住まいとお金の知恵袋 一覧(公開日順)

  • リフォーム予定のシニアは約4割、一方で2割が資金に悩む

    リフォーム予定のシニアは約4割、一方で2割が資金に悩む

    60歳を越えると、定年退職や子供の自立など、ライフスタイルが大きく変わる人も少なくないでしょう。自身が所有する住まいについても同様に、設備の故障や経年劣化によって、リフォームを検討する人も多いのではないでしょうか。 そこでこの記事では、持ち家がある60歳以上の男女500名を対象に、リフォームに関するアンケートを実施した調査結果をご紹介します。 詳細はこちら シニアのリフォーム予定は約4割、その半数が費用を200万円未満と想定、資金不足に悩むシニアは約2割!~SBIエステートファイナンスが「シニアのリフォーム」に関するアンケート調査を実施~ 約4割がリフォームを予定している Q. 今、住んでいる物件のリフォームを検討していますか? 「リフォームを予定している」と回答した方は約4割でした。この回答から、60代にもなるとリフォームの必要性を感じる方が多いことがわかります。 Q. 何年後にリフォームを予定していますか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォームの予定時期は「半年以内」が10%、「1年以内」が11%と、1年以内にリフォームを計画している人が約2割いることがわかりました。また、未定が4割であることから、いずれリフォームが必要と考えているが、それほど緊急度の高いリフォームではないことも推察されます。 リフォーム費用は約5割が200万円以下という結果に Q. リフォーム費用はどの程度で考えていますか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォームの費用は、最も多い回答が「100万円以上200万円未満」で30%、「100万円未満」が17%となり、200万円以下のリフォームに留める方が約半数であることがわかりました。このことから、大規模な修繕工事ではなく、最低限の修繕にとどめたリフォームを検討していることが多いことがわかります。 Q. リフォーム費用はどのように準備する予定ですか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォーム費用は、約8割の人が貯金から準備する予定であり、「資産(株、投資信託等)の売却」を足すと9割以上となります。このことから大半の人が保有する資産の中からリフォーム費用を準備することがわかりました。 一方で、リフォームを予定しているが、「ローン」を利用するという人が4%、「当てがない」という人も4%おり、リフォームは必要になると考えているものの、どのようにリフォーム資金を準備するか悩んでいる人も一定数いるようです。 全体の2割近くが資金面を理由にリフォームを予定していない Q. リフォームを予定していない理由はなぜですか?(リフォームを予定していないと回答した方) リフォームを予定していない理由は、「現在の住宅に全く不満がない」という理由が34%でした。また、既にリフォームを実施済の人も25%いることから、リフォームを予定していないシニアの方の約6割はライフスタイルに合った自宅に住んでいることが推察されます。 一方で、リフォームを予定していない理由の中には、「費用がかかりそう」が15%、「費用が用意できない」が15%といったように、資金面で悩みがあることもわかりました。この結果とリフォームを予定しているが資金面で悩んでいる人を足し合わせると、資金面でリフォームに悩んでいる人は回答者全体の約2割となることがわかりました。 まとめ 今回の調査によると、シニア世代のほとんどが貯金などからリフォーム費用を準備する一方で、資金面で悩んでいる人が全体の2割を占めることがわかりました。また、リフォーム費用を低く見積もる方も多く、どれくらいの費用をかければどの程度のリフォームができるかを正しく把握できていない可能性もありそうです。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 シニアがリフォームする際のポイントや間取り事例を紹介 年齢を重ねてくると、購入当時の住まいでは生活のしづらさを感じる場面が増えてくるものです。ライフスタイルに合った住環境を作るために、選択肢の1つとしてリフォームを考えることもあるでしょう。しか...記事を読む

  • 長期優良住宅とは?認定制度の概要やメリット・デメリット、申請手続きの流れを解説

    長期優良住宅とは?認定制度の概要やメリット・デメリットを解説

    住宅を購入しようとするときに、「長期優良住宅」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。長期優良住宅であることで、税制優遇措置や住宅ローンの金利引き下げなどのメリットがあるため、これから住宅を購入するなら選択肢の1つとなります。 この記事では、長期優良住宅の概要やメリット・デメリット、申請手続きの流れについて解説します。 長期優良住宅とは 長期優良住宅とは、長期にわたって良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅です。「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいて、2009年6月から「長期優良住宅認定制度」が開始されました。 背景には「ストック重視の住宅政策への転換」があります。環境負荷の低減や建て替え費用の負担軽減のため、従来の「作っては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして、長く大切に使う」社会への移行を目指しています。 長期優良住宅の認定を受けるには、必要な措置を講じたうえで所管行政庁に申請する必要があります。一度認定を受けたら終わりではなく、工事完了後も維持保全計画に基づく点検などが求められます。 出典)国土交通省「長期優良住宅のページ」 長期優良住宅の認定状況 長期優良住宅の認定戸数の累計は、令和2年度末で120万戸以上(新築と増改築の合計)です。全体の約98%は戸建て住宅が占めています。認定戸数は年間10万戸程度で推移しており、新築戸建ての約4戸に1戸は長期優良住宅の認定を取得しています。 出典)住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について」 長期優良住宅の認定基準 長期優良住宅として認定されるためには、定められている認定基準を満たす必要があります。新築戸建ての主な認定基準をまとめました。 項目認定基準の内容 劣化対策数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できる 耐震性耐震性能が高く、地震の振動に耐えられる 維持管理構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について、維持管理を容易に行うことができる 省エネルギー性断熱性を高めることで冷暖房負荷を軽減できる 居住環境良好な景観の形成、地域における居住環境の維持・向上に配慮している 住戸面積良好な居住水準の確保に必要な規模を有する 保持保全計画将来を見据えて定期的な点検・補修等に関する計画が策定されている 災害配慮自然災害による被害の発生・防止・軽減に配慮されている 「耐震性は耐震等級2以上」「住戸面積は75㎡以上」など、それぞれの項目について一定の基準が設けられています。 共同住宅(マンションなど)については、上記に加えて以下の基準もあります。 項目認定基準の内容 可変性居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能 バリアフリー性共用部分について将来のバリアフリー改修に対応できる 長期優良住宅のメリット 長期優良住宅のメリットは以下のとおりです。 補助金を受けられる 長期優良住宅を取得する際は、「地域型住宅グリーン化事業」の補助金を受け取られます。本事業の採択を受けた中小工務店などが整備する木造住宅を建築することが要件です。 令和4年度の場合、長寿命型の住宅は最大140万円、ゼロ・エネルギー住宅型は最大150万円が補助されます。 出典)地域型住宅グリーン化事業「令和3年度事業からの変更点」 税制優遇措置が設けられている 長期優良住宅の認定を受けた新築住宅には、以下の税制優遇措置が設けられています。 税目優遇措置の内容 所得税控除対象限度額を5,000万円に引き上げ(一般住宅は3,000万円)※ 登録免許税所有権保存登記の税率を0.1%に引き下げ(一般住宅は0.15%) 固定資産税減税措置(1/2に減額)の適用期間を戸建て5年間、マンション7年間に延長(一般住宅は戸建て3年間、マンション5年間) 不動産取得税課税標準からの控除額を1,300万円に増額(一般住宅は1,200万円) 住宅ローン減税は2023年12月31日までの入居、その他は2024年3月31日までの入居が要件です。 出典)住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について」 フラット35の金利が下がる 住宅金融支援機構のフラット35Sが適用されると、フラット35の借入金利から年0.25%引き下げられます。金利引き下げ期間は住宅の技術基準レベルによって異なり、Aプランが当初10年間、Bプランが当初5年間です。 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】S」 地震保険料の割引がある 長期優良住宅は、住宅の耐震性に応じて地震保険料の割引を受けられます。耐震等級を有している建物の場合、割引率は耐震等級2が30%、耐震等級3が50%です。免震建築物の割引率は50%となっています。 出典)住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について」 長期優良住宅のデメリット 一方で、長期優良住宅には以下のようなデメリットもあります。 認定を受けるために費用がかかる 長期優良住宅は、認定を受けるための費用がかかります。具体的には、図面・計算書の書類作成費用や認定申請手数料、申請代行費用などです。所管行政庁や建築会社によって費用は異なるため、いくらかかるかを事前に確認しておきましょう。 一般住宅より建築コスト高い 長期優良住宅は、耐震性や省エネルギー性などの認定基準を満たなくてはなりません。品質の高い材料を使ったり、基準を満たす設計を行ったりする必要があるため、一般住宅よりも建築コストは高い傾向にあります。 住宅の維持保全に手間がかかる 長期優良住宅は、工事完了後に計画的な点検の実施、適切な補修・改良、記録の保存などが必要です。10年に一度の定期点検などを怠った場合、認定を取り消される場合もあります。 長期優良住宅の認定手続きの流れ 長期優良住宅の認定手続きの流れは以下のとおりです。 認定基準を満たすように設計を行う 登録住宅性能評価機関に審査を依頼する 必要書類を準備して所管行政庁に認定申請をする 認定通知書が届く(着工開始) 認定申請は着工前までに行う必要があります。申請手続きは施行事業者が代理で行うことも可能です。工事完了後は維持保全計画書に基づいて定期的に点検を実施し、必要に応じて調査・修繕・改良を行います。 まとめ 長期優良住宅は長期にわたって快適に住み続けることができ、取得する際は補助金や税制優遇制度、住宅ローンの金利引き下げなどを受けられます。一方で、建築コストが比較的高く、維持保全に手間がかかるというデメリットもあります。メリット・デメリットを比較したうえで、長期優良住宅の取得を検討しましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 低炭素住宅とは?認定基準、メリット・デメリットを解説 環境問題への意識の高まりから、マイホームの建築・購入の際に「低炭素住宅」を選ぶ人が増えています。環境にやさしい住宅であり、税制優遇を受けることもできますが、認定を受ける際の注意点もあります。...記事を読む

