「用語」の記事一覧

  • 公正証書遺言とは

    公正証書遺言とは?手続きの費用と必要書類を解説

    公正証書遺言は、自筆証書遺言に比べると無効になる可能性が低いのが特長です。では、相続に備えて公正証書遺言を作成する場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。 この記事では、公正証書遺言の特徴と手続き、その費用や必要書類について解説します。 公正証書遺言とは 公正証書遺言とは、公証役場において公正証書として作成する遺言です。証人2名以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に述べて、公証人の筆記により作成してもらいます。また、遺言書の内容について悩んでいる場合は、必要な助言を受けられます。 遺言者の真意を確認し、適切に手続きが行われたことを担保するため、証人2名以上の立会いが要件となっています。未成年者や相続人は証人になれないので、利害関係のない友人や知人にお願いするといいでしょう。依頼できる人がいない場合は、公証役場で紹介してもらうことも可能です。 公正証書遺言のメリット 公正証書遺言には以下のようなメリットがあります。 遺言書が無効になる可能性が低い 公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が遺言書を作成します。複雑な内容であっても内容を整理して、民法上の方式に沿った遺言書を作成してもらうことが可能です。そのため、遺言書が無効になる可能性は低いでしょう。 紛失や盗難、改ざんのリスクがない 公正証書遺言は、公証役場で原本が保管されます。遺言書が誤って破棄されたり、誰かに盗まれたり、書き換えられたりする恐れがないので安心です。 家庭裁判所での検認手続が不要 法務局に預けていない自筆証書遺言の場合、遺言書の保管者や相続人が家庭裁判所に遺言書を提出し、その検認を請求しなくてはなりません。検認を経ないで遺言を執行すると、5万円以下の過料が科される恐れがあります(民法第1,005条)。 公正証書遺言は検認手続が不要であるため、相続開始後は速やかに遺言の内容を実現できます。 身体が不自由でも利用できる 公正証書遺言は公証人に作成してもらえるため、体力が弱り、あるいは病気等のために、手書きが困難となった場合でも作成が可能です。 また、公正証書遺言は公証役場以外でも作成が認められています。身体が不自由で公証役場に出向くことが困難な場合でも、公証人が遺言者の自宅などに出張して遺言書の作成が可能です。 公正証書遺言の作成費用 公証役場に支払う手数料は、目的の価額(相続財産の価額)に応じて以下のように設定されています。 出典)日本公証人連合会「公証事務(2遺言)」 また、証人を依頼する場合は追加で費用がかかります。友人や知人なら謝礼は自由に決められますが、公証役場で紹介してもらう場合は1人あたり6,000円程度の費用がかかります。弁護士などに遺言書の作成を依頼する場合は、証人を手配してもらうことが可能です。費用は1人あたり1万円程度が相場となります。 公正証書遺言の作成手続きの流れ 公正証書遺言の作成手続きの流れは以下のとおりです。 公証人への遺言の相談や遺言書作成の依頼 相続内容のメモや必要資料の提出 公正証書遺言(案)の作成と修正 公正証書遺言の作成日時の確定 遺言の当日の手続 「遺言者がどんな財産を所有していて、誰にどのような割合で相続させたいか」といったメモを提出すると、その内容に基づいて公証人が遺言書(案)を作成します。 遺言書の内容と作成日時が確定したら、遺言当日に遺言者が証人2名の前で、遺言の内容を改めて口頭で告げます。内容に問題がなければ、遺言者および証人2名が原本に署名・押印します。さらに公証人も原本に署名し、職印を押捺すると公正証書遺言は完成です。 公正証書遺言を作成する際の必要書類一覧 遺言者本人の印鑑登録証明書(3か月以内に発行されたもの) 戸籍謄本、除籍謄本(遺言者と相続人との続柄がわかるもの) 登記事項証明書(登記簿謄本)、固定資産評価証明書など(不動産の相続の場合) 預貯金通帳等またはそのコピー(預貯金等の相続の場合) 受遺者の住民票(財産を相続人以外の人に遺贈する場合) 他にも資料が必要になる場合があるので、詳細は公証役場に確認しましょう。 自筆証書遺言より公正証書遺言をおすすめする理由 公正証書遺言の他に、「自筆証書遺言」という選択肢もあります。 自筆証書遺言は、遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自分で手書きして押印する遺言書です。作成に費用がかからず、いつでも手軽に書き直せるのが特長です。ただし、一定の要件を満たしていないと無効になる恐れがあり、紛失や盗難、改ざんの危険性もあります。 自筆証書遺言に比べると手間や費用はかかりますが、公正証書遺言なら「遺言が無効になる」「不正に書き換えられる」といった危険性が低くなります。自分の意志を遺すための遺言が無効になっては元も子もありません。確実性を重視するなら、公正証書遺言をおすすめします。 もし自筆証書遺言を作成される場合は、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を検討するといいでしょう。この制度を利用すれば、遺言自体の形式不備は防げないものの、紛失や盗難、改ざんの危険性は低くなります。 関連記事はこちら自筆証書遺言書保管制度とは?メリットと注意点、利用の流れを解説 まとめ 公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成してくれるため、遺言が無効になる可能性が低くなります。公証役場で原本が保管され、紛失や盗難、改ざんを避けられるのも特長です。 ただし、公正証書遺言の作成では、証人2名を手配しなくてはなりません。自分で手配するのが難しい場合は、公証役場や弁護士などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 相続争いを生まないためのリースバックという選択肢 自宅を所有していると、老後も住み続けられる安心感がある一方で、相続に不安を感じることもあるのではないでしょうか。不動産は実物資産であるため、相続人が複数いると簡単に分けられません。また、相続...記事を読む

