「老後のお金」の記事一覧

  • 親が住むための住宅ローンの種類と特徴、注意点を解説

    高齢になると、一般的に収入や年齢の関係で住宅ローンを組むのが難しくなります。しかし、老後は持ち家の老朽化やライフスタイルの変化などで、建て替えや住み替えのニーズが高まる時期でもあります。そのような時に、親に代わって子どもが住宅ローンを組める可能性があります。 この記事では、親が住むために組める住宅ローンの種類と特徴、注意点について解説します。 親が住むための住宅ローンの種類 親が住む家を購入する際に、子どもが組める住宅ローンとして、次の2つのローンが考えられます。 親族居住用住宅ローン セカンドハウスローン 親族居住用住宅ローンは、申込者の両親や子、孫などの親族が住むための住宅を建築・購入する際に利用できるローンです。申込者本人が居住する必要はありません。 セカンドハウスローンは、現在の自宅の他に、自分で利用するための住宅を取得する際に利用できるローンです。転勤時の仮住まい、週末に過ごすための別荘・別宅などの購入に利用できます。 どちらも住宅金融支援機構の提供するフラット35で取り扱っており、提携金融機関を通じて申込みができます。次の見出し以降では、フラット35における親族居住用住宅ローンとセカンドハウスローンのそれぞれの特徴と注意点を説明していきます。 親族居住用住宅ローンの特徴 まずは、親族居住用住宅ローンの特徴を確認していきましょう。 住宅ローンの借り入れがあっても利用可能 一般的な住宅ローンは、申込者本人が住む家の購入資金が融資対象です。すでに住宅ローンの借り入れがある場合、原則として2軒目の家の購入について住宅ローンを組むことはできません。しかし、親族居住用住宅ローンなら、住宅ローンの返済中でも親が住む家の購入が目的であれば利用できます。 出典)フラット35「Q 申込人が居住するための住宅と親族が居住するための住宅の両方について、同時に借入れの対象になりますか?」 同居・別居は不問 親族居住用住宅ローンを利用する場合、親との同居・別居は問われません。親と同居することも、別々に住むことも可能です。 収入合算が可能 親族居住用住宅ローンは、申込者の収入と、購入する家に入居する親の収入を合算して審査を受けられます。収入合算を行うことで、申込者単独で契約するよりも借入額を増やすことができます。 フラット35の場合、次のすべての要件にあてはまる人(1名)との収入合算が可能です。 申込時の年齢が70歳未満の人 連帯債務者となることができる人 申込者と同居する人(申込者の親、子、配偶者など)、または融資対象住宅に入居する人 収入合算は、申込者単独では借入希望額に満たない場合に有効といえるでしょう。 住宅ローン控除は受けられない sup { font-size: 0.65em; vertical-align: super; } 住宅ローンを組んで住宅を建築・購入する場合、通常は住宅ローン控除が適用されます。※1しかし、親族居住用住宅ローンでは、原則として住宅ローン控除を受けられません。 住宅ローン控除は、住宅取得者の金利負担の軽減を図ることが目的のため、申込者が住まない住宅は控除の対象外となります。 ただし、融資対象住宅に居住する人が連帯債務者になる場合、その連帯債務者は住宅ローン控除を受けられます。例えば、子どもが親のために融資を受けて家を購入した際、親が連帯債務者になっている場合は、親が組んだ住宅ローンは住宅ローン控除の対象となります。 ※1 2024年、2025年に新築住宅に入居する場合、2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅で、住宅ローン減税を受けるには省エネ基準に適合する必要があります。 出典) ・国土交通省「住宅ローン減税」 ・フラット35「親族居住用住宅のお申込みについて」 セカンドハウスローンの特徴 次に、セカンドハウスローンの特徴を説明します。 すでに自宅を所有している人が利用可能 セカンドハウスローンは、すでに自宅を所有している人が利用できる住宅ローンです。別荘など2軒目の住宅取得を目的としているため、自宅を所有していない人が、親が住む家を購入するためにセカンドハウスローンを利用することはできません。 返済比率などの条件からハードルが高い セカンドハウスローンは、通常の住宅ローンに比べると審査が厳しい傾向にあります。すでに自宅を所有しており、住宅ローンの返済中に申し込むケースが多いため、返済比率などの条件から審査基準が高くなりやすいからだと考えられます。 フラット35の場合、すべての借り入れについて総返済負担率(年収に占める年間合計返済額の割合)について次の基準を満たす必要があります。          年収400万円未満 年収400万円以上 総返済負担率の基準30%以下35%以下 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」 仮に融資を受けられたとしても、住宅ローンにセカンドハウスローンの支払いが上乗せされるため、返済負担が大きくなりすぎないように注意しましょう。 金利は一般的な住宅ローンよりも高い セカンドハウスローンの金利は、一般的な住宅ローンより高めに設定されています。住宅ローンの借り入れがある状態で利用すると、さらに返済額が増えるため貸し倒れリスクが高まることも影響していると考えられます。 住宅ローン控除は受けられない 親族居住用住宅ローンと同様に、セカンドハウスローンも住宅ローン控除の適用対象外です。比較的金利が高いことに加えて、住宅ローン控除を受けられないため、想定以上に返済負担が大きくなる恐れがあります。 住宅ローンを返済中にセカンドハウスローンを組む場合は、住宅ローン控除を受けられないことを前提に返済計画を立てることが大切です。 出典)フラット35「セカンドハウスのお申込みについて」 まとめ 親が住む家の住宅ローンを組む場合は、「親族居住用住宅ローン」と「セカンドハウスローン」の2つが選択肢となります。 どちらも住宅ローンの返済中でも利用が可能です。ただし、返済負担が大きくなることに加えて住宅ローン控除を受けられないため、無理のない返済計画を立てることが大切です。利用を検討する場合は、両者の違いを理解したうえで取扱金融機関に相談してみましょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 親子リレーローンとは?メリット・デメリットと注意点を解説 親子リレーローンは、親子二世代にわたって返済する仕組みの住宅ローン商品です。親子リレーローンを利用することで、単独でローンを組むより借入金額を増やせる可能性があります。一方で、親子リレーロー...記事を読む

