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  • 債権回収会社(サービサー)とは?仕組みや債権回収方法について解説

    債権回収会社(サービサー)とは、金融機関等に代わって債権の管理や回収を行う民間業者のことです。ローンの返済が困難になると、サービサーとのやり取りが発生する場合があります。 この記事では、サービサーの概要や仕組み、債権回収の方法などについて解説します。 債権回収会社(サービサー)とは サービサーとは、金融機関等から委託を受け、または譲り受けて、特定金銭債権の管理回収を行う法務大臣の許可を得た民間の債権管理回収専門業者です。(特定金銭債権の詳細は後述します。) 例えば、フラット35の融資を受けている債務者が全額繰上償還請求を行ったときの回収業務は、住宅金融支援機構が行うのではなく、以下のサービサーが行うものとされています。 エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社 オリックス債権回収株式会社 株式会社住宅債権管理回収機構 三菱HCキャピタル債権回収株式会社 出典)住宅金融支援機構「委託先債権回収会社について(機構が行う個人向け融資)」 債権回収業務は、従来は弁護士法の規定により、弁護士または弁護士法人以外の者が債権管理回収業務を行うことはできませんでした。しかし、1991年のバブル崩壊により発生した不良債権の処理等を促進するため、1999年に弁護士法の特例として「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」が施行され、債権管理回収業が民間業者に解禁されました。 出典)法務省「債権回収会社(サービサー)制度 -債権管理回収業に関する特別措置法-」 債権者である金融機関等にとっては、サービサーを利用することで回収交渉などの業務負担の軽減、債権譲渡による不良債権の解消などが期待できます。 特定金銭債権とは 特定金銭債権とは、サービサーが取り扱うことができる以下のような金銭債権です。 <主な特定金銭債権> 金融機関等が有する、または有していた貸付債権 リース契約・クレジット契約に基づく金銭債権 資産の流動化に関する金銭債権 ファクタリング業者が有する金銭債権 法的倒産手続中の者が有する、または有していた金銭債権 求償権その他の債権 出典)法務省「債権管理回収業に関する特別措置法の概要」 特定金銭債権の範囲は、サービサー法によって規定されています。不良債権の処理等を促進する観点から、サービサーが取り扱える金銭債権の範囲を限定しています。 債権回収会社(サービサー)の種類 法務省の資料によれば、2023年12月31日時点で、営業を行っているサービサー73社に調査した結果、出資母体等別の内訳は以下のとおりとなっています。 金融機関系(20社) 信販・貸金・リース系(16社) 外資系(4社) 不動産・独立系・その他(33社) 出典)法務省「債権回収会社(サービサー)の業務状況について(概要)」 債権管理回収業の営業許可を受けている業者は、法務省のホームページで確認でき、2024年4月1日時点では、72社となっています。 出典)法務省「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」 債権回収会社(サービサー)の仕組み サービサーはどのように運営され、どのような方法で債務者から債権を回収しているのでしょうか。ここでは、サービサーの仕組みと債権回収の方法について紹介します。 サービサーの仕組み ※筆者作成 出典)法務省「債権管理回収業に関する特別措置法の仕組み」 サービサーとして債権管理回収業を行うには、法務大臣の許可が必要です。許可を受けるには、以下の3つの要件を満たさなくてはなりません。 資本金が5億円以上あること 常務に従事する取締役の1名以上に弁護士が含まれていること 暴力団員等反社会的勢力の関与がないこと 法務大臣が日本弁護士連合会に意見を聴取し、弁護士会が取締役となる弁護士を推薦することで、サービサーの業務全般を適正に監督しています。 暴力団員等の排除については、法務大臣が警察庁長官に意見聴取、警察庁長官がサービサーに立入検査や援助等を行う仕組みになっています。 債権回収会社(サービサー)の業務 サービサーは金融機関等からの委託、債権譲渡を受けて次のような業務を行います。 債権管理 債務者への督促 法的手段の検討 債権回収後の処理 債権者である金融機関等に代わって、担当窓口として債務者への債権額の確認、返済交渉などを行います。債権を譲り受けた場合は債権者として自ら回収を行い、状況によっては法的手段も検討することになります。 サービサーとファクタリングの違い サービサーは前述のとおり、銀行や貸金業者などの金融会社が特定金銭債権の回収業務を委託され、後から債権を回収するものです。これに対し、ファクタリングは、企業がファクタリング会社に売掛債権(売掛金など)を買い取ってもらうことで、本来の回収より前に資金調達を行えるという違いがあります。 詳しくは関連記事をご確認ください。 関連記事はこちらファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介 サービサーと債務者の関係 サービサーと債務者の関係は、債権者から債権回収を委託されるか、債権を譲渡される(買い取る)かによって異なります。 金融機関等がサービサーに債権回収を委託する場合、サービサーが窓口として債務者と返済に関する交渉を行います。債権者は金融機関のまま変わりません。 金融機関等がサービサーに債権回収を委託する場合 ※筆者作成 一方、金融機関等がサービサーに債権を譲渡する場合、サービサーは債権者として債務者と回収交渉を行います。債権譲渡後、債務者は金融機関に対する返済義務はなくなりますが、サービサーへの返済義務が生じます。 金融機関等がサービサーに債権を譲渡する場合 ※筆者作成 債権回収会社(サービサー)の債権回収方法 サービサーは、次のような方法で債権回収を行います。 電話や面会での交渉 支払督促 内容証明郵便での督促 民事調停手続き 通常訴訟・少額訴訟 強制執行 まずは電話や書面などで通知が来るのが一般的です。その段階で対応しなければ、民事調停や訴訟などの法的手続きに移り、最終的には財産を差し押さえられるなどの強制執行が行われます。 ローン返済が滞った場合など、サービサーから通知が来たら、法務大臣の許可を受けている業者かどうかを確認しましょう。サービサーの名前をかたった業者による債権の架空請求などが発生しているため、心当たりのない請求には応じないことが大切です。 実際に返済が遅れているなど、サービサーからの通知に心当たりがある場合は、必要に応じて弁護士などの専門家に相談しながら返済について交渉するといいでしょう。 まとめ ローンの返済が困難となった場合、返済交渉の窓口が借入先である金融機関等から民間業者のサービサーに移る場合があります。 サービサーは債権回収の専門知識を有しており、通知を無視していると最終的には財産を差し押さえられる恐れがあります。サービサーから連絡がきたら、まずは法務大臣の許可を受けた登録業者であることを確認することが大切です。 そのうえで、自身だけで返済交渉をするのが難しい場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

  • ファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介

    ファクタリングとは、事業者の資金調達方法の1つです。保有している売掛債権を早期に資金化できるため、うまく活用すれば資金繰りの改善が期待できます。一方で、ファクタリングを巡って悪質なトラブルも発生しているため、十分に注意して利用することが大切です。 この記事では、ファクタリングの仕組みや種類、注意点について詳しく紹介します。 ファクタリングとは ファクタリングとは、企業が保有している売掛債権(売掛金など)をファクタリング会社が一定の手数料を差し引いて買い取るサービスです。売掛債権の支払期日が到来する前に資金化できるため、事業者の資金調達方法として活用されることがあります。 ファクタリングの法的な位置づけは、「債券譲渡契約(売買契約)」です。金融機関からの融資とは異なり、貸借対照表上の借入金(負債)が増えません。 融資のように、毎月利子という形で負担は発生しませんが、ファクタリングを利用する際に手数料が発生するので、頻繁に利用すると業績や財務の悪化につながる恐れがあります。 ファクタリングの仕組み 基本的なファクタリングは「買取ファクタリング」と呼ばれており、これを応用した仕組みとして「保証ファクタリング」や「一括ファクタリング」があります。ここでは、3種類のファクタリングの概要と仕組みを紹介します。 買取ファクタリング 買取ファクタリングとは、ファクタリング会社がサービスを利用する企業から売掛債権を買い取り、企業に対して資金を提供する仕組みです。ファクタリング会社は、売掛債権から手数料を差し引いた金額をサービス利用企業に支払います。 保有している売掛債権を譲渡するため、売掛債権の回収リスクはファクタリング会社に移転します。売掛債権の管理や回収に関する業務を効率化できるのも特徴です。 ファクタリングで調達した資金で借入金などの有利子負債を返済すれば、オフバランス化によって、貸借対照表に影響を与えずに済むこともできるでしょう。 保証ファクタリング 保証ファクタリングとは、ファクタリング会社と保証契約を結ぶことで、売掛債権の回収について保証を受ける仕組みです。万が一売掛先が倒産した場合は、企業はその売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、決められた保証の範囲内で保証金額を受け取ります。 一般的な買取ファクタリングは、資金調達と売掛債権のリスク移転を同時に達成できるのに対し、保証ファクタリングは売掛債権のリスク移転のみとなります。 保証ファクタリングのスキームは次の2つです。 個別保証方式個々の売掛債権について保証額を決定し、回収の保証を行う 根保証方式個々の売掛先について保証極度額を決定し、その極度額の範囲内で回収の保証を行う(債権を特定しない) どちらの方式も、売掛債権の金額や極度額に応じて保証料が発生します。 一括ファクタリング 一括ファクタリングとは、企業は売掛債権の回収側ではなく、代金を支払うことで保証を受ける仕組みです。企業、仕入先(買掛先)、ファクタリング会社の3社が合意のうえ、仕入先が企業に対して保有している売掛債権をファクタリング会社に一括譲渡します。 企業は、売掛債権に関する代金をファクタリング会社に一括で支払います。仕入先ごとに支払っていた代金を、ファクタリング会社に一括で支払いが済むため、多数の仕入先を抱えている場合は支払業務の効率化につながるでしょう。 仕入先にとっては、売掛債権回収に関する事務の効率化、決済期日前の割引による迅速な資金調達が可能になります。 出典)経済産業省 国立国会図書館デジタルコレクション「地域金融人材育成システム開発事業 : 創業・起業促進型人材育成システム開発等事業」P.27~P.30 ファクタリングの注意点 事業者にとって、ファクタリングは資金調達や事務作業の効率化などが期待できる一方で、次のような注意点もあります。また、ファクタリングを悪用し、個人に対して貸付けを行う事例も発生しています。 偽装ファクタリング 偽装ファクタリングとは、貸金業登録のない業者がファクタリングを装って行う違法な貸付けです。次のようなケースに当てはまる場合は、偽装ファクタリングの恐れがあります。 売掛債権の買取代金が債権額に比べて著しく低額で、高額な手数料が差し引かれる 契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」であることが明記されていない 売掛先の倒産などで債権を回収できない場合、売主に債権の買戻しを行わせる 出典) ・日本貸金業協会【注意喚起】悪質な金融業者にご注意! ・金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起 これらはファクタリングに見えても、実態は貸付けです。貸金業登録がされていない無登録業者のヤミ金融であり、悪質な取り立てにあうリスクもあるため注意が必要です。 給与ファクタリング 給与ファクタリングとは、「給与(個人の賃金債権)の買取」を称して個人に行われる違法な貸付けです。「債権の買い取りなので金銭の貸付けではない」と説明していても、実態は貸付けであり、次のようなトラブルが発生しています。 年率換算で数百%にもなる高額な手数料の請求 本人や家族、勤務先への悪質な取り立て 高額な遅延損害金の請求 出典)独立行政法人国民生活センター 給与のファクタリング取引と称するヤミ金に注意!-高額な手数料や強引な取り立ての相談が寄せられています- 貸金業登録を行わずに給与の買い取りを行う業者は、違法なヤミ金融業者であるため、絶対に利用しないことが大切です。 ファクタリングの相談窓口 万が一ファクタリングを巡るトラブルに巻き込まれた場合は、一人で抱え込まず、以下の相談窓口に連絡しましょう。 相談窓口 電話番号 金融庁 金融サービス利用者相談室 0570-016811(IP電話からは03-5251-6811) 多重債務相談窓口連絡先 左記のリンク先を参照 日本貸金業協会貸金業相談・紛争解決センター 0570-051-051(IP電話からは03-5739-3861) 警察署 #9110(各都道府県警察相談ダイヤル) 消費者ホットライン 188 まとめ 本記事で紹介したように、ファクタリング自体は違法なものではなく、うまく活用すれば事業の資金繰りの改善が期待できます。一方で、ファクタリングを装った違法な貸付けを行うヤミ金融業者の存在が確認されており、金融庁や消費者庁などが注意喚起を行っています。 ファクタリングを利用する際は、少しでも不安がある場合は弁護士や専門家に相談し、業者が貸金業登録をしているか確認するなど、違法な取引に巻き込まれないよう十分に注意しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 事業資金の種類とそれぞれの特徴を紹介 事業資金は商売をする上で必要になる資金ですが、何に使うかによって呼び方が異なります。融資を受ける際には基本的に「どんなことに、いくら資金が必要なのか」を明確にさせなければ融資を受けられません...記事を読む