    2023.11.10用語相続
  • 地籍調査とは

    地籍調査とは?目的や得られる効果、調査の流れを解説

    地籍調査は、土地の境界や面積を明確にするために、法律に基づいて実施される調査です。土地を所有していると、地籍調査の案内が来る可能性があります。地籍調査にはどんな目的があるのでしょうか。 この記事では、地籍調査の概要や得られる効果、調査の流れについて解説します。 地籍調査とは 地籍調査とは、一筆ごとの土地の所有者や地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査です。国土調査法に基づく「国土調査」の1つで、市町村が主体となって実施します。 地籍とは、「土地の戸籍」です。土地の現況を示す基礎的な情報が記録されており、土地課税や土地の有効活用など、行政のさまざまな場面で活用されています。 関連記事はこちら地目変更を検討すべきケースとは?手続きの方法と費用も解説 地籍調査の目的 現在、登記所に備えられている地図や図面の多くは、明治時代の地租改正のときに作成された地図に基づくものです。時間経過や当時の測量技術が原因で、境界や形状が現在の土地と異なる場合があります。そのため、登記簿に記載された土地の面積も、正確さを欠いているのが現状です。 地籍調査を行うことで、調査結果をもとに地図が更新され、登記簿の情報も修正されます。 地籍調査の流れ 地籍調査は、市町村が主体となって行われます。市町村の職員が直接実施する場合と、委託された民間会社が実施する場合がありますが、どちらも以下の流れで進められるのが一般的です。 ①説明会の実施 市町村が地籍調査の関係機関と調整を行い、住民からの要望も踏まえて地籍調査の実施計画を作成します。その後、調査実施地域の住民に対して説明会を行い、調査内容や必要性、日程などについて説明します。 ②境界の確認(一筆地調査) 土地所有者の立ち合いのもと、現地で一筆地ごとに所有者や地番、地目を調査します。確認した境界には、各筆の土地の境界がわかるように杭を打ちます。この杭は測量の基準となる重要なもので、破損しないように保存する必要があります。 ③地籍測量、地籍図・地籍簿の作成 土地所有者などに確認してもらった土地の境界の測量(地籍測量)を行います。測量結果をもとに正確な地図(地籍図)を作成し、各筆の面積を計算します。そして、一筆地調査と地籍測量の結果をまとめて地籍簿を作成します。 ④地籍調査の結果の確認 地籍調査をもとに作成された地籍図と地籍簿は、誤りがないかを土地所有者などに確認してもらいます。通常は市町村役場で閲覧でき、期間は20日間です。調査結果に誤りがあった場合は、申し出ることが可能です。必要に応じて修正が行われ、地籍調査の結果が確定します。 ⑤地籍図と地籍簿を登記所へ送付 地籍調査によって作成された地籍図と地籍簿の写しが、登記所に送付されます。登記所では、これまでの地図の代わりに地籍図が備え付けの正式な地図となり、地籍簿をもとに登記簿が修正されます。 出典)国土交通省「地籍調査の流れ」 地籍調査を実施することで得られる効果 地籍調査によって、以下のような効果が期待できます。 土地境界をめぐるトラブル防止 土地の境界が不明確な地域では、土地の売買や相続などをきっかけに、隣人との間で境界を巡るトラブルが発生することがあります。地籍調査を実施し、土地所有者の立ち合いのもと境界を確認することで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。 土地の有効活用の促進 地籍が不明確であることは、土地取引の円滑化や開発事業を妨げる要因です。一部の地籍の問題で、再開発事業がなかなか進まない事例もあります。地籍が明確化されることで、土地取引や開発事業用地の取得を円滑に行うことが可能です。 災害復旧の迅速化 地震や土砂崩れ、水害などにより土地の形状が変わってしまった場合、土地の境界に関する正確な記録がないと、復旧計画の作成などに時間がかかります。地籍調査により土地の境界を正確に記録することで、万が一災害が発生した場合は円滑に復旧活動を行うことが可能です。 課税の適正化と公平化 土地の所有者に対して課税される固定資産税は、必ずしも正確ではない登記簿や公図のデータを参考にしています。そのため、正確な土地の実態が反映されず、課税について不公平な取り扱いとなっている場合があります。地籍調査で土地一筆ごとの正確な地目と面積を把握することで、課税の適正化や公平化が図れます。 地籍調査が進まない要因 地籍調査は昭和26年から実施されていますが、思うように進んでいないのが現状です。令和4年度末における進捗率は、対象地域全体で52%、優先実施地域で80%です。なお、優先実施地域とは、調査対象地域から以下2つを除いた地域のことをいいます。 土地区画整理事業等の実施により地籍が一定程度明らかになっている地域 大規模な国有地や公有地等の土地取引が行われる可能性が低い地域 地籍調査は、特に都市部と山村部で進捗が遅れています。 都市部は、他の地域より一筆ごとの土地が細かく分割されています。土地の権利関係が複雑であるため、多くの費用と時間がかかっています。また、都市部の住民はトラブル回避のために隣人との接触を避ける傾向にあり、調査への協力を得られないことが多いのも調査が進まない理由です。 山村部は、土地取引が少なく調査に費用がかかるため、市町村にとって調査の優先度が低いです。急傾斜地など調査が困難な地域が存在すること、土地所有者の高齢化が進行していることも調査を困難にしています。 出典)国土交通省「全国の地籍調査の実施状況」 地籍調査を迅速化する取り組み 国土交通省は、地籍調査をより迅速に進めるための取り組みを、都市部と山村部それぞれで以下のように進めています。 都市部での取り組み 都市部では、地籍調査の先行調査の位置づけで官民境界等先行調査(街区境界調査)が創設されました。道路等に囲まれた官民境界(街区境界)のみを先行して調査します。この調査によって、未着手だった地域の災害復旧の迅速化や土地所有者の情報更新など、一定の効果が期待できます。 この官民境界等先行調査について国土交通省が行ったアンケートによると、官民境界等先行調査を、先行調査の成果としてではなく地籍調査の成果として扱うべきとの意見が多いことが分かっています。 都市部で地籍調査を実施する困難さから、官民境界等先行調査の位置付けが変更されるかが、今後の焦点となりそうです。 山村部での取り組み 山村部では、航空レーザ測量などを活用し、測量に立ち合いもなく立地にも左右されない手法が開発されました。広域の詳細な地形や樹高分布、樹種の把握を短時間で行うことができます。 この新手法について国土交通省が行ったアンケートによると、新たな手法に対する不安やノウハウ不足から、活用意欲を示す市町村が少ないことが分かっています。一方でこの手法は山村部で地籍調査が進まない原因をほとんど解決できる手法ではあるため、市町村への理解が得られて普及していくかが、今後の焦点となりそうです。 出典) ・国土交通省「地籍調査について」 ・国土交通省「地籍調査の実施主体に対するアンケート調査結果①」 まとめ 地籍調査は、境界トラブル防止や土地の有効利用、災害復旧の迅速化といった効果を得られるため、重要な調査といえます。土地を所有していて地籍調査の案内が来た場合は、隣人とのトラブルを防ぐためにも調査に協力しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 筆界特定制度とは?活用できる場面や申請の流れ、費用を解説 筆界特定制度は、法務省が管轄する制度の一つです。本制度が定められるまで、土地の境界に関する紛争が起きた際、従来は裁判で解決するしかありませんでした。しかし、「筆界特定制度」を利用することで、...記事を読む

