「用語」の記事一覧

  • 資金洗浄(マネー・ローンダリング)とは?仕組みや対策を解説

    銀行口座の開設や送金、クレジットカードの発行などで金融機関を利用すると、資金洗浄(マネー・ローンダリング:以下「マネロン」)の対策として本人確認などを求められることがあります。マネロンが犯罪であることは知っていても、具体的にどのような行為を意味するのか十分に理解できていないかもしれません。 この記事では、マネロンの概要や仕組み、金融機関などで行われている対策についてわかりやすく解説します。 資金洗浄(マネー・ローンダリング)とは? 資金洗浄とは、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者をわからないようにして、捜査機関による収益の発見や検挙などを逃れようとする行為をいいます。 マネロンを放置すると、犯罪収益が将来の犯罪活動や犯罪組織の維持・強化に使用されるため、組織的な犯罪やテロ行為などを助長することにつながります。また、犯罪収益が移転して通常の事業活動に使われることにより、健全な経済活動に悪影響を与えます。 安全な暮らしを守り、健全な経済発展を実現するには、世界中の国々と連携しながらマネロン対策に取り組む必要があります。 出典)財務省「教えて!マネロン等対策」 FATF(金融活動作業部会)の役割 FATF(ファトフ)とは、Financial Action Task Forceの略称で、1989年のアルシュ・サミットでマネロン対策の国際基準策定と履行を担うために設立されました。FATFでは、マネロン対策の国際基準として定めた「FATF勧告」に基づき、参加国間の遵守状況や履行状況について監視(相互審査)を実施しています。 2019年10月から11月には、日本のFATF勧告の遵守状況について審査が実施され、2021年8月に第4次対日相互審査報告書が公表されました。その結果、「重点フォローアップ国」と評価されています。報告書の内容については、以下から確認できます。 出典)財務省「対日相互審査報告書の概要(仮訳・未定稿)」 政府は、この報告書の公表を契機として「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画」の策定・公表及び「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」を設置し、マネロン対策の強化を図っています。 出典) ・文化庁「FATF 第4次対日相互審査報告書の公表について」 ・金融庁「FATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査報告書の公表について」 マネロンの手口 マネロンは、主に次の3段階のプロセスを経て資金の浄化が行われます。 プレイスメント(placement) レイヤリング(layering) インテグレーション(integration) プレイスメントとは、犯罪によって得た収益を、金融システムや合法的な商取引の流れに取り込むプロセスです。偽名・架空名義の銀行口座に犯罪行為で得た資金を入金するなどの方法があります。 レイヤリングとは、金融システムに取り込んだ犯罪収益の出所をわからなくするためのプロセスです。銀行口座から複雑な送金取引を繰り返し、何度も資金を移動させるような方法があります。 インテグレーションとは、出所をわからなくした犯罪収益を合法的なビジネスによる収益のように偽造することで、通常の経済活動に戻すプロセスです。 これら3つのプロセスによって、犯罪によって得た資金を通常の経済活動で使用したり、再び犯罪行為に利用することが可能になります。 マネロンの事例 国家公安員会の「犯罪収益移転危険度調査書(令和5年12月)」によると、令和2~4年の3年間の検挙事例において、マネロンに悪用された主な取引の集計結果は以下のとおりです。 出典)国家公安員会「犯罪収益移転危険度調査書(令和5年12月)P.30」 最も多いのは内国為替取引の584件、次いで現金取引297件、預金取引160件となっています。内国為替取引とは、預金取扱金融機関(銀行、信用金庫、信用協同組合など)を利用した国内送金(預貯金の預入れ・払戻し、手形・小切手の利用は除く)のことです。預金取扱金融機関の商品・サービスが、マネロンに悪用された取引の多くを占めています。 マネロンを計画・実行しようとする者が、迅速で確実な資金移動が可能な内国為替取引を通じて、他人または架空名義の預金口座に犯罪収益を振り込ませる事例が多くみられます。最終的には、預金口座に入金された犯罪収益は現金化されるため、その後の追跡は難しくなります。 クレジットカードの不正利用の増加に伴い、クレジットカードがマネロンに悪用された取引も増加傾向です。また、前払式支払手段(商品券、磁気式・IC式プリペイドカード、インターネット上で利用できるプリペイドカードなど)、暗号資産、資金移動サービスなど、決済手段の多様化を悪用される場合もあります。 金融機関で行われるマネロン対策 前述のように、預金取扱金融機関の商品・サービスがマネロンに悪用されるケースが多発しています。そのため、金融機関で以下のような取引を行う場合は、マネロン対策の一環として取引内容や取引目的の確認を受けることがあります。 現金や小切手による高額の取引 収入や資産などに見合わない高額の取引 短期間のうちに何度も行われる取引 送金先、送金目的、送金原資などについて不明瞭な点がある取引 上記はあくまでも例示であり、実際には金融機関が個別・具体的に判断します。また、個人と法人によっても確認される事項は異なります。 個人の場合 個人が金融機関を利用する場合、取引内容や状況によっては次のような確認を求められる可能性があります。 氏名、住所、生年月日、職業などの本人確認 取引の目的 その際、各種書面の提示を求められることもあります。 法人の場合 法人が金融機関を利用する場合、取引内容や状況に応じて次のような確認を求められる可能性があります。 法人の住所、事業内容、株主情報など 法人の実質的支配者(氏名、住所、職業、居住国など) これらについて、窓口や書類郵送での再確認、各種書面の提示を求められることもあります。 まとめ 近年マネロンは複雑かつ高度化しており、日本および国際社会にとってマネロン対策は重要な課題です。私たちの身近にある預金口座やクレジットカードなどの取引が、マネロンに悪用されるケースが増えています。金融機関を利用する際に、マネロン対策として取引内容の確認などを求められる可能性があることを理解しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

