マンションを購入する際には、将来的な資産価値の変化にも目を向けて判断することが大切です。この記事では、マンションの資産価値に影響を与える要因や、資産価値の調べ方について解説します。 マンションの資産価値の目安を調べる方法 マンションの資産価値を調べる場合には、販売中の物件や近隣の成約事例を確認することである程度の目安を調べることが可能です。ここでは、マンションの資産価値の目安を自分で調べる3つの方法を紹介します。 ①レインズマーケットインフォメーション 「レインズマーケットインフォメーション」とは、国土交通大臣の指定を受けた「全国指定流通機構連絡協議会」が運営・管理を行う不動産情報ネットワークのことです。直近1年間で売買が行われ、取引が成立したマンションの販売価格や成約価格が公開されています。 豊富なデータベースのなかから、地域や沿線、専有面積、築年数など細かな条件で絞り込んで取引事例を閲覧できます。複数の事例を比較したり検証したりすることで、マンションの資産価値を判断する指標として利用することができます。 出典)REINS Market Information ②不動産情報ライブラリ 「不動産情報ライブラリ」とは、不動産の取引価格、地価公示等の価格情報や防災情報、都市計画情報、周辺施設情報等、不動産に関する情報をご覧になることができる国土交通省のWEBサイトです。 物件の成約価格を一般消費者でも知れるように、国土交通省が不動産購入者を対象にアンケート調査をした情報を「不動産取引価格情報」として公開しています。 ただし、不動産情報ライブラリのデータは購入者のアンケート結果に基づいて構成されているので、全ての取引データを扱っているわけではありません。あくまで取引事例の一部データとして用いることが重要です。 出典)不動産情報ライブラリ 関連記事はこちら公示価格とは?実勢価格との違いと活用法をわかりやすく解説 ③不動産ポータルサイト 現在販売中の物件については、不動産ポータルサイトを通して確認する方法もあります。不動産ポータルサイトには、実際に購入者を募集している物件の情報が数多く掲載されているため、詳細条件を入力すれば同じような物件の売り出し価格をチェックできます。 また、独自のデータベースに基づいてマンション価格を算出しているサイトもあるので、参考にしてみるといいでしょう。 マンションの資産価値に影響を与える要因 マンションの資産価値を判断する際には、そもそもどのような要因によって価値が変動するのかを具体的に把握しておくことが大切です。マンションの資産価値は次のような要因が影響を与えます。 ・築年数 ・耐震性 ・日当たり、方角 ・最寄り駅・バス停などの距離 ・階数 ・専有面積 ・管理状況 ・周辺環境、騒音、治安 いずれも生活の快適性や利便性、安全性などを左右するポイントであるため重視されます。また、同じマンションであっても、階数や間取り、日当たり条件によって部屋ごとの資産価値は異なります。 不動産の資産価値は、土地の資産価値と建物の資産価値によって決まりますが、マンションの場合は一戸建てと比べて、資産価値のうち土地が占める割合が少ないのが特徴です。マンションの資産価値を考える際は、築年数をはじめとする建物の状況をしっかりと確認しましょう。 不動産鑑定における3つの方法 マンションの資産価値を調べるうえで、そもそも不動産鑑定はどのように行われているのかを知っておくと良いでしょう。ここでは不動産鑑定における3つの方法を紹介します。 ①取引事例比較法 取引事例比較法は、その不動産と同じような条件の不動産がどのような価格で取引されているかを比較することで資産価値を計算する方法です。資産価値に影響を与えるさまざまな要因を踏まえ、類似した条件を持つ物件の取引事例をいくつか並べるだけでも、マンションのおおまかな資産価値を調べられます。 ②収益還元法 収益還元法は、その不動産が将来生み出す収益から資産価値を計算する方法です。購入したマンションを賃貸として活用する際に用いられることが多いです。 賃料収入から必要経費を差し引いた収入で計算した利回りをもとに、現在の資産価値を逆算します。家賃の下落率や空室リスクなどを加味することも大切です。 ③原価法 原価法は、その不動産を再度建築する場合の原価を算出して、築年数が経過したことによる価値のマイナス分を加味したうえで資産価値を計算する方法です。 つまり、「現時点で購入するとしたらいくらかかるのか」という観点から、具体的な金額を割り出していく方法です。前述のとおり、建物は歳月の経過によって劣化していく性質を持っているため、建物の築年数を考慮した推定が必要になります。 まとめ マンションの資産価値はさまざまな要因に左右されるため、購入の際には複合的な観点で検討する必要があります。また、立地や広さといった基本的な項目だけでなく、管理状態などの要因でも価値が変動するため、購入後もこまめに手入れを行い、資産価値の維持に努めましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む 不動産のプロが選ぶ30年後に価値の落ちない物件とは? 不動産価値に関する調査を実施 東京近郊の30年後に価値が下がらない物件は? ~ 不動産価値に関してアンケート調査を実施 ~ 2020年を境に不動産価値が下がるという話題を耳にすることが多くな...記事を読む
生活福祉資金貸付制度をご存じでしょうか。本制度では、失業や減収などにより生活が困窮している人に対して、生活費や一時的な資金の貸し付けを行う「総合支援資金」が設けられています。状況に応じた様々な支援が用意されているため、いざという時の助けになるかもしれません。この記事では、生活福祉資金貸付制度を紹介します。 生活福祉資金貸付制度とは 生活福祉資金貸付制度とは、低所得者や高齢者、障害者の生活を経済的に支えるとともに、その在宅福祉および社会参加の促進を図ることを目的とした貸付制度です。都道府県社会福祉協議会を主体として、県内の市区町村社会福祉協議会が窓口となっており、それぞれの世帯の状況と必要に応じた資金の貸付等を行います。 出典)都道府県社会福祉協議会 お問い合わせ先一覧 また、資金の貸し付けによる経済的な援助にあわせて、地域の民生委員が資金を借り入れた世帯の相談支援を行っています。平成27年4月から施行された生活困窮者自立支援制度では、生活上のさまざまな課題がある人に、包括的な相談支援を行うことで自立の促進を図ることを目的にしています。 なお、あくまで本制度は「貸付事業」であることから、貸付することにより現在困っていることを解決できる一方で、「借金を負う」という世帯にとっての負担が伴います。順調に返済することが難しくなれば、世帯への支援を目的に貸付したものが、世帯への大きな負担となってしまいます。そのため、相談した時点で負担の方が大きく、貸付が支援にならないと判断される場合には、借り入れができません。 生活福祉資金の貸付対象 生活福祉資金の貸付対象は下記のとおりです。 低所得世帯:資金の貸付、支援を受けることで、独立自活できると認められる世帯、かつ必要な資金を他から借り入れることが困難な世帯 障害者世帯:身体障害者手帳等の交付を受けた人※が属する世帯 高齢者世帯:65歳以上の高齢者の属する世帯 ※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた人 本制度は、個人ではなく「世帯の自立」を支援する制度です。世帯を支援するためには世帯全体の状況を把握することが必要です。そのため、世帯全員の就労・就学・疾病、収入や家計の支出、負債の状況等のヒアリングや、必要に応じた確認がされます。また、本制度の利用にあたって世帯全員の了解が必要です。貸付の相談から返済を完了するまでの間、社会福祉協議会の職員が世帯を支援します。(※ただし、資金貸付の「契約」は、借受人個人の方と締結することになります。なお、「仮受人」とは、本制度を利用して資金の貸付を受ける人のことを指します。) 生活福祉資金の種類 本制度では、用途別に大きく4つの種類が設けられています。 総合支援資金 福祉資金、教育支援資金 緊急小口資金 不動産担保型生活資金 総合支援資金 総合支援資金では、失業等で日常生活に困難を抱えた世帯の生活の立て直しのために、継続的な相談支援や生活費及び一時的な資金の借り入れができます。失業者等の個人を支援する制度ではなく、「世帯」の生活再建を支援する制度のため、世帯員の収入で生活できる場合は対象になりません。 総合支援資金には、生活再建までの間に必要な生活費用である「生活支援費」、敷金、礼金等住宅の賃貸契約を結ぶために必要な費用である「住宅入居費」、生活を再建するために一時的に必要かつ日常生活費で賄うことが困難な費用である「一時生活再建費」の3種類があり、それぞれ貸付条件が異なります。 生活支援費 住居入居費 一時生活再建費 貸付限度額 月20万円以内(二人以上)月15万円以内(単身) 40万円以内 60万円以内 据置期間 最終貸付日から6か月以内 貸付日※から6か月以内 償還期限 据置期間経過後10年以内 貸付利子 保証人あり:無利子保証人なし:年1.5% 保証人 原則必要ただし、保証人なしでも貸付可 ※生活支援費とあわせて貸し付けている場合は、生活支援費の最終貸付日 出典) ・社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「総合支援資金のご案内」 ・厚生労働省「生活福祉資金貸付条件等一覧」 福祉資金、教育支援資金 具体的な利用目的がある場合に、該当する資金種類の借り入れができます。