住宅や土地の購入を検討している中で、「市街化区域」「市街化調整区域」という言葉を聞くことはないでしょうか。 どちらも都市計画法で定められた地域で、土地の使いみちや建築できる建物に制限があります。マイホームを購入してから後悔しないように、各区域の特徴を理解しておくことが大切です。 この記事では、市街化区域の概要や市街化調整区域の違いについて解説します。 市街化区域とは? 市街化区域とは、都市計画法で分類されている都市計画区域の1つです。都市計画区域は以下の3種類があります。 住宅を建てる際の制約が少ない 生活インフラが整っている 売却しやすい 都市計画税がかかる 市街化区域は、基本的に住宅を自由に建てることが可能です。電気や水道、交通といった生活インフラも整っているため、需要が高く、売却しやすい特徴があります。 一方で、市街化区域内に住宅(土地・家屋)を所有すると都市計画税がかかります。1月1日現在で住宅を所有している人が対象です。税額は「課税標準額×0.3%」で、固定資産税と併せて課税されます。 用途地域とは? 用途地域とは、市街化地域内の土地の用途を13種類に区分し、建築できる建物や規模などを制限するものです。大きくは「住居系」「商業系」「工業系」の3つに分けられます。各用途地域の特徴は以下のとおりです。 区分用途地域概要 住居第一種低層住居専用地域低層住宅のための地域。小規模な店舗兼用住宅、小中学校などが建てられる 第二種低層住居専用地域主に低層住宅のための地域。小中学校、150㎡以下の店舗などが建てられる 第一種中高層住居専用地域中高層住宅のための地域。病院や大学、500㎡以下の店舗などが建てられる 第二種中高層住居専用地域主に中高層住宅のための地域。病院や大学、1,500㎡以下の店舗などが建てられる 第一種住居地域住居の環境を守るための地域。3,000㎡以下の店舗やホテルなどは建てられる 第二種住居地域主に住居の環境を守るための地域。店舗やホテル、カラオケボックスなどは建てられる 準住居地域国道や幹線道路と調和した住居の環境を守るための地域。 田園住居地域農地や農業関連施設と調和した住居の環境を守るための地域。 商業近隣商業地域周辺住民が日用品の買い物などをするための地域。住宅や店舗、小規模工場なども建てられる 商業地域銀行や映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域。住宅や小規模工場も建てられる 工業準工業地域主に軽工業の工場や施設が立地する地域。環境悪化のおそれがある工場以外はほぼ建てられる 工業地域どんな工場でも建てられる地域。住宅や店舗は建てられるが、学校や病院などは建てられない 工業専用地域どんな工場でも建てられる、工場のための地域。住宅や店舗、学校などは建てられない 市街化調整区域とは? 市街化調整区域は、都市計画法では「市街化を抑制すべき区域」と定義されています。原則として開発行為や都市施設の整備は行われず、基本的に住宅は建てられません。すでに建築されている物件の購入後のリフォームや、建て替えをする場合も自治体の許可が必要です。 市街化調整区域であっても、自治体によっては開発行為が一部認められるケースもあります。 市街化調整区域の特徴 市街化調整区域の主な特徴は下記のとおりです。 価格が割安な傾向にある 固定資産税が低い 都市計画税がない 建て替え、増改築などが制限される インフラ整備が進んでいないことがある 売却しにくい 住宅ローンが借りづらい 市街化調整区域は、市街化区域に比べると価格が安く、固定資産税が低い傾向にあります。都市計画税は課税されないため、取得費用や維持費用の軽減が期待できます。 一方で、住宅の建て替えや増改築を行うには自治体の許可が必要になるなどの制限があります。また、周辺のインフラ施設の整備が進んでおらず、生活するには不便を感じるかもしれません。このような事情から売却しにくく、住宅ローンを借りづらい傾向にあります。 非線引き区域とは? 非線引き区域は、都市計画法では「区域区分が定められていない都市計画区域」と定義されています。区域区分が定められていないため、土地利用の制限が緩いのが特徴です。ただし、自治体が土地利用方針を策定しているケース もあります。 出典)成田市「非線引き都市計画区域における土地利用方針」 非線引き区域の特徴 非線引き区域の特徴は以下のとおりです。 土地利用の制限が緩い 用途地域が指定されていることもある インフラ整備が進んでいないことがある 地域住民が望まない土地利用の恐れがある 売却しにくい 住宅ローンが借りづらい 非線引き区域は制限が緩いため、基本的には自由に土地利用が可能です。ただし、市街化地域と同じように用途地域が指定されていることもあります。 市街化区域とは異なり、積極的に開発行為や都市施設の整備が進められる地域ではないため、インフラ整備が進んでいない可能性があります。また、規制が緩い分、地域住民が望まない形で土地が利用される恐れがあるのもデメリットです。 このような事情から市街化調整区域と同様に売却しにくく、住宅ローンを借りづらい傾向にあります。 区域区分や用途地域の調べ方 区域区分や用途地域は、自治体のホームページで確認できます。住所を指定すると、その区域の詳細がわかる地図情報を提供している自治体もあります。 担当部署(例:都市計画課)に問い合わせて教えてもらうことも可能です。 住宅や土地を売買する際は、不動産業者に確認してもらうのも一つの方法です。 出典)成田市「都市計画情報(なりた地図情報等)について」 まとめ 住宅や土地を売買する場合、市街化区域であればスムーズに取引できます。マイホームの購入を予定しているなら、物件が市街化区域内にあるかを確認しておきましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む
不動産の賃貸借契約には、「定期借家契約」と「普通借家契約」があります。しかし、両者は契約の更新方法などに違いがあるので、賃貸住宅に安心して住めるように、それぞれの契約の仕組みを理解しておくことが大切です。 この記事では、定期借家契約と普通借家契約の違いについて詳しく解説します。 定期借家契約と普通借家契約の概要 定期借家契約とは 定期借家契約とは、正式名称を定期建物賃貸借契約といい、契約期間があらかじめ決められている賃貸借契約のことです。契約の更新がないため、契約期間が満了すると借主は退去しなくてはなりません。ただし、貸主と借主の双方が合意すれば、期間満了後の再契約は可能です。 定期借家契約の場合、貸主側の都合で契約期間が定められるため、普通借家契約に比べると割安な家賃で設定されることが多いです。貸主側は定めた期間で借主に退去してもらえるため、「一時的に不在となる物件を賃貸に出す」「現在空き家の実家を自分が住むまで賃貸に出す」といった場面での活用ができます。 普通借家契約とは 普通借家契約は、一般的な不動産賃貸で利用される賃貸借契約です。上述の定期借家契約と区別するため、通常の建物賃貸借契約を意味する形で「普通」という言葉が使われています。 契約期間は通常2年で設定され、期間満了後も借主が希望すれば契約は更新されるため、長く住み続けることが可能です。借主が手厚く保護される契約形態であるため、貸主からの一方的な都合による退去はありません。 普通借家契約の場合、貸主側の都合で契約期間を定められますが、借主が希望する限り更新を拒むことができません。そのため、貸主側が短期間で退去してほしい場合には、適していません。 定期借家契約と普通借家契約の主な違い 定期借家契約と普通借家契約の主な違いは以下の2つです。 契約の更新 前述のとおり、定期借家契約は期間満了によって契約が終了します。貸主と借主の双方で合意できた場合のみ再契約が可能なので、借主が住み続けたいと思っても、貸主が再契約を認めなければ退去する必要があります。 一方で、普通借家契約は借主が希望する限り、契約を更新し、住み続けることができます。「建物に問題がある」、「借主が契約を違反する」などの正当事由がない限り、貸主は契約更新を拒絶できません。 賃料の増減額請求権 賃料の増減額請求権とは、現在支払っている、または受け取っている家賃が賃料相場と比較して不相当となった場合に、賃貸借契約の相手方に対して家賃の減額、増額を請求できる権利です。 賃貸住宅の賃料相場は、景気動向や需供バランスによって変動します。そのため、同じ物件に長く住んでいると、入居時に定めた家賃が賃料相場と合わなくなることがあります。 定期借家契約と普通借家契約ともに、原則として賃料の増減額請求権が認められます。ただし、定期借家契約は賃料の増減額請求権を排除する特約を定めることが可能です。(借地借家法第38条) 一方で、普通借家契約は賃料の増減額請求権を排除する特約は無効ですが、家賃を増額しないことについての特約のみ認められます。(借地借家法第32条) 定期借家契約と普通借家契約のその他の違い 定期借家契約と普通借家契約は、以下のような点でも違いがあります。 契約方法や説明 普通借家契約を締結するには口頭でも可能ですが、定期借家契約は公正証書などの書面で行う必要があります。また、定期借家契約は賃貸借契約書とは別に、契約の更新がないことを書面で交付して説明しなくてはなりません。 契約期間や通知義務 普通借家契約は1年以上で設定する必要があり、1年未満の賃貸借契約の場合は、期間の定めのない賃貸借とみなされます。一方で、定期借家契約は契約期間に制限がなく、1年未満の契約も有効となります。 1年以上の定期借家契約の場合、貸主は契約期間満了の1年から6ヵ月前までに借主に対して契約終了を通知する義務があります。通知をしない場合、貸主は契約終了を借主に対抗できません。借主は、通知の日から6ヵ月を経過するまでは同条件で住み続けられます。 中途解約 普通借家契約は一般的に中途解約に関する条項が記載されており、借主からの中途解約はその条項の範囲内で可能ですが、貸主からの場合は正当事由が必要です。一方で、定期借家契約では、貸主と借主のどちらも中途解約は原則認められません。 ただし、床面積200㎡未満の居住用建物でやむを得ない事情がある場合は、借主からの中途解約は可能です。なお、普通借家と定期借家ともに、中途解約に関する特約がある場合はその定めに従うこととなります。 