    2024.09.04用語
  • ABL(動産・債権担保融資)とは?仕組みや特徴をわかりやすく解説

    「事業資金を借りたいが、担保となる資産もないから難しい」と考える中小企業の経営者もいるかもしれません。しかし、ABL(動産・債権担保融資)を利用すれば、企業が保有する在庫や売掛金などを担保に金融機関から融資を受けられる可能性があります。 この記事では、ABLの仕組みや特徴、利用までの流れをわかりやすく解説します。 ABL(動産・債権担保融資)とは ABLとは、「Asset Based Lending」という英単語のそれぞれの頭文字を取った略称で、企業が保有する在庫や売掛金、機械設備などの事業資産を担保にした融資の一種です。 企業が金融機関から事業資金を借り入れる場合、経営者による個人保証をつけたり、不動産を担保に入れたりするのが一般的です。しかし、ABLなら担保となる不動産がなくても、企業が保有している在庫などの資産を有効活用して事業資金を調達できます。 出典)経済産業省経済産業政策局産業資金課「ABLのご案内」 ABLの仕組み ※筆者作成 企業が保有する在庫や売掛金、機械設備などは収益を生み出すための大切な資産です。ABLでは、借り手となる企業は信用力を補完するために、事業価値に基づいてこれらの資産を担保として提供します。 対して貸し手となる金融機関は、提供された担保の価値や企業の事業価値を見極めて資金を融資します。担保となった在庫や機械設備は金融機関の名義になりますが、在庫の販売や設備の使用はこれまでどおり企業が行えます。売掛金も企業が回収して運転資金として活用できるため、事業に支障はありません。 ABLの特徴 ABLは以下のような特徴があります。 担保となる不動産がない企業でも融資を受けられる 経営管理の効率化ができる 在庫管理コストの低下につながる 金融機関の審査、企業側の登記手続きに時間がかかる 企業は金融機関に対して担保の状況(在庫や売掛金の増減など)を定期的に報告する義務がある ABLは、担保不動産に頼らず資金調達できるのが最大のメリットです。担保価値の評価の際は、在庫や売掛金などの管理体制も確認されます。管理体制の見直しに着手することで、経営管理の効率化・在庫管理コストの低下などの効果も期待できるでしょう。 一方で、担保にする在庫や売掛金の評価を受け、資産の登記を行う必要があるため、通常の融資よりも時間がかかります。金融機関への報告義務があることもデメリットとして挙げられます。 上記のほかに、貸し手との約束であるコベナンツを守る義務があることにも注意が必要です。ABLでの融資契約を締結する際に、「財務指標を一定以上に保つこと」「正確な決算書類を定期的に提出すること」などの事項について覚書を締結します。 ABLの評価におけるポイント ABLで融資申し込みをすると、金融機関は在庫や売掛金などの資産が担保としてどの程度の価値を持つか調査を行います。評価における主なポイントは以下のとおりです。 <売掛金の評価のポイント> 売掛先となっている企業数(売掛先が分散されているか) 売掛先の信用力 売掛金の管理方法 <在庫の評価のポイント> 市場規模や将来性 主要な販売先 在庫の保存状態・管理体制 これらの評価にあたり、金融機関は必要に応じて外部の動産評価会社を利用します。その場合、借り手である企業側が資産の評価にかかる費用を負担することもあります。ただし、東京都ではこの評価費や保証料用の必要経費について中小企業への補助を行っています。条件は以下のとおりです。 <東京都が行う中小企業への支援> 担保とするものが機械・設備の場合は融資額の4% 担保とするものが売掛債権・在庫の場合は融資額の3.5%(ただし、小規模企業者(※)が売掛債権を担保とした2,000万円未満の融資を利用する場合、70万円) 創業5年未満中小企業の場合は融資額の4%を上限として、必要経費の2分の1(小規模企業者、創業5年未満中小企業の場合は全額)を補助  ※小規模企業者とは、中小企業のうち、従業員数が製造業等30人以下(卸・小売・サービス業は10人以下)の事業者等です。 出典) ・東京都産業労働局「東京都動産・債権担保融資(ABL)制度」 ・東京都産業労働局「東京都動産・債権担保融資制度のご案内」 ABLが向いている企業 ABLは、農産物や製品、機械設備、売掛金などさまざまな資産を担保にできます。健全な経営を行い、担保として活用できる資産を保有していれば、幅広い企業がABLの対象となるでしょう。 特に次のような特徴を持つ企業は、ABLの利用が向いているといえます。 流動資産(売掛金、在庫など)を多く保有している企業 固定資産(機械設備など)の規模が大きい企業 売上高が急速に拡大した企業 在庫を多く保有する必要がある場合、その在庫を担保に融資を受けることで安定的に運転資金を確保できます。ABLなら、機械設備などの動産も担保として活用可能です。また、売上高が短期間で拡大し、在庫や売掛金が増加した場合の運転資金としての利用も想定されます。 ABLが向いているか確認したい場合は、以下のチェックリストを活用しましょう。 区分 No チェック項目 〇/✕ 企業の特徴 1 自社の商品・取り扱い製品の品質に自信を持っている 2 市場性のある在庫や、信用力がある取引先の売掛金等の流動資産を保有している 3 不動産がない、または少ないが、機械等の固定資産を保有している 資金ニーズ 4 原材料を一定の時期にまとめて仕入れる必要がある 5 季節によって在庫の販売量に大きな差がある 6 原材料の仕入れから、製品化し販売・回収するまでの資金の立て替えが必要になる 7 規模拡大や業種部門の転換等により、運転資金の必要性が高まっている 経営管理 8 財務諸表を電子データで作成している/作成できる 9 在庫や売掛金等の残高について、パソコン等で正確なデータを管理している 10 貸し手に事業内容を深く理解してもらい、信頼関係を強化したい ※筆者作成 出典)経済産業省経済産業政策局産業資金課「ABLのご案内」P.22 ABL適正チェックテストの中で、〇の数が多い企業ほど、ABLに向いている可能性が高いといえます。適性があると判断できる場合は、取扱金融機関に問い合わせてみるといいでしょう。 ABLの利用事例 ABLで増加運転資金を確保し、商品ラインナップを拡大したA社の事例を紹介します。 <A社の詳細> 業種卸売・小売業(ベビー服と子ども服の卸売・販売) 創業数十年 資本金3,500万円 売上高15億円 従業員数80人 A社は健全な経営を行っており、小売店舗は幅広い品ぞろえが支持されて、地元では人気があります。しかし、少子化による将来的な市場規模の縮小が課題です。そこで金融機関に相談したところ、ABLによる資金調達の提案を受けました。 業種の特性上、A社は多くの在庫を保有する必要がありますが、その在庫は担保として評価対象となります。そこでABLで増加運転資金を確保し、新たにオーガニックコットン製品の取り扱いを開始しました。ネット販売も始めたことで新たな市場を開拓でき、売上増加にもつながりました。 出典)経済産業省経済産業政策局産業資金課「ABLのご案内」P.10 ABL利用までの流れ ABLの利用について金融機関に相談する際は、企業の概要や財務状況、在庫や売掛金などの資産状況がわかる書類を準備するといいでしょう。具体的には、組織図や決算書類、売掛金明細、在庫明細などが考えられます。 融資申し込みを行うと、審査を経て融資契約を結びます。また、担保となる資産について債権譲渡登記や動産譲渡登記を行います。これらの登記手続きは、資産の所有権が金融機関に移ったことを第三者に対して主張するための制度です。 まとめ 担保となる不動産がなくても、ABLを利用すれば在庫や機械設備、売掛金などを担保に融資を受けられるかもしれません。運転資金の確保や事業拡大を目的に資金調達をしたい中小企業の経営者は、ABL(動産・債権担保融資)の活用を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 ファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介 ファクタリングとは、事業者の資金調達方法の1つです。保有している売掛債権を早期に資金化できるため、うまく活用すれば資金繰りの改善が期待できます。一方で、ファクタリングを巡って悪質なトラブルも...記事を読む

  • 不動産売買の仲介手数料とは?相場と上限額や計算方法を解説

    不動産仲介で売買を行う場合、一般的に仲介手数料が発生します。不動産売買の仲介手数料は、不動産会社に対する成功報酬や手続の代行費用といった意味合いがあり、その金額は法律で上限が定められています。 この記事では、不動産売買の仲介手数料の計算方法や支払うタイミングについて解説します。 不動産売買の仲介手数料とは 一般の人がマンションや戸建て、土地などの不動産を売買する場合、不動産会社に仲介を依頼することが多いでしょう。不動産仲介会社に依頼すると、物件の案内から引き渡しまで不動産会社を介して取引を進めます。 仲介手数料は、不動産会社の不動産売買に関わる活動に対して支払う成功報酬として位置付けられており、売買が成立しない場合は支払う必要はありません。 仲介手数料の上限額 不動産売買における仲介手数料は、宅地建物取引業法第46条で上限が定められています。そのため、上限を超える額を請求することは法令違反となりますが、上限額を超えない範囲であれば不動産会社が自由に仲介手数料の金額を決めることが可能です。 出典)全日本不動産協会 埼玉県本部「不動産売買の仲介手数料はいくら必要?計算方法や値引き交渉の可否などを徹底解説!」 上限は法律で決まっていますが、下限は定められていないため、仲介手数料の値引きは不可能ではありません。物件の売却に併せて購入も依頼する場合や、そもそも物件の価格が高い場合などは、交渉できる余地があるでしょう。 一方で、不動産会社にとって仲介手数料は、不動産売買の仲介に関わる人件費、広告費、交通費などの諸経費をまかなう重要な収入源となります。そのため、価格の安い物件や流通性の低い物件では、手数料の値引きが物理的に困難なこともあります。 不動産売買の仲介手数料の計算方法 仲介手数料の上限額は、不動産売買価格によって異なります。売買価格が200万円以下であれば価格の5%、200万超から400万円以下であれば価格の4%、400万円を超える場合は売買価格の3%に消費税を足した金額が上限額です。 不動産売買価格(税別) 仲介手数料の上限額 200万円以下 売買価格×5%+消費税 200万円超〜400万円以下 売買価格×4%+消費税 400万円超 売買価格×3%+消費税 速算式での計算方法 仲介手数料の計算は、前述のとおり不動産の売却価格を200万円以下、200万円超から400万円以下、400万円超の3つに分類し、それぞれに対応する割合をかけて足し合わせると求められます。 しかし、この計算には時間がかかるため、より簡単に仲介手数料を求められる「速算式」が存在します。速算式の計算方法は以下のとおりです。 不動産売買価格(税別) 仲介手数料の上限額(消費税率10%の場合) 200万円以下 (売買価格×5%)×1.1 200万円超〜400万円以下 (売買価格×4%+2万円)×1.1 400万円超 (売買価格×3%+6万円)×1.1 たとえば、売買価格が3,000万円(税別)の場合、表の400万円超に当てはまるので、上限額は105.6万円{(売買価格:3,000万円×3%+6万円)×1.1}と計算できます。 売買価格ごとの仲介手数料の上限 前述のとおり、仲介手数料は法律で定められている上限を超えなければ、自由に設定できます。速算表で計算した売買価格ごとの仲介手数料の上限額は下表となります。 仲介手数料の上限早見表 不動産売買価格(税別) 仲介手数料の上限額(税込) 1,000万円39万6,000円 2,000万円72万6,000円 3,000万円105万6,000円 4,000万円138万6,000円 5,000万円171万6,000円 6,000万円204万6,000円 7,000万円237万6,000円 8,000万円270万6,000円 9,000万円303万6,000円 10,000万円336万6,000円 ※費用は目安であり、実際の金額は不動産仲介会社に確認してください。 不動産取引で仲介手数料を支払うタイミング 仲介手数料は、契約成立に対する成功報酬という位置づけなので、不動産売買が成立した以後に支払う必要が生じます。支払う時期は、売買契約時や物件の引き渡し時の2回に分けて支払うことが一般的です。 また、仲介手数料を支払う人は売主か買主かを問わず、不動産仲介を不動産会社に依頼した人が支払います。売主と買主の個人間で取引をする場合や、売主か買主の一方しか不動産仲介会社へ依頼していない場合には、依頼をしていない人に仲介手数料は発生しません。 しかし、取引でトラブルが生じた場合は当人同士での解決が必要になります。また、不動産会社の知見やネットワークを利用することで、不動産の売買が円滑に進むことが多いでしょう。 出典)全日本不動産協会 埼玉県本部「不動産売買の仲介手数料はいくら必要?計算方法や値引き交渉の可否などを徹底解説!」 不動産取引で仲介手数料のほかに必要な費用 不動産売買に際して物件費用や仲介手数料のほかにもかかる費用があります。売主側と買主側でそれぞれかかる税金については、こちらからご確認ください。 関連記事はこちら不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説 なお、土地と建物の固定資産税について、年度の途中で売主から買主に不動産を引き渡した際は、買主が固定資産税相当額(固定資産税精算金)を支払うことが一般的です。引き渡し後の日数分の税額を日割りで計算し、買主が日割り精算金を売買価格に上乗せして売主に支払います。 出典)公益社団法人 全日本不動産協会「賃貸不動産の売買における固定資産税精算金の取扱いについて」 税金以外にかかる費用 税金以外については、取引によって異なりますが、主に以下のような費用がかかります。 【売主・買主の双方にかかる費用】引越し費用 買主が新たに家を購入し引越しをする場合、すぐに新居に住み替えられないことがあります。仮住まいが必要になる場合は、現在の家から仮住まい、仮住まいから新居と2回引越しすることになり負担も大きくなるため注意しましょう。 売主は現在住んでいる家を売却する際、引越し費用のほか引越し時のごみの廃棄やハウスクリーニング費用についても必要な場合があるので、余裕を持って準備しましょう。 【売主にかかる費用】土地の測量費用 土地の測量費用は、売主が土地を売却する際に隣地との土地の境界を確定するために必要です。測量は義務ではありませんが、買主としては測量された土地を購入することで隣地とのトラブルを回避できるため、土地の売却時に測量を行うことは一般的といえるでしょう。 費用は土地の大きさ、境界の数、隣地所有者の数などにより異なります。自宅によっては測量費用が高額になることもあるので、事前に不動産会社や土地家屋調査士に相談するとよいでしょう。 【買主にかかる費用】住宅ローン関連費用 買主が住宅ローンを組む場合は以下の費用がかかります。家の購入金額だけではなく、借り入れに伴う諸費用についても念頭に入れておきましょう。 住宅ローン事務手数料 住宅ローン保証料 火災保険料(地震保険は任意) 団体信用生命保険料 関連記事はこちらマイホームの購入予算はどう決める?頭金や住宅ローンの考え方 【その他必要に応じてかかる費用】 .bold-text { font-weight: bold; } ・建物の解体費用 売主が土地を売却する際、建物の解体費は、売主が更地にして土地を売る時に発生します。たとえば、国土交通省の公表する「我が国の住生活をめぐる状況等について」によれば、関東の木造住宅の解体費用の相場は1坪あたり3.7万円、50坪で185万円とされています。 出典)国土交通省「我が国の住生活をめぐる状況等について(前回までの補足)」P.7 ・住宅ローンの返済事務手数料 売主に住宅ローンの残債があり、ローンの一括返済を行う場合は手数料がかかる金融機関もあるので予め確認しておきましょう。 まとめ 不動産を売買する際には仲介手数料が必要となります。仲介手数料は、法律で上限が定められているため、不動産売買価格をもとに上限額を算出することも可能です。 仲介手数料が無料になったり、上限額よりも低く抑えられたりするケースもありますが、仲介手数料の金額だけでなく、実際に営業担当に話をしてみたり、手続きの対応スピードをみたりして、不動産会社を選ぶのがおすすめです。 仲介手数料のほかにも税金の支払いや引っ越し費用なども、不動産売買には必要になります。トラブルを避けるためにも、どんな費用がどのように発生するのかを理解してから、実際に不動産取引をするようにしましょう。 マイホーム選びのポイントは?購入経験者のアンケート結果もご紹介 マイホームは「人生最大の買い物」ともいわれます。一度購入すると簡単には手放せないため、「絶対に後悔したくない」と考える人も多いのではないでしょうか。希望条件が決まらない場合は、理想の暮らしを...記事を読む 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