資金ごとに、貸し付けの条件・基準が定められており、総合支援資金と同様に世帯全員の収入を鑑みて対象か否かを判断します。 「福祉費」では、生業を営むために必要な経費や福祉用具等の購入に必要な経費など幅広い目的がありますが、それぞれ上限目安額が設定されています。 教育支援資金では、低所得世帯に属する人が、高校、大学または専門学校に修学するために必要な費用である「教育支援費」、入学に際し必要な費用である「就学支度費」があり、それぞれ貸付条件が異なります。 福祉費 教育支援費 就学支度費 貸付限度額 580万円以内*1 高校:月3.5万円以内*2高専:月6万円以内*2短大:月6万円以内*2大学:月6.5万円以内*2 50万円以内 据置期間 貸付日*3から6か月以内 卒業後6か月以内 償還期限 据置期間経過後20年以内 貸付利子 保証人あり:無利子保証人なし:年1.5% 無利子 保証人 原則必要ただし、保証人なしでも貸付可 不要*4 ※1 資金の用途に応じて上限目安額の詳細はこちら ※2 特に必要と認める場合は、上記各上限額の1.5倍まで貸付可能 ※3 分割による交付の場合には最終貸付日 ※4 世帯内で連帯借受人が必要 出典) ・社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「福祉資金のご案内」 ・社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「教育支援資金のご案内」 緊急小口資金 緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に借り入れができます。貸付対象の理由としては、下記のようなものが該当します。(一部抜粋) 医療費または介護費を支払ったことなどにより臨時の生活費が必要なとき 火災等の被災によって生活費が必要なとき 年金、保険、公的給付等の支給開始までに必要な生活費 会社からの解雇、休業等による収入減 また、貸付条件は下記のとおりです。 緊急小口資金 貸付限度額 10万円以内 据置期間 貸付日から2か月以内 償還期限 据置期間経過後12か月以内 貸付利子 無利子 保証人 不要 出典)社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「緊急小口資金のご案内」 不動産担保型生活資金 現在住んでいる自己所有の不動産(土地・建物)に、将来にわたって住み続けることを希望する低所得の高齢者世帯に対し、その不動産を担保として生活資金の借り入れができます。これまでの資金と同様収入などの条件に加えて、対象不動産に抵当権が設定されていないことや土地の評価額の要件などの条件があります。貸付条件は下記のとおりです。 不動産担保型生活資金 要保護世帯向け不動産担保型生活資金 貸付限度額 ・土地の評価額の70%程度・月30万円以内 ・土地及び建物の評価額の70%程度(集合住宅の場合は50%)・生活扶助額の1.5倍以内 貸付期間 借受人の死亡時までの期間又は貸付元利金が貸付限度額に達するまでの期間 据置期間 契約終了後3か月以内 償還期限 据置期間終了時 貸付利子 年3%、又は長期プライムレートのいずれか低い利率 保証人 要※推定相続人の中から選任 不要 出典)社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「不動産担保型生活資金貸付のごあんない」 生活福祉資金貸付制度の申し込みから受給までの流れ 平成27年4月から生活困窮者自立支援制度の施行に伴って、資金種類によって借入申込の流れが一部変更になりました。福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の場合は下記のとおりです。 福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金 福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の場合の流れは下記のとおりです。 市区町村社会福祉協議会に利用の相談および申し込みを行う 市区町村社会福祉協議会に申請書類等を提出する 都道府県社会福祉協議会から貸付決定通知が送付される 借用書を提出する 貸付金を受給する 福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の借り入れをする場合は、市区町村社会福祉協議会に相談し、申し込むことができます。 借入申込者が提出した申請書類等をもとに、市区町村社会福祉協議会および都道府県社会福祉協議会において申込内容の確認と貸し付けの審査を行い、貸付決定通知書または不承認通知書を送付します。 貸付決定となった場合は、都道府県社会福祉協議会に借用書を提出したあと、貸付金が交付されます。 総合支援資金、緊急小口資金 総合支援資金、緊急小口資金の場合の流れは下記のとおりです。 自立相談支援機関に利用の相談および申し込みを行う 市区町村社会福祉協議会に利用の相談および申し込みを行う 市区町村社会福祉協議会に申請書類等を提出する 都道府県社会福祉協議会から貸付決定通知が送付される 借用書を提出する 貸付金を受給する 総合支援資金、緊急小口資金の借り入れをする場合は、既に就職が内定している場合等を除き、生活困窮者自立支援制度における自立相談支援事業の利用が貸付の要件となります。 自立相談支援機関において、相談者の状況に応じた支援プランの検討とあわせて、生活福祉資金(総合支援資金、緊急小口資金)の利用の可能性が考えられる場合に、借入金額や償還計画等について相談したうえで、必要書類を添付し申請します。その後の流れは同様です。 まとめ この記事では、生活福祉資金貸付制度の概要を紹介しました。失業や減収などによって家計が厳しくなった人や、年金収入だけでは生計の維持が厳しい人にはうまく活用できる資金があるかもしれません。詳細が気になる人は、自身がお住いの社会福祉協議会に問い合わせてみるといいでしょう。 出典) ・厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」 ・社会福祉法人 全国社会福祉協議会「福祉の資金(貸付制度)」 ・東京都福祉保健局「生活福祉資金貸付制度について」 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 年金生活者支援給付金とは?給付対象や手続き方法を解説 年金生活者支援給付金についてご存じでしょうか。この制度を利用することで、一定の条件を満たした方は、受け取れる年金の額が多くなる可能性があります。年金生活者支援給付金について知らない方は、ぜひ...記事を読む
公示価格(公示地価)は、国土交通省が公示している土地の価格です。土地価格の動向を示す重要な指標ですが、実勢価格(実際の取引価格)とは何が違うのでしょうか。特に土地を売買する予定がある人は、公示価格について理解しておくことが大切です。 この記事では、公示価格の概要や調べ方、活用する際の注意点について解説します。 公示価格とは 公示価格(公示地価)とは、適正な地価の形成に寄与するために、国土交通省土地鑑定委員会が毎年3月に公示する標準地の価格です。 地価公示法に基づいて、全国の分科会に属する鑑定評価員(不動産鑑定士)が毎年1月1日時点の1㎡あたりの正常な価格を判定しています。令和5年地価公示では、全国約26,000地点で実施されました。 公示価格は、一般の土地取引に対して指標を与えるもので、不動産鑑定や公共事業用地の取得価格算定の規準となります。また、土地の相続税評価や固定資産税評価の基準としても活用されます。 公示価格を調べる方法 公示価格は、国土交通省の「標準地・基準地検索システム」で調べることが可能です。地図上で調べたい都道府県名や市町村名を選択し、検索条件を入力すると、地価情報の詳細が表示される仕組みになっています。 具体例として、神奈川県横浜市西区の公示価格を確認してみましょう。 ▼まずは地図上で神奈川県を選択します。 ▼次に、地図上で横浜市西区を選択しましょう。 ▼検索条件指定の画面が表示されたら、「対象」「調査年」「用途区分」「地価」について選択もしくは入力を行い、検索ボタンを押します。 ▼検索結果が表示された後、「詳細を開く」や「標準地番号」のリンクを押すと、地価情報の詳細が表示されます。 複数の地域を選択して検索したり、詳細な地名を入力して検索したりすることも可能です。 出典)国土交通省「不動産情報ライブラリ」 公示価格と他指標との違い 土地価格の指標は複数存在し、「一物五価」と言われることもあります。具体的には、「公示価格(公示地価)」「実勢価格」「基準地価」「路線価」「固定資産税評価額」の5つです。 ここでは、公示価格とそれぞれの語句との違いを説明します。 実勢価格との違い 実勢価格とは、実際に取引された土地価格のことです。