定期借家契約と普通借家契約の違い一覧 定期借家契約と普通借家契約の違いは下表のとおりです。 定期借家契約と普通借家契約の違い 定期借家契約 普通借家契約 契約方法 公正証書等の書面* 口頭、書面 更新の有無 期間満了により終了し、更新がない (ただし、再契約は可能) 正当事由がない限り更新 期間を1年未満とする 賃貸借の効力 1年未満の契約も有効 期間の定めのない賃貸借とみなされる 賃料の増減請求 特約の定めに従う 特約にかかわらず、請求可能 賃借人の中途解約の可否 ・床面積200㎡未満の居住用建物でやむを得ない事情がある場合は、 借主からの中途解約が可能 ・中途解約に関する特約があればその定めに従う 中途解約に関する特約があればその定めに従う ※賃貸人は「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書等とは別に、予め書面を交付して説明しなければならない 出典)国土交通省「定期借家制度」 定期借家契約と普通借家契約の利用割合 国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査」によると、定期借家契約は普通借家契約と比較してほとんど利用されていません。 出典)国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査」P.32 また、同調査では令和5年度に民間賃貸住宅に住み替えた世帯の定期借家制度の認知度が「知っている」が14.9%、「名前だけは知っている」が27.5%に留まっており、半数以上が「定期借家契約」を知らないまま、賃貸住宅に住み替えていたことも分かっています。 出典)国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査」P.32 定期借家契約は利用数、認知度ともに低いのが現状ですが、知らなければ後々トラブルの原因になる恐れもあります。 定期借家契約の注意点とやめたほうがいい理由 家を借りる際に、以下のように考えている場合は最初から定期借家契約を避けた方が無難です。 その物件に長く住み続けたい 定期借家契約の期間中に引っ越す可能性がある 家賃などの条件を交渉したい 定期借家契約は契約満了時に一度終了し、普通借家契約のように自動更新されません。契約満了後も住み続けたい場合は、貸主と借主の双方が同意すれば再契約が可能ですが、必ずしも合意が得られる保証はありません。気に入った物件に長く住みたい方には普通借家契約を選ぶ方が良いでしょう。 転勤や結婚などで契約期間中に引っ越す可能性がある場合も注意が必要です。定期借家契約では原則途中解約ができず、やむを得ない理由があっても解約料が発生することが一般的です。予定が不確実な場合は、柔軟に対応できる普通借家契約の方が安心です。 また、家賃や契約条件の交渉が難しい点も注意が必要です。契約期間が定められており、貸主が柔軟に対応するケースは少ないため、条件に柔軟性を求める方には不向きです。 ただし、上述の国土交通省の調査によると定期借家はそもそも物件数自体が少ないため、避けられる可能性が高いといえるでしょう。長期的に住む計画がある方やライフスタイルに変化が生じやすい方には、普通借家契約を検討するのが賢明です。 まとめ 定期借家契約は貸主の合意を得られなければ再契約ができず、退去する必要があります。短期間の入居なら家賃が安く済むかもしれませんが、長く住むには不向きです。賃貸住宅を借りたり、リースバックを利用したりする場合は、定期借家契約と普通借家契約の違いを理解しておきましょう。 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。※SBIスマイルのHPに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説 終身建物賃貸借契約は、高齢者が安心して賃貸住宅に居住できる仕組みです。老後も賃貸暮らしを続けるなら、終身建物賃貸借契約に対応している賃貸住宅も選択肢のひとつです。この記事では、終身建物賃貸借...記事を読む
個人で事業を営んでいなくとも、「副業収入がある」「ふるさと納税をした」などの際に、確定申告が必要になることもあります。一方で、どのような時に、どのような手続きが必要なのか、正確に理解していない人も多いかもしれません。 この記事では確定申告の概要や手続き、申告方法を解説します。 確定申告とは 確定申告とは、定められた期間内に確定申告書を提出する手続きです。確定申告書には、1月1日から12月31日の1年間に生じた、すべての所得金額と所得税額を記載する必要があります。確定申告をすることで、源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金と、実際に納めるべき税金との過不足が調整されます。 このように、納税者自らが税金を計算して納税するため、「申告納税方式」と呼ばれます。確定申告期間は、毎年2月16日から3月15日であり、申告期限が土日祝日の場合は、その翌営業日が期限となります。 確定申告と還付申告の違い 確定申告と似たような言葉に「還付申告」があります。還付申告とは、納めすぎた税金を受け取るための申告です。納めた税金が不足している場合、確定申告は義務が生じますが、還付申告に義務は生じません。また、確定申告期間とは関係なく、1月1日から5年間提出することが可能です。 出典)国税庁「No.2030 還付申告」 確定申告が必要な人 確定申告は、「確定申告をしなければならない人」と「確定申告をしなくてもよい人」に分かれます。ここでは、どのような人が確定申告をする必要があり、どのような人が確定申告をする必要がないか、を説明します。 確定申告をしなければならない人 まずは、確定申告をしなければならない人について、「会社員」「年金受給者」「それ以外の人(個人事業主等)」に分けて説明します。 会社員 会社員は勤務先で年末調整を受けられるので、基本的には確定申告は不要です。ただし、以下の要件に当てはまる人は、確定申告をする必要があります。 年収が2,000万円を超える人 給与を1か所から受けていて、かつ、給与所得以外(副業など)の所得が年20万円を超える人 給与を2カ所以上から受け取り、かつ、年末調整をされなかった給与収入と給与所得以外(副業など)の所得の合計が20万円を超える人 副業をしている場合でも、所得が20万円を超えなければ、確定申告は不要です。また、給与を2か所以上から受け取っていても、所得が20万円を超えるか否か、が境界線となります。 年金受給者 年金受給者は確定申告不要制度が設けられているため、多くの人が確定申告をする必要がありません。ただし、以下の要件に当てはまる場合は、確定申告をする必要があります。 公的年金等の収入金額(2か所以上ある場合は合計額)が400万円超 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円超 年金受給者も、会社員と同様に、公的年金以外の所得が20万円を超えるか否か、が境界線となります。ただし、異なる点として、公的年金等の収入が400万円を超えた場合にも、確定申告が必要となります。 出典)政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」 それ以外の人(個人事業主等) 会社員、年金受給者以外の人は、基本的に確定申告をする必要があります。具体的には以下のような人です。 事業所得や不動産所得などがある人 退職所得がある人 個人事業主やフリーランスなど、事業所得がある人は、原則として毎年確定申告をしなければなりません。退職金については「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、源泉徴収による課税が済みます。ただし、外国企業から受け取った退職金など、源泉徴収されないものがあるので注意しましょう。 出典)国税庁「確定申告が必要な方」 確定申告をしなくてもよい人 確定申告をしなくてもよい人は、前述の「義務がある人」以外の人を指します。しかし、その中には、「確定申告をしたほうが良い人」が存在します。「確定申告をしたほうが良い人」とは、一口に言うなれば、確定申告をすることで、経済的なメリットがある人です。たとえば、以下のような人が該当します。 医療費が10万円を超えた人 寄附やふるさと納税をした人 住宅ローンを借りた人 事業で赤字を出した人 FXや株で損を出した人 医療費控除や寄付金控除は、所得控除に該当し、所得が減少することで減税できます。住宅ローン控除は、税額控除に該当し、所得税や住民税から直接的に減税されます。事業赤字や投資の損失は、損失の繰越控除ができるため、翌年以降の利益を圧縮できる場合があります。 確定申告の方法 確定申告は以下の手続きで進めます。順に説明していきます。 必要書類の準備 確定申告書の作成 確定申告書の提出 納税、還付手続き 必要書類の準備 まずは確定申告に必要な書類を準備しましょう。主な必要書類は以下のとおりです。 確定申告書(AまたはB) 源泉徴収票 各種控除証明書 金融機関の口座情報 マイナンバーカード 確定申告書はAとBの2種類があります。確定申告書Aは、申告できる所得が限定されている簡易版です。確定申告書Bは、すべての所得の申告に使用できます。会社員や年金受給者が医療費控除などを受ける場合は、確定申告書Aを使うといいでしょう。 確定申告書の作成 必要書類が準備できたら、書類の内容に基づいて確定申告書を作成します。主な作成方法は以下のとおりです。 国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成する 会計ソフトで作成する 確定申告会場や税務署で作成する 税理士に依頼する 給与所得者などが、医療費控除や寄付金控除などを行う場合は、国税庁の確定申告書等作成コーナーが便利です。個人事業主やフリーランスの人は、市販の会計ソフトを使うと帳簿や青色申告決算書なども一緒に作成できます。 自分で作成することが難しいときは、確定申告会場や税務署で、作成方法を教えてもらうこともできます。また、申告内容が複雑な場合などは、税理士の代行サービスを検討しましょう。 確定申告書の提出 確定申告書の作成が完了したら税務署に提出します。