    2022.07.06制度
  • マンション管理適正評価制度とは?仕組みや評価項目、メリット・デメリットを解説

    マンション管理適正評価制度とは?メリット・デメリットを解説

    2022年4月から「マンション管理適正評価制度」が開始されました。本制度は適切に維持管理されているマンションが、市場で評価されるための新たな仕組みです。同じ時期に国の「マンション管理計画認定制度」も開始されましたが、どのような違いがあるのでしょうか。 この記事では、マンション管理適正評価制度の仕組みやメリット・デメリット、マンション管理計画認定制度との違いについて解説します。 マンション管理適正評価制度とは マンション管理適正評価制度とは、2022年4月に開始された、マンションの管理状態や管理組合運営の状態を評価する仕組みです。 日本国内で築年数の古いマンションが増加傾向にあり、維持管理に課題を抱えています。このようなマンションの老朽化抑制や、維持管理の適正化を図るため、一般社団法人マンション管理業協会が不動産関連団体と協力して、全国共通の評価基準を創設しました。マンション管理適正評価制度ではマンションの状態が6段階で評価され、評価結果は毎年更新されます。 なお、国土交通省の資料によると、令和2年末で築40年超のマンションは103.3万戸です。10年後には約2.2倍の231.9万戸、20年後には約3.9倍の404.6万戸に増加すると見込まれています。 出典) ・国土交通省「築後30、40、50年超の分譲マンション戸数」 ・一般社団法人マンション管理業協会 マンション管理適正評価制度の評価項目 マンション管理適正評価制度では、マンションの管理状態を5つのカテゴリーに分類し、30項目について評価します。カテゴリーと各評価項目は下表のとおりです。 カテゴリー評価項目 管理体制(20ポイント)管理者の設置総会の開催、議事録の作成