土地の価格は需要や立地、周辺環境、当事者間の価格交渉などの影響を受けて変動するものなので、同じ標準地にある土地であっても、公示価格と実勢価格は一致しません。 公示価格と実際に取引される土地価格は異なることを理解し、一つの指標として活用することが大切です。 基準地価との違い 基準地価とは、国土利用計画法に基づき、都道府県知事が毎年7月1日時点における標準価格を判定する土地価格です。適正な地価の形成を目的として、毎年9月頃に公表されます。令和4年の基準地数は約21,000地点です。 公示価格との違いは下記のとおりです。 公示価格 基準地価 調査名国土交通省地価公示都道府県地価調査 調査主体国土交通省都道府県 根拠法地価公示法国土計画利用法 基準日毎年1月1日毎年7月1日 公表時期毎年3月毎年9月 評価方法不動産鑑定士2名以上による鑑定評価不動産鑑定士1名以上による鑑定評価 公示価格は1月1日時点、基準地価は7月1日時点と基準日に違いがあるため、基準地価は公示価格を補完する指標として活用されることがあります。 路線価との違い 路線価とは、相続税や贈与税における評価額の基準となる土地の価格です。一連の土地が面している路線ごとに評価した、1㎡あたりの土地価格を意味します。毎年1月1日を評価時点として、国税庁がその年の7月に公開しています。公示価格の80%程度が目安です。 路線価は、国税庁が運営するサイト「路線価図・評価倍率表」で確認できます。 出典)国税庁「路線価図・評価倍率表」 関連記事はこちら相続時の不動産評価方法は?評価に関する特例も併せて解説 固定資産税評価額との違い 固定資産税評価額とは、固定資産税を計算する際の基準となる価格です。市町村の固定資産台帳に記載された土地の評価額を意味し、3年に1回「評価替え」が行われます。宅地については、公示価格の70%程度が目安です。 固定資産税評価額は、市町村から送付される固定資産税の納税通知書で確認できます。また、固定資産評価証明書の発行や固定資産台帳の閲覧を自治体の担当部署に依頼し、確認することも可能です。 公示価格の活用法 土地売買の際に公示価格を参照するのは、適切な売却価格かを判断する上で有効です。一方で、公示価格を指標として用いる上で、以下の特徴を把握しておくことが大切です。 地価は変動するので、公示価格と実際に取引する日の地価は異なる 公示価格が高い標準地の土地であっても、立地や周辺環境などの条件が悪ければ金額が低くなることがある 公示価格を算出する標準地は、都会には多いが地方には少ないため、土地の所在地によっては参考にならない場合がある 土地を売買する場合は不動産会社の査定価格を鵜呑みにするのではなく、公示価格や基準地価など、複数の指標と比較して問題ないかを確認した上で、売買判断を行うことが大切です。上記公示価格の特徴を正しく理解し、有効に活用しましょう。 まとめ 公示価格は、国土交通省が毎年公示していることから、信用度の高い土地価格といえます。ただし、公示価格と実勢価格は必ず一致するものではないため、参考程度にすることが大切です。実際に土地を売買する際は、公示価格だけでなく、基準地価や査定価格なども確認した上で売買判断を行いましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マンションの資産価値の調べ方は?基準もあわせて紹介 マンションを購入する際には、将来的な資産価値の変化にも目を向けて判断することが大切です。この記事では、マンションの資産価値に影響を与える要因や、資産価値の調べ方について解説します。 マンショ...記事を読む
大規模なリフォームや建て替え等を行う際には、仮住まいが必要になります。 この記事では一般的な仮住まいとしてどのような選択肢があるのか、それぞれのメリットと注意点、費用などについて解説します。 仮住まいが必要となる3つの事例 仮住まいが必要になる事例として以下の3つが考えられます。 ①大規模なリフォームやリノベーション 1つ目は、大規模なリフォームやリノベーションをする場合です。部分的な工事であれば、仮住まいを必要としない場合もありますが、大規模になると安全面や騒音などの理由から仮住まいが必要になります。仮住まいが必要な期間は工事内容によって変わるので、仮住まいを探す前にあらかじめ工事期間を確認しておきましょう。 関連記事はこちらリフォームとリノベーションの違いとは?費用の目安も解説 ②建て替え 2つ目は、建て替えをする場合です。もともと住んでいた家を取り壊すため、新しい家が建つまでの間の仮住まいが必要になります。基本的に建て替えの工事期間はリフォームやリノベーション比べて長いため、仮住まいが必要な期間も長くなります。 関連記事はこちら建て替えとリフォームはどちらがいい?判断する基準を解説 ③住み替え(売り先行) 3つ目は、売り先行で住み替えをする場合です。売り先行とは、住み替えの際に先に現在住んでいる家を売却してから、新しい家を探して購入する方法です。新しい家を買う前に自宅を売却してしまうため、新しい家が見つかるまでの間は仮住まいが必要になります。 4つの仮住まいの選択肢 仮住まいには、主に4つの選択肢があります。ここでは、ほかの選択肢と比べた際のメリットと注意点をそれぞれ解説します。 ①マンスリーマンション 1つ目は、マンスリーマンションを借りる方法です。マンスリーマンションとは、その名のとおり1ヶ月単位での短期入居を想定した賃貸マンションです。マンスリーマンションには、以下のようなメリットがあります。 短期契約が可能 手続きが楽 初期費用が安い マンスリーマンションは1ヶ月単位での短期契約が可能な点がメリットです。家具家電は備え付けられており、電気・ガス・水道などは運営会社が開通手続きを行ってくれます。 快適なインターネット環境を完備している物件も多いため、引越し手続きの負担が大幅に軽減されるのが魅力です。また、一般的な賃貸物件のように敷金・礼金などはかからず、初期費用は清掃費のみのため安く済みます。 一方、注意点としては以下のとおりです。 物件の選択肢が少ない 内見できないところが多い 家賃が高い 自分の家具や家電の収納場所を別途用意する必要がある マンスリーマンションは物件数が限られているため、希望に合った部屋を見つけるのは難しい側面があります。加えて、入居者の入れ替わりが多いことから内見に応じてもらえないことも多いです。 また、初期費用が安い反面、家賃設定は一般的な賃貸と比べて高いので、長期で借りるとかえって費用がかかる恐れもあります。なお、マンスリーマンションは利用期間分の賃料を一括前払い制としている場合が多いため、入居期間をあらかじめ明確にしておかなければなりません。 ②ホテル 2つ目は、ホテルを利用する方法です。ホテルの場合は、以下のようなメリットがあります。 手続きが楽 家具やアメニティなどがそろっている 駅近などの便利な立地に多い ホテルは契約や審査が不要であり、その日に予約をとって利用することができます。また、家具やアメニティの準備は不要であり、掃除も基本的にホテルの従業員が行ってくれる点も魅力です。さらに、駅近などの便利な立地に建てられることが多いため、利便性も高いのがメリットです。 一方、注意点としては以下のとおりです。 1泊あたりの費用が高い 自分の家具や家電の収納場所を別途用意する必要がある ホテルは1泊あたりの費用が高いため、長期滞在をすると費用が膨らんでしまいます。また、家具・家電を置けるスペースがないため、別途で倉庫などを借りる必要もあります。仮住まいが必要な期間が短い場合は検討しても良いでしょう。 ③一般的な賃貸物件 3つ目は、一般的な賃貸物件を借りる方法です。通常の賃貸物件には、以下のようなメリットがあります。 物件の選択肢が多い 取り扱われている物件数が多いため、「駅近」や「駐車場付き」、「ファミリー向けの間取り」「ペット可」など、立地や条件の選択肢が幅広いのが特徴です。 一方、注意点としては以下のとおりです。 初期費用が高い 短期契約が難しい 賃貸物件を借りる際には、敷金や礼金、仲介手数料といった初期費用がかかります。加えて、一般的な普通借家契約では2年間を契約期間とする場合が多いため、短期での入居を断られてしまう恐れもあります。あらかじめ不動産会社に仮住まいとして利用することを相談しておいたほうが良いでしょう。 ④UR賃貸住宅 4つ目は、UR賃貸住宅を借りる方法です。UR賃貸住宅とは、独立行政法人都市再生機構が取り扱う賃貸物件のことです。仮住まいとしても利用が可能であり、以下のようなメリットがあります。 短期契約が可能 初期費用が安い UR賃貸住宅は礼金や仲介手数料がなく、初期費用が一般的な賃貸と比較して安い点が特徴です。短期違約金などはなく、解約日の2週間前に予告すれば退去ができるため、短期間での利用にも適しています。 一方、注意点としては以下のとおりです。 物件の選択肢が少ない 収入に関する独自の審査基準がある UR賃貸住宅そのものの物件数が限られているため、希望の物件が見つからない恐れがあります。また、入居は原則として先着順のため、人気のエリアであればあるほど借りるのが難しくなります。 それ以外の注意点としては、収入に関する独自の審査基準があることが挙げられます。UR賃貸住宅を検討する際には、しっかりと確認しておきましょう。 