提出方法は以下3つです。 郵送 税務署に持参 e-Tax(電子申告) パソコンやスマホの操作に慣れている人にとっては、e-Taxが最も手軽な方法です。紙で作成した場合など、所管の税務署に持参や郵送する方法もあります。いずれの方法においても、申告期間は毎年2月16日から3月15日です。 納税、還付手続き 納税義務がある人は、納税手続きを行いましょう。納税方法は以下6つです。 ダイレクト納付 インターネットバンキング等 クレジットカード納付 コンビニ納付 振替納税 窓口納付 個人で事業を営んでいる人など、毎年確定申告を行う場合は振替納税が便利です。一度手続きを行うと、次回以降も振替納税とすることができます。一度限りや、毎年するわけではないという人は、e-Taxを利用して、パソコンやスマホから納税することも可能です。 納税ではなく還付の場合は、確定申告書に記入するだけで、別途手続きは不要です。確定申告書に記入した口座に還付金が振り込まれます。通常、還付手続きまでは1か月から1か月半程度かかりますが、e-Taxの場合は3週間程度で処理されることもあります。 出典)国税庁「[手続名]国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法)」 確定申告の注意点 申告義務がある人は、必ず期限内に確定申告を行いましょう。確定申告をしないと。無申告加算税や延滞税が課されることがあります。また、申告義務がなくとも確定申告をすることで、減税や損失の繰越控除が利用できる人も、申告をするようにしましょう。 確定申告の内容に間違いがあった場合は、「修正申告」をする必要があります。税額を少なく申告をしているときは、必要な税額に延滞税が上乗せされて課されることもあります。一方で、税額を多く申告しているときは、「更正の請求」を行いましょう。請求内容が認められると、納めすぎた税金が還付されます。 まとめ 確定申告の義務がある人は、必ず期限内に、正しく申告しましょう。また、義務がなくとも、減税メリットがある人もいます。まずは、自身が確定申告の必要があるのか、ない場合でも受けられる控除はないか、などを確認するところから始めてみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説 融資や自治体のサービス、車検などを申し込むとき、納税証明書を求められることがあります。そもそも、納税証明書とはどのような書類なのでしょうか。日常生活で納税証明書が必要になる場面は多くないので...記事を読む
登記簿謄本(登記事項証明書)は、登記記録の全部または一部の事項を証明する書類です。不動産の情報が記載されている「不動産登記簿謄本」と、法人の情報が記載されている「法人登記簿謄本」の2種類に分かれます。登記簿謄本には、どのようなことが書かれていて、どのように取得できるのか、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。 この記事では、登記簿謄本の記載内容や取得方法、費用について紹介します。 登記簿謄本とは 登記簿謄本とは、上述のとおり、登記記録の全部または一部の事項を証明する書類で、不動産取引やローンを利用する際などに求められます。このような場面で、登記簿謄本ではなく「登記事項証明書」を求められることがありますが、基本的には同じ書類を指していると考えて差し支えないでしょう。 登記簿謄本も登記事項証明書も証明内容自体は同じで、作成元である登記情報の保存方法に違いがあります。登記情報は、以前まで紙で保管されていましたが、現在は電子データとして保管されるようになりました。 そのため、紙で保管されているものと電子データで保管されているものができ、紙で作成された登記用紙を複写したものを登記簿謄本、コンピュータで管理されたデータを印刷したものを登記事項証明書と呼んでいます。 出典)松山地方法務局 よくある質問「登記簿謄本と登記事項証明書の違いは?」 不動産登記簿謄本の記載内容 不動産登記の情報が記載されている書類が、不動産登記簿謄本です。不動産登記簿謄本の記載事項は、下図のように大きく4つの項目に分かれます。 出典)法務省「全部事項証明書(不動産登記)の見本」 表題部 権利部(甲区) 権利部(乙区) 共同担保目録 表題部 表題部では土地や建物の所在地や状態など、「どのような不動産であるのか」が記載されています。所在地や面積だけでなく具体的な建物の種類や構造・地番が記載されています。 権利部(甲区) 権利部は甲区と乙区に分かれます。甲区では、「だれが不動産の所有者か」が記載されています。所有者の住所や氏名・取得日などが記載されており、いつ誰が誰から不動産を相続したなどの入手の経緯まで把握できます。 権利部(乙区) 乙区では、所有権以外の権利に関しての記載がされています。たとえば、抵当権や地上権などの、その不動産にどのような権利が設定されているのかはこの部分を見ると分かります。不動産によっては、利用に制限があるため、購入前にどんな権利が設定されている不動産なのか、確認することが重要です。 共同担保目録 抵当権が複数の不動産に設定されている場合、この共同担保目録にその旨が記載されています。不動産を購入し住宅ローンを組む場合は、一般的には購入する不動産を担保として抵当権が設定されます。この時、基本的に建物と土地の両方に抵当権が設定されるので、それぞれの共同担保目録に記載されます。 関連記事はこちら不動産登記とは?概要や手続きの流れ、必要書類、費用を徹底解説 法人登記簿謄本の記載内容 法人の情報が記載されているのが、法人登記簿謄本です。法人登記簿謄本は、以下の画像のように法人に関する様々な情報が記載されています。 出典)法務省「登記事項証明書記載例1」 記載されている内容を大まかにまとめると、大きく4つの項目に分類できます。 法人の基本情報 商号や会社法人等番号だけでなく、いつから(会社成立の年月日)どこで(本店、支店の住所)何を(目的)行っている法人であるかが記載されています。加えて、公告をする方法、設置機関(取締役会、監査役会)の設置状況、法人の存続期間といった、法人の運営に関わる内容も記載されています。 株式に関する情報 株式について、単元株式数や発行可能株式総数、株式の譲渡制限に関する規定と、そもそも株券を発行するのかどうかが記載されています。加えて、発行済み株式の総数、種類、数も記載されています。法人登記簿謄本を見ることで、その法人がどのように株式を取り扱っているのかが分かるようになっています。 役員に関する情報 法人の役員(取締役、監査役等)の氏名と、役員となった年月日が記載されています。また、代表取締役のみ住所も記載されています。 法人登記簿謄本の種類 法人登記簿謄本は、以下の4つの種類があります。ここでは、どのような場面で登記簿謄本の交付請求が必要になるのかについて紹介します。 現在事項証明書 履歴事項全部証明書 閉鎖事項証明書 代表者事項証明書 現在事項証明書 現在事項証明書とは、現時点で有効な登記事項のみが記載された証明書で、過去の情報は含まれていません。現在の会社情報や不動産情報の確認が必要な場合に利用されます。 履歴事項全部証明書 履歴事項全部証明書とは、その不動産や法人に関する全ての登記事項が記載された証明書です。一般的に「会社の登記簿謄本」と呼ばれる場合、この履歴事項全部証明書を指します。法人登記では、役員情報や事業内容など、不動産登記では所有者や抵当権の情報が含まれます。 閉鎖事項証明書 閉鎖事項証明書は、すでに閉鎖された不動産や法人の登記事項が全て記載された証明書です。会社が合併により消滅した場合や本社が移転した場合など、登記簿が閉鎖される際に利用されます。 代表者事項証明書 代表者事項証明書には、会社の代表者の氏名や住所、会社法人番号などが記載されており、法人の取引先や契約先に対して代表者の情報を提示する際に利用されます。 必要な情報に応じて、適した種類の証明書を取得することが大切です。 登記簿謄本の取得方法と費用 不動産登記簿謄本と法人登記簿謄本は、以下の方法で取得できます。 登記所の窓口 郵送 オンライン 登記所の窓口 法務局や地方法務局・支所などの窓口で申請することで取得できます。以前は、取得する不動産の管轄地域の法務局でしか取得できませんでしたが、登記の電子化により、管轄外であっても最寄りの法務局で取得可能です。窓口申請の場合、手数料として600円が必要です。 郵送 法務局に出向けないという場合は、郵送での申請・受け取りも可能です。申請書類に記載し、手数料と返信封筒を同封し郵送すれば、返送されます。郵送の場合は、手数料として500円と返信封筒用の切手代が必要です。 オンライン オンラインでの申請であれば、いつでも申請できるので便利です。法務局のホームページから申請し、郵送か窓口受け取りで取得できます。オンラインで申請する場合、窓口で受け取る場合は480円、郵送で受け取る場合は500円と送料が必要です。郵送であれば、申請してから手数料の納付後1~2日で発送されるのが一般的です。 登記簿謄本を取得する際の注意点 登記簿謄本を取得する際に、注意すべき点がいくつかあります。不動産登記簿謄本と法人登記簿謄本に分けて紹介します。 不動産登記簿謄本の場合 いずれの申請方法であっても、取得する不動産の土地の所在地を示す「地番」が必要です。地番は普段目にしている住所表示とは異なることが多いので注意しましょう。正確な地番は、以下のような方法で調べられます。 不動産の権利書 固定資産税評価 法務局への問い合わせ ブルーマップ*の確認 なお、ブルーマップとは、株式会社ゼンリンが提供する地図帳のことで、住居表示だけでなく地番も確認できるサービスです。その他、用途地域・容積率・建ぺい率なども確認することができます。 法人登記簿謄本の場合 法人登記簿謄本を取得する場合は、必要な情報が「現在」だけでいいのか、「履歴」も必要なのかをあらかじめ確認しておくことが大切です。現在の登記情報のみ確認したい場合は「現在事項(全部)証明書」で足りますが、過去の登記情報も含めて確認したい場合は「履歴事項(全部)証明書」が必要になります。 なお、履歴事項(全部)証明書には現在の登記情報も記載されています。困った場合は履歴事項(全部)証明書を取得しておくのも手段のひとつです。 まとめ 登記簿謄本の記載内容や取得方法、費用について紹介しました。不動産登記簿謄本は不動産の状態や所有者・権利などが記載された重要な記録です。また、法人登記簿謄本は資金調達など、会社運営において重要な記録です。登記簿謄本が必要になった際には、オンラインなどを活用して準備するようにしましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説 融資や自治体のサービス、車検などを申し込むとき、納税証明書を求められることがあります。そもそも、納税証明書とはどのような書類なのでしょうか。日常生活で納税証明書が必要になる場面は多くないので...記事を読む