    2023.10.25用語
  • 支払督促とは

    支払督促とは?かかる費用と手続きの流れをわかりやすく解説

    支払督促は、お金の未払いに関するトラブルを解決できる法的手続きのひとつです。お金を返してもらえなくて困っている場合、支払督促を利用すれば、裁判をしなくても迅速に問題を解決できる可能性があります。 この記事では、支払督促の概要や費用、手続きの流れをわかりやすく解説します。 支払督促とは 支払督促とは、債権者からの申立てに基づいて、簡易裁判所の書記官が債務者に金銭の支払いを命じる制度です。書類審査のみで手続きが行われるため、以下の金銭に関する未払い、未返還などのトラブルを、迅速に解決できる可能性があります。 <支払督促の対象となるもの> 貸金、立替金 売買代金 給料、報酬 請負代金、修理代金 家賃、地代 敷金、保証金 債務者からの異議申立てがなければ、確定判決と同様の効力が生じます。 出典)政府広報オンライン「「お金を払ってもらえない」とお困りの方へ 簡易裁判所の「支払督促」手続をご存じですか?」 支払督促の特徴 支払督促には以下のような特徴があります。 書類審査のみで手続きが行われる 債権者の申立てのみに基づき、簡易裁判所の書記官が金銭の支払いを命じる 支払督促をしても相手方が金銭を支払わない場合、強制執行の申立てが可能 裁判所に納める手数料は通常の訴訟の半額 通常の訴訟とは異なり、債権者(申立人)が裁判所に出向いたり、証拠を提出したりする必要はありません。簡易裁判所の書記官が債務者(相手方)の言い分を聞くことなく、申立内容のみに基づいて支払督促を発付します。 支払督促が発付されても相手方が金銭を支払わず、異議申立てもしない場合は、裁判所に「仮執行宣言の申立て」を行うことで、強制執行の申立てが可能です。強制執行とは、債務者の財産を差し押さえるなどして、裁判所が強制的に申立人の債権を回収する手続きです。 出典)政府広報オンライン「「お金を払ってもらえない」とお困りの方へ 簡易裁判所の「支払督促」手続をご存じですか?」 支払督促ができない場合 以下の場合は、支払督促ができないので注意が必要です。 金銭の支払いを目的としない(建物の明渡しなど) 債務者の住所がわからない 債務者が日本以外に居住している 書類を郵送して手続きを行うため、相手方の住所が判明している必要があります。 出典)裁判所「支払督促の申立について」 支払督促手続きの流れ 支払督促の申立ては、以下の流れで進めます。 支払督促申立書の提出 裁判所の審査 支払督促の発付 各手続きの内容を確認していきましょう。 1.支払督促申立書の提出 申立書に必要事項を記入して、債務者の住所を管轄する簡易裁判所に提出します。提出時には、手数料と相手方に書類を送付するための郵便切手などが必要です。申立書は裁判所のホームページからダウンロードできます。手数料については、後ほど詳しく説明します。 2.簡易裁判所の審査 簡易裁判所の書記官が、申立書の内容に不備や法律違反などがないかを確認します。債務者側の意見は聞かず、申立ての内容だけで判断されるのが特徴です。問題があれば補正を求められたり、却下されたりすることもあります。 3.支払督促の発付 審査に通過すると、裁判所の書記官は支払督促を発付し、申立者には発付通知が届きます。債務者は、納得できなければ支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申立てが可能です。異議のあるなしで、その後の流れは変わります。 債務者から異議申立てがあった場合 債務者からの異議申立てを裁判所が受理すると、支払督促は効力を失い、通常の訴訟手続きに移行します。債権者の主張は、訴訟において審理が続けられます。 債務者から異議申立てがなかった場合 債務者から異議申立てがない場合は、仮執行宣言の申立てが可能です。なお、仮執行宣言の申立てを相手方が支払督促を受領して2週間を経過した日から30日以内に行わない場合、支払督促が失効します。 申立ての内容に問題がなければ、裁判所の書記官は「仮執行宣言付支払督促」を相手方に送達します。仮執行宣言付支払督促を送達後、相手方が異議申立てをしたときは訴訟手続きに移行し、相手方からの支払いがない場合は強制執行となります。 出典) ・政府広報オンライン「「お金を払ってもらえない」とお困りの方へ 簡易裁判所の「支払督促」手続をご存じですか?」 ・法務省「督促手続について」 支払督促にかかる費用 支払督促には、以下のような費用がかかります。 申立手数料:収入印紙代(下記参照) 支払督促正本送達費用(郵便切手代):債務者の数×1,204円分*1 申立書作成及び提出費用:800円*2 支払督促発付通知費用(郵便切手代):84円 資格証明書手数料(法人の場合):600円 送達結果通知費用(官製はがき代):債務者の数×63円 ※1 申立書が7枚以下なら1,204円、申立書が8枚以上なら1,250円、16枚以上ならさらに切手代が増えることがあります。 ※2 この800円は、債権者が裁判所に支払うものではなく、支払督促を申立てる人(債権者)が債務者に請求できる法令で定められた費用です。 出典)裁判所「支払督促の申立てについて」 申立手数料は、請求金額に応じて以下のように定められています。 請求金額 申立手数料 100万円以下 10万円ごとに500円 100万円超 500万円以下 20万円ごとに500円 500万円超 1,000万円以下 50万円ごとに1,000円 1,000万円超 10億円以下 100万円ごとに1,500円 10億円超 50億円以下 500万円ごとに5,000円 50億円超 1,000万円ごとに5,000円 <例:請求金額が300万円の場合> ①100万円以下の部分:500円×(100万円÷10万円)=5,000円 ②100万円超500万円以下の部分:500円×(200万円÷20万円)=5,000円 ⇒申立手数料:1万円(①+②) 申立ての際は、相手方への送達や申立人への通知のため、郵便切手や郵便はがきも必要です。当事者の一方または双方が法人の場合は、代表者の資格を証明する書類として、各法人につき登記簿謄本を1通提出します。 出典)裁判所「手数料(別表)」 支払督促を受けた場合は? 万が一、支払督促を受けた場合は、内容を確認のうえ速やかに対応しましょう。異議がある場合は、同封の用紙を使用して、受領から2週間以内に異議申立てを行います。最近では、支払督促を悪用した架空請求の事例も報告されているため注意が必要です。 異議がない場合は、強制執行になる前に支払いを完了させましょう。なお、自分で対応することが難しいと判断した場合、弁護士に相談するといいでしょう。 まとめ 支払督促を利用すれば、簡易的な手続きでお金の未払いに関するトラブルを解決できるかもしれません。ただし、相手方が異議申立てを行うと訴訟に移行することになります。お金を払ってもらえなくて困っている場合は、支払督促の申立てを検討してみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 債務整理とは?メリット・デメリットを解説 債務整理は、借金の悩みを解決する方法のひとつです。住宅ローンやキャッシング等の返済が難しい場合は、債務整理を行うことによって生活を立て直せる可能性があります。この記事では、債務整理の概要や4...記事を読む

  • ハザードマップとは?使い方や活用ポイントを解説

    ハザードマップとは?使い方や活用ポイントを解説

    マイホームなどの不動産を購入する前に、必ず確認しておきたいのが「ハザードマップ」です。日本は自然災害が多く、建物に被害が生じるリスクがあります。住宅購入などの重大な決断の際には、ハザードマップの見方を理解して、自然災害リスクの低い地域を選ぶことが重要です。 この記事では、ハザードマップで確認できる自然災害の種類や見方、活用ポイントを詳しく解説します。 ハザードマップとは ハザードマップとは、自然災害リスクの高い地域や避難場所、避難経路などを表示した地図のことです。地震や土砂災害などによる被害の軽減や防災対策に使用することを目的としており、国や市区町村が提供しています。 ハザードマップを見れば、災害の種類ごとに被災想定地域やリスクの高さ、避難場所などを確認できます。 ハザードマップで確認できる自然災害の種類 ハザードマップで確認できる主な自然災害の種類は以下のとおりです。 洪水 内水 土砂災害 高潮 津波 地震 火山 洪水は河川の氾濫を意味するのに対し、内水は大雨で排水できず、マンホールなどから水が溢れることを意味します。 ハザードマップは想定される被害に応じて地図上の色が変わるため、一目でリスクの高い地域を把握することが可能です。 日本における自然災害の発生状況 日本は傾斜が急な山が多いため、台風や大雨により、がけ崩れや土石流、地すべりなどの土砂災害が多く発生しています。政府広報オンラインによれば、2022年の土砂災害発生件数は795件です。直近10年間は、平均して年間1,446件もの土砂災害が発生しています。 また、日本は地震が多い国でもあります。2011年に発生した東日本大震災では、12万棟を超える住宅が全壊するなど甚大な被害が出ました。以降も2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震などの大地震が発生しており、住宅の全壊や半壊、一部破損といった被害が出ています。 これらの自然災害から身を守るには、ハザードマップを活用して日頃から必要な備えをしておくことが重要です。 出典) ・政府広報オンライン「土砂災害から身を守る3つのポイント あなたも危険な場所にお住まいかもしれません!」 ・気象庁「日本付近で発生した主な被害地震」 ハザードマップの使い方 国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、「重ねるハザードマップ」と「わがまちハザードマップ」の2種類を提供しています。それぞれの使い方を紹介します。 ▼ハザードマップポータルサイトトップ 出典)国土交通省「ハザードマップポータルサイト」 重ねるハザードマップ 重ねるハザードマップの使い方は以下のとおりです。 ハザードマップポータルサイトにアクセスする 調べたい地点の住所を入力する、または地図上で選ぶ 災害種別を選択する 具体例として、災害種別で「洪水」と「道路防災情報」を選択した、東京駅周辺のハザードマップを見てみましょう。 ▼東京駅周辺のハザードマップ ※編集者が赤文字で一部加工 出典)国土交通省「ハザードマップポータルサイト」 洪水により浸水が想定される地域は、水の高さに応じて色が変わっています。また、浸水のリスクがある道路も警告のマークが表示されています。 わがまちハザードマップ 続いて、わがまちハザードマップの使い方は以下のとおりです。 ハザードマップポータルサイトにアクセスする 閲覧したい市区町村とハザードマップの種類を選択する 「この内容で閲覧」ボタンを押し、市区町村のページにアクセスする 市区町村が提供しているハザードマップを確認する 市区町村が作成したハザードマップを閲覧できるため、より詳しい情報を確認することが可能です。ただし、市区町村によって作成・公開しているハザードマップの種類は異なります。 ハザードマップの活用ポイント マイホームなどの不動産を取得する場合は、物件購入前にハザードマップを確認しておくことが大切です。ここでは、ハザードマップの活用ポイントを3つ紹介します。 ①自然災害リスクの有無を確認する まずは、購入物件の周辺地域にどんな自然災害リスクがあるかを確認しましょう。地形や河川の有無などによって、想定される自然災害の種類やリスクの高さは異なります。また、同じ市内でも、場所によって自然災害リスクは変わってきます。 ハザードマップで被災想定地域を確認すれば、リスクの低い地域の物件を選択することが可能です。 ②災害発生時の避難場所を把握する ハザードマップ上では自然災害リスクは低くても、必ずしも被害に遭わないとは限りません。万が一に備えて、避難場所や避難経路を把握しておくことが大切です。 ハザードマップでは避難場所だけでなく、その避難場所が対応している災害の種別が表示されるので、事前に確認しておきましょう。避難場所の確認は家族全員で行っておくことも大切です。 ③交通規制の可能性を確認する 自然災害が発生すると、交通規制でいつも利用している道路が通行できなくなる恐れがあります。周囲に比べて標高が低い地域では、道路が冠水することもあります。 帰宅時や避難時にあわてずに済むように、周辺に交通規制が発生しやすい道路がないかを確認しておきましょう。 まとめ 日本は自然災害が多く、誰しもが自然災害に遭うリスクを抱えています。建物への被害を最小限に抑えるためにも、物件購入前にハザードマップで自然災害リスクを把握しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 日本は「地震大国」と言われており、過去には巨大地震が発生して住宅が倒壊するなどの被害が生じています。地震による建物や家財の被害に備えるには、地震保険を付帯するのが有効です。万が一被害にあった...記事を読む