出典)UR賃貸住宅「お申込み資格」 仮住まいの費用を安く抑えるポイント 仮住まいの費用を抑えるためには、仮住まいが必要な期間に合わせた選択肢を考えることが大切です。仮住まいを探す際には、一般的な賃貸物件以外の選択肢を検討せざるを得ないでしょう。 引越し費用やトランクルーム利用料を抑えるためには、あらかじめ不要な荷物を処分しておくことも重要です。リフォームや建て替えを機に、家具・家電の入れ替えを検討してみるのも良いでしょう。 また、繁忙期を避ければ引っ越し費用も抑えることができます。 なお、一般的な賃貸物件を探すなら、「定期借家」も有力な選択肢となります。定期借家とは借りられる期間が定められている物件のことであり、契約更新ができない分、家賃が安く設定されていることもあります。 関連記事はこちら定期借家契約と普通借家契約の違いとは? まとめ 最適な仮住まい先は、仮住まいが必要な期間によって異なります。まずはスケジュールを把握し、仮住まいが必要な期間を明らかにしておくことが大切です。一般的な賃貸物件だけでなく、紹介したマンスリーマンションやUR賃貸住宅などにも選択肢を広げることで、最適な仮住まい先を探しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 仮住まいなしで住み替えをする5つの方法 持ち家の方が自宅を住み替える場合、住み替えの方法によっては仮住まいが必要です。 仮住まいとして賃貸物件を借りると、毎月の家賃だけでなく、引っ越し費用や敷金・礼金などの費用もかかります。また、...記事を読む
京都市において、全国初の「空き家税」が2026年度に導入される見通しとなりました。空き家税は、利用されていない空き家や別荘などに課税する新たな税の仕組みです。京都市では、なぜ空き家税が創設されるのでしょうか。 この記事では、空き家税の制度内容や導入される目的、課税への対策について解説します。 空き家税とは 空き家税とは、正式名称ではなく、京都市が創設する「非居住住宅利活用促進税」のことを指します。京都市では、令和2年(2020年)8月に有識者や市民公募委員などで構成される検討委員会を設置し、空き家や別荘所有者への適正な負担のあり方について議論を重ねていました。 その後、令和4年(2022年)3月に「京都市非居住住宅利活用促進税条例」が成立しました。令和5年(2023年)3月24日には総務大臣が空き家税の創設に同意したことで、令和8年度(2026年度)以降に全国初の空き家税が導入される見通しとなっています。 京都市が空き家税を導入する目的 検討委員会の答申によると、空き家税を創設する目的は以下の2つです。 (1)住宅供給の促進や居住の促進、空き家の発生の抑制といった政策目的の達成 (2)現在及び将来の社会的費用の低減を図り、その経費に係る財源を確保すること 出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」 京都市の見解では、空き家や別荘、セカンドハウスなどの「非居住住宅(※)」の存在が、京都市への移住希望者や住宅供給を妨げ、防災や防犯、生活環境に関する問題の発生や地域コミュニティの活力低下の原因の1つにもなっているとされています。 ※その所在地に住所(住民票の有無にかかわらず、居住実態の有無によって生活の本拠が判断される。)を有する者がない住宅のこと。 空き家の所有者に課税することによって、非居住住宅の有効活用を促す狙いがあります。また、空き家税の税収により、住宅供給の促進や安全な生活環境の確保といった施策にかかる費用の低減を図る方針です。 空き家税の制度概要 ここでは、京都市の空き家税の制度概要を確認していきましょう。 納税義務者 空き家税は、京都市内の市街化区域内に所在する非居住住宅が課税対象です。 非居住住宅の所有者が納税義務者となり、「家屋価値割額」および「立地床面積割額」の合算額を負担します(詳細は後述)。 課税免除 次の非居住住宅については、空き家税が免除されます。 ①事業の用に供しているもの又は1年以内に事業の用に供することを予定しているもの ②賃貸又は売却を予定しているもの※(事業用を除く) ③固定資産税において非課税又は課税免除とされているもの ④景観重要建造物その他歴史的な価値を有する建築物として別に定めるもの等 ※ただし、1年を経過しても契約に至らなかったものは除く。 出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」 課税額と税率 空き家税は「①家屋価値割」と「②立地床面積割」の2つがあります。それぞれの税額を計算し、足し合わせたものが空き家税の課税額となります。計算方法は以下のとおりです。 出典)京都新聞「京都市検討の別荘税「空き家」も幅広く対象に 課税額は物件価値で3段階か」 なお、②立地床面積割の税率は、固定資産評価額(土地)によって以下のとおり変動します。 固定資産評価額(土地)税率 立地床面積割700万円未満0.15% 700万円以上900万円未満0.30% 900万円以上0.60% 出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」 ただし、家屋価値割の課税標準が20万円(条例施行後の当初5年間は100万円)に満たない非居住住宅は免税となり、課税されません。 空き家税の賦課期日(課税の基準日)は毎年1月1日です。徴収方法は「普通徴収」で、京都市から送付される納税通知書で税額を納めます。 空き家税の対策 京都市に空き家を所有している場合、何もしなければ将来は税負担が増えてしまいます。ここでは、空き家税への対策を2つ紹介します。 売却する 1つ目は、所有している空き家を売却することです。売却して空き家を手放せば納税義務者ではなくなるので、空き家税を課税されることはありません。 また、実際に売却されていなくても、売却を予定している非居住住宅は課税が免除されます(1年を経過しても契約に至らない場合を除く)。将来住む予定がない空き家を放置している場合は、少しでも早く売却活動を始めるといいでしょう。 賃貸に出す もう1つは、所有している空き家を賃貸に出すことです。非居住住宅であっても、賃貸を予定しているものは課税が免除されます(1年を経過しても契約に至らない場合を除く)。入居者が見つかれば、家賃収入を得られるのもメリットです。 ただし、賃貸に出すには、空き家を入居希望者に貸し出せる状態にする必要があります。物件の状態によっては、リフォームの必要があるかもしれません。 また、賃貸借契約や家賃の回収といった管理業務が発生し、入居者がいないと家賃が入ってこない「空室リスク」もあります。立地や間取り、築年数などから、賃貸に適しているかを見極める必要があるでしょう。 関連記事はこちら不動産投資の8つのリスクとその対策 まとめ 京都市が創設する空き家税がうまく機能すれば、今後は他の自治体でも導入されるかもしれません。利用していない空き家を所有している場合は、売却や不動産活用を検討しておいた方がいいかもしれません。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 空き家を相続したらどうするべき?対処方法や税制特例について解説 相続で取得した実家に住む予定がない場合、何もしなければ空き家になってしまいます。空き家の状態で放置することには、さまざまなリスクが存在します。 そのため、空き家を相続する予定があるなら、どの...記事を読む
築年数の経過やライフスタイルの変化などに応じて、住宅の建て替えやリフォームを検討することがあるでしょう。 建て替えとリフォームの特徴を知っておけば、どちらが自分に合っているか判断しやすくなります。この記事では、建て替えとリフォームのどちらがいいか迷っている方に向けて、双方のメリットやデメリット、どちらが向いているかを判断する基準の例を解説します。 建て替えのメリット・デメリット まずは、建て替えのメリットとデメリットについて解説します。 建て替えのメリット 建て替えの主なメリットは以下の2点です。 ①建物の構造や間取りを最初から見直せる 建て替えの場合、工事内容が既存住宅の構造や間取りに左右されることがありません。希望に沿った建物の構造や間取り、仕上がりなどを一から見直すことができます。 ②耐震性をより高めることができる 建築基準法と住宅瑕疵担保履行法により、建て替えの際には必ず地盤調査が行われます。耐震性を高めたい場合、地盤調査のうえで耐震改修工事ができる点は大きなメリットです。また、必要に応じた地盤改良も可能です。 出典)一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会「かし保険全般に関するご質問(地盤編)」 建て替えのデメリット 建て替えの主なデメリットは以下の2点です。 ①時間と手間がかかる 既存建物の解体と建築を行うため、完成までにまとまった期間が必要になります。加えて工事の間は仮住まいで過ごす必要があるため、仮住まいや引っ越しなどの手間もかかります。 ②費用が高い 建て替えには、建築費用以外に既存建物の解体費用や仮住まいの費用、引っ越し費用などが必要です。なお、経済産業省の「令和3年度 住宅市場動向調査報告書」によれば、建て替え費用の平均額は3,299万円という結果が出ています。あくまで平均値ですが、一つの目安にはなるでしょう。 