  • 退職金制度とは?種類や特徴について解説

    会社を退職した時に、退職金額はいくらなのか、どのようにもらえるのかご存じでしょうか。退職金制度の種類は複数あるため、自身が勤める会社がどんな制度を採用しているかを把握しておくことが重要です。 この記事では、退職金制度の種類とそれぞれの特徴について詳しく解説します。 退職金制度とは 退職金制度とは、企業に一定期間働いた場合、勤続年数や役職、在職期間中の業績などに応じてお金が支給される制度のことです。しかし、退職金制度は労働基準法での取り決めがないため、必ずしも企業に制度導入の義務はありません。 退職金制度がある場合は、会社の就業規則や退職金に関する規程に明記されているため、確認しておきましょう。 退職金の相場 厚生労働省の調査によると、定年退職者の勤続年数別の平均退職給付額は以下のとおりです。 勤続年数 退職一時金 企業年金現価額 退職給付額 20年 394.9万円 222.9万円 617.8万円 30年 634.8万円 815.7万円 1,450.5万円 40年 1,269.2万円 888.1万円 2,157.4万円 出典)厚生労働省「令和3年民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)」 勤続年数が長くなるにつれて、退職給付額(退職一時金と企業年金の合計)も増加していることがわかります。勤続年数が長ければ長いほど、受け取れる退職金も多くなるのが一般的といえるでしょう。 退職金の使い道 退職金は老後の生活設計に大きく関わります。安心して老後生活を送るには、あらかじめ退職金の使い道を検討し、計画的に使うことが重要です。ここでは、退職金の使い道として代表的なものを4つ紹介します。 住宅ローンの返済 住宅ローンがまだ残っている場合、退職金を使って一括返済するか、引き続き毎月返済していくかを検討するかもしれません。 住宅ローンを一括返済した場合、月々の返済負担はなくなりますが、残債によっては退職金がほとんど手元に残らない場合もあるでしょう。残債や残返済期間、退職後の勤労収入の有無などを考慮して、一括返済するべきか判断することが大切です。 関連記事はこちら老後資金を確保するための住宅ローン返済術(60歳以上編) 住み替え・リフォームの資金 退職金を受け取る年齢になると、ライフスタイルの変化により住み替えやリフォームを検討するかもしれません。「子どもが独立したので自宅をダウンサイジングしたい」、「自宅が古くなったので住み替えたい」などの希望に沿って、退職金を住み替えやリフォーム資金に充てられます。 リフォームでは補助金が出る場合もあるほか、60歳以上の住宅ローンであるリ・バース60などを活用すれば手元資金を残すこともできます。いずれにしてもまとまったお金が必要になるので、計画的に行いましょう。 関連記事はこちらリ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 老後の生活資金 退職金は、老後の生活費として残しておくと安心です。特に公的年金だけで生活するのが難しい場合、退職金は重要な老後の生活資金になります。 老後は娯楽費などを含めた日々の生活費に加えて、事故や病気、介護などでまとまった資金が必要になることもあるため、ゆとりをもって資金を確保することが大切です。 関連記事はこちら夫婦の老後資金はいくら必要?足りない時の対処法も紹介 関連記事はこちら老後の一人暮らしに生活費はいくら必要? 資産運用 退職金のうち、すぐに使う予定のない余剰資金は資産運用に回すのも選択肢です。株式や投資信託等の金融商品として保有することで、預貯金よりも資産が長持ちする効果が期待できます。 たとえば、65歳から2,000万円を毎月10万円(年120万円)取り崩す場合、81歳で資産は底をつきますが、利回り3%で運用しながら取り崩せば88歳まで資産は長持ちします。 資産運用は株式、投資信託、不動産投資など複数の方法があります。うまく運用できれば利益が出る一方で、損をすることもあるため、リスクのとりすぎに注意しましょう。金融機関や専門家などに相談する場合も、相談先は慎重に選ぶことが重要です。 退職金制度の種類とそれぞれの特徴 退職金制度は、主に次の4種類に分類されます。 退職一時金制度 退職金共済制度 確定給付企業年金制度(DB) 企業型確定拠出年金制度(DC) それぞれ制度内容や特徴について見ていきましょう。 退職一時金制度 退職一時金制度とは、会社を辞める際に一度にまとめて退職金が支給される制度です。支給額は勤務先の退職金規程に基づいて計算されます。退職一時金制度は自由度が高く、企業ごとに退職金の計算方法が異なるのが特徴です。 企業によって制度内容が異なるため、勤務先の退職金規程の内容を理解しておくことが重要です。わからないことがあれば、あらかじめ社内の担当者に確認しておきましょう。 退職金共済制度 退職金共済制度とは、主に中小企業を対象とした国の制度です。代表的なものに「中小企業退職金共済(中退共)」、「特定退職金共済」があります。 企業が外部機関に毎月掛金を支払い、退職金の積み立てを行います。そして従業員の退職時に、積み立てた掛金をもとに外部機関から退職金が直接従業員に支払われる仕組みです。退職金を受け取る際は、従業員本人が退職金請求の手続きを行う必要がある点に注意しましょう。 出典)独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部 確定給付企業年金制度(DB) 確定給付企業年金制度(DB)とは、会社を辞めるときに一時金または年金が給付される制度です。退職時に全額を一時金で受け取るか、一定期間にわたって年金で受け取るかを選択できます。 企業は契約に基づいて金融機関などに掛金を拠出し、年金資産の管理・運用を依頼します。将来の給付額があらかじめ決まっているため、従業員にとっては将来の見通しを立てやすいでしょう。 企業型確定拠出年金制度(DC) 企業型確定拠出年金制度(DC)とは、企業が掛金を拠出し、その掛金を従業員本人が管理・運用する制度です。従業員は投資信託などから運用商品を自ら選択し、その運用成果に応じて給付額が決まる仕組みになっています。 企業型確定拠出年金(DC)では、拠出限度額である月額55,000円の範囲で、会社が拠出する掛金に加えて、従業員本人が掛金を上乗せして拠出することができます。これをマッチング拠出制度といいます。 従業員掛金は会社の拠出金を超えることはできませんが、全額所得控除の対象となるため税制面でも優遇されます。 しかし、運用がうまくいけば給付額を増やすことができる一方で、選択した商品によっては元本割れの恐れがあるので注意が必要です。積立金は、原則として60歳以降に一時金または年金として受け取ることができます。企業によっては、一時金と年金を併用することも可能です。 退職金の税金・所得控除の計算方法 退職金は、「退職所得」として所得税や住民税の課税対象となります。ただし、退職所得控除が適用されるため、退職金額が退職所得控除額の範囲内に収まっていれば課税されません。 <退職所得金額の計算方法> 退職所得金額=(退職金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2 <退職所得控除額の計算方法> 勤続年数20年以下 40万円×勤続年数※80万円未満の場合は80万円 勤続年数20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年) たとえば、30年勤務していた会社を退職する場合、退職所得控除額は1,500万円(800万円+70万円×10年)です。仮に退職金が2,000万円であれば、退職所得金額250万円(2,000万円-1,500万円)×1/2)に対して税金がかかります。 退職金の税金は、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば退職金支給時に源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。詳しくは、勤務先の担当部署に確認しましょう。 なお、退職金を年金で受け取る場合、国民年金や厚生年金などの公的年金と含めて「公的年金等控除」が適用されます。控除額を超える部分は、雑所得として所得税や住民税がかかります。 まとめ 退職金制度には複数の種類があり、どの制度を採用しているかは企業によって異なります。退職金を無計画に使ってしまうと、老後の生活費が不足するリスクがあります。退職金の見込額が把握できたら、住宅ローンの返済や住み替えなど、あらかじめ使い道を決めておきましょう。 また、退職金制度がない場合や老後資金に不安がある場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用するなど、計画的に資産を増やすことも大切です。退職後により豊かな生活を送るためにも、まずは自社の退職金制度を理解し将来の資金計画を早めに立てることが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 iDeCo(イデコ)の仕組みとは?メリット・デメリットを解説 iDeCo(イデコ)は、公的年金だけでは不足する老後資金を準備するための制度です。iDeCoについて聞いたことはあっても、その特徴はよくわからない方もいるのではないでしょうか。iDeCoは2...記事を読む

