を居住の用に供した場合について解説します。 控除の内容 令和4年以降に要耐震改修住宅を居住の用に供した場合も、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。ただし、計算に用いる住宅ローン残高には、入居した年にかかわらず、一律で2,000万円の上限が設けられています。また、控除期間については中古住宅と同様に10年間です。 利用条件 利用条件については、前述の共通する利用条件に加えて、住宅が要耐震改修住宅に該当していることが必要となります。ここでいう要耐震改修住宅とは、新築住宅や買取再販住宅、中古住宅のいずれにも該当しない住宅のうち、建築後に一度は使用されたことのある住宅をいいます。 なお、要耐震改修住宅の取得にあたり、取得日以降に新耐震基準に適合するための耐震改修を行うことを、取得日までに申請している必要があります。加えて、実際に入居する日までに耐震改修を行うことで新耐震基準に適合することとなったことが「耐震基準適合証明書」などによって証明されていることが必要となります。 耐震工事は取得日以降に行うことになるため、取得日から実際に耐震改修が終わって入居するまでにある程度の期間を要します。取得から入居までの期間が6か月を超えると住宅ローン控除が利用できなくなってしまうので、十分注意しましょう。 出典)国税庁「No.1211-5 要耐震改修住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」 まとめ 取得する住宅の条件によって、住宅ローン控除の控除額が変わってきます。住宅ローン控除を利用する場合は、取得する住宅の条件を確認し、今回紹介した4つの区分のどれが適用されるのかを把握しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅購入時の優遇制度を解説 住宅を購入するときは、「住宅ローン控除」をはじめとしたさまざまな優遇制度が用意されています。一方で、どのような優遇制度があるのか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。 この記事では、住...記事を読む
マンションは築年数の経過とともに建物や設備が老朽化していくため、いずれは大規模修繕工事が必要になります。大規模修繕工事は、建物の劣化や設備の交換などに対応する工事であり、マンション所有者の暮らしにも影響が出てくるものなので、あらかじめ概要を理解しておくことが大切です。 マンションの大規模修繕工事とは 大規模修繕工事とは、建物の全体又は複数の部位について行う大規模な計画修繕工事をいいます。例えば、全面的な外部足場が必要な外壁塗装と屋上防水等を同時に行う場合などです。なお、大規模修繕工事は法律等で義務付けられたものではありません。 国土交通省が実施した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事を行っているマンションのうち、約7割が12~15年周期で大規模修繕工事を行っている、という結果が出ています。 出典) ・国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」 ・国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」 大規模修繕工事の内容 大規模修繕工事は大きく3つの工事に分類できます。 ①建築系工事 建築系工事とは、マンションの建物部分を修繕するための工事です。マンションの共用部分の補修も含まれます。具体的には以下の工事が挙げられます。 ・屋根や床の防水工事 ・外壁の塗装やタイル張り ・シーリング工事 ・鉄部塗装 ・建具金物の修繕や取替 大規模修繕工事のほとんどは建築系工事です。「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事の回数を重ねるにつれて、全体の大規模修繕工事費用に対する建築系工事の費用割合が増加していく、という結果が出ています。 出典)国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」 ②設備系工事 設備系工事とは、マンション内のインフラを整えるための工事です。具体的には以下の設備に対する工事が挙げられます。 ・給水、排水設備 ・ガス設備 ・空調、換気設備 ・電灯設備 ・情報・通信設備 ・消防用設備 ・昇降機設備 ・駐車場設備 「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、建築系工事と同様に大規模修繕工事の回数を重ねるにつれて、全体の大規模修繕工事費用に対する設備系工事の費用割合が増加していく、という結果が出ています。一方で、建築系工事と設備系工事のそれぞれにかかる費用を比較すると、設備系工事はかなり小さい金額となっています。 出典)国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」 ③仮設工事 仮設工事は、足場や作業員用の事務所や資材置き場など、建築系工事や設備系工事を進める前の準備にあたる工事です。マンションの修繕とは直接関係のないものの、大規模修繕工事を進めるために必ず必要です。「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事の回数を重ねるにつれて、全体の大規模修繕工事費用に対する仮設工事の費用割合が減少していく、という結果が出ています。 出典)国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」 大規模修繕工事にかかる費用 修繕積立金とは 大規模修繕工事に必要な費用は、マンションの管理組合が毎月マンション所有者から徴収する「修繕積立金」から支払われます。そのため、マンション所有者に対して急に高額な費用負担が発生するようなことはほとんどありません。一方で、毎月支払うことになる「修繕積立金」についてはしっかりと把握しておく必要があります。 国土交通省が公表している「平成30年度 マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」によると、修繕積立金の全国平均額は11,243円です。なお、過去の調査結果と比較をすると、修繕積立金は上昇傾向です。 出典)国土交通省「平成30年度 マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」 修繕積立金の積立方法 修繕積立金の積立方法は、大きく2つに分類されます。 1つ目は、月々の修繕積立金が一定である「均等積立方式」です。あらかじめ立てた長期修繕計画に基づき、必要な費用から逆算して必要額が算出されます。