出典)国土交通省 住宅局「令和3年度 住宅市場動向調査報告書」 リフォームのメリット・デメリット 続いて、リフォームのメリットとデメリットについて解説します。 リフォームのメリット リフォームの主なメリットは以下の2点です。 ①時間や手間、費用を抑えられる 必要な部位のみリフォームを行えるため、建て替えと比べると工事の期間が短くなります。また、設備の交換などの小規模なリフォームであれば、住み続けたまま工事ができるので、仮住まいが必ずしも必要なわけではありません。 ②愛着のある家に住み続けられる 今住んでいる家に愛着がある場合、建物の原型を大きく変えられないことはメリットにもなります。人によっては壁や柱の傷や汚れも想い出になっているかもしれません。そのような部位は残しつつ、必要な修繕のみ行うことも可能です。 リフォームのデメリット リフォームの主なデメリットは以下の2点です。 ①住宅性能や耐震性の向上には限界がある 部分的なリフォームをする場合、住宅を支える柱や梁を変更、補強しない限りは住宅性能を上げるには限界があります。また、地盤が悪い場合には地盤改良が必要ですが、建築されている状況だと工事が不可能です。 ②希望どおりの間取りになるとは限らない リフォームの場合、建て替えのように自由に構造や間取りを変更することは困難です。工事内容が既存住宅の構造や間取りによって制限されてしまうため、自身の希望する工事ができない場合もあります。自身の希望どおりの工事が可能かどうか、リフォーム業者にしっかりと確認しておくことが大切です。 建て替えかリフォームかを判断するポイント 建て替えとリフォームのメリットとデメリットを把握したうえで、自身の状況に合う方を選択することが大切です。一つの参考として、建て替えが向いている場合とリフォームが向いている場合を、それぞれご紹介します。 建て替えが向いている場合 建て替えが向いている例として、下記の場合が挙げられます。 家の構造や間取りを大きく変更したい 耐震性に不安があり、地盤から見直したい 子供や孫世代に家を引き継ぎたい リフォーム費用が同程度かかる 基本的には大規模な工事を行いたい場合には、建て替えが向いているといえます。その分費用は大きくなるので、自己資金や住宅ローンの条件なども踏まえて検討することが大切です。 リフォームが向いている場合 リフォームが向いている例として、以下の場合が挙げられます。 家全体の状態は良く、一部の工事で済む 家の構造や間取りを大きく変える必要がない 子供や孫世代に家を引き継ぐ予定がない 費用や手間をできるだけ抑えたい 小規模な工事で済む場合、もしくは済ませたい場合にはリフォームが向いているといえます。また、費用面を比較する際には、リフォームの補助金も含めて検討することが大切です。 関連記事はこちら【令和5年版】リフォームで活用できる補助金の種類と金額の目安 選ぶときの注意点 ここで紹介した建て替えが向いている場合とリフォームが向いている場合は、あくまで一例にすぎません。もしどちらかに当てはまったとしても、実際に両方の見積もりを行うなどして、しっかりと比較することが大切です。 また、建て替えとリフォームのどちらかを選択する上で、自宅の状態を適切に把握することも大切です。ご自身で判断するのが不安な場合は、専門家に建物状況調査を依頼するのも一つの手段として有効です。 関連記事はこちら建物状況調査とは?メリット・デメリットと手続きの流れを解説 まとめ 建て替えとリフォームでは、それぞれメリットとデメリットがあるため、十分に比較をしてからどちらが合っているかを決める必要があります。費用面だけでなく、家族構成やライフスタイルの変化を踏まえた中長期的な視点で考えていくことが重要です。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 老後は家の建て替えが必要?資金はどうやって準備する? 子どもが独立したり、定年が近づいてきたりすると、老後の住まいについて考える機会が増えるのではないでしょうか。戸建てに住んでいる場合は、住み替えやリフォームだけでなく、建て替えも検討するかもし...記事を読む
土地は、その用途によって地目が定められています。保有している土地の使用方法が変わった場合は、地目変更の手続きが必要です。地目変更はどんなときに求められるのでしょうか。また、自分で行うことは可能なのでしょうか。 この記事では、地目変更の概要や検討すべきケース、手続き方法などを解説します。 地目変更とは 地目とは、土地の用途による分類のことです。地目変更は、土地の用途に変更があったときに登記上の地目を変更することを意味します。 地目:土地の用途による分類であって、第三十四条第二項の法務省令で定めるものをいう。(不動産登記法 第2条18) 出典)e-Gov法令検索(不動産登記法) 地目の種類 不動産登記事務取扱手続準則第68条において、地目は23種類に区分されています。主な地目とその用途は以下のとおりです。 地目 用途 田農耕地で用水を利用して耕作する土地 畑農耕地で用水を利用しないで工作する土地 宅地建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地 学校用地校舎、附属施設の敷地及び運動場 山林耕作の方法によらないで竹木の生育する土地 水道用地専ら給水の目的で敷設する水道の水源地、貯水池、ろ水場又は水道線路に要する土地 公衆用道路一般交通の用に供する道路(道路法による道路であるかどうかを問わない。) 公園公衆の遊楽のために供する土地 雑種地他の22地目のいずれにも該当しない土地 出典)法務省「不動産登記事務取扱手続準則 第68条」 なお、地目には「登記地目」と「課税地目」があります。 登記地目は、上述した不動産登記法で定められている地目のことで、登記簿で確認することができます。土地の利用状況が変化しても、申請を行わないと登記地目は変更されません。 一方、課税地目は、固定資産税の算出根拠となる地目のことで、毎年送られてくる固定資産税納税通知書や、市役所等で取得できる固定資産評価証明書で確認することができます。市区町村や税務署が現地調査によって判定しており、現況に変化があれば自動的に変更されるため、登記地目と課税地目が異なる場合もあります。 地目変更を検討すべきケース 地目変更を検討すべきケースは以下のとおりです。 土地の利用目的を変更したとき 所有している土地の利用目的を変更する場合は、地目変更が必要です。例えば、田や畑として使っていた土地を宅地に造成して家を建てるようなケースが該当します。 土地を担保に融資を受けたいとき 土地を担保に融資を受けるときは、地目と土地の使用目的が一致していることが条件となる場合があります。不一致の場合は融資を受けられない恐れがあるため、地目変更をしておくと安心です。 土地を売却したいとき 地目と土地の使用目的が異なる場合、売却前に地目変更をしておく必要があります。 田・畑などの農地は買い手が農家に限られるため、思うように売却できないかもしれません。場所や周辺環境にもよりますが、宅地に造成し、地目変更してから売りに出すほうが買い手を見つけやすいでしょう。 地目変更登記に関する注意点 地目変更の登記手続きを行う場合は、以下の点に注意が必要です。 期限までに変更しないと罰則がある 土地の用途に変更があった場合、その変更があった日から1ヵ月以内に地目変更登記の申請を行わなくてはなりません。申請を怠ると10万円以下の過料が科されるので、忘れずに手続きを行いましょう。 地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。(不動産登記法 第37条) 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条又は第五十八条第六項若しくは第七項の規定による申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。(不動産登記法 第164条) 出典)e-Gov法令検索(不動産登記法) 関連記事はこちら住所変更登記等の義務化はいつから?手続き方法や注意点も解説 固定資産税は地目ではなく現況で判断される 上述のとおり、地目には「登記地目」と「課税地目」があり、固定資産税の計算上は土地の現況(課税地目)で判断されます。例えば、登記地目が「畑」である土地を宅地として使用していれば、宅地とみなして課税されます。 農地と宅地の固定資産税額(本則)は、どちらも「課税標準額×1.4%」で変わりません。しかし、課税標準額は宅地のほうが大きくなることが多いため、結果として宅地は税額が高い傾向にあります。 地目変更の手続き方法 地目変更は、内容を正しく理解できれば自分で手続きを行うことも可能です。手続きの流れは以下のとおりです。 土地の登記地目を調べる 土地の現況を確認する 地目変更登記の申請を行う まずは、手元にある登記識別情報などで土地の登記地目を調べましょう。土地の現況を確認し、地目と現況が違っている場合は地目変更登記の申請を行います。申請から登記完了までは、1~2週間程度かかるのが一般的です。 地目変更登記の必要書類 地目変更登記の主な必要書類は以下のとおりです。 