  • 家族信託の費用

    家族信託にかかる費用・税金と相場、手続きする際の注意点を解説

    家族信託とは、財産の管理、運用、処分を家族に任せるための制度です。親の判断能力が低下した場合、子どもの判断で親の財産を運用、処分できるため、認知症対策として注目されています。家族信託をする場合、どのような費用や税金がかかるのでしょうか。 この記事では、家族信託にかかる費用や税金とその相場について解説します。 家族信託でかかる可能性がある税金 家族信託では、状況に応じて以下5つの税金がかかる場合があります。 贈与税 相続税 所得税(法人税) 固定資産税 登録免許税 それぞれ詳しく見ていきましょう。 贈与税 家族信託の場合、委託者と受益者が同じ人であれば贈与税は発生しません。しかし、委託者以外の人が受益者となった場合、財産を贈与したとみなされ、受益者に贈与税がかかります。 例えば、「父:委託者、子:受託者、母:受益者」とし、信託財産である収益不動産(信託前は父名義)の家賃収入を母(受益者)が受け取るような場合が考えられます。 相続税 家族信託では、信託財産から生じる利益を受け取る「受益者」が亡くなったときに相続が発生します。受益者の死亡によって信託契約を終了する場合は、信託財産を相続する人に相続税が課されます。受益者の死亡後も信託契約を継続する場合は、受益権を引き継ぐ人に相続税がかかります。 所得税(法人税) 信託財産から得られる収入(所得)については、受益者が所得税を納めなくてはなりません。また、受益者が受益権を売却した場合は、その利益に所得税がかかります。なお、受益者が法人であれば、法人税が発生します。 固定資産税 不動産を信託する場合、不動産の所有者が委託者から受託者に代わります。そのため、次年度からは受託者に固定資産税の納税義務が生じます。 ただし、信託契約において「固定資産税は受益者が負担する」と明記すれば、受託者の自己資金ではなく信託財産から納めることが可能です。 登録免許税 信託財産に不動産が含まれる場合、「信託による所有権移転登記」の登録免許税がかかります。 所有権移転登記は、不動産の名義人を委託者から受託者に変更するための手続きです。登録免許税額については後述します。 家族信託を手続きする場合の費用と相場 ここでは、家族信託を自分で手続きする場合と専門家に依頼した場合の費用相場を紹介します。 自分で手続きする場合の費用と相場 戸籍謄本、印鑑証明書、住民票などの資料取得費用 家族信託の手続きでは、戸籍謄本や印鑑証明書、住民票などの公的書類を取得しなくてはなりません。信託財産に不動産が含まれている場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)も必要です。取得費用はいずれも1通につき数百円程度です。 信託口口座開設費用 家族信託では、信託財産を管理するための信託口口座を開設します。金融機関によって異なりますが、開設費用は5~10万円程度が一般的です。正確な金額は金融機関に確認しましょう。 公正証書費用 家族信託では、信託口口座を開設する際に、金融機関から公正証書で作成された信託契約書の提出を求められる場合がほとんどです。そのため、信託契約書を公正証書にする必要があります。公正証書にかかる費用は以下のとおりです。 目的の価額 手数料 100万円以下 5,000円 100万円超 200万円以下 7,000円 200万円超 500万円以下 1万1,000円 500万円超 1,000万円以下 1万7,000円 1,000万円超 3,000万円以下 2万3,000円 3,000万円超 5,000万円以下 2万9,000円 5,000万円超 1億円以下 4万3,000円 1億円超 3億円以下 4万3,000円+5,000万円ごとに1万3,000円 3億円超 10億円以下 9万5,000円+5,000万円ごとに1万1,000円 10億円超 24万9,000円+5,000万円ごとに8,000円 出典)日本公証人連合会「手数料」 信託監督人・受益者代理人への報酬 家族信託では、状況に応じて信託監督人や受益者代理人を設定する場合があります。 信託監督人:受益者のために受託者の監督を行う者 受益者代理人:受益者のために受益者の権利を行使する者 信託監督人や受益者代理人を専門家に依頼すると、月額数万円程度の費用がかかります。 登録免許税 上述したように、信託財産に不動産が含まれている場合は、信託登記の登録免許税がかかります。税額は「不動産の固定資産税評価額×0.4%」です。ただし、土地については0.3%の軽減税率が適用されます(2026年3月31日まで)。 例えば、土地3,000万円、建物2,000万円の場合の登録免許税額は、以下のとおりです。 土地:3,000万円×0.3%=9万円 建物:2,000万円×0.4%=8万円 専門家に依頼した場合の費用と相場 専門家に依頼する場合は、上記の「自分で手続きする場合の費用」に加えて、以下の費用負担が発生します。 コンサルティング費用 信託契約書の作成費用 公正証書の手続き代行費用 不動産登記の代行費用 実際にかかる費用は専門家によって異なります。依頼の際に費用をしっかりと確認することが大切です。 家族信託の「損益通算禁止」とは 租税特別措置法第41条の4の2によると、信託財産から生じた損失は、信託財産以外から生じた所得との損益通算ができません。例えば、信託された収益不動産で赤字が生じても、信託財産以外の収益不動産の所得とは損益通算できないため、税負担が増える恐れがあります。 大規模修繕などで赤字の発生が見込まれる収益不動産がある場合は、信託する前に税理士などの専門家に相談しましょう。 出典)国税庁「第41条の4の2(特定組合員等の不動産所得に係る損益通算等の特例)関係」 まとめ 家族信託は、認知症などによる判断能力の低下に備えるには有効な手段です。ただし、専門家に手続きを依頼する場合はまとまった費用がかかります。家族信託でかかる税金・費用の相場を把握したうえで、利用するかを判断しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 家族信託とは?仕組みやメリット・デメリット、手続き方法を解説 親の判断能力が低下した場合、子どもの判断で親の財産を運用・処分することはできません。親の認知症対策としては「成年後見制度」が一般的ですが、近年では新たな財産管理方法として「家族信託」が注目さ...記事を読む

  • 「ねんきんネット」はこんなに便利!使い方や年金見込額の確認方法を紹介

    「ねんきんネット」はこんなに便利!使い方を詳しくご紹介

    ねんきんネットは、自身の年金情報をインターネットで簡単に確認できるサービスです。将来の年金見込額もわかるので、老後の資金計画を立てるのに役立ちます。うまく使いこなせば、将来のお金に対する不安を解消できるでしょう。 この記事では、ねんきんネットでできることや年金見込額を調べる手順、注意点を紹介します。 ねんきんネットとは ねんきんネットとは、インターネットを通じて自身の年金情報を手軽に確認できるサービスです。日本年金機構が運営しており、パソコンやスマートフォンから年金に関するさまざまな情報を閲覧できます。 日本年金機構のホームぺ―ジまたはマイナポータルから登録すれば、すぐに利用可能です。 ねんきんネットの利用対象者は、基礎年金番号を持っている人です。ただし、1986年(昭和61年)4月以前に年金受給権が発生した老齢年金受給者は利用できません。 ねんきんネットでできること ねんきんネットでは、将来の年金見込額や年金記録をはじめ、年金に関するさまざまな手続きができます。具体的には以下のとおりです。 将来の年金見込額の確認 ねんきんネットには、将来の年金額を試算する機能が2つあります。 かんたん試算:現在の加入条件が60歳まで継続すると仮定して見込額を自動的に試算 詳細な条件で試算:職業、収入および期間、受給開始年齢などの条件を入力して試算 試算結果では、年齢ごとの年金見込額や金額の内訳を表やグラフで確認できます。まずは「かんたん試算」で大まかに試算したうえで、必要に応じて「詳細な条件で試算」も利用してみましょう。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による年金見込額試算」 年金記録の確認 「年金記録の確認」機能では、「国民年金や厚生年金の加入履歴」「国民年金保険料の納付状況」などの最新の記録が確認できます。 加入していた年金制度の種類や納付状態が月別に記録されており、確認が必要と思われる月はアイコンなどでわかりやすく表示されます。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」によるご自身の年金記録の確認」 「ねんきん定期便」「通知書」の内容確認 ねんきん定期便とは、毎年誕生月に保険料納付の実績や将来の年金給付に関する情報をハガキや封書で通知するものです。 ねんきんネットを使うと、電子版「ねんきん定期便」をダウンロードできます。パソコンやスマートフォンから内容を確認できるので、紛失の心配がありません。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による電子版「ねんきん定期便」」 また、以下の通知書もねんきんネット内で確認できます。 年金振込通知書 年金支払通知書 年金額改定通知書 年金決定通知書、支給額変更通知書 公的年金等の源泉徴収票 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による年金支払いに関する通知書の確認」 通知書の再交付申請 ねんきんネットでは、以下の通知書の再交付申請が可能です(本人分のみ)。 年金振込通知書 公的年金等の源泉徴収票 支給額変更通知書 年金額改定通知書 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書 年金事務所などに訪問する必要がないため便利です。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による通知書再交付申請」 届書の作成 ねんきんネットを使って、年金の手続きで必要となる各種届書を作成できます。作成したい届書を選択し、必要な情報を入力して自宅のプリンターで印刷する仕組みです。基礎年金番号などの情報が自動で反映されるため、作成の手間を省くことが可能です。ただし、電子申請ではないため、印刷して作成した届書は最寄りの年金事務所へ提出する必要があります。 具体的には、以下の届出書を作成することができます。 国民年金保険料に関する届書 年金を請求している方、受給している方向けの届書 年金を受給している方が亡くなったときの届書 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による届書作成」 持ち主不明記録検索 持ち主不明記録検索とは、国が保存している年金記録のうち、現在持ち主がわからなくなっているものを検索できる機能です。例えば、年金加入状況に記録漏れがあった場合に、持ち主不明記録検索で自身のものと思われる記録がないかを確認する、といった活用法が考えられます。検索条件と一致する年金記録があった場合は、最寄りの年金事務所などが調査を行い、探している年金記録と本当に合致しているかを判断します。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による持ち主不明記録検索」 通知書のペーパーレス化 マイナポータルからねんきんネットを利用すると、日本年金機構から送付される以下の通知書のペーパーレス化が可能です。 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書 公的年金等の源泉徴収票 ねんきんネットにログインし、トップページの「通知書のペーパーレス化(入力)」で設定を行うと、マイナポータルの「お知らせ」で電子データを受け取れます。 出典)日本年金機構「通知書の電子データをマイナポータルで受け取る設定」 ねんきんネットで年金見込額を調べる手順(画像付き) ここでは、ねんきんネットで将来の年金見込額を調べる手順を画像付きで説明します。なお、手順の説明に用いる画像はすべて日本年金機構のホームページからの引用です。 ▼まずはねんきんネットにログインし、トップページにある「将来の年金額を試算する」を押しましょう。 ▼次に「かんたん試算」を選びます。「詳細な条件で試算」を選び、職業などの条件を入力して試算することも可能です。 ▼試算条件を確認し、問題がなければ「試算する」ボタンを押します。 ▼年金見込額が表示されました。「金額の内訳」ボタンを押すと、年金見込額(月額)の詳細内容を確認できます。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による年金見込額試算」 ねんきんネットの2つの利用登録方法 ねんきんネットは、以下2つの利用登録方法があります。 マイナポータルと連携する ユーザIDを取得する マイナンバーカードがある場合は、マイナポータルにログインするとねんきんネットにアクセスできます。マイナポータルにログインし、トップページにある「年金記録・見込額を見る(ねんきんネット)」を押して利用規約等に同意すると連携されます。 マイナンバーカードがない場合は、基礎年金番号とメールアドレスを用意し、ねんきんネットにアクセスしてユーザIDを取得しましょう。「ねんきん定期便」などに記載されている「アクセスキー」があると、ユーザIDの即時発行が可能です。 ねんきんネットを利用する際の注意点 ねんきんネットを利用する際の注意点は以下の2つです。 第三者との共有PCを使わない 利用端末のセキュリティ対策を行う ねんきんネットでは、年金記録という重要な情報を扱うため、第三者による不正利用を防ぐ必要があります。 入力・閲覧した情報が残ってしまうことがあるので、第三者との共有PCを使わないことが大切です。また、利用端末から情報が流出しないようにセキュリティ対策を行いましょう。 まとめ ねんきんネットを利用すれば、年金記録や年金見込額を簡単に確認できます。また、電子版「ねんきん定期便」の確認、届書の作成、通知書のペーパーレス化なども可能です。 公的年金は老後の重要な収入源となるので、今のうちにねんきんネットの使い方を押さえておきましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 公的年金の仕組みとは?国民年金・厚生年金の基礎知識を解説 公的年金は、国民が安心して日常生活を送るために不可欠な制度です。老後だけでなく、病気・ケガで障害が残ったときや加入者が死亡したときも給付を受けられます。老後生活に備えて公的年金の仕組みについ...記事を読む

