「制度」の記事一覧

  • 在職老齢年金とは?仕組みや年金額の計算方法、確定申告の必要性を解説

    経済的な負担を軽減するために、年金受給が始まる65歳以降も働き続ける人が増えています。仕事をしながら老齢年金を受け取る場合、その年金額はどのように計算するのでしょうか。この記事では、在職老齢年金の仕組みや年金額の計算方法、確定申告の必要性について解説します。 在職老齢年金制度とは 在職老齢年金制度とは、一定以上の収入を得ている60歳以上の人が老齢厚生年金を受け取る際に、年金額や給与・賞与の額に応じて年金の一部または全部が支給停止となる仕組みです。この制度には、主に次の2つの目的があります。 年金が支給されている人が働いても不利にならないようにする 現役世代とのバランスから、一定以上の賃金を得ている人には年金制度の支え手に回ってもらう 在職老齢年金制度とは厚生年金に加入しながら働く人、厚生年金の加入事務所で70歳以降も働く人を対象とした制度のため、個人事業主やフリーランスは対象外です。また、支給停止となるのは老齢厚生年金のみで、老齢基礎年金(国民年金)は給与等にかかわらず全額受給できます。 出典) ・日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)」 ・日本年金機構「働きながら年金を受給する方へ」 公的年金(国民年金・厚生年金)の仕組みについては、以下の記事で詳しく説明しています。 関連記事はこちら公的年金の仕組みとは?国民年金・厚生年金の基礎知識を解説 定年後の就業者数が増加 内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によると、労働力人口比率の推移は下図のとおり増加傾向にあります。 出典)内閣府「令和6年版高齢社会白書」 令和5年(2023年)は65~69歳が53.5%、70~74歳が34.5%、75歳以上が11.5%となりました。 年金は原則65歳から受給開始となります。しかし、65歳以降も働き続ける人は増加傾向にあり、60代後半は男性の6割以上、女性の4割以上が就業している状況です。この結果から、年金を受け取りながら働く人は増えているといえるでしょう。 在職老齢年金の計算方法 以下は、在職老齢年金の計算方法のフローチャートです。 ※令和6年度の支給停止調整額 出典)日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」 <用語説明> ・基本月額:老齢厚生年金の月額(加給年金額を除く) ・総報酬月額相当額:(その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12 老齢厚生年金と給与等の合計が50万円(支給停止調整額)以下であれば、老齢厚生年金は全額受給できます。50万円を超える場合は、上記の計算式に基づいて老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となります。 <具体例:給与等50万円(月額:賞与含む)、老齢厚生年金14万円(月額)の場合> (50万円+14万円-50万円)÷2=7万円 ※老齢厚生年金14万円のうち7万円が支給停止となる(老齢基礎年金は全額受給できる) なお、令和4年(2022年)3月以前の65歳未満の年金支給停止基準は28万円でしたが、制度改正によって、令和4年4月以降は65歳以上と同じ基準に見直されました。 出典) ・日本年金機構「働きながら年金を受給する方へ Bさんの場合」 ・日本年金機構「令和4年4月から年金制度が改正されました」 支給停止期間や支給停止額の変更時期 在職老齢年金の支給停止期間は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が支給停止調整額(令和6年度は50万円)を超えている期間です。なお、支給停止調整額は年度が切り替わるタイミングで変更される場合があります。 支給停止額の変更時期は、総報酬月額相当額が変わった月または退職日の翌月となります。ただし、退職日の翌月については、退職後1カ月以内に再就職して厚生年金に加入した場合を除きます。 老齢年金を受給した際の確定申告の要否 働きながら年金を受け取る場合、確定申告が必要なのか気になる人もいるでしょう。 老齢年金は、所得税法の「雑所得」として課税対象となりますが、一定額以上を受給するときは税金が源泉徴収されます。次の2つの要件にすべて当てはまる場合は、「確定申告不要制度」によって確定申告を行う必要がなくなります。 <確定申告不要制度の対象者> ・公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下で、その全部が源泉徴収の対象 ・公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下 確定申告不要制度の対象であっても、医療費控除の適用などにより所得税の還付を受ける場合は確定申告が必要です。 出典)政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」 また、参考までに老齢年金の税金に関するよくある質問を紹介します。 老齢年金の受給額と所得税の課税基準 老齢年金は、雑所得として所得税の課税対象となります。65歳未満でその年の支払額が108万円以上、65歳以上で158万円以上の場合は原則として所得税がかかり、支払時に源泉徴収されます。 しかし、これらの金額を超える場合でも、65歳未満で月額9万円まで、65歳以上で月額13.5万円までの受給額の場合は所得税が差し引かれません。 出典) ・日本年金機構「Q年金から税金が差し引かれています。どうしてですか。」 ・日本年金機構「Q年金から税金が差し引かれていません。どうしてですか。」 年金に課される所得税の計算方法 年金から差し引かれる税金は、支払う年金額から社会保険料や住民税など各種控除を行った残額に5%(復興特別所得税を含めて5.105%)の税率を掛けて計算します。年金から各種控除を受けるには、年金受給者に送付される「扶養親族等申告書」に必要事項を記入して提出する必要があります。 出典)日本年金機構「年金から差し引かれている税金の計算方法を教えてください」 まとめ 年金を受け取りながら会社で働く場合、老齢厚生年金と給与・賞与の月額合計が50万円を超えると、在職老齢年金制度によって老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となります。老齢基礎年金は制度対象外のため、給与等にかかわらず全額受給できますが、老齢厚生年金は繰下げ受給ができないため、どのくらい働くかを決めることも重要になります。 経済的な不安を解消し、より豊かな老後生活を送るためにも、在職老齢年金制度への理解を深めておきましょう。 老齢年金とは?受給要件や年金額、請求手続きについて解説 老齢年金は、老後の生活を支える重要な収入源です。公的年金に加入している人は、一定の年齢に達すると老齢年金を受け取れます。老齢年金はどんな仕組みで、いくら受け取れるのでしょうか。 この記事では...記事を読む 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

