住まいとお金の知恵袋 一覧(公開日順)

  • 建物状況調査とは?診断項目やメリット・デメリット、利用方法を解説

    建物状況調査とは?メリット・デメリットと手続きの流れを解説

    中古住宅は新築より割安な価格で購入できるのが魅力です。しかし、元の所有者の維持管理や築年数などによって、品質に差が生じるため、購入する際には、性能や品質に問題がないか不安を感じるのではないでしょうか。そのような時、建物状況調査を利用すれば、購入前に建物の状況や不具合を確認することができます。 この記事では、建物状況調査の概要や診断項目、メリット・デメリットについて詳しく解説します。 建物状況調査とは 建物状況調査とは、宅建業法で定められた基準をもとに実施する検査のことです。一定以上の知識や技術力を有する「既存住宅状況調査技術者」が実施します。既存住宅状況調査技術者とは、国の定める講習を修了した建築士のことです。 建物状況調査が生まれた背景 建物状況調査は2018年の宅建業法改正に伴い、従来の「ホームインスペクション」とは一線を画す形で生まれました。宅建業法改正により、中古住宅の売買に関する手続きについて、以下3つが宅建業者に義務付けられています。 媒介契約締結時に建物状況調査のあっせんに関する書面を依頼者に交付する 買主に対して建物状況調査の結果を重要事項として説明する 売買契約成立時に売主と買主の双方が確認した事項を書面で交付する 宅建業者に義務付けられているのは、あくまでも「説明」や「あっせん」です。「実施」が義務付けられているわけではないので、注意しましょう。 建物状況調査の診断項目 建物状況調査の診断項目は、「構造耐力上主要な部分」と「雨水の侵入を防止する部分」の2つに分かれます。たとえば、木造2階建ての戸建て住宅の場合は以下のとおりです。 <構造耐力上主要な部分> 基礎 壁 柱 小屋組 土台 斜材 床版 屋根版 横架材 <雨水の侵入を防止する部分> 屋根 外壁 開口部 国土交通省の定める基準に従い、検査機器を使用して目視や非破壊検査を行います。物件の状態や規模によりますが、所要時間は3時間程度が一般的です。 建物状況調査とホームインスペクションの違い 建物状況調査に関連して、ホームインスペクションという言葉があります。ホームインスペクションとは、住宅に関する検査全般を意味する言葉で、業者によって検査員の資格の有無や検査内容が異なります。 一方で、建物状況調査は、既存住宅状況調査技術者の資格を有している検査員が、宅建業法で定められた基準に基づく検査内容を行います。つまり、広義の住宅検査全般をホームインスペクションと言い、有資格者による一定の基準に基づいて行われる検査を建物状況調査と言います。 建物状況調査のメリット 中古住宅の売買に建物状況調査を活用することには、売主と買主の双方にメリットがあります。 買主のメリット 買主には、以下のようなメリットがあります。 安心して購入できる 購入後のメンテナンスの予定が立てやすい 専門家からアドバイスを受けられる 専門家の調査によって、建物の状況や不具合の有無を確認できるので、安心して物件を購入できます。あらかじめ修繕の必要性を把握することで、購入後のリフォームや修繕といったメンテナンスや、費用の見積もりが立てやすくなるでしょう。調査結果に応じて、専門家からアドバイスを受けることも可能です。 売主のメリット 売主には、以下のようなメリットがあります。 引渡し後のトラブル回避が期待できる 競合物件との差別化につながる 建物状況調査の結果を買主に伝えてから売却できるので、引渡し後のトラブルを回避しやすくなります。建物状況調査を実施したことをアピールすれば、(調査を受けていない)競合物件との差別化にもつながるでしょう。 建物状況調査のデメリット 一方で、建物状況調査には以下のようなデメリットもあります。 買主のデメリット 調査費用を買主が負担する場合、コストがかかるのがデメリットです。また、建物状況調査は、あくまで目視や非破壊検査で行われるため、壁の中などの見えないところまで細かく調査することはできません。建物状況調査の結果に問題がなかったとしても、全く不具合がないと保証できるわけではない点に注意が必要です。 売主のデメリット 調査費用を売主が負担する場合は、物件売却で得られる収益が減少します。また、建物状況調査を実施すると、物件に不具合が見つかるかもしれません。調査結果によっては、補修費用の負担や値下げの必要性が生じる場合があります。 建物状況調査の利用方法 建物状況調査を利用する場合は、「既存住宅状況調査技術者検索サイト」で調査実施者を探します。不動産業者が提携している調査実施者がいる場合は、あっせんを希望する旨を伝えて対応してもらう方法もあります。 調査実施者を選定したら、見積もりをとって診断内容や料金を確認しましょう。見積もりの内容に問題がなければ、診断日時を決定します。検査当日までに、以下のような書類が必要です。 間取り図 販売図面 確認済証 検査済証 住宅性能評価証 新耐震基準適合証明書 また、マンションの場合は、上記に加えて管理規約や長期修繕計画の写しなども必要です。調査を依頼する業者に確認して準備を進めましょう。 検査当日は基本的に依頼者も立ち合い、その場で説明を受けます。後日報告書が送られてくるので、不明点があれば問い合わせて確認しましょう。 出典)住宅リフォーム推進協議会「既存住宅状況調査技術者検索サイト」 まとめ 建物状況調査を活用すれば、取引前に建物の状況を把握できるので、中古住宅を安心して売買できます。広義のホームインスペクションとの違いを理解したうえで、依頼する調査実施者を探しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マンション管理計画認定制度とは?メリット・デメリットを解説 2022年4月から「マンション管理計画認定制度」がスタートします。マンション管理適正化の推進を目的に創設された制度で、マンションの管理や資産価値などに影響を与える可能性があります。 本制度の...記事を読む