  • 三為契約とは?不動産仲介との違いや注意点を解説

    三為(さんため)契約は、不動産売買で用いられることがある契約形態の1つです。一般的な不動産仲介とは仕組みが異なるため、不動産を売買する予定があるなら三為契約の仕組みを理解しておくと安心です。 この記事では、不動産売買における三為契約の概要や不動産仲介との違い、注意点について解説します。 三為契約とは 三為契約とは、「第三者の為にする契約」という言葉の略称で、民法537条および538条に規定されています。 民法537条(第三者のためにする契約) 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。 2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。 3 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。 民法538条(第三者の権利の確定) 前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。 2 前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。 出典)民法(e-Gov法令検索) 不動産売買では、売主と買主で売買契約を締結するのが一般的です。しかし、三為契約では売主と買主の間に不動産業者が入り、売主と不動産業者、不動産業者と買主がそれぞれ売買契約を締結します。 三為契約を用いた不動産取引を扱う不動産業者は「三為業者」と呼ばれます。 三為契約の仕組み 上述のとおり、三為契約では売主と買主の間に三為業者が入り、それぞれと売買を行います。不動産売買が行われると、通常は所有権の移転登記を行います。しかし、三為契約では不動産業者への所有権移転登記を省略し、買主に直接所有権の移転登記を行う点で異なります。 ※筆者作成 このように、間に入っている不動産業者を省略し、売主から買主へ直接所有権を移転することを「中間省略登記」といいます。 中間省略登記について 中間省略登記は、原則禁止されています。これは取引の当事者をそれぞれA、B、Cとしたときに、物件の所有権がA⇒B⇒Cと移転しているのであれば、不動産登記もA⇒B⇒Cと移転していることを明示すべきであるという考えからです。 しかし、これには例外があり、法務省から法務局、地方法務局に対する通知がされています。(平成19年1月12日法務省民二第52号民事第二課長通知) 出典)一般社団法人 不動産適正取引推進機構「最近の判例から(5) 登記情報と登記原因証明情報の不一致を理由とする中間省略登記申請の却下処分が適法とされた事例」 不動産登記の申請情報(A⇒Cへの所有権移転)と登記原因証明情報(A⇒B⇒Cの取引の経緯)の合致という基本理念を踏まえつつ、A、B、C三者間で「第三者のためにする契約」又は「買主の地位の譲渡」により、AからCへの直接の所有権移転があったと認められる場合は、直接AからCへの所有権移転登記が可能とされています。 三為契約と一般的な不動産仲介との違い 不動産仲介は、不動産仲介会社が売主と買主の間に入って両者の売買契約を成立させる方法です。売主と買主とをつなぐという意味では、三為契約と不動産仲介は同じです。 しかし、三為契約は不動産業者が売主と買主それぞれと売買契約を行うのに対し、不動産仲介は売買契約ではなく媒介契約を行います。不動産仲介にも売主と買主それぞれの仲介となる「両手仲介」、一方の仲介となる「片手仲介」が存在します。 ※筆者作成 なお、不動産仲介では不動産業者が受け取れる仲介手数料は以下のように上限額が決められていますが、三為契約では不動産業者の売買差益の上限は定められていません。 仲介手数料の上限額 契約金額(税別) 仲介手数料の上限額 200万円以下 (契約金額×5%)+消費税10% 200万円超 400万円以下 (契約金額×4%+2万円)+消費税10% 400万円超 (契約金額×3%+6万円)+消費税10% 三為契約における三為業者のメリット 三為契約を用いた不動産売買は、三為業者にとって以下のようなメリットがあります。 仕入コストを下げられる 一般的な買取再販事業の場合、物件を仕入れする際に仕入資金が必要となります。しかし、三為契約の場合、仕入れにあたっての手付金は必要ですが、残金は買主が決済時に支払うことで精算されるため、仕入れにかかる費用を大幅に削ることが可能です。 売買に係る諸費用を軽減できる 一般的な買取再販事業の場合、物件の仕入れ時と販売時に登記費用等の諸費用が発生します。しかし、三為契約であれば、物件の登記費用が発生しないため、費用を抑えることができます。 在庫の保有リスクがない 一般的な買取再販事業の場合、在庫の売れ残りリスクを抱えます。在庫が売れ残ると、仕入資金をローンで賄っている場合には、大きな赤字となるリスクを抱えます。しかし、三為契約では、物件を所有することがないので、在庫の保有リスクがありません。 三為契約における買主の注意点 三為契約を用いた不動産売買は、買主にとって以下のような注意点があります 利用できる融資が限られる 一般的な不動産取引では、物件の売買と同時に登記が行われるため、仕入れや販売、最終的な買主への決済、登記までの一連の取引が明確です。 一方で、三為契約の場合、不動産業者は売買契約を締結するものの、所有権登記は行われません。売主から買主へ物件の所有権が直接移転することから、取引全体の流れが把握しにくいという特徴があります。 このような特徴から、金融機関によって三為契約への融資を取り扱わないことも珍しくありません。 通常より割高な物件を購入する恐れがある 一般的な不動産取引では、売主と買主が双方確認できる売買価格にて合意して取引が行われます。 一方で三為契約の場合、買主は売主の売却価格を把握できず、売主も買主の購入希望価格を知りません。そのため、売主と買主の双方が適正価格を把握していないと、売主は割安に売却し、買主は割高に購入してしまう恐れがあります。 本人確認を徹底する 売主と買主の間に三為業者が入ることで、売主に疑義がある(身元詐称、行為能力制限者)ことを悪意で隠される、過失で見逃す場合でも所有権自体が覆る恐れがあります。売主の顔が直接見えない分、司法書士などにしっかりと双方の本人確認をしてもらいましょう。 また、宅建業者が三為業者として入ることで、不動産の隠れたる瑕疵は三為業者が負うことになるため、不動産取引における売主、買主双方のメリットにもなり得ます。 まとめ 不動産売買における三為契約は、違法な契約ではありません。ただし、一般的な不動産仲介とは仕組みが異なり、買主に不利益が生じる恐れもあります。不動産を購入する際は売買契約書の内容を十分に確認し、不明点を解消してから契約を締結しましょう。 契約不適合責任とは?請求できる権利や期間について解説 不動産取引において、物件の引き渡し後に不具合が発覚する場合があります。物件が契約内容に適合しない場合、売主は買主に対して契約不適合責任を負います。不動産の購入を考えているのであれば、契約不適...記事を読む 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