  • ペアローンは離婚したらどうなる?よくある問題と対処法を紹介

    住宅を購入する際にペアローンを組むことで、夫婦のどちらか一方が単独で住宅ローンを組むより借入額を増やせるなどのメリットがあります。しかし、ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、自宅の扱いや住宅ローンの返済をどうするのかを決めなければなりません。 この記事では、ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合の問題点と対処法を詳しく解説します。 そもそもペアローンとは? ペアローンとは、一定の収入がある同居親族と一緒にそれぞれが主たる債務者として、同一物件の購入を目的に住宅ローンを組む方法です。夫婦の場合、夫と妻がそれぞれ住宅ローンを組み、それぞれが相手の連帯保証人となります。 2人の借入額を合わせることによって、夫婦のどちらか一方が単独で住宅ローンを組むより高額の住宅を購入できます。その他にも以下のようなメリットがあります。 夫婦の双方に住宅ローン控除が適用される 夫婦がそれぞれ異なる条件で住宅ローンを組める(固定金利と変動金利を分けるなど) 一方で、ペアローンには以下のようなデメリットもあります。 住宅ローンを2つ組むので諸費用も2倍になる 夫婦のどちらかの収入が減少すると返済が苦しくなる なお、ペアローンと似た方法として、夫婦の収入を合算した金額をもとに住宅ローンを借り入れる「収入合算」という方法があります。こちらは、夫婦のどちらか一方が連帯保証人となって1つの住宅ローンを組む点で異なります。 ペアローンを組んだのに離婚することになったら? ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、何もしなければ、それぞれが今までどおり返済を続けることになります。しかし、今後の2人の生活を考えると、以下の2点について検討したほうがいいでしょう。 自宅をどうするか 債務をどうするか まずは、離婚後はどちらも自宅に住まないのか、あるいはどちらか一方が住み続けるのかを話し合って決めましょう。そのうえで、状況に応じて債務をどうするか考える必要があります。 自宅にどちらも住まない場合の対処法 離婚後、自宅にどちらも住まない場合は、「売却する」「賃貸に出す」の2つの選択肢が考えられます。どちらを選ぶ場合も、双方の合意が必要です。 自宅を売却する場合 自宅を売却する場合は、売却代金で2人の債務を返済することになります。売却価格が債務を上回る「アンダーローン」であれば、売却代金で2人の債務を完済できます。完済後に残った売却益については、話し合って適切に分ければきれいに精算できるでしょう。   しかし、売却価格が債務を下回る「オーバーローン」の場合、売却代金でローンを完済することができません。この場合だと、そもそも債権者である金融機関に自宅売却の承諾を得られない恐れがあります。また、もし自宅を売却できたとしても、引き続き返済を続けなければなりません。 自宅を賃貸に出す場合 離婚後に住宅を賃貸に出す場合は、賃料収入などで引き続きローンを返済していくことになります。 ただし、住宅ローンは資金使途が住宅購入や借り換えに限られるため、賃貸用不動産に対応している事業用ローンへの借り換えが必要です。一般的に事業用ローンは住宅ローンより金利が高く、住宅ローン控除の適用外となります。 離婚後も不動産を共有したまま賃貸に出す場合、退去時の入居者募集や住宅の修繕はどうするかなど、協力して賃貸経営をしなければなりません。良好な関係を維持できず、定期的にコミュニケーションがとれない場合は難しいでしょう。 賃貸に出す場合は、夫婦の一方が賃貸用不動産も借りられるローン(単独債務)に借り換えるのが現実的といえます。 自宅にどちらかが住み続ける場合の対処法 離婚後に夫婦のどちらかが自宅に住み続ける場合は、「引き続き双方で返済を続ける」「一方が債務を引き受ける」の2つの選択肢があります。 引き続き双方で返済を続ける場合は、一方が住まない家のためにローンを払い続けることになります。出ていく側が、子どもの養育費や慰謝料の代わりにローン返済を続ける場合もあるでしょう。 しかし、基本的には住み続ける側が出ていく側の債務を引き受け、返済を続けるのが自然な流れといえます。ただし、「一方が債務を引き受けても滞りなく返済が行われる」と判断されなければ、金融機関の承諾は得られません。状況によっては、金融機関から断られる恐れもあります。 まずは金融機関と相談する必要がありますが、必ず許可されるとは限らないことを理解しておきましょう。 リースバックという選択肢 ペアローンを組んだのに離婚する場合、夫婦の一方は「自宅に住み続けたい」、もう一方は「住んでいない家の住宅ローンをなくしたい」という要望もあるでしょう。住み続けたい側が出ていく側の債務を引き受けるのが難しいときは、リースバックで問題が解消できる可能性があります。 リースバックを利用すれば、自宅を売った売却代金でペアローンを完済しつつ、住み続けたい側がリースバック運営会社と賃貸借契約を結んでその家に住み続けることが可能です。 ただし、リースバックもアンダーローンにならないと、サービスを利用できません。売却価格はリースバック運営会社によって異なるので、利用を検討する場合は、仮査定を依頼するといいでしょう。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 まとめ ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、何も対応しなければ、どちらもそのまま返済を続けなくてはなりません。まずはどちらも自宅に住まないのか、どちらか一方が住み続けるのかを決めたうえで、債務について検討することが大切です。 住み続けたい側が一方の債務を引き受けるのが難しい場合は、リースバックで問題を解消できないか検討してみましょう。 ご相談・仮査定はこちら リースバックのご相談・仮査定を無料で受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リースバックの契約までの流れと必要書類、注意点を解説 リースバックを検討するにあたり、どのように契約が進んでいくのか不安に思う人もいるのではないでしょうか。リースバックの契約が終わってから後悔することが無いように、契約がどのような流れで進み、何...記事を読む

  • 住宅ローンの5年ルールと125%ルールとは?メリット・デメリットを解説

    住宅ローンを変動金利型で組んだ場合、金利が上昇し、返済額が増えるのではないか、と不安に感じるかもしれません。 しかし、多くの金融機関では、金利が上昇しても急に返済額が変わらない「5年ルール」や「125%ルール」が採用されています。住宅ローンを変動金利型で組む場合は、これらのルールや仕組みを理解しておくことが重要です。 この記事では、住宅ローンの5年ルール、125%ルールの概要やメリットとデメリットについて詳しく解説します。 5年ルールとは? 5年ルールとは、金利が上昇しても5年間は住宅ローンの返済額が変わらない措置です。住宅ローンの変動金利型は、通常半年ごとに適用金利が見直されるので、5年ルールがなければ、金利が変動するたびに半年単位で毎月の返済額が変わります。しかし、5年ルールによって、返済額が変更されるのは借り入れから6年目、11年目、16年目、のように5年ごととなります。 仮に変動金利の上昇が起こったとしても、返済額が急に増えないことが5年ルールのメリットといえるでしょう。5年間は毎月の返済額が一定のため、急に返済額が増えて家計が苦しくなることを避けられます。 一方で、5年ルールは、返済額が変わらなくても毎月の返済額に占める元金と利息の内訳が見直されています。つまり、金利が上昇すると返済額に占める利息の割合が増え、元金が減るペースが遅くなってしまうのがデメリットです。 加えて、金利が大幅に上昇すると、利息が毎月の返済額を上回って「未払利息」が発生する恐れもあります。もし未払利息が発生した場合、通常の返済とは別に支払いをしない限り、最終返済日まで繰り越しとなります。気づかないうちに未払利息が増加し、元金の返済が全く進まなくなるので注意が必要です。 出典)一般社団法人全国銀行協会「未払い利息が発生する仕組み」 未払い利息の計算方法は、金融機関によって異なるので、自身が組んでいる住宅ローンでは、どのように計算されるのか確認しておきましょう。 125%ルールとは? 125%ルールとは、金利が上昇しても返済額が125%を超えて増加しないようにする措置です。5年ルールによって5年ごとに返済額が増えるときは、それまでの返済額の1.25倍が上限となります。なお、金利が下がったときは、下限なく返済額は減ります。 125%のルールのメリットは、5年ルールでは防げない返済額の大幅な負担増を回避できることです。ただし、返済額が1.25倍に増えるのは金利が大きく上昇した場合に限られます。たとえば、借入額5,000万円、金利0.5%、借入期間35年で元利均等返済の条件で毎月の返済額が1.25倍に増える事例を考えてみましょう。 上述の条件で毎月の返済額をシミュレーションすると、毎月の返済額は129,792円となります。この返済額に125%ルールが適用されるとき、毎月の返済額は162,240円です。実際に金利が変動する場合を考えると、計算が複雑であるため、返済開始時の金利が何%のときに、この返済額になるかを考えてみましょう。 借入額5,000万円、借入期間35年、毎月の返済額は162,240円でシミュレーションすると、適用金利は1.867%となります。この結果からわかるように、125%ルールは金利が大幅に増加しないと適用されず、昨今の市中金利からは考えにくいほど大きな変動がないと、125%には当たらないことがわかります。 5年ルールや125%ルールの注意点 5年ルールと125%ルールは金利変動リスク対策ではない 5年ルールと125%ルールがあれば、金利が上昇しても返済額が急に増えることはありません。しかし、実際は利息の支払いが免除されるわけではなく、支払いが先送りされているだけです。 もし「5年ルールや125%ルールがあるから金利が上昇しても大丈夫」と考えているのであれば、それは誤りです。住宅ローンの金利変動リスクを完全に排除したい場合は、固定金利型で借り入れたほうが良いでしょう。 なお、住宅ローンの固定期間選択型は、固定期間が終了して変動金利へ切り替わっても、一般的には5年ルールや125%ルールは適用されないので注意が必要です。加えて、固定期間終了時点の金利で返済額が再計算されるため、金利が上昇すると返済額が大幅に増える恐れがあります。 5年ルールや125%ルールを採用していない金融機関もある 金融機関によっては5年ルールや125%ルールを採用していない場合もあります。その場合、通常は半年ごとに金利が見直され、その都度返済額が変わります。この場合は金利が大幅に上昇しても利息を先送りせずに支払うため、返済期間の終盤で未払利息の負担が生じることはありません。 5年ルールと125%ルールは一時的な家計の負担軽減にはつながりますが、利払いの支払いを先送りにしているだけに過ぎないということを念頭に置いておく必要があります。 まとめ 住宅ローンの変動金利型は、多くの金融機関で5年ルールと125%ルールが採用されているため、金利が大幅に上昇しても急に返済額が増えることはありません。 ただし、あくまでも利息の支払いが先送りされるだけで、返済総額が減るわけではないので注意が必要です。むしろ未払利息が発生し、返済期間の終盤で大きな負担が生じる恐れがあります。 住宅ローンを変動金利型で組む場合は、予め金利が上昇した場合の返済額を試算し、家計への負担を考慮しながら、その他の条件についても比較検討することが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンを比較する5つのポイント マイホームは、住宅ローンを利用して購入するのが一般的です。さまざまな金融機関が住宅ローンを扱っているので、どのように選べばよいかわからないのではないでしょうか。 自分に合った住宅ローンを選ぶ...記事を読む