    2022.05.04制度
  • iDeCo加入時に住宅ローン控除との併用で注意すること

    iDeCo加入時に住宅ローン控除との併用で注意すること

    iDeCoと住宅ローン控除はともに税金対策としてメリットがあります。しかし、両者には、「税額控除」と「所得控除」という違いがあることをご存じでしょうか。 この記事では、iDeCoと住宅ローン控除を併用する際の、注意点について解説します。 iDeCoの掛金は「所得控除」 個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」は原則60歳まで(2022年5月からは原則65歳まで)加入できる老後資金を準備するための制度です。拠出した掛金は「所得控除」の対象となり、所得税と住民税の税金対策になる点がメリットの1つとされています。拠出したお金は投資信託や、預金や保険などの元本確保型商品で運用できます。 自営業者や会社員、公務員等の区分によって、拠出できる掛金には上限があります。下図は、所得税の課税額算出の流れです。所得税は、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。 図:課税所得算出の流れ iDeCoで拠出した掛金は所得控除に当たるので、所得税と住民税(所得割額)を算出する課税所得から控除できます。例えば、所得税率10%の人が毎月23,000円のiDeCo積立を行った場合、年掛金276,000円に対し、年55,200円(所得税27,600円、住民税27,600円)の税金対策となります*。 ※あくまで概算です。 関連記事はこちらiDeCo(イデコ)の仕組みとは?メリット・デメリットを解説 住宅ローン控除は「税額控除」 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを借りてマイホームを取得・リフォームした場合に、一定要件を満たせば、所得税から控除できる仕組みです。年末のローン残高に応じて、定率を所得税額から控除できます。 控除できる上限は、物件が新築か中古かで適用となる年数が異なるほか、2022年以降は、物件が認定住宅かどうかによっても変わります。「図:課税所得算出の流れ」のとおり、住宅ローン控除は算出された所得税から控除できる税額控除です。控除額が所得税を上回った場合は、翌年の住民税から一定額まで控除することもできます。 出典)国税庁 No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除) 関連記事はこちら【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 そもそもどのような人がiDeCoを活用すべき? ところで、そもそもどのような人がiDeCoを活用すべきなのでしょうか。iDeCoは、原則60歳まで(2022年5月からは原則65歳まで)が加入できる制度で、国民年金加入者(第1号~第3号)であれば加入できます。「iDeCoを活用すべき人」を明確にするために、まず、iDeCoに加入できない人や、iDeCoが向かない人を整理してみましょう。 iDeCoに加入できない人 iDeCoに加入できない人は以下の3通りです。 国民年金の未納がある人 年齢要件を満たさない人 勤務先が企業型年金との併用を認めていない人 iDeCoはあくまで公的年金を補完する役割であるため、国民年金保険料を支払っていることが条件となります。また、加入のためには20歳以上60歳未満(2022年10月からは65歳未満)という年齢制限があります。 他にも会社員の場合には勤務先の企業年金の規約を確認する必要があります。勤務先によっては企業型年金とiDeCoの併用を認めていない場合があり、その場合にはiDeCoへの加入ができません。 iDeCoが向かない人 また、iDeCoに加入できたとしても向いていない人もいます。 20代や30代前半の専業主婦(夫) 配偶者の扶養の範囲で働くパート主婦(夫) 結婚資金や子どもの教育資金などを先に貯める必要がある人 上記のように、収入が少なく所得控除の恩恵を受けづらい人や、老後資金の準備よりも目先でまとまったお金が必要になる人は、中途解約や引き出しのできないiDeCoは向いていません。 これらの人で資産形成を考えているのであれば、当面は必要な時に引き出せる「NISA」の方が向きます。30代後半や40代になり、本格的に老後資金作りを進める際には、iDeCoが候補になります。所得控除による恩恵がない主婦(夫)等でも、口座維持手数料が低い金融機関を選べば、運用益は非課税、受取時は所得控除の適用対象などのメリットは享受できます。 他にも、毎月の収支に余裕がない人や、金利の高い借り入れがある人は、まずは家計の正常化を図ることが先決です。 住宅ローン控除とiDeCoの併用時の注意点 住宅ローン控除とiDeCoはいずれも税金対策になるものの、支払う所得税や住民税の上限を超えてしまうと、税金対策としてのメリットは受けられません。たとえば、以下のようなケースを考えてみましょう。 iDeCo既加入者が住宅ローン控除を利用する場合 住宅ローン控除対象者がiDeCoに加入する場合 iDeCo既加入者が住宅ローン控除を利用する場合 すでにiDeCoを利用している30代後半の共働き夫婦が、マイホーム購入を検討しているケースです。夫が1人で住宅ローンを組んで、住宅ローン控除を利用しようとしたところ、iDeCoと住宅ローン控除の両方が重なることで、所得税と住民税の納税額を控除額が越えることになりました。 このようなケースでは、iDeCoの拠出額の見直しを検討しましょう。iDeCoは国民年金の加入区分ごとに上限金額が決まっていますが、いずれの区分でも最低金額は5,000円からの拠出が可能です。ただし、iDeCoは原則途中解約ができない点や、掛け金の変更は年に一回までです。 住宅ローン控除対象者がiDeCoに加入する場合 住宅ローンは単独で夫が組み、住宅ローン控除を受けている30代半ばの正社員夫婦がiDeCoを始めようと検討しています。税金対策になるか試算したところ、夫はiDeCoによる節税金額が少ないと判明しました。このようなケースでは、以下のような加入を検討しましょう。 妻がiDeCoに加入をする 夫が所得控除のメリットがある範囲内で掛金を設定する 当面のiDeCoの加入を見送る 夫の控除額が少ないのであれば、妻が加入をするか、所得控除のメリットがある範囲内での加入が良いでしょう。住宅ローン控除で受けられる控除額は年々減っていくうえ、受けられる期間も決まっているので、当面は加入を見送るというのも選択肢の一つです。 まとめ iDeCoをうまく活用することで節税効果が見込める一方で、住宅ローン控除と併用した際には思ったよりも効果が得られない場合もあります。また、加入できたとしてもiDeCoを活用することがベストな選択肢とならない人もいるでしょう。単に運用益の非課税メリットだけで考えるのであれば、iDeCoよりも流動性が高いNISAを活用することをおすすめします。 執筆者紹介 豊田 眞弓( Mayumi Toyoda ) マネー誌ライターを経て、94年より独立系ファイナンシャルプランナー。 個人相談、講演・研修講師、コラム寄稿などを行う。座右の銘は「笑う門には福もお金もやってくる」。趣味は講談、投資。 <主な著書> 「夫が亡くなったときに読む本」(日本実業出版社)、「親の入院・介護が必要になるときいちばん最初に読む本」(アニモ出版)、ほか著書多数。 夫婦の老後資金はいくら必要?足りない時の対処法も紹介 「人生100年時代」や「老後2,000万円問題」などに起因して、「老後資金」という言葉が注目を集めています。老後破産に陥らないためにも、夫婦で必要な老後資金を把握し、なるべく早くから準備して...記事を読む

  • 雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?適用要件や失業給付、手続きの流れをわかりやすく解説

    雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?内容をわかりやすく解説

    2022年1月1日から65歳以上の労働者を対象に「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されました。雇用保険に加入できる条件が緩和されたため、非正規社員として短時間の勤務をする場合でも、失業に備えることが出来るようになりました。 この記事では、雇用保険マルチジョブホルダー制度の概要や適用要件、失業給付についてわかりやすく解説します。 雇用保険マルチジョブホルダー制度とは 雇用保険マルチジョブホルダー制度とは、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、2つの事業所において一定の要件を満たす場合に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)になれる制度です。 従来の制度では、65歳以上の労働者が雇用保険に加入するには「労働時間週20時間以上、かつ31日以上の雇用期間」などの条件を満たす必要がありました。 現在は少子高齢化が進み、「老後資金の確保」「労働力不足の解消」が課題となっています。雇用保険の加入条件緩和によって高齢者の労働機会が増加すれば、勤労収入を老後の生活費を充てられます。また、若年層だけでは足りない労働力を補う効果も期待できます。 出典)厚生労働省「マルチジョブホルダー制度とは」 雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用要件 雇用保険マルチジョブホルダー制度を利用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること 2つの事業所の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満) 2つの事業所それぞれの雇用見込みが31日以上であること 3つ以上の事業所で勤務している場合は、労働時間や賃金などを考慮して、マルチ高年齢被保険者として申出をする本人が2つの事業所を選択します。 加入後の取扱いは通常の雇用保険と同じで、原則として任意脱退はできません。上記の適用要件を満たさなくなった場合を除き、加入する事業所を任意に切り替えることもできないので注意しましょう。 雇用保険マルチジョブホルダー制度の資格取得手続きの流れ 通常の雇用保険は、事業主が資格取得・喪失の手続きを行います。一方、雇用保険マルチジョブホルダー制度では、適用を希望する本人が手続きをする必要があります。手続きの流れは以下のとおりです。 ハローワークまたは厚生労働省HPから「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届(マルチ雇入届)」などを入手する 2つの事業所にマルチ雇入届の記入、確認資料(雇用契約書など)の交付を依頼する 本人の住居所を管轄するハローワークへ必要書類を提出する ハローワークから本人および2つの事業所に通知される ハローワークで申請内容を確認のうえ、問題がなければ申出日に被保険者の資格を取得します。必要書類の入手方法や手続きのやり方がわからない場合は、ハローワークに問い合わせて確認しましょう。 ハローワークに提出する書類一覧 手続きの際は、ハローワークへ以下の書類を提出します。 事業主から交付されたマルチ雇入届と確認資料(2社分) 個人番号登録・変更届 被保険者資格取得時アンケート 本人確認資料・個人番号の確認できる資料 また、事業所に依頼する主な確認資料は以下のとおりです。 賃金台帳 出勤簿(記載年月日の直近1ヵ月分) 労働者名簿 雇用契約書 労働条件通知書 雇入通知書 雇用主との関係(親族の会社に勤めているなど)によっては、別途確認資料が必要になる場合があります。 雇用保険マルチジョブホルダー制度のメリット 雇用保険マルチジョブホルダー制度は事業主と労働者の双方にメリットがあります。 事業主のメリット 事業主は、雇用保険資格の取得・喪失手続きが簡便化されるのがメリットです。雇用保険マルチジョブホルダー制度では労働者自身が手続きを行うため、事業主は必要事項の記載や証明などを行うだけで済みます。 労働者のメリット マルチ高年齢被保険者であった労働者が失業した場合、一定の要件を満たすと高年齢求職者給付金を一時金で受給できます。給付額(基本手当日額×支給日数)は以下のとおりです。 <基本手当日額> 離職以前6ヵ月の賃金合計÷180×(50~80%) <支給日数> 被保険者期間1年未満:基本手当日額の30日分 被保険者期間1年以上:基本手当日額の50日分 「離職日以前1年間に被保険者期間が通算6ヵ月以上あること」が受給要件です。2つの事業所のうち、1つのみを離職した場合でも受給できます。 ただし、3つ以上の事業所で勤務している場合、3つ目の事業所と併せてマルチ高年齢被保険者の要件を満たす場合は、被保険者期間が継続されるので受給できません。 また、2つの事業所のうち1つのみを離職した場合、基本手当日額の計算に離職していない事業所の賃金は含まれないので注意しましょう。 雇用保険マルチジョブホルダー制度の注意点 雇用保険マルチジョブホルダー制度では、資格取得の日から雇用保険料の納付義務が発生します。申出日より前にさかのぼって被保険者となることはできません。 事業主には、手続きの際に必要な証明を行う義務があります。申出を理由に労働者に対して不利益な取り扱い(解雇、雇止め、労働条件の不利益変更など)を行うことは認められません。もし事業主の協力を得られない場合はハローワークに相談しましょう。 まとめ 65歳以上で2つ以上の事業所で働いている場合、一定の条件を満たせば雇用保険に加入できます。また、短時間勤務で働いている場合であっても、雇用保険マルチジョブホルダー制度を利用できるように別の企業で働くことで、雇用保険に加入できます。より安心して働き続けるために、本制度の積極的活用をおすすめします。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 老齢年金の繰り上げと繰り下げ、どっちがお得? 老齢年金の受給開始年齢が近づいてくると、受給開始年齢の繰り上げや繰り下げを検討する人も多いのではないでしょうか。受給開始年齢を変更することで、受け取れる年金の見込み額は大きく変わります。 こ...記事を読む

