住宅ローン返済中にまとまった余裕資金ができた場合、新NISAでの運用と住宅ローンの繰上げ返済、どちらを優先すべきか悩む方もいるかもしれません。 新NISAは、株式や投資信託などの投資から得られる運用益に通常約20%課される税金が、無期限で非課税になる税制優遇制度です。非常に魅力的な選択肢である一方、昨今は住宅ローン金利も上昇傾向にあるため、手元資金の使い道はより慎重に判断する必要があります。 【この記事の結論:優先すべきケースの目安】 新NISAを優先:資金効率(利回り)・手元資金の流動性(現金)を重視する人 繰上げ返済を優先:確実性を重視する人、比較的高金利の住宅ローンを組んでいる人 この記事では、新NISAで運用した場合と住宅ローンを繰上げ返済した場合のシミュレーション比較を通じて、金利上昇局面における最適な選択の判断基準を解説します。 新NISAと繰上げ返済を比較する3つの評価軸 どちらを優先すべきかは、現在の住宅ローンの借り入れ状況や、ご自身のリスク許容度によって異なります。まずは以下の3つの基準から、自身の状況を整理してみましょう。 経済合理性:期待運用利回りと借入金利の比較 重要な基準の一つは、投資による「期待利回り」と、住宅ローンの「借入金利」の差です。 新NISAの運用において、リスクを抑えて「国内外の株式と債券に半分ずつ分散投資(バランス型)」をした場合を想定してみましょう。公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオもこの配分に近い構成となっており、市場運用開始(2001年度)からの長期的な収益率は「年率平均+約4.7%」の実績を出しています(※過去の実績であり将来を保証するものではありません)。 一方、2026年4月現在の住宅ローン金利は、変動金利(新規借入・優遇金利)で0.8~1.0%程度、固定金利(【フラット35】の全期間固定金利)で2.1~2.7%程度が目安です(※金利は一般的条件を前提としており、お借入条件により異なります)。 仮に運用利回りを保守的に3.0%とし、借入金利を2.0%とした場合、単純な投資収益率の観点では「運用利回り(3.0%) > 借入金利(2.0%)」となります。この利回り差が維持される見込みであれば、資金効率の面では、繰上げ返済よりも新NISAでの運用を優先する考え方もあります。 出典)GPIF「第5期中期目標期間における基本ポートフォリオについて(詳細)P.9」 流動性と保障:手元資金の確保と団信の機能 次に考慮すべきは、手元にいつでも使える現金(流動資産)を残しておくことの重要性です。 新NISAの資産は価格変動リスクが伴うものの、必要に応じて売却し現金化できます(投資信託の場合、銘柄によって異なりますが、受渡日まで約2〜6営業日が目安です)。教育費や急な出費にも柔軟に対応可能です。一方、住宅ローンの繰上げ返済に充てた資金は手元からなくなるため、後から現金が必要になっても取り戻すことはできません。 また、住宅ローンには万が一の際にローン残高がゼロになる「団体信用生命保険(団信)」が付帯しているケースが多くあります。繰上げ返済をしてローン残高を減らすことは、実質的な生命保険の保障枠を自ら縮小させることにつながる点にも注意が必要です。 手元資金をすべて繰上げ返済に充てた後に万が一のことが起きた場合、ローンは消えますが家族に現金を残すことはできません。手元に十分な現金を残しつつ団信の保障を活かす意義も、あわせて検討しましょう。 制度的影響:住宅ローン控除による実質負担の変動 住宅ローン控除(減税)を受けている期間中かどうかも重要な判断材料です。 繰上げ返済によってローンの元本が減少すると、それに伴い「年末残高の0.7%」である住宅ローン控除の控除額そのものが目減りしてしまいます。つまり、繰上げ返済による利息軽減効果の一部が、控除額の減少によって相殺されてしまう(実質的な負担軽減効果が薄まる)点に注意が必要です。 控除期間中に繰上げ返済を行う場合は、返済後の年末残高がいくらになるか、事前に金融機関から送付される「返済予定表」や「年末残高等証明書」などで確認し、減税メリットとのバランスを見極めましょう。 関連記事はこちら【令和7年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 利息軽減効果と期待運用益のシミュレーション比較 まとまった余裕資金がある場合、「繰上げ返済によってリスクなしで得られる利息削減」と「新NISAによってリスクを取って狙う将来の運用益」、どちらが目的に合致するかの比較が重要になります。 まずは基準となる「繰上げ返済」の効果を、具体的な数字で検証します。 繰上げ返済による利息軽減効果 住宅ローン金利が上昇した(または上昇が見込まれる)局面を想定し、以下の条件でシミュレーションを行います。 【前提条件】 当初の借入条件: 3,000万円(返済期間35年 / 当初10年固定金利 年1.0%) 現在の状況:11年目の金利見直しにより適用金利が「年1.5%」に上昇。 そのまま15年目まで経過し、現在の残高は約1,858万円(残期間20年) 繰り上げ返済額:2,380,820円(期間短縮型を実行) 【シミュレーション結果】 繰上げ返済「前」 繰上げ返済「後」 軽減効果 残りの返済期間 20年(240ヵ月) 17年1ヵ月 2年11ヵ月短縮 通算の返済期間 35年 32年1ヵ月 - 利息負担額 約293万円 約216万円 約76万円の削減 ※万円未満切り捨て。 ※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。 ※金利はシミュレーションのための仮定値であり、実際の適用金利を示すものではありません。なお、本シミュレーションは借入から15年が経過しているため「住宅ローン控除」の期間は終了している前提となります。 出典)住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成 このシミュレーションから、繰上げ返済によって「リスクを取らずに約76万円の利息負担軽減(=リスクを取らずに得たリターンに相当)」ができたことがわかります。将来の金利変動等の影響を受けない、堅実な資金の使い道といえます。 新NISA(バランス型)による期待リターンの追求 次に、同じ「238万円」を新NISAで20年間運用した場合と比較します。新NISAで得られる運用益が、先ほどの「利息軽減額 約76万円」を上回れば、資金効率の観点では投資のほうが優位といえます。 想定利回り 20年後の運用益(新NISA) 繰上げ返済のメリット 有利な選択 5% 約393万円 約76万円 新NISA 3% 約191万円 1% 約52万円 繰上げ返済 ※複利計算:運用益={投資元本× (1+年利)^運用年数 }-投資元本。万円未満切り捨て。 前段で設定した保守的な期待利回り(年3.0%)が継続すれば、数値上は新NISAでの運用が優位になる計算です。ただし、投資には価格変動リスクが伴います。 運用利回りが住宅ローン金利(シミュレーション上は1.5%)を下回るリスク、あるいは元本割れのリスクを避けたい場合は、リスクなく利息負担を減らせる繰上げ返済のほうが堅実な選択となります。 目的・リスク許容度別:優先すべきケースの分類 ここまでのシミュレーションで確認した通り、新NISAによる運用と住宅ローンの繰上げ返済のどちらが最適かは、単なる数値上の損得だけでは決まりません。自身の現在の借入状況(金利水準)や今後のライフプラン、そして何より「どこまでのリスクなら許容できるか」によって適切な選択は異なります。 ここでは、それぞれの目的やリスク許容度に応じて、どちらを優先すべきかの具体的な判断基準を2つのケースに分けて整理します。 新NISAを優先すべきケース 以下のような目的や考えを持つ方は、手元資金を繰上げ返済に充てず、新NISAでの運用を優先することが選択肢となります。 資金効率を重視したい人 保守的な期待利回りであっても住宅ローン金利を上回る見込みがあり、長期的な資産形成を優先したいケースです。 将来のライフイベントに備えて流動性(現金)を確保したい人 教育費などのまとまった資金が数年内に必要になる見込みがある場合、引き出し(現金化)という概念のない繰上げ返済はリスクとなります。 なお、「ひとまず新NISAで運用し、将来的に住宅ローン金利が急騰した際に売却して一括返済に充てる」という柔軟な選択肢を持てることもメリットの一つです。ただし、金利上昇のタイミングで同時に株式相場などが下落した場合、損失を抱えた状態での売却を余儀なくされる恐れがある点には十分な留意が必要です。 繰上げ返済を優先すべきケース 一方で、以下に該当する場合は、投資リスクを取らずに繰上げ返済を優先する方が合理的な選択といえます。 比較的高金利の住宅ローンを組んでいる人 借入金利が高くなれば高くなるほど、投資でそれを安定的に上回るリターンを出し続けるハードルが高くなります。リスクなく高金利の利息負担を削減する方が合理的な選択肢といえます。 投資の価格変動リスクを避けたい人 新NISAには価格変動リスクが伴います。「含み損を抱えることにストレスを感じる」という方も、相場に左右されず確実に負債を減らせる繰上げ返済が適しているといえます。 定年後の住居費を下げたい人 約定返済のみでは定年後も住宅ローンの返済が続く場合、年金生活において住居費が大きな負担となる恐れがあります。退職前に「期間短縮型」の繰上げ返済を活用し、完済時期を早めることは、老後の家計の安全性を高める有効な手段となります。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、 特定の商品や投資行動を勧誘するものではありません。投資には元本割れを含むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、ご自身の判断と責任において行ってください。 まとめ 新NISAによる運用か、住宅ローンの繰上げ返済か。この選択に万人共通の正解はありません。本記事で解説した「経済合理性」「流動性と保障」「制度的影響」の3つの評価軸をもとに、ご自身のライフプランやリスク許容度と照らし合わせて判断することが重要です。 金利上昇局面においては、リスクなく利息負担を減らせる繰上げ返済の重要性が高まる一方で、新NISAの非課税メリットを活かした資金効率の追求や、いつでも引き出せる流動性の高さも大きな強みとなります。 まずは、お手元の「返済予定表」や「年末残高等証明書」で現在の借入状況や住宅ローン控除の適用期間を確認し、実際の利息軽減効果とご自身の許容できる投資リスクのバランスをシミュレーションしてみることから始めましょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 プラチナNISAとは?いつから?導入見送りの代替案とシニア世代の活用法 金融庁が創設を検討している「プラチナNISA(高齢者向けNISA)」が注目を集めています。「年金の不足分を補えるかもしれない」と期待し、具体的にどのようなメリットがあるか気になっているシニア...