  • 債務超過とは?解消方法と中小企業向けの支援策を紹介

    債務超過になると、すぐに倒産することはなくても、さまざまなデメリットがあるため、早期に対策を講じる必要があります。債務超過に陥った場合、経営者はどのように対処すればよいのでしょうか。 この記事では、債務超過のデメリットや解消方法、中小企業が利用できる支援策について紹介します。 債務超過とは 債務超過とは、貸借対照表の負債が資産を上回り、純資産がマイナスの財政状態のことです。このような状態では、仮に会社を清算し保有資産を全て売却したとしても、借入金などが返済できず、負債が残ってしまいます。 出典)J-Net21「わが社の帳簿が債務超過の状態になってしまいました。解消するにはどうすればよいでしょうか?」 債務超過だからと言って、必ずしも倒産するわけではありませんが、さまざまなデメリットがあり、できるだけ早期に解消することが望ましいでしょう。 債務超過のデメリット 債務超過に陥ると、以下のようなデメリットがあります。 仕入先や販売先からの信用が低下する 銀行からの新規借り入れが難しくなる 銀行から既存借り入れの金利引き上げ、早期返済を要求される恐れがある 債務超過は企業の財政状態が悪化していることを意味するため、仕入先や販売先から取引を打ち切られる恐れがあります。 銀行からの信用度が低下するのも重要な問題です。返済能力が乏しいと判断されると、新規借り入れが困難になるうえに、借入金の早期返済を求められることもあります。 債務超過に陥っても、現金預金や売掛金などの流動資産に余裕があり、当面の支払いに対応できるならすぐに倒産することはないでしょう。しかし、上述のデメリットによって資金繰りがさらに苦しくなる恐れもあります。 債務超過を解消する方法 債務超過を解消するには、長期的な視点では経営体質を改善し、毎期利益が出るように体制を整えるしかありません。一方で、短期的な視点では以下のような解消方法があります。 増資を行う 代表者や役員からの借入金を資本金に振り替える 遊休資産を売却して借入金を返済する 増資とは、投資家から出資を受けて資本金を増加させることです。外部から出資を募る場合は経営権に影響し、手続き費用も発生する点に注意が必要です。 代表者や役員からの借入金を資本金に振り替える方法は、債務超過の解消に加えて、借入金の返済と利息の支払いが不要になるのがメリットです。一方で、役員からの借入金を資本金に振り替える場合、その役員の経営への影響力が強まる恐れもあります。 利益を生み出さない遊休資産を売却し、その売却代金で負債を返済すれば、債務超過の解消が期待できるでしょう。資産の圧縮によって総資本経常利益率などの指標が改善し、銀行からの信用度が上がる可能性もあります。 これらの方法は専門知識が求められるため、税理士などの専門家に相談したうえで実行するか判断しましょう。 債務超過でも活用できる中小企業支援策 債務超過が原因で銀行から融資を受けられず、資金繰りが苦しい中小企業向けに、次のような支援策が用意されています。 政府系金融機関の融資制度 セーフティネット貸付や事業再生支援資金など、事業再生支援を目的とした様々な融資制度が用意されています。債務超過であっても、一時的な運転資金や経営再建資金、災害復旧資金などに利用できる融資を受けられるかもしれません。 ただし、それぞれ利用できる融資制度や諸条件が異なるため、まずは各機関の窓口で相談してみましょう。 商工組合中央金庫の事業再生・経営改善制度 地域金融機関や中小企業活性化協議会等の事業再生支援機関、顧問税理士などの外部機関と連携し、過剰債務の対応や経営危機への改善支援があります。事業再生に向けた支援プログラムを作成することで、資金繰りのサポートが受けられる可能性があります。 出典)商工組合中央金庫「事業再生・経営改善」 地方自治体の融資制度 都道府県や市区町村が国の中小企業支援策と連動し、各自治体が独自に運用している融資制度です。地方自治体の制度融資では、債務超過であっても運転資金などの融資を受けられる可能性があります。まずは自治体の担当窓口に相談してみましょう。 中小企業等経営強化法の経営革新支援 中小企業等経営強化法に基づき、低利融資制度などの支援措置を利用できる可能性があります。支援措置を受けるには、具体的な数値目標を含んだ経営革新計画を作成し、都道府県(または国)の承認を得なくてはなりません。 ハードルは高いかもしれませんが、経営革新計画を立てることで課題が明確になり、経営体質の改善効果が期待できるでしょう。 出典)中小企業庁「経営サポート「経営革新支援」」 関連記事はこちら認定経営革新等支援機関とは?利用するメリット・デメリットを解説 都道府県の中小企業活性化協議会 中小企業活性化協議会とは、すべての都道府県に設置されている中小企業の支援機関です。商工会議所などが運営しており、収益力や財務の改善、保証債務の整理などについて相談できます。債務超過の解消を目的とした再生計画の作成支援を受けることも可能です。 出典)中小企業庁「中小企業活性化協議会連絡先一覧」 商工会議所の経営安定特別相談室 経営安定特別相談室とは、破産や倒産の不安を抱えている中小企業向けの相談窓口です。全国の主要商工会議所や都道府県の商工会連合会で設置されています。資金繰りが厳しいなどの経営難に直面している中小企業は、弁護士などの専門家に無料で相談できます。 出典)中小企業庁「経営安定特別相談事業」 まとめ 債務超過になったからといって、必ずしも倒産するとは限りません。しかし、取引先や銀行からの信用度が下がるため、売上や利益が減少したり、資金調達に支障が出たりする恐れがあります。 資金繰りの悪化による倒産を防ぐためにも、国や自治体の支援をうまく活用しながら、なるべく早く債務超過を解消するための対策を講じましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 赤字になったら確定申告は必要か? 個人事業主の中には、「事業が赤字で税金を払わなくてもいいから、確定申告は必要ないだろう」、「赤字申告だと融資を受けられなくなるから、確定申告をするのをやめよう」などと考えている方がいらっしゃ...記事を読む

  • セットバックとは

    セットバックとは?2項道路や接道義務について徹底解説!