    2022.04.20制度
  • 定期借家契約と普通借家契約の違いとは?

    定期借家契約と普通借家契約の違いとは?

    不動産の賃貸借契約には、「定期借家契約」と「普通借家契約」があります。しかし、両者は契約の更新方法などに違いがあるので、賃貸住宅に安心して住めるように、それぞれの契約の仕組みを理解しておくことが大切です。 この記事では、定期借家契約と普通借家契約の違いについて詳しく解説します。 定期借家契約と普通借家契約の概要 定期借家契約とは 定期借家契約とは、契約期間があらかじめ決められている賃貸借契約です。契約の更新がないため、契約期間が満了すると借主は退去しなくてはなりません。ただし、貸主と借主の双方が合意すれば、期間満了後の再契約は可能です。 定期借家契約の場合、貸主側の都合で契約期間が定められるため、普通借家契約に比べると割安な家賃で設定されることが多いです。貸主側は定めた期間で貸主に退去してもらえるため、「一時的に不在となる物件を賃貸に出す」「現在空き家の実家を自分が住むまで賃貸に出す」といった場面での活用ができます。 普通借家契約とは 普通借家契約は、一般的な不動産賃貸で利用される賃貸借契約です。契約期間は通常2年で設定され、期間満了後も借主が希望すれば契約は更新されるため、長く住み続けることが可能です。借主が手厚く保護される契約形態であるため、貸主からの一方的な都合による退去はありません。 普通借家契約の場合、貸主側の都合で契約期間を定められますが、借主が希望する限り更新を拒むことができません。そのため、貸主側が短期間で退去してほしい場合には、適していません。 定期借家契約と普通借家契約の主な違い 定期借家契約と普通借家契約の主な違いは以下の2つです。 契約の更新 前述のとおり、定期借家契約は期間満了によって契約が終了します。貸主と借主の双方で合意できた場合のみ再契約が可能なので、借主が住み続けたいと思っても、貸主が再契約を認めなければ退去する必要があります。 一方で、普通借家契約は借主が希望する限り、契約を更新し、住み続けることができます。「建物に問題がある」、「借主が契約を違反する」などの正当事由がない限り、貸主は契約更新を拒絶できません。 賃料の増減額請求権 賃料の増減額請求権とは、現在支払っている、または受け取っている家賃が賃料相場と比較して不相当となった場合に、賃貸借契約の相手方に対して家賃の減額、増額を請求できる権利です。 賃貸住宅の賃料相場は、景気動向や需供バランスによって変動します。そのため、同じ物件に長く住んでいると、入居時に定めた家賃が賃料相場と合わなくなることがあります。 定期借家契約と普通借家契約ともに、原則として賃料の増減額請求権が認められます。ただし、定期借家契約は賃料の増減額請求権を排除する特約を定めることが可能です。(借地借家法第38条) 一方で、普通借家契約は賃料の増減額請求権を排除する特約は無効ですが、家賃を増額しないことについての特約のみ認められます。(借地借家法第32条) 定期借家契約と普通借家契約のその他の違い 定期借家契約と普通借家契約は、以下のような点でも違いがあります。 契約方法や説明 普通借家契約を締結するには口頭でも可能ですが、定期借家契約は公正証書などの書面で行う必要があります。また、定期借家契約は賃貸借契約書とは別に、契約の更新がないことを書面で交付して説明しなくてはなりません。 契約期間や通知義務 普通借家契約は1年以上で設定する必要があり、1年未満の賃貸借契約の場合は、期間の定めのない賃貸借とみなされます。一方で、定期借家契約は契約期間に制限がなく、1年未満の契約も有効となります。 1年以上の定期借家契約の場合、貸主は契約期間満了の1年から6ヵ月前までに借主に対して契約終了を通知する義務があります。通知をしない場合、貸主は契約終了を借主に対抗できません。借主は、通知の日から6ヵ月を経過するまでは同条件で住み続けられます。 中途解約 普通借家契約は一般的に中途解約に関する条項が記載されており、借主からの中途解約はその条項の範囲内で可能ですが、貸主からの場合は正当事由が必要です。一方で、定期借家契約では、貸主と借主のどちらも中途解約は原則認められません。 ただし、床面積200㎡未満の居住用建物でやむを得ない事情がある場合は、借主からの中途解約は可能です。なお、普通借家と定期借家ともに、中途解約に関する特約がある場合はその定めに従うこととなります。 定期借家契約と普通借家契約の違い一覧 定期借家契約と普通借家契約の違いは下表のとおりです。 定期借家契約と普通借家契約の違い 定期借家契約普通借家契約 契約方法公正証書等の書面*口頭、書面 更新の有無期間満了により終了し、更新がない(ただし、再契約は可能)正当事由がない限り更新 期間を1年未満とする賃貸借の効力1年未満の契約も有効期間の定めのない賃貸借とみなされる 賃料の増減請求特約の定めに従う特約にかかわらず、請求可能 賃借人の中途解約の可否・床面積200㎡未満の居住用建物でやむを得ない事情がある場合は、 借主からの中途解約が可能・中途解約に関する特約があればその定めに従う中途解約に関する特約があればその定めに従う ※賃貸人は「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書等とは別に、予め書面を交付して説明しなければならない 出典)国土交通省「定期借家制度」 定期借家契約と普通借家契約の利用割合 国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」によると、定期借家契約は普通借家契約と比較してほとんど利用されていません。 ※国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査 P.27」より引用 また、同調査では令和4年度に民間賃貸住宅に住み替えた世帯の定期借家制度の認知度が「知っている」が12.3%、「名前だけは知っている」が25.5%に留まっており、半数以上が「定期借家契約」を知らないまま、賃貸住宅に住み替えていたことも分かっています。 定期借家契約は利用数、認知度ともに低いのが現状ですが、知らなければ後々トラブルの原因になる恐れもあります。 出典)国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」 まとめ 定期借家契約は貸主の合意を得られなければ再契約ができず、退去する必要があります。短期間の入居なら家賃が安く済むかもしれませんが、長く住むには不向きです。賃貸住宅を借りたり、リースバックを利用したりする場合は、定期借家契約と普通借家契約の違いを理解しておきましょう。 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。※SBIスマイルのHPに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説 終身建物賃貸借契約は、高齢者が安心して賃貸住宅に居住できる仕組みです。老後も賃貸暮らしを続けるなら、終身建物賃貸借契約に対応している賃貸住宅も選択肢のひとつです。この記事では、終身建物賃貸借...記事を読む

    2022.04.13用語
  • マイホーム購入の必要性とは?

