住まいとお金の知恵袋 一覧(公開日順)

  • フラット35Sとは

    フラット35Sとは?種類や金利、利用条件について解説

    近年、全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」の金利が上がっています。「今後金利がますます上昇するのでは?」と不安になり、全期間固定金利であるフラット35を利用したい一方で、既にフラット35の金利を高く感じており、どうするべきか迷っている人もいるかもしれません。 そういった方に知っていただきたいのが、「フラット35S」という制度です。一定の条件を満たし、この制度を利用することで、フラット35の金利を一定期間下げることができます。この記事では、フラット35Sの種類や金利、利用の条件について解説します。 フラット35Sとは フラット35Sとは、フラット35の申込者が長期優良住宅など、省エネルギー性や耐震性などを備えた質の高い住宅を取得する場合に、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度です。新築住宅だけでなく、中古住宅も対象です。 住宅の基準は通常のフラット35より厳しく設定されますが、基準を満たせば金利が下がるため、返済負担の軽減が期待できます。フラット35Sは、住宅の技術基準の高い順から、「フラット35S(ZEH)」、「フラット35S(金利Aプラン)」、「フラット35S(金利Bプラン)」の3種類があります。 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】S」 フラット35Sの金利の引下げ幅と期間 フラット35Sの金利の引下げ幅と引下げ期間は、プランによって異なります。 フラット35S(ZEH)は、当初5年間は年-0.5%、6年目から10年目までは年-0.25%の引下げとなります。対してフラット35S(金利Aプラン)は当初10年間、フラット35S(金利Bプラン)は当初5年間、それぞれ年-0.25%の引下げとなります。 なお、どのプランでも金利引下げ期間が終了したら、通常のフラット35の金利に戻ります。 フラット35Sの返済シミュレーション フラット35Sによって、返済負担はどのくらい軽減されるのでしょうか。 下表は、借入額3,000万円(融資率9割以下)、借入金利年1.80%、借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なしの場合の返済シミュレーションをまとめたものです。 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】S」 通常のフラット35と比較した総返済額の負担軽減効果は、フラット35S(ZEH)で約114万円、フラット35S(金利Aプラン)で約74万円、フラット35S(金利Bプラン)で約40万円となります。より住宅の技術基準が厳しいプランほど、総返済額の負担軽減効果も高くなります。 フラット35Sの対象となる住宅の技術基準 フラット35Sを利用するには、フラット35の技術基準に加えて、プランごとに定められた追加基準を満たす必要があります。ここでは、フラット35Sの対象住宅の主な技術基準を紹介します。 ①フラット35S(ZEH) フラット35S(ZEH)では、「断熱性能」と「一次エネルギー消費量」の基準が設定されています。断熱性能は地域の区分、一次エネルギー消費量はZEH住宅の種類(区分)に応じた基準値を満たすことが要件です。 その他にも、戸建てと戸建て以外(マンションなど)で、それぞれ適用条件が詳細に定められています。 出典)【フラット35】S(ZEH)に関する基準 ②フラット35S(金利Aプラン) フラット35S(金利Aプラン)は、以下1~5のうち、いずれか1つ以上の基準を満たす新築住宅が対象です。 断熱等性能等級5以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級6の住宅 耐震等級3の住宅 免震建築物 高齢者等配慮対策等級4以上の住宅 長期優良住宅 中古住宅については、基準が異なります。詳しくは取扱金融機関にご確認ください。 出典)【フラット35】Sの対象となる住宅 ③フラット35S(金利Bプラン) フラット35S(金利Bプラン)は、以下1~5のうち、いずれか1つ以上の基準を満たす新築住宅が対象です。 断熱等性能等級4以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級6の住宅 断熱等性能等級5以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級4または等級5の住宅 耐震等級2以上の住宅 高齢者等配慮対策等級3以上の住宅 劣化対策等級3の住宅で、かつ、維持管理対策等級2以上の住宅 金利Aプランと同じく、中古住宅は基準が異なります。詳細は取扱金融機関にご確認ください。 出典)【フラット35】Sの対象となる住宅 フラット35Sの注意点 フラット35Sは金利引下げの特典を受けられますが、以下の点に注意が必要です。 予算金額次第で利用できない場合がある フラット35Sは予算が決まっており、全体の実行額が予算額に達する見込みとなった時点で受付が終了します。受付終了日は、終了する3週間前までにフラット35のホームページにて掲載されます。利用を検討している場合は、定期的に確認しておきましょう。 フラット35であれば必ず併用できるわけではない フラット35には、いくつか商品ラインナップがあります。そのうち、「フラット35(リノベ)※」はフラット35Sと併用できません。また、資金使途が借り換えの場合も利用できないので注意しましょう。 ※フラット35(リノベ)とは、中古住宅の購入とあわせて一定の要件を満たすリフォームを実施すると、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度 借入期間中ずっと金利が下がるわけではない フラット35Sの金利引下げ期間は当初5~10年間です。金利引下げ期間が終了すると金利は元に戻り、その後は返済負担が大きくなります。金利が元に戻ったときに、返済が厳しくならないかを考えておく必要があります。 フラット35Sを利用すべき? フラット35を利用することが決まっている場合は、検討すべきでしょう。総返済額が減るため、一定期間金利を下げられるのは大きなメリットといえます。 ただし、フラット35Sを利用して金利を一定期間下げられたとしても、民間の金融機関の住宅ローンを固定金利で借りたほうが、総返済額が少なく済むことも考えられます。他の住宅ローンと総返済額などを比較したうえで、フラット35Sを利用するか判断することが大切です。 まとめ 一定の省エネルギー性や耐震性などを備えた住宅を購入する場合は、フラット35Sを利用することで金利が下がるかもしれません。固定金利で住宅ローンを組む場合は、銀行などのローンと比較したうえで、フラット35Sを検討してみてはいかがでしょうか。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 60歳以上のフラット35利用者が増加傾向!最新の実績調査を考察 フラット35とは、住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して提供している全期間固定金利型の住宅ローンです。借入時に返済終了までの金利と返済額が確定するため、長期にわたる返済計画を立てやすいのが...記事を読む