  • 生活福祉資金貸付制度とは?概要と手続きの流れを紹介

    生活福祉資金貸付制度とは?概要と手続きの流れを紹介

    生活福祉資金貸付制度をご存じでしょうか。本制度では、失業や減収などにより生活が困窮している人に対して、生活費や一時的な資金の貸し付けを行う「総合支援資金」が設けられています。状況に応じた様々な支援が用意されているため、いざという時の助けになるかもしれません。この記事では、生活福祉資金貸付制度を紹介します。 生活福祉資金貸付制度とは 生活福祉資金貸付制度とは、低所得者や高齢者、障害者の生活を経済的に支えるとともに、その在宅福祉および社会参加の促進を図ることを目的とした貸付制度です。都道府県社会福祉協議会を主体として、県内の市区町村社会福祉協議会が窓口となっており、それぞれの世帯の状況と必要に応じた資金の貸付等を行います。 出典)都道府県社会福祉協議会 お問い合わせ先一覧 また、資金の貸し付けによる経済的な援助にあわせて、地域の民生委員が資金を借り入れた世帯の相談支援を行っています。平成27年4月から施行された生活困窮者自立支援制度では、生活上のさまざまな課題がある人に、包括的な相談支援を行うことで自立の促進を図ることを目的にしています。 なお、あくまで本制度は「貸付事業」であることから、貸付することにより現在困っていることを解決できる一方で、「借金を負う」という世帯にとっての負担が伴います。順調に返済することが難しくなれば、世帯への支援を目的に貸付したものが、世帯への大きな負担となってしまいます。そのため、相談した時点で負担の方が大きく、貸付が支援にならないと判断される場合には、借り入れができません。 生活福祉資金の貸付対象 生活福祉資金の貸付対象は下記のとおりです。 低所得世帯:資金の貸付、支援を受けることで、独立自活できると認められる世帯、かつ必要な資金を他から借り入れることが困難な世帯 障害者世帯:身体障害者手帳等の交付を受けた人※が属する世帯 高齢者世帯:65歳以上の高齢者の属する世帯 ※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた人 本制度は、個人ではなく「世帯の自立」を支援する制度です。世帯を支援するためには世帯全体の状況を把握することが必要です。そのため、世帯全員の就労・就学・疾病、収入や家計の支出、負債の状況等のヒアリングや、必要に応じた確認がされます。また、本制度の利用にあたって世帯全員の了解が必要です。貸付の相談から返済を完了するまでの間、社会福祉協議会の職員が世帯を支援します。(※ただし、資金貸付の「契約」は、借受人個人の方と締結することになります。なお、「仮受人」とは、本制度を利用して資金の貸付を受ける人のことを指します。) 生活福祉資金の種類 本制度では、用途別に大きく4つの種類が設けられています。 総合支援資金 福祉資金、教育支援資金 緊急小口資金 不動産担保型生活資金 総合支援資金 総合支援資金では、失業等で日常生活に困難を抱えた世帯の生活の立て直しのために、継続的な相談支援や生活費及び一時的な資金の借り入れができます。失業者等の個人を支援する制度ではなく、「世帯」の生活再建を支援する制度のため、世帯員の収入で生活できる場合は対象になりません。 総合支援資金には、生活再建までの間に必要な生活費用である「生活支援費」、敷金、礼金等住宅の賃貸契約を結ぶために必要な費用である「住宅入居費」、生活を再建するために一時的に必要かつ日常生活費で賄うことが困難な費用である「一時生活再建費」の3種類があり、それぞれ貸付条件が異なります。 生活支援費 住居入居費 一時生活再建費 貸付限度額 月20万円以内(二人以上)月15万円以内(単身) 40万円以内 60万円以内 据置期間 最終貸付日から6か月以内 貸付日※から6か月以内 償還期限 据置期間経過後10年以内 貸付利子 保証人あり:無利子保証人なし:年1.5% 保証人 原則必要ただし、保証人なしでも貸付可 ※生活支援費とあわせて貸し付けている場合は、生活支援費の最終貸付日 出典) ・社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「総合支援資金のご案内」 ・厚生労働省「生活福祉資金貸付条件等一覧」 福祉資金、教育支援資金 具体的な利用目的がある場合に、該当する資金種類の借り入れができます。資金ごとに、貸し付けの条件・基準が定められており、総合支援資金と同様に世帯全員の収入を鑑みて対象か否かを判断します。 「福祉費」では、生業を営むために必要な経費や福祉用具等の購入に必要な経費など幅広い目的がありますが、それぞれ上限目安額が設定されています。 教育支援資金では、低所得世帯に属する人が、高校、大学または専門学校に修学するために必要な費用である「教育支援費」、入学に際し必要な費用である「就学支度費」があり、それぞれ貸付条件が異なります。 福祉費 教育支援費 就学支度費 貸付限度額 580万円以内*1 高校:月3.5万円以内*2高専:月6万円以内*2短大:月6万円以内*2大学:月6.5万円以内*2 50万円以内 据置期間 貸付日*3から6か月以内 卒業後6か月以内 償還期限 据置期間経過後20年以内 貸付利子 保証人あり:無利子保証人なし:年1.5% 無利子 保証人 原則必要ただし、保証人なしでも貸付可 不要*4 ※1 資金の用途に応じて上限目安額の詳細はこちら ※2 特に必要と認める場合は、上記各上限額の1.5倍まで貸付可能 ※3 分割による交付の場合には最終貸付日 ※4 世帯内で連帯借受人が必要 出典) ・社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「福祉資金のご案内」 ・社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「教育支援資金のご案内」 緊急小口資金 緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に借り入れができます。貸付対象の理由としては、下記のようなものが該当します。(一部抜粋) 医療費または介護費を支払ったことなどにより臨時の生活費が必要なとき 火災等の被災によって生活費が必要なとき 年金、保険、公的給付等の支給開始までに必要な生活費 会社からの解雇、休業等による収入減 また、貸付条件は下記のとおりです。 緊急小口資金 貸付限度額 10万円以内 据置期間 貸付日から2か月以内 償還期限 据置期間経過後12か月以内 貸付利子 無利子 保証人 不要 出典)社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「緊急小口資金のご案内」 不動産担保型生活資金 現在住んでいる自己所有の不動産(土地・建物)に、将来にわたって住み続けることを希望する低所得の高齢者世帯に対し、その不動産を担保として生活資金の借り入れができます。これまでの資金と同様収入などの条件に加えて、対象不動産に抵当権が設定されていないことや土地の評価額の要件などの条件があります。貸付条件は下記のとおりです。 不動産担保型生活資金 要保護世帯向け不動産担保型生活資金 貸付限度額 ・土地の評価額の70%程度・月30万円以内 ・土地及び建物の評価額の70%程度(集合住宅の場合は50%)・生活扶助額の1.5倍以内 貸付期間 借受人の死亡時までの期間又は貸付元利金が貸付限度額に達するまでの期間 据置期間 契約終了後3か月以内 償還期限 据置期間終了時 貸付利子 年3%、又は長期プライムレートのいずれか低い利率 保証人 要※推定相続人の中から選任 不要 出典)社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「不動産担保型生活資金貸付のごあんない」 生活福祉資金貸付制度の申し込みから受給までの流れ 平成27年4月から生活困窮者自立支援制度の施行に伴って、資金種類によって借入申込の流れが一部変更になりました。福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の場合は下記のとおりです。 福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金 福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の場合の流れは下記のとおりです。 市区町村社会福祉協議会に利用の相談および申し込みを行う 市区町村社会福祉協議会に申請書類等を提出する 都道府県社会福祉協議会から貸付決定通知が送付される 借用書を提出する 貸付金を受給する 福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の借り入れをする場合は、市区町村社会福祉協議会に相談し、申し込むことができます。 借入申込者が提出した申請書類等をもとに、市区町村社会福祉協議会および都道府県社会福祉協議会において申込内容の確認と貸し付けの審査を行い、貸付決定通知書または不承認通知書を送付します。 貸付決定となった場合は、都道府県社会福祉協議会に借用書を提出したあと、貸付金が交付されます。 総合支援資金、緊急小口資金 総合支援資金、緊急小口資金の場合の流れは下記のとおりです。 自立相談支援機関に利用の相談および申し込みを行う 市区町村社会福祉協議会に利用の相談および申し込みを行う 市区町村社会福祉協議会に申請書類等を提出する 都道府県社会福祉協議会から貸付決定通知が送付される 借用書を提出する 貸付金を受給する 総合支援資金、緊急小口資金の借り入れをする場合は、既に就職が内定している場合等を除き、生活困窮者自立支援制度における自立相談支援事業の利用が貸付の要件となります。 自立相談支援機関において、相談者の状況に応じた支援プランの検討とあわせて、生活福祉資金(総合支援資金、緊急小口資金)の利用の可能性が考えられる場合に、借入金額や償還計画等について相談したうえで、必要書類を添付し申請します。その後の流れは同様です。 まとめ この記事では、生活福祉資金貸付制度の概要を紹介しました。失業や減収などによって家計が厳しくなった人や、年金収入だけでは生計の維持が厳しい人にはうまく活用できる資金があるかもしれません。詳細が気になる人は、自身がお住いの社会福祉協議会に問い合わせてみるといいでしょう。 出典) ・厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」 ・社会福祉法人 全国社会福祉協議会「福祉の資金(貸付制度)」 ・東京都福祉保健局「生活福祉資金貸付制度について」 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 年金生活者支援給付金とは?給付対象や手続き方法を解説 年金生活者支援給付金についてご存じでしょうか。この制度を利用することで、一定の条件を満たした方は、受け取れる年金の額が多くなる可能性があります。年金生活者支援給付金について知らない方は、ぜひ...記事を読む