    マイホーム購入の必要性とは?

    マイホームは「人生で最も高い買い物」といわれます。購入時には住宅ローンを利用できますが、頭金や諸費用としてある程度のお金を準備しなくてはなりません。また、ローン返済は長期にわたるため、購入すべきか悩むのではないでしょうか。 この記事では、マイホーム購入の必要性やメリット・デメリットについて詳しく解説します。 マイホーム購入の必要性とは?購入するメリット マイホーム購入には以下のようなメリットがあります。 住居費の負担が小さい マイホーム購入は、賃貸で暮らすよりも住居費の負担が小さい傾向にあります。購入すると住宅ローンの返済が始まりますが、昨今の低金利環境下であれば、月々の家賃に比べて毎月の住宅ローンの返済の支払い額が少なくなることも珍しくないほか、完済後は毎月の支出が抑えられます。また、住宅ローン減税などの税制優遇制度を利用することで、金利負担の軽減も可能です。 一方で、賃貸は一生家賃を払い続ける必要があるので、老後に住居費の負担が重くなります。 内装や間取りなどの自由度が高い マイホーム購入は自由度が高いのもメリットです。注文住宅であれば、一から自分好みの内装・間取りで建築できます。また、分譲住宅であってもライフスタイルの変化に合わせて建て替えやリフォームも可能です。 一方で、賃貸物件は、オーナーの許可なく内装や間取りを変えることはできません。また、許可を得られたとしても最低限のリフォームに限られるケースが多いでしょう。 安心感・満足感を得られる マイホームを購入すると、「自分の家を持つことができた」という安心感や満足感を得られます。「一生暮らしたい」と思える家や場所を見つけても、賃貸の場合は建物の老朽化や所有者の都合で退去しなくてはならないケースもあります。 マイホームであれば、「一生住み続けられないかもしれない」という不安を抱えることなく安心して住み続けられるでしょう。 マイホーム購入のデメリット 一方で、マイホーム購入には以下のようなデメリットもあります。 ライフスタイルの変化に対応しづらい 人生には急な転勤や子どもの独立、パートナーとの死別・離別など、ライフスタイルが変化する時期があります。 自由に引っ越しができる賃貸なら、ライフスタイルの変化に合わせて住まいを変えられます。たとえば、子育て中は広い家に住み、夫婦二人の生活になったら小さな物件に引っ越すといった具合です。 しかし、マイホームで住み替えるには物件を売却しなくてはなりません。売却には時間がかかるだけでなく、住宅ローンが残っていれば売却資金でローンを完済する必要があるため、簡単には引っ越しできないでしょう。 経年に伴い住居費の負担が増加する マイホーム購入をすると、建物や設備が経年劣化するので、築年数が古くなると修繕費の負担が増加します。たとえば、設備は15年も経てば不具合が出て修理や交換が必要になるほか、マンションであれば管理費や修繕積立金は築年数が古くなるほど増加します。 ただし、立地や物件のグレードなどによっては、賃貸物件より経済的にメリットがあるので、コストが増加することが一概にデメリットとも言い切れないでしょう。 災害リスクを抱える マイホームは地震や台風、水害といった災害リスクがあります。マイホームが被災した場合、修繕や建て替えの費用は自分で負担しなくてはなりません。保険で備えることもできますが、必ずしも保険でカバーできるとも言い切れないでしょう。 一方で、賃貸なら建物が被災しても修繕費用はオーナー負担となるので、経済的な負担は小さく済みます。また、被害が大きい場合には転居するという選択肢のハードルもそれほど高くないかもしれません。 マイホーム購入は必要なのか マイホーム購入と賃貸にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、マイホーム購入と 賃貸の選択に正解はありません。マイホーム購入の必要性は、個人の嗜好やライフスタイル(子どもの人数、転勤の有無・頻度など)に応じて変わってきます。 マイホーム購入の必要性が高い人 マイホーム購入の必要性が高い人の特徴は以下のとおりです。 損をしたくない人 自由度の高い家を持ちたい人 賃貸で住みたい家がない人 マイホーム購入には住宅ローン減税のような税制優遇制度があり、ローン完済後は住居費の負担が軽減されます。「簡単に引っ越しできない」「災害リスクがある」といったデメリットを許容してでも金銭的なメリットを受けたいなら、マイホーム購入がいいでしょう。 「自分好みの間取りで家を建てたい」「リフォームやリノベーションをしたい」など、自由度の高い家を持ちたい人もマイホームが向いています。 また、賃貸は借主がつきやすいように汎用的な間取りや仕様であることが多い傾向にあります。「希望条件の物件がない」、「戸建てに住みたいが賃貸物件がほとんどない」など、賃貸で住みたい家がない人もマイホーム購入の必要性は高いといえます。 ただし、マイホーム購入にはまとまったお金が必要です。属性(収入、勤務先、勤務年数など)によっては、住宅ローンの審査に通らない可能性もあります。「そもそも購入できるか」「いくらの家なら購入できるか」といった視点を持つことも大切です。 マイホームを購入した際の活用方法 高齢化により老後の期間が長くなっています。長生きリスクへの備えとして、老後資金を確保しておく必要があります。マイホームがあれば、いざというときには不動産を活用した資金調達が可能です。 老後の生活費が足りない場合、マイホームを売却するという選択肢だけでなく、需要の高い物件であれば賃貸に出して家賃収入を得ることも可能です。同じ家に住み続けたい場合は、不動産担保ローンやリースバックを利用する方法もあります。 まとめ マイホームは、必ず購入しなくてはならないものではありません。しかし、賃貸に住み続けると、老後の住居費負担が重くなる傾向にあります。マイホームは内装や間取りの自由度が高く、いざというときには不動産を活用した資金調達も可能です。 持ち家と賃貸のメリット・デメリットを比較したうえで、マイホーム購入の必要性を検討してみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む

    2022.04.06自宅購入
  • 赤字になったら確定申告は必要か?

    赤字になったら確定申告は必要か?