  • 親子リレーローンとは

    親子リレーローンとは?メリット・デメリットと注意点を解説

    親子リレーローンは、親子二世代にわたって返済する仕組みの住宅ローン商品です。親子リレーローンを利用することで、単独でローンを組むより借入金額を増やせる可能性があります。一方で、親子リレーローンにはデメリットもあるので、仕組みを理解して利用することが大切です。 この記事では、親子リレーローンの概要やメリットとデメリット、注意点を解説します。 親子リレーローンの概要 親子リレーローンとは、主に親子で1つの住宅ローンを契約し、二世代にわたって返済していくローンです。一般的には最初に親が返済し、親が定年退職したタイミングなどで子に返済を引き継ぎます。 「親子」という名称ですが、フラット35の親子ローンなど、申込者本人の孫や、子もしくは孫の配偶者を後継者とできる場合もあります。また、新築や購入だけでなく、リフォームや住み替え、借り換えでも利用できます。 申込要件 親子リレーローンは、金融機関ごとに申込要件が設定されています。例えば、とある民間の金融機関では、以下のような申込要件が設定されています。 親子で同居している、または将来同居を予定している 子の申込時年齢が満70歳未満、完済時年齢が満80歳未満(親の完済時年齢は上限なし) 安定した継続収入がある 団体信用生命保険(団信)に加入できる 親子の同居が要件となるかは、金融機関によって異なります。例えば、住宅金融支援機構が提供するフラット35の親子リレー返済では、後継者の同居は問われません。 原則として、親子ともに安定収入があることが要件です。また、親子のどちらかが団信に加入する必要があります。金融機関によっては、親子ともに団信への加入が求められる場合もあります。申込要件は金融機関によって異なるため、事前に確認しておきましょう。 親子リレーローンのメリット 単独で住宅ローンを組む場合に比べて、親子リレーローンには以下のようなメリットがあります。 借入金額を増やせる 親子リレーローンでは、親子の収入合算で借入可能額を計算します。そのため、親または子が単独で住宅ローンを組むより借入金額を増やせます。単独で住宅ローンを申し込んだものの、借入希望額に届かなかった場合に有効です。 月々の返済額を減らせる 親子リレーローンは、親から子へ返済が引き継げます。そのため、単独借り入れでは高齢であることを理由に期間が短くなってしまう場合でも、親子リレーローンであれば、返済期間を長くすることが可能です。返済期間が長くなれば、その分月々の返済額を抑えられます。 住宅ローン控除をそれぞれで利用できる 親子リレーローンでは、住宅の持分割合や返済負担割合に応じて、親と子がそれぞれ住宅ローン控除を利用できます。例えば、住宅の持分が2分の1ずつの場合、親と子のどちらもローン年末残高の50%を基準に控除を受けられます。 なお、持分割合と返済負担割合が一致しない場合、控除を受けられる金額が変わるため注意が必要です。詳しくは、税理士などの専門家に相談しましょう。 関連記事はこちら【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 親子リレーローンのデメリット 一方で、親子リレーローンには以下のようなデメリットもあります。 親が亡くなった際に子に債務が残る 親子リレーローンは、基本的に子だけが団信に加入するか、親子がそれぞれ借入金額の1/2ずつ団信に加入する場合がほとんどです。そのため、どちらの場合であっても親が先に亡くなると、子に債務が残ることになります。 加えて、親が団信に加入できないローンの場合、親が返済期間中の早い段階で亡くなってしまった場合に、子に過大な負債が残る恐れもあります。返済を引き継ぐ子に過度な負担をかけないためには、親も団信に加入できるローンを選ぶのが有効です。 他のローンが組めなくなることがある 親子リレーローンでは、返済を引き継ぐ子は連帯債務者となります。親の返済期間中も同じ返済義務を負うため、子は他のローンを組めなくなる場合があります。他のローンを組むことを想定している場合は注意が必要です。 贈与とみなされる場合がある 親子リレーローンでは、住宅の持分割合とローンの返済負担割合を一致させるのが一般的です。「子の返済を親が負担する」など、一方に有利な変更をすると贈与とみなされ、贈与税の課税対象となる恐れがあります。贈与とみなされることに不安がある場合は、返済方法について税理士などの専門家に確認しておくと安心です。 親子リレーローンの注意点 親子リレーローンを利用する場合は、以下の点に注意しましょう。 住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例が使えない 父母や祖父母から住宅の新築や取得、増改築に充てるために金銭の贈与を受けた場合、一定額まで贈与税が非課税になる特例があります。非課税限度額は、省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外の住宅は500万円です。 しかし、親子リレーローンは親子で住宅ローンを組んで返済していくため、この贈与税の特例の適用対象外です。 相続人の間でトラブルが起きる場合がある 親子リレーローンを組む場合、住宅の親の持分は相続財産に含まれます。子(相続人)が複数いる場合、その持分を巡ってトラブルになる恐れがあるため、事前に財産の分け方などを話し合っておくことが大切です。 Appendix:フラット35の親子リレーローンは親だけで団信に加入できる デメリットで解説したとおり、基本的に親子リレーローンは、親が先に亡くなると、子に債務が残ることになります。 しかし、フラット35の親子リレーローンの場合、親が返済している間は親が単独で団信に加入できます*。つまり、親が債務を引き継ぐ前(80歳未満)に亡くなった場合、保険金によって住宅ローンを完済でき、子に債務を残さずに済みます。 ただし、もし親が80歳になっても存命である場合は、団信に加入していない状態で子に債務を引き継がなければなりません。ただ、そのタイミングで、新たに子が団信に加入することもできます*。 以上を踏まえると、フラット35の親子リレーローンは「子に債務を残さずに済む可能性がある」という点で、有効な手段と言えます。親子リレーローンを利用する場合は併せて検討しても良いでしょう。 ※健康状態によっては団信に加入できない恐れもあるので注意が必要です。 まとめ 親子リレーローンは、単独でローンを組むより借入可能額が増えるため、理想の住宅を取得しやすくなるのがメリットです。住宅ローン控除も、親と子がそれぞれ利用できます。一方で、親が返済期間中に亡くなると、子に過大な負債が残る恐れがあります。相続人が複数いる場合は、相続トラブルの原因にもなります。 親との同居を見据えて住宅を購入する場合は、仕組みやメリットとデメリットを理解したうえで、親子リレーローンを検討してみるといいでしょう。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 老後生活への準備として住み替えやリフォームをする場合、まとまった資金が必要になります。しかし、高齢になると、一般的な住宅ローンやリフォームローンの審査に通りにくくなります。 このような時に活...記事を読む

  • 持ち家派が減少?