    2022.06.29制度
  • 都市計画法とは?概要や定められている内容を解説

    都市計画法とは?概要や定められている内容を解説

    都市計画法は、街づくりのルールを定めた法律です。都市の開発や利用に関するルールを設けることで、快適な都市生活を送れることは理解できるかもしれません。しかし、法律でどのような事項が定められているかはよくわからないのではないでしょうか。 この記事では、都市計画法の概要や定められている内容についてわかりやすく解説します。 都市計画法とは 都市計画法とは、都市計画に必要な事項について定めている法律です。都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため、土地利用や都市施設の整備、市街地の開発などに関するルールが設けられています。 都市計画法第1条では、本法律の目的を以下のように定めています。 この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。 出典)都市計画法 第1条(e-Gov法令検索) 都市計画法の構成と概要 都市計画法の構成は以下のとおりです。併せて概要も紹介します。 総則(第一章) 都市計画法の目的、基本理念、国・地方公共団体や住民の責務、用語の定義が主な内容です。都市機能を確保するために、適正な制限のもとに合理的な土地利用を進めることを基本理念としています。 国・地方公共団体には都市計画の適切な遂行に努めること、住民には目的達成に協力することを求めています。 都市計画(第二章) 都市計画の内容や決定・変更に関する内容です。都市計画に定められる区域区分の詳細や都市施設などが説明されています。都市計画は都道府県や市町村が定めるとしており、計画の決定や変更に必要な手続きについても決められています。 都市計画制限等(第三章) 開発行為や特定地域内における建築などの規制に関する内容です。無秩序に開発や建築が行われることがないように、土地利用の制限について詳細に定められています。また、開発行為や建築の許可を受けなくてはならない基準なども説明されています。 都市計画事業(第四章) 都市計画事業の認可や施行に関する内容です。誰が事業の認可を行うのか、認可や施行に必要な手続きなどについて定められています。 その他(第五章~第九章) 都道府県や市町村が施設設備予定者と締結する都市施設等設備協定、市町村長が指定できる都市計画団体の内容について定められています。また、都市計画に関する審議会や立入検査、罰則に関する説明もあります。 都市計画法で定められている主な内容 都市計画法で定められている主な内容を、大きく2つに分けて解説します。 ①土地の区分に関する内容 都市計画法では、日本の国土を「都市計画区域」と「準都市計画区域」に分類しています。 都市計画区域は、都市として総合的に整備・開発が行われる地域のことです。原則として、都道府県が都市計画法に基づいて指定します。都道府県や市町村が策定した都市計画に基づき、都市施設の整備などが進められます。なお、2023年3月31日時点では、国土の約27%が都市計画区域に指定されており、全人口の約95%は都市計画区域内に居住しています。 「市街化区域」と「市街化調整区域」の違い 都市計画法では、無秩序な開発を防止し、計画的な市街化を図るため、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分しています。どちらにも区分されていない地域を「非線引き区域」といいます。 市街化区域では、優先的かつ計画的に市街化が行われます。一方で、市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域と位置付けられており、原則として開発行為は禁止されています。 図:都市計画法による土地区分 ※筆者作成 市街化区域内に指定される用途地域 都市計画区域内の土地を利用目的によって区分し、建築物などのルールを決めて地域地区を指定しています。地域地区にはさまざまな種類がありますが、代表的なものが「用途地域」です。 市街化区域では、必ず用途地域を定めることになっています。大きく「住居地」「商業地」「工業地」の3つに区分したうえで、13種類の用途地域を定めています。各用途地域では建築物の用途や容積率、建ぺい率、高さなどが規制されており、これに反する建物は建築できません。 関連記事はこちら「用途」からみた土地の種類 ②都市施設・市街地開発事業に関する内容 都市施設とは、都市生活者の利便性向上や良好な都市環境の確保のために必要な施設です。具体的には、「道路」「公園」「ごみ焼却場」「下水道」などが該当します。都市計画で都市施設の整備が決定され、その区域内に建築規制が及びます。 市街地開発事業とは、市街地を面的・計画的に開発する事業のことです。土地収用や換地といった手法により、宅地や公共施設の整備などが行われます。代表的な事業の種類に「土地区画整理事業」「市街地再開発事業」などがあります。 都市施設の整備や市街地開発事業は都市計画によって決定され、その区域内に建築規制が及ぶことになります。 都市計画区域・準都市計画区域における開発許可 都市計画区域や準都市計画区域では、無秩序な開発を防ぎ、計画的かつ持続可能な都市の発展を図るために、開発行為には都道府県知事や市長の許可が必要です。この許可制度は、地域の自然環境や住民の生活環境を守る上で非常に重要な役割を果たしています。 開発行為の定義 都市計画法第4条第12項で定めている開発行為は以下のとおりです。 建築物の建築 第1種特定工作物(コンクリートプラント等)の建設 第2種特定工作物(ゴルフコース、1ha以上の墓園等)の建設を目的とした「土地の区画形質の変更」 出典)国土交通省「開発許可制度の概要」 第1種特定工作物とは、周辺の地域の環境の悪化をもたらす恐れがある工作物のことをいいます。また、第2種特定工作物とは、ゴルフコースや大規模な野球場や遊園地、墓地などで、建設に許可手続きが必要になります。 開発許可の規制対象規模 開発行為における規制の対象規模は、その地域によって異なります。(都市計画法第22条第2項、都市計画法施行令第19条) 詳細は下図のとおりです。 出典)国土交通省「開発許可制度の概要」 なお、図書館や公民館等の公益上必要な建築物のうち周辺の土地利用上支障がない建築を行う場合や、土地区画整理事業等の施行として行うものは規制の対象外となります。 出典)都市計画法第29条(e-Gov法令検索) 開発許可の基準 開発許可の基準には、2つの基準があります。 ・技術基準(都市計画法第33条) ・立地基準(都市計画法第34条) 技術基準は道路・公園・給排水施設等の確保、防災上の措置等に関する基準です。地方公共団体の条例で、一定の強化又は緩和、最低敷地規模に関する制限の付加が可能です。 それに対して、立地基準は市街化調整区域にのみ適用されます。市街化を抑制すべき区域であることから、許可できる開発行為を限定しています。例えば、次のようなものが挙げられます。 イ 周辺居住者の利用の用に供する公益上必要な施設又は日用品店舗等日常生活に必要な施設の用に供する目的で行う開発行為(第1号)ロ 農林水産物の処理、貯蔵、加工のための施設の用に供する目的で行う開発行為(第4号) ハ 地区計画等の内容に適合する開発(第10号) ニ 市街化区域に近隣接する一定の地域のうち、条例(開発許可権者が統轄す地方公共団体が定める。以下同じ。)で指定する区域において、条例で定める周辺環境の保全上支障がある用途に該当しない建築物の建築等を目的とする開発行為(第11号) ホ 開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として、条例で区域、目的等を限り定めたもの(第12号) へ 開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為で、あらかじめ開発審査会の議を経たもの(第14号) 出典) ・都市計画法第33条、34条(e-Gov法令検索) ・国土交通省「開発許可制度の概要」 開発許可の手続きの流れ 開発許可申請の流れでは、事業者は計画書を提出し、地域の住民や関係機関からの意見も考慮されることが一般的です。 国土交通省や都道府県のWebサイトでは詳細な図が掲載されています。例えば、東京都の開発許可手続きの詳細は、都の都市整備局の資料に記載されています。 出典)東京都都市整備局「2. 開発許可の手続等」P.22 地域特性に基づく街づくり 都市計画とマスタープラン マスタープランとは、「長期的視点にたった都市の将来像を明確にし、その実現にむけての大きな道筋を明らかにするもの」とされています。都市計画法に基づき、都道府県が都市計画区域マスタープランを策定しています。 法定の都市計画マスタープランには2つの種類があります。 ・都市計画区域の整備・開発及び保全の方針(区域マスタープラン…都市計画法第6条の2) 都市計画区域や複数の都市計画区域を対象とし、都市計画の目標、区域区分の有無、主要な都市計画の決定方針等を定めるもの。 ・市町村の都市計画に関する基本的な方針(市町村マスタープラン…都市計画法第18条の2) 市町村の区域を対象とし、より地域に密着した見地から、その創意工夫の下に、市町村の定める都市計画の方針を定めるもの。 なお、都市計画区域内の都市計画は、マスタープランに即したものである必要があります。 市町村マスタープランは、市町村が属する都市計画区域マスタープランと市町村議会の議決を経た基本構想に即したものとなっています。 出典)都市計画マスタープラン リンク集 地区計画とは 地区計画とは、それぞれの地区の特性に応じて、良好な都市環境を形成するために定められる地区レベルの都市計画です。住民の意見を反映し、その地区独自の街づくりのルールを細かく定めます。地区計画で定められるルールは以下のとおりです。 地区施設の配置(生活道路、公園など) 建築物の規制(用途、容積率、建ぺい率など) 緑地の保全 地区計画は市町村が条例に基づき、土地所有者などに意見を求めて作成します。 出典) ・国土交通省 「土地利用計画制度 都市計画法制」P.11 ・東京都都市整備局「地区計画とは」 まとめ 都市計画法のおかげで無秩序な開発行為が行われることなく、都市の計画的な整備を進めることができます。不動産に関する基礎知識として、都市計画法の概要を理解しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 市街化区域とは?市街化調整区域との違いを解説 住宅や土地の購入を検討している中で、「市街化区域」「市街化調整区域」という言葉を聞くことはないでしょうか。 どちらも都市計画法で定められた地域で、土地の使いみちや建築できる建物に制限がありま...記事を読む