2026年現在、長引く低金利環境から一転し、フラット35の金利は急ピッチで上昇しています。「金利が上がっている」というニュースを見て、全期間固定金利の住宅ローンの動向が気になっている人もいるでしょう。 不安を感じる方も多いかもしれませんが、フラット35の制度を賢く活用すれば、現在でも金利負担を抑えて住宅ローンを組むことは十分に可能です。 この記事では、フラット35の金利推移と今後の見通し、そしてより低金利で組むための戦略について、一般的な条件である「返済期間21年以上35年以下、融資率9割以下」の最低金利を基準に解説します。 フラット35の金利推移(制度開始から2022年頃まで) 紹介するフラット35の最低金利は、制度開始(2003年10月)から2011年前後までは2%台後半~3%前後で推移していました。その後は低下傾向となり、日銀がマイナス金利政策を導入した2016年から2022年頃までは1%台前半で推移する状況が続きました。しかし、2022年以降は上昇傾向に転じています。 ※筆者作成 ※2017年9月以前は、団信特約料を含まないベース金利の推移となります。 出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 【2003年〜】制度開始からリーマンショック前後の推移 フラット35は、2003年10月に前身の住宅金融公庫(現在は住宅金融支援機構)が取り扱いを始めました。制度開始当初、フラット35の最低金利は3%前後で推移しましたが、景気減速懸念などから長期金利が低下したことに伴い、2004年12月に2%台前半まで低下しました。 その後は国内景気の回復を背景に、2006年に日銀が量的緩和政策とゼロ金利政策を相次いで解除した影響を受け、金利は再び上昇傾向に転じました。その結果、2007年頃から2011年前後にかけて、おおむね2%台後半で推移しています。しかし、2008年秋の世界的金融危機(リーマンショック)を契機に日銀をはじめ各国の主要な中央銀行が金融緩和に踏み切ったことで、その後の金利は再び低下局面へと向かいました。 【2008年〜】世界的な金融緩和からアベノミクスの低下局面 さらに金利低下を加速させたのが、2013年4月に日銀が導入した「量的・質的金融緩和(いわゆる異次元緩和)」です。これは、デフレ脱却を目指して市場に大量の資金を供給する大規模な金融政策であり、長期国債の買い入れが大幅に拡大されました。 この政策により長期金利には強い低下圧力が働き、リーマンショック後もしばらくは2%台で推移していたフラット35の最低金利は、2015年末には1.5%台まで低下します。これが、直後の「マイナス金利政策」における過去最低水準の金利へと繋がる重要な下地となりました。 【2016年〜】マイナス金利政策と過去最低水準の記録 2016年1月、日銀はマイナス金利政策を導入しました。マイナス金利政策とは、民間銀行が中央銀行(日本では日銀)に預ける当座預金の一部にマイナス金利を適用する政策です。銀行が企業や家計にお金を貸し出すように促し、経済の活性化や物価上昇につなげる狙いがあります。 同年9月には長短金利操作(YCC:イールドカーブ・コントロール)も導入され、「(長期金利の指標である)10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買い入れを行う」と定められました。 企業や家計がお金を借りやすくなるように長期金利の上昇を抑制し、経済活動を活発化させることが主な目的です。この日銀の金融政策に伴い、フラット35の最低金利は一時1.0%を下回る水準まで低下しました。 その後、2017年10月の制度変更でフラット35は団体信用生命保険(団信)付きの住宅ローンになり、公表される最低金利の水準が上昇しました(団信なしで加入することも可能)。それでも、コロナ禍から経済正常化に転換する2022年頃まで、最低金利は1%台前半で推移する状況が続きました。 出典)住宅金融支援機構【フラット35】「団体信用生命保険(団体信用生命保険制度のご案内)」 2026年現在のフラット35金利 フラット35の金利は、金融市場における「長期金利(10年国債利回り)」と強く連動します。近年の長期金利の上昇により、2026年に入ってからフラット35の最低金利は2%を超える水準まで上昇しています。 長期金利を押し上げている主な要因は、以下の3点です。 日銀による政策金利の引き上げ(利上げ) 日銀による長期国債の買い入れ減額 国債増発など、国の財政悪化に対する懸念 日本は低金利が長く続いてきましたが、2024年3月に日銀はマイナス金利政策を解除し、長短金利操作の終了も決めました。この政策転換により、直近では金利が上昇傾向にあります。 また、日銀は2024年7月に長期国債買い入れの減額計画を発表しました。日銀が買い入れ額を減らすと債券市場における国債の需給バランスが崩れ、長期金利に上昇圧力が働く恐れがあります。 日銀は複数回の利上げを実施し、2025年12月の金融政策決定会合では政策金利を0.75%に引き上げました。この決定により、政策金利は約30年ぶりの高水準となりました。政策金利とは、景気や物価を安定させるために中央銀行が設定する短期金利で、民間銀行の預金金利や貸出金利に影響を与えます。 長期金利も上昇傾向にあり、2026年1月には10年国債利回りが一時2.3%台を超え、約27年ぶりとなる高水準となりました。日銀がコントロールする短期的な政策金利とは異なり、長期金利は債券市場における「国債の需給(買いたい人と売りたい人のバランス)」や将来の金利・物価見通しを反映して決まります。 日銀の利上げによる金利の先高観に加え、政府の拡張的な財政運営観測により「将来的に国債が増発され、財政が悪化するのではないか」との懸念から、市場で日本国債を売る動きが広がりました。国債は「売られて価格が下がると、金利(利回り)が上がる」という傾向にあるため、これが長期金利の急上昇に繋がっています。 出典) ・日本銀行「2025年12月金融政策決定会合での決定内容」 ・日本銀行「金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画の決定について」 ・財務省「国債金利情報」 フラット35の金利が決まる仕組み 2026年1月のフラット35の最低金利は2.08%となり、2017年10月に現行制度になってから初めて2%を超え、2026年4月の最低金利は2.49%となっています。この上昇の背景には、単なる長期金利の上昇だけでなく、「資金調達コストと貸出金利の逆転」という異例な事態がありました。 フラット35の原価にあたるのは、住宅金融支援機構が発行する「機構債」の利率です。通常、私たちが借りる金利は、この原価に機構の利ざやを上乗せして決まります。しかし、2025年半ば以降、長期金利の急騰によって機構債の利率が先行して跳ね上がりました。 出典)住宅金融支援機構「既発債情報」と住宅金融支援機構「【フラット35】借入金利の推移(令和5年4月以降)」をもとに作成 データを詳細に見ると、2025年6月(機構債条件決定日2025年5月22日)を皮切りに、原価である「機構債の利率(1.94%)」が、貸出金利である「フラット35の金利(1.89%)」を上回る「逆ザヤ」の状態に突入したのです。 本来、原価よりも安く貸し出すことは持続困難です。それにもかかわらず、その後も長期金利の上昇に伴って調達コストと貸出金利の逆転幅は拡大し続け、2026年初頭には一時0.5%以上の差が開く事態となりました。 住宅金融支援機構は国民の住生活を支援する公的機関であるため、急激な金利転嫁を一定期間抑制したものの、逆ザヤ幅の拡大により金利水準の適正化(引き上げ)へと動いたと推測されます。 現在、フラット35の金利が急ピッチで上昇しているのは、この「逆ザヤ」状態を解消し、健全な運営コストを確保するための「適正化」の動きだと考えられます。 ただし、フラット35は全期間固定金利のため、いったん住宅ローンを組めば借りたときの金利がずっと続きます。今後、このコスト調整がさらに進み金利が上がったとしても、返済中に適用金利が上がって返済額が増えることはありません。 フラット35の金利見通しと急騰リスク 今後のフラット35の金利は、引き続き「長期金利(10年国債利回り)」の動向と日銀の金融政策、そして政府の財政運営のバランスに大きく左右される見通しです。 前述の通り、金利変動の主な要因(日銀の利上げ、国債買い入れ減額、財政悪化懸念)は現在も進行中です。日銀は2026年1月の展望レポートで継続的な利上げ姿勢を示しているほか、国債買い入れの減額も2027年3月まで段階的に進められる予定です。 出典)日本銀行「長期国債買入れの減額計画(2025年6月金融政策決定会合)」 【メインシナリオ:緩やかな上昇継続】 これらの要因から、中長期的に金利には一定の上昇圧力が働き続けると推測されます。ただし、日銀の植田総裁は長期金利の急上昇には機動的に対応する姿勢をみせており、状況次第で買い入れ減額計画の見直しも選択肢に含まれています。 そのため、直近1年間のような急ピッチな上昇がそのまま加速し続けるよりは、当面は市場動向を伺いながら、抑制されたペースで推移する可能性が高いという見方が一般的です。 【リスクシナリオ:想定以上の急騰リスク】 一方で、想定を上回るペースでインフレが加速した場合や、安定した政治運営下で政府の積極的な財政出動(国債の増発)が観測され、市場の警戒が強まった場合には、日銀のコントロールを離れて長期金利が一段と跳ね上がるリスクも否定できません。 現時点では、楽観・悲観のどちらか一方に偏ることなく、金利上昇が続く前提で「自身の返済計画がどこまでの上昇に耐えられるか」を把握しておくことが、有効な対策といえます。過度に不安視せず、まずは現在の金利水準でシミュレーションを行うなど、冷静に情報収集を進めることが推奨されます。 出典)日本銀行「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」 フラット35の金利負担を抑える3つのアプローチ フラット35の金利引き下げメニューは、それぞれ単独でも活用できますが、「組み合わせ」によって真価を発揮します。より戦略的に住宅ローンを組むための、具体的な3つのアプローチを見てみましょう。 戦略1:制度をフル活用する「ポイント最大化戦略」(子育てプラス×住宅性能×維持保全型) 戦略2:保障とコストを分ける「コスト最適化戦略」(団信なし×民間生保)」 戦略3:制度と公的支援の「ハイブリッド戦略」(中古リノベ×中古プラス×自治体の補助金) ポイント最大化戦略(子育てプラス×住宅性能×維持保全型) 子育て世帯が一定の要件を満たす長期優良住宅を取得する場合、「子育てプラス+ZEH+維持保全型」の組み合わせにより、合計5ポイント以上の獲得が期待できます。 出典)住宅金融支援機構「家族構成と建て方に合わせた組合せで金利を引下げ!」 こどもの人数によっては、子育てプラスだけで2ポイント以上を得られます。住宅性能では、ZEH(ゼッチ)の適用要件を満たすと3ポイント確保でき、長期優良住宅なら維持保全型で1ポイントが追加されます。 5ポイント以上獲得できれば、当初5年間の最大引き下げ(年1.00%)に加え、6〜10年目も金利引き下げ(年0.25%)が適用されるため、長期的な返済負担を大きく抑えることができます。 例えば、2026年4月現在の金利水準(年2.49%)で借入額3,000万円・35年返済を組んだ場合、最初の5年間は適用金利が「年1.49%」まで下がり、月々の返済額は約1.5万円軽減されます。さらに、35年間の総返済額で見ると約167万円もの大幅な軽減効果が期待できる計算となります。 関連記事はこちらフラット35子育てプラスとは?金利引き下げの条件や注意点を解説 コスト最適化戦略(団信なし×民間生保)」 フラット35を団信なしで借り入れ、民間の収入保障保険に加入する方法です。フラット35は団信加入が必須ではなく、加入しない場合は適用金利が0.2%下がります。掛け捨ての収入保障保険で団信と同等の保障を確保すれば、新機構団信付きのフラット35よりもトータルの支払い額を抑えられる傾向があります。 それでは、借入金額3,000万円の場合の返済額の違いを比較表で見てみましょう。 【シミュレーション条件】 借入金額3,000万円 返済期間35年 (団信付き)適用金利2.49%、(団信なし)適用金利2.29% 元利均等返済、ボーナス払いなし 新機構団信付き 新機構団信なし 差額 月々の返済額 約10万7,000円 約10万3,900円 約3,100円 総返済額 約4,497万円 約4,363万円 約133万円 ※総返済額は千円未満切り捨てで算出。 ※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。 ※金利はシミュレーションのための仮定値であり、実際の適用金利を示すものではありません。 出典)住宅金融支援機構「ローンシミュレーション(借入希望金額から返済額を計算)」にて筆者試算 上記の場合、新機構団信を外すことで総返済額が約133万円軽減されます。したがって、自身で加入する民間の保険料総額が「133万円」を下回れば、「団信なし+民間の収入保障保険」のほうがトータルコストで有利といえます。 出典)住宅金融支援機構「健康上の理由その他の事情で新機構団信制度に加入しない場合も、【フラット35】は利用できますか。」 民間保険利用時の損益分岐点(月額目安) 軽減額の133万円を返済期間の35年(420ヵ月)で割ると、ひと月あたり約3,100円の差額となります。したがって、自身で加入する民間の収入保障保険(万が一の際は一括受取でローンを完済する想定)の保険料が「毎月約3,100円以下」に収まるのであれば、団信に加入するよりもトータルコストで有利になるとシミュレーションできます。 生命保険料控除による経済的メリット 民間の生命保険の保険料は「生命保険料控除」の対象となる点も大きなメリットです。住宅ローンの金利に含まれる団信の特約料は税額控除の対象外ですが、民間の生命保険であれば年末調整や確定申告によって所得税・住民税の負担が軽減されるため、金利差による約133万円の軽減額に加え、プラスαの経済的メリットが期待できます。 ただし、民間保険の保険料は年齢や健康状態(喫煙の有無など)で大きく変動します。加入者の条件によっては、新機構団信にそのまま加入するほうが有利になる場合もあるため、事前に比較・見積もりが必要です。 なお、自己資金(頭金)を1〜2割以上用意できる場合は、一般的な買取型よりも低金利が設定されやすい「保証型のフラット35」を選ぶほうが、さらにトータルコストで有利になる可能性があります。 関連記事はこちらフラット35の買取型・保証型の違いを徹底比較!どっちがいい? ハイブリッド戦略(中古リノベ×中古プラス×自治体の補助金) 物件価格を抑えつつ理想の住まいを叶える「中古購入+リノベーション」では、フラット35の優遇制度と国・自治体の支援を組み合わせることで、新築と比較して、高い費用対効果が期待できます。 ポイント累積による金利引き下げ期間の延長 フラット35は、複数のメニューを組み合わせることで引き下げ期間を延ばすことが可能です。以下は、4ポイント(最大年1.0%引き下げ)を超える場合のシミュレーション例です。 