    持ち家派が減少?アンケート結果から住まいの実態を探る

    住まい選びは、暮らしに大きな影響を与えます。また、自宅は一度購入すると、そう簡単には売却や住み替えができなくなります。今後の住まいを検討する際に、他の人の考え方や動向が参考になるかもしれません。 この記事では、全国宅地建物取引業協会連合会の「2023年 住宅居住白書(全国の20歳以上の男女が調査対象)」から、住まいに関する実態と読み取れることを紹介します。 出典)全国宅地建物取引業協会連合会「2023年 住宅居住白書」 不動産は買い時か否か 「いま、不動産は買い時だと思いますか」に対する回答結果は下表のとおりです。 回答 2022年 2023年 買い時だと思う 6.4% 15.8% 買い時だと思わない 26.4% 37.0% わからない 67.2% 47.2% わからないと答えた人が20%減少し、買い時だと思う人、思わない人ともに、前年比で10%程度上昇しています。この結果から、「わからない」を除いた時に、買い時だと思う人の比率が増加していることがわかります。 まず、買い時だと思う理由として多く挙がったのは、以下の理由です。 今後住宅ローン金利が上昇しそうだから(今の金利が低いから):44.0% 不動産価値(価格)が安定または上昇しそうだから:24.9% 住宅ローン減税など住宅取得のための支援制度が充実しているから:24.6% 続いて、買い時だと思わない理由として多く挙がったのは、以下の理由です。 不動産価値(価格)が下落しそうだから:29.7% 自分の収入が不安定または減少しているから:25.4% 住宅ローン減税など税制優遇が見直されそうだから:12.5% これらの結果から、不動産価格の面では、上昇するよりも下落すると考える人が多数のようです。一方で、金利の面では、米国をはじめとする諸外国の政策金利が上昇していることもあり、「日本でも将来金利が上昇する」と予測し、金利が低い今のうちに住宅ローンを組んでおきたいと考えている人が多いようです。 収入の面については、「収入が安定しているから(買い時だと思う)」に対して、「収入が安定していないから(買い時だと思わない)」と回答する人が多くなっています。この結果から、収入への不安から不動産の購入に踏み切れない人が多いことが読み取れます。 持ち家派は賃貸派の約4倍 「あなたは「持ち家派」「賃貸派」どちらですか(現在の住まいは関係なし)」の回答結果は、持ち家派67.5%、賃貸派17.4%となりました。 <持ち家派の理由> 家賃を払い続けることが無駄に思えるから(56.8%) 落ち着きたいから(37.4%) 老後の住まいが心配だから(35.3%) 持ち家を選ぶ人は、自分のものではない賃貸住宅に家賃を払い続けることに抵抗があるようです。また、家に対して心理的、経済的な安心感を求める傾向があります。 <賃貸派の理由> 住宅ローンに縛られたくないから(45.3%) 税金や維持管理にコストがかかるから(34.3%) 不動産を所有しない身軽さがいいから(29.4%) 一方、賃貸を選ぶ人は、自由や身軽さを重視する傾向が見られます。また、固定資産税や火災保険料、修繕費などの維持管理コストにも敏感です。収入に対する不安から、多額のローンを組むことに抵抗がある人も多いと考えられます。 持ち家派は初の60%台となり、過去8年の調査で最低となりました。ただし、賃貸派も前年より減少しており、今回(2023年)から回答に「どちらともいえない」という選択肢が追加されています。それを考慮すると、全体的に大きな変化はないとも考えられます。 災害に対する意識が高まっている 災害に対する住まいの意識として、「あてはまる」と回答した結果は以下のとおりです。 築年数や構造(免震、耐震)について考えるようになった(35.2%) 緊急避難場所や防災マップ・ハザードマップを意識するようになった(35.2%) 地盤などの状況を意識するようになった(30.3%) 災害に対する意識は全体的に高く、3人に1人は免震やハザードマップ、地盤などを意識しています。 ハザードマップについて「知っている」と回答した人は83.8%で、認知度は高いようです。住んでいる地域のハザードマップを見たことがある人は、60代の75.1%に対し、20代は36.4%でした。関心度は年齢と比例して高く、若年層ほど無関心な傾向にあります。 全体的に災害への意識が高いのは、地球温暖化の影響で台風や洪水などの被害が増えていることや、日本は地震大国であり、過去に「東日本大震災」などの大地震も発生していることが理由だと考えられます。 また、宅建業法施行規則の改正により、不動産取引の重要事項説明においてハザードマップの確認が追加(2020年8月28日から施行)されたことも、意識の高まりにつながっている可能性があります。 関連記事はこちらハザードマップとは?使い方や活用ポイントを解説 介護を意識した住まい方が重視されている 「今後求めている住まい方」については、以下の回答が上位となりました。 介護が必要になっても年金の範囲内で安心して暮らし続けられる住まいの整備(26.5%) 中心市街地など利便性の高い都心居住の推進(21.2%) 職場の近くで住まう職住近接の推進(18.8%) 長寿命化の影響で、年代が上がるにつれて介護や金銭面を強く意識しており、老後を見据えて住まいを選ぶ傾向が見られます。一方で、年代が若いほど職住近接を求めており、住まい選びで通勤しやすさを重視しているようです。 関連記事はこちら老後の住まいはどうすべき?ポイントを徹底解説 空き家問題に対する意識は受動的である 少子高齢化の影響により、今後は空き家の急増が見込まれています。 空き家に関する現状調査では、「自身や家族の家が空き家になっている、または将来空き家になる可能性がある」と回答した人は35.0%です。そのうち、「話し合いをしていない」「放置、何も考えていない」と回答した人は6割を超えています。 空き家問題への対策については、補助金や税制優遇、行政からの働きかけが有効と考える人が多数を占めています。 多くの人が、空き家問題を認識しているものの、緊急性を感じておらず、問題を先送りしている人が多いのが現状です。また、「国や自治体が利用者に働きかけることで解決が見込める」と考えており、全体的に受け身の姿勢が見られます。 関連記事はこちら空き家を相続したらどうするべき?対処方法や税制特例について解説 まとめ 「持ち家か賃貸か」「住まいに何を求めるか」といったテーマは正解がなく、考え方は人それぞれです。ただし、一般消費者の動向は、自身の住まい選びの参考資料として活用できます。住まい選びで何を重視すべきか分からない場合は、本アンケートの調査結果を参考にしてみてはいかがでしょうか。 出典)全国宅地建物取引業協会連合会「2023年 住宅居住白書」 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む