  • 年金のみで生活できるのは5人に1人

    年金のみで生活できるのは5人に1人

    近年、「老後破産」という言葉は様々なメディアなどで取り上げられています。公的年金の財源や年金支給年齢引き上げの問題など、老後の生活に不安を感じている人も多いのではないでしょうか。 そこでこの記事では、現在持ち家所有者である60歳~65歳の男女395名を対象に、SBIエステートファイナンスが老後破産に関するアンケートを実施した調査結果をご紹介します。 年金のみで生活できるのは5人に1人 Q1.老後破産への不安はありますか? 老後破産への不安については、「不安がある」(36.7%)と「どちらともいえない」(34.2%)の回答が全体の70.9%となり、多くの人が老後破産について「不安はない」と言えないことが分かります。 【考察】 出典)内閣府『令和2年版高齢社会白書(全体版)』 内閣府が2019年に実施した「高齢者の経済生活に関する調査」によると、60~64歳の高齢者は25.6%の人が「家計にゆとりがなく、多少心配である」、もしくは「家計が苦しく、非常に心配である」と回答しています。 SBIエステートファイナンスの調査は、内閣府による調査と集計方法や対象が異なるものの、老後破産について「不安がある」と回答した人が多い結果となりました。 次回の内閣府の調査では、新型コロナウイルスの影響や近年の物価上昇などを受けて、家計にゆとりがないと回答する人が増加するかもしれません。 Q2.将来、年金(厚生年金と国民年金)のみで家計収支はプラスになる予定ですか? 年金のみで家計収支がプラスになるのは19.5%で、80.5%の人は年金だけでは老後の生活費を賄えないと認識していることが分かります。 【考察】 厚生労働省の2021年度の調査によると、老齢年金の平均年金月額は145,665円であると分かります。また、家計年報によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均支出は225,550円です。これらの調査は、あくまでも収入と支出のそれぞれの平均値であり、家計収支がプラスである人がどれくらいいるのかは不明でした。 一方で、SBIエステートファイナンスの調査では80.5%の人の家計収支がマイナスであるということが分かり、平均年金月額と平均支出の約80,000円の差からも納得できる結果となりました。 出典) ・厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金令和4年12事業の概況』 ・令和2年度家計年報 Q3. 年金(厚生年金と国民年金)と将来想定される年金以外の収入(株や不動産収入等)で家計収支はプラスになりますか? 年金以外に想定される収入を含めたとしても、家計収支がプラスになる人は20.5%しか増えず、「いいえ」が60.0%を占め、老後の家計収支をプラスに出来ない人が大半であることが分かります。 年金以外に収入があっても、4人に1人は老後破産が不安 Q4.将来想定される年金(厚生年金と国民年金)と将来想定される年金以外の収入をすべてお答えください(複数回答可) 「個人年金保険」が39.2%ともっとも多く、次に「株式などの配当収入」が37.0%、「確定拠出年金」が25.3%とのことです。年金以外の収入を準備されていない人は15.9%となっています。 年金以外の収入源を持つ人の老後破産への意識の違い 年金以外の収入源が「無し」と回答した15.9%の人のうち、58.7%が老後破産について「不安がある」と回答しており、年金以外の収入源がある人と比較すると、老後破産への不安が高いことが分かります。 【考察】 「株式などの配当収入」や「民間の個人年金保険」の収入がある人は、約40%近くが「不安はない」と回答しています。一方で、「確定拠出年金」の収入がある人では、28.0%しか「不安はない」と回答していません。 確定拠出年金の制度が始まったのは2001年からのため、現在60~65歳の人は確定拠出年金だけでは、十分な収入になっていない可能性があります。また、「株式などの配当収入」や「不動産収入」がある人でも、4人に1人以上は老後破産について「不安がある」と回答しており、たとえある程度の資産を所有している人でも、老後破産は他人ごとではないのかもしれません。 まとめ 5人に1人しか年金のみでは家計収支はプラスにならず、安心した老後の生活を送るためには、年金以外の収入を早くから準備しておく必要があることが分かりました。まずは現時点での老後の収入金額の把握と、現時点での支出も踏まえ、節約できる費用なども考慮し、将来家計収支をプラスに出来るかどうかを確認しましょう。もし難しい場合は、収入を補填するための資産形成や住まいの資産価値の有効利用も含め、早めの対策をすることが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 老後破産とは?その原因と事前の準備・対策を解説 「老後破産」は、日本人の高齢化などにより、取り上げられるようになったテーマの一つです。様々なメディアなどで目にする機会も増え、老後の生活を不安に感じる人もいるでしょう。 この記事では、老後破...記事を読む