    2024.09.25制度年金
  • 防火地域・準防火地域とは?特徴や建築制限、メリットをわかりやすく解説

    マイホームの取得を検討していると、「防火地域」「準防火地域」という言葉を聞くことがあるかもしれません。どちらも防火対策のために法律で指定されている地域ですが、何が違うのでしょうか。また、建物を建てる際にどのような制限があるのでしょうか。 この記事では、防火地域・準防火地域の特徴や建築制限、メリットなどをわかりやすく解説します。 防火地域・準防火地域とは 防火地域・準防火地域とは、都市計画法において市街地や住宅密集地での火災を防ぐために指定された地域です。都市計画法では次のように規定されています。 防火地域又は準防火地域は、市街地における火災の危険を防除するため定める地域とする。 出典)e-Gov法令検索「都市計画法第9条第21項」 防火地域・準防火地域はどちらも建築制限が設けられており、その内容は異なります。また、防火地域・準防火地域には指定されていなくても、火災を防ぐことを目的に「新たな防火規制区域(東京都の場合)」や「法22条区域」に指定されている地域もあります。 それぞれの地域(区域)の特徴を確認していきましょう。 関連記事はこちら都市計画法とは?概要や定められている内容を解説 防火地域の特徴・建築制限 防火地域は、都市の中心部で商業施設が建ち並び人通りや交通量の多い場所や災害時に緊急車両が通る幹線道路沿いなどが指定されます。火災による被害が拡大しやすく、防火対策の必要性が非常に高い地域です。 防火地域では、「3階以上の建物」「延べ面積100㎡超の建物」は耐火建築物としなくてはなりません。耐火建築物とは、建築基準法(第2条第9号の2)に定められた、「主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段)が耐火構造であること」などの基準に適合する建築物です。 また、「2階以下で延べ面積100㎡以下の建物」は準耐火建築物とする義務があります。準耐火建築物とは、建築基準法(第2条第9号の3)で定められた、「主要構造部を準耐火構造とすること」などの基準に適合する建築物です。 ※筆者作成 準防火地域の特徴・建築制限 準防火地域は、駅前の周辺など住宅が分布している地域などが指定されます。防火対策の必要性は高いものの、防火地域に比べると規制は緩やかです。 準防火地域では、「4階以上の建物」「延べ面積1,500㎡超の建物」は耐火建築物としなくてはなりません。また、「3階以下で延べ面積500㎡超1,500㎡以下の建物」は準耐火建築物とする義務があります。 延べ面積が500㎡以下であれば、一般的な木造2階の戸建住宅も建築可能です。ただし、屋根や外壁、開口部(換気扇など)、軒裏などに所定の防火措置を行う必要があります。 ※筆者作成 出典) ・国土交通省「防火地域等における建築物の規制【法第22条】【法第61条】【法第62条】」 ・国土交通省「耐火建築物・準耐火建築物」P.13 ・埼玉県「みんなで取り組もう 火災に強いまちづくり」 新たな防火規制区域とは 新たな防火規制区域とは、木造密集地域における災害時の安全性を確保するために、東京都が条例に基づいて指定する区域です。 対象区域では、原則として、すべての建築物は準耐火建築物以上としなくてはなりません。また、「延べ面積500㎡超の建物」は耐火建築物とする必要があります。 ※筆者作成 出典)東京都都市整備局「新たな防火規制について(制度の概要)」 法22条区域とは 法22条区域(建築基準法第22条指定区域)とは、火災による延焼を抑止するために、特定行政庁が防火地域・準防火地域以外の市街地に指定する区域です。法22条区域は、建物の屋根を不燃材料で造るか、不燃材で葺(ふ)くことを義務づけられています。 基本的に火は上に向かって燃え広がるため、火災を抑えるために定められた要件を満たす材料を用いて、屋根の防火性能を強化することが必要です。 耐火構造・準耐火構造・防火構造の違い 建物の防火性能を表す主な基準として、「耐火構造」「準耐火構造」「防火構造」の3つがあります。防火地域と準防火地域では、これらの基準が異なるため、それぞれの違いを理解しておきましょう。 耐火構造とは 耐火構造とは、火災が発生し一定時間の火熱が加えられても損傷などが生じない構造です。耐火建築物では、通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊や延焼を防止するため、主要構造部を耐熱構造とすることになっています。 建築物の階数や部分によって異なりますが、最上階から数えた階数が20以上の階の場合、柱とはりは最長3時間、損傷が生じない性能が求められます。 準耐火構造とは 準耐火構造とは、火災が発生し一定期間の火熱が加えられている間は損傷などが生じない構造です。耐火構造とは異なり、火災が終了した後に損傷が生じることは許容されます。 準耐火建築物では、通常の火災による延焼を抑制するため、主要構造部を準耐火構造とすることになっています。建築物の部分によって異なりますが、最長45分間、損傷が生じない性能が求められます。 防火構造とは 防火構造とは、防火地域・準防火地域において、比較的小規模の住宅を建てる場合に求められる構造です。 外壁に火熱が加えられた場合に、30分間は損傷が生じない性能が求められます。外壁と軒裏については、30分間は加熱面以外の温度が一定以上に上昇しないことも要件です。 出典) ・国土交通省「耐火建築物・準耐火建築物」P.13-14 ・建築基準法施行令「第四章 耐火構造、準耐火構造、防火構造、防火区画等」 耐火構造の建物建築のメリット 耐火構造の建物を建築すると、次のようなメリットを得られます。 建ぺい率の緩和 建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合です。防火地域・準防火地域において、建ぺい率が80%以外に指定されている場合は、次の要件を満たすと建ぺい率が10%加算されます。 防火地域:耐火建築物を建てる場合 準防火地域:耐火建築物または準耐火建築物を建てる場合 建ぺい率が高くなれば、建物を建てるときに使える敷地がより広くなります。 火災保険料の割引 火災保険の保険料率は、建物の構造によって異なります。火災が起きたときの燃え広がり方などによって、被害の程度や倒壊しやすさなどのリスクが異なるからです。 M構造 耐火性能を有する共同住宅(コンクリート造のマンションなど) T構造 M構造以外の耐火性能を有する建物および準耐火性能を有する建物(鉄骨造など) H構造 M構造、T構造以外の建物(木造など) 火災保険の保険料率は「M構造、T構造、H構造」の順に高くなるため、耐火構造の建物を建築することは火災保険料の節約につながります。 出典)損害保険料率算出機構「2023年度火災保険・地震保険の概況」P.16 防火地域・準防火地域を調べてみよう 自治体によっては、インターネットで防火地域・準防火地域を調べることが可能です。 東京都の場合、「都市計画情報等インターネット提供サービス」の都市計画情報で確認できます。地域を指定し、表示切替で「防火・準防火地域」を選択すると、地図上に情報が表示される仕組みです。 出典)東京都 都市整備局「都市計画情報等インターネット提供サービス」 その他に、自分が住む地域名と防火規制で検索する方法もあります。 まとめ 防火地域・準防火地域は、どちらも市街地での火災を防ぐために指定された地域です。建築費用が高くなる傾向にありますが、建ぺい率の緩和や火災保険料の割引を受けられるメリットもあります。マイホームの取得を検討する際は総合的に判断しましょう。 敷地面積の制限とは?概要や目的、最低敷地面積の調べ方を解説 近年の土地価格の上昇に伴い、大きな土地のままでは不動産を購入できない人が増加しています。そのような背景から、大きな土地を分割(分筆)することで価格を抑えた、小規模住宅が増えています。しかし、...記事を読む 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