融資や自治体のサービス、車検などを申し込むとき、納税証明書を求められることがあります。そもそも、納税証明書とはどのような書類なのでしょうか。日常生活で納税証明書が必要になる場面は多くないので、種類や取得方法がよくわからない人もいるでしょう。 この記事では、納税証明書の概要や種類ごとの記載事項、取得方法などについて詳しく解説します。 納税証明書とは 納税証明書とは、納付すべき税額や納付した税額、所得金額などを証明する書類です。住宅ローンの審査を受けたり、自治体のサービスを利用したりする際に、提出を求められることがあります。 しかし、一言に納税証明書と言っても、証明する税金の種類(税目)によって記載事項や交付請求先が異なるので注意が必要です。納税証明書ごとの記載事項や取得方法の詳細は後述します。 納税証明書と課税証明書や所得証明書の違い 納税証明書と類似する書類として「課税証明書」や「所得証明書」があります。課税証明書は対象税目の課税額を証明する書類で、所得証明書は1年間(1月1日~12月31日)の所得金額を証明する書類です。 一方で、納税証明書は、対象税目の課税額の納付状況を証明する書類です。納税証明書が求められる場面では、税金の納付漏れがないかを確認されます。そのため、納税証明書を求められた際に、課税証明書や所得証明書を提出しても要件を満たさないので注意しましょう。 納税証明書の種類と対象税目 納税証明書は、課税主体に応じて「国税」「県税(都税)」「市税」の3種類に分けられます。その名のとおり、国税は国、県税(都税)は都道府県、市税は市区町村が課税・徴収する税金です。国税に対して、県税(都税)と市税を合わせて「地方税」といいます。主な対象税目は、それぞれ以下のとおりです。 国税:所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税など 県税(都税):住民税(県民税)、事業税、自動車税、不動産取得税など 市税:住民税(市民税)、固定資産税・都市計画税、軽自動車税など 納税証明書を取得する際は、対象税目を管轄する窓口に申請する必要があります。国税は現在の住所地を所轄する税務署、県税は県税事務所(都税は都税事務所)、市税は市区町村役場が窓口です。 ただし、東京23区内では市町村税も都税として課税されているため、市区町村役場ではなく、一律で都税事務所で取得する点には注意が必要です。 最近では、国税はオンラインでの交付請求にも対応しています。地方税は、マイナンバーカードを利用したコンビニ交付サービスに対応している自治体もあります。詳しくは、居住地の自治体のホームページを確認しましょう。 出典) ・財務省「税金には、どういった種類のものがありますか」 ・東京都主税局 納税証明書(国税)の記載事項と取得方法 ここでは、国税の納税証明書の記載事項と取得方法を解説します。 納税証明書(国税)の記載事項 国税の納税証明書は、税目や証明内容によって「その1」「その2」といった名称で分類がされます。国税の納税証明書の種類と主な記載事項は下表のとおりです。 国税の納税証明書の種類と主な記載事項 納税証明書の種類証明内容 その1納付すべき税額、納付した税額及び未納税額等 その2所得金額(所得税、復興特別所得税、法人税) その3未納税額がないこと その3の2所得税、復興特別所得税、消費税・地方消費税(個人用) その3の3法人税、消費税・地方消費税(法人用) その4証明期間に滞納処分を受けたことがないこと 国税は、税目や証明内容によって納税証明書の種類が変わります。そのため、国税の納税証明書が必要な場合は、証明内容に応じた納税証明書の種類を選ぶ必要があります。 金融機関や地方自治体から国税の納税証明書を求められた場合、取得書類を間違えてしまうと再取得が必要となるため、取得の前に必ず確認しておきましょう。 出典)国税庁「[手続名]納税証明書の交付請求手続」 納税証明書(国税)の取得方法 国税の納税証明書は、オンラインで請求する方法と、書面(納税証明書交付請求書)で請求する方法の2つがあります。どちらの場合でも、現在の住所地を所轄する税務署が請求先です。 交付請求の際は、手数料が必要です。請求方法、納税証明書の種類によって金額が異なるので注意しましょう。必要な金額は下表のとおりです。 証明書の種類オンラインで請求書面で請求 その1・その2税目数×年度数×枚数×370円税目数×年度数×枚数×400円 その3・その4枚数×370円枚数×400円 上記の金額を、オンラインで請求する場合は電子納付、窓口や郵送など、書面で請求する場合は収入印紙で納付します。証明書を窓口で直接受け取る場合は現金での納付も可能です。 また、交付請求の際は本人確認書類も必要となります。個人の場合は個人番号確認書類も必要となるので忘れず用意しましょう。 出典) ・国税庁「平成28年1月から、納税証明書交付請求時の本人確認書類が変わります」 ・国税庁「納税証明書を請求される方へ」 納税証明書(都税・県税)の記載事項と取得方法 ここでは、都税・県税の納税証明書の記載事項と取得方法を解説します。 納税証明書(都税・県税)の記載事項 東京都が課税・徴収している各税目について、納付すべき税額や納付した税額、未納額などが証明されます。主な記載項目は以下のとおりです。 納税義務者の住所(所在地) 氏名(名称) 税目 年度 課税額 未納額 課税事務所等 一例として、都税について説明していますが、その他の道府県が発行する納税証明書も記載事項に大きな違いはありません。 都税の納税証明書は、当年度分を含めて6年度分を発行でき、証明書に納付日の記載はありません。また、「未納税額がないことの証明」や「完納証明」という名目の証明書は東京都主税局では発行していないため、納税証明書で代用する必要があります。 なお、都で発行している「滞納処分を受けたことがないことの証明」は、「未納がないことの証明」にはならないので注意しましょう。このように、自治体により書類の扱いが異なる場合もあるので、納税証明書を求められた場合には詳細を確認するようにしましょう。 出典)東京都主税局「よくあるお問合せ」 自動車税の納税証明書 自動車税は、都道府県が課税・徴収する税金です。納税証明書には、自動車登録番号や車体番号などが記載されています。車検を受ける際は、運輸支局・自動車検査登録事務所にて納税確認を電子的に行えるようになったため、平成27年4月から、車検時の自動車税納税証明書の提示が省略可能になりました。 一方で、自動車税の納付間もない場合など、納付してからすぐに車検を受けるときなどには、紙の納税証明書が必要な場合があります。自動車税の納税通知書は、金融機関やコンビニで納付して領収日付印が押されると「納税証明書」として利用できます。 出典) ・東京都主税局「よくあるお問合せ」 ・千葉県「車検のとき、納税証明書がいらなくなったと聞きましたが。」 納税証明書の取得方法(都税・県税) 都税や県税の納税証明書も、オンラインで請求する方法と、書面(納税証明書交付請求書)で請求する方法の2つがあります。どちらの場合でも、現在の住所地を所轄する都道府県税事務所が請求先です。 交付請求の際は、手数料が必要です。国税の納税証明書とは異なり、請求方法等によらず一律で1税目につき400円です。また、国税の納税証明書とは異なり、収入印紙での支払いができない点にも注意しましょう。例えば、郵送で申請する場合は収入印紙ではなく定額小為替を用意する必要があります。 出典) ・東京都主税局「各証明の申請について」 ・東京都主税局「都税に関する証明等申請時の「本人確認」方法について」 納税証明書(市税)の記載事項と取得方法 ここでは、市税の納税証明書の記載事項と取得方法について解説します。 納税証明書(市税)の記載事項 市区町村が課税・徴収する税金について、納付すべき金額や納付した税額が証明されます。たとえば、横浜市の納税証明書には以下の事項が記載されています。 納税義務の確定した納付すべき税額 納付済の税額 滞納処分を受けたことがないこと* 法定納期限等* ※申出がない場合は記載なし 他の市区町村が発行する納税証明書についても、記載内容に大きな違いはありません。市税の納税証明書は、市区町村役場の担当窓口に申請すれば取得できます。証明内容によっては申出が必要だったり、別の書類が必要になったりする場合もあります。証明が必要な内容を窓口で伝えた上で、申請することが大切です。 出典)横浜市「納税証明書」 納税証明書(市税)の取得方法 市税の納税証明書は、市区町村役場が請求先です。ただし、東京23区内であれば都税事務所が請求先になります。たとえば、さいたま市の場合、窓口に行かない方法として納税証明書の種類によって異なるものの、コンビニ、電子申請、郵送申請があります。 市税の証明書も手数料が必要ですが、市区町村によって異なります。そのため、市区町村のホームページなど確認しておく必要があります。あくまで目安ですが、1税目につきおおよそ300~400円です。その他マイナンバーカードでの取得だと200円になる場合もあります。 出典)さいたま市「市税の証明書等を取得したいときは」 まとめ 納税証明書は、証明内容や税目によって証明書の種類や取得方法が異なります。必要なときに問題なく手続きができるように、納税証明書の内容や申請窓口を理解しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 住宅ローン控除(住宅ローン減税ともいいます)とは、住宅ローンを利用して住宅の新築、取得又は増改築等をした場合に利用できる、所得税額等を控除する制度です。住宅ローン控除を利用する場合、自身の状...記事を読む