  • 家族信託とは?仕組みやメリット・デメリット、手続き方法を解説

    家族信託とは?仕組みやメリット・デメリット、手続き方法を解説

    親の判断能力が低下した場合、子どもの判断で親の財産を運用・処分することはできません。親の認知症対策としては「成年後見制度」が一般的ですが、近年では新たな財産管理方法として「家族信託」が注目されています。家族信託とはどのような制度なのでしょうか。 この記事では、家族信託の仕組みやメリット・デメリット、手続き方法について解説します。 家族信託とは 家族信託とは、財産の管理・処分を家族に任せるための仕組みです。預貯金や不動産、有価証券のように換価できる財産を託すことができ、以下の三者で構成されます。 委託者(財産管理を任せる人) 受託者(委託者から任された財産を管理する人) 受益者(財産から生じる利益を受け取る人) 認知症などによる判断能力の低下に備えて、財産を管理する権限を家族(受託者)に与えます。本人(委託者)が判断能力を失った後は、本人の意向に沿って家族が財産管理を行います。家族信託では、委託者と受益者が同じ人になるケースが一般的です。 出典)家族信託普及協会「家族信託とは?(制度の概要)」 家族信託と成年後見制度の違い 成年後見制度とは、認知症などの理由で、財産管理や契約手続きなどを自分で行うのが難しい人を保護し、支援するための制度です。本人の判断能力が低下した後は、本人に代わって後見人が財産管理等の事務を行います。 成年後見制度は認知症対策として有効ですが、本人の財産保護の観点から、財産の運用や処分について柔軟に対応できないのがデメリットです。また、弁護士や司法書士などの専門職が後見人になる場合は、毎月2万円~6万円程度の支払いが発生し、原則として亡くなるまで続きます。 一方、家族信託は信託契約の内容を自由に決められるため、柔軟な財産管理と運用が可能です。 出典)東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」 家族信託と商事信託の違い 家族信託と商事信託の大きな違いは、「受託者」です。上述のとおり、家族信託では家族が受託者となるのに対し、商事信託は信託会社や信託銀行が受託者となります。 つまり、営利目的で業として行われる信託であるため、信託報酬や手数料等の費用が発生することになります。一方で、家族信託と違って専門家が適切に財産を管理してくれます。「家族に迷惑をかけたくない」、「専門家に適切な財産管理をお願いしたい」といった場合は、商事信託も検討してみましょう。 家族信託は商標登録されている 家族信託という言葉は、一般社団法人家族信託普及協会が以下の目的で商標登録をしている言葉です。 「家族信託」という言葉を使いながら、家族親族でない方が「業として」信託を引き受ける商品名にこの言葉を使用するなど、一般の方々に誤解を与えてしまう使い方をされないことを防止する目的 同協会によると、正しく「家族信託」の名称を使用する場合は、協会の許可等なく「家族信託」という名称を使用しても良いとされています。ただ、各種広告やホームページ等を見ると、商標登録されている「家族信託」という名称を避け、「民事信託」等の名称が用いられている場合もあります。 出典)一般社団法人家族信託普及協会「商標登録につきまして」 家族信託のメリット 家族信託には以下のようなメリットがあります。 認知症の親の財産を犯罪から守ることができる 認知症になると判断能力が低下するため、詐欺などの犯罪に巻き込まれる恐れがあります。判断能力があるうちに信託契約を締結することで、信頼できる家族に財産管理を任せることが可能です。また、親が認知症になった後も、本人の意向に沿って子どもが管理・運用できるため、財産を犯罪から守ることができます。 子どもの判断で親の財産の管理・運用・処分ができる 家族信託では、受託者が委託者の財産を管理します。親が認知症になった場合は、受託者である子どもの判断で親の財産の管理・運用・処分が可能です。介護費用などが必要になっても、親の財産を現金化できるので安心です。 相続対策として活用できる 家族信託では、契約で財産の承継順位を定めることが可能です。最初に指定した受益者が亡くなっても、次の受益者を誰にするかを指定できます。生前贈与や遺言には、このような機能はありません。 また、不動産を複数の相続人で共有する場合、賃貸経営や処分を行う際は共有者全員の同意が必要です。家族信託で共有者の1人に不動産の管理処分権限を与え、不動産から生じる収益は各共有者に公平に分配することによって、相続トラブルの防止が期待できます。 家族信託のデメリット 家族信託は信託財産の金額に応じて、弁護士や司法書士への報酬、公正証書の作成費用、登記費用などがかかります。専門家への報酬は基準がないため、事前に料金を確認した上で依頼することが大切です。 信託財産から年3万円以上の収益が発生する場合は税務署への書類提出が求められるなど、受託者は税務申告の手間がかかる恐れがあります。 また、信託財産から生じた損失は、信託財産以外から生じた所得との損益通算ができません。大規模修繕の予定がある不動産などがある場合は、信託契約を締結する前に税理士と相談しましょう。 家族信託の手続き方法 家族信託の手続きの流れは以下のとおりです。 ①家族信託の目的、信託財産、受託者と受益者の決定 まずは家族信託を利用する目的を明確にした上で、信託する財産の範囲や管理方法、受託者と受益者を誰にするかなどを決めます。信託や相続に関する専門知識も必要になるため、弁護士などの専門家に相談しましょう。 ②信託契約の締結・公正証書の作成 次に、信託契約書を作成して契約を締結します。信託契約の際は、金融機関で信託口口座を開設する際に提出が求められるため、公正証書を作成しましょう。契約時に公証人が意思確認を行うため、信託契約の有効性を証明することができます。 ③信託財産の名義変更 信託契約を締結したら、信託財産の名義を委託者から受託者に変更します。信託財産に不動産が含まれている場合は、「所有権移転登記」と「信託登記」の2つが必要です。 所有権移転登記は、不動産の名義を委託者から受託者に移転する手続きで、委託者と受託者が共同で申請します。 信託登記は、不動産が信託財産であることを第三者に対抗するための登記です。受託者等の住所・氏名や信託の目的、不動産の管理方法などを登録します。 ④信託口口座の開設 受託者には分別管理義務があり、受託者固有の財産と信託された財産を明確に分けて管理することが求められます。信託財産を分別管理するために、金融機関で信託口口座を開設します。信託口口座の財産は、信託契約で定めた目的に従って、受託者の判断で管理・運用が可能です。 まとめ 家族信託を利用すれば、家族に財産の管理や処分を任せられます。成年後見制度に比べると柔軟な財産管理が可能で、相続対策に活用できるのもメリットです。親の財産管理を行う予定がある場合は、家族信託を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 相続争いを生まないためのリースバックという選択肢 自宅を所有していると、老後も住み続けられる安心感がある一方で、相続に不安を感じることもあるのではないでしょうか。不動産は実物資産であるため、相続人が複数いると簡単に分けられません。また、相続...記事を読む