  • 契約不適合責任とは?請求できる権利や期間について解説

    不動産取引において、物件の引き渡し後に不具合が発覚する場合があります。物件が契約内容に適合しない場合、売主は買主に対して契約不適合責任を負います。不動産の購入を考えているのであれば、契約不適合責任について理解を深めておくことが重要です。 この記事では、契約不適合責任の概要と買主と売主の権利関係について解説します。 契約不適合責任とは 契約不適合責任とは、売主から買主に売買の目的物が引き渡されたときに、契約に基づいて果たすべき義務が守られていないことを理由とする責任です。 契約内容に適合していないことは債務不履行に当たるので、債務不履行を利用とする契約の解除・損害賠償請求ができます。これに加えて、追完請求、代金減額請求の2つが認められており、全部で4通りの方法があります。詳細は後述します。 出典) ・独立行政法人 国民生活センター「誌上法学講座第2回 契約の内容が守られないとき(2)」 ・法務省「売買,消費貸借,定型約款などの契約に関するルールの見直し」 契約不適合責任によって買主が請求できる権利 契約不適合責任により買主が請求できる権利は次の4つです。 追完請求権 代金減額請求権 損害賠償請求権 解除権 契約不適合責任特有の権利は、追完請求権と代金減額請求権です。損害賠償請求権と解除権については、債務不履行を理由とした請求権となります。それぞれの内容を確認していきましょう。 出典)独立行政法人 国民生活センター「誌上法学講座第2回 契約の内容が守られないとき(2)」P.32~33 追完請求権 追完請求権とは、引き渡された目的物に欠陥があるなど契約内容に適合しない場合に、売主に対して修補(建物の修繕など)や代替物・不足分の引き渡しを請求できる権利です。 買主に不相当な負担を課さなければ、売主は買主が請求した方法とは異なる方法で追完することも認められています。なお、買主の責めに帰すべき事由(買主の故意や過失)によって契約に適合しない場合、追完請求権は認められません。 ・民法562条(買主の追完請求権) 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。(後略) ・民法564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使) 前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。 出典) ・民法(e-Gov法令検索) ・独立行政法人 国民生活センター「誌上法学講座第2回 契約の内容が守られないとき(2)」P.33 代金減額請求権 代金減額請求権とは、引き渡された目的物が契約に適合しない場合に、適合しない分の代金の減額を請求する権利です。 基本的には、買主は契約不適合を知った時から1年以内に売主に履行の追完請求を行い、その期間内に売主が追完請求に応じなかったときに代金減額請求ができます。ただし、履行の追完ができないときは、催告せずに代金減額請求が可能です。 追完請求権と同様に、買主の責めに帰すべき事由によって契約に適合しない場合は、代金減額請求権は認められません。 民法563条(買主の代金減額請求権) 前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。 出典)民法(e-Gov法令検索) 損害賠償請求権および解除権 引き渡された目的物が契約に適合せず、売主に帰責事由がある場合は損害賠償を請求できます。買主は契約不適合を知った時から1年以内に売主に追完請求を行い、その期間内に売主が追完請求に応じない場合は契約解除が可能です。 民法541条(催告による解除) 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。 出典)民法(e-Gov法令検索) 債務の全部が履行されないなど、契約不適合の内容によっては催告することなく、直ちに契約を解除できます。 民法542条(催告によらない解除) 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。 債務の全部の履行が不能であるとき。 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。 (後略) 出典)民法(e-Gov法令検索) なお、損害賠償や契約解除は債務不履行の一般則に従って行えることが明示されました。 民法564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使) 前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。 出典)民法(e-Gov法令検索) 買主の救済方法 買主に帰責事由あり 双方とも帰責事由なし 売主に帰責事由あり 損害賠償 できない できない できる 解除 できない できる できる 追完請求 できない できる できる 代金減額 できない できる できる ※赤字は2020年に法改正がされた部分 出典)法務省「売買,消費貸借,定型約款などの契約に関するルールの見直し」P.3 契約不適合責任の対象と期間 例えば、不動産売買契約後、住宅の引き渡しを受けてから床が傾いたり、雨漏りがしたりするなど後から建物の欠陥に気が付いた場合、買主は下記の期間であれば、売主(請負業者)に対して前述の1~4の請求権を行使できます。 請負業者は、契約どおりに建物や土地の工作物等を作り、注文者に引き渡す義務があり、一定の期間、瑕疵(不完全な点)があれば対応しなければなりません。 民法562条(買主の追完請求権) 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。 (後略) 出典)民法(e-Gov法令検索) なお、住宅の場合は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」及び「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」により、住宅の構造耐力上主要な部分等については瑕疵担保責任を追及できることとなっています。 法律 契約不適合責任の対象と期間 契約書で定めた期間との関係 住宅の品質確保の促進等に関する 法律第95条、同法第97条 新築住宅の構造耐力上主要な部分等 (基礎、屋根、柱、床、壁、雨水侵入防止部分など)について、 業者に対して10年の瑕疵担保責任を義務付け。 瑕疵担保責任の期間は20年まで延長できる。(延長は任意) 構造耐力上主要な部分等は、 契約で10年より短い期間を定めても無効。 民法166条(債権等の消滅時効) 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 1.債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。 2. 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から 20年間行使しないときは、時効によって消滅する 民法637条 (目的物の種類又は品質に関する 担保責任の期間の制限) 注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、 注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、 報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。 出典)埼玉県庁「契約不適合責任(瑕疵担保責任)」 契約不適合責任における売主の免責 契約時に特約を締結している場合は、売主の契約不適合責任の免責(責任の免除)が認められます。ただし、不適合があることを売主が知りながら、契約までに買主に説明をしなかった場合は無効です。 民法572条(担保責任を負わない旨の特約) 売主は、第562条第1項本文又は第565条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。 出典)民法(e-Gov法令検索) 契約不適合責任の免責条件は売主によって異なります。売主が宅建業者の場合は、2年間は免責が無効となります。 ただし、売主が個人の場合は契約不適合責任をそのまま負うことが困難な場合もあることから、一般的に不動産売買契約書の契約不適合責任の条項に以下のように定めることが一般的に行われています。 民法の規定と異なる契約条項の例※1 売主の契約不適合責任を負う期間※2を一定期間(あるいは負わない※3)とする旨 売主が負う契約不適合責任は、修補請求に限り、買主は、代金減額請求、損害賠償請求ができないとする旨 買主の契約不適合による契約解除は、買主の契約目的が達成できない場合に限る旨 買主が契約時に契約不適合を知っていた場合、売主は契約不適合責任を負わない旨 ※1 売主が宅建業者の場合、担保責任を負う期間について目的物の引渡しの日から2年以上となる特約を除き、買主(買主が宅建業者の場合を除く)に不利となる特約を付すことはできない(宅地建物取引業法40条) ※2 買主は、契約不適合があることを知ってから1年以内にその旨を売主に通知しなければ、担保請求(履行の追完、代金の減額、損害賠償、契約の解除)をすることができない。また、請求権は、権利行使ができることを知った時から5年、目的物の引渡し時から10年で時効消滅する(民法566条、166条) ※3 売主が契約不適合責任を負わない旨の特約を置くことは可能。ただし契約不適合があることを知りながら買主に告げなかった場合には、売主はその責任を免れることはできない(民法572条) 出典)独立行政法人生活国民生活センター「第8回 不動産売買契約書(その2)」 免責条項が多いほど売主が有利となるので、契約時は特約の内容を確認しておくことが重要です。 まとめ 引き渡された目的物が契約内容に適合しない場合、売主は買主に対して契約不適合責任を負うことになります。民法改正により、従来の瑕疵担保責任から買主の権利や期間制限などが見直されています。契約後のトラブルを防ぐためにも、不動産取引を行う際は契約不適合責任の免責条項を必ず確認しましょう。 期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 期限の利益とは、住宅ローンを借り入れた際などに生じる債務者の利益のことです。債権者は期限が到来するまで履行を請求できず、債務者にとっては債務に猶予が生まれるため“利益”となります。一方で、契...記事を読む 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

    2024.07.17用語
  • フラット35を利用するために必要な適合証明書とは?