    個人事業主の中には、「事業が赤字で税金を払わなくてもいいから、確定申告は必要ないだろう」、「赤字申告だと融資を受けられなくなるから、確定申告をするのをやめよう」などと考えている方がいらっしゃるかもしれませんが、それは間違いです。この記事では、赤字でも確定申告をするメリットや、赤字決算でも可能な資金調達法をご紹介します。 確定申告とは? 確定申告は、毎年1月1日から12月31日の1年間に生じたすべての所得金額と、所得税額を計算して納税する制度のことです。納税者本人が税金を計算して納税することから、「申告納税制度」と呼ばれています。 確定申告の期間は、毎年2月16日から3月15日の約1カ月間で、申告期限が土日・祝日の場合は、その翌日が期限になるのが一般的です。期間内には原則として確定申告書の提出と、所得税の納付をしなければなりません。なお、別途手続きが必要ですが、口座振替納税も選択することが可能です。 関連記事はこちらリースバックの契約までの流れと必要書類、注意点を解説 確定申告のルール 確定申告はルールを守ってスムーズに終わらせましょう。その際の主なポイントは次の3つです。 申告書の作成時に必要な書類とは? 確定申告では、申告内容に応じてさまざまな書類の添付や提示が必要になります。国税庁が公開しているチェックリストを参考にして、事前に準備しておきましょう。 出典)国税庁HP 『申告書に添付・提示する書類』 申告書の提出方法は? 作成した申告書の提出方法は、税務署に直接持参・郵送する方法と、e-Taxを使って提出する方法があります。それぞれ以下で解説します。 1.税務署に直接持参・郵送する 税務署に直接持参する場合には、確定申告の書類一式に加えてマイナンバーカードか、マイナンバーが分かる書類と運転免許証などの身分証の提示、郵送する場合は、それぞれの写しを添付する必要があります。 出典)国税庁HP 『申告書に添付・提示する書類』 2.e-Taxを使って提出する e-Taxを使って提出する場合には、マイナンバーカードを読み込むICカードリーダライタが必要です。ICカードリーダライタは家電量販店などで販売されていますので、事前に購入してセットアップしておきましょう。また、令和3年分の確定申告から、パソコン上に表示された2次元バーコード(QRコード)をスマホで読み取れば、ICカードリーダライタを使わなくてもe-Tax送信ができるようになりました。スマホで申告をする場合には、お持ちのスマホが対応機種なのかもチェックしておきましょう。 ペナルティに注意しよう! 確定申告で注意しなければならないのは、ルールを守らないとペナルティがあることです。 たとえば、確定申告書を提出しても、期限内に税金を納付しなかった場合、残高不足等で口座振替ができなかった場合は延滞税が課せられることがあります。また、確定申告をしなければならない人が正当な理由なく申告しなかった場合や、申告期限を過ぎてから申告した場合は、延滞税だけでなく加算税が課せられてしまいます。 もし、確定申告書の提出後間違いに気付いたら、申告期限内であれば訂正した申告書を提出すればペナルティ対象にはなりません。申告期限を過ぎてしまった場合でも、申告内容を修正できますが、税額を少なく申告していたときには延滞税や加算税が課せられることがあります。間違いに気付いたら早めに修正申告をしましょう。 そのほか、決算書類や帳簿、領収書などは、「確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければならない(白色申告の場合、所得金額などによって異なる)」などのルールもあり、保存をしていないと、税務調査を受けたときに支出を証明することが難しくなってしまうので、注意が必要です。 赤字申告をするメリット 確定申告は手間がかかるので、「赤字決算だし、納付する税金もないから申告をするのはやめよう」と考えてしまうかもしれません。しかし実は、赤字決算でも確定申告をすると次のようなメリットがあります。 損失を繰り越して、翌年以降の黒字と相殺できる 確定申告には「青色申告」と「白色申告」があり、青色申告の場合には赤字決算でも申告をすれば次の年から3年間にわたって損失を繰り越すこと(純損失の繰り越し)ができます。また、前年も青色申告をしていれば、損失の繰り越しのかわりに、前年分の所得税から還付を受けること(純損失の繰り戻し)もできます。 一方、白色申告には、青色申告のような損失の繰り越し・繰り戻しの制度はありませんが、漁業や水産物の養殖など、年によって大きく変動する可能性がある変動所得や、災害などによって被害を受けた被災事業用資産の損失については、損失の繰り越しが認められています。 各種証明書が入手できる 事業資金の融資やローンの審査、クレジットカード申し込みの際などには所得証明が必要になることがありますが、確定申告をしていないと所得証明書を発行してもらえません。また、所得証明書と同様に、課税証明書も確定申告をしないと発行してもらえません。税金を納めていないから、課税証明書は発行されないと思うかもしれませんが、課税額が「0円」であることの証明書が発行されます。 国民健康保険の保険料優遇が受けられる 個人事業主が加入する国民健康保険は、保険料を正しく計算するために、所得の申告が必要です。確定申告をしないと、収入がなくても保険料の軽減措置を受けられなかったり、高額療養費の自己負担限度額が高くなったりする場合があります。 赤字申告の場合、お金は借りられるのか? 銀行など金融機関は、確定申告書や決算書をもとに融資の審査をします。そのため、黒字決算、赤字決算に限らず、確定申告をしていないことで融資自体を断られたり、確定申告をするよう求められたりすることがあります。 一方で、赤字申告だと新たに融資を受けるのは簡単ではありません。赤字申告が続いていると、すでに受けている融資の返済を求められることもあります。ただし、全くお金を借りられないというわけではなく、ビジネスローンや不動産担保ローンであれば、融資を受けられるかもしれません。また、リースバックの利用も検討してみましょう。 ビジネスローン ビジネスローンは事業者向けのローンで、主にノンバンクなどが取り扱っています。担保や保証人がなくても利用できるローンもあるため、赤字申告でもお金を借りられる可能性があります。 不動産担保ローン 不動産担保ローンは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保にしてお金を借りられるローンです。不動産を担保にするため、まとまった金額を無担保ローンに比べて低い金利で借りられる可能性があります。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 リースバック リースバックは、不動産を所有している方が利用できる資金調達法です。自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却した後も同じ家に住み続けることができます。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 まとめ 個人事業主は、原則として毎年確定申告をしなければなりません。また、ご紹介したように、赤字決算でも確定申告をするメリットがあるため、ルールに従って期日までに申告をしましょう。さらに、赤字申告であっても全く融資を受けられないわけではないので、それぞれの状況に合った方法を検討しましょう。 執筆者紹介 菊地 則夫(Norio Kikuchi)/税理士法人スマートシンク代表税理士 成城大学経済学部卒、日本大学大学院法学研究科税法松澤智研究室卒。 得意分野は相続税や不動産税務。「不動産所得」と「住まいと暮らしの税金」のプロフェッショナル集団、税理士法人スマートシンクの代表として日々、土地・建物の税金問題に取り組む。 <主な著書> 「住宅ローン&マイホームの税金がスラスラわかる本2021」エクスナレッジ、「相続の手続と節税が全部わかる本」あさ出版、「不動産税務の手引別巻」大成出版、「不動産実業の手引き別巻」清文社、その他雑誌「家主と地主」、「賃貸Life」新聞など著書多数 赤字決算で法人税はどうなる?資金調達は可能? 営利目的で事業を行う企業や個人事業主は、売上アップや経費削減に取り組むことで利益の確保(黒字決算)を目指します。しかし、不況の煽りを受けて資金繰りが厳しくなり、赤字決算となってしまうこともあ...記事を読む

    2022.03.30資金調達
  • 50代以上に聞いた!老後に対する不安は?