自営業者は景気悪化などで経営不振に陥り、資金繰りに悩むこともあるでしょう。借入金の返済に困ったときは、金融機関にリスケ(リスケジュール)を依頼する方法があります。ただし、リスケにはデメリットもあるので、特徴を理解してから計画的に進めることが大切です。 この記事では、融資のリスケのメリットとデメリット、リスケ以外の資金繰り改善方法について解説します。 リスケとは リスケとは、リスケジュール(reschedule)の略語です。ビジネス用語として「スケジュールの見直し」の意味でよく使われますが、「返済計画の見直し」という意味でも使われます。 一般的に、銀行などの金融機関が使う「リスケ」は、後者を意味しており、借入金の返済が困難になった際に返済条件を変更するという意味で使われます。資金繰りが厳しくなった際には、金融機関と交渉することで融資のリスケができる可能性があります。具体的なリスケの方法は以下のとおりです。 一定期間、返済額を減額する 一定期間、元本支払いを据え置きする 返済期間を延長し、返済額を減額する 融資のリスケの申込件数 金融庁の調査によると、2020年3月10日~2024年6月末の期間にリスケの申込みを行った中小企業者の数は、銀行分で約166万件(約1,055件/日)、協同組織金融機関分(信用金庫など)で約135万件(約858件/日)です。多くの中小企業者が、金融機関にリスケの相談や交渉を行っていることがわかります。 この背景にあるのは、2009年に施行された中小企業金融円滑化法です。中小企業金融円滑化法は2013年3月末で期限を迎えていますが、金融庁は金融機関に対して、引き続き円滑な資金供給や貸付条件等の変更に努めるように要請しています。そのため、現在もリスケに応じてもらいやすい状況が続いています。 実際に、同期間内の審査中や取下げを除くリスケの実行率は、銀行分が95.4%、協同組織金融機関分が96.3%です。実行率が非常に高いことから、正当な理由があればリスケに応じてもらえることがわかります。 出典) ・金融庁「金融機関における貸付条件の変更等の状況について」 ・(銀行分)貸付条件の変更等の状況について ・(協同組織金融機関分)貸付条件の変更等の状況について 融資のリスケをするメリット・デメリット 融資のリスケをするメリット 借入金の返済に困ったときに融資のリスケをするメリットは以下の2つです。 借り換えをするよりも余計な費用がかからない 経営立て直しのための時間的猶予を確保できる 資金繰りを改善するには、借り換えという選択肢もありますが、借り換えは既存借入の全額返済手数料、新規借入の事務手数料などの費用が発生します。一方で、融資のリスケによる支払条件の変更であれば、余計な費用はかかりません。 また、融資のリスケをすると資金繰りが楽になるので、経営の立て直しに集中して取り組むことができます。経営課題の改善に取り組んで業績が回復すれば、今までどおり事業を継続できるでしょう。 融資のリスケをするデメリット 融資のリスケをするデメリットは以下の2つです。 新規の融資を受けづらくなる 返済が長期化する 通常、融資のリスケが行われている期間は、その金融機関からは追加融資を受けられません。返済原資を明確に示すことができなければ、他の金融機関から融資を受けるのも難しいでしょう。新規融資を受けられないと手元資金のみで資金繰りをしなくてはならないため、追加融資を考えている場合は、融資のリスケの前に運転資金を確保する必要があります。 融資のリスケは、返済が長期化するのもデメリットです。返済条件の見直しによって、一時的に資金繰りは楽になるかもしれません。しかし、長い目で見るとかえって返済負担が増し、経営にマイナスの影響を与える場合もあります。 融資のリスケ交渉のポイントと注意点 融資のリスケにあたり、最も大切なのは「どのようにして経営を立て直すか」です。融資のリスケはあくまでも返済条件の見直しであり、債務や利息が免除されるわけではありません。加えて、融資のリスケによって返済条件が見直されるのは、一般的に半年~1年程度の一定期間のみです。 金融機関にリスケ交渉を行う場合は、直近の実績と今後の予測を立てた資金繰り表、事業計画書、経営改善計画書などの作成や担保や保証人に関する資料を準備し、金融機関側に納得してもらうことが大切です。 融資のリスケに応じてもらったとしても、その後の対策を講じなければ根本的な解決にはならないため、融資のリスケを行うことで、本当に経営を立て直すことができるのかをしっかりと考えたうえで利用しましょう。 融資のリスケ中に可能な不動産を活用した資金調達方法 リスケを行っている期間は一般的に新たな融資を受けることが難しくなりますが、不動産を所有していればその不動産を活用して資金を確保できるかもしれません。具体的には、以下のような方法があります。 不動産担保ローン まずは、不動産担保ローンで資金調達をする方法です。不動産担保ローンは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保にすることで、運転資金や既存借入の借り換えとしても利用することができます。借り換えによって毎月の返済額を減らすことができれば、資金繰りを改善して経営の立て直しに注力できます。 不動産担保ローンは、信用力と担保不動産の価値を総合的に判断して審査を行うため、融資のリスケ中でも借入れができる可能性があります。また、金融機関によっては家族所有物件などの不動産も担保として申込みできます。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 リースバック 次に、リースバックで資金調達をする方法です。リースバックとは、不動産売買と賃貸借契約が一体となったサービスのことです。自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けることができます。 リースバックで売却した不動産は将来的に買い戻しができるので、経済状況が安定した後に再購入することも可能です。一方で、リースバックは、基本的に売却価格が市場価格よりも安くなります。加えて、所有権がリースバック運営会社に移転するので、リフォームや建て替えなどが自由にできなくなってしまう点に注意が必要です。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 自宅売却 自宅を売却して資金調達を行う方法もあります。ただし、自宅を売却すると転居先を探す必要があるなど、生活環境を大きく変えることになるので、現実的には難しいかもしれません。また、住宅ローンの残債がある場合には、そもそも売却価格が住宅ローンの残債を上回っていなければ、売却することが難しいでしょう。 これらの理由から、自宅売却は不動産担保ローンやリースバックなどの選択肢を取れない場合の最終的な手段になるかもしれません。 その他の資金調達や対策 不動産を利用する以外にも資金調達や経営状況を改善するための対策もとれます。 ファクタリング ファクタリングとは、企業が保有している売掛債権(売掛金など)をファクタリング会社が一定の手数料を差し引いて買い取るサービスです。売掛債権の支払期日が到来する前に資金化できます。 ファクタリングの法的な位置づけは、「債券譲渡契約(売買契約)」のため金融機関からの融資とは異なり、貸借対照表上の借入金(負債)が増えません。 関連記事はこちらファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介 ABL(動産・債権担保融資) ABLとは、「Asset Based Lending」という英単語のそれぞれの頭文字を取った略称で、企業が保有する在庫や売掛金、機械設備などの事業資産を担保にした融資の一種です。 企業が金融機関から事業資金を借り入れる場合、経営者による個人保証をつけたり、不動産を担保に入れたりするのが一般的ですが、ABLなら担保となる不動産がなくても、企業が保有している在庫などの資産を有効活用して事業資金を調達できます。 関連記事はこちらABL(動産・債権担保融資)とは?仕組みや特徴をわかりやすく解説 日本政策金融公庫の融資制度 日本政策金融国庫は、「国民生活事業」、「農林水産事業」、「中小企業事業」の3つの事業を主軸に支援を行う政府系金融機関です。経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)や事業再生・企業再建支援など経営再建が必要な企業への融資制度が用意されています。 金融機関でのリスケが難しそうな場合は、日本政策金融国庫の融資制度への借り換えを検討するのも良いでしょう。それぞれ利用できる融資制度や諸条件が異なるため、まずは窓口で相談してみましょう。 出典)日本政策金融国庫「中小企業事業」 中小企業庁による支援 全国の商工会議所等が運営する中小企業活性化協議会では、収益力低下、借入増加のおそれのある中小企業を対象に収益力改善支援を実施しています。具体的には、1~3年間の収益力改善計画と資金繰り計画の作成と、その後の定期的なモニタリングなどを行ってくれます。 計画作成にあたって融資のリスケが必要と判断された場合は、1年間の収益力改善計画を作成してくれます。融資のリスケを検討している場合や、今後経営をどう立て直すか悩んでいる場合は、収益力改善支援の利用を検討しても良いかもしれません。 出典)中小企業庁「収益力改善支援」 まとめ 借入金の返済に困ったときは、金融機関に融資のリスケを申込むことで返済条件を見直してもらえる可能性があります。融資のリスケをして一時的に資金繰りが楽になれば、経営立て直しに集中して取り組むことが可能です。 不動産を所有している場合は、融資のリスケ以外の選択肢としてノンバンクの不動産担保ローンやリースバックも検討してみましょう。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 物上保証人と連帯保証人の違いとは? 「保証人」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。一方で、保証人が「どのような責任を負うことになるか」理解をしている人は少ないかもしれません。また、一口に「保証人」と言っても、「物上保...記事を読む