    2022.06.22制度
  • 土地区画整理事業とは?概要や仕組み、事業の流れをわかりやすく解説

    土地区画整理事業とは?仕組みや事業の流れをわかりやすく解説

    土地区画整理事業は、住みやすい街づくりのために宅地や公共施設を整備する手法の一つです。言葉は聞いたことがあっても、実際にどんなことが行われるかはよくわからないのではないでしょうか。 この記事では、土地区画整理事業の概要や仕組み、事業の流れについて解説します。 土地区画整理事業とは? 土地区画整理事業とは、都市計画区域内で行われる市街地整備の代表的な手法の一つです。道路や公園などの公共施設と宅地の総合的な整備が可能となります。土地区画整理法では、土地区画整理事業を以下のように定義しています。 「土地区画整理事業」とは、都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るため、この法律で定めるところに従って行われる土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業をいう。 出典)土地区画整理法 第二条(e-Gov法令検索) 古い市街地は道路が狭く、複雑に入り組んで、境界線が曖昧になっているところがあります。下図のように、土地区画整理事業によって整備することで、快適で住みやすい街に生まれ変わります。 出典)小樽市「土地区画整理事業」 なお、土地区画整理事業はさまざまな場面で活用されており、施行面積は2020年3月末現在で約37万haとなっています。これは、東京23区面積の約6倍にもわたる面積です。 出典)公益社団法人 街づくり区画整理協会「土地区画整理事業とは」 土地区画整理事業の仕組み 土地区画整理事業では、道路や公園などが整備されていない区域の地権者から少しずつ土地を提供してもらい、公共用地に充てます。提供してもらった土地を売却し、移転や整備といった事業資金の一部に充当します。 地権者の宅地は、新たな区画に合わせて再配置されます。減歩で面積は減少しますが、地形や形状の改善によって従前の土地に見合う評価を得られます。なお、不均衡が生じる場合は金銭(清算金)で調整されます。 出典)成田市「区画整理のしくみ」 主な区画整理の用語 区画整理の仕組みを理解するために、主な用語の意味を確認しておきましょう。 保留地(ほりゅうち) 土地区画整理事業で整備された宅地のうち、施行者が換地と定めない宅地のことです。施行者は保留地を売却して事業資金の一部に充当します。 減歩(げんぶ) 土地区画整理事業のために地権者が土地の一部を提供することです。減歩には「公共減歩」と「保留地減歩」の2つがあります。公共減歩は公共施設の整備、保留地減歩は事業資金に充てるための減歩です。 換地(かんち) 土地区画整理事業で公共施設などが整備された後に、従前の土地に対して新しく置き換えられた土地のことです。 仮換地(かりかんち) 仮換地指定によって、区画整理前の土地から使用収益権が移行した土地のことです。建物の建築が可能で、通常はそのまま換地となります。 事業の施行者 土地区画整理事業では、以下6者が施行者になれます。 施行者定めるもの同意認可 個人施行規約全員同意知事の認可 組合施行定款2/3以上の同意知事の認可 会社施行基準議決権の過半数2/3以上の同意知事の認可 地方公共団体施行施工規程土地区画整理審議評議会評価員知事または国土交通大臣の認可 国土交通大臣施行 都市再生機構等施行 出典)公益社団法人 街づくり区画整理協会「土地区画整理事業とは」 国や地方公共団体だけでなく、宅地所有者または借地権者である個人、その個人が共同で設立した組合が施行者となることも可能です。ただし、規約や定款を定めたうえで、施行地区内の土地所有者の同意や知事の認可を得る必要があります。 事業の費用負担 土地区画整理事業に必要な費用は、保留地の売却によって賄われます。また、国からの補助金や地方公共団体の助成金、公共施設管理者負担金も活用されます。 公共施設管理者負担金とは、公共減歩された土地の用地費相当額について地方公共団体などの施設管理者に負担を求めるものです。 土地区画整理事業で期待できる効果 土地区画整理事業では以下のような効果が期待できます。 地域のコミュニティがそのまま生かされる 安全で快適な道路に生まれ変わる 公園が確保される(子どもの遊び場、憩いの場) 宅地が利用しやすくなる(形が整う、境界が明確になる) 上下水道、ガスなどのインフラ施設を一体的に整備できる 整備前の権利を保全しながら事業を行うので、地域のコミュニティを維持しながら、宅地や道路をより使いやすい形に整備できます。公園などの公共施設が確保され、インフラ施設も一体的に整備されるため、治安の向上や災害の防止・被害軽減などにつながります。 土地区画整理事業の流れ 土地区画整理事業の流れは以下のとおりです。 企画・調査 都市計画決定 事業計画 換地設計 仮換地指定 移転補償・工事 換地処分・登記 清算 施行者は住民参加の機会なども作りながら企画・調査を進め、土地区画整理事業を都市計画として定めます。設計内容や施行期間、資金計画などをまとめて、都道府県知事などに事業認可を申請します。 認可を得たら換地設計を行い、工程にあわせて仮換地の指定をして地権者に通知します。地権者と補償契約を締結し、地権者は期日までに建物の移転を行います。 換地処分によって従前地の権利が換地へ移行し、清算金の額などが確定すると、施行者が一括して全宅地の登記を行います。換地について不均衡が生じる場合は、清算金の徴収・交付によって調整します。 関連記事はこちら都市計画法とは?概要や定められている内容を解説 まとめ 土地区画整理事業で道路や公共施設、宅地が整備されることで、より快適で安全な街に生まれ変わります。お住まいの地域で土地区画整理事業の実績や実施状況、予定を知りたい場合は地方公共団体のホームページなどで確認してみましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 市街化区域とは?市街化調整区域との違いを解説 住宅や土地の購入を検討している中で、「市街化区域」「市街化調整区域」という言葉を聞くことはないでしょうか。 どちらも都市計画法で定められた地域で、土地の使いみちや建築できる建物に制限がありま...記事を読む