土地地目変更登記申請書 登記事項証明書 農地転用許可書(農地を変更する場合) 土地地目変更登記申請書を法務局の窓口またはホームページで入手し、必要事項を記入して法務局に提出します。登記記録の内容を記入するため、土地の登記事項証明書も取得しておきましょう。 なお、田や畑などの農地を農地以外の地目に変更する場合は、都道府県知事の許可書も添付する必要があります。 地目変更登記にかかる費用 地目変更登記に登録免許税はかかりませんが、登記事項証明書を取得する際に、1通につき480円~600円の発行手数料がかかります。また、他の書類が必要な場合は、その発行費用がかかる場合があります。 地目変更登記を土地家屋調査士などに依頼する場合は、別途報酬を支払う必要があります。依頼先によって異なりますが、土地1筆(1個)につき5万円程度が相場となっています。 まとめ 保有している土地の用途に変更があった場合は、地目変更登記が必要です。申請を怠ると過料を科される可能性があり、売却などに支障が出る恐れもあります。地目変更を自分で行うのが難しい場合は、土地家屋調査士などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 「用途」からみた土地の種類 不動産は、「土地」と土地の上に建っている「建物」から構成されています。そして、土地にはさまざまな分類方法によって定義される「種類」があります。不動産を売却したり、ローンの担保とする場合、土地...記事を読む
住宅のリフォームを検討する際は、工事の依頼先を慎重に選ぶことが重要です。しかし、何らかのトラブルが生じたときに備えて、補償を受けられる保険に加入しておきたいと考えることもあるでしょう。 もしもの場合に備えた保険として、リフォーム瑕疵保険というものがあります。この記事では、リフォーム瑕疵保険の基本的な仕組みや加入方法、適用条件などを解説します。 リフォーム瑕疵保険とは リフォーム瑕疵保険とは、リフォーム時の検査と保証がセットになった保険制度です。国土交通大臣が指定した住宅専門の保証会社である、住宅瑕疵担保責任保険法人(以下保険法人という)が保険を引き受けます。2023年3月時点で指定されている保険法人は以下のとおりです。 株式会社住宅あんしん保証 住宅保証機構株式会社 株式会社日本住宅保証検査機構 株式会社ハウスジーメン ハウスプラス住宅保証株式会社 リフォーム工事業者(以下事業者という)側が上記5法人のいずれかと保険契約を締結することで、リフォーム瑕疵保険に加入できます。リフォーム瑕疵保険へ加入する義務はないため、基本的にはリフォーム発注者(以下発注者という)側が事業者側に依頼をして加入してもらう流れになります。 リフォーム瑕疵保険の保証期間 リフォーム瑕疵保険では、リフォームの内容によって保証期間が1年・5年・10年(増築特約)のいずれかになります。各期間のリフォーム内容は以下のとおりです。 保証期間1年 壁のひび割れや建具の不具合などが該当します。建物の構造上は問題がないものでも、社会通念上において必要とみられる部分について保険金が支払われます。 保証期間5年 柱・壁などの構造上必要な部分や屋根・外壁など防水機能を保つ必要がある部分などが該当します。十分な耐力性能、防水性能を満たしていないときに保険金が支払われます。 保証期間10年(増築特約) 増築工事を行う場合は、基礎部分を追加する場合の工事のみが10年の保証対象となります。適用条件については保証期間5年の場合と同様ですが、増築工事部分の内装工事などは含まれないので注意が必要です。 リフォーム瑕疵保険の保険金額 工事に欠陥が見つかった場合に施主に対して支払われる保険金額については、あらかじめルールが定められています。一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会によれば、支払いの対象となるのは事故を補修するための費用、もしくは方法などを決めるための調査費、転居または仮住まいを余儀なくされたときに発生する費用となっています。 また、保険金の計算式については次のとおりです。 保険金支払額=(修補費用等-10万円)×80% 上記計算式のとおり、かかった費用の100%分の保険金が事業者に支払われるわけではなく、足りない部分は事業者が負担することになります。ただし、リフォーム工事を行った事業者が倒産した場合には、居住者に対して100%の金額が支払われます。万が一修理が必要になっても、発注者側に負担が発生しないような仕組みになっているのが特徴です。 リフォーム瑕疵保険のメリット リフォーム瑕疵保険に加入するメリットは以下のとおりです。 第三者の検査が受けられる リフォーム瑕疵保険では、発注者と事業者のどちらとも利害関係のない第三者検査員(建築士)によって、現地検査が行われます。また、検査基準が設計施工基準によって明確に定められています。専門的知識を持った第三者が明確な基準に則って検査を行っているため、質の高い施工を確保できます。 基本的にすべてのリフォームが保証の対象となる リフォーム瑕疵保険では、発注者と事業者が締結した工事請負契約に基づくリフォームであれば、基本的にすべてのリフォームが保証の対象となります。ただし、外構や庭工事など、住宅の建物自体に付帯しないリフォームは対象外となります。 優良なリフォーム会社を見分ける1つの基準となる 事業者がリフォーム瑕疵保険に加入するには、先に紹介した保険法人が設ける一定の基準を満たし、事業者登録を受ける必要があります。さらに、一度加入した事業者であっても、保険事故(欠陥リフォーム)を多数起こしてしまった技術的な問題のある事業者は登録を抹消されます。したがって、リフォーム瑕疵保険に加入しているかどうかは、優良なリフォーム会社を見分ける判断基準の1つとなるでしょう。 なお、リフォーム瑕疵保険の加入事業者は一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会 のWebサイトで検索することができます。リフォーム事業者を選ぶ際には、リフォーム瑕疵保険に加入しているかどうかを確認してみましょう。 出典)一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会「かし保険を利用する登録事業者等の検索」 工事に瑕疵があっても安心 リフォーム後に瑕疵が見つかったとしても、事業者が保険法人に対して補償を求め、その保険金で修理を受けることができます。また、万が一事業者が倒産していた場合でも、発注者が直接保険法人に対して補償を求め、その保険金で別の事業者に修理を依頼できます。したがって、リフォーム瑕疵保険があれば、リフォームに瑕疵があっても安心です。 リフォーム瑕疵保険のデメリット リフォーム瑕疵保険への加入は多くのメリットがある一方で、少なからずデメリットも存在します。リフォーム瑕疵保険に加入するデメリットは以下のとおりです。 検査によって工期が延びる恐れがある リフォームが完了してから行われる現場での検査は、原則として1回となっています。ただし、リフォームの内容によっては工事の途中にも行われる場合があり、それによって工期が延びてしまう恐れがあるので注意が必要です。 入居日が後ろ倒しになる可能性もあるため、事前によく打ち合わせを行ったうえで、スケジュールに問題がないかを確認しておきましょう。 一方で、事業者以外の第三者機関が複数回検査に訪れてくれることは、発注者にとっては安心につながるので、デメリットだけであるとも限らないでしょう。 出典)住宅保証機構「まもりすまいリフォーム保険・まもりすまい大規模修繕かし保険手続き・設計施工基準・現場検査」 リフォーム瑕疵保険の適用条件と注意点 リフォーム瑕疵保険に入ることを検討するときは、加入方法や適用条件についても押さえておきましょう。対象となる住宅や工事内容などを解説します。 リフォーム瑕疵保険の対象となる住宅 リフォーム瑕疵保険の対象となる住宅の条件として、以下のものが挙げられます。 建物の一部にかかる増築や改修・補修の工事を行う住宅が対象 建物の構造や工法、築年数は問われない 「住宅保証機構指定の保証書」で、リフォーム工事請負契約に基づいた「瑕疵担保責任」の契約をしていること 設計施工事基準(住宅保証機構が定めているもの)に適合するリフォーム工事であること 「構造耐力上主要な部分」をリフォームする場合は、新耐震基準に適合した住宅であること あくまで住宅に関する部分に保険が適用されるため、外構部分や建物の解体などについては、保証対象外となります。 リフォーム瑕疵保険の加入方法 リフォーム瑕疵保険は、事業者が加入する保険です。事業者にリフォーム瑕疵保険の加入義務はないため、リフォーム瑕疵保険に加入したい場合はその旨を事業者側に伝える必要があります。 その後、既に事業者が保険法人に登録を受けている場合であれば、そのまま保険の申し込みに進めます。一方で、事業者がまだ登録を受けていない場合は、事業者登録に時間を要する恐れがあるので注意が必要です。 なお、保険の申し込みは事業者側が行いますが、発注者側も事業者から保険に関する説明を受ける、必要書類に記名押印をする、などの手続きを行う必要があります。 まとめ リフォーム瑕疵保険は検査と保険がセットになった仕組みであり、リフォーム工事で欠陥が見つかった際に必要な補償を受けられます。また、リフォーム工事が完了した後に、専門家による検査を受けられるので品質の高い工事が期待できるでしょう。 加入は事業者を通じて行う必要があるため、見積もりの際に伝えておく必要があります。もしものときに備えて、必要な準備を検討しておくことが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 【令和5年版】リフォーム減税の対象工事・申請の流れ・注意点 自宅のリフォームを行う際、内容によってリフォームの減税制度の対象となる場合があります。リフォームの減税制度にはいくつかの種類があるので、仕組みや条件、それぞれの特徴を正しく理解することが大切...記事を読む