    土地や中古戸建ての物件情報を調べていると、「セットバック」という言葉を見かけるかもしれません。また、持ち家を建て替える際に、敷地と道路の状況によってはセットバックが必要になることもあります。 この記事では、セットバックの概要や2項道路と接道義務の意味、注意点などについて詳しく解説します。 セットバックとは セットバックとは、土地と前面道路の境界線を後退させることです。 住宅には、「建築基準法で定められている道路に敷地が2m以上接していなければならない」という接道義務があります。「要セットバック」の土地や中古住宅は、この接道義務に従って敷地と道路の境界線を後退させなくてはなりません。 建築基準法で定められている道路とは、幅が4m以上(特定行政庁の指定で6m以上となる場合あり)の道路を指します。防災対策として、緊急車両が通れるようにすることが目的です。 道路の幅が4m未満の場合、建築基準法の接道義務を満たしていないことになります。ただし、以下の道路については、幅が4m未満であっても建築基準法上の道路として認められます。 建築基準法の施行前に建築物があった道路 特定行政庁の指定を受けている道路 出典)e-Gov法令検索「建築基準法」第四十二条2項 このような道路は「2項道路」や「みなし道路」と呼ばれており、既に建っている住宅はそのままでも問題ありません。ただし、再建築や増築はできず、建て替えの際はセットバックをする必要があります。 セットバックのイメージ 以下の2つの場合でセットバックをしなければならない距離が異なります。 向かい側にも建物などがある場合 向かい側に川などがある場合 それぞれ詳しく見ていきましょう。 向かい側にも建物などがある場合 ※編集者作成 向かい側にも建物がある場合は、それぞれの土地で半分ずつセットバックします。例えば、前面道路の幅が3mの場合、それぞれ0.5mずつセットバックが必要です。これにより、4mの道路幅を確保できます。 向かい側に川などがある場合 ※編集者作成 向かい側に川などがある場合は、片側がセットバックして4m以上の道路幅を確保しなくてはなりません。前面道路の幅が3mなら、1mのセットバックが必要です。 つまり、向かい側が道路に対して後退できるかどうかによって、セットバックしなければならない距離が算出されます。 セットバックした部分の土地の扱い 要セットバックの土地は、セットバックする部分も含めて購入しなくてはなりません。塀や門などがある場合は撤去費用がかかる可能性もあるため、購入前に確認しておくことが大切です。 セットバックした部分には次のような選択肢があります。 自治体に寄付もしくは買い取ってもらう 所有権を維持したまま私道とする 自治体に寄付するのが一般的ですが、買い取ってもらえるケースもあるようです。また、買取ではなく奨励金や助成金が交付される自治体もあります。奨励金や助成金は申請が必要になるため、交付を受けられる場合は忘れずに手続きを行いましょう。 なお、所有権を維持したままであっても、セットバック部分を自由に使っていいわけではありません。基本的に土地所有者が維持管理を行うことになりますが、駐車場としたり、植木鉢などを置いたりすることはできないため注意が必要です。 固定資産税について セットバック部分の土地は、自治体に申告をすることによって固定資産税や都市計画税が非課税となります。自治体に非課税となることを申告しないと、セットバック部分にも固定資産税がかかってしまうので忘れずに手続きを行いましょう。 建蔽率・容積率の計算 セットバックした部分の土地は、容積率や建蔽率の計算に用いる敷地面積に含まれません。セットバック部分には建物はもちろん、塀や門も建てられず、駐車場として利用することもできなくなります。 セットバックが必要な土地を購入する場合、見た目が広くても、実際に使える敷地は狭くなってしまう恐れがあるので要注意です。 セットバック物件はやめたほうがいい? セットバックが必要となる物件は、前面道路が狭い状況にあります。現地確認をすると、防災面や車の出し入れなどに不安を感じるかもしれません。 さらに、セットバック部分の工事費用についても確認する必要があります。助成金などが交付されず、全額自己負担となれば思わぬ出費となるでしょう。購入前に不動産業者や自治体に確認することが大切です。 上述のようなデメリットがあるため、セットバック部分には価値がないと判断され、後で売却するときに価値が下がってしまう恐れがあります。 ただし、既に建物が建っており、建て替えの予定もないのであれば、セットバックせずに住み続けるのも選択肢です。また、そもそも土地が広ければ、セットバックしても十分な敷地を確保でき、問題なく建て替えできるでしょう。 また、セットバックが必要な分、他の同じような土地よりも少し安く取得できる可能性もあります。セットバック物件のメリットとデメリットを理解したうえで、自身の希望に合った選択をすることが大切です。 まとめ 道路の幅が4m未満の「2項道路」「みなし道路」に接地している土地や中古戸建ては、住宅の建築や建て替え時にセットバックが必要です。 セットバックを行う場合は、費用負担や奨励金と助成金の有無について事前に確認しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 筆界特定制度とは?活用できる場面や申請の流れ、費用を解説 筆界特定制度は、法務省が管轄する制度の一つです。本制度が定められるまで、土地の境界に関する紛争が起きた際、従来は裁判で解決するしかありませんでした。しかし、「筆界特定制度」を利用することで、...記事を読む