  • 林家さん記事Vol.2

    林家正蔵師匠が語る「現在」と「落語家仲間に言えなかった秘話」

    落語家の林家正蔵氏(60)(以下「正蔵師匠」)の自宅にお邪魔して、住まいやお金に関するお話をフリーアナウンサーの八木亜希子さんが伺いました。 この記事は、SBIシニアの住まいとお金ch(YouTubeチャンネル)で公開されている、「林家正蔵さんが抱く住まいの夢とは?師匠から視聴者へ仰天メッセージ!【MC:八木亜希子】」を元に作成しています。動画の詳細はこちらをご覧ください。 息子と弟子の線引き 正蔵師匠の息子は、林家たま平(以下「たま平氏」)として落語家の道を選んでいます。たま平氏が二ツ目に昇進した頃、正蔵師匠はたま平氏を実家から出したといいます。 『自分の収入にあった自分の家を持て』という語りぶりから、落語家であり、弟子となったたま平氏に対し、「父親」ではなく「師匠」として接していることが伝わってきました。 正蔵師匠は、楽屋で落語家親子が家の会話をしているのを見るのが嫌いだったといいます。『親子だからそんな話をしているのかもしれないけれども、弟子師匠だったら許されない。』と、息子と弟子の線引きについて自身の考え方を明かしました。こうした考え方から、『一人前、幕内に上がるまではもう絶対(家の会話を楽屋で)しない』と語りました。 林家正蔵師匠の落語との向き合い方 前名の林家こぶ平時代は、多くても年100高座くらいだったのに対し、現在は多いときで年800高座にもなっているそうです。高座数が増えたことにより、落語のことがこの歳になって色々分かってきたといいます。 正蔵師匠は、高座のセッティングを考えているとき、『(落語は)孤独な芸能だなあ』と思うそうです。 国立演芸場の高座と客席 出典)文化庁広報誌buncal(ぶんかる)「こころ安らぐ“寄席”という空間」 『(高座の上では)ごまかしがきかないですね。(中略)身の丈以上にはできないし、それ以下のものもお出しできない』といいます。そんな高座の上で「自身の喜怒哀楽をどう登場人物に乗せるのか」、「どんな落語をするのか」と、日々考えながら過ごしているそうです。 落語に関する初出しエピソード 『日々落語のことばかり考えているかなあ』と語る正蔵師匠ですが、今回のインタビューで「落語に関する初出しエピソード」を紹介してくれました。これまで落語家仲間にも内緒にしていたエピソードだといいます。 落語家仲間には『YouTube見ないでください』とまで語った衝撃のエピソードは、本編動画でぜひご確認ください。正蔵師匠から視聴者の皆様への「仰天メッセージ」も必見です。 本編動画はこちら なお、こちらの記事は前編と後編に分かれています。まだご一読いただいていない方は、ぜひ前編も併せてお楽しみください。 >前編はこちら 執筆者紹介 SBIシニアの住まいとお金 メディア部 SBIシニアの住まいとお金は、【人生100年時代を見据えて、「住まい」も「お金」も充実できる人生をサポートしたい】との思いから、60歳以上の持ち家の方を対象に「Youtubeで楽しむ」、「セミナーで学ぶ」、「専門家に相談する」の3つのサービスを運営しています。 <公式サイト> https://www.sbi-efinance.co.jp/senior/ <YouTubeチャンネル> https://www.youtube.com/@sbi_senior/ 瀬古利彦氏が「自宅」と「家族」を語る 元マラソン選手の瀬古利彦氏(67)(以下「瀬古氏」)のお住まいにお邪魔して、住まいやお金に関するお話をフリーアナウンサーの八木亜希子さんが伺いました。 この記事は、SBIシニアの住まいとお金...記事を読む

  • フラット35利用者調査

    60歳以上のフラット35利用者が増加傾向!最新の実績調査を考察

    フラット35とは、住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して提供している全期間固定金利型の住宅ローンです。借入時に返済終了までの金利と返済額が確定するため、長期にわたる返済計画を立てやすいのが特長です。 この記事では、住宅金融支援機構の「2022年度 フラット35利用者調査」の結果から、利用実績や読み取れることを紹介します。 フラット35の利用者は減少している フラット35の融資区分別(建て方別)の利用実績は下表のとおりです。 融資区分(建て方) 2021年度 2022年度(前年比) 注文住宅 8,200件 7,355件(-10.3%) 土地付注文住宅 20,429件 16,026件(-21.6%) 建売住宅 15,574件 11,128件(-28.5%) マンション 5,397件 4,278件(-20.7%) 中古戸建 8,363件 6,559件(-21.6%) 中古マンション 7,914件 5,796件(-30.7%) 合計 65,877件 51,142件(-22.4%) 出典)住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」 表からわかるとおり、すべての融資区分で利用者は減少しています。2022年度の全体利用実績は、前年と比較して-22.4%の減少となりました。 フラット35の利用者が減少したのは、借入時の金利が低い「変動金利型の住宅ローン」の人気が高まっていることが理由のひとつだと考えられます。国土交通省の調査によれば、住宅ローンの新規貸出額における金利タイプ別割合の推移は下図のとおりです。 〇新規貸出額における金利タイプ別割合の推移 出典)国土交通省「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」 変動金利型の新規貸出額は上昇が続いており、令和3年(2021年)度の割合は全体の76.2%となっています。一方で、令和2年度と令和3年度の全期間固定金利型の変動を見ると、+0.4%となっており、フラット35の利用者が減少する要因の説明にはなりません。 次に、下図は民間金融機関の住宅ローン金利の推移です。 〇民間金融機関の住宅ローン金利の推移 出典)住宅金融支援機構「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)」 変動金利型は、固定金利型に比べて借入時の金利が低く設定されています。近年、固定金利型の住宅ローン金利は上昇傾向にありますが、変動金利型に大きな変動は見られません。 これらの結果から、金利負担の軽減を重視して、変動金利型の住宅ローンを選ぶ人が増えていると考えられます。一方で、フラット35は年間5万件を超える利用実績があるのも事実です。 変動金利型は、市場金利が上昇すると返済額が増える「金利変動リスク」があります。借入時の金利は高くても、将来の利上げの可能性を考慮し、金利や返済額が変わらないフラット35を選択する人が一定数いることが考えられます。 フラット35の主な利用者は中間層 フラット35利用者の世帯年収を確認すると、2022年度の世帯年収別の利用割合は下表のとおりです。 世帯年収 利用割合 400万円未満 19.9% 600万円未満 39.2% 800万円未満 21.5% 1,000万円未満 9.5% 1,200万円未満 4.3% 1,200万円以上 5.6% 出典)住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」 2022年度のフラット35利用者は、世帯年収400~800万円が全体の約6割を占めています。平均世帯年収は634万円で、前年比+26万円となりました。一部のメディアでは「フラット35は審査に通りやすい」と説明されることもありますが、実際は一定以上の世帯年収がある中間層の利用が多いことが分かります。 一方で、住宅金融支援機構による「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2023年4月調査)】 」によると、住宅ローン利用者の800万円超の割合が40.3%となっています。このことから、住宅ローン利用者の中では、「相対的に年収の低い層」に利用されているとも言えます。 また、2022年度のフラット35利用者は、世帯年収400万円未満の割合も約20%あります。フラット35は、総返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)などの申込要件が明確に示されています。年収が400万円未満であっても、申込要件を満たせば利用できる可能性もあることが読み取れます。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2023年4月調査)】」 フラット35の融資金額は依然上昇傾向 フラット35の融資金額の推移は以下のとおりです。 出典)住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」 2022年度のフラット35の融資金額は、全ての融資区分において上昇しています。また、ここ10年は全体的に右肩上がりの傾向が見られます。 日本では、日銀の金融緩和政策により低金利が続いています。少ない金利負担で融資を受けられることが不動産価格の上昇を招いており、フラット35の融資金額の増加にもつながっていると考えられます。 年収倍率や総返済負担率も上昇している 融資金額が以前上昇している状況下で、フラット35の年収倍率と総返済負担率はどのように推移しているのでしょうか。まず、フラット35の融資区分別の年収倍率の推移は以下のとおりです。 出典)住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」 2022年度のフラット35の年収倍率は、5.7~7.7倍となりました。この10年は、全体として右肩上がりで推移しています。また、フラット35利用者の2022年度の総返済負担率の割合は下表のとおりです。 総返済負担率 割合(前年比) 10%未満 4.5%(±0.0%) 15%未満 10.6%(-0.3%) 20%未満 18.4%(-0.8%) 25%未満 22.4%(-0.9%) 30%未満 27.5%(-0.7%) 30%以上 16.6%(+2.7%) 出典)住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」 2022年度の平均は23.1%(前年比+0.4%)です。総返済負担率が25%以上の割合は44.1%で、ここ10年で最大となりました。 融資金額の上昇に伴い、年収倍率や総返済負担率も上昇していることが分かります。この状況から、全体的にフラット35における取扱金融機関の積極的な融資姿勢も見て取れます。 40歳以上の利用者が増加傾向 今回の実績調査で最も着目すべき点は、フラット35利用者の年齢層が大幅に変化しつつある点です。フラット35の年齢別利用者割合の推移は以下のとおりです。 出典)住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」 2022年度のフラット35利用者の平均年齢は42.8歳(前年度比+1.3歳)です。2020年以降、顕著に40歳代以上の利用者割合が上昇しています。利用者の高齢化が進んでいる要因には、持ち家から持ち家の住み替えの際に、フラット35を利用する人が増えていることが挙げられるかもしれません。 まとめ 調査結果を見ると、依然としてフラット35の利用者が減っており、住宅価格が上昇し、返済負担率も上昇している状況が続いていることが分かりました。一方で、今回の調査結果で特筆すべき点は、フラット35の利用者が高齢化している点です。フラット35が50代以上の住宅ローンの選択肢の一つとして台頭していることが分かりました。 住み替えたいのに住宅ローンを組む目途が立たない人は、フラット35を検討してみるのもいいかもしれません。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 シニアが住み替える際の4つのポイント シニア世代は、子どもの独立や退職などをきっかけに生活環境が大きく変化します。今住んでいる家がライフスタイルに合わなくなると、将来を見据えて住み替えを検討することもあるでしょう。 この記事では...記事を読む