  • 老齢年金とは?受給要件や年金額、請求手続きについて解説

    老齢年金とは?受給要件や年金額、請求手続きについて解説

    老齢年金は、老後の生活を支える重要な収入源です。公的年金に加入している人は、一定の年齢に達すると老齢年金を受け取れます。老齢年金はどんな仕組みで、いくら受け取れるのでしょうか。 この記事では、老齢年金の受給要件や年金額、請求手続きについて詳しく解説します。 老齢年金とは 老齢年金とは、公的年金制度の加入者だった人に対して老後の保障として給付される年金です。原則65歳から支給開始となり、一生涯受け取れます。ただし、保険料納付済期間と保険料免除期間などを足した資格期間が10年以上あることが受給要件となります。 老齢年金は、加入していた年金制度により、国民年金の「老齢基礎年金」と厚生年金保険の「老齢厚生年金」の2種類が支給されます。 老齢基礎年金 老齢基礎年金は、国民年金もしくは厚生年金保険や共済組合等に加入していた人が受け取れます。20歳から60歳になるまでの40年間の国民年金加入期間などに応じて年金額が計算されます。 国民年金保険料を納付した期間のほか、会社員として厚生年金に加入していた期間や保険料の免除を受けた期間も年金額の計算に含まれます。 原則65歳から受給開始ですが、60歳から75歳の間で受給開始年齢を選択する「繰り上げ受給」や「繰り下げ受給」も可能です。 老齢厚生年金 老齢厚生年金は、会社員や公務員など厚生年金保険や共済組合等に加入していた人のみが対象です。厚生年金加入時の報酬額や加入期間などに応じて年金額が計算されます。老齢厚生年金も原則65歳から受け取ることができ、老齢年金と同様に「繰り上げ受給」や「繰り下げ受給」も可能です。 老齢年金の受給要件(資格期間) 老齢年金を受給するには、10年以上の資格期間が必要となります。資格期間とは、以下3つを合計した期間のことです。 保険料納付済期間 保険料免除期間 合算対象期間 国民年金保険料を納めた期間や厚生年金加入期間はもちろん、国民年金保険料の免除や納付猶予を受けた期間も資格期間に含まれます。厚生年金加入期間は、加入した月から加入をやめた日(退職日の翌日など)の前月までの月単位で計算します。 合算対象期間は、海外在住者が国民年金に任意加入しなかった期間、または任意加入したが保険料を納付しなかった期間などが該当します。保険料免除期間や合算対象期間は資格期間の対象にはなりますが、年金額には反映されない点に注意が必要です。 老齢年金の年金額 老齢年金の年金額は、老齢基礎年金と老齢厚生年金で異なります。 老齢基礎年金は、保険料の納付状況に応じて年金額が決定され、20歳から60歳の40年間の保険料をすべて納めると、満額の年金を受け取れます。令和5年度(2023年度)の年金額(満額)は年795,000円(月66,250円)です。 老齢厚生年金は、「報酬比例部分」と「定額部分」の合計が年金額となります。 報酬比例部分は、平均報酬月額に一定の給付率と加入期間の月数を乗じて計算します。定額部分は「1,657円×被保険者期間の月数」で計算します。ただし、昭和31年4月1日以前に生まれた方は、1,652円となります。老齢厚生年金は基本的に収入が高く、加入期間が長い人ほど年金額は増えます。 令和3年度(2021年度)の老齢年金受給者の平均年金月額は、国民年金の56,479円に対し、厚生年金は145,665円です。 厚生年金加入者は同時に国民年金の加入者でもあるため、65歳から老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取れます。国民年金のみの自営業者に比べて、厚生年金に加入する会社員の年金額は手厚い傾向にあります。 出典)厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況P8、P20」 老齢年金の請求手続き 老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取るには請求手続きが必要です。手続きの流れは下記のとおりです。 「年金請求書」が自宅に届く 「年金請求書」を年金事務所や市区町村に提出する 「年金証書」「年金決定通知書」などが自宅に届く 1~2ヵ月後に年金の受け取りが開始される 老齢年金の受給権が発生する年の誕生月の約3ヵ月前に、日本年金機構などから年金請求書が届きます。必要事項を記入して、受給開始年齢の誕生日の前日以降に提出しましょう。 提出先は、年金加入期間が国民年金のみの人は住所地のある市区町村、それ以外の人は最寄りの年金事務所です。 請求時には、戸籍抄本や住民票などの添付書類が必要です。同封されているパンフレットを確認し、添付書類を準備しましょう。年金請求書の提出から1ヵ月程度で年金証書や年金決定通知書が届き、その約1~2ヵ月後に年金の受給が開始されます。 年金の請求をせず、年金を受けとれるようになったときから5年を過ぎると、5年を過ぎた分の年金については時効により受け取れなくなる恐れがあるので、注意しましょう。 出典)日本年金機構「年金の時効」 繰り上げ受給と繰り下げ受給 老齢年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、希望すれば65歳より前に年金を受け取る「繰り上げ受給」、受給開始を65歳より後に受け取る「繰り下げ受給」も選択可能です。 繰り上げ受給は60歳から65歳の間に請求でき、「繰り上げた月数×0.4%」の年金額が減額されます。たとえば、60歳時点では最大で24%の減額となります。年金を早く受け取れますが、減額された年金額は生涯変わらない点に注意が必要です。 繰り下げ受給は65歳から75歳の間に請求でき、「繰り下げた月数×0.7%」の年金額が増額されます。たとえば、70歳時点では42%、75歳時点では84%の増額となり、増額された年金は生涯変わりません。65歳以降も一定の収入があり、当面は年金なしでも生活できるなら、繰り下げ受給を利用して年金額を増やすのも選択肢の一つでしょう。 関連記事はこちら老齢年金の繰り上げと繰り下げ、どっちがお得? 在職老齢年金 在職老齢年金とは、60歳以降に厚生年金に加入して働きながら受け取る老齢厚生年金のことです。給与や賞与の額と老齢厚生年金の額によっては、年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。 老齢厚生年金(比例報酬部分)の月額である「基本月額」と、給与や賞与をもとに計算する「総報酬月額相当額」の合計が48万円を超えると、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となります。 なお、「老齢基礎年金」は支給停止の対象外で全額支給されます。 まとめ 老齢年金は10年以上の資格期間が受給要件で、原則65歳から受け取れます。日本年金機構などから年金請求書が届いたら、忘れずに手続きを行うことが大切です。状況に応じて、繰り上げ受給や繰り下げ受給も検討しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 夫婦の老後資金はいくら必要?足りない時の対処法も紹介 「人生100年時代」や「老後2,000万円問題」などに起因して、「老後資金」という言葉が注目を集めています。老後破産に陥らないためにも、夫婦で必要な老後資金を把握し、なるべく早くから準備して...記事を読む