    2024.04.03用語
  • 区分所有法とは

    区分所有法とは?概要や対象となる建物、主な規定内容について解説

    区分所有法は、マンションの所有者や管理組合にとって重要な法律です。マンション暮らしを検討している人や既に住んでいる人は、区分所有法を理解しておくことで、安心して生活できるでしょう。 この記事では、区分所有法の概要や対象となる建物、主な規定内容について解説します。 区分所有法とは 区分所有法とは、主に分譲マンションの権利関係や維持管理などについて定められた法律です。正式名称を「建物の区分所有等に関する法律」といいます。 マンションなどの区分所有建物は1つの建物が複数の部屋に区切られており、各部屋には「区分所有権」と呼ばれる所有権が設定されています。マンションの1室を購入すると、その部屋の区分所有権を有する「区分所有者」となります。 また、マンションはエントランスやエレベーターのように、区分所有者が共同で使用する「共用部分」があります。共用部分の修繕や建て替えなどは、区分所有者同士で話し合って実施方法などを決めなくてはなりません。 区分所有者や居住者の権利や財産を守り、マンションを円滑に運営、管理するために、区分所有法が定められています。 区分所有法の対象となる建物 区分所有法第一条では、適用対象となる建物を次のように定めています。 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。 出典)e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」 区分所有法の対象となる代表的な建物は分譲マンションです。各部屋が構造上区分されており、それぞれに区分所有権が設定されています。部屋が隣り合っていても室内から行き来することはできず、独立性を有していることから、上記の要件に当てはまるといえます。 一般的な分譲マンションであれば、区分所有法の対象になるため、マンションに住む人であれば、ほとんどの人が関係のある内容ということになります。 一戸建ても複数の部屋で構成されていますが、部屋と部屋の間は自由に行き来できるのが一般的です。また、通常は家族全員が1つの玄関を使って出入りし、共有スペースであるリビングなどを通らないと部屋に行けないこともあります。 物件ごとに判断する必要はありますが、基本的に一戸建ては区分所有法の適用対象外と考えられます。 区分所有法の主な規定内容 ここでは、区分所有法で定められている主な内容を解説します。 専有部分と共用部分 分譲マンションは、主に「専有部分」と「共用部分」の2つに区分できます。区分所有法第二条では、それぞれ次のように定義されています。 区分所有権の目的たる建物の部分 専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の付属設備及び管理規約により共用部分とされた附属の建物 出典)e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」 専有部分は、区分所有者が単独で所有している各部屋の内部です。一方、エントランスや廊下、エレベーター、バルコニーなど、区分所有者全員で利用している設備は共用部分に該当します。 共用部分の持分は専有部分の床面積の割合に応じて決まりますが、専有部分と分離して処分することはできません。例えば、区分所有しているマンションの1室(専用部分)を売却する場合、共用部分の持分も一緒に手放すことになります。 管理組合について 管理組合とは、マンションの建物や敷地などを維持管理するための組織です。区分所有法では、区分所有者は全員で建物や敷地、附属設備の管理を行うための団体である管理組合を構成する義務が明記されています。管理組合は、マンション管理の基本ルールとして「管理規約」を制定し、執行機関として、区分所有法の「管理者」にあたる理事長や理事を選任します。 理事長は少なくとも毎年1回集会を招集すること、共用部分の管理や修繕などに関する事項を決定して議事録を作成すること、なども区分所有法に定められています。区分所有者は管理組合の一員になる必要があり、原則として脱退はできません。 建て替え決議について 区分所有法には、マンションの建て替え決議に関する定めもあります。老朽化によりマンションを建て替える場合、現在は区分所有者の5分の4以上の賛成が必要です。 しかし、今後は築40年以上の老朽マンションの増加が見込まれています。マンションが老朽化すると適切な維持や管理が難しくなり、外壁の剥落や鉄筋の露出など、居住者や近隣住民に悪影響を与える事案が発生する恐れがあります。 そのため、住民の円滑な合意形成を促すことを目的に、マンション建て替えに必要な賛成の割合を「4分の3以上」に緩和するといった議題が、法務省で議論されています。2024年3月時点では未定ですが、将来は区分所有法が改正される可能性もあるでしょう。 区分所有法とマンション標準管理規約との関係性は? マンション標準管理規約とは、区分所有法に基づいて国が定めたマンション管理規約の作成や変更に関する指針のことです。国の標準管理規約をもとに、管理組合が作成した管理規約がそのマンションのルールとなります。 新築分譲マンションの場合、一般的には売主である販売会社が標準管理規約に準じた管理規約を準備して提示してくれるため、購入前に確認しておくといいでしょう。 まとめ 区分所有法には、区分所有者の権利義務や共用部分の取り扱い、管理組合の役割などについて定められているため、マンションに住む人にとっては重要な法律といえます。マンションの購入を検討している人、すでにマンション暮らしをしている人は、区分所有法について理解を深めておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マンションの資産価値の調べ方は?基準もあわせて紹介 マンションを購入する際には、将来的な資産価値の変化にも目を向けて判断することが大切です。この記事では、マンションの資産価値に影響を与える要因や、資産価値の調べ方について解説します。 マンショ...記事を読む

    2024.03.27用語
  • 原野商法とは

    原野商法とは?取得してしまった土地はどうすべき?

    原野商法は、1970年から1980年代にかけて多発したこともある土地に関する不当勧誘のひとつです。近年では、原野商法によって取得した土地をめぐるトラブルが増えています。原野商法の二次被害を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。 この記事では、原野商法の概要や二次被害の事例、トラブルを避ける方法を紹介します。 原野商法とは? 原野商法とは、値上がりの見込みがほとんどない山林や原野について、「将来確実に高値で売れる」などと勧誘し、不当に販売する商法です。 実際には建設計画がないにもかかわらず、「開発計画がある」「もうすぐ道路ができる」などと虚偽の説明をするのが典型的な手口で、1970~1980年代に被害が多発しました。 原野商法の二次被害が増えている 近年、この原野商法の二次被害が増加しています。二次被害の手法は以下のとおりです。 かつて原野商法の被害にあった人が、「土地を高く買い取ります」などと勧誘される 契約の詳細を認識できないまま、新たな山林や原野を購入させられる 始めはすでに所有している不動産を買い取ることを勧誘しますが、巧妙な手口で売却額より高い山林や原野を新たに購入させられるトラブルが発生しています。 過去に原野商法に巻き込まれ、値上がりが期待できない土地を長年保有してきた高齢者の多くは「元気なうちに土地を手放したい」「相続で子どもに迷惑をかけたくない」という思いを持っているでしょう。悪徳業者はその気持ちにつけこんで、不当な勧誘や販売を行っていると考えられます。 具体的な事例を紹介 原野商法の二次被害について、具体的な事例を2件紹介します。 事例①:原野を売却したつもりが、新たな土地の契約をさせられていた(80代男性) 相続で子どもに迷惑をかけたくなかったので、所有する原野を手放したいと思っていたところ、不動産業者から自宅を訪問され「約800万円で買い取りたい」と勧誘された。その際、意味がわからないまま書類に署名させられた。 業者が「気にしないで」と言うので信用し、手続き費用として約400万円を支払い、住民票と印鑑証明書、土地の権利書を業者に渡した。実際は、自分の原野を約800万円で売り、遠方の原野を約1,200万円で購入する契約となっていた。 出典)独立行政法人国民生活センター「より深刻に!「原野商法の二次被害」トラブル 」 事例②:山林を購入したい人がいると説明され、調査・整地費用を支払った(60代男性) 40年前に30坪と100坪の山林を購入して所有している。「30坪のほうの山林を欲しがっている人がいる」と不動産業者から電話があり、売却することを了承した。その後、不動産業者から売却にあたって山林の調査や整地が必要と言われ、合計190万円を支払った。 30坪の山林を売却する前に、今度は「同じ人が100坪の山林も欲しがっているので調査費用80万円を支払ってほしい」と言われた。子どもは「原野商法の二次被害に手口が似ている」と言っている。 出典)政府広報オンライン「「原野商法」再燃!「土地を買い取ります」などの勧誘に要注意」 原野商法の二次被害を防ぐには? 原野商法の二次被害にあうと、契約後はその不動産業者と連絡がつかなくなる場合がほとんどで、一度お金を払ってしまうと、そのお金を取り戻すのは困難です。過去に原野商法に巻き込まれて取得した山林や原野の買い取り話を聞いてしまうと、二次被害に繋がる恐れがあります。 そもそも取得した山林や原野はこれまで値上がりせず、開発計画もなかった土地です。「確実に値上がりする」「買いたい人がいる」といったうまい話は、そうあるものではないでしょう。「土地を買い取る」と勧誘されても、きっぱりと断ることが大切です。不審な勧誘を受けて困っている場合は、消費生活センターに相談しましょう。 相談先:消費者庁「消費者ホットライン」 すでに持っている土地をどうすべき? 原野商法の二次被害を防止するには、「土地を買い取る」と勧誘を受けてもきっぱりと断ることが大切だと分かりました。では、すでに持っている山林や原野はどうすればよいのでしょうか。原野商法で手にした土地を処分したい場合は、「相続土地国庫帰属制度」の利用を検討しましょう。 相続土地国庫帰属制度とは、相続で取得した土地を手放して国庫に帰属させる制度です。土地の所有者本人ではなく、所有者の相続人が利用します。将来原野商法で取得した土地を相続させたとしても、相続土地国庫帰属制度の利用によって国に返せる可能性があります。 ただし制度対象となる土地の要件がいくつか定められているため、生前に要件を満たせるように整備したうえで相続する必要があります。加えて、相続人となる人に相続土地国庫帰属制度についてあらかじめ話しておくことが大切です。 なお、相続土地国庫帰属制度はまだ開始されて間もない制度であり、今後どのように運用されていくか不明瞭な点も多いので、法務局や専門家に相談しておくと安心です。 関連記事はこちら相続土地国庫帰属法とは?制度の概要や相続放棄との違いなどを解説 まとめ 原野商法の二次被害を防ぐには、「土地を買い取る」などの勧誘をきっぱりと断ることが大切です。うまい話は疑ってかかり、1人で即決せず、家族や友人、消費生活センターなどに相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 高齢者の自宅売却のトラブルが増加!回避するための対策とは? 「強引に勧誘された」「高額の違約金を請求された」など、高齢者の自宅売却に関するトラブルが増加しています。 相手に言われるがまま売買契約をしてしまうと、高齢者の場合は「住む場所が見つからない」...記事を読む