    2022.06.15制度
  • シニアが住み替える際の4つのポイント

    シニアが住み替える際の4つのポイント

    シニア世代は、子どもの独立や退職などをきっかけに生活環境が大きく変化します。今住んでいる家がライフスタイルに合わなくなると、将来を見据えて住み替えを検討することもあるでしょう。 この記事では、シニアが住み替える際に確認しておきたいポイントを4つ紹介します。 住み替えの目的を明確にする まずは住み替えの目的を明確にすることが大切です。シニアはどんなきっかけで住み替えを考えるのでしょうか。「エリア」「設備」「趣味・嗜好」の3つの観点から、シニアが住み替える目的を確認していきましょう。 エリア 居住エリアの変更を希望する場合は、「子どもと同居、近居したい」「利便性を向上させたい」といった場合が考えられます。 子ども世帯の近隣に住み替えることで、子どもや孫と支えあいながら楽しく暮らせます。また、スーパーや医療機関、公共交通機関などが充実しているエリアに住み替えれば、老後も不自由なく暮らせるでしょう。 設備 「建物や設備の経年劣化により長く住み続けるのが難しい」「バリアフリー化したい」といった理由で住み替えを検討するケースです。 住み替えることで建物や設備が新しくなり、バリアフリー化もできます。ただし、今住んでいる家の建て替えや「リフォームで対応することができないのか」改めて考えてみるといいでしょう。 趣味・嗜好 「趣味の読書や映画、音楽を楽しみたい」「一年中ゴルフをして過ごしたい」「スローライフを満喫したい」など、趣味・嗜好で住み替えを検討する場合も考えられます。戸建てやマンションだけでなく、高齢者向け住宅などの様々な住まいの候補があります。それぞれメリット・デメリットがあるので、後悔がないように物件を選定するといいでしょう。 より快適な老後を過ごすには、住環境を整える必要があります。自分の好みに合った家に住み替えることで、毎日を楽しく快適に過ごすことができるでしょう。 余裕を持った資金計画を立てる シニアが住み替えを成功させるには、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。具体的には以下の点を確認しましょう。 総資産額を把握して住み替え予算を決定する まずは手元にある資産や負債を把握して、住み替えの予算を決定します。 資産は預貯金のほかに自宅の売却価格、株や保険などの金融商品も確認しましょう。自宅の売却価格は住み替えの進め方や売却方法によって変わってくるため、保守的に見積もることが大切です。 負債は住宅ローンやその他の借入があるかを確認します。資産から負債を差し引いた金額が、現時点で手元にある本当の資産(純資産)となります。 借入可能額を見積もる 資金調達を利用する場合は、いくらまで借りられるかを見積もりましょう。 シニアの場合、年齢や収入によって利用できるローン商品が変わってきます。通常の住宅ローンは審査が通りにくく、借りられたとしても長期のローンを組むのは難しいでしょう。高齢者向け住宅ローンの「リ・バース60」も選択肢として検討を進めるといいでしょう。 関連記事はこちらリ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 預貯金として残す金額を決める 資産や負債、借入可能額がわかったら、預貯金として残す金額を決めます。年金だけで生活するのが難しい場合、預貯金は生活費を補う重要な財産となります。急にまとまった出費が生じる可能性もあるので、預貯金は多めに確保しておきましょう。 無理のないキャッシュフローにする 住み替え前と住み替え後でキャッシュフローは異なるケースが多いでしょう。借入を利用する場合は、毎月の返済が増え、マンションに住み替える場合は、毎月管理費・修繕積立金がかかります。住み替え後のキャッシュフローができるだけプラスになるか、手元の預貯金で賄えるかなどの視点から、無理のない収支計画を立てましょう。 賢く手段を選んで自宅を売却する シニアが住み替えを成功させるには、自宅をどのように売却するかも重要です。自宅の売却方法は、「買い先行」と「売り先行」の2つがあります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った方法を選択しましょう。 買い先行で住み替える 買い先行は、新居を購入してから自宅を売却する方法です。空室にしてから売却するので、内覧希望者に対応しやすく、高値で売却できる可能性があります。 ただし、今の住宅ローンを残したまま新居のローンを組むのは難しいため、資金に余裕がある人に向いています。 買い先行は「市街化区域外」「旧耐震」「再建築不可」「既存不適格」「借地権」「郊外」「マンションの1階」など、売りづらい物件に住んでいる場合は要注意です。自宅の売却に時間がかかると手元資金が不足する恐れがあります。 売り先行で住み替える 売り先行は、自宅を売却してから新居を購入する方法です。住み替え資金を確保しやすく、新居のローンを組みやすいので、資金に余裕がない場合は売り先行が向いています。 ただし、売り先行は新居に引っ越しするまでの仮住まいを確保しなくてはなりません。また、新居の購入スケジュールによっては早期に売却しなくてはならないため、買い先行に比べると自宅の売却価格が安くなりがちです。 少しでも高く売るために「仲介」で売却するのか、確実に売却するために「業者買取」を利用するのかを判断する必要があります。 目的に合った物件を選定する 資金計画や自宅の売却方法が決まったら新居を探します。目的に対応する物件を選ぶ際は、以下の点を意識するといいでしょう。 持ち家か賃貸か シニアの住み替えでは、持ち家だけでなく賃貸物件も選択肢となります。 持ち家は間取りなどの選択肢が広く、いざというときに有効活用できるのがメリットです。「売却する」「物件を担保に融資を受ける」などの方法で、まとまった資金を確保できます。 賃貸は毎月家賃がかかりますが、自宅の処分やローンを考慮せずに引っ越しができ、相続トラブルを回避しやすいのがメリットです。ただし、オーナーによっては高齢であることを理由に入居を断られる場合もあるので、老人ホームや高齢者向け賃貸住宅から選ぶといいでしょう。 戸建てかマンションか 住み替えの目的によって、戸建てとマンションのどちらが向いているかは変わってきます。 たとえば、子ども世帯と同居するなら間取りの自由度が高い戸建て、将来の売却や相続を考慮するなら売却しやすいマンションがよいかもしれません。目的に応じて、どちらがよいかを見極めましょう。 都市部か郊外か 都市部と郊外では、住環境が大きく異なります。都市部は生活に便利な設備がそろっていますが、物件価格や家賃は高い傾向にあります。一方、郊外は静かな環境で穏やかに暮らせますが、インフラ整備などの状況など生活するには不便な場所もあります。 都市部と郊外のどちら選ぶにせよ、売却しやすい物件に住み替えることを意識しましょう。 予算を超えたら? 条件に合致する土地や物件が見つかっても、予算を超えてしまうかもしれません。その場合は以下のような選択肢があります。 建て替え・リフォームに切り替える エリアを変える ダウンサイジングする 老後資金不足を招く恐れがあるため、予算を超える場合は住み替えを見送るのが無難です。住み替えにこだわらず、建て替えやリフォームで住環境を改善する方法もあります。 どうしても住み替えたい場合は、エリア変更やダウンサイジング(より小さな家への住み替え)を検討しましょう。 まとめ シニアが住み替えをする場合は、目的をはっきりさせたうえで資金計画を立てることが大切です。また、自分にあった売却方法や物件を選ぶことも重要なポイントとなります。快適なシニアライフを過ごすために、必要に応じて住み替えを検討しましょう。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住み替えの方法と成功させるポイント 持ち家に住んでいても、転勤や家族構成の変化などのライフスタイルの変化などを理由に住み替えを検討することがあるでしょう。 住み替えは新居の購入や自宅の売却、住宅ローンの手続きなど、同時に進めな...記事を読む

  • 生産緑地とは?制度概要やメリット・デメリット、2022年問題について解説

    生産緑地とは?制度のメリット・デメリットと2022年問題を解説

    生産緑地は、良好な生活環境を確保するために自治体が指定する農地です。生産緑地には「2022年問題」があり、今後の不動産価格に影響を与える可能性があります。住宅や賃貸不動産などの売買を検討している場合は、生産緑地について理解しておくことが大切です。 この記事では、生産緑地の制度概要やメリット・デメリット、2022年問題について詳しく解説します。 生産緑地とは 生産緑地とは、1992年の改正生産緑地法によって制定された農地のことです。無秩序な開発によって緑地が減少すると、住環境の悪化や土地機能の低下、災害発生などの恐れがあります。 そのため、良好な生活環境の確保に効用がある農地を「生産緑地地区」として都市計画に定め、都市部にある農地の計画的な保全を図っています。生産緑地には固定資産税などの税制優遇がある一方で、土地利用にさまざまな規制が設けられています。 国土交通省の調査によれば、2020年3月31日現在、全国の生産緑地は12,332.3haです。その半分以上を関東が占めており、首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)や愛知、大阪といった都市部に集中しています。 出典)国土交通省「令和2年都市計画現況調査(生産緑地地区)」 生産緑地の指定要件 市街化区域内にある農地で、以下3つの要件に当てはまるものを生産緑地に指定できます。 良好な生活環境の確保に相当の効果があり、公共施設等の敷地に供する用地として適しているもの 500㎡以上の面積 農林業の継続が可能な条件を備えているもの 自治体が都市計画を決定し、生産緑地地区を定めます。 出典)国土交通省 都市局 公園緑地・景観課 生産緑地のメリット 生産緑地のメリットは以下のとおりです。 固定資産税が軽減される 生産緑地に指定されると、固定資産税が軽減されます。固定資産税における農地区分は以下4つで、評価方法や課税方法が異なります。 農地区分評価方法課税方法 一般農地農地評価農地課税 市街化区域農地生産緑地地区農地農地評価農地課税 一般市街化区域農地宅地並評価農地に準じた課税 特定市街化区域農地宅地並評価宅地並課税 生産緑地は、固定資産税の評価や課税の取り扱いは一般農地と同様です。農林水産省の資料によれば、10aあたりの税額は一般市街化区域農地が数万円、特定市街化区域農地が数十万円であるのに対し、生産緑地は数千円に抑えられています。 出典)農林水産省「農地の保有に対する税金(固定資産税)」 相続税の納税が猶予される 農業を営んでいた者から生産緑地を相続し、その生産緑地で農業を続ける場合は相続税の納税が猶予されます。亡くなるまで一生農業を続けた場合は、猶予されていた相続税は免除となります。 ただし、あくまでも猶予である点に注意が必要です。「途中で農業をやめる」など納税猶予の要件を満たさなくなると、猶予されていた相続税に加えて、猶予期間に応じた利子税を納めなくてはなりません。 生産緑地のデメリット 生産緑地には以下のようなデメリットもあります。 30年間の営農義務が生じる 生産緑地に指定されると、30年間の営農義務が生じます。長期にわたって継続的に、農地として維持管理を行わなくてはなりません。また、生産緑地であることがわかるように掲示する必要もあります。 指定から30年経過後または主たる従事者の死亡・身体故障が生じた場合は、自治体に対して買取り申出が可能です。 行為の制限がある 生産緑地には行為の制限があり、建物の増改築や宅地の造成、土石の採取などを自由に行うことはできません。「公共施設の設置・管理に係る行為」「非常災害のために必要な行為」といった例外はありますが、基本的には自治体の許可が必要になります。 無断で開発行為をすると生産緑地の指定が取り消され、税制優遇を受けられなくなる恐れがあります。 出典)国土交通省 都市局 公園緑地・景観課 生産緑地の2022年問題とは 生産緑地の2022年問題とは、大量の生産緑地が2022年に指定解除されることで地価暴落の可能性があることです。 現在の生産緑地は1992年に一斉に指定されており、2022年に約8割の生産緑地が指定から30年を経過します。指定解除された生産緑地が宅地化されて大量に供給されることにより、地価暴落の発生が懸念されています。 ただし、この2022年問題に対応するため、2017年に生産緑地法は改正されています。主な改正内容は以下のとおりです。 面積要件を条例で300㎡まで引き下げ可能 行為の制限を緩和 特定生産緑地制度の導入 面積要件引き下げにより、これまで要件を満たさなかった小規模農地も生産緑地に指定可能となりました。また、一定の要件を満たす販売施設や農家レストランの設置も認められます。この法改正により、農地所有者の営農意欲や収益性の向上が期待できます。 所有者の意向をもとに、自治体が「特定生産緑地」として指定できる制度も導入されました。特定生産緑地に指定されると、買取り申出ができる期間が10年延期されます。10年経過後は、あらためて所有者の同意を得たうえで繰り返し10年の延長が可能です。 上記の対応により、2022年問題の影響緩和が期待できます。2022年4月時点で地価暴落は発生していませんが、今後の不動産価格の動向を注視する必要はあるでしょう。 出典)国土交通省 生産緑地制度 まとめ 生産緑地は税制優遇措置を受けられる一方で、30年間の営農義務や行為の制限が課されています。法改正により2022年問題の影響緩和が期待できますが、不動産価格への影響は不透明な部分もあります。不動産を売買する予定がある場合は、不動産価格の動向を確認しておきましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 都市計画法とは?概要や定められている内容を解説 都市計画法は、街づくりのルールを定めた法律です。都市の開発や利用に関するルールを設けることで、快適な都市生活を送れることは理解できるかもしれません。しかし、法律でどのような事項が定められてい...記事を読む