ここ数年、”DINKsマンション”や”コンパクトマンション”の供給戸数が再び増加しており、今後さらに人気が高まる可能性があります。DINKsマンションを購入するメリットがある一方で、購入する際に注意すべき点もあります。そこでこの記事では、DINKsマンションを購入するメリットや注意点を解説します。 DINKsマンションについて DINKsマンションとは? DINKsとは、「Double Income No Kids」の頭文字を並べた言葉で、結婚後も子供を持たずに夫婦とも職業活動に従事するライフスタイルを指します。 つまり、DINKsマンションとは、夫婦二人で暮らすために適した間取りになっており、単身者向けよりも広く、ファミリー向けよりも狭い30~50㎡程度の大きさのマンションを指します。 出典)知恵蔵2015『DINKs 』 - コトバンク - 執筆:山田昌弘、2007年 DINKsマンションは増加傾向にある 2019年3月に株式会社不動産経済研究所から出されたプレスリリースによれば、首都圏のコンパクトマンションのシェアは、2009年の10.5%から2014年の供給が3.7%に右肩下がりに減少した後、2018年は8.7%に右肩上がりに増加しています。
「老後破産」は、日本人の高齢化などにより、取り上げられるようになったテーマの一つです。様々なメディアなどで目にする機会も増え、老後の生活を不安に感じる人もいるでしょう。 この記事では、老後破産の原因やその実態、老後破産に陥らないための準備や対策を解説します。 老後破産とは まず、「老後破産」という言葉に明確な定義はありません。そのため、この記事では「定年後の生活の中で、家計を維持できなくなること」と定義します。 自分はそれなりに貯蓄もあるし、関係のない話と思う人もいるかもしれません。しかし、仮に貯蓄が豊富にあったとしても、定年後20年、30年と暮らしていくことで、老後破産に陥るかもしれません。定年後は現役時代よりも収入が少なくなる、という人は多いでしょう。そうすると、現役時代と同じ生活水準を続けるには、貯蓄を切り崩しながら生活することになります。つまり、老後破産に陥る人は貧しい人ではなく、身の丈に合わない生活水準で、亡くなるまでに所有資産が尽きてしまう人とも言えます。 老後破産の実態 公的機関が行った調査から、老後破産の実態を探ります。 老後破産の割合は増加傾向 まずは、破産者における高齢者の割合を見てみましょう。「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、60歳以上の破産債務者の割合が増加しています。2002年調査では約17%でしたが、2020年調査では約25%となっています。一方で、あくまで「高齢者の割合」なので、件数が増加しているとも限りません。また、人口動態として、高齢者の割合が増加していることも、この結果の要因となるでしょう。 出典)内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」 老後の所得や貯蓄額 最後に、世帯主が65歳以上の世帯の所得や貯蓄を見てみましょう。先ほどの「令和4年版高齢社会白書(全体版)」によると、高齢者世帯の平均所得は312.6万円、貯蓄の中央値は1,555万円です。この結果から、所得にある程度余裕があると思うかもしれません。 しかし、最も多い所得階層は、150~200万円の12.3%、次いで100~150万円の12.0%です。さらに50万未満の2.0%、50~100万円の10.7%を足せば、高齢者世帯の37%の所得が150万円以下であることがわかります。 この結果から、貯蓄を切り崩しながら生活している人が多数いると考えられます。つまり、これらの所得が少ない人の貯蓄額によっては、老後破産予備軍は、先ほどの7%という結果よりも多くなるのかもしれません。 出典)
昔に比べて平均寿命が延びて老後の期間が長くなったことから、「終活」を行う人が増えています。終活と聞くと、葬儀やお墓、相続など自分が亡くなった後のことをイメージするかもしれません。しかし、実際は家族や友人関係、医療・介護、財産など、生前のうちに確認し、準備しておくべきことはたくさんあります。 老後の不安を解消し、残りの人生を自分らしく生きるには、終活について理解しておくことが大切です。この記事では終活ですることや始めるタイミング、老後資金の準備について解説します。 終活とは 終活は週刊誌によって作られた言葉で、「人生の最期を迎えるための活動」といった意味に加え、「残りの人生をより前向きに自分らしく生きるための活動」という意味もあります。 終活が注目されるようになった背景には、高齢化によって老後破産や孤独死、認知症、相続トラブルなどの増加が社会問題化していることがあります。厚生労働省の簡易生命表(2019年)によれば、男性の平均寿命は81.41年、女性は87.45年です。また、90歳まで生存する人の割合は男性27.2%、女性51.1%となっています。 このような背景から「老後生活の不安を解消したい」「家族に負担をかけたくない」と考える人が増え、終活に取り組む人が増えていると考えられます。 出典)厚生労働省「2019年(令和元年)生命簡易表の概況」 終活はいつから準備する? 終活を始めるタイミングは人それぞれで正解はありません。「仕事を辞めて年金生活になった」「一定の年齢に達した」など、人生の転機を迎えたときや死を意識したタイミングで、少しずつ進めていくといいでしょう。 ただし、認知症を患うなど、意思表示ができなくなると始めるのは難しくなります。そのため、まだ元気なうちに、「少し早いかな」と思うぐらいのタイミングで始めるのがおすすめです。 終活では何を準備する? 終活では、現在の状況と将来するべきことを整理するために、エンディングノートを作成するといいでしょう。エンディングノートに法的な効力はなく、書き方のルールもないので、好きな方法で作成して構いません。エンディングノートでは、主に以下の内容について整理します。 自身や家族、友人のこと 自身の基本情報(氏名、生年月日、住所、本籍地など)や趣味などを書いておけば、誰が書いたものかが一目でわかります。スマホやインターネットなど、自身が契約しているサービスについても伝えておくと家族は助かるでしょう。また、家族や友人の連絡先、自身との関係なども書いておくと、必要に応じて連絡をとることができます。 医療や介護のこと 判断力が低下したり、意思表示ができなくなったりしたときのために、かかりつけ医や持病、飲んでいる薬、アレルギーなどについて書いておくといいでしょう。また、介護や延命治療に関する希望を伝えておくと、もしものときに家族が判断しやすくなります。 財産に関すること 老後生活が長くなるほど、財産を適切に管理することの重要性は高まります。収入や支出の項目・金額を整理して、老後の家計収支を把握しましょう。また、預貯金や不動産、金融資産など保有中の資産を一覧にしておくことも大切です。 葬儀やお墓のこと 最近では、葬儀やお墓に対する考え方が多様化しており、その様式もさまざまです。たとえば、葬儀は一般葬の他に、参列者が親族のみの家族葬や一日葬などもあります。また、お墓も代々受け継いでいく家族墓だけでなく、永大供養墓や散骨といった形もあります。そのため、葬儀やお墓についての希望、連絡先のリストなどを書いておくといいでしょう。 相続のこと 相続トラブルを避けるには、相続人や相続財産について整理する必要があります。また、預貯金や不動産といった資産だけでなく、借金などの負債も相続財産に含まれる点に注意が必要です。相続について希望がある場合は、遺言書の作成も検討しましょう。 終活をするメリット 終活をするメリットとしては下記のようなことが挙げられます。 万が一の備えになる 医療や介護に関する希望を家族に伝えておいたり、エンディングノートに記載をしておくことは万が一の際の備えになります。例えば、認知症になって判断力が低下したり、意識不明や重篤な状態に陥ってしまった場合に、延命治療や介護の希望などを伝えておくと、家族が判断をしやすくなります。 また、エンディングノートに自身のアレルギーや持病、常備薬を記載しておくことももしものときの備えになります。 相続をスムーズに進められる 財産の整理や相続の準備をしておくことで、残された家族が相続をスムーズに進められます。例えば、エンディングノートに保有している金融資産や不動産などをまとめて記載しておくと、残された家族が財産を把握しやすくなります。 また、相続について希望がある場合は、遺言書を作成しておくことも有効です。財産の整理や遺言書の作成をしておくことで相続をスムーズに進められるだけでなく、トラブルを回避することにもつながります。 葬儀やお墓の手配をスムーズに進められる 葬儀やお墓の希望について家族に伝えておくことで、手配をスムーズに進めることができます。自身の死後、葬儀やお墓のことなど残された家族には決めるべきことが多くあります。そこで、葬儀やお墓について希望を伝えておくことで、家族が段取りをしやすくなり、負担を軽減することができます。 また、事前に自身でお墓を用意しておいたり葬儀費用を準備しておくことも、残された家族の負担を軽減することができます。 自身の経済状況を把握できる エンディングノートに自身の財産等をまとめることで経済状況を把握できます。そして、自身の経済状況を把握することは、健全な家計収支の維持にもつながります。 自身の経済状況を把握し、今後の人生をどのように過ごすのか改めて見直すことは充実した老後生活を送るためにも大切です。 備忘録になる エンディングノートに保有している銀行口座や保険、株式をまとめておくと備忘録になります。また、各種暗証番号等を記載しておけるエンディングノートなどもあります。 このようにエンディングノートを備忘録として活用するのも一つの有効な方法であると言えます。 人生の振り返りができる 終活は自身の人生を振り返る良い機会でもあります。エンディングノートには様々な種類があり、中には自分史や思い出について記載できるものもあります。このようなことを改めて整理することで、今までの自身の人生を振り返ることができます。 今後の人生をより良く生きるためにこれまでの自身の人生を振り返ることもおすすめです。 生きがいや目標を発見できる 終活では、残された家族の負担を軽減することにフォーカスされることが多いです。