【シミュレーション条件】 中古プラスで1ポイント リノベ(金利Aプラン)で4ポイント 子育てプラス(子ども2人)で2ポイント 元利均等返済、ボーナス払いなし ※合計7ポイント獲得(当初5年間は年1.0%、6~10年目は年0.75%の金利引き下げ) 通常、年1.0%の引き下げは「当初5年間」で終了しますが、このようにポイントを積み上げることで、金利上昇期の不安を長期にわたって解消できます。 出典)住宅金融支援機構「家族構成と建て方に合わせた組み合わせで金利を引下げ!」 国・自治体の補助金と住宅ローン控除の併用 金利だけでなく、以下の「直接的な資金支援」を組み合わせるのがハイブリッド戦略の肝です。 省エネリフォーム補助金:断熱改修や高効率給湯器の設置で、国や自治体から数十万円単位の補助を受けられる可能性があります。 所得税の住宅ローン控除:リフォーム費用も借入額に含めて控除対象にできます。ただし、中古住宅の場合は「新耐震基準」への適合など、適用要件を満たす必要がある点に注意が必要です。 なお、実際の軽減額や補助金の採択可否は個別の物件や自治体により異なります。適用条件や補助額は自治体によって異なるため、購入前に自治体の公式ホームページで最新情報を確認するか、フラット35取扱金融機関の窓口でシミュレーションを含めた事前相談を行うことを推奨します。 出典) ・東京都「既存住宅の省エネ診断・省エネ設計への補助」 ・国税庁「住宅ローン控除を受ける方へ」 まとめ フラット35の最低金利は、マイナス金利政策が始まった2016年~2022年頃までは1%台前半で推移していましたが、2026年に入ってからは2%を超える水準まで上昇しています。日銀の利上げや積極財政による財政悪化への懸念など、今後1~2年は長期金利に上昇圧力が働きやすい環境にある点に注意が必要です。 フラット35をより低金利で組むためには、この記事で紹介した「金利引き下げメニューの組み合わせ」や「民間保険の活用」、「中古リノベのハイブリッド戦略」を賢く使い分けることが重要です。 まずはご自身のライフプランや希望する物件の条件において、どの戦略がもっとも効果的なのか、複数の金融機関で具体的なシミュレーションから始めてみることをおすすめします。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。前回の記事(【フラット35】2026年4月金利は2.49%に決定|公認会計士の予測と機構債分析)では、【フラット35】の2026年4月金利を2.25%~2.35%と予想しましたが、予想より大幅に上がり、2.49%と予想レンジから外れる結果となりました。 まずは、最新の機構債と市場動向から分析した、2026年5月の【フラット35】金利予想の結論からお伝えします。 【2026年5月 フラット35金利予想】 予想レンジ:2.67% ~ 2.77% 傾向:上昇 要因:新発10年国債利回りの上昇 原油価格の高騰による物価上昇懸念や、日銀の利上げ観測も加わり、新発10年国債利回りは上昇傾向で推移しています。これに伴い、固定金利タイプの住宅ローンにも上昇圧力がかかっています。 この記事では、急変する市場の中で「なぜこの予想になるのか」、その根拠となる国債・機構債の動きと、私たち借り手にとって重要な「逆ザヤ(機構による金利抑制)」の現状について解説します。 2026年5月の【フラット35】金利は2.71%に決定しました(更新日:2026年5月1日)。 【フラット35】2026年4月金利予想の結果と検証 2026年4月の金利決定結果(2.49%) 2026年4月の【フラット35】金利は2.49%に決定し、3月下旬での予想レンジ(2.25%~2.35%)の上限から0.14ポイント上がる結果となりました。 今回の予想は、機構債の表面利率が0.14ポイント上がったことに鑑みたものです。悲観的に見れば【フラット35】金利も同等の0.14ポイント上昇する恐れもありましたが、機構側の激変緩和措置により、0.10ポイント程度の上昇に抑えられると期待していました。しかし結果は、前月の【フラット35】金利(2.25%)から0.24ポイント上昇の2.49%となり、悲観的なシナリオをさらに超える大幅な上昇となっています。 なお、【フラット35】の金利は、以下の簡易式で説明できます。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) 想定以上の金利上昇と縮小する逆ザヤ 予想を超える金利上昇とはいえ、【フラット35】の金利上昇が抑制されている状態は継続しています。これを支えているのは、過去連続10か月にわたって【フラット35】の金利が機構債の表面利率を下回っている、いわゆる「逆ザヤ」現象です。 2025年6月に0.05ポイントから始まった逆ザヤは毎月拡大を続け、2026年2月には0.52ポイントに達しました。一方で、3月には0.40ポイント、4月には0.30と逆ザヤが縮小傾向にあります。 この動きを踏まえて、独立行政法人として国民の住生活を支える公的使命を持つ住宅金融支援機構が、どこまでこの「逆ザヤ」を許容し貸付金利の上昇を抑制するかが予想の焦点となります。 2026年2月から3月の動きを踏まえ、千日太郎は次の点に焦点を当てています。 2026年2月の逆ザヤ「0.52ポイント」で機構の許容上限を超えた 2026年3月以降どこまでの許容上限に設定するかが焦点 逆ザヤの推移(機構債 vs フラット35) 年月 機構債表面利率 機構債発表日 フラット35金利 金利差(逆ザヤ) 2025年6月1.94%5月22日1.89%-0.05ポイント 2025年7月1.88%6月20日1.84%-0.04ポイント 2025年8月2.02%7月18日1.87%-0.15ポイント 2025年9月2.08%8月21日1.89%-0.19ポイント 2025年10月2.12%9月19日1.89%-0.23ポイント 2025年11月2.15%10月17日1.90%-0.25ポイント 2025年12月2.30%11月20日1.97%-0.33ポイント 2026年1月2.45%12月17日2.08%-0.37ポイント 2026年2月2.78%1月22日2.26%-0.52ポイント 2026年3月2.65%2月18日2.25%-0.40ポイント 2026年4月2.79%3月18日2.49%-0.30ポイント 出典) ・住宅金融支援機構「既発債情報」 ・住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 ※「住まいとお金の知恵袋編集部」作成 【フラット35】2026年5月金利予想 2026年4月から5月にかけて、新発10年国債利回りは2.24%から2.42%(※)へ、0.18ポイントの大幅な上昇となりました。これに伴い、機構債の表面利率は2.79%から2.97%へと0.18ポイント上がっています。単純計算すれば、5月の【フラット35】も同程度の0.18ポイント上がる計算となります。 これまでの機構債の表面利率や新発10年国債利回りの推移を踏まえた、【フラット35】の金利予想は以下のとおりです。 ※10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 【フラット35】金利推移と2026年5月予想 2026年2月 2026年3月 2026年4月 2026年5月千日太郎の予想 【フラット35】の金利(※) 2.26% 2.25% 2.49% 2.67%~2.77%※5/1発表の金利は2.71%でした ※出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 シナリオ①:激変緩和措置を織り込んだ現実的上限(2.67%) 下限の2.67%は、機構債の上昇幅(0.18ポイント)を反映しつつ、逆ザヤを前月と同じ「0.30ポイント」に維持するという前提のシナリオです。2月から4月まではひと月あたり0.10ポイントのペースで逆ザヤが縮小してきましたが、これはあまりに急ピッチです。さらに4月から5月の新発10年国債利回りの上昇幅も大きいことから、激変緩和措置として逆ザヤの縮小を一時停止する可能性があるとみています。 シナリオ②:逆ザヤ縮小ペースの継続(2.77%) 上限の2.77%は、機構債の上昇幅(0.18ポイント)を反映しつつ、逆ザヤを「0.20ポイント」に縮小するという前提のシナリオです。2月から4月まで続いた「ひと月あたり0.10ポイントの逆ザヤ縮小」のルールが5月にも適用されるとすれば、十分にあり得る現実的なシナリオとなります。 機構債の表面利率・新発10年国債利回り・ローンチスプレッドの推移 主要データ(2026年4月17日時点) 機構債発表日 2026年1月22日 2026年2月18日 2026年3月18日 2026年4月17日 機構債の表面利率(※1) 2.78% 2.65% 2.79% 2.97% 新発10年国債利回り(※2) 2.27% 2.12% 2.24% 2.42% ローンチスプレッド(※1) 0.51% 0.53% 0.55% 0.55% ※1:出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2:10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 まとめ 最近の【フラット35】金利は、新発10年国債利回りの上昇を背景に、上昇圧力が続く局面にあります。中東情勢などの不確定要素も相まって、市場は想定以上に振れやすい環境です。こうした中で、将来の金利を固定できる点は家計の見通しを安定させる大きなメリットといえます。また、逆ザヤ幅は縮小傾向にあるものの、まだ調達金利よりも低い金利で提供されていることは確かです。 今のように変化の激しい経済環境にあって【フラット35】は、公的融資という側面から急激な変動が抑えられることが期待されます。複数の金融機関で仮審査に申し込み、変動金利・固定金利の両面で返済シミュレーションを実施するなど、金利上昇リスクへの備えを進めておくことをおすすめします。 ※この記事は2026年4月17日時点の公開情報に基づき、筆者の個人的な見解として執筆したものです。将来の金利動向を保証するものではありません。最終的な借り入れや投資の判断は、ご自身の責任において行ってください。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。
地震保険の加入は、地震による建物・家財の損壊だけでなく、通常の火災保険では対象外となる地震を原因とする「火災(延焼を含む)」や「津波」への備えとして有効な手段です。 しかし、「地震保険はいらない」という意見を聞いて、加入すべきか迷う人もいるでしょう。地震保険の必要性は、漠然とした不安や先入観ではなく、経済的合理性やリスク許容度の観点から冷静に判断することが重要です。 この記事では、「地震保険はいらない」と言われる理由と必要性の判断基準、保険料を抑える方法を解説します。地震保険の基本的な仕組みや火災保険との違いについては、以下の記事をご参考にしてください。 関連記事はこちら地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 地震保険が「不要」と言われる3つの理由と実態 「地震保険は不要」と言われる主な理由は以下の3つです。 火災保険の最大50%しか補償されない 保険料が割高だと感じる 公的支援がある 理由1:火災保険の「最大50%」しか補償されない 地震保険の保険金額(保険金の限度額)は、火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で設定します。建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限です。 さらに、地震保険は実際の修理費がそのまま支払われる「実損払い」ではありません。被害の程度に応じて「全損(100%)」「大半損(60%)」「小半損(30%)」「一部損(5%)」の4段階(平成29年1月1日以降保険始期の地震保険契約の場合)に区分し、契約した保険金額に対する一定の割合で保険金が支払われる仕組みとなっています。これは、個別の修理費を精査する時間を省き、被災者へ迅速に現金を届けるという公的性格を持つ制度としての役割を優先しているためです。 そのため、「地震で建物が損壊した場合、地震保険だけで建て替え費用や修理費用を全額カバーするのは難しい」というのが実態であり、これが不要と言われる理由の一つになっています。各損害区分(全損〜一部損)の詳しい認定基準や、実際の支払い例については以下の記事で解説しています。 関連記事はこちら地震保険の一部損や全損における認定基準と支払い例 理由2:補償内容に対して保険料が割高に感じる 前述のとおり、地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の最大50%であり、損害額が全額補償されるわけではありません。また、地震保険は「地震保険に関する法律」に基づき、政府と民間の損害保険会社が共同で運営する公共性の高い保険です。 建物の構造や所在地である都道府県ごとに基準料率が定められており、どの保険会社で加入しても保険料は一律ですが、地域によっては保険料が高額になるケースがあります。最大50%となる補償上限とのバランスから「割高だ」と感じる人がいるのも事実です。 理由3:公的支援があるから不要だと考えてしまいがちな点 解体撤去費用や家財購入で数百万円程度、建て替えが必要な場合は数千万円程度の費用が必要になるケースもあります。実際に「公的支援で受け取れる金額」と「生活再建にかかる費用の目安(例)」を比較してみましょう。 ■公的支援で受け取れるお金(例) 被災者生活再建支援金:最大300万円 ■生活再建にかかるお金(例) 住宅の撤去費用:約100万円 家財一式買い直し:約200万円 当面の仮住まい費用:約80万円 住宅の建て替え費用:約2,000万円 ※上記の費用はあくまで目安(例)であり、建物の規模や被害状況、地域によって大きく異なります。 公的支援だけでは生活再建費用が足りない場合、地震保険や預貯金などで補う必要があります。 出典)内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」 地震保険で「備えておくと安心な人」の判断基準 地震保険に加入すべきかどうかは、万が一被災した際の「資金的な回復力」や「ご自身のリスク許容度」によって大きく変わります。 そのため、「絶対に必要」「全く不要」といった極端な二元論で決めるのではなく、現在の家計状況に照らし合わせて「地震保険で備えておいたほうが安心できるか」という視点で検討することが重要です。 具体的には、以下のポイントが判断の目安となります。 ■優先度が高い(備えておくと安心な)ケース 住宅ローン返済中の場合 貯蓄での生活再建を行うことが難しい場合 ■優先度が相対的に低い(比較検討が必要な)ケース 十分な資産があり、被災後も自己資金のみで生活再建や住宅の再取得が可能な場合 住宅ローン返済中の場合:二重ローンリスクへの備え 現在住宅ローンを返済中の人は、地震保険への加入によるリスクヘッジの優先度が相対的に高いと考えられます。万が一、地震で家が全壊して住めなくなったとしても、元の住宅ローンの返済義務はそのまま残ります。 もし新しい家を建て直したり、別の賃貸物件を借りたりする場合、「元の家のローン」と「新しい住居の費用(ローンや家賃)」を同時に負担する『二重ローン(二重債務)問題』に直面するリスクがあります。 地震保険の保険金があれば、この当面の二重ローンの返済や当座の生活費に充てることができ、家計の破綻リスクを軽減し、生活再建を支える一助となります。 