    2022.06.01制度
  • 市街化区域とは?市街化調整区域との違いを解説

    市街化区域とは?市街化調整区域との違いを解説

    住宅や土地の購入を検討している中で、「市街化区域」「市街化調整区域」という言葉を聞くことはないでしょうか。 どちらも都市計画法で定められた地域で、土地の使いみちや建築できる建物に制限があります。マイホームを購入してから後悔しないように、各区域の特徴を理解しておくことが大切です。 この記事では、市街化区域の概要や市街化調整区域の違いについて解説します。 市街化区域とは? 市街化区域とは、都市計画法で分類されている都市計画区域の1つです。都市計画区域は以下の3種類があります。 住宅を建てる際の制約が少ない 生活インフラが整っている 売却しやすい 都市計画税がかかる 市街化区域は、基本的に住宅を自由に建てることが可能です。電気や水道、交通といった生活インフラも整っているため、需要が高く、売却しやすい特徴があります。 一方で、市街化区域内に住宅(土地・家屋)を所有すると都市計画税がかかります。1月1日現在で住宅を所有している人が対象です。税額は「課税標準額×0.3%」で、固定資産税と併せて課税されます。 用途地域とは? 用途地域とは、市街化地域内の土地の用途を13種類に区分し、建築できる建物や規模などを制限するものです。大きくは「住居系」「商業系」「工業系」の3つに分けられます。各用途地域の特徴は以下のとおりです。 区分用途地域概要 住居第一種低層住居専用地域低層住宅のための地域。小規模な店舗兼用住宅、小中学校などが建てられる 第二種低層住居専用地域主に低層住宅のための地域。小中学校、150㎡以下の店舗などが建てられる 第一種中高層住居専用地域中高層住宅のための地域。病院や大学、500㎡以下の店舗などが建てられる 第二種中高層住居専用地域主に中高層住宅のための地域。病院や大学、1,500㎡以下の店舗などが建てられる 第一種住居地域住居の環境を守るための地域。3,000㎡以下の店舗やホテルなどは建てられる 第二種住居地域主に住居の環境を守るための地域。店舗やホテル、カラオケボックスなどは建てられる 準住居地域国道や幹線道路と調和した住居の環境を守るための地域。 田園住居地域農地や農業関連施設と調和した住居の環境を守るための地域。 商業近隣商業地域周辺住民が日用品の買い物などをするための地域。住宅や店舗、小規模工場なども建てられる 商業地域銀行や映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域。住宅や小規模工場も建てられる 工業準工業地域主に軽工業の工場や施設が立地する地域。環境悪化のおそれがある工場以外はほぼ建てられる 工業地域どんな工場でも建てられる地域。住宅や店舗は建てられるが、学校や病院などは建てられない 工業専用地域どんな工場でも建てられる、工場のための地域。住宅や店舗、学校などは建てられない 市街化調整区域とは? 市街化調整区域は、都市計画法では「市街化を抑制すべき区域」と定義されています。原則として開発行為や都市施設の整備は行われず、基本的に住宅は建てられません。すでに建築されている物件の購入後のリフォームや、建て替えをする場合も自治体の許可が必要です。 市街化調整区域であっても、自治体によっては開発行為が一部認められるケースもあります。 市街化調整区域の特徴 市街化調整区域の主な特徴は下記のとおりです。 価格が割安な傾向にある 固定資産税が低い 都市計画税がない 建て替え、増改築などが制限される インフラ整備が進んでいないことがある 売却しにくい 住宅ローンが借りづらい 市街化調整区域は、市街化区域に比べると価格が安く、固定資産税が低い傾向にあります。都市計画税は課税されないため、取得費用や維持費用の軽減が期待できます。 一方で、住宅の建て替えや増改築を行うには自治体の許可が必要になるなどの制限があります。また、周辺のインフラ施設の整備が進んでおらず、生活するには不便を感じるかもしれません。このような事情から売却しにくく、住宅ローンを借りづらい傾向にあります。 非線引き区域とは? 非線引き区域は、都市計画法では「区域区分が定められていない都市計画区域」と定義されています。区域区分が定められていないため、土地利用の制限が緩いのが特徴です。ただし、自治体が土地利用方針を策定しているケース もあります。 出典)成田市「非線引き都市計画区域における土地利用方針」 非線引き区域の特徴 非線引き区域の特徴は以下のとおりです。 土地利用の制限が緩い 用途地域が指定されていることもある インフラ整備が進んでいないことがある 地域住民が望まない土地利用の恐れがある 売却しにくい 住宅ローンが借りづらい 非線引き区域は制限が緩いため、基本的には自由に土地利用が可能です。ただし、市街化地域と同じように用途地域が指定されていることもあります。 市街化区域とは異なり、積極的に開発行為や都市施設の整備が進められる地域ではないため、インフラ整備が進んでいない可能性があります。また、規制が緩い分、地域住民が望まない形で土地が利用される恐れがあるのもデメリットです。 このような事情から市街化調整区域と同様に売却しにくく、住宅ローンを借りづらい傾向にあります。 区域区分や用途地域の調べ方 区域区分や用途地域は、自治体のホームページで確認できます。住所を指定すると、その区域の詳細がわかる地図情報を提供している自治体もあります。 担当部署(例:都市計画課)に問い合わせて教えてもらうことも可能です。 住宅や土地を売買する際は、不動産業者に確認してもらうのも一つの方法です。 出典)成田市「都市計画情報(なりた地図情報等)について」 まとめ 住宅や土地を売買する場合、市街化区域であればスムーズに取引できます。マイホームの購入を予定しているなら、物件が市街化区域内にあるかを確認しておきましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む