    2024.09.18制度
  • 土地収用法とは?手続きの流れや補償内容をわかりやすく解説

    公共事業のために土地が必要な場合、その事業の施行者である起業者から立ち退きを求められることがあります。補償などで合意できない場合は、土地収用法による手続きが行われ、最終的には、土地を明け渡さなくてはならない場合がほとんどです。 この記事では、土地収用法の概要や手続きの流れ、補償内容について解説します。 土地収用法とは 土地収用法とは、土地を収用するための要件や手続き、損失の補償などを規定した法律です。公共の利益と私有財産の調整を図ることを目的としています。収用とは、国や地方公共団体などの起業者が、公共事業のために必要となる土地などを土地収用法に定められた手続きに基づいて取得することです。 公共事業のために土地を取得する場合、通常は起業者が土地所有者と話し合い、契約を締結してその土地を取得します。これを任意交渉といいます。 しかし、補償内容や土地の所有権などに関する話し合いがうまくいかず、同意が得られないこともあります。その場合、起業者が土地収用法に基づく手続きをすることで、土地の取得が可能になります。 出典) ・福島県収用委員会「土地収用のあらまし」 ・徳島県「収用」って何ですか?」 土地収用の流れ 土地の所有者に立ち退きを要求する前に、施行者は「事業認定手続」と「収用裁決手続」の2つの手続きを行います。 出典)東京都収用委員会「収用手続の流れ」 事業認定手続 事業認定手続とは、国土交通大臣または知事が、起業者から申請された事業に公益性があるかを判断する手続きです。申請事業が認定されると、起業者は土地を収用する権利が付与されます。 収用裁決手続 収用裁決手続とは、収用委員会が土地所有者に対する補償金の額、起業者が土地の権利を取得する時期、土地所有者が土地を明け渡す期限を裁決する手続きです。 収用委員会とは、土地収用法に基づいて各都道府県に置かれている行政委員会です。知事から独立し、公正中立な立場で審理や調査を行って裁決を下す権限を付与されています。収用裁決手続の流れは以下のとおりです。 裁決申請・明渡裁決申立て 収用委員会による審理 権利取得裁決・明渡裁決 1.裁決申請・明渡裁決申立て 起業者が、収用委員会に対して裁決申請と明渡裁決申立てを行います。裁決申請は土地の所有権などを取得するため、明渡裁決申立ては土地にある建物を移転させて、土地の明け渡しを求めるために行われるものです。 2.収用委員会による審理 収用委員会は申請書や申立書の内容が法令に適合していれば受理し、審理において起業者や土地所有者、関係人の意見を聞きます。明らかになった争点を整理し、必要な調査・検討を行ったうえで裁決を行います。 3.権利取得裁決・明渡裁決 権利取得裁決の裁決事項は、「収用する土地の区域」「土地に関する損失の補償」「権利取得の時期」の3つです。権利取得裁決により、起業者は権利取得の時期までに補償金を支払い、土地の所有権を取得します。 一方、明渡裁決の裁決事項は、「明け渡すべき土地の区域」「明渡しに関する損失の補償」「明渡しの期限」の3つです。明渡裁決により、起業者は明渡し期限までに補償金を支払います。権利者は土地にある建物を移転し、期限までに土地を明け渡す必要があります。 出典)東京都収用委員会「土地収用のあらまし」P.8 土地収用の補償内容 土地収用の補償は、「土地に関する補償」と「明渡しに関する補償」の2つに分けられます。 土地に関する補償 土地に関する補償には次のようなものがあります。 土地補償 収用する土地の対価に当たる補償。 補償金の額は近傍の類似した土地の取引価格などを考慮して算定する。 借地権などの権利消滅補償 収用により所有権以外の権利は消滅するため、その権利に対する額が補償される。 補償金の額は権利の取引価格や契約内容などを考慮して算定する。 残地補償 土地収用によって残地が生じたとき、利用価値の低下によって 損失が生じる場合は元の価格との差額が補償される。 金銭による補償が原則ですが、替地の取得が難しく、これまでの生活が維持できないなど特別な事情がある場合に限り、替地による補償が認められます。 明渡しに関する補償 明渡しに関する補償には次のようなものがあります。 建物補償 建物を移転するための費用 工作物補償 塀、門扉など建物以外の物件を移転するための費用 立竹木補償 庭木などの樹木を移植するための費用 動産移転補償 引越しに要する費用 借家人補償 建物の賃借人が家主との契約関係を続けるのが難しい場合に、 同種同等の建物を賃借するのに必要な費用 営業休止補償 営業休止期間中の収益減少額などの費用 仮住居補償 建物の居住者がいる場合、仮住居に必要な費用 家賃減収補償 建物の家主が賃貸していて、移転期間中に得ることができない賃料などの費用 移転雑費補償 新たに土地を取得し、建物を移転する場合、移転先の選定に必要な費用 収用する土地に建物がある場合、通常は移転するための費用が補償されます。ただし、事業認定後に建物を新築・増築した場合は、原則として損失の補償を請求することはできません。 出典)東京都収容委員会「収用制度の概要」 明け渡しを求められたらどうすればいい? 起業者から明け渡しを求められた場合、権利取得裁決前の交渉段階であれば拒否できます。「補償金の額に納得がいかない」など、受け入れられない理由があるなら拒否することも可能です。しかし、拒否し続けても、権利取得裁決および明渡裁決後は強制的に明け渡しとなります。 補償内容の異議申し立て 補償内容に異議がある場合、基本的には裁決前に交渉しなければなりません。ただし、裁決後も裁決書の正本の送達を受けてから6か月以内であれば、裁判所へ損失の補償に関する訴えを提起できます。その際、訴訟の相手方は起業者となります。 土地収用を求められた際には、補償金額などの交渉ができる場合もあるので、弁護士などの専門家に相談しておくと安心です。 出典)東京都収用委員会「収用手続の流れ」 まとめ 公共事業のために立ち退きを求められた場合、交渉段階であれば拒否できます。しかし、収用委員会による裁決が行われると、最終的には土地を明け渡さなくてはなりません。起業者から立ち退きの交渉があった場合は、土地収用の手続きを見据えたうえで、どのように対応するかを検討しましょう。 区分所有法とは?概要や対象となる建物、主な規定内容について解説 区分所有法は、マンションの所有者や管理組合にとって重要な法律です。マンション暮らしを検討している人や既に住んでいる人は、区分所有法を理解しておくことで、安心して生活できるでしょう。 この記事...記事を読む 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

    2024.08.07制度
  • 財産分与とは?対象となる財産や算定方法、注意点を解説

    もし離婚をすることになった場合、財産分与をすることになるでしょう。円満に離婚を進めるためにも、財産分与の制度内容を知っておくことが大切です。 この記事では、財産分与の概要や対象となる財産、注意点などについて解説します。 財産分与とは 財産分与とは、夫婦が婚姻中に築いた財産を離婚する際、または離婚後に分けることです。財産分与は、離婚をした夫婦の一方が他方に対して財産を分与するように請求でき、次の3つの目的・性質があります。 夫婦が共同で築いた財産の公平な分配 離婚後の生活保障 離婚原因を作ったことへの損害賠償 「財産の公平な分配」が財産分与の基本的な考え方で、実際には「離婚後の生活保障」や「損害賠償」の要素も考慮しながら、財産の分け方を決めることになります。 財産分与は、離婚から2年の期間制限があります。例外はありますが、原則離婚から2年を経過した後は、相手の意思にかかわらず権利が消滅してしまうため、注意しましょう。 出典)法務省 財産分与 財産分与の対象となる財産 財産分与を円滑に進めるには、対象となる財産を把握しておく必要があります。財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦の協力によって築いた「共有財産」です。具体的には、以下のような財産が該当します。 預貯金 不動産 有価証券 保険 自動車 家具、家電 貴金属 退職金 年金 夫婦のいずれか一方の名義になっている場合でも、実際は夫婦で形成したものであれば財産分与の対象です。たとえば、婚姻中に購入した不動産が単独名義の場合でも、家事などを分担していれば、実質的には夫婦の共有財産といえるでしょう。 状況によっては、退職金や年金も財産分与の対象となる可能性があります。 年金について 年金分割とは、離婚した場合に婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。年金分割の方法は2種類あります。 合意分割制度 3号分割制度 合意分割制度とは、夫婦の一方または双方からの請求によって年金を分割する方法です。分割の割合は双方の合意、または裁判手続きによって決まります。 3号分割制度とは、国民年金第3号被保険者からの請求により、年金を分割する方法です。国民年金第3号被保険者とは、会社員や公務員などに扶養されている配偶者の方です。分割の割合は2分の1ずつとなります。 どちらの制度も原則として、離婚をした日の翌日から2年を経過すると請求できなくなるので注意が必要です。詳しくは、管轄する年金事務所に問い合わせましょう。 出典) ・法務省 年金分割 ・日本年金機構 離婚時の年金分割 不動産について 離婚をしたときに現在住んでいる自宅をどうするか、という点は重要です。しかし、夫婦の一方が自宅に住み続けたい場合には、高額な財産である不動産は「公平に分配する」という点で難しいかもしれません。 また、住宅ローンが残っている場合には、今の自宅に住み続けたい人とローンを借り入れている人が同じとも限らないので、その点でも財産分与は難しいかもしれません。 そのような時にリースバックが解決策になるかもしれません。リースバックとは、リースバック運営会社と、不動産の売買契約および賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けることができるサービスです。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 財産分与の対象とならない財産 次の財産は、夫婦で協力して築いた財産とはいえないため、財産分与の対象となりません。 結婚前から所有している財産:特有財産 夫婦の一方が結婚前から所有している「特有財産」は、財産分与の対象外で、民法上以下のように定義されています。 民法第762条(夫婦間における財産の帰属)   夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。 2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。 出典)民法第762条(夫婦間における財産の帰属) たとえば、独身のときに購入した株式や自動車、貯めたお金などが該当します。結婚後に親族からの贈与・相続で取得した預貯金や不動産なども、特有財産として財産分与の対象外となります。 しかし、例外として特有財産のうち、結婚後に夫婦の協力で価値が維持・増加したと考えられるものは、その貢献度に応じて財産分与の対象に含まれる可能性があります。特有財産の財産分与について、話し合いで解決しない場合には、弁護士などの専門家に相談しましょう。 出典)民法第768条第3項(財産分与) 財産分与の額の算定方法 財産分与の額は、「夫婦間で協議」するか「家庭裁判所の調停」で決定します。 夫婦間で協議 まずは夫婦で協議し、分配割合や受け取る財産の種類などを決めます。分配割合は原則として2分の1ずつと考えられますが、夫婦で合意できるなら割合は問いません。 離婚後の生活保障、財産形成への寄与分(貢献度)を考慮して分配割合を決めるのも1つの方法です。また、夫婦の一方が主に離婚原因を作った場合は、解決金や損害賠償の要素を加味することも可能です。 いずれにせよ、夫婦でしっかりと話し合い、お互いに納得できる割合で合意できるのが理想といえます。 家庭裁判所の調停 夫婦で協議をしても合意に至らない場合、話し合いができない場合は、家庭裁判所に調停の申立てを行います(財産分与請求調停)。 調停手続きでは、共有財産の額や内容、財産形成に対する貢献度などの事情を夫婦双方から聴取し、必要資料等を確認したうえで解決案や助言などが提示されます。それでも合意できずに調停が成立しない場合は、裁判官の審判によって結論が示されます。 財産分与の注意点 離婚が決まって財産分与を行う場合は、次の点に注意しましょう。 話し合いは早めに始める 制度上は、離婚後に財産分与を請求することも可能です。しかし、離婚が成立すると話し合いの機会を作ることが難しくなり、共有財産を把握できなくなるリスクが高まります。また、離婚は、財産分与以外にも勤務先への報告や子どもの親権をどちらが持つかなど、やるべきことがたくさんあります。 財産分与をスムーズに進めるためにも、離婚が決まったら早めに話し合いを始めましょう。 証拠資料を準備する 財産分与では、証拠資料を準備することも重要です。資料があれば、どのような財産があるかを客観的に把握できます。万が一裁判になった場合は、必要に応じて資料を提出することが可能です。 預貯金なら通帳や取引履歴、不動産なら登記事項証明書など、財産の内容や価値を証明できる資料を準備しておきましょう。 専門家に相談する 離婚による財産分与は、どの財産が対象になるのか、価値はどのように考えればいいのかなどの専門知識が必要です。離婚準備を進める際に何から着手すべきか、わからない人もいるでしょう。 財産分与でトラブルを避けるには、弁護士などの専門家に相談する方法もあります。財産分与だけでなく、離婚協議書の作成などトータルでサポートを受けられます。 基本的に、財産分与で贈与税がかかることはありません。ただし、状況によっては「分与された財産の額が多すぎる」とみなされ、課税されることもあるため、税務についても相談しておくと安心です。 出典)国税庁 No.4414 離婚して財産をもらったとき まとめ 離婚による財産分与では、共有財産を2分の1ずつ分け合うのが原則ですが、夫婦で話し合って分配割合を決めることも可能です。話し合いで合意できない場合は、裁判所の手続きを通して決めることになります。 夫婦だけで財産分与を進めるのが難しい場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。 ペアローンは離婚したらどうなる?よくある問題と対処法を紹介 住宅を購入する際にペアローンを組むことで、夫婦のどちらか一方が単独で住宅ローンを組むより借入額を増やせるなどのメリットがあります。しかし、ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、自宅の扱いや住...記事を読む 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