貯蓄での生活再建に不安がある場合:当面の生活資金の確保 十分な貯蓄がなく、被災後の生活再建を自己資金だけでまかなうことが難しい人は、地震保険で備えておく重要性が増します。 地震で被災した場合、家具・家電の買い替えや仮住まいの費用など、想定以上の支出が生じることがあります。また、公的支援だけでは補償が足りないケースも多いため、地震保険で備えると安心です。 十分な自己資金がある場合:手元資金を取り崩すリスクとの比較 仮に地震で住宅が損壊しても、自己資金で修繕や建て替えに対応できるのであれば、地震保険によるリスクヘッジの優先度は下がると考えられます。 ただし、多額の資金を取り崩すと、今後のライフプランに影響を及ぼすこともあります。保有資産と保険料負担とのバランスを踏まえ、「保険で備える」という選択肢も検討することが大切です。 地震保険加入による経済的メリットと合理性 地震保険には、さきほど述べたような「当面の生活資金を確保できる」メリットや「地震保険料控除が適用される」といったメリットなどがあります。このような経済的合理性の観点から、地震保険の必要性を考えることが重要です。 被災直後の「当面の現金」を確保する手段 大地震の発生頻度は低いものの、一度起これば家計に深刻な打撃を与える恐れもあります。修繕費に加え、避難生活や仮住まい、生活必需品の購入など、短期間でまとまった資金が必要になるからです。 地震保険の保険金は使い道が限定されておらず、生活費や住宅の修理費など幅広い用途に充てることができます。 地震保険料控除による節税メリット(実質負担の軽減) 地震保険料控除は、支払った地震保険料に応じて所得税・住民税の負担が軽減される税制優遇制度です。支払保険料に応じて、最大で所得税は5万円、住民税は2万5,000円まで「所得」から控除されます。 これにより、所得税率10%・住民税率10%の世帯が上限まで控除を受けた場合、年間で合計7,500円(所得税5,000円+住民税2,500円)の減税効果が期待できる計算となります。 ただし、実際の軽減額はご自身の所得に応じた税率によって異なります。 地震保険料控除による税負担の軽減分を加味した「実質的な年間コスト」と、それによって得られる「生活再建資金(保険金)」を天秤にかけて加入判断を行うとよいでしょう。 関連記事はこちら【2026年版】地震保険料控除の書き方と計算例 | いくら控除されるか具体例で解説 地震保険料の負担を抑える2つの考え方 地震保険料の負担を抑えるには、「家財のみ加入する」「長期契約をする」の2つが主な選択肢となります。 家財のみ加入する選択肢 家財のみ加入すると、建物の補償がない分だけ保険料負担が軽減されます。 例えばマンションは、構造上、倒壊しにくいケースが多い一方で、特に高層階では揺れが増幅されやすく、家財に大きな被害が出ることがあります。このようなケースでは、建物の地震保険には加入せず、家財の地震保険のみ加入するのも選択肢となるでしょう。 ただし、建物に対する補償がゼロになるため、地震の揺れによる損壊だけでなく、「地震を原因とする火災(延焼を含む)や津波」で建物が失われた場合もすべて自己負担となる点には十分な注意が必要です。貯蓄額や住まいの状況を踏まえ、慎重に検討しましょう。 関連記事はこちらマンションにおける地震保険の必要性と補償範囲・保険料相場の基礎知識 長期契約で保険料を節約する 地震保険は2年〜5年の長期契約にすることで、1年あたりの保険料を割安にできます。保険期間に応じて割引率が高くなり、長期で契約したほうがお得になる設計になっています。 保険料を一括払いにする必要はありますが、1年あたりの保険料を少しでも抑えたい場合は長期契約がおすすめです。 出典)財務省「地震保険制度の概要」 まとめ 地震保険は、補償額が火災保険の保険金額の最大50%であること、公的支援があることなどを理由に「地震保険はいらない」と言われることがあります。 しかし、支援金だけで生活再建費用をカバーするのは難しいため、地震保険に加入しないと多額の自己負担が生じるかもしれません。特に住宅ローンが残っている人や貯蓄だけで生活再建が難しい人は、地震保険によるリスクヘッジの優先度が高いと考えられます。 地震保険料の負担を少しでも抑えたい場合は、状況に応じて「家財のみ加入する」「長期契約をする」といった方法を検討しましょう。まずは現在の火災保険の契約内容を確認しましょう。地震保険は火災保険の契約期間中であっても、後から追加で加入(中途付帯)することが可能です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 地震保険の料金相場はいくら?構造別の目安と保険料を安くする3つの方法 マイホームを取得する場合、地震による建物や家財の損壊に備えるには地震保険に加入するのが有効です。しかし、「保険料はいくらかかるのか」「家計への負担が重くなるのではないか」と不安を感じる方もい...
マンションは戸建てに比べて地震に強いという印象をもっている方も多く、「倒壊しないなら地震保険は必要ないのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし、日本は地震大国であり、過去の大地震では強固なマンションであっても、外壁のひび割れや室内の損壊、生活基盤の喪失といった被害が発生しています。 マンション特有のリスクを把握したうえで、ご自身の生活を守るための有効な手段として、地震保険の必要性を正しく理解することが重要です。この記事では、マンションにおける地震保険の仕組みや必要性の判断基準、保険料相場などをわかりやすく解説します。 ■地震保険の基本ルール 加入の前提:火災保険とセットでのみ加入可能。保険金額は火災保険の30%〜50%の範囲内で設定 必要性の結論:地震による損害は原則として自己負担となる(第三者からの賠償を受けにくい)ため、生活再建の資金確保として加入の必要性は高い傾向にあります。 ■マンションにおける地震保険の補償範囲と加入ルール 項目 補償範囲の例 ルール目安 共用部分 エントランス、廊下、エレベーター、外壁など 管理組合が加入して備える 専有部分 室内空間、壁紙、床、備え付けの設備など 区分所有者個人が加入して備える 家財 家具、家電、衣類など 区分所有者個人が加入して備える 関連記事はこちら地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 マンションにおける地震保険の仕組みと「共用部分・専有部分」の違い 地震保険を検討する上でまず押さえておくべきポイントは、「どこまでが自分(個人)の責任で、どこからが管理組合(全体)の責任か」という境界線を理解することです。マンションの場合、管理組合が加入する地震保険で補償されるのは「共用部分」のみです。地震で「専有部分」や「家財」が損害を受けても、管理組合の保険ではカバーされません。 管理組合が加入する「共用部分」の範囲 共用部分とは、区分所有者が単独で所有する「専有部分」以外の建物の部分を指します。具体的には、エントランスや廊下、エレベーター、外壁のほか、特定の区分所有者が専用で使う権利(専用使用権)を持つバルコニーなども共用部分に含まれます。一般的に、共用部分の地震保険は管理組合が一括で加入して備えます。 ただし、法的な義務はないため、ご自身の住むマンションの管理組合が地震保険に加入しているとは限りません。総会の決算報告書(収支報告書)などで確認するか、直接管理会社に問い合わせて、現在の加入状況を把握しておくと安心です。 個人が加入する「専有部分」と「家財」の範囲 専有部分とは、区分所有法に基づき、区分所有者が単独で所有し、居住する室内空間のことです。一般的に壁紙や床材、備え付けのキッチンやバスルームなどが含まれます。また、室内にある家具や家電、衣類などは「家財」として扱われます。 これらが地震によって損壊した場合は、区分所有者個人が加入する地震保険(専有部分・家財)が補償の対象となります。ただし、実際の保険金支払いは、規定の損害認定基準を満たす必要がある点に留意が必要です。 マンションにおける地震保険の必要性と判断基準 「鉄筋コンクリート造だから倒壊しない」という理由だけで地震保険を外すのは、非常にリスクが高い判断といえます。ここでは、マンション特有の「類焼(もらい火)」のリスクから、地震保険の必要性を解説します。 類焼(もらい火)リスクと失火責任法 マンションで想定すべき重大なリスクのひとつが、隣室から火が燃え移る「類焼(もらい火)」です。日本の法律には「失火責任法(失火法)」があり、隣人がうっかり火事を起こして自分の部屋に延焼した場合でも、火元に「重大な過失」がない限り、隣人に損害賠償を請求することはできません。 さらに、その火災の原因が「地震」であった場合、地震は自然災害(不可抗力)であるため、原則として他者への賠償請求ができません。加えて、「地震を原因とする火災(延焼を含む)は、通常の『火災保険』では原則として補償対象外となる」点にも注意が必要です(※一部の商品によっては保険金が支払われる場合もあります)。 つまり、自身で地震保険に加入していなければ、地震によるもらい火で失った家財や内装の修繕費は、原則として自己負担となる恐れがあります。 ※筆者作成 専有部分と家財における損害認定の基準差異 地震保険に加入する際、あらかじめ知っておくべき重要な注意点があります。それは、マンションの専有部分(壁紙や床など)の損害は、マンション全体の主要構造部(柱や梁など)の損害状況と連動して判定されるケースが一般的であるという点です。そのため、「室内の壁紙が少し破れた程度では、損害として認定されにくい」という実態があります。 マンションでの地震被害では、建物の損壊だけでなく、家具の転倒や家電の落下といった被害も多く発生します。そのため、生活再建への備えとして、専有部分の建物だけでなく、「家財(家具や家電)」も補償対象に含めておくことが推奨されます。家財であれば、テレビが倒れて壊れた、食器が割れたなど、室内ごとの損害が個別にチェックされるため、マンションであっても損害認定が受けやすくなります。 地震保険は「生活再建のための資金」 地震保険の目的は、損害を完全に元通りにすることではなく、「当面の生活を立て直すための資金を確保すること」にあります。 地震保険は制度上のルールとして単独での加入はできず、必ず火災保険とセットで加入する必要があります。また、地震保険は「地震保険に関する法律」に基づき、政府と保険会社等が共同で運営する公共性の高い保険です。 損害の完全な穴埋めではなく「被災者の生活の安定に寄与すること」を目的としているため、保険金額は火災保険の契約金額の30%〜50%の範囲内(建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限)と法律で定められています。 満額の補償が出ないとはいえ、被災時にまとまった現金(保険金)が手元に入ることは、住居の修繕費や当面の生活費、ローン返済などをカバーする上で大きな支えとなります。 【補足】約7割のマンション居住者が地震保険に加入 「マンションだから地震保険は不要」と考える人がいる一方で、財務省のデータによると、2023年度におけるマンション専有部分の地震保険付帯率は「74.4%」に上っています。 つまり、すでに7割以上のマンション居住者が「万が一の損害は自己負担になる」というリスクに備えて、火災保険に地震保険をセットして自己防衛を行っているのが実態です。 出典)財務省「地震保険の加入促進について p.4」 マンション地震保険の保険料相場 地震保険料は、建物の所在地(都道府県)や構造(木造・鉄骨造等)、耐震等級による割引制度などをもとに算出されます。政府の基準に従って算出されるため、どの保険会社で加入しても基本的な保険料は同じです。 たとえば東京都の鉄筋コンクリート造マンションの場合、契約金額1,000万円当たりの年間保険料の目安は約27,500円(割引適用なしの場合)です。 出典) ・財務省「地震保険制度の概要」 ・財務省「地震保険の基本料率」 耐震等級割引や免震建築物割引の適用条件 地震保険には、建物の免震・耐震性能に応じた保険料の割引制度が用意されています。割引率は最大50%です。耐震性に優れたマンションであれば、割引制度の適用によって地震保険料の負担軽減が期待できるでしょう。 制度 割引率 要件 免震建築物割引 50% 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく免震建築物である場合 耐震等級割引・耐震等級3 50% 同法に規定する日本住宅性能表示基準に定められた耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)が「等級3」である場合など 耐震等級割引・耐震等級2 30% 同法に規定する日本住宅性能表示基準に定められた耐震等級が「等級2」である場合など 耐震等級割引・耐震等級1 10% 同法に規定する日本住宅性能表示基準に定められた耐震等級が「等級1」である場合など 耐震診断割引 10% 地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、改正建築基準法の耐震基準を満たす場合 ※各種割引の併用はできません。また、適用には所定の確認資料の提出が必要です。 出典)財務省「地震保険制度の概要」 「地震保険料控除」で実質的な負担は軽減 地震保険の保険料は「地震保険料控除」の対象となり、年末調整や確定申告を行うことで所得税・住民税の負担を軽減できます。具体的には、所得税で最大5万円、住民税で最大2万5,000円をその年の所得から差し引くことが可能です。 額面上の保険料だけを見ると高く感じるかもしれませんが、この節税効果を含めると実質的な家計の負担は軽くなります。たとえば、年間の地震保険料が5万円以上で所得税率10%の場合、所得税と住民税を合わせて最大で年間7,500円の税負担軽減となります。ただし、実際の軽減額はご自身の所得に応じた税率によって異なります。 関連記事はこちら【2026年版】地震保険料控除の書き方と計算例 | いくら控除されるか具体例で解説 まとめ マンションでの生活においても、大地震による「家財の損壊」や、地震を原因とする隣室からの「類焼(もらい火)」といった特有のリスクへの備えは欠かせません。地震という不可抗力による損害は、原則として他者からの賠償を受けにくいため、修繕費や生活再建費はすべて自己負担となる可能性が高い点に留意が必要です。 マンションの専有部分(建物)に関する地震保険の損害認定は、基本的に主要構造部の損害状況等をもとに行われるため、軽微な内装被害のみでは「一部損」などの認定に至らないケースもあります。しかし、揺れによる家財の損害は建物とは別個に発生するため、「建物」だけでなく「家財」も適切に補償対象に含めることが、生活再建の資金を確保するうえでの合理的な備えとなります。 予期せぬ災害による出費で家計が破綻するリスクを防ぐためにも、地震保険の仕組みと補償の限界を正しく理解し、ご自身の生活を守るための適切な資金計画・保険の見直しを行っておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 地震保険は必要?加入すべき人の特徴と判断基準 日本は世界有数の地震多発国です。万が一の被災後に生活を立て直すため、地震保険は重要な備えといえます。しかし、「保険料の負担が大きい」「建物が耐震化されているから大丈夫」といった理由で、加入を...