  • マンションの大規模修繕工事 とは?工事内容や修繕積立金についても解説

    マンションの大規模修繕工事とは?工事内容や費用について解説

    マンションは築年数の経過とともに建物や設備が老朽化していくため、いずれは大規模修繕工事が必要になります。大規模修繕工事は、建物の劣化や設備の交換などに対応する工事であり、マンション所有者の暮らしにも影響が出てくるものなので、あらかじめ概要を理解しておくことが大切です。 マンションの大規模修繕工事とは 大規模修繕工事とは、建物の全体又は複数の部位について行う大規模な計画修繕工事をいいます。例えば、全面的な外部足場が必要な外壁塗装と屋上防水等を同時に行う場合などです。なお、大規模修繕工事は法律等で義務付けられたものではありません。 国土交通省が実施した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事を行っているマンションのうち、約7割が12~15年周期で大規模修繕工事を行っている、という結果が出ています。 出典) ・国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」 ・国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」 大規模修繕工事の内容 大規模修繕工事は大きく3つの工事に分類できます。 ①建築系工事 建築系工事とは、マンションの建物部分を修繕するための工事です。マンションの共用部分の補修も含まれます。具体的には以下の工事が挙げられます。 ・屋根や床の防水工事 ・外壁の塗装やタイル張り ・シーリング工事 ・鉄部塗装 ・建具金物の修繕や取替 大規模修繕工事のほとんどは建築系工事です。「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事の回数を重ねるにつれて、全体の大規模修繕工事費用に対する建築系工事の費用割合が増加していく、という結果が出ています。 出典)国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」 ②設備系工事 設備系工事とは、マンション内のインフラを整えるための工事です。具体的には以下の設備に対する工事が挙げられます。 ・給水、排水設備 ・ガス設備 ・空調、換気設備 ・電灯設備 ・情報・通信設備 ・消防用設備 ・昇降機設備 ・駐車場設備 「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、建築系工事と同様に大規模修繕工事の回数を重ねるにつれて、全体の大規模修繕工事費用に対する設備系工事の費用割合が増加していく、という結果が出ています。一方で、建築系工事と設備系工事のそれぞれにかかる費用を比較すると、設備系工事はかなり小さい金額となっています。 出典)国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」 ③仮設工事 仮設工事は、足場や作業員用の事務所や資材置き場など、建築系工事や設備系工事を進める前の準備にあたる工事です。マンションの修繕とは直接関係のないものの、大規模修繕工事を進めるために必ず必要です。「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事の回数を重ねるにつれて、全体の大規模修繕工事費用に対する仮設工事の費用割合が減少していく、という結果が出ています。 出典)国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」 大規模修繕工事にかかる費用 修繕積立金とは 大規模修繕工事に必要な費用は、マンションの管理組合が毎月マンション所有者から徴収する「修繕積立金」から支払われます。そのため、マンション所有者に対して急に高額な費用負担が発生するようなことはほとんどありません。一方で、毎月支払うことになる「修繕積立金」についてはしっかりと把握しておく必要があります。 国土交通省が公表している「平成30年度 マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」によると、修繕積立金の全国平均額は11,243円です。なお、過去の調査結果と比較をすると、修繕積立金は上昇傾向です。 出典)国土交通省「平成30年度 マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」 修繕積立金の積立方法 修繕積立金の積立方法は、大きく2つに分類されます。 1つ目は、月々の修繕積立金が一定である「均等積立方式」です。あらかじめ立てた長期修繕計画に基づき、必要な費用から逆算して必要額が算出されます。なお、長期修繕計画の見直しに合わせて必要な費用及び月々の修繕積立金額も調整されることがあります。全く変動しないわけではないので注意しましょう。 2つ目は、修繕の必要性に合わせて月々の修繕積立金を段階的に増額していく「段階増額積立方式」です。新築マンションであれば修繕積立金を抑えられる一方で、築年数が経つにつれて増額していくことになる、一長一短な積立方式です。急な増額によってマンション所有者の負担が増えてしまい、場合によってはトラブルになる恐れもあるので注意が必要です。 どちらの方式であっても、適切な長期修繕計画に基づいて積立が行われているかが重要です。今住んでいるマンションの長期修繕計画を確認したうえで、今後の修繕積立金の金額についても把握しておきましょう。 まとめ 大規模修繕工事を行うことで、以前よりも快適な住環境を手に入れることができ、建物の資産価値を保つことにもつながります。マンション所有者である以上大規模修繕工事は他人事ではありません。マンションに住む以上、大規模修繕工事の概要をしっかり押さえ、工事に備えておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マンションの資産価値の調べ方は?基準もあわせて紹介 マンションを購入する際には、将来的な資産価値の変化にも目を向けて判断することが大切です。この記事では、マンションの資産価値に影響を与える要因や、資産価値の調べ方について解説します。 マンショ...記事を読む