  • 公的年金の仕組みとは?国民年金・厚生年金の基礎知識を解説

    公的年金の仕組みとは?国民年金・厚生年金の基礎知識を解説

    公的年金は、国民が安心して日常生活を送るために不可欠な制度です。老後だけでなく、病気・ケガで障害が残ったときや加入者が死亡したときも給付を受けられます。老後生活に備えて公的年金の仕組みについて理解を深めておくことが大切です。 この記事では、公的年金の概要や受け取り方、注意点などの基礎知識を解説します。 公的年金の仕組み 公的年金とは、国が運営する年金制度です。日本では、20歳以上60歳未満のすべての人が公的年金に加入する「国民皆保険」を採用しています。 公的年金は、現役世代が支払った保険料を高齢者などの年金給付に充てる「世代間扶養」が基本です。保険料収入を基本財源とし、そこに国庫負担金(税金)を組み合わせる「社会保険方式」によって、安定的に年金を給付できる仕組みになっています。 公的年金は国民年金と厚生年金の2種類 公的年金は、「国民年金」と「厚生年金」の2種類があります。 国民年金 国民年金とは、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する公的年金です。自営業や無職の人などは国民年金の保険料を自分で納める必要があります。 厚生年金 厚生年金とは、会社員や公務員が加入する公的年金です。厚生年金加入者は同時に国民年金の加入者でもあります。厚生年金保険の被扶養者は、勤務先などの事業主が支払いを行うため、年金の加入者が保険料を直接納めることはありません。 公的年金の受け取り方は3種類 公的年金は老後だけでなく、障害や被保険者の死亡も給付対象です。具体的には、「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3種類があります。それぞれの内容は以下のとおりです。 老齢年金 老齢年金とは、公的年金の加入者が一定の年齢に達したときに一生涯受け取れる年金です。 国民年金は、受給資格期間が10年以上ある場合に65歳から老齢基礎年金が支給されます。年金額は保険料の納付状況によって計算され、40年間(20~60歳)の保険料をすべて納めると満額の老齢基礎年金を受け取れます。 厚生年金では、65歳から老齢基礎年金に上乗せして厚生老齢年金が支給されます。そのため、老齢基礎年金の受給資格があることが要件です。年金額は厚生年金加入時の報酬額や加入期間などに応じて計算されます。 関連記事はこちら老齢年金とは?受給要件や年金額、請求手続きについて解説 老齢基礎年金と老齢厚生年金は、どちらも受給開始年齢の「繰り上げ」や「繰り下げ」が可能です。繰り上げは、受給開始を60~65歳に早めることで年金額が減額されます。繰り下げは、受給開始を66~75歳に遅らせることで年金額が増額されます。 関連記事はこちら老齢年金の繰り上げと繰り下げ、どっちがお得? 障害年金 障害年金とは、病気やケガなどで生活や仕事が制限される場合に受け取れる年金です。国民年金からは「障害基礎年金」、厚生年金からは「障害厚生年金」が支給されます。年金額は、保険の種類や障害の程度、家族構成などによって変わります。 障害基礎年金は、以下のすべての要件を満たしているときに支給されます。 障害の原因となった病気・ケガの初診日が以下のいずれかに該当する 1. 国民年金加入期間 2. 20歳前または60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間 障害の状態が障害等級1級または2級に該当する 被保険者期間のうち3分の2以上の納付済み期間があること 障害厚生年金は、以下のすべての要件を満たしているときに支給されます。 障害の原因となった病気・ケガの初診日が厚生年金保険の被保険者である間 障害の状態が障害等級1級から3級に該当する 被保険者期間のうち3分の2以上の納付済み期間があり、直近1年以内に未納がないこと 出典)※詳細はこちら(日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」)をご確認ください。 遺族年金 遺族年金とは、公的年金の被保険者(または被保険者だった人)が亡くなったときに、その人に生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。年金額は、保険の種類や家族構成などによって変わります。遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。 遺族基礎年金では、「子のいる配偶者」と「子」に遺族基礎年金が支給されます。子は18歳到達年度の3月31日まで(または20歳未満で一定の障害状態にあること)が条件です。 遺族厚生年金の場合は、「①配偶者・子」「②父母」「③孫」「④祖父母」のうち、優先順位が最も高い遺族に遺族厚生年金が支給されます。もし亡くなった人に配偶者や子がいなければ、第2順位の父母が受け取ります。 公的年金の被保険者の分類 公的年金の被保険者は、働き方によって以下の3つに分類されます。 第1号被保険者 第1号被保険者は、自営業者や学生など国民年金のみに加入する人です。国民年金保険料は、納付書や口座振替を利用して自分で納めます。令和5年度(2023年度)の1ヵ月あたりの保険料は16,520円です。 第2号被保険者 第2号被保険者は、会社員や公務員などの厚生年金加入者です。厚生年金保険料は、事業主と加入者で半額ずつ負担します。保険料は給与や賞与から天引きされ、事業主が納めてくれるので、納付手続きは不要です。 第3号被保険者 第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者(年収130万円未満)です。保険料は、配偶者が加入する年金制度が負担するため、個別に納める必要はありません。 公的年金の注意点 公的年金について、以下の注意点を把握しておきましょう。 保険料を納めなければ受給できない 年金の受給資格を満たすには、保険料を納めなくてはなりません。厚生年金は給与や賞与から天引きされますが、国民年金は自分で納めるので納付漏れがないように注意が必要です。 保険料を納めるのが難しい場合は、最寄りの年金事務所で免除や納付猶予について相談し、自己判断での未納は絶対に避けましょう。保険料の納付状況については、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。 関連記事はこちら「ねんきんネット」はこんなに便利!使い方を詳しくご紹介 自営業者は老齢年金が少ない 国民年金のみの自営業者は、会社員(厚生年金加入者)に比べて老齢年金が少ない傾向にあります。老後の生活資金に不安がある場合は、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「国民年金基金」などの私的年金に加入して年金額を増やすことを検討しましょう。 関連記事はこちら個人事業主などの自営業者は年金が少ない?年金対策も解説 まとめ 公的年金は老後だけでなく、病気やケガ、配偶者の死亡で仕事や生活が制限される場合にも給付を受けられます。ただし、保険料を納めていないと年金を受け取れないため、納付漏れのないように注意が必要です。 老後やもしものときに安心して生活できるように、公的年金への理解を深めておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 夫婦の老後資金はいくら必要?足りない時の対処法も紹介 「人生100年時代」や「老後2,000万円問題」などに起因して、「老後資金」という言葉が注目を集めています。老後破産に陥らないためにも、夫婦で必要な老後資金を把握し、なるべく早くから準備して...記事を読む

  • リフォーム予定のシニアは約4割、一方で2割が資金に悩む

    リフォーム予定のシニアは約4割、一方で2割が資金に悩む

    60歳を越えると、定年退職や子供の自立など、ライフスタイルが大きく変わる人も少なくないでしょう。自身が所有する住まいについても同様に、設備の故障や経年劣化によって、リフォームを検討する人も多いのではないでしょうか。 そこでこの記事では、持ち家がある60歳以上の男女500名を対象に、リフォームに関するアンケートを実施した調査結果をご紹介します。 詳細はこちら シニアのリフォーム予定は約4割、その半数が費用を200万円未満と想定、資金不足に悩むシニアは約2割!~SBIエステートファイナンスが「シニアのリフォーム」に関するアンケート調査を実施~ 約4割がリフォームを予定している Q. 今、住んでいる物件のリフォームを検討していますか? 「リフォームを予定している」と回答した方は約4割でした。この回答から、60代にもなるとリフォームの必要性を感じる方が多いことがわかります。 Q. 何年後にリフォームを予定していますか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォームの予定時期は「半年以内」が10%、「1年以内」が11%と、1年以内にリフォームを計画している人が約2割いることがわかりました。また、未定が4割であることから、いずれリフォームが必要と考えているが、それほど緊急度の高いリフォームではないことも推察されます。 リフォーム費用は約5割が200万円以下という結果に Q. リフォーム費用はどの程度で考えていますか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォームの費用は、最も多い回答が「100万円以上200万円未満」で30%、「100万円未満」が17%となり、200万円以下のリフォームに留める方が約半数であることがわかりました。このことから、大規模な修繕工事ではなく、最低限の修繕にとどめたリフォームを検討していることが多いことがわかります。 Q. リフォーム費用はどのように準備する予定ですか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォーム費用は、約8割の人が貯金から準備する予定であり、「資産(株、投資信託等)の売却」を足すと9割以上となります。このことから大半の人が保有する資産の中からリフォーム費用を準備することがわかりました。 一方で、リフォームを予定しているが、「ローン」を利用するという人が4%、「当てがない」という人も4%おり、リフォームは必要になると考えているものの、どのようにリフォーム資金を準備するか悩んでいる人も一定数いるようです。 全体の2割近くが資金面を理由にリフォームを予定していない Q. リフォームを予定していない理由はなぜですか?(リフォームを予定していないと回答した方) リフォームを予定していない理由は、「現在の住宅に全く不満がない」という理由が34%でした。また、既にリフォームを実施済の人も25%いることから、リフォームを予定していないシニアの方の約6割はライフスタイルに合った自宅に住んでいることが推察されます。 一方で、リフォームを予定していない理由の中には、「費用がかかりそう」が15%、「費用が用意できない」が15%といったように、資金面で悩みがあることもわかりました。この結果とリフォームを予定しているが資金面で悩んでいる人を足し合わせると、資金面でリフォームに悩んでいる人は回答者全体の約2割となることがわかりました。 まとめ 今回の調査によると、シニア世代のほとんどが貯金などからリフォーム費用を準備する一方で、資金面で悩んでいる人が全体の2割を占めることがわかりました。また、リフォーム費用を低く見積もる方も多く、どれくらいの費用をかければどの程度のリフォームができるかを正しく把握できていない可能性もありそうです。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 シニアがリフォームする際のポイントや間取り事例を紹介 年齢を重ねてくると、購入当時の住まいでは生活のしづらさを感じる場面が増えてくるものです。ライフスタイルに合った住環境を作るために、選択肢の1つとしてリフォームを考えることもあるでしょう。しか...記事を読む