住宅ローンを検討する際、「今の年収でどれくらいの家が買えるのか」「いくらまでなら将来も安心して返済できるのか」と不安を感じる方は多いのではないでしょうか 。 年収600万円は、住宅ローンの審査において条件次第では5,000万円以上の高額借入が通る可能性もある層です。しかし、「金融機関が貸してくれる限度額」と「将来にわたって無理なく返済できる適正額」は必ずしも一致しません。 この記事では、年収600万円の世帯が安全に返済できる「借入適正額」のシミュレーションを中心に、将来の家計を守るための金利タイプの選び方や、無理のない繰り上げ返済のコツを解説します。 ■「年収600万円の住宅ローン」早見表 項目 目安とポイント 手取り年収の目安 約460万〜480万円(月額約38万〜40万円) 適正な借入金額の目安 約3,500万〜4,400万円(返済負担率20〜25%以内、金利1.0%、返済期間35年で算出した場合) 資金計画のポイント 金利上昇リスクへの備えと、余剰資金を活用した繰り上げ返済 ※関連記事「年収別・住宅ローンの借入適正額早見表」のうち、本ページは年収600万円の方向けの詳細解説です。他の年収層の目安については、以下のリンク先をご覧ください。 関連記事はこちら【早見表】年収別・住宅ローンの借入適正額 年収600万円で「借りられる額」と「返済できる額」のギャップ 「銀行の審査に通る金額=無理なく返済できる金額」ではありません。ここでは、限度額いっぱいまで借りてしまうことの危険性と、年収600万円の家計におけるリアルな「適正ライン」について解説します。 金融機関の審査上限(返済負担率35%)で借りるリスク 住宅ローンの借入金額を決める際、最も重要な指標となるのが「返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)」です。金融機関の審査によっては「返済負担率35%程度」まで借りられるケースもありますが、限度額まで借りると毎月の家計が著しく圧迫されるリスクが高まります。 多くの金融機関では、将来の金利上昇リスクを考慮するため、実際の適用金利よりも高めに設定した「審査金利(目安として年3〜4%前後)」を用いて、借入限度額を算出します。 しかし、銀行が審査で許容する「返済負担率(年収に対する返済額の割合)」は、一般的に年収の30〜35%前後と、家計の安全圏(20〜25%)よりも高めに設定されています。また、銀行は一般的に「税込みの額面年収」を基準に審査しますが、実際の生活は「税引き後の手取り年収」でやりくりしなければなりません。 そのため、「銀行が貸してくれる額(限界まで切り詰めた場合の完済可能額)」は、必ずしも「現在の生活水準を維持できる返済額」とは限らない点に注意が必要です。銀行の借入可能額はあくまで一つの目安とし、自分たちのライフスタイルに合った「返済できる適正額」を自分自身で見極めることが重要です。 【金利別】適正な借入額(返済負担率20〜25%)と月々の返済額シミュレーション ここでは、家計に十分なゆとりがある「返済負担率15%」から、銀行の審査上限目安となる「35%」まで、幅広いパターンでの借入可能額と月々の返済額をシミュレーションして比較します。 【条件】 返済期間:35年 適用金利:1.0% 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし) 返済負担率 年間返済額 月々の返済額 借入可能額の目安 15% 90万円 7.5万円 約2,656万円 20% 120万円 10.0万円 約3,542万円 25% 150万円 12.5万円 約4,428万円 30% 180万円 15.0万円 約5,313万円 35% 210万円 17.5万円 約6,199万円 出典)住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成 ※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。また、計算上1,000円未満は切り捨てて表示しています。 ※金利はシミュレーションのための仮定値であり、実際の適用金利を示すものではありません。 年収600万円(手取り月額約38万〜40万円)の場合、将来の教育費や車の買い替え、老後資金の貯蓄などを考慮すると、無理なく返済できる適正額は「返済負担率20〜25%(借入金額約3,500万〜4,400万円)」がひとつの目安となります。 例えば、手取り月額が38万円で返済負担率を25%(月々の返済額12.5万円)とした場合、手元に残る生活費は約25.5万円です。ここから家族の食費、光熱費、教育費、車の維持費、そして将来への貯蓄を捻出することを考慮すると、これ以上ローン比率を上げるのは生活にゆとりがなくなる恐れがあることがわかります。 平均的な「年収倍率」と自身の適正額を比較する 住宅探しの際によく耳にする指標に「年収倍率」があります。これは「住宅購入にかかる所要資金が年収の何倍にあたるか」を示すもので、平均的な負担感(購入水準)を知るための「補助指標」として活用することができます。なお、住宅金融支援機構のフラット35利用者調査では、年収倍率は「所要資金÷世帯年収」で算出されます。 住宅金融支援機構の「2024年度 フラット35利用者調査」によると、フラット35利用者の年収倍率は以下の通りです。 土地付注文住宅:7.5倍 マンション:7.0倍 注文住宅:6.9倍 建売住宅:6.7倍 中古マンション:5.5倍 中古戸建:5.3倍 出典)住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査(年収倍率(融資区分別)の推移)p.12」をもとに筆者作成 年収倍率を確認指標として活用する ここで注意したいのは、これらの数値は所得水準の異なる世帯をすべて含めた「全国平均」かつ「フラット35利用者における平均」であり、年収600万円の世帯にとっての「安全な購入額」や「適正水準」を直接示すものではないという点です。 年収600万円で、先ほど算出した適正額(3,500万〜4,400万円)を年収倍率に当てはめると、約5.8倍〜7.3倍となります。全国平均(フラット35利用者)と比較して、この範囲内に収まっていれば「大きく無理のない購入水準」といえますが、もし7.5倍や8倍を超えるような場合は、全国の平均から大きく離れており、家計を圧迫するリスクが高いと判断できます。 年収倍率は「自分の計画が世間一般とかけ離れていないか」を確認する目安として活用しましょう。「みんながこれくらいで購入しているから」と平均値に合わせるのではなく、あくまで自身の「返済負担率」などを優先して総合的に判断することが重要です。 将来の安心を左右する「金利タイプ」の選び方 借入金額が決まったら、将来のライフプランに合わせて金利タイプ(変動・固定)を選び、返済計画を立てます。変動金利と固定金利の基本的な仕組みやメリット・デメリットについては、関連記事(【早見表】年収別・住宅ローンの借入適正額)で詳しく解説しています。 ここでは、年収600万円世帯における月々の返済額の違いと、金利上昇リスクへの備え方を見ていきましょう。 以下は、仮に変動金利型の当初の金利を0.5%、固定金利型の金利を1.5%とした場合の月々の返済額をシミュレーションしたものです。 【条件】 借入金額:3,000万円 返済期間:35年 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし) 金利タイプ 金利 月々の返済額 変動金利型 1.0% 84,685円 固定金利型 2.0% 99,378円 出典)住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成 ※変動金利型の住宅ローンは、一般的に各金融機関が半年ごとに金利の見直しを行います。 ※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。 年収600万円(手取り月額約38万〜40万円)の世帯において変動金利を選ぶ場合は、「将来金利が上昇し、月々の返済額が1〜2万円増えても家計のゆとりを維持できるか」を基準に判断することが重要です。 対策として、あえて変動金利を選びつつ、固定金利との差額(上記の例では約1.4万円)を「見えない支出」として毎月先取り貯蓄しておく手法も有効です。これにより、将来の金利上昇に対するクッション(資金的な余裕)を作ることができます。 一方で、教育資金などの支出がピークになる時期と金利上昇が重なるリスクを避けたい場合は、全期間固定金利を選んで支出を確定させるのも有効な戦略となります。 関連記事はこちら住宅ローンは変動から固定に借り換えるべき?金利上昇時の判断ポイントを解説 資金に余裕ができた際の「繰り上げ返済」活用法 年収600万円の世帯であれば、月々のやりくりやボーナスの活用によって、年間60万円(月3〜5万円+ボーナス)をコツコツ貯め、5年間で約300万円の余剰資金を準備することも視野に入ります。 まとまった資金ができたら、住宅ローンの元金を前倒しで返済する「繰上げ返済」を行うことで、利息負担を大きく軽減する効果が期待できます。 300万円の繰り上げ返済による利息軽減シミュレーション 以下の表は、借入金額3,000万円の場合において、5年後に約300万円を繰上げ返済したとき、実際にどれくらいの差が出るのかをシミュレーションしたものです。 【共通条件】 借入金額:3,000万円 適用金利:1.0% 返済期間:35年 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし) 5年経過後(残期間30年)に約300万円を繰上げ返済 通常返済 繰上げ返済 期間短縮型 ※1 返済額軽減型 実際の繰上金額 - 3,006,215円 3,000,000円 月々の返済額 84,685円 84,685円 75,036円(軽減額9,649円) 返済期間 35年 約31年1ヶ月(約3年11ヶ月短縮) 35年 総返済額 35,567,804円 34,593,824円 35,094,083円 利息軽減額 ー 973,980円 473,721円 ※1 期間短縮型は「将来の毎月の元金部分」を月単位で前倒しして支払う仕組みのため、指定額(300万円)に最も近い月数分の元金合計額(3,006,215円)を実際の繰り上げ額として算出しています。 ※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。 ※金利はシミュレーションのための仮定値であり、実際の適用金利を示すものではありません。 出典)住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成 表の通り、同じ300万円を返済する場合でも、「期間短縮型」のほうが総支払利息の軽減効果は大きくなります。教育費が本格的にかかる前の「貯め時(子どもが小さいうち)」に積極的に期間短縮型を行えば、将来の家計負担を先回りして軽減しやすくなります。 一方で、すでに教育費の負担が重い時期や、毎月のキャッシュフロー(手元に残る現金)にゆとりを持たせたい場合は、月々の返済額が約1万円下がる「返済額軽減型」を選ぶのも有効な戦略です。ご家庭のライフステージに合わせて使い分けましょう。 ただし、手元資金をすべて繰上げ返済に回してしまうと、突発的な病気や減収などのトラブルに対応できなくなる恐れがあります。常に「生活防衛資金(例えば生活費の半年〜1年分程度)」は手元に残したうえで、余剰資金のみを繰上げ返済に充てるよう計画的に進めましょう。 まとめ 年収600万円の住宅ローンは、約3,500万〜4,400万円が無理なく返済できる適正額の目安となります。マイホーム購入においては、「今の年収で最大いくら借りられるか」ではなく、「将来、子どもが成長したときや、金利・収入に変化があったときでも安心して返済を続けられるか」という視点を持つことが何より重要です。 まずは適正額で予算を組み、金利上昇への備えや将来の繰り上げ返済までを見据えた、ゆとりのある資金計画を立てましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 【早見表】年収別・住宅ローンの借入適正額 住宅ローンを検討する際、「自分の年収でいくら借りられるのか」と気になる方は多いのではないでしょうか。この記事では、年収400万円〜1,800万円の世帯を対象に、住宅ローンの無理なく返済できる...