    2023.05.17用語
  • 公示価格とは?実勢価格との違いとその活用法を解説

    公示価格とは?実勢価格との違いと活用法をわかりやすく解説

    公示価格(公示地価)は、国土交通省が公示している土地の価格です。土地価格の動向を示す重要な指標ですが、実勢価格(実際の取引価格)とは何が違うのでしょうか。特に土地を売買する予定がある人は、公示価格について理解しておくことが大切です。 この記事では、公示価格の概要や調べ方、活用する際の注意点について解説します。 公示価格とは 公示価格(公示地価)とは、適正な地価の形成に寄与するために、国土交通省土地鑑定委員会が毎年3月に公示する標準地の価格です。 地価公示法に基づいて、全国の分科会に属する鑑定評価員(不動産鑑定士)が毎年1月1日時点の1㎡あたりの正常な価格を判定しています。令和5年地価公示では、全国約26,000地点で実施されました。 公示価格は、一般の土地取引に対して指標を与えるもので、不動産鑑定や公共事業用地の取得価格算定の規準となります。また、土地の相続税評価や固定資産税評価の基準としても活用されます。 公示価格を調べる方法 公示価格は、国土交通省の「標準地・基準地検索システム」で調べることが可能です。地図上で調べたい都道府県名や市町村名を選択し、検索条件を入力すると、地価情報の詳細が表示される仕組みになっています。 具体例として、神奈川県横浜市西区の公示価格を確認してみましょう。 ▼まずは地図上で神奈川県を選択します。   ▼次に、地図上で横浜市西区を選択しましょう。 ▼検索条件指定の画面が表示されたら、「対象」「調査年」「用途区分」「地価」について選択もしくは入力を行い、検索ボタンを押します。 ▼検索結果が表示された後、「詳細を開く」や「標準地番号」のリンクを押すと、地価情報の詳細が表示されます。 複数の地域を選択して検索したり、詳細な地名を入力して検索したりすることも可能です。 出典)国土交通省「不動産情報ライブラリ」 公示価格と他指標との違い 土地価格の指標は複数存在し、「一物五価」と言われることもあります。具体的には、「公示価格(公示地価)」「実勢価格」「基準地価」「路線価」「固定資産税評価額」の5つです。 ここでは、公示価格とそれぞれの語句との違いを説明します。 実勢価格との違い 実勢価格とは、実際に取引された土地価格のことです。土地の価格は需要や立地、周辺環境、当事者間の価格交渉などの影響を受けて変動するものなので、同じ標準地にある土地であっても、公示価格と実勢価格は一致しません。 公示価格と実際に取引される土地価格は異なることを理解し、一つの指標として活用することが大切です。 基準地価との違い 基準地価とは、国土利用計画法に基づき、都道府県知事が毎年7月1日時点における標準価格を判定する土地価格です。適正な地価の形成を目的として、毎年9月頃に公表されます。令和4年の基準地数は約21,000地点です。 公示価格との違いは下記のとおりです。 公示価格 基準地価 調査名国土交通省地価公示都道府県地価調査 調査主体国土交通省都道府県 根拠法地価公示法国土計画利用法 基準日毎年1月1日毎年7月1日 公表時期毎年3月毎年9月 評価方法不動産鑑定士2名以上による鑑定評価不動産鑑定士1名以上による鑑定評価 公示価格は1月1日時点、基準地価は7月1日時点と基準日に違いがあるため、基準地価は公示価格を補完する指標として活用されることがあります。 路線価との違い 路線価とは、相続税や贈与税における評価額の基準となる土地の価格です。一連の土地が面している路線ごとに評価した、1㎡あたりの土地価格を意味します。毎年1月1日を評価時点として、国税庁がその年の7月に公開しています。公示価格の80%程度が目安です。 路線価は、国税庁が運営するサイト「路線価図・評価倍率表」で確認できます。 出典)国税庁「路線価図・評価倍率表」 関連記事はこちら相続時の不動産評価方法は?評価に関する特例も併せて解説 固定資産税評価額との違い 固定資産税評価額とは、固定資産税を計算する際の基準となる価格です。市町村の固定資産台帳に記載された土地の評価額を意味し、3年に1回「評価替え」が行われます。宅地については、公示価格の70%程度が目安です。 固定資産税評価額は、市町村から送付される固定資産税の納税通知書で確認できます。また、固定資産評価証明書の発行や固定資産台帳の閲覧を自治体の担当部署に依頼し、確認することも可能です。 公示価格の活用法 土地売買の際に公示価格を参照するのは、適切な売却価格かを判断する上で有効です。一方で、公示価格を指標として用いる上で、以下の特徴を把握しておくことが大切です。 地価は変動するので、公示価格と実際に取引する日の地価は異なる 公示価格が高い標準地の土地であっても、立地や周辺環境などの条件が悪ければ金額が低くなることがある 公示価格を算出する標準地は、都会には多いが地方には少ないため、土地の所在地によっては参考にならない場合がある 土地を売買する場合は不動産会社の査定価格を鵜呑みにするのではなく、公示価格や基準地価など、複数の指標と比較して問題ないかを確認した上で、売買判断を行うことが大切です。上記公示価格の特徴を正しく理解し、有効に活用しましょう。 まとめ 公示価格は、国土交通省が毎年公示していることから、信用度の高い土地価格といえます。ただし、公示価格と実勢価格は必ず一致するものではないため、参考程度にすることが大切です。実際に土地を売買する際は、公示価格だけでなく、基準地価や査定価格なども確認した上で売買判断を行いましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マンションの資産価値の調べ方は?基準もあわせて紹介 マンションを購入する際には、将来的な資産価値の変化にも目を向けて判断することが大切です。この記事では、マンションの資産価値に影響を与える要因や、資産価値の調べ方について解説します。 マンショ...記事を読む