  • 退職金制度とは?種類や特徴について解説

    会社を退職した時に、退職金額はいくらなのか、どのようにもらえるのかご存じでしょうか。退職金制度の種類は複数あるため、自身が勤める会社がどんな制度を採用しているかを把握しておくことが重要です。 この記事では、退職金制度の種類とそれぞれの特徴について詳しく解説します。 退職金制度とは 退職金制度とは、企業に一定期間働いた場合、勤続年数や役職、在職期間中の業績などに応じてお金が支給される制度のことです。しかし、退職金制度は労働基準法での取り決めがないため、必ずしも企業に制度導入の義務はありません。 退職金制度がある場合は、会社の就業規則や退職金に関する規程に明記されているため、確認しておきましょう。 退職金の相場 厚生労働省の調査によると、定年退職者の勤続年数別の平均退職給付額は以下のとおりです。 勤続年数 退職一時金 企業年金現価額 退職給付額 20年 394.9万円 222.9万円 617.8万円 30年 634.8万円 815.7万円 1,450.5万円 40年 1,269.2万円 888.1万円 2,157.4万円 出典)厚生労働省「令和3年民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)」 勤続年数が長くなるにつれて、退職給付額(退職一時金と企業年金の合計)も増加していることがわかります。勤続年数が長ければ長いほど、受け取れる退職金も多くなるのが一般的といえるでしょう。 退職金の使い道 退職金は老後の生活設計に大きく関わります。安心して老後生活を送るには、あらかじめ退職金の使い道を検討し、計画的に使うことが重要です。ここでは、退職金の使い道として代表的なものを4つ紹介します。 住宅ローンの返済 住宅ローンがまだ残っている場合、退職金を使って一括返済するか、引き続き毎月返済していくかを検討するかもしれません。 住宅ローンを一括返済した場合、月々の返済負担はなくなりますが、残債によっては退職金がほとんど手元に残らない場合もあるでしょう。残債や残返済期間、退職後の勤労収入の有無などを考慮して、一括返済するべきか判断することが大切です。 関連記事はこちら老後資金を確保するための住宅ローン返済術(60歳以上編) 住み替え・リフォームの資金 退職金を受け取る年齢になると、ライフスタイルの変化により住み替えやリフォームを検討するかもしれません。「子どもが独立したので自宅をダウンサイジングしたい」、「自宅が古くなったので住み替えたい」などの希望に沿って、退職金を住み替えやリフォーム資金に充てられます。 リフォームでは補助金が出る場合もあるほか、60歳以上の住宅ローンであるリ・バース60などを活用すれば手元資金を残すこともできます。いずれにしてもまとまったお金が必要になるので、計画的に行いましょう。 関連記事はこちらリ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 老後の生活資金 退職金は、老後の生活費として残しておくと安心です。特に公的年金だけで生活するのが難しい場合、退職金は重要な老後の生活資金になります。 老後は娯楽費などを含めた日々の生活費に加えて、事故や病気、介護などでまとまった資金が必要になることもあるため、ゆとりをもって資金を確保することが大切です。 関連記事はこちら夫婦の老後資金はいくら必要?足りない時の対処法も紹介 関連記事はこちら老後の一人暮らしに生活費はいくら必要? 資産運用 退職金のうち、すぐに使う予定のない余剰資金は資産運用に回すのも選択肢です。株式や投資信託等の金融商品として保有することで、預貯金よりも資産が長持ちする効果が期待できます。 たとえば、65歳から2,000万円を毎月10万円(年120万円)取り崩す場合、81歳で資産は底をつきますが、利回り3%で運用しながら取り崩せば88歳まで資産は長持ちします。 資産運用は株式、投資信託、不動産投資など複数の方法があります。うまく運用できれば利益が出る一方で、損をすることもあるため、リスクのとりすぎに注意しましょう。金融機関や専門家などに相談する場合も、相談先は慎重に選ぶことが重要です。 退職金制度の種類とそれぞれの特徴 退職金制度は、主に次の4種類に分類されます。 退職一時金制度 退職金共済制度 確定給付企業年金制度(DB) 企業型確定拠出年金制度(DC) それぞれ制度内容や特徴について見ていきましょう。 退職一時金制度 退職一時金制度とは、会社を辞める際に一度にまとめて退職金が支給される制度です。支給額は勤務先の退職金規程に基づいて計算されます。退職一時金制度は自由度が高く、企業ごとに退職金の計算方法が異なるのが特徴です。 企業によって制度内容が異なるため、勤務先の退職金規程の内容を理解しておくことが重要です。わからないことがあれば、あらかじめ社内の担当者に確認しておきましょう。 退職金共済制度 退職金共済制度とは、主に中小企業を対象とした国の制度です。代表的なものに「中小企業退職金共済(中退共)」、「特定退職金共済」があります。 企業が外部機関に毎月掛金を支払い、退職金の積み立てを行います。そして従業員の退職時に、積み立てた掛金をもとに外部機関から退職金が直接従業員に支払われる仕組みです。退職金を受け取る際は、従業員本人が退職金請求の手続きを行う必要がある点に注意しましょう。 出典)独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部 確定給付企業年金制度(DB) 確定給付企業年金制度(DB)とは、会社を辞めるときに一時金または年金が給付される制度です。退職時に全額を一時金で受け取るか、一定期間にわたって年金で受け取るかを選択できます。 企業は契約に基づいて金融機関などに掛金を拠出し、年金資産の管理・運用を依頼します。将来の給付額があらかじめ決まっているため、従業員にとっては将来の見通しを立てやすいでしょう。 企業型確定拠出年金制度(DC) 企業型確定拠出年金制度(DC)とは、企業が掛金を拠出し、その掛金を従業員本人が管理・運用する制度です。従業員は投資信託などから運用商品を自ら選択し、その運用成果に応じて給付額が決まる仕組みになっています。 企業型確定拠出年金(DC)では、拠出限度額である月額55,000円の範囲で、会社が拠出する掛金に加えて、従業員本人が掛金を上乗せして拠出することができます。これをマッチング拠出制度といいます。 従業員掛金は会社の拠出金を超えることはできませんが、全額所得控除の対象となるため税制面でも優遇されます。 しかし、運用がうまくいけば給付額を増やすことができる一方で、選択した商品によっては元本割れの恐れがあるので注意が必要です。積立金は、原則として60歳以降に一時金または年金として受け取ることができます。企業によっては、一時金と年金を併用することも可能です。 退職金の税金・所得控除の計算方法 退職金は、「退職所得」として所得税や住民税の課税対象となります。ただし、退職所得控除が適用されるため、退職金額が退職所得控除額の範囲内に収まっていれば課税されません。 <退職所得金額の計算方法> 退職所得金額=(退職金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2 <退職所得控除額の計算方法> 勤続年数20年以下 40万円×勤続年数※80万円未満の場合は80万円 勤続年数20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年) たとえば、30年勤務していた会社を退職する場合、退職所得控除額は1,500万円(800万円+70万円×10年)です。仮に退職金が2,000万円であれば、退職所得金額250万円(2,000万円-1,500万円)×1/2)に対して税金がかかります。 退職金の税金は、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば退職金支給時に源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。詳しくは、勤務先の担当部署に確認しましょう。 なお、退職金を年金で受け取る場合、国民年金や厚生年金などの公的年金と含めて「公的年金等控除」が適用されます。控除額を超える部分は、雑所得として所得税や住民税がかかります。 まとめ 退職金制度には複数の種類があり、どの制度を採用しているかは企業によって異なります。退職金を無計画に使ってしまうと、老後の生活費が不足するリスクがあります。退職金の見込額が把握できたら、住宅ローンの返済や住み替えなど、あらかじめ使い道を決めておきましょう。 また、退職金制度がない場合や老後資金に不安がある場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用するなど、計画的に資産を増やすことも大切です。退職後により豊かな生活を送るためにも、まずは自社の退職金制度を理解し将来の資金計画を早めに立てることが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 iDeCo(イデコ)の仕組みとは?メリット・デメリットを解説 iDeCo(イデコ)は、公的年金だけでは不足する老後資金を準備するための制度です。iDeCoについて聞いたことはあっても、その特徴はよくわからない方もいるのではないでしょうか。iDeCoは2...記事を読む