固定資産税は、土地や家屋などの固定資産にかかる税金です。マイホームを所有している間は毎年納める必要があるため、家計における継続的な維持コストとなります。 特にこれから住宅を購入する場合、ローンの返済だけでなく、将来の税負担も考慮した資金計画を立てることが重要です。この記事では、固定資産税の計算方法や、購入価格(実勢価格)からのシミュレーション、税負担が軽減される特例措置について解説します。 ■本記事でわかる「固定資産税の軽減特例」の目安 対象 軽減される内容(目安) 土地 200㎡以下の部分は、課税標準額が1/6に減額(200㎡を超える部分は 1/3 に減額) 新築戸建て 当初3年間、建物の固定資産税額が1/2に減額 新築マンション 当初5年間、建物の固定資産税額が1/2に減額 固定資産税の基本概要と計算式 まずは、固定資産税の仕組みと基本的な計算式について解説します。また、多くの場合セットで徴収される「都市計画税」についても理解することが大切です。 固定資産税の課税対象と納税義務 固定資産税とは、毎年1月1日時点の土地・家屋などの所有者が納める税金です。資産価値に応じて算定された税額を、その固定資産が所在する市町村(東京23区の場合は東京都)に納める仕組みになっており、納税義務者には自治体から毎年納税通知書が届きます。 出典)総務省「固定資産税」 都市計画税の概要と課税条件 市街化区域内に土地や家屋を所有している場合、固定資産税とあわせて「都市計画税」も課税されます。これは公園や道路の整備など、都市計画事業や土地区画整理事業の費用に充てられる目的税で、固定資産税の納税通知書と合算して請求されるのが一般的です。 出典)総務省「都市計画税」 基本計算式と標準税率・制限税率 固定資産税と都市計画税は、以下の計算式で算出されます。 固定資産税額 = 課税標準額 × 1.4%(標準税率) 都市計画税額 = 課税標準額 × 0.3%(制限税率) 税率は自治体によって異なる場合がありますが、一般的には固定資産税が1.4%、都市計画税が0.3%です。「課税標準額」とは、税額計算の基礎となる金額のことを指します。 まず、土地(宅地)は地価公示価格の7割(路線価など)を目安に、家屋は同じ建物を新築した場合の「再建築価格」に築年数による減価(経年減点補正率)を掛け合わせて、資産の「評価額」が算出されます。原則としてこの評価額に基づいて課税標準額が決定しますが、特例措置などが適用される場合は、評価額よりも低い金額が課税標準額として設定されます。 なお、実際の計算ベースとなるご自身の不動産の「評価額」を正確に確認したい場合は、公的書類の取得が必要です。詳しくは以下の記事をご覧ください。 出典)総務省「固定資産税」 関連記事はこちら固定資産税評価証明書とは?必要な場面や取得方法を解説 課税標準額の決定プロセスと3年ごとの評価替え 土地や家屋の評価額は原則として3年ごとに見直される(評価替え)ため、そのタイミングで課税標準額や税額も変動します。また、特定の要件を満たす土地や新築住宅には、政策的な背景から特例措置が設けられており、課税標準額の圧縮や、税額そのものの減額を受けることが可能です。 関連記事はこちら固定資産税が高すぎる?おかしいと感じたときの対処法を解説 固定資産税の特例措置と減額措置 次に固定資産税の「特例措置」や「減額措置」について、適用条件などを詳しく解説します。 住宅用地の特例措置(土地部分) 住宅用地の特例とは、住宅やマンションなどの敷地について、課税標準額が減額される特例措置です。国民の住生活の安定を目的としており、減額割合は面積に応じて以下のとおりです。 住宅用地の区分 固定資産税の課税標準額 都市計画税の課税標準額 小規模住宅用地(200㎡以下) 価格×1/6 価格×1/3 一般住宅用地(200㎡超の部分) 価格×1/3 価格×2/3 減額後の課税標準額に税率を掛けて税額を計算するため、税負担を大幅に軽減することが可能です。 新築住宅の減額措置(建物部分) 令和8年3月31日(※認定長期優良住宅の場合は令和13年3月31日)までに新築された住宅は、一定の要件を満たすと家屋のうち「居住部分の床面積120㎡まで」の固定資産税額が1/2(半額)に減額されます。一般住宅と長期優良住宅における減額措置の内容は以下のとおりです。 住宅種別 減額割合 減額期間 対象床面積 戸建て 1/2 3年間 居住部分の床面積120㎡まで マンション(3階建以上で耐火構造の住宅) 新築から5年間 出典)総務省「固定資産税」 長期優良住宅の場合、減額期間は戸建てが5年間、マンションが7年間に延長されます。 災害等に伴う減免制度 災害などで住宅が損壊した場合、損害の程度に応じて固定資産税の減免を受けられる制度があります。減免を受けるには、罹災証明書を添付して自治体に申請を行う必要があります。詳細な認定基準や手続きについては、管轄する市町村の窓口(税務課など)でご確認ください。 関連記事はこちら罹災証明書とは?地震保険請求の要否と査定基準の違いをわかりやすく解説 固定資産税の試算準備と評価額の目安 ここでは、具体的な事例をもとに税額をシミュレーションします。お手元の状況に合わせて、以下の準備から数字を確認してください。 ※本シミュレーションはあくまで目安です。実際の税額は自治体や物件の個別要因により異なるため、正確な金額は各自治体の窓口で確認が必要です。 試算の準備①:所有物件の「課税明細書」の確認方法と見方 毎年4月~6月ごろに届く「固定資産税 課税明細書」がお手元にある場合は、そこに記載されている正確な数字を使って計算・確認ができます。 自治体によって様式は異なりますが、チェックすべき項目は主に2つです。 課税標準額(赤枠):税額計算のベースとなる金額 税相当額(青枠):実際に納める税額(固定資産税・都市計画税) 以下は固定資産税の課税明細書の見本です。 出典)土岐市「課税明細書の見方」(※赤枠・青枠は筆者加筆) 原則として、土地・家屋ともに課税標準額に標準税率1.4%を掛けて税額が求められます(※画像の見本では、家屋に対して新築住宅の軽減措置が適用されているため、単純に1.4%を掛けた金額よりも実際の税額が安くなっています)。 試算の準備②:新規購入時の概算(実勢価格からの掛け目) これから不動産を購入する場合、まだ「評価額」が決まっていないため、購入価格(実勢価格)から概算する必要があります。実勢価格と固定資産税評価額には構造的な乖離があるため、以下の掛け目を目安として試算します。 土地の評価額:購入価格(時価)の約70% 建物の評価額:建築費(購入価格)の約50%~60% 例えば、土地を3,000万円、建物を2,000万円で購入した新築の場合、評価額は地価変動による急増を緩和するための水準として土地が約2,100万円、再建築費用を考慮した水準として建物が約1,200万円程度になると推測されます。ただし、実際の評価額は個別要因により変動するため、あくまで目安として捉えてください。 出典)総務省「固定資産税の概要」 【ケース別】固定資産税の計算シミュレーション 実際の税額計算では、課税標準額(1,000円未満切り捨て)や確定税額(100円未満切り捨て)における端数処理が行われますが、ここで紹介するシミュレーションでは分かりやすさを優先し、概算値(約〇円)として算出しています。 パターン1:中古戸建ての計算シミュレーション まずは、特例措置が適用される一般的な中古戸建て(築年数が経過し、新築減税の期間が終了している物件)の例です。 【前提条件】 物件:中古戸建て(床面積200㎡以下) 土地の評価額:2,000万円 家屋の評価額:1,000万円 適用される特例:住宅用地の特例(小規模住宅用地) 【土地の税額計算】 住宅用地の特例により、課税標準額が軽減されます。 固定資産税:2,000万円×1/6×1.4%=約4万6,600円 都市計画税:2,000万円×1/3×0.3%=約2万円 土地の税額計:約6万6,600円 【家屋の税額計算】 中古住宅の場合、経年劣化による評価額の減少はありますが、新築のような税額そのものの半額特例はありません。 固定資産税 :1,000万円×1.4%=14万円 都市計画税 :1,000万円×0.3%=3万円 家屋の税額計:17万円 【年間の納税額合計】約23万6,600円 パターン2:新築戸建ての計算シミュレーション(減税適用時) 新築の場合、建物に対して一定期間の減税措置が適用されます。 【前提条件】 物件:新築戸建て(一般住宅、床面積120㎡以下) 土地の評価額:2,000万円 家屋の評価額:1,200万円 適用される特例:住宅用地の特例、新築住宅の減額措置(3年間) 【土地の税額計算】 計算方法は中古戸建てと同様です。
海外送金は国内送金と異なり、手続きの失敗や大幅な遅延、予期せぬ返金などのトラブルリスクが伴います。適切に手続きが完了すれば、原則として指定の期日内に着金されますが、ときには自身に原因がないにもかかわらず、「指定した日数を過ぎても着金しない」と予期せぬトラブルに見舞われる場合があります。 この記事では、海外送金のトラブルにはどのような原因が存在するのか、事例別の代表的なケースを解説します。そのうえで、万が一トラブルが生じたときに、焦らず取るべき対処法を詳しくご紹介します。 【海外送金トラブル早見表】 トラブル事例 主な原因 取るべき対処法 送金が実行されない SWIFTコード・受取人情報の入力ミス、送金目的の記入漏れ 送金元銀行へ照会・組み戻し手続き 着金が大幅に遅い 経由国・受取国の休日、コルレス銀行(中継)の複数経由 1週間は待機。超過時は送金元銀行へ調査依頼 エラーで返金された 受取国の外為規制への抵触(例:ルピア建て不可) 各国の規制ルールを確認し、別通貨・別ルートで再送金 お金の行方が分からない 中継銀行での処理滞留、詐欺被害の恐れ (詐欺が疑われる場合)警察・越境消費者センターへ相談 関連記事はこちら海外送金とは?初心者にもわかる仕組み・手数料・安全な方法まとめ 海外送金でトラブルが起こる主な原因 海外送金では、複数の国や銀行(中継銀行)を経由するために、さまざまな要因で遅延やエラーが起こります。「海外送金されたはずがなかなか着金しない」「受け取り時に想定外の書類を要求された」など、トラブルの主な原因を見ていきましょう 送金失敗の原因①:受取人情報(SWIFTコード等)の入力ミス 海外送金がうまくいかない原因のひとつとして、送金者自身のミスによるものが考えられます。海外送金では、送金人が銀行に対して伝えた情報に基づいて手続きが実行されます。 入力時に誤った受取人の情報などを伝えれば、正しく手続きが進められず、送金失敗となります。