  • 地目変更はどんなときに必要?検討すべきケースや手続き方法、費用について解説

    地目変更を検討すべきケースとは?手続きの方法と費用も解説

    土地は、その用途によって地目が定められています。保有している土地の使用方法が変わった場合は、地目変更の手続きが必要です。地目変更はどんなときに求められるのでしょうか。また、自分で行うことは可能なのでしょうか。 この記事では、地目変更の概要や検討すべきケース、手続き方法などを解説します。 地目変更とは 地目とは、土地の用途による分類のことです。地目変更は、土地の用途に変更があったときに登記上の地目を変更することを意味します。 地目:土地の用途による分類であって、第三十四条第二項の法務省令で定めるものをいう。(不動産登記法 第2条18) 出典)e-Gov法令検索(不動産登記法) 地目の種類 不動産登記事務取扱手続準則第68条において、地目は23種類に区分されています。主な地目とその用途は以下のとおりです。 地目 用途 田農耕地で用水を利用して耕作する土地 畑農耕地で用水を利用しないで工作する土地 宅地建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地 学校用地校舎、附属施設の敷地及び運動場 山林耕作の方法によらないで竹木の生育する土地 水道用地専ら給水の目的で敷設する水道の水源地、貯水池、ろ水場又は水道線路に要する土地 公衆用道路一般交通の用に供する道路(道路法による道路であるかどうかを問わない。) 公園公衆の遊楽のために供する土地 雑種地他の22地目のいずれにも該当しない土地 出典)法務省「不動産登記事務取扱手続準則 第68条」 なお、地目には「登記地目」と「課税地目」があります。 登記地目は、上述した不動産登記法で定められている地目のことで、登記簿で確認することができます。土地の利用状況が変化しても、申請を行わないと登記地目は変更されません。 一方、課税地目は、固定資産税の算出根拠となる地目のことで、毎年送られてくる固定資産税納税通知書や、市役所等で取得できる固定資産評価証明書で確認することができます。市区町村や税務署が現地調査によって判定しており、現況に変化があれば自動的に変更されるため、登記地目と課税地目が異なる場合もあります。 地目変更を検討すべきケース 地目変更を検討すべきケースは以下のとおりです。 土地の利用目的を変更したとき 所有している土地の利用目的を変更する場合は、地目変更が必要です。例えば、田や畑として使っていた土地を宅地に造成して家を建てるようなケースが該当します。 土地を担保に融資を受けたいとき 土地を担保に融資を受けるときは、地目と土地の使用目的が一致していることが条件となる場合があります。不一致の場合は融資を受けられない恐れがあるため、地目変更をしておくと安心です。 土地を売却したいとき 地目と土地の使用目的が異なる場合、売却前に地目変更をしておく必要があります。 田・畑などの農地は買い手が農家に限られるため、思うように売却できないかもしれません。場所や周辺環境にもよりますが、宅地に造成し、地目変更してから売りに出すほうが買い手を見つけやすいでしょう。 地目変更登記に関する注意点 地目変更の登記手続きを行う場合は、以下の点に注意が必要です。 期限までに変更しないと罰則がある 土地の用途に変更があった場合、その変更があった日から1ヵ月以内に地目変更登記の申請を行わなくてはなりません。申請を怠ると10万円以下の過料が科されるので、忘れずに手続きを行いましょう。 地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。(不動産登記法 第37条) 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条又は第五十八条第六項若しくは第七項の規定による申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。(不動産登記法 第164条) 出典)e-Gov法令検索(不動産登記法) 関連記事はこちら住所変更登記等の義務化はいつから?手続き方法や注意点も解説 固定資産税は地目ではなく現況で判断される 上述のとおり、地目には「登記地目」と「課税地目」があり、固定資産税の計算上は土地の現況(課税地目)で判断されます。例えば、登記地目が「畑」である土地を宅地として使用していれば、宅地とみなして課税されます。 農地と宅地の固定資産税額(本則)は、どちらも「課税標準額×1.4%」で変わりません。しかし、課税標準額は宅地のほうが大きくなることが多いため、結果として宅地は税額が高い傾向にあります。 地目変更の手続き方法 地目変更は、内容を正しく理解できれば自分で手続きを行うことも可能です。手続きの流れは以下のとおりです。 土地の登記地目を調べる 土地の現況を確認する 地目変更登記の申請を行う まずは、手元にある登記識別情報などで土地の登記地目を調べましょう。土地の現況を確認し、地目と現況が違っている場合は地目変更登記の申請を行います。申請から登記完了までは、1~2週間程度かかるのが一般的です。 地目変更登記の必要書類 地目変更登記の主な必要書類は以下のとおりです。 土地地目変更登記申請書 登記事項証明書 農地転用許可書(農地を変更する場合) 土地地目変更登記申請書を法務局の窓口またはホームページで入手し、必要事項を記入して法務局に提出します。登記記録の内容を記入するため、土地の登記事項証明書も取得しておきましょう。 なお、田や畑などの農地を農地以外の地目に変更する場合は、都道府県知事の許可書も添付する必要があります。 地目変更登記にかかる費用 地目変更登記に登録免許税はかかりませんが、登記事項証明書を取得する際に、1通につき480円~600円の発行手数料がかかります。また、他の書類が必要な場合は、その発行費用がかかる場合があります。 地目変更登記を土地家屋調査士などに依頼する場合は、別途報酬を支払う必要があります。依頼先によって異なりますが、土地1筆(1個)につき5万円程度が相場となっています。 まとめ 保有している土地の用途に変更があった場合は、地目変更登記が必要です。申請を怠ると過料を科される可能性があり、売却などに支障が出る恐れもあります。地目変更を自分で行うのが難しい場合は、土地家屋調査士などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 「用途」からみた土地の種類 不動産は、「土地」と土地の上に建っている「建物」から構成されています。そして、土地にはさまざまな分類方法によって定義される「種類」があります。不動産を売却したり、ローンの担保とする場合、土地...記事を読む