  • 登記情報提供サービスとは

    登記情報提供サービスとは?概要と利用料金を解説

    登記情報提供サービスは、インターネット上で登記情報を確認できるサービスです。法務局に行かなくても登記の内容を把握できるため、情報取得にかかる時間や手間を省けます。この記事では、登記情報提供サービスの概要と使い方、利用料金について解説します。 登記情報提供サービスとは 登記情報提供サービスとは、登記所が保有する登記情報を、インターネットを使用してパソコンの画面上で確認できる有料サービスです。提供される登記情報は以下のとおりです。 不動産登記情報(全部事項) 不動産登記情報(所有者事項) 地図情報 図面情報 商業・法人登記情報 動産譲渡登記事項概要ファイル情報及び債権譲渡登記事項概要ファイル情報 請求した時点における登記情報を、リアルタイムで表示、保存できます。さらに、照会番号の発行も行っています。照会番号とは、登記事項証明書の代わりに添付できる番号のことです。行政機関等へのオンライン申請等の際に照会番号を添付することで、登記情報提供サービスで取得した登記情報を登記事項証明書に代えて申請できます。 登記情報提供サービスを利用するには 登記情報提供サービスを利用するには、パソコンを用意して、ネットを利用できる環境を整えることが前提となります。スマートフォンやタブレットは動作が保証されておらず、非推奨となっているので注意が必要です。そのうえで、以下3つの利用方法があります。それぞれの概要について解説します。 ①一時利用 一時利用とは、申込手続(登記情報提供契約の締結)をすることなく、一時的に利用する方法です。一時利用者登録を行うと、クレジットカードの即時決済ですぐに利用できます。登記情報を請求できるのは、初回ログインを行った当日のみです。翌日以降のログインは、マイページの利用に限られます。マイページでは、利用実績や利用明細の確認ができます。 ②登録利用 登録利用とは、あらかじめ申込手続を行い、利用登録をしたうえで利用する方法です。個人と法人で、利用方法は異なります。 個人は、申込単位にひとつの利用者ID(登記情報を請求できるID)が交付されます。同一IDで同時に複数ログインはできないため、複数名で利用する場合は、利用する口数分の申し込みが必要です。申込手続は約1週間で、手続完了後は「登録完了通知書(利用者ID)」が交付されます。料金の支払いは、登記情報を請求する都度、クレジットカードで決済されます。 法人は、申込単位にひとつの「管理者ID」が交付されます。管理者IDでは、登記上の請求はできません。管理者IDでログインし、利用人数分(最大200名分)の利用者IDの登録を行います。申込手続は約1ヵ月で、手続完了後は「登録完了通知書(管理者ID)」が交付されます。料金の支払いは、月ごとに預金口座からの引き落としです。 ③公共電子確認 照会番号の提供を受けた公共機関が、オンライン申請等の確認時に使用する方法です。法人の利用登録と同じく、発行された管理者IDでログインし、利用者ID(最大200名分)の登録を行います。 登記情報提供サービスにかかる費用 登記情報提供サービスでは、「登録手数料」と「利用料金」がかかります。それぞれの内容と料金を紹介します。 登録手数料 登録利用の場合、利用区分に応じて以下の登録手数料がかかります。 個人登録利用…300円(273円) 法人登録利用…740円(673円) 国、地方公共団体等…560円(510円) ※登録費用の()内の料金は、消費税不課税対象者(利用者の住所等が日本国外にある場合に、消費税法の課税対象外となり消費税が課されない方)の登録費用です。 出典)登記情報提供サービス「サービス概要」 一時利用と公共電子確認の場合、登録手数料はかかりません。 利用料金 利用料金は、確認する登記情報や内容に応じて以下の利用料金がかかります。 出典)登記情報提供サービス「サービス概要」 公共電子確認の場合、利用料金はかかりません。 登記情報提供サービス利用上の注意点 登記情報提供サービスを利用する際の注意点は以下のとおりです。 受付時間に制限がある 登記情報提供サービスはインターネット上で手続きを行いますが、以下の受付時間内しか利用できません。 <登記情報提供サービスの利用時間> 平日:8:30~23:00 土日祝日:8:30~18:00 ※地図及び図面情報については平日の8:30~21:00 また、年末年始(12月29日~1月3日)は休業日となります。利用終了時間になると途中で送受信が切断されることがあるので、時間に余裕をもって利用しましょう。 法的な証明書にはならない 登記情報提供サービスでは、利用者が請求した時点において登記所が保有する登記情報を確認できますが、あくまで「閲覧」と同等のサービスです。登記事項証明書とは異なり、証明文や公印等は付加されないため、PDF形式で受領したデータを印刷しても法的な証明書にはなりません。 ただし、行政機関等へのオンライン申請等は、登録事項証明書を添付する代わりに照会番号を利用できることもあります。詳細は、申請先の行政機関等へご確認ください。 関連記事はこちら登記簿謄本(登記事項証明書)とは?取得方法や記載内容を解説 まとめ 登記情報提供サービスは、インターネット上で登記情報を確認できる便利なサービスです。法務局で書面請求するよりも費用が安く済むのもメリットです。 ただし、データを印刷しても法的な証明書として認められず、契約時などには利用できません。「登記情報の確認に限定する」「行政機関等への申請には照会番号を添付する」など、状況に応じてうまく使い分けましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住所変更登記等の義務化はいつから?手続き方法や注意点も解説 不動産所有者の氏名や住所などに変更があった場合の、法務局での住所等の変更登記はこれまで任意でしたが、不動産登記法の改正により登記申請が義務化されることになりました。変更登記をしないと罰則を科...記事を読む