    マイホームを建築・購入する際に、全期間固定型住宅ローンのフラット35を利用するには「適合証明書」の取得が必要です。適合証明書とはどのような書類で、どうすれば取得できるのでしょうか。 この記事では、フラット35の契約時に必要な適合証明書の概要と物件検査の流れ、注意点について解説します。 フラット35の適合証明書とは 実は、「適合証明書」という名称の書類は2種類あります。一つは、今回解説するフラット35の適合証明書で、住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合した住宅であることを証明する書類です。もう一つは、都市計画法の許可が不要である特定の建築行為であることや、開発許可済地における建築行為の際に、建築計画が開発許可の内容に適合していることなどを証明する書面です。 フラット35を契約する際は、取扱金融機関へ住宅金融支援機構が定める適合証明書を提出しなくてはなりません。第三者である適合証明検査機関、または適合証明技術者(適合証明技術者は中古住宅・借り換え対象の住宅のみ)による物件検査の結果、技術基準を満たしていれば適合証明書が発行される仕組みです。 出典)【フラット35】新築住宅の物件検査 適合証明書発行業者の一覧はこちらをご確認ください。 参考)住宅金融支援機構「適合証明機関一覧」 フラット35の適合証明書発行のための物件検査 フラット35の適合証明書を取得するために受ける物件検査は、新築住宅と中古住宅で手続きが異なります。 新築住宅の場合 新築住宅の物件検査の一般的な流れは以下のとおりです。 sup { font-size: 0.65em; vertical-align: super; } 設計検査 中間現場検査※ 竣工現場検査 適合証明書の交付  ※中間現場検査は一戸建てのみ 設計検査では、設計図面や仕様書などの書類をもとに、フラット35の技術基準を満たしているかを確認されます。新築戸建て住宅の場合、現場検査は2回です。1回目の中間現場検査は屋根工事が完了した時点以降に、2回目の竣工現場検査はすべての工事が完了した時点で行われます。 いずれも、目視できる範囲で技術基準に適合しているかをチェックされます。なお、新築マンションの場合は、中間現場検査の実施がありません。これらの検査に合格すると、適合証明書が交付されます。 また、新築住宅では、建築基準法に基づく検査済証が交付されていることも確認項目です。検査済証は、建物が完成した後に行われる検査後に発行されるもので検査済証の再発行はできないので注意しましょう。 出典) ・【フラット35】新築住宅の物件検査 ・【フラット35】技術基準・検査ガイドブック ・座間市「1 建築確認済証と検査済証について」 中古住宅の場合 中古住宅の物件検査は次の2つです。 書類審査 現地調査 書類審査では、設計図面や登記事項証明書などをもとに、フラット35の技術基準を満たしているかを確認されます。現地調査では、住宅の現状が技術基準に適合しているかを目視等で確認されます。 書類審査と現地調査に合格すれば、適合証明書が交付される仕組みです。 出典)【フラット35】中古住宅の物件検査の概要 なお、以下2つのいずれかに該当する中古住宅の場合、物件検査の省略できます。 1.中古マンションらくらくフラット35 フラット35の技術基準に適合していることを、あらかじめ確認した中古マンションです。物件情報検索サイト「中古マンションらくらくフラット35」を利用すれば、該当するマンションを検索できます。 2.一定の要件を満たす中古住宅 下表の1~4の中古住宅については、それぞれ対応する「【フラット35】中古住宅に関する確認書」を取扱金融機関に提出することで、物件検査を省略できます。また、下表の右欄に示す【フラット35】S及び【フラット35】維持保全型を利用できます。 ※住宅金融支援機構と協定を締結した団体が運営する中古住宅の登録制度の対象となる住宅 対象となる中古住宅 利用できる【フラット35】S 及び【フラット35】維持保全型 1 築年数が20年以内の中古住宅で、 長期優良住宅の認定を受けている住宅 ・【フラット35】S(金利Aプラン) ・【フラット35】維持保全型 2 安心R住宅である中古住宅で、 新築時に【フラット35】を利用している住宅※1 ・【フラット35】S(金利Bプラン) ・【フラット35】維持保全型 3 築年数が10年以内の中古住宅で、 新築時に【フラット35】を利用している住宅※1 ・【フラット35】S(金利Bプラン) 4 団体登録住宅※2である中古住宅で、当該団体があらかじめ 【フラット35】の基準に適合することを確認した住宅 ・【フラット35】S(ZEH・金利Aプラン・金利Bプラン) ・【フラット35】維持保全型 (注)基準に適合する場合のみ ※1 新築時のフラット35の融資が【フラット35(保証型)】であった場合、この確認書を利用して借入申込みができる金融機関は売主が新築時にフラット35(保証型)を利用した金融機関に限られます。 ※2 団体登録住宅とは、機構と協定を締結した団体が運営する中古住宅の登録制度の対象となる住宅です。 なお、上記の要件を満たす中古住宅は、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる「フラット35S」及び【フラット35】維持保全型を利用できます(金利引下げメニューは住宅によって異なる)。 関連記事はこちらフラット35Sとは?種類や金利、利用条件について解説 フラット35の技術基準となる項目 フラット35では、新築住宅と中古住宅でそれぞれ技術基準が定められています。 新築住宅の基準項目 新築住宅の基準項目とその概要は以下のとおりです。 一戸建て住宅など(※1) マンション 接道 原則として一般の道に2m以上接すること。 住宅の規模(※2) 70㎡以上 30㎡以上 住宅の規格 原則として2以上の居住室(家具等で仕切れる場合でも可)、炊事室、便所及び浴室の設置 併用住宅の床面積 併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上 戸建型式など 木造の住宅(※3)は一戸建てまたは連続建てのみ 断熱構造(※4) 次のいずれかに該当すること。 (1)断熱等性能等級4以上、かつ、一次エネルギー消費量等級4以上 (2)建築物エネルギー消費性能基準(別途、結露防止措置の基準あり) 住宅の構造 耐火構造もしくは準耐火構造(※5)であることまたは耐久性基準(※6)に適合すること。 配管設備の点検 点検口などの設置 共用配管を構造耐力上主要な壁の内部に設置しないこと。 区画 住宅相互間等を1時間準耐火構造などの界床・界壁で区画 床の遮音構造 - 界床を厚さ15cm以上(RC造の場合) 維持管理基準 管理規約 - 管理規約が定められていること。 維持管理基準 長期修繕計画 - 計画期間20年以上 ※1. 一戸建て住宅等には、連続建て住宅及び重ね建て住宅を含みます。 ※2. 住宅の規模とは、住宅部分の床面積をいい、車庫や共用部分(マンションの場合)の面積を除きます。 ※3. 木造の住宅とは、耐火構造の住宅及び準耐火構造(※5)の住宅以外の住宅をいいます。 ※4. 2023年4月1日以降に設計検査の申請を行う住宅であっても、建築確認検査を受けた日(建築確認検査不要な住宅は着工日)が2023年3月31日以前の場合は、従前の基準(断熱等性能等級2相当)を適用できます。 ※5. 準耐火構造には、省令準耐火構造を含みます。 ※6. 耐久性基準とは、基礎の高さ、床下換気孔等に関する基準です。 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】新築住宅の技術基準の概要」 後述する中古住宅にはありませんが、新築住宅では断熱構造や配管設備の点検、区画などが基準項目に含まれています。 中古住宅の基準項目 中古住宅の基準項目とその概要は以下のとおりです。 一戸建て住宅など(※1) マンション(※2) 接道 原則として一般の道に2m以上接すること。 住宅の規模(※3) 70㎡以上(共同建ての住宅は30㎡以上(※4)) 30㎡以上(※4) 住宅の規格 原則として2以上の居住室(家具等で仕切れる場合でも可)ならびに炊事室、便所及び浴室の設置 併用住宅の床面積 併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上 戸建型式等 木造の住宅(※5)は一戸建てまたは連続建てに限る 住宅の構造 耐火構造、準耐火構造(※6)または耐久性基準(※7)に適合 住宅の耐震性 建築確認日が昭和56年6月1日以後(※8)であること (建築確認日が昭和56年5月31日以前の場合(※9)は、耐震評価基準などに適合) 劣化状況 土台、床組等に腐朽や蟻害がないこと等 外壁、柱等に鉄筋の露出がないこと等 維持管理基準 管理規約 - 管理規約が定められていること。 維持管理基準 長期修繕計画 - 計画期間20年以上 ※1. 一戸建て住宅等には、連続建て住宅、重ね建て住宅及び地上2階以下の共同建ての住宅を含みます。 ※2. マンションとは、地上3階以上の共同建ての住宅をいいます。 ※3. 住宅の規模とは、住宅部分の床面積をいい、車庫やバルコニー等は含みません。 ※4. 共同建ての住宅の場合は、建物の登記事項証明書による確認においては、28.31㎡以上あれば構いません。 ※5. 木造の住宅とは、耐火構造の住宅及び準耐火構造(※6)の住宅以外の住宅をいいます。 ※6. 準耐火構造には、省令準耐火構造を含みます。 ※7. 耐久性基準とは、基礎の高さ、床下換気孔等に関する基準です。 ※8. 建築確認日が確認できない場合は、新築年月日(表示登記における新築時期)が昭和58年4月1日以後とします。 ※9. 建築確認日が確認できない場合は、新築年月日(表示登記における新築時期)が昭和58年3月31日以前とします。 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】中古住宅の技術基準の概要」 中古住宅は過去に人が居住したことがあるため、住宅の耐震性や劣化状況が基準項目に含まれています。 フラット35の適合証明書のメリットや注意点 適合証明書のメリット フラット35を利用するために、わざわざ物件検査を受けて適合証明書を取得しなくてはならないことを面倒だと思うかもしれません。しかし、第三者の物件検査を受けて合格し、所定の技術基準をクリアしていることが証明されれば、住宅を取得するうえで安心感につながります。 今後長い間マイホームに住むことを考えると、手間や費用をかけるだけの価値はあるのではないでしょうか。 適合証明書の注意点 適合証明書の発行にかかる費用と有効期限 フラット35の適合証明書の発行にかかる物件検査費用や発行までにかかる時間は、依頼した会社によって異なります。適合証明書がないと契約ができないため、スケジュールに余裕をもって物件検査の申請を行うことが大切です。 適合証明書の有効期限 フラット35の適合証明書には有効期限があります。新築住宅は、竣工から2年以内に借入れの申し込みをする必要があるため、適合証明書も竣工から2年以内に借入れの申し込みを行った場合のみ有効です。 中古住宅の場合、適合証明書の有効期限は以下のとおりです。 一戸建て:現地調査実施日から1年間 マンション(竣工から5年超):現地調査実施日から3年間 マンション(竣工から5年以内):現地調査実施日から5年間 また、物件検査が不合格で、適合証明書を発行できなくても費用はかかる点にも注意しましょう。 まとめ フラット35を利用するには、物件検査を受けて適合証明書を取得する必要があります。費用はかかりますが、第三者の物件検査を受けて合格し、所定の技術基準を満たしていることが証明されれば、住宅を取得するうえで安心感につながります。 物件検査の依頼先がわからない場合は、不動産会社や建築会社などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 フラット35の審査基準を徹底解説! フラット35は、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローンです。借入時に返済終了までの金利が確定するため、返済計画を立てやすく、金利変動リスクへの備えとなります。ただし、フラット3...記事を読む