    2023.03.29用語
  • リフォーム瑕疵保険とは?加入方法や適用条件を解説

    リフォーム瑕疵保険とは?加入方法や適用条件を解説

    住宅のリフォームを検討する際は、工事の依頼先を慎重に選ぶことが重要です。しかし、何らかのトラブルが生じたときに備えて、補償を受けられる保険に加入しておきたいと考えることもあるでしょう。 もしもの場合に備えた保険として、リフォーム瑕疵保険というものがあります。この記事では、リフォーム瑕疵保険の基本的な仕組みや加入方法、適用条件などを解説します。 リフォーム瑕疵保険とは リフォーム瑕疵保険とは、リフォーム時の検査と保証がセットになった保険制度です。国土交通大臣が指定した住宅専門の保証会社である、住宅瑕疵担保責任保険法人(以下保険法人という)が保険を引き受けます。2023年3月時点で指定されている保険法人は以下のとおりです。 株式会社住宅あんしん保証 住宅保証機構株式会社 株式会社日本住宅保証検査機構 株式会社ハウスジーメン ハウスプラス住宅保証株式会社 リフォーム工事業者(以下事業者という)側が上記5法人のいずれかと保険契約を締結することで、リフォーム瑕疵保険に加入できます。リフォーム瑕疵保険へ加入する義務はないため、基本的にはリフォーム発注者(以下発注者という)側が事業者側に依頼をして加入してもらう流れになります。 リフォーム瑕疵保険の保証期間 リフォーム瑕疵保険では、リフォームの内容によって保証期間が1年・5年・10年(増築特約)のいずれかになります。各期間のリフォーム内容は以下のとおりです。 保証期間1年 壁のひび割れや建具の不具合などが該当します。建物の構造上は問題がないものでも、社会通念上において必要とみられる部分について保険金が支払われます。 保証期間5年 柱・壁などの構造上必要な部分や屋根・外壁など防水機能を保つ必要がある部分などが該当します。十分な耐力性能、防水性能を満たしていないときに保険金が支払われます。 保証期間10年(増築特約) 増築工事を行う場合は、基礎部分を追加する場合の工事のみが10年の保証対象となります。適用条件については保証期間5年の場合と同様ですが、増築工事部分の内装工事などは含まれないので注意が必要です。 リフォーム瑕疵保険の保険金額 工事に欠陥が見つかった場合に施主に対して支払われる保険金額については、あらかじめルールが定められています。一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会によれば、支払いの対象となるのは事故を補修するための費用、もしくは方法などを決めるための調査費、転居または仮住まいを余儀なくされたときに発生する費用となっています。 また、保険金の計算式については次のとおりです。 保険金支払額=(修補費用等-10万円)×80% 上記計算式のとおり、かかった費用の100%分の保険金が事業者に支払われるわけではなく、足りない部分は事業者が負担することになります。ただし、リフォーム工事を行った事業者が倒産した場合には、居住者に対して100%の金額が支払われます。万が一修理が必要になっても、発注者側に負担が発生しないような仕組みになっているのが特徴です。 リフォーム瑕疵保険のメリット リフォーム瑕疵保険に加入するメリットは以下のとおりです。 第三者の検査が受けられる リフォーム瑕疵保険では、発注者と事業者のどちらとも利害関係のない第三者検査員(建築士)によって、現地検査が行われます。また、検査基準が設計施工基準によって明確に定められています。専門的知識を持った第三者が明確な基準に則って検査を行っているため、質の高い施工を確保できます。 基本的にすべてのリフォームが保証の対象となる リフォーム瑕疵保険では、発注者と事業者が締結した工事請負契約に基づくリフォームであれば、基本的にすべてのリフォームが保証の対象となります。ただし、外構や庭工事など、住宅の建物自体に付帯しないリフォームは対象外となります。 優良なリフォーム会社を見分ける1つの基準となる 事業者がリフォーム瑕疵保険に加入するには、先に紹介した保険法人が設ける一定の基準を満たし、事業者登録を受ける必要があります。さらに、一度加入した事業者であっても、保険事故(欠陥リフォーム)を多数起こしてしまった技術的な問題のある事業者は登録を抹消されます。したがって、リフォーム瑕疵保険に加入しているかどうかは、優良なリフォーム会社を見分ける判断基準の1つとなるでしょう。 なお、リフォーム瑕疵保険の加入事業者は一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会 のWebサイトで検索することができます。リフォーム事業者を選ぶ際には、リフォーム瑕疵保険に加入しているかどうかを確認してみましょう。 出典)一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会「かし保険を利用する登録事業者等の検索」 工事に瑕疵があっても安心 リフォーム後に瑕疵が見つかったとしても、事業者が保険法人に対して補償を求め、その保険金で修理を受けることができます。また、万が一事業者が倒産していた場合でも、発注者が直接保険法人に対して補償を求め、その保険金で別の事業者に修理を依頼できます。したがって、リフォーム瑕疵保険があれば、リフォームに瑕疵があっても安心です。 リフォーム瑕疵保険のデメリット リフォーム瑕疵保険への加入は多くのメリットがある一方で、少なからずデメリットも存在します。リフォーム瑕疵保険に加入するデメリットは以下のとおりです。 検査によって工期が延びる恐れがある リフォームが完了してから行われる現場での検査は、原則として1回となっています。ただし、リフォームの内容によっては工事の途中にも行われる場合があり、それによって工期が延びてしまう恐れがあるので注意が必要です。 入居日が後ろ倒しになる可能性もあるため、事前によく打ち合わせを行ったうえで、スケジュールに問題がないかを確認しておきましょう。 一方で、事業者以外の第三者機関が複数回検査に訪れてくれることは、発注者にとっては安心につながるので、デメリットだけであるとも限らないでしょう。 出典)住宅保証機構「まもりすまいリフォーム保険・まもりすまい大規模修繕かし保険手続き・設計施工基準・現場検査」 リフォーム瑕疵保険の適用条件と注意点 リフォーム瑕疵保険に入ることを検討するときは、加入方法や適用条件についても押さえておきましょう。対象となる住宅や工事内容などを解説します。 リフォーム瑕疵保険の対象となる住宅 リフォーム瑕疵保険の対象となる住宅の条件として、以下のものが挙げられます。 建物の一部にかかる増築や改修・補修の工事を行う住宅が対象 建物の構造や工法、築年数は問われない 「住宅保証機構指定の保証書」で、リフォーム工事請負契約に基づいた「瑕疵担保責任」の契約をしていること 設計施工事基準(住宅保証機構が定めているもの)に適合するリフォーム工事であること 「構造耐力上主要な部分」をリフォームする場合は、新耐震基準に適合した住宅であること あくまで住宅に関する部分に保険が適用されるため、外構部分や建物の解体などについては、保証対象外となります。 リフォーム瑕疵保険の加入方法 リフォーム瑕疵保険は、事業者が加入する保険です。事業者にリフォーム瑕疵保険の加入義務はないため、リフォーム瑕疵保険に加入したい場合はその旨を事業者側に伝える必要があります。 その後、既に事業者が保険法人に登録を受けている場合であれば、そのまま保険の申し込みに進めます。一方で、事業者がまだ登録を受けていない場合は、事業者登録に時間を要する恐れがあるので注意が必要です。 なお、保険の申し込みは事業者側が行いますが、発注者側も事業者から保険に関する説明を受ける、必要書類に記名押印をする、などの手続きを行う必要があります。 まとめ リフォーム瑕疵保険は検査と保険がセットになった仕組みであり、リフォーム工事で欠陥が見つかった際に必要な補償を受けられます。また、リフォーム工事が完了した後に、専門家による検査を受けられるので品質の高い工事が期待できるでしょう。 加入は事業者を通じて行う必要があるため、見積もりの際に伝えておく必要があります。もしものときに備えて、必要な準備を検討しておくことが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 【令和5年版】リフォーム減税の対象工事・申請の流れ・注意点 自宅のリフォームを行う際、内容によってリフォームの減税制度の対象となる場合があります。リフォームの減税制度にはいくつかの種類があるので、仕組みや条件、それぞれの特徴を正しく理解することが大切...記事を読む

  • 期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説

    期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説

    期限の利益とは、住宅ローンを借り入れた際などに生じる債務者の利益のことです。債権者は期限が到来するまで履行を請求できず、債務者にとっては債務に猶予が生まれるため“利益”となります。一方で、契約どおりに返済を行わないと期限の利益を喪失し、債務の一括返済を求められる恐れもあります。 この記事では、期限の利益の意味や喪失事由、注意点について解説します。 期限の利益とは 期限の利益とは、借り入れなどの債務に期限がつけられることによって生じる利益のことです。民法では、“期限”について以下のように定めています。 (民法136条1項) 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。 出典)民法(e-Gov法令検索) 住宅ローンの借り入れで考えてみましょう。「返済期間35年で融資額3,000万円、毎月10万円を返済する」という契約を締結したとします。仮に、債権者から「すぐに全額返済してほしい」と言われたとしても全額を払う必要はありません。債務者には期限の利益があるため、毎月10万円を支払い続け、35年で3,000万円返済すればいいのです。 期限の利益は放棄できる 一方で、債務者は期限の利益を放棄することもできます。民法では、期限の利益の放棄について以下のように定めています。 (民法136条2項) 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。 出典)民法(e-Gov法令検索) 条文に「相手方の利益を害することはできない」とあるように、民法上は期限より早く返済されても、債権者は利息を受け取る権利があります。一方で、金融機関からの借り入れであれば、繰り上げ返済によって利息が減額されるのが一般的です。 期限の利益の喪失とは 期限の利益の喪失とは、期限の利益が失われることです。つまり、債権者は期限の利益によって猶予されていた債務の履行を、債務者に請求できるようになります。期限の利益の喪失事由は契約ごとに定められており、期限の利益を喪失すると、債務の一括返済を求められる場合があります。 期限の利益を喪失したとしても、必ずしも一括返済を求められるわけではありません。一方で、期限の利益を喪失した事由によっては、即時返済を求められる恐れもあります。そのため、期限の利益の喪失事由は必ず契約前に確認し、回避するようにしましょう。 法律上の期限の利益の喪失事由 期限の利益の喪失事由は、「民法上で該当するか」「契約書上で該当するか」の2つで判断されます。民法では、期限の利益の喪失事由について以下のように定めています。 (民法137条) 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。 一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。 二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。 三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。 出典)民法(e-Gov法令検索) 民法で定義されている喪失事由は、破産手続きの開始や担保の滅失・損傷など、いずれも債権回収が困難となる場合です。一方で、実務では民法上で定めている事由より広範に、喪失事由を定めていることが多くあります。 契約条項の期限の利益の喪失事由 住宅ローンなどで締結する金銭消費貸借契約では、「期限の利益の喪失条項」を定めます。確実に債権回収を行うため、民法の規定よりも幅広く喪失事由を定めていることが一般的です。具体例は以下のとおりです。 返済の滞納 重大な契約違反(虚偽の申告、資金使途違反など) 債務整理(任意整理、個人再生など) 差押え 民法の規定に加えて、返済の滞納や、虚偽の申告や資金使途違反といった契約違反が発覚すると、期限の利益を喪失します。 民法では自己破産について定めていますが、多くの契約では、自己破産以外の債務整理も期限の利益の喪失事由に含まれます。また、別の債権者に財産を差し押さえられると債権回収が困難となるため、差押えを受けたときも期限の利益を喪失します。 期限の利益の注意点 借入金の返済では、一度でも期日に遅れたら期限の利益を喪失することも珍しくありません。残高不足で返済が遅れることがないように、引き落とし口座の残高管理などを徹底しましょう。 例えば、住宅ローンが残っている自宅を、債権者の許可なく不動産投資に利用する行為も期限の利益の喪失事由となります。ただし、あくまで債権者に無断で行うことが違反であるため、やむを得ない事情がある場合は債権者が承諾してくれる可能性もあります。あらかじめ必ず金融機関に相談しましょう。 関連記事はこちら住宅ローンが残っていても自宅を賃貸に出せる? 他にも、不動産を担保に借り入れをしている場合、担保価値の変動が生じるような変更をする際は、あらかじめ金融機関の承諾を得るよう記載がされています。“担保価値の変動”というと、リフォームやリノベーションも該当する可能性もあります。 消費者との契約のあり方として、消費者の権利の制限は「必要性からみて合理的かつ必要最小限と考えられる範囲に止められるべき」という見解があります。相談の結果、全く問題がないことも考えられますが、あらかじめ金融機関に連絡しておいた方が無難でしょう。 出典)一般社団法人全国銀行協会「消費者との契約のあり方に関する留意事項」 まとめ 債務者には期限の利益があるため、住宅ローンなどでまとまったお金を借り入れたときに分割返済が認められます。ただし、返済期日に遅れると期限の利益を喪失し、債務の一括返済を求められる恐れがあります。金銭消費貸借契約を締結する時には必ず「期限の利益の喪失条項」を確認し、抵触しないように注意しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 コロナ禍が追加!自然災害債務整理ガイドラインとは? コロナ禍による収入減で、住宅ローンの返済に苦しむ人も増えているようです。住宅ローンの返済が厳しくなったときにできることは何があるでしょう? また、2020年12月から「自然災害債務整理ガイド...記事を読む