  • ねぎし三平堂の外観(アイキャッチ)

    林家正蔵師匠が自宅「ねぎし三平堂」を語る

    落語家の林家正蔵氏(60)(以下「正蔵師匠 」)の自宅にお邪魔して、住まいやお金に関するお話をフリーアナウンサーの八木亜希子さんが伺いました。 この記事は、SBIシニアの住まいとお金ch(YouTubeチャンネル)で公開されている、「【第3弾】名門一家の風格漂うお宅を訪問!お父様は昭和の爆笑王【八木亜希子のスターお宅訪問】」と、「林家正蔵~祖父の代から受け継がれる我が家、僕には守っていく責任がある~【MC:八木亜希子】」を元に作成しています。動画の詳細はこちらをご覧ください。 「林家こぶ平」から「9代林家正蔵」へ 本編に入る前に、正蔵師匠の経歴についてご紹介します。 1962年12月1日に東京都台東区根岸で生まれた正蔵師匠は、1978年4月に父である林家三平師匠に弟子入りし、「林家こぶ平」として落語家デビューを果たします。1981年に二ツ目、1987年には真打に昇進し、落語家として活躍する一方で、テレビドラマやバラエティ番組などにも多数出演し、タレントとしても活躍しました。 2005年に9代「林家正蔵」を襲名した後は、落語家として、より精力的に活動しています。2014年には落語協会の副会長に就任し、現在も多数の寄席に出演しながら、落語の発展に尽力しています。 自宅はねぎし三平堂 正蔵師匠の自宅は、資料館「ねぎし三平堂」として開放されています。(※2023年11月1日時点では改装のため閉堂中)名門一家の風格漂う、とても立派な外観でした。 建物に入ってすぐの階段を上る途中で、昭和の爆笑王「初代林家三平師匠」の写真を発見しました。『どうもすいません』と今にも聞こえてきそうです。 階段を上った先には林家一門にまつわるたくさんの資料が展示されていました。右端に移っている高座では、実際に落語会が開かれるそうです。(※2023年11月1日時点では休止中) ▼実際に展示されていた資料の一部 本編動画では、実際に展示されている写真や実際の仕事机や仕事道具など、この記事で紹介しきれなかった資料をたくさん紹介しています。ぜひご覧ください。 本編動画はこちら 林家正蔵師匠にとって自宅とは? 最後に「正蔵師匠にとって自宅とは?」と質問し、スケッチブックに答えを書いてもらいました。 本編動画では、「正蔵師匠にとって自宅とは?」の答えはもちろん、自宅改装の失敗談やYouTube初出しエピソードなど、色々なお話を公開しています。 本編動画はこちら 執筆者紹介 SBIシニアの住まいとお金 メディア部 SBIシニアの住まいとお金は、【人生100年時代を見据えて、「住まい」も「お金」も充実できる人生をサポートしたい】との思いから、60歳以上の持ち家の方を対象に「Youtubeで楽しむ」、「セミナーで学ぶ」、「専門家に相談する」の3つのサービスを運営しています。 <公式サイト> https://www.sbi-efinance.co.jp/senior/ <YouTubeチャンネル> https://www.youtube.com/@sbi_senior/ 林家正蔵師匠が語る「現在」と「落語家仲間に言えなかった秘話」 落語家の林家正蔵氏(60)(以下「正蔵師匠」)の自宅にお邪魔して、住まいやお金に関するお話をフリーアナウンサーの八木亜希子さんが伺いました。 この記事は、SBIシニアの住まいとお金ch(Yo...記事を読む