なお、長期修繕計画の見直しに合わせて必要な費用及び月々の修繕積立金額も調整されることがあります。全く変動しないわけではないので注意しましょう。 2つ目は、修繕の必要性に合わせて月々の修繕積立金を段階的に増額していく「段階増額積立方式」です。新築マンションであれば修繕積立金を抑えられる一方で、築年数が経つにつれて増額していくことになる、一長一短な積立方式です。急な増額によってマンション所有者の負担が増えてしまい、場合によってはトラブルになる恐れもあるので注意が必要です。 どちらの方式であっても、適切な長期修繕計画に基づいて積立が行われているかが重要です。今住んでいるマンションの長期修繕計画を確認したうえで、今後の修繕積立金の金額についても把握しておきましょう。 まとめ 大規模修繕工事を行うことで、以前よりも快適な住環境を手に入れることができ、建物の資産価値を保つことにもつながります。マンション所有者である以上大規模修繕工事は他人事ではありません。マンションに住む以上、大規模修繕工事の概要をしっかり押さえ、工事に備えておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マンションの資産価値の調べ方は?基準もあわせて紹介 マンションを購入する際には、将来的な資産価値の変化にも目を向けて判断することが大切です。この記事では、マンションの資産価値に影響を与える要因や、資産価値の調べ方について解説します。 マンショ...記事を読む
マンションを購入する際には、将来的な資産価値の変化にも目を向けて判断することが大切です。この記事では、マンションの資産価値に影響を与える要因や、資産価値の調べ方について解説します。 マンションの資産価値の目安を調べる方法 マンションの資産価値を調べる場合には、販売中の物件や近隣の成約事例を確認することである程度の目安を調べることが可能です。ここでは、マンションの資産価値の目安を自分で調べる3つの方法を紹介します。 ①レインズマーケットインフォメーション 「レインズマーケットインフォメーション」とは、国土交通大臣の指定を受けた「全国指定流通機構連絡協議会」が運営・管理を行う不動産情報ネットワークのことです。直近1年間で売買が行われ、取引が成立したマンションの販売価格や成約価格が公開されています。 豊富なデータベースのなかから、地域や沿線、専有面積、築年数など細かな条件で絞り込んで取引事例を閲覧できます。複数の事例を比較したり検証したりすることで、マンションの資産価値を判断する指標として利用することができます。 出典)REINS Market Information ②不動産情報ライブラリ 「不動産情報ライブラリ」とは、不動産の取引価格、地価公示等の価格情報や防災情報、都市計画情報、周辺施設情報等、不動産に関する情報をご覧になることができる国土交通省のWEBサイトです。 物件の成約価格を一般消費者でも知れるように、国土交通省が不動産購入者を対象にアンケート調査をした情報を「不動産取引価格情報」として公開しています。 ただし、不動産情報ライブラリのデータは購入者のアンケート結果に基づいて構成されているので、全ての取引データを扱っているわけではありません。あくまで取引事例の一部データとして用いることが重要です。 出典)不動産情報ライブラリ 関連記事はこちら公示価格とは?実勢価格との違いと活用法をわかりやすく解説 ③不動産ポータルサイト 現在販売中の物件については、不動産ポータルサイトを通して確認する方法もあります。不動産ポータルサイトには、実際に購入者を募集している物件の情報が数多く掲載されているため、詳細条件を入力すれば同じような物件の売り出し価格をチェックできます。 また、独自のデータベースに基づいてマンション価格を算出しているサイトもあるので、参考にしてみるといいでしょう。 マンションの資産価値に影響を与える要因 マンションの資産価値を判断する際には、そもそもどのような要因によって価値が変動するのかを具体的に把握しておくことが大切です。マンションの資産価値は次のような要因が影響を与えます。 ・築年数 ・耐震性 ・日当たり、方角 ・最寄り駅・バス停などの距離 ・階数 ・専有面積 ・管理状況 ・周辺環境、騒音、治安 いずれも生活の快適性や利便性、安全性などを左右するポイントであるため重視されます。また、同じマンションであっても、階数や間取り、日当たり条件によって部屋ごとの資産価値は異なります。 不動産の資産価値は、土地の資産価値と建物の資産価値によって決まりますが、マンションの場合は一戸建てと比べて、資産価値のうち土地が占める割合が少ないのが特徴です。マンションの資産価値を考える際は、築年数をはじめとする建物の状況をしっかりと確認しましょう。 不動産鑑定における3つの方法 マンションの資産価値を調べるうえで、そもそも不動産鑑定はどのように行われているのかを知っておくと良いでしょう。ここでは不動産鑑定における3つの方法を紹介します。 ①取引事例比較法 取引事例比較法は、その不動産と同じような条件の不動産がどのような価格で取引されているかを比較することで資産価値を計算する方法です。資産価値に影響を与えるさまざまな要因を踏まえ、類似した条件を持つ物件の取引事例をいくつか並べるだけでも、マンションのおおまかな資産価値を調べられます。 ②収益還元法 収益還元法は、その不動産が将来生み出す収益から資産価値を計算する方法です。購入したマンションを賃貸として活用する際に用いられることが多いです。 賃料収入から必要経費を差し引いた収入で計算した利回りをもとに、現在の資産価値を逆算します。家賃の下落率や空室リスクなどを加味することも大切です。 ③原価法 原価法は、その不動産を再度建築する場合の原価を算出して、築年数が経過したことによる価値のマイナス分を加味したうえで資産価値を計算する方法です。 つまり、「現時点で購入するとしたらいくらかかるのか」という観点から、具体的な金額を割り出していく方法です。前述のとおり、建物は歳月の経過によって劣化していく性質を持っているため、建物の築年数を考慮した推定が必要になります。 まとめ マンションの資産価値はさまざまな要因に左右されるため、購入の際には複合的な観点で検討する必要があります。また、立地や広さといった基本的な項目だけでなく、管理状態などの要因でも価値が変動するため、購入後もこまめに手入れを行い、資産価値の維持に努めましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む 不動産のプロが選ぶ30年後に価値の落ちない物件とは? 不動産価値に関する調査を実施 東京近郊の30年後に価値が下がらない物件は? ~ 不動産価値に関してアンケート調査を実施 ~ 2020年を境に不動産価値が下がるという話題を耳にすることが多くな...記事を読む