  • 市街化区域とは?市街化調整区域との違いを解説

    市街化区域とは?市街化調整区域との違いを解説

    住宅や土地の購入を検討している中で、「市街化区域」「市街化調整区域」という言葉を聞くことはないでしょうか。 どちらも都市計画法で定められた地域で、土地の使いみちや建築できる建物に制限があります。マイホームを購入してから後悔しないように、各区域の特徴を理解しておくことが大切です。 この記事では、市街化区域の概要や市街化調整区域の違いについて解説します。 市街化区域とは? 市街化区域とは、都市計画法で分類されている都市計画区域の1つです。都市計画区域は以下の3種類があります。 住宅を建てる際の制約が少ない 生活インフラが整っている 売却しやすい 都市計画税がかかる 市街化区域は、基本的に住宅を自由に建てることが可能です。電気や水道、交通といった生活インフラも整っているため、需要が高く、売却しやすい特徴があります。 一方で、市街化区域内に住宅(土地・家屋)を所有すると都市計画税がかかります。1月1日現在で住宅を所有している人が対象です。税額は「課税標準額×0.3%」で、固定資産税と併せて課税されます。 用途地域とは? 用途地域とは、市街化地域内の土地の用途を13種類に区分し、建築できる建物や規模などを制限するものです。大きくは「住居系」「商業系」「工業系」の3つに分けられます。各用途地域の特徴は以下のとおりです。 区分用途地域概要 住居第一種低層住居専用地域低層住宅のための地域。小規模な店舗兼用住宅、小中学校などが建てられる 第二種低層住居専用地域主に低層住宅のための地域。小中学校、150㎡以下の店舗などが建てられる 第一種中高層住居専用地域中高層住宅のための地域。病院や大学、500㎡以下の店舗などが建てられる 第二種中高層住居専用地域主に中高層住宅のための地域。病院や大学、1,500㎡以下の店舗などが建てられる 第一種住居地域住居の環境を守るための地域。3,000㎡以下の店舗やホテルなどは建てられる 第二種住居地域主に住居の環境を守るための地域。店舗やホテル、カラオケボックスなどは建てられる 準住居地域国道や幹線道路と調和した住居の環境を守るための地域。 田園住居地域農地や農業関連施設と調和した住居の環境を守るための地域。 商業近隣商業地域周辺住民が日用品の買い物などをするための地域。住宅や店舗、小規模工場なども建てられる 商業地域銀行や映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域。住宅や小規模工場も建てられる 工業準工業地域主に軽工業の工場や施設が立地する地域。環境悪化のおそれがある工場以外はほぼ建てられる 工業地域どんな工場でも建てられる地域。住宅や店舗は建てられるが、学校や病院などは建てられない 工業専用地域どんな工場でも建てられる、工場のための地域。住宅や店舗、学校などは建てられない 市街化調整区域とは? 市街化調整区域は、都市計画法では「市街化を抑制すべき区域」と定義されています。原則として開発行為や都市施設の整備は行われず、基本的に住宅は建てられません。すでに建築されている物件の購入後のリフォームや、建て替えをする場合も自治体の許可が必要です。 市街化調整区域であっても、自治体によっては開発行為が一部認められるケースもあります。 市街化調整区域の特徴 市街化調整区域の主な特徴は下記のとおりです。 価格が割安な傾向にある 固定資産税が低い 都市計画税がない 建て替え、増改築などが制限される インフラ整備が進んでいないことがある 売却しにくい 住宅ローンが借りづらい 市街化調整区域は、市街化区域に比べると価格が安く、固定資産税が低い傾向にあります。都市計画税は課税されないため、取得費用や維持費用の軽減が期待できます。 一方で、住宅の建て替えや増改築を行うには自治体の許可が必要になるなどの制限があります。また、周辺のインフラ施設の整備が進んでおらず、生活するには不便を感じるかもしれません。このような事情から売却しにくく、住宅ローンを借りづらい傾向にあります。 非線引き区域とは? 非線引き区域は、都市計画法では「区域区分が定められていない都市計画区域」と定義されています。区域区分が定められていないため、土地利用の制限が緩いのが特徴です。ただし、自治体が土地利用方針を策定しているケース もあります。 出典)成田市「非線引き都市計画区域における土地利用方針」 非線引き区域の特徴 非線引き区域の特徴は以下のとおりです。 土地利用の制限が緩い 用途地域が指定されていることもある インフラ整備が進んでいないことがある 地域住民が望まない土地利用の恐れがある 売却しにくい 住宅ローンが借りづらい 非線引き区域は制限が緩いため、基本的には自由に土地利用が可能です。ただし、市街化地域と同じように用途地域が指定されていることもあります。 市街化区域とは異なり、積極的に開発行為や都市施設の整備が進められる地域ではないため、インフラ整備が進んでいない可能性があります。また、規制が緩い分、地域住民が望まない形で土地が利用される恐れがあるのもデメリットです。 このような事情から市街化調整区域と同様に売却しにくく、住宅ローンを借りづらい傾向にあります。 区域区分や用途地域の調べ方 区域区分や用途地域は、自治体のホームページで確認できます。住所を指定すると、その区域の詳細がわかる地図情報を提供している自治体もあります。 担当部署(例:都市計画課)に問い合わせて教えてもらうことも可能です。 住宅や土地を売買する際は、不動産業者に確認してもらうのも一つの方法です。 出典)成田市「都市計画情報(なりた地図情報等)について」 まとめ 住宅や土地を売買する場合、市街化区域であればスムーズに取引できます。マイホームの購入を予定しているなら、物件が市街化区域内にあるかを確認しておきましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む

    2022.05.25用語