  • 家族信託の費用

    家族信託にかかる費用・税金と相場、手続きする際の注意点を解説

    家族信託とは、財産の管理、運用、処分を家族に任せるための制度です。親の判断能力が低下した場合、子どもの判断で親の財産を運用、処分できるため、認知症対策として注目されています。家族信託をする場合、どのような費用や税金がかかるのでしょうか。 この記事では、家族信託にかかる費用や税金とその相場について解説します。 家族信託でかかる可能性がある税金 家族信託では、状況に応じて以下5つの税金がかかる場合があります。 贈与税 相続税 所得税(法人税) 固定資産税 登録免許税 それぞれ詳しく見ていきましょう。 贈与税 家族信託の場合、委託者と受益者が同じ人であれば贈与税は発生しません。しかし、委託者以外の人が受益者となった場合、財産を贈与したとみなされ、受益者に贈与税がかかります。 例えば、「父:委託者、子:受託者、母:受益者」とし、信託財産である収益不動産(信託前は父名義)の家賃収入を母(受益者)が受け取るような場合が考えられます。 相続税 家族信託では、信託財産から生じる利益を受け取る「受益者」が亡くなったときに相続が発生します。受益者の死亡によって信託契約を終了する場合は、信託財産を相続する人に相続税が課されます。受益者の死亡後も信託契約を継続する場合は、受益権を引き継ぐ人に相続税がかかります。 所得税(法人税) 信託財産から得られる収入(所得)については、受益者が所得税を納めなくてはなりません。また、受益者が受益権を売却した場合は、その利益に所得税がかかります。なお、受益者が法人であれば、法人税が発生します。 固定資産税 不動産を信託する場合、不動産の所有者が委託者から受託者に代わります。そのため、次年度からは受託者に固定資産税の納税義務が生じます。 ただし、信託契約において「固定資産税は受益者が負担する」と明記すれば、受託者の自己資金ではなく信託財産から納めることが可能です。 登録免許税 信託財産に不動産が含まれる場合、「信託による所有権移転登記」の登録免許税がかかります。 所有権移転登記は、不動産の名義人を委託者から受託者に変更するための手続きです。登録免許税額については後述します。 家族信託を手続きする場合の費用と相場 ここでは、家族信託を自分で手続きする場合と専門家に依頼した場合の費用相場を紹介します。 自分で手続きする場合の費用と相場 戸籍謄本、印鑑証明書、住民票などの資料取得費用 家族信託の手続きでは、戸籍謄本や印鑑証明書、住民票などの公的書類を取得しなくてはなりません。信託財産に不動産が含まれている場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)も必要です。取得費用はいずれも1通につき数百円程度です。 信託口口座開設費用 家族信託では、信託財産を管理するための信託口口座を開設します。金融機関によって異なりますが、開設費用は5~10万円程度が一般的です。正確な金額は金融機関に確認しましょう。 公正証書費用 家族信託では、信託口口座を開設する際に、金融機関から公正証書で作成された信託契約書の提出を求められる場合がほとんどです。そのため、信託契約書を公正証書にする必要があります。公正証書にかかる費用は以下のとおりです。 目的の価額 手数料 100万円以下 5,000円 100万円超 200万円以下 7,000円 200万円超 500万円以下 1万1,000円 500万円超 1,000万円以下 1万7,000円 1,000万円超 3,000万円以下 2万3,000円 3,000万円超 5,000万円以下 2万9,000円 5,000万円超 1億円以下 4万3,000円 1億円超 3億円以下 4万3,000円+5,000万円ごとに1万3,000円 3億円超 10億円以下 9万5,000円+5,000万円ごとに1万1,000円 10億円超 24万9,000円+5,000万円ごとに8,000円 出典)日本公証人連合会「手数料」 信託監督人・受益者代理人への報酬 家族信託では、状況に応じて信託監督人や受益者代理人を設定する場合があります。 信託監督人:受益者のために受託者の監督を行う者 受益者代理人:受益者のために受益者の権利を行使する者 信託監督人や受益者代理人を専門家に依頼すると、月額数万円程度の費用がかかります。 登録免許税 上述したように、信託財産に不動産が含まれている場合は、信託登記の登録免許税がかかります。税額は「不動産の固定資産税評価額×0.4%」です。ただし、土地については0.3%の軽減税率が適用されます(2026年3月31日まで)。 例えば、土地3,000万円、建物2,000万円の場合の登録免許税額は、以下のとおりです。 土地:3,000万円×0.3%=9万円 建物:2,000万円×0.4%=8万円 専門家に依頼した場合の費用と相場 専門家に依頼する場合は、上記の「自分で手続きする場合の費用」に加えて、以下の費用負担が発生します。 コンサルティング費用 信託契約書の作成費用 公正証書の手続き代行費用 不動産登記の代行費用 実際にかかる費用は専門家によって異なります。依頼の際に費用をしっかりと確認することが大切です。 家族信託の「損益通算禁止」とは 租税特別措置法第41条の4の2によると、信託財産から生じた損失は、信託財産以外から生じた所得との損益通算ができません。例えば、信託された収益不動産で赤字が生じても、信託財産以外の収益不動産の所得とは損益通算できないため、税負担が増える恐れがあります。 大規模修繕などで赤字の発生が見込まれる収益不動産がある場合は、信託する前に税理士などの専門家に相談しましょう。 出典)国税庁「第41条の4の2(特定組合員等の不動産所得に係る損益通算等の特例)関係」 まとめ 家族信託は、認知症などによる判断能力の低下に備えるには有効な手段です。ただし、専門家に手続きを依頼する場合はまとまった費用がかかります。家族信託でかかる税金・費用の相場を把握したうえで、利用するかを判断しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 家族信託とは?仕組みやメリット・デメリット、手続き方法を解説 親の判断能力が低下した場合、子どもの判断で親の財産を運用・処分することはできません。親の認知症対策としては「成年後見制度」が一般的ですが、近年では新たな財産管理方法として「家族信託」が注目さ...記事を読む

  • 老後の住まいのトレンドは?

    高齢者の住まいの現状は?老後の快適な暮らしのための対策を紹介

    高齢になって体力が低下し、介護の必要性が高まってくると、間取りや設備などに住みづらさを感じるかもしれません。老後を快適に過ごすためには、住まいへの備えが不可欠です。 高齢期の住まいにはさまざまな選択肢があるため、現状や課題を把握したうえで、対策を行うことが大切です。この記事では、高齢者の住まいの現状や老後の快適な暮らしのための対策を紹介します。 高齢者の居住状況 65歳以上の高齢者単身、夫婦世帯の居住状況は以下のとおりです。 持ち家:989万世帯 賃貸:292万世帯 施設:224万人 持ち家の内訳は、単身世帯が422万世帯(約43%)、夫婦世帯が566万世帯(約57%)です。 賃貸は全体の約37%(109万戸)を公営住宅などの公的賃貸住宅が占めています。高齢になると民間賃貸住宅への入居を断られる場合があることから、公的賃貸住宅の割合が高くなっていると考えられます。 施設は、特別養護老人ホーム(特養)をはじめ、介護老人保健施設(老健)や、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など、さまざまな選択肢があります。 高齢者の住まい 介護保険の第1号被保険者(65歳以上の方)3,588万人のうち、3,486万人(約97%)が在宅です。また、要支援、要介護認定者690万人のうち、588万人(約85%)が在宅で介護を受けています。高齢者の9割以上、要介護の高齢者でも約8割が在宅で暮らしているのが現状です。 なお、上述の在宅人数は、居住系サービスを利用している人数も含まれます。居住系サービスとは、施設系サービス(特養、老健など)以外のケア付き住宅のことで、具体的には有料老人ホームやサ高住などが該当します。 高齢者の介護場所の希望 1人暮らしの高齢者が希望する介護場所をみると、要介護度が高くなるにつれて介護施設やケア付き住宅を希望する人が増加しています。 ※国土交通省「高齢者の住まいに関する現状と施策の動向」をもとに編集部作成 そもそも頼る親族がいないことも考えられますが、「親族に迷惑をかけたくない」「要介護度が高いと施設のほうが安心」といった理由も考えられます。 高齢期の快適な暮らしのための対策 要介護認定を受けた高齢者の約8割は、在宅で介護を受けているのが現状です。また、多くの高齢者は、要介護度が低いうちは自宅での介護を希望しています。老後を快適に暮らすには、住まいへの備えが不可欠といえるでしょう。 まずは「持ち家か賃貸か」「介護を受ける場所は自宅か施設か」など、元気なうちに自身のこれからの住まいについて考えておくことが大切です。できる限り自宅に住み続けたい場合は、手すりの設置や段差の解消、トイレの改修といったバリアフリー化を行い、高齢期も安心して暮らせる住環境を整える必要があります。 また、高齢期の住まい選びやリフォームではまとまったお金がかかるため、老後の生活資金が不足しないよう資金計画を立てることも重要です。老後の住まい選びについては、以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事はこちら老後の住まいはどうすべき?ポイントを徹底解説 出典)国土交通省「高齢者の住まいに関する現状と施策の動向」 まとめ 日本は今後も人口減少が続き、65歳以上の高齢者の割合が増えていく見込みです。国は老後も安心して暮らせる住環境の整備に取り組んでおり、高齢期の住まいの選択肢は増えています。 老後もできる限り現在の自宅に住み続けるなら、バリアフリー化などのリフォームが必要になるでしょう。介護施設への入居を視野に入れている場合は、賃貸への住み替えも選択肢です。 元気なうちに、老後の住まいについてしっかりと考えておくことが大切です。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 高齢者の自宅売却のトラブルが増加!回避するための対策とは? 「強引に勧誘された」「高額の違約金を請求された」など、高齢者の自宅売却に関するトラブルが増加しています。 相手に言われるがまま売買契約をしてしまうと、高齢者の場合は「住む場所が見つからない」...記事を読む