    老後に対する不安の1位は健康、2位は資金、約6割が老後資金不足で悩む

    近年「老後2,000万円問題」など、老後に対して不安を覚える情報が様々なメディアで取り沙汰されています。しかし、実際に老後資金としていくら必要と考えているのか、いくら用意できているのかは三者三様です。 そこで今回は、持ち家がある50歳以上の男女200名を対象に、老後の生活資金や持ち家の所有・管理についてどのような不安を抱いているのか、アンケート調査を実施しました。 老後の不安は「健康」「老後の生活資金」「介護」 Q1:老後の暮らしに不安がありますか?不安がある方は、どのようなことに不安を感じているか、選んでください。 老後の不安に対する調査をしたところ、91.0%が不安を感じていました。「健康面で不安がある」が51.5%で一番多く、「老後の生活資金について不安がある」が48.5%、「介護について不安がある(自身・配偶者・親など)」が41.5%と続いていました。老後の不安を解消するには、健康だけでなく、お金の面でも十分な準備をしておく必要がありそうです。 老後資金は「2,000万円以上」あると安心 Q2:老後の不安を解消するため、いくらくらいの老後資金があれば安心と考えていますか?(厚生年金などの年金を考慮しない場合) 老後の不安を解消するため「2,000万円以上必要」と回答した方は58.0%いました。価格帯別では「2,000万円以上~3,000万円未満」が21.0%と最も多く、「4,000万円以上~5,000万円未満」が12.5%、「3,000万円以上~4,000万円未満」が11.5%と続いています。 かつて、金融庁の報告書で「老後30年間で約2,000万円が不足する」と受け取れる試算が示され、大きな話題になりましたが、「わからない」を除くと約8割が2,000万円以上あれば安心と考えていることがわかりました。 老後資金を思うように準備できていない人は約6割 Q3:老後の資金について、現時点でいくらくらい準備できていますか? 老後資金を現時点で2,000万円以上準備できている方は27.0%にとどまっています。一方で、27.0%が「全く準備できていない」と回答したほか、14.5%が「500万円未満」と回答するなど、老後資金を思うように準備できていない方が6割近くになりました。 Q4:持ち家とその借入を除く、現金、預貯金、有価証券、不動産などの資産はどのくらいですか?なお、計算する際には、老後資金として準備している金額(Q3)も含めてください。 また、持ち家とその借入を除く資産額を調査したところ、2,000万円以上の資産を保有している方は27.0%にとどまりました。さらに気になるのは、32.5%の方が「わからない」と回答したことです。老後不安を解消するためには、必要な生活資金を早めに確保しておきたいところです。そのためにも、まずは自身の資産状況を把握しておきましょう。 持ち家に住み続けたいがリフォームに関して約半数が不安 Q5:今後、持ち家をどのように利用する予定ですか? 現在の持ち家を「住み続ける」と回答した方は66.5%で、そのほかには「売却する」が7.0%や「生前のうちに子どもに譲る」が5.5%など、具体的なプランをお持ちの方がいました。一方で13.5%が「考えたことがない」と回答しています。持ち家に長く住み続ける予定の方が多数を占めましたが、一方で約8割が持ち家に対して何らかの不安を抱いていました。 Q6:持ち家の今後についてどのような不安を抱いていますか? 具体的な不安として、最も多かったのは「修繕費やリフォーム代、固定資産税など維持をするための費用が心配」の48.5%でした。そのほかには「家は残したいが、誰も継いでくれない」が12.5%や「費用以外の問題で、今の家に住み続けるのが難しくなりそう」が11.0%など、切実な悩みを抱えている方もいました。 持ち家に資産価値がある人は過半数 Q7:持ち家はどのような経緯で取得しましたか? 持ち家を「住宅ローンで購入し、現在も返済中」と回答した方は19.5%でした。一方で、持ち家に抱いている不安は、6.5%が「住宅ローンを完済できるか心配」と回答しています。これらを重ね合わせてみると、住宅ローン返済中の3人に1人が「完済できるか不安」と感じており、家計が厳しい方も少なくないようでした。 約半数が持ち家の資産価値を「わからない」と回答 また、持ち家の資産価値を「住宅ローン残高のほうが多い」と回答した方は2.5%とわずかで、27.5%が住宅ローン残高を差し引いた資産価値で「1,000万円以上ある」と回答するなど、半数以上の方が持ち家に資産価値があると考えていました。 なお、持ち家を現金化できる方法を提示したところ約12人に1人が老後の不安が軽減したと回答しました。老後の不安の程度は「変わらない」が多数を占めましたが、持ち家を現金化することで不安が和らぐと考えている方は一定数いるようです。 一方で、持ち家を現金化できるかどうか以前に、持ち家の資産価値を把握していない方が約半数を占めていました。いざという時に持ち家を有効活用するため、自宅の資産価値を把握しておくことで、不安が解消される可能性もあると考えられそうです。 まとめ 老後の暮らしに多くの方が不安を抱いているものの、計画的に老後資金を用意できていない方は多いようです。一方、持ち家を使って老後資金を調達できれば、老後不安の解決につながると感じている方もいました。老後の暮らしや持ち家に対する考え方・悩みはそれぞれ違いますが、暮らし方やニーズが一致すれば、不動産を有効活用することで老後不安を解消できるかもしれません。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンを完済したがお金がない!そんな時の持ち家活用術とは? 50代になると、子どもの教育費もピークを迎えます。また、親も70代を超え、入院したり、介護が必要になったりすることも。あるいは、不動産投資や事業を始める資金が必要になるケースもあるかもしれま...記事を読む

  • リースバックにおける賃貸借契約の種類と退去について

    リースバックの退去について解説!強制退去させられることはある?

    リースバックは、自宅を売却した後も同じ家に住み続けられるサービスです。売却先であるリースバック運営会社と賃貸借契約を締結しますが、契約の種類によって退去の条件が変わります。リースバックの賃貸借契約では、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。 この記事では、リースバックにおける退去について詳しく解説します。 リースバックで強制退去させられる? リースバックにおける退去について考えるとき、サービスを利用する際に締結する賃貸借契約が重要です。リースバック利用時に締結する賃貸借契約は、一般的な賃貸借契約と同じで、普通賃貸借契約か定期借家契約を締結します。契約内容や状況次第では、入居者が希望したとしても、賃貸借契約を更新、もしくは再契約できるとは限りません。状況によっては、以下のような理由で強制退去させられることがあります。 賃貸借契約の違反 建物の状態の悪化 契約期間の満了 それぞれ詳しく確認していきましょう。 賃貸借契約の違反 賃貸借契約に違反した場合、貸主である運営会社から強制退去させられる恐れがあります。運営会社が裁判所へ強制退去を申し立て、請求が認められれば退去しなくてはなりません。一般的な契約違反として、長期間の家賃滞納、近隣への騒音や悪臭、ペットによるトラブル、無断転貸、などが考えられます。 建物の状態の悪化 経年劣化や地震などにより建物が老朽化、損壊することで入居者や隣家に被害が及ぶ恐れがある場合には、貸主は退去を申し出ることができます。なぜなら、建物の瑕疵や修繕義務の違反によって入居者が負傷した場合、賃貸物件の所有者である運営会社が賠償しなければならないためです。また、所有している建物の瑕疵が原因で隣家などに何らかの損害を与えた場合も、運営会社はその損害を賠償しなくてはなりません。 契約期間の満了 前述のとおり、普通借家契約と定期借家契約のどちらかを締結します。どちらも契約期間が定められていますが、普通借家契約は入居者が希望すれば契約更新が可能です。 一方で、定期借家契約は更新がなく、貸主と借主の双方が合意できなければ再契約できません。そのため、運営会社が再契約を認めなければ退去する必要があります。 関連記事はこちら定期借家契約と普通借家契約の違いとは? 退去時に費用はかかる? 退去時に費用がかかるかどうかは、リースバック運営会社によって異なります。契約書に退去時の費用について記載されていますが、サービスを利用する前に、退去時の費用の有無や内容を確認しておきましょう。 また、退去に伴い転居する際にも、新居を購入したり、借りたりする際の初期費用や引っ越し費用がかかります。あくまで間接的にかかる費用ですが、見積もっておくと安心でしょう。 「退去時に現金を払う」と説明された場合の注意点 リースバックでは、退去時に現金を払うことをうたっている運営会社もあります。その名目は「引っ越しサポート費用」など、運営会社によってさまざまです。 サービス利用時に「退去時に現金を払う」と説明されたとしても、対象期間や支払金額などの条件が契約書に明記されているかを必ず確認しておきましょう。 リースバックの退去に関するよくある質問 ここでは、リースバックの退去に関するよくある質問とその回答を紹介します。 自主的に退去することはできる? 自主的に退去したい場合は、貸主であるリースバック運営会社に申し出をすることで退去できます。どれくらい前に申し出ればよいかは契約内容によって異なるため、契約時に確認しておきましょう。 入居者が死亡したら親族はどうなる? リースバックで入居者が死亡した場合、その賃貸借契約は相続の対象です。そのため、親族が賃貸借契約を相続した場合は、そのまま住み続けることができます。 運営会社(物件の所有者)が変わったらどうなる? 運営会社が変わっても退去する必要はありません。賃貸借契約は新しい所有者に引き継がれ、賃貸人が変わるだけです。ただし、定期借家契約の場合は、これまでと同様に再契約を断られるリスクがあります。 退去後の買い戻しはできる? 運営会社は退去後に物件を売却するため、基本的に退去後の買い戻しはできません。交渉次第ではできるかもしれませんが、「買い戻しはできない」と考えておくほうがいいでしょう。リースバックで売却した自宅の買い戻しを想定している場合は、事前に買い戻し条件を確認したうえで退去前に申し出ることが大切です。 まとめ リースバックは自宅を売却してまとまった資金を手に入れた後も、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるのがメリットです。 しかし、定期借家契約の場合は再契約が認められず、退去となるリスクがあるほか、普通借家契約でも、契約違反や建物の老朽化などの理由で退去せざるを得ないこともあります。リースバックを利用する前に、賃貸借契約の種類や退去について理解を深めておきましょう。 ご相談・仮査定はこちら リースバックのご相談・仮査定を無料で受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リースバックのトラブル事例と後悔しないためのポイントを解説 リースバックは一般的な不動産売買にはないメリットがある一方で、契約にあたって思わぬトラブルに巻き込まれる恐れもあるため、商品を調べていく中で「やばい」「やめたほうがいい」などの記事を見ること...記事を読む