海外送金では、受取人に関するものだけでも次のような情報が必要となります。 【海外送金に必要とされる受取人の情報】 受取銀行のSWIFTコード 受取銀行名/支店名 銀行住所 受取人口座番号(欧州の場合はIBANコード) 受取人名(口座名義と完全に一致している必要がある) 受取人住所・電話番号 特によくあるミスとして挙げられるのが、「SWIFTコードの誤り」や「受取人名(口座名義)の間違い」です。SWIFTコードとは、銀行間のやりとりにおいて銀行を特定するためのコードです。 最後の3桁は支店・部署名を示し、海外送金では支店・部署コードを含まない8桁のコードを用いるのが一般的です。SWIFTコードを誤れば、受取銀行の情報が正しく伝わらないため、そもそも送金自体が失敗します。 SWIFTコードについては、公式サイト「BIC Search」で検索できるので、事前に確認しておきましょう。IBANについては、受取人に直接尋ねるか、「IBANチェッカー」からも調べることができます。 関連記事はこちら海外送金の必要書類と本人確認(KYC)|スムーズに手続きする方法 送金失敗の原因②:受取銀行での処理滞留 送金が受取銀行まで届いているにもかかわらず、受取銀行側でストップしているというパターンも存在します。海外の受取銀行までは無事に送金されているものの、そこから受取人の口座に入金されていないというケースです。 受取銀行で手続きが止まる具体的な原因としては、送金の種類や送金依頼書の記入漏れなどが生じていることが考えられます。手続きが完了しないまま返金されれば、目的の受取先に送金ができないだけでなく、手数料だけがかかることもあります。 そのため、送金依頼書の控えを受取銀行にメールなどで伝え、処理を進めてもらうなどの対処が必要です。 着金遅延の原因①:経由国・受取国の休日 手続きの間に、土日や祝日を挟んでいる場合には、着金までに時間がかかります。銀行経由で海外送金を行う場合、手続きは銀行の営業日のみに行われるため、土日祝日には処理が行われません。 特に海外送金の場合は、国内だけでなく送り先の国の祝日にも影響を受けます。また、中継する銀行が受取銀行と異なる国に所在する場合は、その国の祝日が挟まって処理が遅れることもあるでしょう。 こうした事情を踏まえ、海外送金を行う際には、経由ルートの祝日を調べたうえでスケジュールに1週間程度のゆとりを持たせることが大切です。それでも着金が行われない場合には、他の原因を疑ってみましょう。 着金遅延の原因②:複数の中継銀行(コルレス銀行)の経由 銀行間の国内送金では、その国の中央銀行にある銀行同士の口座残高を書き換えるだけで手続きが完了するため、実際に現金の輸送が行われることはありません。しかし、海外送金では、取扱銀行が送り先の国の中央銀行に預金口座を持たない場合、この方法を使うことができません。 そこで、対象国の中央銀行の預金口座を持つ銀行とコルレス契約を結び、取引を中継してもらうこととなります。 この中継銀行をコルレス銀行と呼びます。世界中の全ての銀行が互いに直接の決済ルートを持っているわけではないため、国際的なネットワークを持つ上位銀行を仲介させる必要があり、状況によっては複数の銀行を経由するケースも珍しくありません。 コルレス銀行が多くなれば、それだけバケツリレーのように処理のプロセスも増えてしまうため、送金が完了するまでに時間がかかります。 ※筆者作成 その他の原因:各国の外為規制やルールの影響 その他の原因としては、送金元の銀行での処理の手違いや、受取先の国の規制で送金が止まっているケースも考えられます。また、受取人の口座が指定した通貨で受け取ることができない場合もあります。 例えば、インドネシアへの送金では送金目的コードと併せて、インボイス番号やインボイス金額の通知が必須であり、欠けている場合には遅延や返金の原因となるので注意が必要です。また、インドネシアルピア建てでの送金は、インドネシア中央銀行による外為規制のため、取り扱いができません。 近年はマネーロンダリングおよびテロ資金供与対策(AML/CFT)の国際的な厳格化により、送金目的の確認やエビデンスの提示を求められる機会が増えています。各国の規制だけでなく、こうした国際基準の影響も考慮する必要があります。 出典)財務省「外為法について」 海外送金でトラブルが起きた際の対処法 海外送金で何らかのトラブルが起こったときは、原因を特定して速やかに対処する必要があります。ここでは、トラブル発生時の具体的な対処法を見ていきましょう。 送金元の金融機関への問い合わせ 特にトラブルがなければ、多くの場合、数日〜1週間程度で着金しますが、経由銀行の数や各国の事情により日数は大きく変動します。手続きをしたにもかかわらず、一定の期間が経過しても送金が完了しない場合は、どのプロセスに問題があったのかを速やかに特定する必要があります。 まずは、送金元の銀行や受取人の銀行に連絡を取り、手続きの状況を確認してもらいましょう。ただし、基本的なルールとして、海外送金では「送金元の銀行」が着金までの責任を担うこととなっています。 そのため、まずは送金元の銀行に問い合わせ、手続きを照会してもらうとよいでしょう。どこに問い合わせるべきか分からないときは、まずはそれぞれの銀行のサポート窓口に連絡をすることが大切です。 その後は、オペレーターの指示に従って、必要な処置を行うこととなります。なお、照会を依頼する際には、数千円程度の手数料がかかる場合もあるので念頭に置いておきましょう。 SWIFT gpi について なお、近年は『SWIFT gpi』という新しい国際送金ネットワークに対応している銀行が増えています。送金元の銀行がこの仕組みに対応していれば、荷物の追跡番号のように『現在どの国の中継銀行で処理が止まっているか』を専用システムから追跡できる場合があります。問い合わせの際は、ステータスの追跡が可能かどうかも確認してみましょう。 出典)Swift GPI 組み戻し(返金)手続きの依頼 送金がうまくいかない場合、手続きを行ったときに伝えた情報が誤っていたために、中継銀行で処理が止まってしまうというケースもあります。この場合は、日本の送金元の銀行で組み戻しの手続きを取り、改めて送金をやり直さなければなりません。 なお、組み戻しの際には手数料がかかる点は理解しておく必要があります。手数料は金融機関によっても異なりますが、1件あたり5,000円前後が相場です。 さらに注意すべき「実質コスト」として、為替変動リスク(為替差損)が挙げられます。返金される際は、送金時と異なる為替レートが適用されて外貨から日本円に戻されるケースが多く、当初送金した元本よりも目減りして返ってくることがあります。 解決には多くの時間と労力がかかり、必ずしもうまくいくとは限らないため、送金時の入力には細心の注意が必要です。 関係機関(警察・国民生活センター)への相談 手続きに不備が見当たらないにもかかわらず、送金がうまくいかない場合、ショッピング詐欺やフィッシング詐欺などの被害に巻き込まれている恐れも考えられます。例えば、インターネットで商品を購入し、銀行振込で代金を支払ったにもかかわらず商品が届かないというケースです。 こうした詐欺に巻き込まれた疑いがある場合は、速やかに警察や関係機関に連絡をして手続きを止めてもらう必要があります。海外からのショッピングでトラブルに巻き込まれた場合、代表的な相談先としては「独立行政法人 国民生活センター」が運営する「越境消費者センター」が挙げられます。 越境消費者センターは、インターネットショッピングだけでなく、海外でのレンタカー利用やマルチ、ロマンス投資詐欺といった幅広い相談事例に対応しているのが特徴です。また、フィッシング詐欺の被害が疑われる場合は、最寄りの警察署に相談するか、あるいは警視庁が運営する「サイバー事案に関する通報等のオンライン受付窓口」に通報するのもひとつの方法です。 出典) ・国民生活センター「越境消費者センター」 ・警視庁:「サイバー事案に関する通報等のオンライン受付窓口」 自身の目的に合った送金方法の選択 送金トラブルを未然に防ぎ、スムーズに手続きを完了させるには、自身の目的に合った送金手段を選ぶことが重要です。海外送金には、主に「銀行(実店舗・ネット銀行)」と「資金移動業者」の2つの方法が存在します。 銀行を経由した送金は、強固なセキュリティと高い信頼性が特徴であり、特に高額な送金やビジネス用途に適しています。一方で、複数の中継銀行を経由する仕組み上、着金までに日数を要する場合や、経由地での処理滞留による遅延リスクを伴います。 対して資金移動業者は、独自のネットワークを活用して中継銀行を最小限に抑える仕組みを採用しているケースが多く、送金スピードの速さや、アプリ上でのステータス追跡のしやすさが強みです。しかし、法律(資金決済法)により1回あたりの送金限度額が定められているなどの制限があります。 送金する金額や目的、スピード、手数料、そしてセキュリティ面の安心感など、何を最も重視するかを総合的に判断し、最適な送金方法を選択してください。 関連記事はこちら海外送金の方法はどれが最適?銀行・ネット銀行・資金移動業者の違いと選び方 まとめ|トラブルの原因を把握し、冷静な対処と事前準備を 海外送金は国内送金と仕組みが大きく異なることから、予期せぬトラブルが発生しやすい側面があります。送り先によっては、複数の国の銀行を経由するケースもあり、途中で手続きがうまくいかなければ返金されることもあります。 トラブルを未然に防ぐためにも、まずは送金元の案内に沿って、正しく手続きを進めることが重要です。そのうえで、万が一トラブルが起こった際には、速やかに金融機関の窓口へ相談し、送金がうまくいかない原因を特定してもらいましょう。 また、送金の透明性を重視する場合は、ステータス追跡が可能な資金移動業者を選択肢に含めるなど、送金額や優先事項(スピード・手数料・信頼性)に応じた最適な送金方法を比較検討することが大切です。 安心・便利な海外送金ならSBIレミット SBIレミットの国際送金について、webサイトで詳しく説明いたします。※SBIレミットのWEBサイトに遷移します。 安心・便利な海外送金ならSBIレミット SBIレミットの国際送金について、webサイトで詳しく説明いたします。 ※SBIレミットのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 銀行・ネット銀行・資金移動業者の海外送金サービスを比較 海外送金サービスは銀行・ネット銀行・資金移動業者など多様な選択肢がありますが、どれを選ぶべきか迷う方も多いでしょう。サービスごとに手数料・対応国・送金スピードが異なるため、比較して選ぶことが...