    2024.01.24用語
  • 公正証書遺言とは

    公正証書遺言とは?手続きの費用と必要書類を解説

    公正証書遺言は、自筆証書遺言に比べると無効になる可能性が低いのが特長です。では、相続に備えて公正証書遺言を作成する場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。 この記事では、公正証書遺言の特徴と手続き、その費用や必要書類について解説します。 公正証書遺言とは 公正証書遺言とは、公証役場において公正証書として作成する遺言です。証人2名以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に述べて、公証人の筆記により作成してもらいます。また、遺言書の内容について悩んでいる場合は、必要な助言を受けられます。 遺言者の真意を確認し、適切に手続きが行われたことを担保するため、証人2名以上の立会いが要件となっています。未成年者や相続人は証人になれないので、利害関係のない友人や知人にお願いするといいでしょう。依頼できる人がいない場合は、公証役場で紹介してもらうことも可能です。 公正証書遺言のメリット 公正証書遺言には以下のようなメリットがあります。 遺言書が無効になる可能性が低い 公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が遺言書を作成します。複雑な内容であっても内容を整理して、民法上の方式に沿った遺言書を作成してもらうことが可能です。そのため、遺言書が無効になる可能性は低いでしょう。 紛失や盗難、改ざんのリスクがない 公正証書遺言は、公証役場で原本が保管されます。遺言書が誤って破棄されたり、誰かに盗まれたり、書き換えられたりする恐れがないので安心です。 家庭裁判所での検認手続が不要 法務局に預けていない自筆証書遺言の場合、遺言書の保管者や相続人が家庭裁判所に遺言書を提出し、その検認を請求しなくてはなりません。検認を経ないで遺言を執行すると、5万円以下の過料が科される恐れがあります(民法第1,005条)。 公正証書遺言は検認手続が不要であるため、相続開始後は速やかに遺言の内容を実現できます。 身体が不自由でも利用できる 公正証書遺言は公証人に作成してもらえるため、体力が弱り、あるいは病気等のために、手書きが困難となった場合でも作成が可能です。 また、公正証書遺言は公証役場以外でも作成が認められています。身体が不自由で公証役場に出向くことが困難な場合でも、公証人が遺言者の自宅などに出張して遺言書の作成が可能です。 公正証書遺言の作成費用 公証役場に支払う手数料は、目的の価額(相続財産の価額)に応じて以下のように設定されています。 出典)日本公証人連合会「公証事務(2遺言)」 また、証人を依頼する場合は追加で費用がかかります。友人や知人なら謝礼は自由に決められますが、公証役場で紹介してもらう場合は1人あたり6,000円程度の費用がかかります。弁護士などに遺言書の作成を依頼する場合は、証人を手配してもらうことが可能です。費用は1人あたり1万円程度が相場となります。 公正証書遺言の作成手続きの流れ 公正証書遺言の作成手続きの流れは以下のとおりです。 公証人への遺言の相談や遺言書作成の依頼 相続内容のメモや必要資料の提出 公正証書遺言(案)の作成と修正 公正証書遺言の作成日時の確定 遺言の当日の手続 「遺言者がどんな財産を所有していて、誰にどのような割合で相続させたいか」といったメモを提出すると、その内容に基づいて公証人が遺言書(案)を作成します。 遺言書の内容と作成日時が確定したら、遺言当日に遺言者が証人2名の前で、遺言の内容を改めて口頭で告げます。内容に問題がなければ、遺言者および証人2名が原本に署名・押印します。さらに公証人も原本に署名し、職印を押捺すると公正証書遺言は完成です。 公正証書遺言を作成する際の必要書類一覧 遺言者本人の印鑑登録証明書(3か月以内に発行されたもの) 戸籍謄本、除籍謄本(遺言者と相続人との続柄がわかるもの) 登記事項証明書(登記簿謄本)、固定資産評価証明書など(不動産の相続の場合) 預貯金通帳等またはそのコピー(預貯金等の相続の場合) 受遺者の住民票(財産を相続人以外の人に遺贈する場合) 他にも資料が必要になる場合があるので、詳細は公証役場に確認しましょう。 自筆証書遺言より公正証書遺言をおすすめする理由 公正証書遺言の他に、「自筆証書遺言」という選択肢もあります。 自筆証書遺言は、遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自分で手書きして押印する遺言書です。作成に費用がかからず、いつでも手軽に書き直せるのが特長です。ただし、一定の要件を満たしていないと無効になる恐れがあり、紛失や盗難、改ざんの危険性もあります。 自筆証書遺言に比べると手間や費用はかかりますが、公正証書遺言なら「遺言が無効になる」「不正に書き換えられる」といった危険性が低くなります。自分の意志を遺すための遺言が無効になっては元も子もありません。確実性を重視するなら、公正証書遺言をおすすめします。 もし自筆証書遺言を作成される場合は、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を検討するといいでしょう。この制度を利用すれば、遺言自体の形式不備は防げないものの、紛失や盗難、改ざんの危険性は低くなります。 関連記事はこちら自筆証書遺言書保管制度とは?メリットと注意点、利用の流れを解説 まとめ 公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成してくれるため、遺言が無効になる可能性が低くなります。公証役場で原本が保管され、紛失や盗難、改ざんを避けられるのも特長です。 ただし、公正証書遺言の作成では、証人2名を手配しなくてはなりません。自分で手配するのが難しい場合は、公証役場や弁護士などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 相続争いを生まないためのリースバックという選択肢 自宅を所有していると、老後も住み続けられる安心感がある一方で、相続に不安を感じることもあるのではないでしょうか。不動産は実物資産であるため、相続人が複数いると簡単に分けられません。また、相続...記事を読む