  • 自筆証書遺言書保管制度とは

    自筆証書遺言書保管制度とは?メリットと注意点、利用の流れを解説

    相続トラブルを避けるには、遺言書を作成するのが有効です。ただし、本人が自筆で作成する自筆証書遺言の場合、正しく作成しないと無効になる恐れがあります。また、盗難や紛失、偽造・改ざんの危険性もあります。このようなリスクを回避する方法として、「自筆証書遺言書保管制度」があります。 この記事では、自筆証書遺言書保管制度の概要やメリット、注意点、利用の流れを解説します。 自筆証書遺言書保管制度とは 自筆証書遺言書保管制度とは、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度です。2020年7月10日から開始され、全国312ヵ所の法務局で利用できます。 遺言書の原本はもちろん、画像データとしても長期間適正に管理されます。原本は遺言者死亡後50年間、画像データは同150年間保管されます。紛失の恐れがなく、遺言者が亡くなった際に相続人に通知してもらえるため、自宅で保管するよりも安全です。 自筆証書遺言書保管制度のメリット 自筆証書遺言書保管制度には、以下のようなメリットがあります。 適切な保管によって紛失や盗難、偽造、改ざんを防げる 自筆証書遺言は紙と筆記用具、印鑑があれば1人で気軽に作成できます。しかし、自宅に保管していると紛失や盗難リスクがあり、偽造や改ざんの危険性もあります。自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、法務局で遺言書の原本と画像データが適切に保管されるため、紛失や盗難の心配がなく、偽造や改ざんを防止できます。 無効な遺言書になりにくい 自筆証書遺言書保管制度は、法務局職員が民法に定める自筆証書遺言の形式に適合するかを確認してくれるため、無効な遺言書になりにくいです。ただし、遺言書の有効性を保証するものではなく、遺言の内容について相談することはできません。 相続人に発見してもらいやすくなる 自宅に遺言書を保管すると、相続人が遺言書を見つけられず、遺言者の意思に沿った遺産相続が行われない恐れがあります。自筆証書遺言書保管制度を利用することで、遺言者が亡くなった際に、あらかじめ指定した相続人に対して法務局に遺言書が保管されていることを通知してもらえます。これを死亡時通知と言います。 検認手続が不要になる 遺言者が亡くなった後に自筆証書遺言を発見した場合、偽造や改ざんを防止するため、開封する前に家庭裁判所に提出して、検認を受ける必要があります。検認を受けないと、遺言書の内容に沿った遺産分割はできません。 自筆証書遺言書保管制度を利用することで、この検認手続が不要になり、速やかに遺言の内容を実現することができます。 自筆証書遺言書保管制度の注意点 自筆証書遺言を法務局に提出する際、法務局の職員が民法で定められた形式に適合するかを確認します。しかし、遺言の記載方法まで確認してもらうことはできず、有効性は保証されません。 また、「用紙はA4サイズ、裏面には何も記載しない」など、自筆証書遺言書保管制度を利用するための様式が別に定められており、そういった記載ルールを守る必要があります。 自筆証書遺言書保管制度の利用の流れ 自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、遺言者本人が法務局に出向いて手続きを行います。利用の流れは以下のとおりです。 管轄の法務局を選ぶ 申請書を記入する 事前予約をする 必要書類を持参して法務局で申請する 遺言者の住所地、本籍地、所有する不動産所在地のいずれかを管轄する法務局で申請手続をします。申請書は法務局のホームページからダウンロードするか、最寄りの法務局窓口で入手できます。 手続は事前予約制のため、ホームページ内の予約専用ページ、電話または窓口であらかじめ予約します。必要書類を持参のうえ、予約した日時に法務局で申請を行いましょう。申請時の必要書類は以下のとおりです。 自筆証書遺言書 申請書 本人確認書類 住民票の写し(本籍と戸籍筆頭者の記載があるもの) 3,900円分の収入印紙(遺言書保管手数料) 申請内容に問題がなければ、原本と画像データが保管され、保管証が渡されます。 自筆証書遺言と公正証書遺言との違い 遺言書は、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。主な違いは以下の3つです。 自書(手書き)の有無 自筆証書遺言は、遺言者が財産目録以外の全文を手書きしなくてはなりません。公正証書遺言は、遺言者から告げられた内容を公証人が遺言書に記載するため、自書は署名のみです。 証明力 自筆証書遺言の内容は、遺言者の自己責任です。公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が法的な有効性をチェックするため、高い証明力を有します。 出張の有無 自筆証書遺言書保管制度を利用する際は、遺言者本人が法務局に出向かなくてはなりません。公正証書遺言は、遺言者が高齢などで公証役場に出向くのが困難な場合、公証人が遺言者の自宅などに出張して遺言書を作成できます。 どちらを利用するべき? 自筆証書遺言の一番のメリットは、公正証書遺言と比較して費用と手間が小さいことです。民法の要件を満たした遺言書を自ら作成できるなら、自筆証書遺言書保管制度を利用するのがいいでしょう。 ただし、遺言書が無効にならないか不安であれば、費用や手間をかけてでも、公正証書遺言を利用する方が確実です。 関連記事はこちら公正証書遺言とは?手続きの費用と必要書類を解説 自筆証書遺言書保管制度の利用状況 法務局によると、2022年の遺言書の保管申請は1万6,802件です。一方、日本公証人連合会によれば、公正証書遺言の作成件数は11万1,977件となっています。公正証書遺言が年10万件程度利用されていることを踏まえると、自筆証書遺言書保管制度の利用は少ないといえます。 ただし、自筆証書遺言を作成して自宅等に保管している人がどの程度いるのかは不明です。これから認知度が高くなることで、自筆証書遺言書保管制度の利用件数が増えていく可能性は十分に考えられます。 出典) ・法務局「遺言書保管制度の利用状況」 ・日本公証人連合会「令和5年の遺言公正証書の作成件数について」 まとめ 自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、自筆証書遺言の紛失や盗難、偽造、改ざんのリスクを避けられます。また、法務局職員が民法で定める形式に適合するかを確認してくれるのもメリットです。ただし、遺言書の有効性が保証されるわけではないため、不安な場合は公正証書遺言を検討しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 相続争いを生まないためのリースバックという選択肢 自宅を所有していると、老後も住み続けられる安心感がある一方で、相続に不安を感じることもあるのではないでしょうか。不動産は実物資産であるため、相続人が複数いると簡単に分けられません。また、相続...記事を読む