貸付自粛制度とは、「借金をやめたいのにやめられない」という悩みを抱えている方に向けた支援制度です。本制度を利用することによって、さらに借金が増えるのを防止できる可能性があります。 この記事では、貸付自粛制度の仕組みやメリット・デメリット、手続き方法について解説します。 貸付自粛制度とは 貸付自粛制度とは、「日本貸金業協会」または「全国銀行個人信用情報センター」のどちらかへ申告をすると、金融機関からの借り入れを5年間制限できる制度です。 浪費癖やギャンブル依存などにより、本人や家族の生活に支障が生じる借金を行わないようにサポートすることを目的としています。 自らを「自粛対象者」として登録することで、今後借り入れの申込みをしても金融機関はこれに応じなくなるため、借金に対する抑止力が期待できます。 利用できる人の範囲 貸付自粛制度の利用を申告できるのは、原則として本人のみです。たとえ家族であっても、本人に無断で登録することはできません。ただし、法定代理人や、一定の要件を満たす家族は申告可能です。 貸付自粛制度のメリット 貸付自粛制度のメリットは以下のとおりです。 お金の借り過ぎや多重債務の防止になる 自粛対象者として登録すると、その後本人が借り入れの申込みをしたとしても、金融機関はこれに応じなくなります。そのため、「借金をやめたいが、どうしてもやめられない」といった悩みを抱えている人にとっては、借り過ぎを防ぐ効果が期待できます。 無料で利用できる 貸付自粛制度は登録手数料がかからず、無料で利用できます。費用の心配をせずに登録できるので安心です。ただし、郵送で申告する場合は、申告書控えを送るための返信用切手を自己負担で用意する必要があります。 貸付自粛制度のデメリット 一方で、貸付自粛制度には以下のようなデメリットもあります。 家族の借金をやめさせるのは難しい 貸付自粛制度は、原則として本人が申告を行います。家族が手続きできるのは、本人が所在不明であることが条件です。本人に借金をやめる気持ちがない場合、家族が本制度を利用して借金をやめさせるのは難しいでしょう。 3ヵ月経過すると撤回できてしまう 貸付自粛制度は、登録を依頼した日から3ヵ月経過すると自分で撤回できてしまいます。「借金をしない」という強い意志がないと、登録を撤回して再び借金をしてしまう恐れがあります。 違法な金融業者からであれば借り入れができてしまう 貸付自粛制度は、「日本信用情報機構」「シー・アイ・シー」「全国銀行個人信用情報センター」に加盟している会員(貸金業者・銀行)が対象です。本制度に登録をしても、前述3つのいずれにも加盟していない違法な金融業者からであれば借り入れができてしまいます。 違法な金融業者から借り入れてしまうと、違法な高金利の請求や悪質な取り立てなどの被害にあうリスクが高まるので、絶対に利用しないようにしましょう。 出典)金融庁「違法な金融業者にご注意!」 貸付自粛制度の手続き方法 貸付自粛制度を利用する場合は、日本貸金業協会または全国銀行個人信用情報センターのどちらかへ申告します。全国銀行個人信用情報センターで申告する際の手続きの流れは以下のとおりです。 申告に必要な書類を準備 ・貸付自粛申告書 ・貸付自粛申告確認書(申告理由がギャンブル等による場合) ・本人確認書類(2点)の写し ・返信用切手(404円分) 全国銀行個人信用情報センターに郵送 本人確認の連絡(電話) 登録完了(申告書の控えが郵送される) ※日本貸金業協会はWeb申告が可能 ギャンブル等依存症対策のため、申告理由がギャンブル等による場合は「貸付自粛確認書」も作成して同封する必要があります。 また、申告書を送付した後は電話で本人確認が行われます。本人確認ができないと申告書が受理されないので、連絡が来たら必ず対応しましょう。 出典) ・日本貸金業協会「貸付自粛申告」 ・全国銀行協会「貸付自粛制度のご案内」 貸付自粛制度以外の解決策 貸付自粛制度は借り過ぎ防止が期待できる一方で、「申告できるのは原則本人のみ」「3ヵ月経過すると撤回できてしまう」などのデメリットもあります。自身もしくは家族の借金を何とかしたいと思っても、「貸付自粛制度では解決できない」という人もいるでしょう。 ここでは、貸付自粛制度以外の解決策として、自身や家族の借金に関する相談先を3つ紹介します。 依存症対策全国センター 全国の依存症専門相談窓口や依存症専門医療機関を探し、相談できます。借金の原因がギャンブル等依存症の場合、専門家に相談することで改善・解決が期待できるかもしれません。 >詳細はこちら 金融庁 多重債務相談窓口 金融庁が多重債務に関する相談窓口をまとめています。信頼できる相談窓口の中から、自身に合った相談先が見つかるかもしれません。 >詳細はこちら 消費者ホットライン 消費者ホットラインでも借金についての相談が可能です。特に金銭や商品、サービスなどで業者とトラブルになっている場合は消費者ホットラインに相談しましょう。 >詳細はこちら まとめ 借金で自身や家族の生活に支障が生じている場合は、貸付自粛制度によって借り過ぎの防止が期待できます。「借金をやめたくてもやめられない」と悩んでいるなら、貸付自粛制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ コロナ禍が追加!自然災害債務整理ガイドラインとは? コロナ禍による収入減で、住宅ローンの返済に苦しむ人も増えているようです。住宅ローンの返済が厳しくなったときにできることは何があるでしょう? また、2020年12月から「自然災害債務整理ガイド...記事を読む
自宅のリフォームを行う際、内容によってリフォームの減税制度の対象となる場合があります。リフォームの減税制度にはいくつかの種類があるので、仕組みや条件、それぞれの特徴を正しく理解することが大切です。 この記事では、2022年度の税制改正の内容を踏まえて、現行のリフォームの減税制度の内容について解説します。また、利用するために必要な手続きも併せて見ていきましょう。 リフォームの減税制度とは リフォームの減税制度では、一定の要件を満たすリフォームを行った場合に減税を受けられます。リフォームの減税制度は全部で5種類あり、各減税制度によって対象となるリフォームの内容が異なります。各リフォームの減税制度と、対象となるリフォームの内容は以下のとおりです。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)目次/概要」 前半部分では各リフォームの減税制度について、後半部分では対象となるリフォームの具体的な工事内容について解説します。 1.所得税の控除 所得税を対象としたリフォームの減税制度は、リフォーム促進税制と住宅ローン減税の2種類があります。2つの制度を併用することはできないため、自身の状況を踏まえてどちらかを選択する必要があります。まずはそれぞれの特徴や注意点について解説します。 リフォーム促進税制 リフォーム促進税制とは、特定の性能向上リフォームを行った場合に利用できる減税制度です。後程説明する住宅ローン減税とは異なり、リフォームローンの有無にかかわらず利用できます。このリフォーム促進税制は、リフォーム費用を大きく3つに分類し、控除額を計算します。 図中Ⓐは「10%控除の対象となる費用」です。図中Ⓐの限度額(以下10%控除限度額という)は、対象となる工事の内容ごとに定められています。なお、上記①~⑤に複数該当するリフォームを行う場合、該当した分だけ10%控除限度額が大きくなります。ただし、⑤長期優良住宅リフォームは①耐震リフォームや③省エネリフォームと併用することができないので注意が必要です。リフォームの内容のごとの限度額は以下のとおりです。 リフォームの内容 10%控除限度額 ①耐震リフォーム250万円 ②バリアフリーリフォーム200万円 ③省エネリフォーム250万円※ ④三世代同居対応リフォーム250万円 ⑤長期優良住宅リフォーム250万円※ ※太陽光パネル設置の場合350万円 図中Ⓑは「5%控除の対象となる費用」です。図中Ⓑの限度額は、1,000万円-Ⓐで計算できます。内訳としては、10%控除限度額を超過してしまった費用と、①~⑤に該当しないリフォームにかかる費用の2種類です。 図中Ⓒは「控除の対象とならない費用」です。リフォーム費用総額のうち、1,000万円を超えた部分については控除の対象となりません。なお、図中Ⓐ+Ⓑが1,000万円を超えない場合、Ⓒの費用が発生することはありません。 リフォーム費用をⒶ、Ⓑ、Ⓒの3つに分類したうえで、Ⓐ×10%+Ⓑ×5%が控除額となります。 