    2023.11.10用語相続
  • 地籍調査とは

    地籍調査とは?目的や得られる効果、調査の流れを解説

    地籍調査は、土地の境界や面積を明確にするために、法律に基づいて実施される調査です。土地を所有していると、地籍調査の案内が来る可能性があります。地籍調査にはどんな目的があるのでしょうか。 この記事では、地籍調査の概要や得られる効果、調査の流れについて解説します。 地籍調査とは 地籍調査とは、一筆ごとの土地の所有者や地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査です。国土調査法に基づく「国土調査」の1つで、市町村が主体となって実施します。 地籍とは、「土地の戸籍」です。土地の現況を示す基礎的な情報が記録されており、土地課税や土地の有効活用など、行政のさまざまな場面で活用されています。 関連記事はこちら地目変更を検討すべきケースとは?手続きの方法と費用も解説 地籍調査の目的 現在、登記所に備えられている地図や図面の多くは、明治時代の地租改正のときに作成された地図に基づくものです。時間経過や当時の測量技術が原因で、境界や形状が現在の土地と異なる場合があります。そのため、登記簿に記載された土地の面積も、正確さを欠いているのが現状です。 地籍調査を行うことで、調査結果をもとに地図が更新され、登記簿の情報も修正されます。 地籍調査の流れ 地籍調査は、市町村が主体となって行われます。市町村の職員が直接実施する場合と、委託された民間会社が実施する場合がありますが、どちらも以下の流れで進められるのが一般的です。 ①説明会の実施 市町村が地籍調査の関係機関と調整を行い、住民からの要望も踏まえて地籍調査の実施計画を作成します。その後、調査実施地域の住民に対して説明会を行い、調査内容や必要性、日程などについて説明します。 ②境界の確認(一筆地調査) 土地所有者の立ち合いのもと、現地で一筆地ごとに所有者や地番、地目を調査します。確認した境界には、各筆の土地の境界がわかるように杭を打ちます。この杭は測量の基準となる重要なもので、破損しないように保存する必要があります。 ③地籍測量、地籍図・地籍簿の作成 土地所有者などに確認してもらった土地の境界の測量(地籍測量)を行います。測量結果をもとに正確な地図(地籍図)を作成し、各筆の面積を計算します。そして、一筆地調査と地籍測量の結果をまとめて地籍簿を作成します。 ④地籍調査の結果の確認 地籍調査をもとに作成された地籍図と地籍簿は、誤りがないかを土地所有者などに確認してもらいます。通常は市町村役場で閲覧でき、期間は20日間です。調査結果に誤りがあった場合は、申し出ることが可能です。必要に応じて修正が行われ、地籍調査の結果が確定します。 ⑤地籍図と地籍簿を登記所へ送付 地籍調査によって作成された地籍図と地籍簿の写しが、登記所に送付されます。登記所では、これまでの地図の代わりに地籍図が備え付けの正式な地図となり、地籍簿をもとに登記簿が修正されます。 出典)国土交通省「地籍調査の流れ」 地籍調査を実施することで得られる効果 地籍調査によって、以下のような効果が期待できます。 土地境界をめぐるトラブル防止 土地の境界が不明確な地域では、土地の売買や相続などをきっかけに、隣人との間で境界を巡るトラブルが発生することがあります。地籍調査を実施し、土地所有者の立ち合いのもと境界を確認することで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。 土地の有効活用の促進 地籍が不明確であることは、土地取引の円滑化や開発事業を妨げる要因です。一部の地籍の問題で、再開発事業がなかなか進まない事例もあります。地籍が明確化されることで、土地取引や開発事業用地の取得を円滑に行うことが可能です。 災害復旧の迅速化 地震や土砂崩れ、水害などにより土地の形状が変わってしまった場合、土地の境界に関する正確な記録がないと、復旧計画の作成などに時間がかかります。地籍調査により土地の境界を正確に記録することで、万が一災害が発生した場合は円滑に復旧活動を行うことが可能です。 課税の適正化と公平化 土地の所有者に対して課税される固定資産税は、必ずしも正確ではない登記簿や公図のデータを参考にしています。そのため、正確な土地の実態が反映されず、課税について不公平な取り扱いとなっている場合があります。地籍調査で土地一筆ごとの正確な地目と面積を把握することで、課税の適正化や公平化が図れます。 地籍調査が進まない要因 地籍調査は昭和26年から実施されていますが、思うように進んでいないのが現状です。令和4年度末における進捗率は、対象地域全体で52%、優先実施地域で80%です。なお、優先実施地域とは、調査対象地域から以下2つを除いた地域のことをいいます。 土地区画整理事業等の実施により地籍が一定程度明らかになっている地域 大規模な国有地や公有地等の土地取引が行われる可能性が低い地域 地籍調査は、特に都市部と山村部で進捗が遅れています。 都市部は、他の地域より一筆ごとの土地が細かく分割されています。土地の権利関係が複雑であるため、多くの費用と時間がかかっています。また、都市部の住民はトラブル回避のために隣人との接触を避ける傾向にあり、調査への協力を得られないことが多いのも調査が進まない理由です。 山村部は、土地取引が少なく調査に費用がかかるため、市町村にとって調査の優先度が低いです。急傾斜地など調査が困難な地域が存在すること、土地所有者の高齢化が進行していることも調査を困難にしています。 出典)国土交通省「全国の地籍調査の実施状況」 地籍調査を迅速化する取り組み 国土交通省は、地籍調査をより迅速に進めるための取り組みを、都市部と山村部それぞれで以下のように進めています。 都市部での取り組み 都市部では、地籍調査の先行調査の位置づけで官民境界等先行調査(街区境界調査)が創設されました。道路等に囲まれた官民境界(街区境界)のみを先行して調査します。この調査によって、未着手だった地域の災害復旧の迅速化や土地所有者の情報更新など、一定の効果が期待できます。 この官民境界等先行調査について国土交通省が行ったアンケートによると、官民境界等先行調査を、先行調査の成果としてではなく地籍調査の成果として扱うべきとの意見が多いことが分かっています。 都市部で地籍調査を実施する困難さから、官民境界等先行調査の位置付けが変更されるかが、今後の焦点となりそうです。 山村部での取り組み 山村部では、航空レーザ測量などを活用し、測量に立ち合いもなく立地にも左右されない手法が開発されました。広域の詳細な地形や樹高分布、樹種の把握を短時間で行うことができます。 この新手法について国土交通省が行ったアンケートによると、新たな手法に対する不安やノウハウ不足から、活用意欲を示す市町村が少ないことが分かっています。一方でこの手法は山村部で地籍調査が進まない原因をほとんど解決できる手法ではあるため、市町村への理解が得られて普及していくかが、今後の焦点となりそうです。 出典) ・国土交通省「地籍調査について」 ・国土交通省「地籍調査の実施主体に対するアンケート調査結果①」 まとめ 地籍調査は、境界トラブル防止や土地の有効利用、災害復旧の迅速化といった効果を得られるため、重要な調査といえます。土地を所有していて地籍調査の案内が来た場合は、隣人とのトラブルを防ぐためにも調査に協力しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 筆界特定制度とは?活用できる場面や申請の流れ、費用を解説 筆界特定制度は、法務省が管轄する制度の一つです。本制度が定められるまで、土地の境界に関する紛争が起きた際、従来は裁判で解決するしかありませんでした。しかし、「筆界特定制度」を利用することで、...記事を読む

    2023.10.25用語