しかし、自身の人生を振り返り、今後の人生をより良く自分らしく生きることができるようにするというのも終活を行う目的の一つです。 終活に際しては、これからのセカンドライフで何をしたいか、だれと会いたいかなどを整理してみるとよいでしょう。そうすることで、新たな生きがいや目標を発見することができるかもしれません。 終活をしなかった場合に生じる問題 終活をしなかった場合、下記のような問題が生じる可能性があります。 医療や介護に関する希望を把握できない 年を重ねるにつれて医療や介護が必要になる可能性が高くなります。万が一意識不明や重篤な状態に陥り意思表示が難しくなった場合に、延命治療や介護の希望がわからないと家族が判断をしにくくなります。 相続トラブルが発生する 終活によって自身の財産の整理や相続に関する希望を遺しておかなかった場合、相続トラブルが生じる可能性が高くなります。相続トラブルは遺産内容が不透明であることや遺産分割の割合に偏りがあることに起因するケースが多いです。 葬儀やお墓の準備に手間がかかる 自身の死後、葬儀やお墓のことなど残された家族には決めるべきことが多くあります。例えば、葬儀の日程や形式、寺院の選定、訃報を知らせるべき方の選定などです。これらのことを一から決めるのは非常に手間がかかります。 残された家族が財産を把握できない 自身の財産をまとめて記録しておかないと、残された家族が財産を把握しにくくなります。近年ではパソコンやスマートフォンなどに保存しているデジタルデータなど目に見えない財産も増えています。これらの財産は、家族に伝えておいたり、エンディングノートに記載をしておかないと把握できない可能性が高いです。 十分な老後資金が準備できているかを確認する 終活の中でも、優先的に取り組んでおきたいのが老後資金の問題です。残された家族のことを思えば、自身が亡くなった後のことについて考えるのは大切なことです。しかし、終活では、自身の老後生活に問題がないかを確認するのが、最優先で取り組むべき課題です。 現在の家計収支や資産状況を整理・把握して、十分な老後資金が準備できているかを確認しましょう。もし老後資金が不足するようなら、早急に対策をたてる必要があります。 終活に「リースバック」という選択肢も 老後資金が足りない場合、持ち家があるなら「リースバック」という選択肢があります。リースバックとは、自宅を売却してまとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるサービスです。 リースバックはローン商品ではなく、売却と賃貸が一体となった不動産取引であるため、利用にあたって年齢や収入の制限はありません。また、持ち家を売却すると、通常は別の住居を確保する必要がありますが、リースバックならそのまま住み続けることが可能です。 加えて、リースバックを利用して不動産を現金化すれば財産を分配しやすくなるため、相続トラブルを回避するための手段としても活用できます。 終活に関するよくある質問 終活をしている人はどのような理由で始めますか? インターネット調査会社マクロミルの調査によると、終活を始めている人のうち約89%の方が「家族に迷惑をかけたくないから」と回答しました。また、約48%の方が「病気やけがなどで寝たきりになったりした場合に備えて」、約35%の方が「自分の人生の終わり方は自分で決めたいから」と回答しています。 出典)PRTIMES「デジタル終活知っている?希望するお墓のカタチは?20~70代にきく終活に関する意識調査(マクロミル調べ)」 生前整理として残しておくべきものはどういうものですか? 生前整理として残しておくべきものには、生活必需品などの現在使用しているものに加え、相続にかかわる財産、形見として残したいものなどがあります。特に、相続にかかわる財産は自身の死後に保管場所がわかるようエンディングノートに記載しておくなど工夫が必要です。 終活として断捨離しておくと良いものはありますか? 不用なものやしばらく使用していないものは処分をしてしまうことをおすすめします。特に、家具などの処分に労力を要するものは、事前に処分しておくと残された家族の負担を減らすことができます。また、目に見えるものだけでなく、パソコンに保管されたデータなどのデジタルデータも整理しておくと良いでしょう。 終活をする上での注意点は何ですか? 終活をする人を狙った詐欺や悪徳商法が増加しています。お金が絡むものは、自身で決めるのではなく、家族と相談するなど慎重に判断することをおすすめします。 出典)消費者庁 「第1部 第1章 第4節(4)高齢者が巻き込まれる詐欺的なトラブル」 《Appendix》エンディングノートの記載例 以下はエンディングノートに記載する内容の一例です。 自分自身や家族、友人のこと 自分自身の基本情報(氏名、生年月日、住所、本籍地など)や家族、友人についての記載例です。下記の内容以外にも自身で書きたいことがあれば記載しておくと誰が書いたのか分かりやすくなります。また、家族や友人については、自身の死後に連絡を希望するかまで記載をしておくと家族が判断をしやすくなるでしょう。 自分のこと 名前山田 太郎 生年月日1950年1月1日 住所〒〇〇〇ー〇〇〇〇東京都新宿区西新宿〇ー〇〇 本籍地〒〇〇〇ー〇〇〇〇東京都渋谷区道玄坂〇ー〇〇ー〇〇 血液型A型 趣味釣り読書 家族・友人のこと 氏名関係住所連絡先訃報について 山田 花子妻東京都新宿区〇〇・・・〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇知らせる 山田 次郎子東京都世田谷区〇〇・・・〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇知らせる 山田 二郎弟埼玉県〇〇市・・・〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇知らせない 佐藤 三郎友人福島県〇〇市・・・〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇知らせない 医療や介護のこと 医療や介護についての記載例です。持病については、常備薬やかかりつけの病院まで記載をしています。また、万が一の際に備えて延命治療や介護の希望についても記載をしておくと良いでしょう。 医療や介護のこと 持病高血圧 常備薬〇〇、〇〇〇〇 かかりつけの病院〇〇病院 〇〇科 担当医:〇〇 アレルギー卵、えび、かに、いか 延命治療希望しない 介護の希望自宅で家族に介護をしてもらいたい 財産のこと 財産についての記載例です。下記では、預貯金と株式について記載していますが、それ以外でも、資産を保有している場合は一覧にしてまとめておくと良いでしょう。 預貯金のこと 金融機関名〇〇銀行支店名〇〇支店 口座番号〇〇〇〇〇〇〇口座名義山田 太郎 口座種別普通備考 株式のこと 預入証券会社〇〇証券口座番号〇〇〇〇〇〇〇 名義人山田 太郎備考〇〇の株式を100株保有 葬儀やお墓のこと 葬儀やお墓についての記載例です。葬儀については、下記のような事項について記載をしておくと葬儀の準備がスムーズに進みやすいです。また、下記以外にも葬儀に参列してほしい人を表にしてまとめておいたり、納棺時の服装や棺に入れてほしいものなどを記載することもあります。 葬儀のこと 葬儀を希望する/しない希望する 葬儀会社・斎場株式会社〇〇住所:東京都新宿区〇ー〇〇 費用について準備している 葬儀の種類家族葬 宗教の希望仏教 遺影についてあり(机の引き出しの一番上) 戒名についてこだわりはありません お墓のこと お墓の有無先祖代々のお墓 埋葬方法の希望永代供養墓 お墓がある場合墓地・霊園の名称:〇〇霊園住所:東京都練馬区〇〇ー〇〇連絡先:〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇 相続のこと 下記は遺言書についての記載例です。遺言書がある場合は、保管している場所まで記載をしておくと良いでしょう。また、遺言書の有無以外にも、遺産分割や遺品の処分について希望がある場合は、記載をしておくことをおすすめします。 相続のこと 遺言書の有無有 遺言書の種類自筆証書遺言(机の一番下の引き出し) 遺言書の関係者弁護士:〇〇連絡先:〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇 まとめ 終活は、家族の負担を減らせるのはもちろん、残りの人生を自分らしく生きることにも役立ちます。終活ですることはたくさんありますが、最優先して取り組むべきことは財産整理です。家計収支や資産状況を整理した結果、持ち家があって老後資金が不足しそうな場合はリースバックの活用を検討しましょう。 リースバックならSBIスマイル もっと詳しく知りたい方はこちら SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定も無料で受け付けています。※SBIスマイルのHPに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 リースバックとは「セール・リースバック」や「セール・アンド・リースバック」とも称される取引手法で、所有している資産を第三者に売却し、リース契約を締結することで、それまでと同じ資産を利用し続け...記事を読む { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "終活をしている人はどのような理由で始めますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text": "インターネット調査会社マクロミルの調査によると、終活を始めている人のうち約89%の方が「家族に迷惑をかけたくないから」と回答しました。その次に約48%の方が「病気やけがなどで寝たきりになったりした場合に備えて」、約35%の方が「自分の人生の終わり方は自分で決めたいから」と回答しています。" } }, { "@type": "Question", "name": "生前整理として残しておくべきものはどういうものですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"生前整理として残しておくべきものには、生活必需品などの現在使用しているものに加え、相続にかかわる財産、形見として残したいものなどがあります。特に、相続にかかわる財産は自身の死後に保管場所がわかるようエンディングノートに記載しておくなど工夫が必要です。" } }, { "@type": "Question", "name": "終活として断捨離しておくと良いものはありますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"不用なものやしばらく使用していないものは処分をしてしまうことをおすすめします。特に、家具などの処分に労力を要するものは、事前に処分しておくと残された家族の負担を減らすことができます。また、目に見えるものだけでなく、パソコンに保管されたデータなどのデジタルデータも整理しておくと良いでしょう。" } }, { "@type": "Question", "name": "終活をする上での注意点はありますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"終活をする人を狙った詐欺や悪徳商法が増加しています。お金が絡むものは、自身で決めるのではなく、家族と相談するなど慎重に判断することをおすすめします。 " }} ] }