    2022.05.25用語
  • 住宅の瑕疵保険とは?必要性や種類、メリット・デメリットを解説

    住宅の瑕疵保険とは?保険の仕組みや種類について解説

    自宅を購入するとき、住宅に欠陥や不具合がないか気になるのではないでしょうか。安心して住宅を購入できるように、「瑕疵(かし)保険」という仕組みがあります。瑕疵とは、本来あるべき性能や品質を持っていないことです。住宅の場合、建築基準法に定められた基準を満たしておらず、重大な欠陥がある状態などを指します。 この記事では、瑕疵保険の仕組みや種類について解説します。 瑕疵保険とは 瑕疵保険とは、住宅の検査と保証がセットになった保険制度です。国土交通大臣が指定した住宅専門の保険会社である住宅瑕疵担保責任保険法人が保険を引き受けることで、制度が成り立っています。新築、中古住宅ともに、建築士による検査に合格することで、加入できる保険です。 住宅購入後に欠陥が見つかった場合に、買主は無償で直してもらうことができ、専門の建築士による検査を受けるため、売主は購入者に安全性をアピールできます。 住宅瑕疵担保責任保険法人一覧 2024年8月現在の国土交通大臣が指定する住宅瑕疵担保責任保険法人は以下のとおりです。 ■住宅瑕疵担保責任保険法人一覧 株式会社住宅あんしん保証 住宅保証機構株式会社 株式会社日本住宅保証検査機構 株式会社ハウスジーメン ハウスプラス住宅保証株式会社 (一財)住宅保証支援機構 保険法人からの再保険契約の引受け。事業者(建設業者及び宅地建物取引業者)からの引受けは不可。 ※2024年8月現在 出典)国土交通省 住宅瑕疵担保責任保険法人 瑕疵保険の仕組みと概要 瑕疵保険に加入する際、新築住宅と既存住宅では加入の要件や内容が異なります。ここからは新築住宅と既存住宅に分けてそれぞれ説明します。 新築住宅 新築住宅は瑕疵保険の加入は「義務」となっています。2007年に住宅瑕疵担保履行法が成立・公布され、住宅購入者の利益保護を目的に新築住宅の売主に対して「保証金の供託」または「保険加入」が義務付けられました。 新築住宅の瑕疵保険の仕組みと加入の流れは以下のとおりです。 出典)国土交通省「住宅瑕疵担保責任保険について」 新築住宅の建設を請負う建設業者または販売する宅建業者が瑕疵担保責任を履行した場合に、保険法人がその損害をてん補します。事業者が倒産等により瑕疵担保責任を履行できない場合には、住宅購入者(買主)に対して直接保険金を支払います。 出典)国土交通省「住宅瑕疵担保責任保険について」 新築住宅の場合、瑕疵保険の加入は、売買契約時などに瑕疵保険の説明や書類への記入があるので、詳細はその場で確認するようにしましょう。また、引き渡しの際に保険の証明書を受け取る必要があるので、忘れないようにしましょう。 中古住宅 中古住宅の瑕疵保険は、新築とは異なり「任意加入」です。原則として1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた、いわゆる「新耐震基準」に適合している住宅が対象となります。 ただし、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた住宅の場合、耐震基準適合証明書等の取得および提出などにより保険の加入が可能となる場合もあります。 出典)一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会「既存住宅の個人間売買に安心を!」Q3 中古住宅の売買契約は、売主が「宅建業者」と「個人」の2種類です。売主が宅建業者の場合は、宅建業法上の瑕疵担保責任の義務に対応するため、2年間の保証が付くのが一般的です。 一方で、不動産仲介による売買を含む個人が売主となる場合、保証なしで売買されることも多いため、特に売主が個人の場合の売買において、瑕疵保険の必要性が高いといえるでしょう。 一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会では、瑕疵保険を利用する登録事業者等の検索サイトがあります。保険加入実績の確認や、個人間売買で検査会社を選ぶ場合にも利用できるので活用してみると良いでしょう。 瑕疵保険の種類 続いて、保険の種類について確認していきましょう。 新築住宅 新築住宅の瑕疵保険は「住宅瑕疵担保責任保険」といい、住宅瑕疵担保責任保険は、「住宅瑕疵担保責任保険(1号保険)」と「住宅瑕疵担保責任任意保険(2号保険)」の2種類に分かれます。 1号保険は、住宅瑕疵担保履行法に定める建設業者・宅建業者の資力確保義務に対応する保険で、2号保険は、売主に資力確保義務がない場合に加入する保険です。 いずれも加入にあたり、事業者は建築士の検査を受けて合格する必要があります。新築住宅に瑕疵があった場合、補修等を行った事業者に対して保険金が支払われるため、購入者は無償で直してもらえます。請負契約や売買契約の際に業者から説明が行われるので、内容を確認しておきましょう。 中古住宅 中古住宅に対する瑕疵保険の正式名称は「既存住宅売買瑕疵保険」と言います。既存住宅の瑕疵保険は以下の4種類に分かれます。 既存住宅売買瑕疵保険 リフォーム瑕疵保険 大規模修繕工事瑕疵保険 延長保証保険 既存住宅売買瑕疵保険 既存住宅売買瑕疵保険は中古住宅の売買における瑕疵保険で、売主が「宅建業者の場合」と「宅建業者以外の場合」に分かれ、宅建業者以外の場合では、さらに「検査事業者保証」と「仲介事業者保証」に分かれます。 宅建業者が売主の場合は宅建業者が保険に加入し、個人が売主の場合は仲介業者や検査事業者が保険に加入する仕組みです。新築と同じく、保険に加入するには専門の建築士による検査を受けて合格しなくてはなりません。 リフォーム瑕疵保険 リフォーム瑕疵保険は、リフォーム時の検査と保証がセットになった保険です。リフォームの工事中や工事完了後に、第三者である建築士の現場検査が行われます。工事後に欠陥が見つかった場合、補修等を行った事業者に対して保険金が支払われる仕組みです。 関連記事はこちらリフォーム瑕疵保険とは?加入方法や適用条件を解説 大規模修繕工事瑕疵保険 大規模修繕工事瑕疵保険はマンションの大規模修繕における瑕疵保険であるため、個人の方が利用する機会はないでしょう。 延長保証保険 延長保証保険は、新築住宅の引き渡し後10年間の瑕疵担保責任期間が経過後に検査・補修した場合の保険です。延長保険契約時の現況検査やメンテナンス工事の実施が加入要件となります。 出典)国土交通省「消費者の方向け情報」 瑕疵保険の対象 続いて、瑕疵保険の対象部分について確認していきましょう。 新築住宅 新築住宅で瑕疵保険の対象となるのは、住宅の中でも特に重要な部分である、構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分です。これらの瑕疵に対して、10年間の瑕疵担保責任が義務付けられています。 出典)国土交通省「新築住宅に関する法制度」 新築住宅では、住宅瑕疵担保履行法で定められている最低限の支払限度額は2,000万円です。マンションの場合は1住戸あたりとなります。また、全保険法人5社で新築の瑕疵保険の対象となる部分は原則同じです。 ただし、提供するサービスや料金等は異なるので、確認しておきましょう。 出典) ・一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会「新築住宅かし保険についてよくあるご質問」Q.11 ・国土交通省「新築住宅に関する法制度」 中古住宅 既存住宅の瑕疵保険の対象は新築住宅と同様、構造体力上主要な部分、雨水の侵入を防止する部分です。宅地建物取引業者が売主となっている場合は宅地建物取引業法により2年以上の瑕疵担保責任期間が義務付けられていますが、個人が売主(宅地建物取引業者による「媒介」)となる場合、長くて数か月、物件によっては保証なしの場合もあります。 なお、既存住宅売買瑕疵保険の場合であれば、瑕疵担保責任期間は最長5年間となっているので、確認してみましょう。 出典)一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会「かし保険全般に関するご質問」Q.6 また、住宅瑕疵担保責任保険法人5社の保証に関する主な内容は共通していますが、料金など異なっている部分もあります。住宅瑕疵担保責任保険法人ごとに定めている内容もあるので事前に確認しておくとよいでしょう。 中古住宅は築年数や使用状況によって品質に差が生じるため、物件購入後に欠陥や不具合が見つかるかもしれません。安心して中古住宅を購入するために、購入前に建物状況調査を受けることもおすすめです。 関連記事はこちら建物状況調査とは?メリット・デメリットと手続きの流れを解説 保険金の請求 住宅に瑕疵が見つかった場合は、売主である事業者に補修依頼をします。売主が倒産している場合は、保険法人に補修費用を直接請求できます。保険の証明書を確認して連絡をとりましょう。 個人が売主の場合は、検査事業者に補修依頼をします。売主が事業者の場合と同じく、検査事業者が倒産している場合は保険法人に補修費用を直接請求できます。 売主との間でトラブルが発生した場合は、「住宅紛争処理支援センター」に相談できます。申請手数料1万円を支払えば、「住宅紛争審査会」に申請して、「あっせん」「調停」「仲裁」を受けることも可能です。 まとめ 自宅を購入する場合、瑕疵保険に加入している住宅なら欠陥が見つかっても無償で直してもらえます。特に売主が個人である中古住宅を取得する場合は、瑕疵保険の有無を確認してから購入しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マンション管理適正評価制度とは?メリット・デメリットを解説 2022年4月から「マンション管理適正評価制度」が開始されました。本制度は適切に維持管理されているマンションが、市場で評価されるための新たな仕組みです。同じ時期に国の「マンション管理計画認定...記事を読む