注意点として、計算に用いられるリフォーム費用は、国土交通大臣が工事内容ごとに定めた「標準的な工事費用相当額」を用いて計算した金額であることが挙げられます。実際にかかった費用ではないので、あらかじめ金額を確認しておくことが重要です。 出典)国土交通省ホームページ 住宅ローン減税 住宅ローン減税は、住宅の購入にあたって住宅ローンを組む場合に利用できる制度ですが、リフォームローンを組む場合でも利用できます。利用条件は以下のとおりです。 ①償還期間が10年以上であること ②リフォーム費用合計額(補助金を控除した金額)が100万円を超えていること ③対象となる第1号~第6号工事のいずれかに該当する工事であり、建築士・指定確認検査機関・登録住宅性能評価機関・住宅瑕疵担保責任保険法人の証明を得ること ④その他リフォームを行う住宅等の条件を満たすこと 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅵ.住宅ローン減税編」 住宅ローン減税は、10年間にわたって毎年の「年末ローン残高の0.7%」が所得税から控除されます。リフォーム費用分にあたる年末ローン残高(上限2,000万円)×0.7%の控除が受けられるので、1年あたりの最大控除額は14万円までとなります。 2.固定資産税の減額 固定資産税を対象としたリフォーム減税は、対象となるリフォーム工事をした翌年度の固定資産税額のうち、一定割合を控除する仕組みです。具体的な減額割合はリフォームの内容によって以下のように異なります。 リフォームの内容 減額割合 家屋面積の上限 ①耐震リフォーム1/2120㎡相当分まで ②バリアフリーリフォーム1/3100㎡相当分まで ③省エネリフォーム1/3120㎡相当分まで ④三世代同居対応リフォーム減額なし- ⑤長期優良住宅リフォーム2/3120㎡相当分まで 上記のように、リフォームの内容によって家屋面積に上限がある点に注意しておきましょう。併用は基本的にできませんが、バリアフリー+省エネリフォームの場合のみ併用が可能です。 3.贈与税の非課税措置 親などから資金援助を受けてリフォームする場合、条件によっては贈与税の非課税措置が利用可能です。贈与税には基礎控除が設けられており、そもそも贈与資金が年間110万円までであれば、どのような用途であっても原則非課税となります。 そのうえで、親や祖父母などからリフォーム資金の贈与を受ける場合は、一定の条件を満たすことで最大1,000万円までが非課税となります。条件には面積や最低工事費用、贈与を受ける人の年齢といったさまざまなものがありますが、一般的なリフォームであれば、自然と満たしているものが多いのも特徴です。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅶ.贈与税の非課税措置編」 4.登録免許税の特例措置 個人が対象となるリフォームが行われた住宅を購入した場合、所有権移転登記に係る登録免許税の特例措置の対象となります。通常は課税標準額×2%の登録免許税がかかるところが、0.1%まで軽減されます。特例を受けるためには、申請書類を法務局に提出する必要があります。リフォームが行われた住宅を購入する場合には、売り主や仲介会社に書類について確認してみましょう。 なお、中古住宅を購入した後にリフォームを行う場合は対象外となります。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅷ.登録免許税の特例措置編」 5.不動産取得税の特例措置 宅地建物取引業者が中古住宅を購入する場合、対象のリフォームを行ったうえで個人に譲渡することを条件に、不動産取得税の控除を受けることができます。また、個人が新耐震基準を満たしていない中古住宅を購入し、購入後に耐震リフォームを行う場合も、不動産取得税の控除を受けることができます。 どちらの場合も、購入する中古住宅の新築日の日付に応じて控除額が決定します。新築日が前であるほど控除額は小さくなります。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅸ.不動産取得税の特例措置編」 リフォームの減税制度が適用される工事の種類 リフォームの減税制度を利用するためには、適用される工事であるかどうかを事前に確認することが大切です。ここでは、適用対象となる工事の種類を具体的に見ていきましょう。 耐震リフォーム 耐震リフォームとは、住宅の耐震化に関するリフォーム工事のことを指します。主に古い耐震基準で建てられた建物について、現行の耐震基準に適合するように行われる補強・改修を行う工事のことです。 バリアフリーリフォーム バリアフリーリフォームとは、高齢者や障がい者が安全かつ快適に生活するために必要なリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「通路等の拡幅」「階段の勾配の緩和」「浴室改良」「段差の解消」などの工事が対象となります。 要介護もしくは要支援の認定を受けている人や、高齢者・障がい者が居住していることなどが、リフォームの減税制度の適用条件となっています。 省エネリフォーム 省エネリフォームとは、住宅の省エネ性能を上げるためのリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「窓や壁などの断熱工事」「高効率空調機の設置工事」「太陽光発電設備の設置工事」などが該当します。注意点として、リフォーム減税の適用には窓の断熱工事が基本的に必須とされていることが挙げられます。 同居対応リフォーム 同居対応リフォームとは、親と子・孫の三世代が同居をするためのリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「キッチン」「浴室」「トイレ」「玄関」のいずれかの増設工事を指し、このうち2つ以上の設備が複数ある場合、リフォームの減税制度の対象となります。 ただし、あくまでも「同居」が条件であるため、離れなどに増設した場合は対象とならない点に注意が必要です。 長期優良住宅化リフォーム 長期優良住宅化リフォームとは、シロアリ対策や耐震補強といった住宅の耐久性を高めるためのリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「外壁を通気構造等とする工事」「浴室または脱衣室の防水性を高める工事」「シロアリ対策」「断熱リフォーム」など11種の工事が対象であり、長期優良住宅の認定を取得することでリフォームの減税制度が利用できます。 主なリフォーム費用の相場や活用できる補助金については、以下の記事で詳しく解説されているので、参考にしてみてください。 関連記事はこちらリフォーム費用の相場と安く抑えるコツ リフォームの減税制度の申請方法 リフォームの減税制度を利用するためには、工事を行ったあとに自分で申請手続きを行う必要があります。ここでは、申請のタイミングと必要書類について解説します。 工事を行った翌年に確定申告を行う リフォームの減税制度を利用する場合、確定申告を行う必要があります。リフォーム工事の完了日、あるいは工事契約書に記された日付を基準日とし、その翌年の2月中旬~3月中旬にかけて申告しなければなりません。 なお、会社員などの給与所得者であっても、制度を利用するためには自分で確定申告を行う必要があります。ただし、翌年以降は勤務先の年末調整で手続きを済ませられるため、負担が大幅に軽減されます。 ただし、利用するリフォームの減税制度によっては、確定申告以外にも手続きが必要な場合もあります。 例えば、固定資産税のリフォームの減税制度を利用する場合は、工事が完了してから3ヶ月以内にお住まいの都道府県・市区町村に申請する必要があります。 必要書類は工事内容によって異なる リフォームの減税制度を利用するには、リフォーム工事が適用条件を満たしているかを証明するための書類を提出する必要があります。必要書類は利用する制度や工事内容によっても異なりますが、以下のようなものが挙げられます。 確定申告書 登記事項証明書 増改築等工事証明書等 工事請負契約書 住宅ローン残高証明書 住宅耐震改修証明書(耐震リフォームの場合) 介護保険の被保険者証の写し(バリアフリーリフォームの場合) 必要書類のなかには、工事を担当した施工会社に用意してもらう必要がある場合もあります。そのため、国税庁のホームページなどで確認しておくとともに、施工会社にも必要な手続き・書類について相談しておくと安心です。 まとめ リフォームの減税制度にはさまざまなものがあります。各制度の利用条件を確認し、どのリフォームの減税制度を利用できるかを確認することが大切です。 また、リフォームの減税制度を利用するためには、必要書類を整えたうえで確定申告による手続きを行う必要があります。利用条件だけでなく、必要な手続きについても忘れずに調べておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 【令和5年版】リフォームで活用できる補助金の種類と金額の目安 住宅のリフォームを検討する際には、補助金制度の仕組みにも目を向けて計画を立てるのがおすすめです。補助金には全国一律で適用されるものと、自治体ごとに独自で設けられているものがあるので、あらかじ...記事を読む