  • マンション管理計画認定制度とは?認定基準やメリット・デメリットを解説

    マンション管理計画認定制度とは?メリット・デメリットを解説

    2022年4月から「マンション管理計画認定制度」がスタートします。マンション管理適正化の推進を目的に創設された制度で、マンションの管理や資産価値などに影響を与える可能性があります。 本制度の開始によって、具体的にどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。この記事ではマンション管理計画認定制度の概要や認定基準、手続きの流れについて詳しく解説します。 マンション管理計画認定制度とは? マンション管理計画認定制度とは、マンション管理計画が一定の基準を満たす場合に地方公共団体の認定を受けられる制度です。「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」の改正により、2022年4月から開始されます。 マンションは重要な居住形態ですが、国土交通省によると、2022年末時点で、築40年超のマンションは125.7万戸あります。10年後には260.8万戸(約2.1倍)、20年後には445.0万戸(約3.5倍)に増加する見込みです。築年数が古いマンションが増加傾向にあり、維持管理には多くの課題があります。 マンション管理計画認定制度の創設は、マンション管理の適正化を推進することが目的です。マンションの管理水準を底上げするため、必要に応じて地方公共団体が管理組合に指導や助言、勧告を実施します。 なお、認定を受けることができるのは、地方公共団体が「マンション管理適正化推進計画」を作成している地域にあるマンションです。 マンション管理計画の認定基準 マンション管理計画認定制度の創設を踏まえ、2021年9月には「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な指針(管理適正化指針)」が策定されました。本指針では、管理計画認定制度の認定基準などが定められています。主な認定基準は以下のとおりです。 修繕その他管理の方法 修繕その他の管理にかかる資金計画 管理組合の運営状況 管理適正化指針・市区独自の管理適正化指針に照らして適正なものであること 「長期修繕計画の計画期間が一定期間あるか」「計画に基づいて修繕積立金が設定されているか」「定期的に総会を開催しているか」といった点が審査されます。また、管理適正化指針や市区独自の指針に照らして、管理計画が適正なものであるかも判断されます。 助言・指導・勧告の判断基準の目安 地方公共団体は、管理適正化指針や市区独自の指針に基づき、必要に応じて管理組合の管理者などに助言や指導、勧告を行います。助言・指導・勧告の判断基準の目安は以下のとおりです。 助言・指導・勧告の判断基準の目安 判断項目助言・指導・勧告の判断基準の目安 管理組合の運営管理者が定められていない総会が開催されていない 管理規約管理規約が存在しない 管理組合の経理管理費と修繕積立金額が区分されていない 長期修繕計画の作成および見直し修繕積立金が積み立てられていない その他組合員名簿、居住者名簿がない 上記のような状況の場合、マンション管理が不適切と判断される恐れがあります。 マンション管理計画認定制度のメリット マンション管理計画認定制度のメリットは以下のとおりです。 マンション管理水準の維持向上につながる 市場評価・地域価値の向上が期待できる 購入希望者がマンション管理状況を把握しやすくなる 金利優遇を受けられる(新築の場合) 管理者や区分所有者のマンション管理に対する意識が高まり、管理水準の維持向上につながります。地方公共団体の認定を受けたマンションであることをアピールすれば、市場評価や立地している地域価値の向上も期待できるでしょう。 現在は、購入希望者がマンションの管理状況を把握するのは簡単ではありません。しかし、今後は認定の有無を確認すれば、一定の管理水準を満たしているかを把握できるようになります。 また、中古だけでなく、新築マンションにも管理計画を認定する制度が開始される予定です(予備認定)。予備認定を受けた新築マンションを取得する場合は、住宅金融支援機構の「フラット35」の金利が一定期間引き下げられます。 出典)住宅金融支援機構 「【フラット35】令和4年4月の制度変更事項のお知らせ」より マンション管理計画認定制度のデメリット マンション管理計画認定制度のデメリットは、マンション管理組合の事務負担が増えることです。 認定を受けるには認定申請書や長期修繕計画を作成し、必要書類を準備して地方公共団体に申請しなくてはなりません。一度認定を受けたら終わりではなく、5年ごとの更新もあります。管理水準の底上げは期待できますが、管理組合の負担は大きなものになるでしょう。 ただし、マンション管理センターによる「管理計画認定手続き支援サービス(オンライン申請)」を利用すれば、事務負担の軽減が期待できます(詳細は後述)。 マンション管理計画認定の流れ マンション管理計画の認定申請方法は、「オンライン申請」と「窓口への直接申請」の2つがあります。オンライン申請の流れは以下のとおりです。 マンション管理センターへ認定申請依頼 マンション管理士の事前確認 事前確認適合通知(適合証)の発行 地方公共団体へ認定申請 認定(マンション管理センターの閲覧サイトで公表) オンライン申請でマンション管理士の事前確認を受けて適合証が発行されると、地方公共団体が審査の事務手続きを省略できる仕組みになっています。オンライン申請のほうが、申請手続きをスムーズに進められるでしょう。 窓口への直接申請は地方公共団体によって手続きの流れが異なるため、申請する地方公共団体に直接確認してください。事前確認や認定申請では手数料がかかる可能性もあるので、申請前に確認しておくことが大切です。 認定申請の必要書類 認定申請に必要な書類は以下のとおりです(神奈川県の場合)。 認定申請書 総会議事録の写し 管理規約の写し 貸借対照表 収支決算書 各戸の修繕積立金滞納額がわかる書類 長期修繕計画の写し 組合員・居住者の名簿の保証書 必要書類を準備する際は、記載内容や事業年度などの諸条件を地方公共団体に確認しておきましょう。神奈川県の場合、長期修繕計画については「計画期間30年以上」「残存期間内に大規模修繕工事2回以上含まれている」といった要件があります。 マンション長寿命化促進税制が与える影響 令和5年度税制改正の大綱にて、マンション長寿命化促進税制の創設が決定しました。この制度は、一定の条件を満たしたマンションを所有する区分所有者の固定資産税を減額できる制度です。 マンション長寿命化促進税制の適用を受けるには、マンションと管理計画の面で、条件を満たす必要があります。マンション管理計画認定制度の認定を受けることで、管理計画の面での適用条件を満たすことができます。 マンション長寿命化促進税制の創設により、マンション管理計画認定制度利用件数の増加が期待されます。 関連記事はこちらマンション長寿命化促進税制とは?概要やメリットを解説 まとめ マンション管理計画認定制度を利用して地方公共団体から認定を受けると、マンションの価値向上につながるかもしれません。ただし、認定基準はマンションを適切に維持管理するうえで最低限の基準を定めているものなので、認定を受けることが必ずしも価値の向上に寄与するとは限りません。 マンション管理組合の事務負担が増えるデメリットがあり、認定制度の効果には不透明な部分もあります。認定制度創設の影響は冷静に見極める必要があるでしょう。 出典) ・神奈川県県土整備局「マンション管理計画認定制度管理組合向け説明会」 ・国土交通省 「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」の策定について 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ DINKsマンションとは?メリットや注意点を解説 ここ数年、”DINKsマンション”や”コンパクトマンション”の供給戸数が再び増加しており、今後さらに人気が高まる可能性があります。DINKsマンションを購入するメリットがある一方で、購入する...記事を読む