    2024.01.03制度
  • 家族信託の費用

    家族信託にかかる費用・税金と相場、手続きする際の注意点を解説

    家族信託とは、財産の管理、運用、処分を家族に任せるための制度です。親の判断能力が低下した場合、子どもの判断で親の財産を運用、処分できるため、認知症対策として注目されています。家族信託をする場合、どのような費用や税金がかかるのでしょうか。 この記事では、家族信託にかかる費用や税金とその相場について解説します。 家族信託でかかる可能性がある税金 家族信託では、状況に応じて以下5つの税金がかかる場合があります。 贈与税 相続税 所得税(法人税) 固定資産税 登録免許税 それぞれ詳しく見ていきましょう。 贈与税 家族信託の場合、委託者と受益者が同じ人であれば贈与税は発生しません。しかし、委託者以外の人が受益者となった場合、財産を贈与したとみなされ、受益者に贈与税がかかります。 例えば、「父:委託者、子:受託者、母:受益者」とし、信託財産である収益不動産(信託前は父名義)の家賃収入を母(受益者)が受け取るような場合が考えられます。 相続税 家族信託では、信託財産から生じる利益を受け取る「受益者」が亡くなったときに相続が発生します。受益者の死亡によって信託契約を終了する場合は、信託財産を相続する人に相続税が課されます。受益者の死亡後も信託契約を継続する場合は、受益権を引き継ぐ人に相続税がかかります。 所得税(法人税) 信託財産から得られる収入(所得)については、受益者が所得税を納めなくてはなりません。また、受益者が受益権を売却した場合は、その利益に所得税がかかります。なお、受益者が法人であれば、法人税が発生します。 固定資産税 不動産を信託する場合、不動産の所有者が委託者から受託者に代わります。そのため、次年度からは受託者に固定資産税の納税義務が生じます。 ただし、信託契約において「固定資産税は受益者が負担する」と明記すれば、受託者の自己資金ではなく信託財産から納めることが可能です。 登録免許税 信託財産に不動産が含まれる場合、「信託による所有権移転登記」の登録免許税がかかります。 所有権移転登記は、不動産の名義人を委託者から受託者に変更するための手続きです。登録免許税額については後述します。 家族信託を手続きする場合の費用と相場 ここでは、家族信託を自分で手続きする場合と専門家に依頼した場合の費用相場を紹介します。 自分で手続きする場合の費用と相場 戸籍謄本、印鑑証明書、住民票などの資料取得費用 家族信託の手続きでは、戸籍謄本や印鑑証明書、住民票などの公的書類を取得しなくてはなりません。信託財産に不動産が含まれている場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)も必要です。取得費用はいずれも1通につき数百円程度です。 信託口口座開設費用 家族信託では、信託財産を管理するための信託口口座を開設します。金融機関によって異なりますが、開設費用は5~10万円程度が一般的です。正確な金額は金融機関に確認しましょう。 公正証書費用 家族信託では、信託口口座を開設する際に、金融機関から公正証書で作成された信託契約書の提出を求められる場合がほとんどです。そのため、信託契約書を公正証書にする必要があります。公正証書にかかる費用は以下のとおりです。 目的の価額 手数料 100万円以下 5,000円 100万円超 200万円以下 7,000円 200万円超 500万円以下 1万1,000円 500万円超 1,000万円以下 1万7,000円 1,000万円超 3,000万円以下 2万3,000円 3,000万円超 5,000万円以下 2万9,000円 5,000万円超 1億円以下 4万3,000円 1億円超 3億円以下 4万3,000円+5,000万円ごとに1万3,000円 3億円超 10億円以下 9万5,000円+5,000万円ごとに1万1,000円 10億円超 24万9,000円+5,000万円ごとに8,000円 出典)日本公証人連合会「手数料」 信託監督人・受益者代理人への報酬 家族信託では、状況に応じて信託監督人や受益者代理人を設定する場合があります。 信託監督人:受益者のために受託者の監督を行う者 受益者代理人:受益者のために受益者の権利を行使する者 信託監督人や受益者代理人を専門家に依頼すると、月額数万円程度の費用がかかります。 登録免許税 上述したように、信託財産に不動産が含まれている場合は、信託登記の登録免許税がかかります。税額は「不動産の固定資産税評価額×0.4%」です。ただし、土地については0.3%の軽減税率が適用されます(2026年3月31日まで)。 例えば、土地3,000万円、建物2,000万円の場合の登録免許税額は、以下のとおりです。 土地:3,000万円×0.3%=9万円 建物:2,000万円×0.4%=8万円 専門家に依頼した場合の費用と相場 専門家に依頼する場合は、上記の「自分で手続きする場合の費用」に加えて、以下の費用負担が発生します。 コンサルティング費用 信託契約書の作成費用 公正証書の手続き代行費用 不動産登記の代行費用 実際にかかる費用は専門家によって異なります。依頼の際に費用をしっかりと確認することが大切です。 家族信託の「損益通算禁止」とは 租税特別措置法第41条の4の2によると、信託財産から生じた損失は、信託財産以外から生じた所得との損益通算ができません。例えば、信託された収益不動産で赤字が生じても、信託財産以外の収益不動産の所得とは損益通算できないため、税負担が増える恐れがあります。 大規模修繕などで赤字の発生が見込まれる収益不動産がある場合は、信託する前に税理士などの専門家に相談しましょう。 出典)国税庁「第41条の4の2(特定組合員等の不動産所得に係る損益通算等の特例)関係」 まとめ 家族信託は、認知症などによる判断能力の低下に備えるには有効な手段です。ただし、専門家に手続きを依頼する場合はまとまった費用がかかります。家族信託でかかる税金・費用の相場を把握したうえで、利用するかを判断しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 家族信託とは?仕組みやメリット・デメリット、手続き方法を解説 親の判断能力が低下した場合、子どもの判断で親の財産を運用・処分することはできません。親の認知症対策としては「成年後見制度」が一般的ですが、近年では新たな財産管理方法として「家族信託」が注目さ...記事を読む