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。前回の記事(【フラット35】2026年3月金利は2.25%に決定|公認会計士の予測と機構債分析!)では、【フラット35】の2026年3月金利を2.13%~2.17%と予想しましたが、結果は2.25%となりました。 まずは、最新の機構債と市場動向から分析した、2026年4月の【フラット35】金利予想の結論からお伝えします。 【2026年4月 フラット35金利予想】 予想レンジ:2.25% ~ 2.35% (※理論上の上限リスク:2.39%) 傾向:前月比 横ばい ~ +0.10ポイント程度 要因:新発10年国債利回りの上昇 2026年3月現在、中東情勢の緊迫化などを背景に新発10年国債利回りは高い水準で推移しており、固定金利タイプの住宅ローンには上昇圧力がかかっています。 この記事では、急変する市場の中で「なぜこの予想になるのか」、最新の機構債と市場動向から2026年4月の【フラット35】金利予想を解説します。 2026年4月の【フラット35】金利は2.49%に決定しました(更新日:2026年4月1日)。 【フラット35】2026年3月金利予想の結果と検証 2026年3月の金利決定結果(2.25%) 2026年3月の【フラット35】金利は2.25%に決定し、2月下旬での予想レンジ(2.13%~2.17%)の上限から0.08ポイント高い結果となりました。 千日太郎の予想は、3月は新発10年国債利回りが0.15ポイント下がり、機構債の表面利率も0.13ポイント下がったことに鑑み、0.09~0.13ポイント程度の低下を期待したものでした。しかし、【フラット35】の低下は、わずか0.01ポイントにとどまっています。 なお、【フラット35】の金利は、以下の簡易式で説明できます。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) 金利上昇が抑えられた要因(拡大する逆ザヤ) 予想以上に金利が上昇したとはいえ、市場金利の上昇幅に比べれば【フラット35】の上昇は抑制されています。これを支えているのは、過去連続10か月にわたって【フラット35】の金利が機構債の表面利率を下回っている、いわゆる「逆ザヤ」現象です。 2025年6月に0.05ポイントから始まった逆ザヤは毎月拡大を続け、2026年2月には0.52ポイントに達しましたが、3月には0.40ポイントとなりました。独立行政法人として国民の住生活を支える公的使命を持つ住宅金融支援機構が、自身の収益を圧迫してでも、どこまでこの「逆ザヤ」を許容し貸付金利の上昇を抑制するかが予想の焦点となります。 2月から3月の動きを踏まえ、千日太郎は次のような仮説を立てています。 2月の逆ザヤ「0.52ポイント」で機構の許容上限を超えた 3月以降は新たな許容上限として「0.40ポイント」を設定した 逆ザヤの推移(機構債 vs フラット35) 年月 機構債表面利率 機構債発表日 フラット35金利 金利差(逆ザヤ) 2025年6月1.94%5月22日1.89%-0.05ポイント 2025年7月1.88%6月20日1.84%-0.04ポイント 2025年8月2.02%7月18日1.87%-0.15ポイント 2025年9月2.08%8月21日1.89%-0.19ポイント 2025年10月2.12%9月19日1.89%-0.23ポイント 2025年11月2.15%10月17日1.90%-0.25ポイント 2025年12月2.30%11月20日1.97%-0.33ポイント 2026年1月2.45%12月17日2.08%-0.37ポイント 2026年2月2.78%1月22日2.26%-0.52ポイント 2026年3月2.65%2月18日2.25%-0.40ポイント ※出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※「住まいとお金の知恵袋編集部」作成 【フラット35】2026年4月金利予想 2026年3月から4月にかけて、新発10年国債利回りは2.12%から2.24%へ、0.12ポイントの大幅な上昇となりました。これに伴い、機構債の表面利率は2.65%から2.79%へと0.14ポイント上昇しています。単純計算すれば、4月の【フラット35】は0.12~0.14ポイントの上昇となります。 これまでの機構債の表面利率や新発10年国債利回りの推移を踏まえた、【フラット35】の金利予想は以下のとおりです。 【フラット35】金利推移と2026年4月予想 2026年1月 2026年2月 2026年3月 2026年4月千日太郎の予想 【フラット35】の金利(※) 2.08% 2.26% 2.25% 2.25%~2.35%※4/1発表の金利は2.49%でした ※出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 シナリオ①:激変緩和措置を織り込んだ現実的上限(2.35%) 直近の住宅金融支援機構の動向を踏まえると、機構債の上昇幅(0.14ポイント)がそのまま反映されるのではなく、激変緩和措置によって一定の上昇幅に抑制される可能性が高いと予測されます。逆ザヤの許容範囲を考慮した現実的な着地点として、2.35%を予想のメインレンジの上限とします。 シナリオ②:激変緩和措置の最大限適用(2.25%) 下限となる2.25%は、激変緩和措置により金利上昇が抑制されるシナリオです。これまでも急激な市場金利の上昇局面において、住宅金融支援機構は貸付金利の上昇を抑制してきた実績があります。仮に同措置が最大限適用された場合、前月水準に据え置かれる可能性も残されています。 ただし、金利が横ばいとなる可能性は限定的と推測されます。仮に【フラット35】が前月と同水準の2.25%となった場合、逆ザヤは0.54ポイントに達し、直近で最大であった2月の0.52ポイントを超えてさらに拡大することになるためです。 シナリオ③:機構債上昇幅の完全反映(理論上の上限リスク・2.39%) リスクシナリオとして、住宅金融支援機構がこれ以上の逆ザヤ拡大を許容せず、機構債の表面利率の上昇幅(0.14ポイント)をそのまま貸付金利に反映させた場合、2.39%まで上昇する恐れがあります。あくまで理論上の上限値ですが、市場の振れ幅を考慮し、最悪のケースとして想定しておく必要があります。 機構債の表面利率・新発10年国債利回り・ローンチスプレッドの推移 主要データ(2026年3月18日時点) 機構債発表日 2025年12月17日 2026年1月22日 2026年2月18日 2026年3月18日 機構債の表面利率(※1) 2.45% 2.78% 2.65% 2.79% 新発10年国債利回り(※2) 1.94% 2.27% 2.12% 2.24% ローンチスプレッド(※1) 0.51% 0.51% 0.53% 0.55% ※1 出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2 10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 まとめ 最近の【フラット35】金利は、新発10年国債利回りの上昇を背景に、上昇圧力が続く局面にあります。一方で、中東情勢など不確定要素も多く、市場は想定以上に振れやすい環境です。また、日銀の利上げ路線が継続される見通しであることから、金利が低下に転じる可能性は低いと推測されます。 こうした中で将来の金利を固定できる点は、家計の見通しを安定させる大きなメリットです。短期的な上下に一喜一憂するのではなく、長期での返済可能性とリスク許容度を踏まえ、ご自身に合った選択をすることが重要です。 引き続き【フラット35】については、公的融資という側面から急激な変動が抑えられると予測されますが、早めの資金計画や仮審査の申し込みなど、金利上昇リスクへの備えを進めておくことをおすすめします。 ※この記事は2026年3月18日時点の公開情報に基づき、筆者の個人的な見解として執筆したものです。将来の金利動向を保証するものではありません。最終的な借り入れや投資の判断は、ご自身の責任において行ってください。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。
金融庁が創設を検討している「プラチナNISA(高齢者向けNISA)」が注目を集めています。「年金の不足分を補えるかもしれない」と期待し、具体的にどのようなメリットがあるか気になっているシニア世代の方も多いでしょう。 まずは、執筆時点(2026年3月)での近況を含めたまとめです(詳細はのちほど説明します)。 現状: 2026年度の導入は見送り。現時点では導入未定。 特徴: 65歳以上が対象、現行のNISAでは対象外となっている「毎月分配型投資信託」も非課税で購入できるよう検討されていた。 今すぐできる代替案: 現行NISAの「成長投資枠」を活用し、低コスト投信を「自動売却サービス」で取り崩す。 この記事では、プラチナNISAの概要とメリット・デメリット、制度創設の見通しについて解説します。 プラチナNISAはいつから?2026年度の導入は見送りへ プラチナNISAは大きな注目を集めましたが、金融庁の2026年度税制改正要望には盛り込まれず、制度創設は見送りとなりました。現時点では何も決まっておらず、2027年度以降に導入されるかどうかも未定です。 しかし、金融庁は「高齢層を含め、NISAの一層の充実を図る必要がある」としているため、将来的には導入される可能性があるでしょう。 出典)金融庁「令和8年度税制改正の大綱の概要」 プラチナNISAとは? まずはプラチナNISAの概要や仕組み、制度創設が検討された背景についてみていきましょう。 基本概要と仕組み プラチナNISAとは、高齢者向けの新しい少額投資非課税制度です。金融庁が「2026年度の税制改正要望に盛り込む方向で検討している」と報じられ、注目を集めました。まだ未確定ですが、以下の内容が検討されています。 65歳以上の高齢者が対象 「毎月分配型投資信託」が対象商品に加えられる(現行NISAでは売買できない) 現行NISAの保有商品を毎月分配型投資信託にスイッチング(移行)できるようにする スイッチングとは、新たな非課税枠(年間投資枠)を消費することなく、保有商品を別の商品へ入れ替える仕組みです。現行のNISA制度では、商品を売却すると翌年に「非課税保有限度額(生涯投資枠)」は復活しますが、その年の「年間投資枠」は再利用できません。 スイッチング機能があれば、年間投資枠を温存したまま機動的なポートフォリオの見直しが可能になるため、投資家にとって大きな利点となります。 毎月分配型投資信託とは 毎月分配型投資信託は1か月ごとに決算を行い、収益等の一部を分配金として毎月投資家に支払うのが特徴です。投資信託を保有しながら、運用成果を毎月受け取りたい投資家向けの商品といえます。 高齢者には「公的年金以外に安定した収入源を確保したい」というニーズがあるため、毎月分配型投資信託には根強い人気があります。ただし、長期の資産形成には不向きであることから、NISAの対象商品からは外れています。 出典)日本証券業協会「「毎月分配型の投資信託」とは?」 制度創設検討の背景と目的 プラチナNISA創設が検討された背景のひとつとして、高齢層におけるNISAの利用が伸び悩んでいる現状が挙げられます。NISA口座数は増加傾向が続いており、2025年6月末で2,696万口座となっています。 ただし、利用者は30~50代が中心で、60代以降は年齢が上がるにつれて口座保有率が下がる傾向にあります。 高齢者に限定して毎月分配型投資信託を投資対象に加えることで、定年退職後も保有資産を計画的に運用できるようにする狙いがあると考えられます。また、高齢者が持つ預貯金が投資に向かえば、株式市場や経済の活性化につながるメリットもあるでしょう。 出典)金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果の公表について」 プラチナNISAのメリット プラチナNISAでは、現行のNISA対象商品に加えて「毎月分配型投資信託」も購入可能になる点が最大の目玉として検討されていました。仮にプラチナNISAで毎月分配型投資信託を保有した場合、次のようなメリットが期待できます。 普通分配金への課税がゼロになり、手取りが最大化する 投資信託の分配金のうち、運用益から支払われる「普通分配金」には、通常20.315%の税金がかかります。仮に課税口座で普通分配金を毎月1万円受け取る場合、約2,000円が税金として差し引かれ、手取りは約8,000円に減ります。 プラチナNISAであれば、この普通分配金も非課税となるため、利益を目減りさせることなく、そのまま手元に残せるのが大きなメリットです。なお、元本の一部が払い戻される「元本払戻金(特別分配金)」については、通常の課税口座であっても課税対象とはなりません。 ※税率は現行法に基づいたもので、将来変更される可能性があります。また、個々の税務上の取扱いは属性・取引内容により異なる場合があります。 「自分で取り崩す」心理的ストレスなしで疑似年金を作れる 定年退職後、生活費の不足分を補うために「保有している資産を毎月自分で手動売却する」のは、資産残高が目減りしていくのを直接見ることになり、シニア世代にとって大きな心理的ストレスが伴います。 毎月分配型投資信託であれば、自分で売却手続きをしなくても自動的に現金が口座に振り込まれます。公的年金にプラスアルファの「疑似的な自分年金」として、生活費や趣味の費用に気兼ねなく充てられる点は、精神的な安心感に直結します。 プラチナNISAのデメリット・注意点 メリットがある一方で、プラチナNISAの目玉として検討されていた「毎月分配型投資信託」を実際に選んで保有する場合、次のような特有のデメリットや注意点があることも理解しておく必要があります。 対象となる「毎月分配型投資信託」は運用コストが高め 投資信託を保有している間は、「信託報酬(運用管理費用)」という手数料が日々資産から差し引かれます。 対象商品 信託報酬の傾向 現行NISA(つみたて投資枠) 信託報酬は低く抑えられており、年率0.1%未満のインデックスファンドも多数。 毎月分配型投資信託 信託報酬が高めの設定であることが多く、年率1~2%程度の商品が大半。 コストが高いと、その分だけ手元に残る利益が削られることになります。NISA(つみたて投資枠)の対象商品の場合、信託報酬は最大でも年1.65%以下(税込)に制限されており、年0.1%未満の商品もあります。販売手数料もかかりません。一方、毎月分配型投資信託は信託報酬が高い傾向にあり、1~2%程度の商品が大半です。また、販売手数料がかかることもあるので注意が必要です。 出典)金融庁「NISAを利用する皆さんへ」 「タコ足配当」による元本目減りリスク(特別分配金) 毎月分配型投資信託の分配金には、以下の2種類があります。 普通分配金:運用により生じた利益から支払われる 元本払戻金(特別分配金):元本の一部払い戻しに相当する 普通分配金は運用益から支払われるため健全ですが、厄介なのは「元本払戻金(特別分配金)」です。これは自分が投資したお金を削って払い戻されているだけの状態であり、投資業界では「タコ足配当(タコが自分の足を食べる様子)」とも呼ばれます。 毎月高い分配金を受け取れても、実は元本を取り崩しているだけで、気づけば運用資産が大きく目減りしていた……というケースが少なくないため、分配金の健全性をしっかり確認するリテラシーが求められます。 出典)日本証券業協会「「毎月分配型の投資信託」とは?」 プラチナNISAの代替案:現行NISAで運用しながら取り崩す プラチナNISAが見送りとなっている現在、通常のNISA口座で投資信託を保有し、運用しながら取り崩すことで、資産寿命の延伸が期待できます。 例えば、60歳から1,500万円を利回り2%で運用し、70歳からは運用を継続しながら年間80万円を引き出す場合、運用しない場合に比べて資産寿命に約12年の差が生じます。 出典)金融経済教育推進機構「豊かな老後のために知っておきたいお金の話」 プラチナNISAの導入を待たずとも、「投資信託定期売却サービス」を活用すれば、現行NISAでも毎月分配型に近いキャッシュフローを自作できます。 メリット: 信託報酬が低い(0.1%前後~)優良ファンドを選べるため、毎月分配型投信(1〜2%)よりも手元に残る金額が増えます。さらに「投資信託定期売却サービス」を一度設定してしまえば、毎回自分で売却ボタンを押す心理的ストレス(資産が減る恐怖)を感じることなく、毎月分配型と同じように自動で現金を受け取れます。 注意点: 運用益を超えるペースで売却すると、取り崩しが多いほど資産残高は目減りし、資産寿命は短縮してしまいます。ご自身の運用利回りや今後のライフプランを踏まえ、無理のない計画的な取り崩し額(または取り崩し率)を設定しましょう。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、 特定の商品や投資行動を勧誘するものではありません。投資には元本割れを含むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、ご自身の判断と責任において行ってください。 まとめ プラチナNISAは、高齢者が年金以外に安定収入を確保する仕組みとして注目を集めましたが、2026年度の導入は見送りとなりました。2027年度以降に導入される可能性もあるため、毎月分配型投資信託に興味がある場合は金融庁の動向を注視しておくとよいでしょう。 安心して老後を過ごすために、少しでも資産寿命を延ばしたい場合は、NISAで投資信託を運用しながら取り崩すことを検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 iDeCo(イデコ)の仕組みとは?メリット・デメリットを解説 iDeCo(イデコ)は、公的年金だけでは不足する老後資金を準備するための制度です。iDeCoについて聞いたことはあっても、その特徴はよくわからない方もいるのではないでしょうか。iDeCoは2...