  • 住宅購入時の優遇制度を解説、2022年以降の変更点も紹介

    住宅購入時の優遇制度を解説

    住宅を購入するときは、「住宅ローン控除」をはじめとしたさまざまな優遇制度が用意されています。一方で、どのような優遇制度があるのか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。 この記事では、住宅購入で得られるさまざまな優遇制度について詳しく解説します。 住宅ローン控除 住宅ローンを借りて住宅を購入する場合は、住宅ローン控除が利用できる可能性があります。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、住宅取得者の住宅ローン金利負担の軽減を図るための制度です。住宅ローン年末残高の0.7%が10年間所得税から控除され、控除額と納税額に応じて所得税が還付されます。所得税から控除しきれない場合は、住民税から控除することも可能です。 関連記事はこちら【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 印紙税の軽減措置 住宅を購入する際は、売買契約書に収入印紙を貼付して印紙税を納めなくてはなりません。不動産売買契約書の印紙税は、軽減措置によって税率が引き下げられています。2024年3月31日までに作成される契約書については、以下の軽減税率が適用されます。 表 印紙税の軽減措置(単位:円) 契約金額 本則税率 軽減税率 100万円超 500万円以下 2,000 1,000 500万円超 1,000万円以下 10,000 5,000 1,000万円超 5,000万円以下 20,000 10,000 5,000万円超 1億円以下 60,000 30,000 1億円超 5億円以下 100,000 60,000 5億円超 10億円以下 200,000 160,000 印紙税は、物件価格(契約金額)が高くなるほど税負担も増える仕組みです。軽減措置の適用期間中に売買契約を締結すれば、印紙税の節税になります。 出典)国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」 登録免許税の軽減措置 登録免許税とは、購入した住宅(土地、建物)の登記を行うときに納める税金です。課税標準額(固定資産税評価額)に税率を掛けて税額を計算します。 購入した住宅の所有権を設定するため、新築住宅は所有権保存登記、中古住宅の場合は所有権移転登記を行わなくてはなりません。住宅ローンを利用する場合は、抵当権設定登記も必要です。 住宅購入に関する登録免許税の軽減措置は以下のとおりです。 表 登録免許税の軽減措置(単位:%) 登記の書類 本則税率 軽減税率 土地の所有権移転登記 2.0 1.5 住宅用家屋の所有権保存登記 0.4 0.15 住宅用家屋の所有権移転登記 2.0 0.3 抵当権設定登記 0.4 0.1 土地は2023年3月31日、住宅用家屋と抵当権は2022年3月31日まで軽減税率が適用される予定でしたが、令和5年度の税制改正により、その適用期限がが令和8年3月31日まで3年延長されました 出典)国税庁「登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」 不動産取得税の軽減制度 不動産取得税とは、住宅などの不動産を取得したときに課される税金です。税額は、課税標準額(固定資産税評価額)に税率を掛けて計算し、税率は土地・家屋ともに3.0%です。 住宅購入では、土地・家屋にかかる不動産取得税の軽減制度があります。2024年までに取得した土地については、課税標準額が1/2となり、「土地を取得後3年以内に住宅が新築されている」などの要件を満たすと、さらに税額が軽減されます。家屋については、以下の床面積要件を満たす新築住宅を購入した場合、課税標準額から1,200万円が控除されます。 表 新築住宅の床面積要件 住宅の種類 床面積要件 一戸建て 50㎡以上 240㎡以下 一戸建て以外(マンションなど) 40㎡以上 240㎡以下 中古住宅についても同様の軽減措置がありますが、現行の耐震基準に適合していることが要件です。住宅が新築された日に応じて、100万円から1,200万円の間で課税標準額から控除されます。 固定資産税の軽減制度 住宅を所有すると、毎年固定資産税が課税されます。固定資産税の税額は、土地・家屋ともに課税標準額(固定資産税評価額)の1.4%です。ただし、住宅用地には課税標準の特例措置があり、小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡までの部分)は課税標準額の1/6、一般住宅は課税標準額の1/3で税額を計算します。 家屋については、新築住宅で「50㎡以上 280㎡以下」という床面積要件を満たす場合、固定資産税額の2分の1が減額されます。減額期間は一戸建てが3年間、マンションが5年間で、2022年3月31日までに新築された住宅が対象となります。 なお、税制改正により、2024年3月31日までに延長されました。 出典)国土交通省「新築住宅に係る税額の減額措置」 住宅取得等のための資金にかかる贈与税非課税措置 父母や祖父母などの直系尊属から自ら居住する住宅の新築・購入、増改築のために金銭の贈与を受けた場合、以下の金額まで贈与税が非課税になります。 一般住宅:1,000万円 質の高い住宅:1,500万円 本措置を申請する受贈者(贈与を受ける人)は、下記の要件を満たす必要があります。 贈与年の1月1日で20歳以上 贈与年の合計所得金額が2,000万円以下 贈与年の翌年3月15日までにその家屋に居住する また、対象となる家屋は、床面積50㎡以上240㎡以下で中古住宅は耐震基準に適合するものである必要があります。なお、「質の高い住宅」とは下記のような要件を満たす住宅です。 断熱等性能等級4又は一次エネルギー消費量等級4以上の住宅 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上又は免震建築物の住宅 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上の住宅 本措置を受けるには、確定申告時に税務署に申請する必要があります。申請の際は「受贈者の戸籍謄本」「贈与年の所得金額を証明する書類」「売買契約書」「登記事項証明書」などが必要です。手続きの詳細は税務署に確認しましょう。 出典)国土交通省「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」 まとめ 個人の住宅取得を後押しするため、国はさまざまな優遇制度を用意しています。この記事で紹介した優遇制度を利用すれば、住宅購入費用の負担軽減が期待できます。なお、それぞれの制度には終了期限が設けられているので、常に最新の情報をチェックするようにしてください。住宅購入を検討しているなら、優遇制度を最大限に活用しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 住宅ローン控除(住宅ローン減税ともいいます)とは、住宅ローンを利用して住宅の新築、取得又は増改築等をした場合に利用できる、所得税額等を控除する制度です。住宅ローン控除を利用する場合、自身の状...記事を読む