    2022.03.02制度
  • リースバックの契約までの流れと必要書類、注意点を解説

    リースバックを検討するにあたり、どのように契約が進んでいくのか不安に思う人もいるのではないでしょうか。リースバックの契約が終わってから後悔することが無いように、契約がどのような流れで進み、何に注意しなければならないかを正しく認識しておきましょう。 この記事では、リースバックの契約までの流れや注意点について詳しく解説します。 リースバックの契約までの流れ 一般的なリースバックの契約の流れは以下のとおりです。 ご相談・仮査定 仮査定結果の提示 現地調査及び査定 契約条件の提示 契約 売買成立・賃貸開始 それぞれどういった手続きなのか、順番に詳しく解説します。 1.ご相談・仮査定 まずはリースバック運営会社に問い合わせをします。一般的には、所有物件の状況や売却価格、家賃などの希望条件について確認されます。相談して問題がなければ、仮査定の申込を行いましょう。なお、仮査定の際には固定資産税額やマンションの場合には管理費や共益費などを確認されるので、問い合わせの際には正しく把握しておくといいでしょう。 2.仮査定結果(売却価格・家賃)の提示 問い合わせ時に提示した情報から仮査定が行われ、概算の売買金額と家賃が提示されます。仮査定では、あくまでその周辺地域の成約事例を基に算出されるので、戸建てなどの個別要因が強い不動産の場合は、本査定との乖離が大きくなることもあります。 3.現地調査及び査定 運営会社が実際に現地に訪問し、物件の状況確認や図面との照合、境界線の確認などが実施されます。仮査定時には分からなかった建物の不具合や図面との相違などがないかを確認したうえで、最終的な売買金額と家賃が確定します。 4.契約条件(売却価格・家賃)の提示 運営会社から本審査の結果が通知されます。売却価格や家賃などの契約条件が提示されるので、内容を確認して契約するかどうかを判断しましょう。なお、運営会社によっては売買価格や家賃の調整が一定の範囲内で可能な場合もあるので、自身の希望を伝えてみるといいでしょう。 5.契約 契約条件に同意する場合は契約手続きに進みます。契約の意思を伝えると、必要書類の確認と契約日の日程調整が行われます。ここで締結される契約は売買契約と賃貸借契約で、物件の買い戻しのための売買予約契約を締結する会社もあります。 6.売買成立・賃貸開始 売買代金の支払いが完了すると、売買が成立して物件の所有権が運営会社に移転します。それと同時に賃貸借契約も成立し、自宅の賃貸が開始されます。 リースバックを利用する際に必要な書類 リースバックを契約するまでに必要書類の提出を求められるタイミングは、本査定時と契約締結時の2つです。それぞれに必要な書類と取得方法を解説します。 リースバックの本査定時に必要な書類と入手方法 リースバックの本査定時に必要な書類は以下のとおりです。 身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード、保険証など) 住民票 固定資産税通知書 収入証明書(源泉徴収票、年金通知書など) 身分証明書や住民票は、本人確認や住所確認のために使用します。住民票は自治体の窓口のほか、マイナンバーカードがあればコンビニで発行することも可能です。 固定資産税通知書は、不動産の評価額を確認する際に使用します。固定資産税通知書は自治体から毎年送付されるもので、査定価格の算出のために必要な書類です。なお、固定資産税を確認するために使用するため、場合によっては提出までは求められないかもしれません。 また、リースバックでは賃貸となっても支払いが滞りなくできるかを確認するため、収入状況も審査されます。収入証明書として、勤務先から受け取った源泉徴収票や年金通知書などを準備しておきましょう。 リースバックの契約時に必要な書類と入手方法 リースバックは、査定時と契約時で必要書類が異なります。また、契約は「不動産売買契約」と「賃貸借契約」の2つに分かれており、それぞれ必要な書類は異なりますが、売買契約に伴って利用される書類がほとんどです。 不動産売買契約時には、身分証明書の他に以下の書類が必要です。 印鑑証明書(実印) 権利証(登記識別情報通知、登記済証) 売買契約時に必要な書類は、一般的な不動産売却と同じです。印鑑証明書は、印鑑が登録されたもの(実印)であることを証明する書類です。虚偽の申請で買主が不利益を受けないように、不動産売買では印鑑証明書を添付する必要があります。印鑑証明書は自治体の窓口のほか、マイナンバーカードがあればコンビニで発行することも可能です。 権利証は、不動産の所有者であることを証明する書類です。リースバックで自宅を売却すると、所有権が運営会社に移転します。この所有権移転登記を行う際に、権利証が必要になります。権利証は自宅を取得したときに発行されていますが、万が一紛失している場合にも代替措置があるので、運営会社に相談してみましょう。 賃貸借契約時には、身分証明書や収入証明書を準備します。連帯保証人をたてる場合は、連帯保証人の承諾書も必要です。ただし、保証会社と契約することで連帯保証人が不要となる運営会社もあります。 リースバックの契約時に必要に応じて提出する書類 リースバックの契約時に以下の書類の提出を求められる場合もあります。 ローン残高証明書・抵当権抹消書類 自宅の図面 掘削承諾書(前面道路が私道の場合) 自宅購入時の重要事項説明書 自宅建築時の建築確認通知書 境界確定書 管理規約・総会議事録(マンションの場合) リースバックの契約書に関する注意点 一般的に、リースバックの契約に用いられるのは「売買契約書」と「賃貸借契約書」の2つです。それぞれの契約書の注意点を解説します。 売買契約書 売買契約書は、物件の売却価格や売却代金の支払方法、支払日を確認しましょう。その他、通常の不動産売却と同様に、売主が負う契約不適合責任がどのように記載されているか確認しておくことが大切です。 また、リースバックは売却した自宅の買い戻しが可能な場合、買い戻しの可否や可能期間、買い戻し金額などが売買契約書に特約として記載されています。将来買い戻しを想定しているなら、買い戻し事項の有無と内容を確認しておきましょう。なお、運営会社によっては、売買契約書上の特約ではなく、売買予約契約書を別途締結する場合もあります。 賃貸借契約書 賃貸借契約書を確認する際に最も重要なのが、賃貸借契約が「普通借家契約」か「定期借家契約」かです。どちらも契約期間が定められていますが、普通借家契約は借主であるリースバックの利用者が希望すれば契約更新が可能です。一方、定期借家契約は更新がなく、再契約するためには運営会社の合意が必要となります。 関連記事はこちら定期借家契約と普通借家契約の違いとは? 契約の種類を確認したうえで、敷金や礼金、仲介手数料などの初期費用、更新料の有無、退去の申出期限、原状回復費用の負担割合といった基本的な内容も確認しておきましょう。 リースバックの利用に関する注意点 リースバックを利用する際は、複数の運営会社を比較することが大切です。運営会社によって売却価格や家賃、賃貸借契約の期間・種類が異なります。複数の運営会社に相談したうえで、希望条件に近い会社と契約しましょう。 また、リースバックで自宅を売却する前に、相続人と相談することも重要です。売却後は自宅の所有権が運営会社に移転するため、自宅は相続財産の対象外となります。あらかじめ相続人と相談しておかないと、相続発生後に相続人がリースバックに気づき、トラブルとなるケースもあります。リースバックを利用する場合、自宅を売却することをあらかじめ契約前に相続人に伝えるようにしましょう。 まとめ リースバックは、老後資金の確保や相続トラブルの回避に有効です。しかし、どのように契約が進行し、何に注意すべきかを把握しておかないと、トラブルになる恐れもあります。特に普通借家契約と定期借家契約の違いには注意が必要です。 リースバックで自宅を売却してから後悔しないように、正しく契約の流れと注意点を理解してから実際の契約を進めましょう。 ご相談・仮査定はこちら リースバックのご相談・仮査定を無料で受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リースバックのトラブル事例と後悔しないためのポイントを解説 リースバックは一般的な不動産売買にはないメリットがある一方で、契約にあたって思わぬトラブルに巻き込まれる恐れもあるため、商品を調べていく中で「やばい」「やめたほうがいい」などの記事を見ること...記事を読む