不動産を担保とするローンの返済が困難になると、最悪の場合、競売によって担保不動産が強制的に売却されてしまいます。競売にはデメリットがあるので、ローンの返済が困難になったとしても、絶対に回避すべきです。また、不動産を担保にローンを借りるのであれば、もしものときの備えとして、競売について理解しておくことが大切です。 この記事では、競売を回避すべき理由や回避する方法について解説します。 競売とは 競売とは、債務者の所有する不動産などを売却し、その代金を債務の弁済にあてる手続きです。この手続きは、債権者の申し立てにより、裁判所が不動産などを差し押さえることで行われます。 競売は3種類に分類される 一口に「競売」といっても、競売に至るまでの経緯によって、3種類に分類されます。なお、手続きそのものの流れについては、3種類とも同様です。 強制競売 強制競売は、判決や裁判所での和解又は調停で決まった内容を実現したり、公証人が作成した公正証書の内容を実現したりするための手続きです。 担保不動産競売 担保不動産競売は、不動産に設定された担保権(主に抵当権)を実行するための手続きです。 形式競売 形式競売は、債務の清算としてではなく、遺産分割や共有物分割、破産手続上の換価など、不動産を売却してお金に換える必要があるときに、競売手続をその手段として利用するものです。 公売と競売の違い 競売は債権の回収を図る手続きであるのに対して、公売は滞納税金の回収を図る手続きです。根拠法も競売が民事執行法であるのに対し、公売は国税徴収法となります。また、競売は主に裁判所が手続きを進行しますが、公売は国税局や税務署が手続きを進行します。 競売の流れ 一般的に住宅ローンなどの保証会社がついている融資の場合、競売の大まかな流れは以下のとおりです。 金融機関から一括返済を求められる(督促状・催告状が届く) 保証会社が金融機関に一括返済を行う(代位弁済) 債権者が裁判所に競売申立てを行う 裁判所から競売開始決定通知が届く(差押え) 不動産の現況調査が行われる 競売の入札が実施される 落札者に不動産が売却される(退去) 上述のような流れで競売手続きが開始され、最終的には担保不動産が売却されます。競売の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事はこちら担保不動産競売までの流れをわかりやすく解説 競売を回避すべき3つの理由 競売は主に以下の3つの理由から、回避すべきと言えます。 落札価格(売却価格)が市場価格よりも安くなる 競売物件は買主にとってリスクが高いため、落札価格(売却価格)は市場価格を下回るのが一般的です。市場価格より落札価格が安くなる理由は以下のとおりです。 落札した建物に欠陥が見つかれば、買主が修繕費を負担しなくてはならない 前の所有者が落札後も退去しなければ、退去してもらうための交渉や手続きも必要になる 「競売物件」に対する抵抗感がある 通常の不動産取引に比べて、競売は手続きが煩雑である 競売での落札価格に大きく関わるのが、「売却基準価額」と「買受可能価額」です。上述のとおり、競売は落札者の負担が大きいことから、競売にかけられる不動産の売却基準価額は、市場価格の約7~8割程度に設定されます。 そして、最低落札価格を表す買受可能価額は、売却基準価額の8割です。落札価格の基準となる価額がこのように決定されているため、一般的に落札価格は市場価格を下回ってしまいます。 余計な費用がかかる 競売では、通常の不動産取引ではかからない、余計な費用がかかります。競売が実行されるまでには、各種書面の送付や現況調査など、さまざまな費用が発生しますが、これらの費用は予納金によって賄われます。予納金とは、裁判所に競売の手続きを申立てるときに債権者が納めるお金です。たとえば、競売物件が東京23区の場合、予納金の額は以下のとおりです。 請求債権額 予納金の額 2,000万円未満 80万円※ 2,000万円以上 5,000万円未満 100万円 5,000万円以上 1億円未満 150万円 1億円以上 200万円 ※令和2年3月31日以前に受理された申立てについては60万円 出典)裁判所|不動産競売事件(担保不動産競売,強制競売,形式的競売)の申立てについて 予納金は競売手続きを開始するときは債権者が債務者に代わって立替をしますが、最終的には売却代金から差し引かれて債権者に返還されるため、実質的には債務者が負担することになります。 また、ローンの延滞が始まってから競売で売却されるまでは、延滞分の遅延損害金も発生します。延滞から競売による売却まで一年以上かかる場合もあるため、残債によってはかなりの額になります。こうした費用が重なり債務者の負担金額が増加するため、競売で不動産を売却しても、残債を完済できない恐れもあります。 競売にかけられたことを知られてしまう 不動産を競売にかけられると、周囲に知られてしまう恐れがあります。なぜなら、裁判所による競売・差押えは公示され、所在地や外観、室内写真など、物件の詳細がホームページ上に掲載されるからです。名前が公開されることはありませんが、近所の人や会社などが見れば、競売にかけられていることはすぐにわかります。 また、競売の手続きが進むと、裁判所の執行官による現地調査が行われ、占有者や物件状態の確認、外観や室内の写真撮影、周辺住民への聞き取りなども行われます。また、ホームページなどに掲載された情報をもとに、落札目的の不動産業者が物件確認に訪れることも多いです。 競売で残債を完済できないとどうなる? 上述のとおり、競売は落札価格(売却価格)が市場価格よりも安くなるうえに、余分な費用も掛かってしまうため、競売後も残債を完済できない恐れがあります。 競売で完済できなかった残債については、引き続き、債権者に返済をすることになります。このときの債権者は、ローンを融資した金融機関や途中で「代位弁済」をした保証会社となりますが、債権管理回収を専門に行う「サービサー」という業者になることもあります。サービサーは、競売後、それまでの債権者から債権を譲渡され、債務者からの債権回収を行ないます。 このように、債権者は変わる可能性はありますが、債務者の残債に対する返済義務はそのままです。実際の返済方法については、債権者との交渉になりますが、分割払いとなるケースが多いようです。 競売を回避する方法 債権者から申立てによって、競売手続きが開始されたとしても、開札期日の前日までは取り下げの手続きができます。しかし、申立てを取り下げるように交渉するのは簡単ではありません。債権者に競売の申立てられた場合には、以下のような対策を行いましょう。 ①不動産担保ローン 他の金融機関から新たに融資を受け、残債を返済することができれば、債権者は競売の手続きを取り下げてくれます。しかし、延滞歴や資産状況を考えると現実的には難しいです。 一方で、不動産担保ローンを提供している金融機関の中には審査が柔軟な会社もあり、不動産に評価余力があれば融資を受けられるかもしれません。不動産担保ローンを利用して返済期間を延長できれば、毎月の返済額を低減できる可能性があります。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 ②任意売却 次に、任意売却とは、債権者と債務者の間で合意したうえで不動産を売却する方法です。債権者の合意を得ること以外は一般的な売却と同じなので、市場価格に近い値段で売却できる可能性があります。まずは、任意売却の相談に乗ってくれる不動産会社や弁護士を探しましょう。 関連記事はこちら競売を回避する「任意売却」とは?注意点や流れを解説 ③リースバック 最後に、同じ家に住み続けたい場合はリースバックも選択肢のひとつです。リースバックは自宅をリースバック運営会社に売却し、その運営会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けられます。債権者から売却価格の同意が得られれば利用できるかもしれません。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 まとめ 競売の申立てが行われると、取り下げてもらうのは簡単ではありません。競売で自宅を売却されてしまうと、市場価格よりも安くなるだけでなく、余計な費用がかかるなどのデメリットがあります。ローン返済の見通しが立たないときには、必ず借り入れした金融機関に相談しましょう。 自宅の売却相談はこちらから SBIシニアの住まいとお金なら、金融と不動産の両方の知識で丁寧にアドバイスいたします 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 「金銭消費貸借契約証書」の重要性とは? 金融機関から借入れた不動産担保ローンの返済が困難になってしまうと、担保として提供している不動産は金融機関によって売却されることになります。これは、不動産担保ローンを借入れるときの〝常識〟です...記事を読む