  • 代位弁済とは?仕組みや流れ、考えられるリスクについて解説

    ローンの返済が返済期日に間に合わず滞納した場合、金融機関などから代位弁済の通知が届く場合があります。代位弁済という言葉を聞いたことはあっても、その意味を正しく理解している人は少ないのではないでしょうか。 この記事では、代位弁済の仕組みや流れ、リスクについて詳しく解説します。 代位弁済とは まずは、代位弁済の仕組みと種類について確認していきましょう。 代位弁済の仕組み ※筆者作成 代位弁済とは、保証会社などの第三者がローンを滞納している債務者に代わって、金融機関に一括返済することです。代位弁済が行われた後は、債権者は金融機関から保証会社に代わります。 代位弁済によって、ローン残債(借金)がなくなるわけではなく、代位弁済を行った保証会社には求償権が生じます。求償権とは、代位弁済を行った場合に、債務者に対してその弁済額の返還を求める権利です。 つまり、代位弁済が行われると債務者は、ローンの返済を保証会社に行う必要があります。代位弁済は、債務者の返済を先延ばしにするものではなく、金融機関等の債権者の貸し倒れリスクを下げ、お金を貸しやすくするための仕組みといえるでしょう。 債権法の改正について 明治29年(1896年)に民法が制定された後、債権関係の内容については約120年間ほとんど改正がされていなかったことから、社会・経済の変化への対応と実務で通用している基本的なルールを適切に明文化するため、2020年4月1日に債権法が改正されました。 代位弁済に関わる旧法での問題点は以下の2点です。 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができない 債権者は利害関係を有しない第三者からの弁済を拒むことができない これらの問題点に対し、改正後の民法では、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったとしても、債権者が受けた弁済は有効となりました。また、見知らぬ第三者からの弁済を行いたい旨の申し出を債権者は拒絶できるようになりました。 なお、旧法での「利害関係を有しない第三者」の表現は「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」に変更されました。 出典) ・民法第474条(第三者弁済) ・法務省「弁済に関する見直し(第三者弁済)」 代位弁済が行われるときの流れ 代位弁済が行われる場合は、一般的には以下のような流れで手続きが進められます。 貸主から借主への督促 ローンを滞納すると、まずは貸主である金融機関から借主に対して督促が行われます。電話や督促状の送付などの方法が一般的です。督促状が届くまでの期間は金融機関によって異なり、ホームページの「よくある質問等」に記載されている場合もあるので、確認してみるといいでしょう。 この段階で適切に対応し、滞納しているローンを返済すれば代位弁済を回避できるでしょう。 保証会社が貸主に代位弁済 貸主から借主へ督促を行っても返済がなされない場合、貸主が保証会社に対して借金残高の返済を求める代位弁済が行われます。なお、このタイミングで「期限の利益喪失」の予告通知も届きます。 関連記事はこちら期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 保証会社が借主へ返済の請求 代位弁済が行われると、債務者は金融機関から保証会社に代わります。保証会社から「代位弁済通知」が届き、借主に対して返済の請求が行われます。 代位弁済された時の時効はいつ? 代位弁済の消滅時効期間は、原則、権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時から10年です。2020年3月以前は、職業別や商事などで起算点が異なっていましたが、2020年4月の民法改正により、シンプルに統一化されました。 民法上は以下のように定めています。 民法第166条(債権等の消滅時効) 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。 二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。 2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。 出典)民法第166条「債権等の消滅時効」 権利を行使することができることを知った時と、権利を行使することができる時とが基本的に同一時点である場合の消滅時効期間は下記の図のとおりです。 【例】売買代金債権、飲食料債権、宿泊料債権など契約上の債権 ※筆者作成 出典)法務省「消滅時効に関する見直し」 代位弁済で生じるリスク 代位弁済が行われると、債務者には次のようなリスクが生じます。 一括返済の請求 代位弁済が行われ、債権者が保証会社に代わると残債の一括返済を求められます。数百万円~数千万円のローンが残っている場合、一括で返済するのは難しいでしょう。 遅延損害金の発生 遅延損害金とは、ローンを期日までに返済できなかったときに発生する賠償金です。代位弁済が行われるということは、滞納期間が長期化し、遅延損害金の額も高額になっている恐れが高いでしょう。 滞納している元本と利息だけでなく、遅延損害金も含めて返済する必要があります。 保証人への督促 ローンを組む際に保証人を設定している場合、代位弁済を行った保証会社は債務者本人だけでなく、保証人にも督促を行います。債務者が返済できない場合、保証人が一括返済を求められる恐れもあります。 代位弁済が行われたら、保証人と今後の返済について相談する必要があるでしょう。 信用情報の登録 代位弁済が行われると、信用情報機関に事故情報が登録されてしまいます。具体的には、「クレジットカードの新規発行ができない」「新たなローンを借りられない」などの影響が出ます。 なお、指定信用情報機関は以下の3つです。 株式会社日本信用情報機構(JICC) 株式会社シー・アイ・シー(CIC) 全国銀行個人信用情報センター 財産の差し押さえ 保証会社からの請求に対応せず放置していると、最終的には強制執行により財産の差し押さえが行われます。給与や預貯金、生命保険、不動産、自動車など、幅広い財産が差し押さえの対象となります。 まとめ ローンを滞納して代位弁済の通知を受けた場合は、弁護士に相談するといいでしょう。また、不動産担保ローンを提供している金融機関や任意売却を扱う不動産会社に相談することで、ローン返済の資金を調達できる可能性もあります。 ローンを組む際は現在の収入や支出を正確に把握し、無理のない返済計画を立てることが大切です。万が一、返済が困難になった場合は放置せず、早めに専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 債権回収会社(サービサー)とは?仕組みや債権回収方法について解説 債権回収会社(サービサー)とは、金融機関等に代わって債権の管理や回収を行う民間業者のことです。ローンの返済が困難になると、サービサーとのやり取りが発生する場合があります。 この記事では、サー...記事を読む