  • 自筆証書遺言書保管制度とは

    自筆証書遺言書保管制度とは?メリットと注意点、利用の流れを解説

    相続トラブルを避けるには、遺言書を作成するのが有効です。ただし、本人が自筆で作成する自筆証書遺言の場合、正しく作成しないと無効になる恐れがあります。また、盗難や紛失、偽造・改ざんの危険性もあります。このようなリスクを回避する方法として、「自筆証書遺言書保管制度」があります。 この記事では、自筆証書遺言書保管制度の概要やメリット、注意点、利用の流れを解説します。 自筆証書遺言書保管制度とは 自筆証書遺言書保管制度とは、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度です。2020年7月10日から開始され、全国312ヵ所の法務局で利用できます。 遺言書の原本はもちろん、画像データとしても長期間適正に管理されます。原本は遺言者死亡後50年間、画像データは同150年間保管されます。紛失の恐れがなく、遺言者が亡くなった際に相続人に通知してもらえるため、自宅で保管するよりも安全です。 自筆証書遺言書保管制度のメリット 自筆証書遺言書保管制度には、以下のようなメリットがあります。 適切な保管によって紛失や盗難、偽造、改ざんを防げる 自筆証書遺言は紙と筆記用具、印鑑があれば1人で気軽に作成できます。しかし、自宅に保管していると紛失や盗難リスクがあり、偽造や改ざんの危険性もあります。自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、法務局で遺言書の原本と画像データが適切に保管されるため、紛失や盗難の心配がなく、偽造や改ざんを防止できます。 無効な遺言書になりにくい 自筆証書遺言書保管制度は、法務局職員が民法に定める自筆証書遺言の形式に適合するかを確認してくれるため、無効な遺言書になりにくいです。ただし、遺言書の有効性を保証するものではなく、遺言の内容について相談することはできません。 相続人に発見してもらいやすくなる 自宅に遺言書を保管すると、相続人が遺言書を見つけられず、遺言者の意思に沿った遺産相続が行われない恐れがあります。自筆証書遺言書保管制度を利用することで、遺言者が亡くなった際に、あらかじめ指定した相続人に対して法務局に遺言書が保管されていることを通知してもらえます。これを死亡時通知と言います。 検認手続が不要になる 遺言者が亡くなった後に自筆証書遺言を発見した場合、偽造や改ざんを防止するため、開封する前に家庭裁判所に提出して、検認を受ける必要があります。検認を受けないと、遺言書の内容に沿った遺産分割はできません。 自筆証書遺言書保管制度を利用することで、この検認手続が不要になり、速やかに遺言の内容を実現することができます。 自筆証書遺言書保管制度の注意点 自筆証書遺言を法務局に提出する際、法務局の職員が民法で定められた形式に適合するかを確認します。しかし、遺言の記載方法まで確認してもらうことはできず、有効性は保証されません。 また、「用紙はA4サイズ、裏面には何も記載しない」など、自筆証書遺言書保管制度を利用するための様式が別に定められており、そういった記載ルールを守る必要があります。 自筆証書遺言書保管制度の利用の流れ 自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、遺言者本人が法務局に出向いて手続きを行います。利用の流れは以下のとおりです。 管轄の法務局を選ぶ 申請書を記入する 事前予約をする 必要書類を持参して法務局で申請する 遺言者の住所地、本籍地、所有する不動産所在地のいずれかを管轄する法務局で申請手続をします。申請書は法務局のホームページからダウンロードするか、最寄りの法務局窓口で入手できます。 手続は事前予約制のため、ホームページ内の予約専用ページ、電話または窓口であらかじめ予約します。必要書類を持参のうえ、予約した日時に法務局で申請を行いましょう。申請時の必要書類は以下のとおりです。 自筆証書遺言書 申請書 本人確認書類 住民票の写し(本籍と戸籍筆頭者の記載があるもの) 3,900円分の収入印紙(遺言書保管手数料) 申請内容に問題がなければ、原本と画像データが保管され、保管証が渡されます。 自筆証書遺言と公正証書遺言との違い 遺言書は、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。主な違いは以下の3つです。 自書(手書き)の有無 自筆証書遺言は、遺言者が財産目録以外の全文を手書きしなくてはなりません。公正証書遺言は、遺言者から告げられた内容を公証人が遺言書に記載するため、自書は署名のみです。 証明力 自筆証書遺言の内容は、遺言者の自己責任です。公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が法的な有効性をチェックするため、高い証明力を有します。 出張の有無 自筆証書遺言書保管制度を利用する際は、遺言者本人が法務局に出向かなくてはなりません。公正証書遺言は、遺言者が高齢などで公証役場に出向くのが困難な場合、公証人が遺言者の自宅などに出張して遺言書を作成できます。 どちらを利用するべき? 自筆証書遺言の一番のメリットは、公正証書遺言と比較して費用と手間が小さいことです。民法の要件を満たした遺言書を自ら作成できるなら、自筆証書遺言書保管制度を利用するのがいいでしょう。 ただし、遺言書が無効にならないか不安であれば、費用や手間をかけてでも、公正証書遺言を利用する方が確実です。 関連記事はこちら公正証書遺言とは?手続きの費用と必要書類を解説 自筆証書遺言書保管制度の利用状況 法務局によると、2022年の遺言書の保管申請は1万6,802件です。一方、日本公証人連合会によれば、公正証書遺言の作成件数は11万1,977件となっています。公正証書遺言が年10万件程度利用されていることを踏まえると、自筆証書遺言書保管制度の利用は少ないといえます。 ただし、自筆証書遺言を作成して自宅等に保管している人がどの程度いるのかは不明です。これから認知度が高くなることで、自筆証書遺言書保管制度の利用件数が増えていく可能性は十分に考えられます。 出典) ・法務局「遺言書保管制度の利用状況」 ・日本公証人連合会「令和5年の遺言公正証書の作成件数について」 まとめ 自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、自筆証書遺言の紛失や盗難、偽造、改ざんのリスクを避けられます。また、法務局職員が民法で定める形式に適合するかを確認してくれるのもメリットです。ただし、遺言書の有効性が保証されるわけではないため、不安な場合は公正証書遺言を検討しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 相続争いを生まないためのリースバックという選択肢 自宅を所有していると、老後も住み続けられる安心感がある一方で、相続に不安を感じることもあるのではないでしょうか。不動産は実物資産であるため、相続人が複数いると簡単に分けられません。また、相続...記事を読む

    2023.11.15制度相続
  • マンション長寿命化促進税制とは

    マンション長寿命化促進税制とは?概要やメリットを解説

    令和5年度税制改正の大綱にて、マンション長寿命化促進税制の創設が決定しました。マンションを適切に管理し、修繕積立金の確保や長寿命化工事を実施することで、区分所有者の固定資産税が軽減されます。ただし、制度の適用を受けるにはいくつかの条件を満たす必要があるため、制度について理解を深めておくことが大切です。 この記事では、マンション長寿命化促進税制の概要やメリット、手続きの流れを解説します。 マンション長寿命化促進税制とは? マンション長寿命化促進税制とは、一定の条件を満たしたマンションが長寿命化工事を実施した場合に、その翌年度の固定資産税が減額される制度です。区分所有者が支払う工事完了翌年度の固定資産税(建物部分のみ)が、1/2~1/6の範囲内で減額されます。減額割合は、各自治体の条例によって決定されます。 「長寿命化工事を実施した場合」とは、以下3つの工事を全て実施した状態をいいます。 外壁塗装等工事 床防水工事 屋根防水工事 なお、マンション長寿命化促進税制の適用を受ける条件については、この後詳しく解説します。 制度創設の目的と背景 多くの高経年マンションでは、管理計画期間の不足や推定修繕工事項目の漏れなどから、修繕積立金が不足しています。国土交通省の「平成30年度マンション総合調査」によれば、現在の積立金残高が計画に対して不足しているマンションは34.8%です。 修繕積立金が不足していることがわかっていても、修繕積立金の引き上げや長寿命化工事の実施は、合意形成が難しいです。一方で、長寿命化工事が適切に行われなかった場合、外壁がはがれて廃墟化が進むなど、周囲に悪影響を与える恐れがあります。 そこで、必要な修繕積立金の確保や適切な長寿命化工事の実施について、所有者の合意につなげるために、マンション長寿命化促進税制が創設されました。 出典)国土交通省「平成30年度マンション総合調査」 マンション長寿命化促進税制の適用条件 マンション長寿命化促進税制の適用を受けるには、マンションと管理計画の面で、条件を満たす必要があります。 マンションの条件 まず、マンションが以下の条件を満たす必要があります。 築後20年以上が経過している 総戸数が10戸以上 過去に長寿命化工事を1回以上実施している これらの条件を満たすマンションでないと、そもそもマンション長寿命化促進税制の適用対象となりません。 管理計画の条件 上述の条件を満たすマンションであることに加え、管理計画を作成し、適切な管理がされている必要があります。具体的には、以下のいずれかの手段で、管理計画の認定を受けている必要があります。 ①マンション管理計画認定制度を利用する マンション管理計画認定制度を利用することで、管理計画が一定の基準を満たしていると自治会から認定を受けることができます。マンション管理適正化法に基づき、2022年4月からマンション管理計画認定制度が開始されました。 関連記事はこちらマンション管理計画認定制度とは?メリット・デメリットを解説 マンション管理計画認定制度の認定を受けたうえで、令和3年9月1日以降に修繕積立金の額を管理計画の認定基準まで引き上げることが、長寿命化促進税制の適用条件です。具体的な金額は以下のとおりです。 出典)国土交通省「マンション長寿命化促進税制の要件」 ②自治体から助言または指導を受ける マンション管理計画認定制度を利用せず、自治体からの助言または指導を受けたうえで、以下の基準を満たすように長期修繕計画を見直す必要があります。 なお、修繕積立金の基準額は以下のとおり定められています。 出典)国土交通省「マンション長寿命化促進税制の要件」 2度目の長寿命化工事の条件 上述のマンションおよび管理計画の条件を満たしたうえで、2度目の長寿命化工事を行い、2023年(令和5年)4月1日~2025年(令和7年)3月31日の期間内に完了させる必要があります。 工事期間については、今後この期間が延長される可能性ないとは言い切れません。どうしても2度目の長寿命化工事を期間内に実施できない場合でも、引き続き動向に注目しておくといいでしょう。 マンション長寿命化促進税制のメリット マンション長寿命化推進税制には、以下のようなメリットがあります。 固定資産税が減額される 上述した条件を満たせば、各区分所有者が翌年度に支払う固定資産税(建物部分のみ)が減額されるため、税負担の軽減が期待できます。なお、減額割合は1/2~1/6の範囲内で、自治体によって異なります。 マンション価値の維持・向上につながる 必要な修繕積立金を確保し、長寿命化工事を行うことで、良好な住環境が保たれます。結果として、マンションの資産価値の向上につながり、売却がしやすくなる可能性があります。 マンション管理組合の負担軽減が期待できる 修繕積立金の引き上げや長寿命化工事の実施は、区分所有者の金銭的な負担が増えるため、話し合いがうまく進まないことがあります。「固定資産税の減額」という共通のメリットによって合意形成が容易になれば、マンション管理組合の負担軽減が期待できます。 マンション長寿命化促進税制の注意点 マンション長寿命化促進税制には、以下のような注意点もあります。 管理計画の認定が必要になる 長寿命化工事の実施には費用がかかる 管理計画認定マンションとして手続きをする場合は、一定の基準を満たす管理計画を策定し、自治体から認定を受けなくてはなりません。また、修繕積立金の額の引き上げも必要です。助言や指導を受ける場合は、長期修繕計画が一定の基準に適合することが要件となっています。 長寿命化工事については、「外壁塗装等工事」「床防水工事」「屋根防水工事」の3つを全て行わなくてはなりません。固定資産税の減額だけでなく、かかる工事費用も考慮したうえで、適用を受けるか判断することが大切です。 マンション長寿命化促進税制を受けるための手続き マンション長寿命化促進税制を受ける場合は、以下の流れで手続きを進めます。 修繕積立金の額を引き上げる マンションの管理計画の認定を取得する 長寿命化工事を実施する 工事完了日から3ヵ月以内に市町村へ減税措置を申告する 各区分所有者が市町村へ申告する際は、以下の書類が必要です。 固定資産税減額申告書 総戸数を確認できる書類 修繕積立金引上証明書(写し可) 管理計画の認定通知書(写し可) 過去工事証明書(写し可) 大規模修繕等証明書(写し可) 必要書類については、管理組合の管理者が取得し、各区分所有者に配布することが想定されています。 まとめ マンション長寿命化促進税制は固定資産税の減額だけでなく、マンション価値の維持や向上、管理組合の負担軽減も期待できます。ただし、管理計画の認定取得などの要件を満たす必要があるため、費用対効果を考慮して適用を受けるか判断しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マンション管理適正評価制度とは?メリット・デメリットを解説 2022年4月から「マンション管理適正評価制度」が開始されました。本制度は適切に維持管理されているマンションが、市場で評価されるための新たな仕組みです。同じ時期に国の「マンション管理計画認定...記事を読む