    2023.11.15制度相続
  • 公正証書遺言とは

    公正証書遺言とは?手続きの費用と必要書類を解説

    公正証書遺言は、自筆証書遺言に比べると無効になる可能性が低いのが特長です。では、相続に備えて公正証書遺言を作成する場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。 この記事では、公正証書遺言の特徴と手続き、その費用や必要書類について解説します。 公正証書遺言とは 公正証書遺言とは、公証役場において公正証書として作成する遺言です。証人2名以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に述べて、公証人の筆記により作成してもらいます。また、遺言書の内容について悩んでいる場合は、必要な助言を受けられます。 遺言者の真意を確認し、適切に手続きが行われたことを担保するため、証人2名以上の立会いが要件となっています。未成年者や相続人は証人になれないので、利害関係のない友人や知人にお願いするといいでしょう。依頼できる人がいない場合は、公証役場で紹介してもらうことも可能です。 公正証書遺言のメリット 公正証書遺言には以下のようなメリットがあります。 遺言書が無効になる可能性が低い 公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が遺言書を作成します。複雑な内容であっても内容を整理して、民法上の方式に沿った遺言書を作成してもらうことが可能です。そのため、遺言書が無効になる可能性は低いでしょう。 紛失や盗難、改ざんのリスクがない 公正証書遺言は、公証役場で原本が保管されます。遺言書が誤って破棄されたり、誰かに盗まれたり、書き換えられたりする恐れがないので安心です。 家庭裁判所での検認手続が不要 法務局に預けていない自筆証書遺言の場合、遺言書の保管者や相続人が家庭裁判所に遺言書を提出し、その検認を請求しなくてはなりません。検認を経ないで遺言を執行すると、5万円以下の過料が科される恐れがあります(民法第1,005条)。 公正証書遺言は検認手続が不要であるため、相続開始後は速やかに遺言の内容を実現できます。 身体が不自由でも利用できる 公正証書遺言は公証人に作成してもらえるため、体力が弱り、あるいは病気等のために、手書きが困難となった場合でも作成が可能です。 また、公正証書遺言は公証役場以外でも作成が認められています。身体が不自由で公証役場に出向くことが困難な場合でも、公証人が遺言者の自宅などに出張して遺言書の作成が可能です。 公正証書遺言の作成費用 公証役場に支払う手数料は、目的の価額(相続財産の価額)に応じて以下のように設定されています。 出典)日本公証人連合会「公証事務(2遺言)」 また、証人を依頼する場合は追加で費用がかかります。友人や知人なら謝礼は自由に決められますが、公証役場で紹介してもらう場合は1人あたり6,000円程度の費用がかかります。弁護士などに遺言書の作成を依頼する場合は、証人を手配してもらうことが可能です。費用は1人あたり1万円程度が相場となります。 公正証書遺言の作成手続きの流れ 公正証書遺言の作成手続きの流れは以下のとおりです。 公証人への遺言の相談や遺言書作成の依頼 相続内容のメモや必要資料の提出 公正証書遺言(案)の作成と修正 公正証書遺言の作成日時の確定 遺言の当日の手続 「遺言者がどんな財産を所有していて、誰にどのような割合で相続させたいか」といったメモを提出すると、その内容に基づいて公証人が遺言書(案)を作成します。 遺言書の内容と作成日時が確定したら、遺言当日に遺言者が証人2名の前で、遺言の内容を改めて口頭で告げます。内容に問題がなければ、遺言者および証人2名が原本に署名・押印します。さらに公証人も原本に署名し、職印を押捺すると公正証書遺言は完成です。 公正証書遺言を作成する際の必要書類一覧 遺言者本人の印鑑登録証明書(3か月以内に発行されたもの) 戸籍謄本、除籍謄本(遺言者と相続人との続柄がわかるもの) 登記事項証明書(登記簿謄本)、固定資産評価証明書など(不動産の相続の場合) 預貯金通帳等またはそのコピー(預貯金等の相続の場合) 受遺者の住民票(財産を相続人以外の人に遺贈する場合) 他にも資料が必要になる場合があるので、詳細は公証役場に確認しましょう。 自筆証書遺言より公正証書遺言をおすすめする理由 公正証書遺言の他に、「自筆証書遺言」という選択肢もあります。 自筆証書遺言は、遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自分で手書きして押印する遺言書です。作成に費用がかからず、いつでも手軽に書き直せるのが特長です。ただし、一定の要件を満たしていないと無効になる恐れがあり、紛失や盗難、改ざんの危険性もあります。 自筆証書遺言に比べると手間や費用はかかりますが、公正証書遺言なら「遺言が無効になる」「不正に書き換えられる」といった危険性が低くなります。自分の意志を遺すための遺言が無効になっては元も子もありません。確実性を重視するなら、公正証書遺言をおすすめします。 もし自筆証書遺言を作成される場合は、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を検討するといいでしょう。この制度を利用すれば、遺言自体の形式不備は防げないものの、紛失や盗難、改ざんの危険性は低くなります。 関連記事はこちら自筆証書遺言書保管制度とは?メリットと注意点、利用の流れを解説 まとめ 公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成してくれるため、遺言が無効になる可能性が低くなります。公証役場で原本が保管され、紛失や盗難、改ざんを避けられるのも特長です。 ただし、公正証書遺言の作成では、証人2名を手配しなくてはなりません。自分で手配するのが難しい場合は、公証役場や弁護士などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 相続争いを生まないためのリースバックという選択肢 自宅を所有していると、老後も住み続けられる安心感がある一方で、相続に不安を感じることもあるのではないでしょうか。不動産は実物資産であるため、相続人が複数いると簡単に分けられません。また、相続...記事を読む

    2023.11.10用語相続