  • 債権回収会社(サービサー)とは?仕組みや債権回収方法について解説

    債権回収会社(サービサー)とは、金融機関等に代わって債権の管理や回収を行う民間業者のことです。ローンの返済が困難になると、サービサーとのやり取りが発生する場合があります。 この記事では、サービサーの概要や仕組み、債権回収の方法などについて解説します。 債権回収会社(サービサー)とは サービサーとは、金融機関等から委託を受け、または譲り受けて、特定金銭債権の管理回収を行う法務大臣の許可を得た民間の債権管理回収専門業者です。(特定金銭債権の詳細は後述します。) 例えば、フラット35の融資を受けている債務者が全額繰上償還請求を行ったときの回収業務は、住宅金融支援機構が行うのではなく、以下のサービサーが行うものとされています。 エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社 オリックス債権回収株式会社 株式会社住宅債権管理回収機構 三菱HCキャピタル債権回収株式会社 出典)住宅金融支援機構「委託先債権回収会社について(機構が行う個人向け融資)」 債権回収業務は、従来は弁護士法の規定により、弁護士または弁護士法人以外の者が債権管理回収業務を行うことはできませんでした。しかし、1991年のバブル崩壊により発生した不良債権の処理等を促進するため、1999年に弁護士法の特例として「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」が施行され、債権管理回収業が民間業者に解禁されました。 出典)法務省「債権回収会社(サービサー)制度 -債権管理回収業に関する特別措置法-」 債権者である金融機関等にとっては、サービサーを利用することで回収交渉などの業務負担の軽減、債権譲渡による不良債権の解消などが期待できます。 特定金銭債権とは 特定金銭債権とは、サービサーが取り扱うことができる以下のような金銭債権です。 <主な特定金銭債権> 金融機関等が有する、または有していた貸付債権 リース契約・クレジット契約に基づく金銭債権 資産の流動化に関する金銭債権 ファクタリング業者が有する金銭債権 法的倒産手続中の者が有する、または有していた金銭債権 求償権その他の債権 出典)法務省「債権管理回収業に関する特別措置法の概要」 特定金銭債権の範囲は、サービサー法によって規定されています。不良債権の処理等を促進する観点から、サービサーが取り扱える金銭債権の範囲を限定しています。 債権回収会社(サービサー)の種類 法務省の資料によれば、2023年12月31日時点で、営業を行っているサービサー73社に調査した結果、出資母体等別の内訳は以下のとおりとなっています。 金融機関系(20社) 信販・貸金・リース系(16社) 外資系(4社) 不動産・独立系・その他(33社) 出典)法務省「債権回収会社(サービサー)の業務状況について(概要)」 債権管理回収業の営業許可を受けている業者は、法務省のホームページで確認でき、2024年4月1日時点では、72社となっています。 出典)法務省「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」 債権回収会社(サービサー)の仕組み サービサーはどのように運営され、どのような方法で債務者から債権を回収しているのでしょうか。ここでは、サービサーの仕組みと債権回収の方法について紹介します。 サービサーの仕組み ※筆者作成 出典)法務省「債権管理回収業に関する特別措置法の仕組み」 サービサーとして債権管理回収業を行うには、法務大臣の許可が必要です。許可を受けるには、以下の3つの要件を満たさなくてはなりません。 資本金が5億円以上あること 常務に従事する取締役の1名以上に弁護士が含まれていること 暴力団員等反社会的勢力の関与がないこと 法務大臣が日本弁護士連合会に意見を聴取し、弁護士会が取締役となる弁護士を推薦することで、サービサーの業務全般を適正に監督しています。 暴力団員等の排除については、法務大臣が警察庁長官に意見聴取、警察庁長官がサービサーに立入検査や援助等を行う仕組みになっています。 債権回収会社(サービサー)の業務 サービサーは金融機関等からの委託、債権譲渡を受けて次のような業務を行います。 債権管理 債務者への督促 法的手段の検討 債権回収後の処理 債権者である金融機関等に代わって、担当窓口として債務者への債権額の確認、返済交渉などを行います。債権を譲り受けた場合は債権者として自ら回収を行い、状況によっては法的手段も検討することになります。 サービサーとファクタリングの違い サービサーは前述のとおり、銀行や貸金業者などの金融会社が特定金銭債権の回収業務を委託され、後から債権を回収するものです。これに対し、ファクタリングは、企業がファクタリング会社に売掛債権(売掛金など)を買い取ってもらうことで、本来の回収より前に資金調達を行えるという違いがあります。 詳しくは関連記事をご確認ください。 関連記事はこちらファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介 サービサーと債務者の関係 サービサーと債務者の関係は、債権者から債権回収を委託されるか、債権を譲渡される(買い取る)かによって異なります。 金融機関等がサービサーに債権回収を委託する場合、サービサーが窓口として債務者と返済に関する交渉を行います。債権者は金融機関のまま変わりません。 金融機関等がサービサーに債権回収を委託する場合 ※筆者作成 一方、金融機関等がサービサーに債権を譲渡する場合、サービサーは債権者として債務者と回収交渉を行います。債権譲渡後、債務者は金融機関に対する返済義務はなくなりますが、サービサーへの返済義務が生じます。 金融機関等がサービサーに債権を譲渡する場合 ※筆者作成 債権回収会社(サービサー)の債権回収方法 サービサーは、次のような方法で債権回収を行います。 電話や面会での交渉 支払督促 内容証明郵便での督促 民事調停手続き 通常訴訟・少額訴訟 強制執行 まずは電話や書面などで通知が来るのが一般的です。その段階で対応しなければ、民事調停や訴訟などの法的手続きに移り、最終的には財産を差し押さえられるなどの強制執行が行われます。 ローン返済が滞った場合など、サービサーから通知が来たら、法務大臣の許可を受けている業者かどうかを確認しましょう。サービサーの名前をかたった業者による債権の架空請求などが発生しているため、心当たりのない請求には応じないことが大切です。 実際に返済が遅れているなど、サービサーからの通知に心当たりがある場合は、必要に応じて弁護士などの専門家に相談しながら返済について交渉するといいでしょう。 まとめ ローンの返済が困難となった場合、返済交渉の窓口が借入先である金融機関等から民間業者のサービサーに移る場合があります。 サービサーは債権回収の専門知識を有しており、通知を無視していると最終的には財産を差し押さえられる恐れがあります。サービサーから連絡がきたら、まずは法務大臣の許可を受けた登録業者であることを確認することが大切です。 そのうえで、自身だけで返済交渉をするのが難しい場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

  • ファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介

    ファクタリングとは、事業者の資金調達方法の1つです。保有している売掛債権を早期に資金化できるため、うまく活用すれば資金繰りの改善が期待できます。一方で、ファクタリングを巡って悪質なトラブルも発生しているため、十分に注意して利用することが大切です。 この記事では、ファクタリングの仕組みや種類、注意点について詳しく紹介します。 ファクタリングとは ファクタリングとは、企業が保有している売掛債権(売掛金など)をファクタリング会社が一定の手数料を差し引いて買い取るサービスです。売掛債権の支払期日が到来する前に資金化できるため、事業者の資金調達方法として活用されることがあります。 ファクタリングの法的な位置づけは、「債券譲渡契約(売買契約)」です。金融機関からの融資とは異なり、貸借対照表上の借入金(負債)が増えません。 融資のように、毎月利子という形で負担は発生しませんが、ファクタリングを利用する際に手数料が発生するので、頻繁に利用すると業績や財務の悪化につながる恐れがあります。 ファクタリングの仕組み 基本的なファクタリングは「買取ファクタリング」と呼ばれており、これを応用した仕組みとして「保証ファクタリング」や「一括ファクタリング」があります。ここでは、3種類のファクタリングの概要と仕組みを紹介します。 買取ファクタリング 買取ファクタリングとは、ファクタリング会社がサービスを利用する企業から売掛債権を買い取り、企業に対して資金を提供する仕組みです。ファクタリング会社は、売掛債権から手数料を差し引いた金額をサービス利用企業に支払います。 保有している売掛債権を譲渡するため、売掛債権の回収リスクはファクタリング会社に移転します。売掛債権の管理や回収に関する業務を効率化できるのも特徴です。 ファクタリングで調達した資金で借入金などの有利子負債を返済すれば、オフバランス化によって、貸借対照表に影響を与えずに済むこともできるでしょう。 保証ファクタリング 保証ファクタリングとは、ファクタリング会社と保証契約を結ぶことで、売掛債権の回収について保証を受ける仕組みです。万が一売掛先が倒産した場合は、企業はその売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、決められた保証の範囲内で保証金額を受け取ります。 一般的な買取ファクタリングは、資金調達と売掛債権のリスク移転を同時に達成できるのに対し、保証ファクタリングは売掛債権のリスク移転のみとなります。 保証ファクタリングのスキームは次の2つです。 個別保証方式個々の売掛債権について保証額を決定し、回収の保証を行う 根保証方式個々の売掛先について保証極度額を決定し、その極度額の範囲内で回収の保証を行う(債権を特定しない) どちらの方式も、売掛債権の金額や極度額に応じて保証料が発生します。 一括ファクタリング 一括ファクタリングとは、企業は売掛債権の回収側ではなく、代金を支払うことで保証を受ける仕組みです。企業、仕入先(買掛先)、ファクタリング会社の3社が合意のうえ、仕入先が企業に対して保有している売掛債権をファクタリング会社に一括譲渡します。 企業は、売掛債権に関する代金をファクタリング会社に一括で支払います。仕入先ごとに支払っていた代金を、ファクタリング会社に一括で支払いが済むため、多数の仕入先を抱えている場合は支払業務の効率化につながるでしょう。 仕入先にとっては、売掛債権回収に関する事務の効率化、決済期日前の割引による迅速な資金調達が可能になります。 出典)経済産業省 国立国会図書館デジタルコレクション「地域金融人材育成システム開発事業 : 創業・起業促進型人材育成システム開発等事業」P.27~P.30 ファクタリングの注意点 事業者にとって、ファクタリングは資金調達や事務作業の効率化などが期待できる一方で、次のような注意点もあります。また、ファクタリングを悪用し、個人に対して貸付けを行う事例も発生しています。 偽装ファクタリング 偽装ファクタリングとは、貸金業登録のない業者がファクタリングを装って行う違法な貸付けです。次のようなケースに当てはまる場合は、偽装ファクタリングの恐れがあります。 売掛債権の買取代金が債権額に比べて著しく低額で、高額な手数料が差し引かれる 契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」であることが明記されていない 売掛先の倒産などで債権を回収できない場合、売主に債権の買戻しを行わせる 出典) ・日本貸金業協会【注意喚起】悪質な金融業者にご注意! ・金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起 これらはファクタリングに見えても、実態は貸付けです。貸金業登録がされていない無登録業者のヤミ金融であり、悪質な取り立てにあうリスクもあるため注意が必要です。 給与ファクタリング 給与ファクタリングとは、「給与(個人の賃金債権)の買取」を称して個人に行われる違法な貸付けです。「債権の買い取りなので金銭の貸付けではない」と説明していても、実態は貸付けであり、次のようなトラブルが発生しています。 年率換算で数百%にもなる高額な手数料の請求 本人や家族、勤務先への悪質な取り立て 高額な遅延損害金の請求 出典)独立行政法人国民生活センター 給与のファクタリング取引と称するヤミ金に注意!-高額な手数料や強引な取り立ての相談が寄せられています- 貸金業登録を行わずに給与の買い取りを行う業者は、違法なヤミ金融業者であるため、絶対に利用しないことが大切です。 ファクタリングの相談窓口 万が一ファクタリングを巡るトラブルに巻き込まれた場合は、一人で抱え込まず、以下の相談窓口に連絡しましょう。 相談窓口 電話番号 金融庁 金融サービス利用者相談室 0570-016811(IP電話からは03-5251-6811) 多重債務相談窓口連絡先 左記のリンク先を参照 日本貸金業協会貸金業相談・紛争解決センター 0570-051-051(IP電話からは03-5739-3861) 警察署 #9110(各都道府県警察相談ダイヤル) 消費者ホットライン 188 まとめ 本記事で紹介したように、ファクタリング自体は違法なものではなく、うまく活用すれば事業の資金繰りの改善が期待できます。一方で、ファクタリングを装った違法な貸付けを行うヤミ金融業者の存在が確認されており、金融庁や消費者庁などが注意喚起を行っています。 ファクタリングを利用する際は、少しでも不安がある場合は弁護士や専門家に相談し、業者が貸金業登録をしているか確認するなど、違法な取引に巻き込まれないよう十分に注意しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 事業資金の種類とそれぞれの特徴を紹介 事業資金は商売をする上で必要になる資金ですが、何に使うかによって呼び方が異なります。融資を受ける際には基本的に「どんなことに、いくら資金が必要なのか」を明確にさせなければ融資を受けられません...記事を読む

  • ペアローンは離婚したらどうなる?よくある問題と対処法を紹介

    住宅を購入する際にペアローンを組むことで、夫婦のどちらか一方が単独で住宅ローンを組むより借入額を増やせるなどのメリットがあります。しかし、ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、自宅の扱いや住宅ローンの返済をどうするのかを決めなければなりません。 この記事では、ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合の問題点と対処法を詳しく解説します。 そもそもペアローンとは? ペアローンとは、一定の収入がある同居親族と一緒にそれぞれが主たる債務者として、同一物件の購入を目的に住宅ローンを組む方法です。夫婦の場合、夫と妻がそれぞれ住宅ローンを組み、それぞれが相手の連帯保証人となります。 2人の借入額を合わせることによって、夫婦のどちらか一方が単独で住宅ローンを組むより高額の住宅を購入できます。その他にも以下のようなメリットがあります。 夫婦の双方に住宅ローン控除が適用される 夫婦がそれぞれ異なる条件で住宅ローンを組める(固定金利と変動金利を分けるなど) 一方で、ペアローンには以下のようなデメリットもあります。 住宅ローンを2つ組むので諸費用も2倍になる 夫婦のどちらかの収入が減少すると返済が苦しくなる なお、ペアローンと似た方法として、夫婦の収入を合算した金額をもとに住宅ローンを借り入れる「収入合算」という方法があります。こちらは、夫婦のどちらか一方が連帯保証人となって1つの住宅ローンを組む点で異なります。 ペアローンを組んだのに離婚することになったら? ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、何もしなければ、それぞれが今までどおり返済を続けることになります。しかし、今後の2人の生活を考えると、以下の2点について検討したほうがいいでしょう。 自宅をどうするか 債務をどうするか まずは、離婚後はどちらも自宅に住まないのか、あるいはどちらか一方が住み続けるのかを話し合って決めましょう。そのうえで、状況に応じて債務をどうするか考える必要があります。 自宅にどちらも住まない場合の対処法 離婚後、自宅にどちらも住まない場合は、「売却する」「賃貸に出す」の2つの選択肢が考えられます。どちらを選ぶ場合も、双方の合意が必要です。 自宅を売却する場合 自宅を売却する場合は、売却代金で2人の債務を返済することになります。売却価格が債務を上回る「アンダーローン」であれば、売却代金で2人の債務を完済できます。完済後に残った売却益については、話し合って適切に分ければきれいに精算できるでしょう。   しかし、売却価格が債務を下回る「オーバーローン」の場合、売却代金でローンを完済することができません。この場合だと、そもそも債権者である金融機関に自宅売却の承諾を得られない恐れがあります。また、もし自宅を売却できたとしても、引き続き返済を続けなければなりません。 自宅を賃貸に出す場合 離婚後に住宅を賃貸に出す場合は、賃料収入などで引き続きローンを返済していくことになります。 ただし、住宅ローンは資金使途が住宅購入や借り換えに限られるため、賃貸用不動産に対応している事業用ローンへの借り換えが必要です。一般的に事業用ローンは住宅ローンより金利が高く、住宅ローン控除の適用外となります。 離婚後も不動産を共有したまま賃貸に出す場合、退去時の入居者募集や住宅の修繕はどうするかなど、協力して賃貸経営をしなければなりません。良好な関係を維持できず、定期的にコミュニケーションがとれない場合は難しいでしょう。 賃貸に出す場合は、夫婦の一方が賃貸用不動産も借りられるローン(単独債務)に借り換えるのが現実的といえます。 自宅にどちらかが住み続ける場合の対処法 離婚後に夫婦のどちらかが自宅に住み続ける場合は、「引き続き双方で返済を続ける」「一方が債務を引き受ける」の2つの選択肢があります。 引き続き双方で返済を続ける場合は、一方が住まない家のためにローンを払い続けることになります。出ていく側が、子どもの養育費や慰謝料の代わりにローン返済を続ける場合もあるでしょう。 しかし、基本的には住み続ける側が出ていく側の債務を引き受け、返済を続けるのが自然な流れといえます。ただし、「一方が債務を引き受けても滞りなく返済が行われる」と判断されなければ、金融機関の承諾は得られません。状況によっては、金融機関から断られる恐れもあります。 まずは金融機関と相談する必要がありますが、必ず許可されるとは限らないことを理解しておきましょう。 リースバックという選択肢 ペアローンを組んだのに離婚する場合、夫婦の一方は「自宅に住み続けたい」、もう一方は「住んでいない家の住宅ローンをなくしたい」という要望もあるでしょう。住み続けたい側が出ていく側の債務を引き受けるのが難しいときは、リースバックで問題が解消できる可能性があります。 リースバックを利用すれば、自宅を売った売却代金でペアローンを完済しつつ、住み続けたい側がリースバック運営会社と賃貸借契約を結んでその家に住み続けることが可能です。 ただし、リースバックもアンダーローンにならないと、サービスを利用できません。売却価格はリースバック運営会社によって異なるので、利用を検討する場合は、仮査定を依頼するといいでしょう。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 まとめ ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、何も対応しなければ、どちらもそのまま返済を続けなくてはなりません。まずはどちらも自宅に住まないのか、どちらか一方が住み続けるのかを決めたうえで、債務について検討することが大切です。 住み続けたい側が一方の債務を引き受けるのが難しい場合は、リースバックで問題を解消できないか検討してみましょう。 ご相談・仮査定はこちら リースバックのご相談・仮査定を無料で受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リースバックの契約までの流れと必要書類、注意点を解説 リースバックを検討するにあたり、どのように契約が進んでいくのか不安に思う人もいるのではないでしょうか。リースバックの契約が終わってから後悔することが無いように、契約がどのような流れで進み、何...記事を読む