    2023.11.01制度
  • 敷地面積の制限とは

    敷地面積の制限とは?概要や目的、最低敷地面積の調べ方を解説

    近年の土地価格の上昇に伴い、大きな土地のままでは不動産を購入できない人が増加しています。そのような背景から、大きな土地を分割(分筆)することで価格を抑えた、小規模住宅が増えています。しかし、敷地面積の制限を設ける自治体が増えつつあることをご存知でしょうか。 この制限が設けられると、小規模住宅の敷地面積によっては、将来の建て替えや売却が難しくなるかもしれません。小規模住宅の購入を検討している場合は、敷地面積の制限について理解を深めておくことが大切です。この記事では、敷地面積の制限の概要や最低敷地面積を調べる方法を紹介します。 敷地面積の制限とは 敷地面積の制限とは、建築物の敷地面積を一定以上としなければならない規制のことです。この時、基準となる敷地面積は、「敷地面積の最低限度」「最低敷地面積」と呼ばれます。 建築基準法や都市計画法では、敷地面積の制限について以下のように定めています。 建築物の敷地面積は、用途地域に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められたときは、当該最低限度以上でなければならない。 出典)建築基準法 第53条の2第1項(e-Gov法令検索) 地方公共団体は、良好な住居等の環境の形成又は保持のため必要と認める場合においては、政令で定める基準に従い、条例で、区域、目的又は予定される建築物の用途を限り、開発区域内において予定される建築物の敷地面積の最低限度に関する制限を定めることができる。 出典)都市計画法 第33条第4項(e-Gov法令検索) この規制は、1つの広い敷地を複数に分割する「ミニ開発」を防止し、良好な住環境を維持・保存することを目的としています。小規模な敷地に住宅が密集すると、日照や通風などの環境が悪化し、火災リスクが高まるからです。 最低敷地面積は都市計画に基づき設定されるため、自治体ごとに異なります。例えば、福岡市の条例では、「市街化区域165㎡」「市街化調整区域200㎡」を敷地面積の最低限度と定めています。 なお、建築基準法(第五十三条の二第2項)では、都市計画で定める敷地面積の最低限度を「200㎡以下」としています。 出典)福岡市「福岡市よくある質問Q&A」 関連記事はこちら都市計画法とは?概要や定められている内容を解説 小規模住宅が増加している 近年、都心では土地価格の上昇を背景に、敷地面積が50㎡程度の小規模住宅が増加しています。土地を分割し、1棟あたりの敷地面積を50㎡程度とすることで、住宅の販売価格を抑えられるからです。 都心の小規模住宅は車庫や庭などの敷地を確保することは困難です。しかし、通勤に便利であることから、都心に住みたいファミリー層を中心に一定の需要があると考えられます。 土地の分割を制限する動きも広がっている 一方で、都心では土地の分割を制限する動きも広がっています。小規模住宅が増えすぎると、住環境の悪化や火災リスクが懸念されるからです。 例えば、荒川区では2021年11月に新たな規制が導入されました。新たに土地を分割して建築物を建てる場合、1棟あたりの敷地面積を60㎡(約18坪)以上とする必要があります。ただし、現状既に60㎡に満たない土地に、建物の新築や建て替え、土地の売買を行うことは可能です。 ・敷地分割の例 出典)荒川区「建築敷地細分化に対する規制について」 なお、東京23区では荒川区以外でも、同様の規制を既に設けている区がいくつかあります。 敷地面積の制限が適用されないケース 建築基準法第53条の2第1項によると、以下の敷地については、敷地面積の制限は適用されません。 建ぺい率の限度が80%とされている防火地域内にある耐火建築物等 公衆便所、巡査派出所その他これらに類する建築物で公益上必要なもの その敷地の周囲に広い公園、広場、道路その他の空地を有する建築物で、特定行政庁が市街地の環境を害するおそれがないと認めて許可したもの 特定行政庁が用途上または構造上やむを得ないと認めて許可したもの 敷地面積の制限について調べる方法 購入予定物件の最低敷地面積を調べる場合は、インターネットで「〇〇(地域名) 敷地面積の制限(もしくは敷地面積の最低限度)」と検索するといいでしょう。もしくは、自治体の窓口に問い合わせて確認することも可能です。 また、物件の登記簿謄本を見ると、敷地の分筆が行われているかを把握できます。もし土地の分割に関する規制導入後、最低敷地面積を下回る広さに分筆していることが分かったら、再建築や売却が可能かを自治体や不動産会社に確認しておくことが大切です。 最低敷地面積未満の土地を売却する方法 所有している土地を最低敷地面積未満に分筆してしまうと、売却が難しくなります。最低敷地面積に満たない土地を売却する場合は、以下3つの方法を検討しましょう。 隣地の所有者に売却する 隣地を買い取って合筆する(最低敷地面積を満たす) 訳あり物件の専門業者に売却する 相場より価格が下がる恐れはありますが、売却できる可能性は高まります。一方で、現実的には難しい方法であるため、専門家に相談するようにしましょう。 まとめ 人口が増加している都心部では大きな土地を分割し、小規模住宅として売り出されるケースが増加しています。しかし、今後は土地の分割について規制が拡大されることも考えられます。都心で小規模住宅の購入を検討している場合は、敷地面積の制限に関する自治体の動向を確認しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マイホーム選びのポイントは?購入経験者のアンケート結果もご紹介 マイホームは「人生最大の買い物」ともいわれます。一度購入すると簡単には手放せないため、「絶対に後悔したくない」と考える人も多いのではないでしょうか。希望条件が決まらない場合は、理想の暮らしを...記事を読む

    2023.09.20制度