「老後の住まい」の記事一覧

  • 中村雅俊氏が「自宅」への思いを語る

    俳優で歌手の中村雅俊氏(72)(以下「中村氏」)のお住まいにお邪魔して、住まいやお金に関するお話をフリーアナウンサーの八木亜希子さんが伺いました。 この記事は、SBIシニアの住まいとお金ch(YouTubeチャンネル)で公開されている、「中村雅俊~築22年の我が家、何年経っても渋さをましていいなって思える~【MC:八木亜希子】」を元に作成しています。動画の詳細はこちらをご覧ください。 72歳になって今なおモテる一流芸能人!中村雅俊氏 本編に入る前に、中村氏の経歴についてご紹介します。 1951年2月1日宮城県女川町で生まれた中村氏は、1973年大学在学中に文学座附属演劇研究所に入所しました。翌1974年4月に日本テレビ「われら青春!」の主役に抜擢され、役者としてデビューを果たすと、同年7月に挿入歌「ふれあい」で歌手としてもデビューを果たし、100万枚を超える大ヒットとなりました。 その後も役者として多数の映画やドラマ、CMなどに出演し、執筆時点の2023年9月現在、これまでのTV連続ドラマ主演は34本にものぼります。一方で歌手としての活動も継続し、これまでシングル55枚、アルバム41枚をリリースしています。 72歳となった今でも、テレビ番組への出演や全国でのコンサートなど、精力的に活動されています。 「自宅を持つこと」への憧れ 中村氏が初めて自宅を購入したのは30歳のときでした。中村氏は、幼少期に周りが皆貸家に住んでいたことから、「自宅を持つこと」に強い憧れがあったそうです。 自宅購入の決め手となったのは、中村氏の15枚目のシングルである「心の色」が大ヒットしたことだったといいます。『(心の色がヒットした)勢いで、作っちゃおう!みたいな気持ちになって作ったんですよ。』と当時を振り返って笑顔で語ってくれました。 中村雅俊氏がローンを組んだ理由とは CDのヒットがきっかけで自宅を購入したと語る中村氏ですが、その売り上げで一括購入したわけではなく、あくまでローンを組んで購入したそうです。 『ヒットって人が思うほどお金が入るわけじゃないんですよ。』と語る中村氏は、CDが1枚売れても、手元に入ってくるお金は「数円程度」であることを明かしました。当時購入の決め手となった「心の色」の売り上げだけでは、自宅を一括購入するほどのお金にはならなかったそうです。 主演を務め、ミリオンセラー歌手と言えば、「年収〇億円」などと、一般の人はイメージするかもしれませんが、実際はギャップがあるのかもしれません。 中村雅俊氏の住まいへのこだわり 今回お邪魔した建物は、主に仕事場として使用されているそうです。この建物は、中村氏が意のままに作ったといいます。『ムダと思える空間というのも(中略)生活の中では必要なんです。』と語る中村氏は、外階段にある謎の空間を紹介してくれました。 中村氏も『はっきり言ってムダ!』と断言した空間ですが、こういった生活に必要のない空間を遊びで作ることが好きだそうです。 中村雅俊氏の考える「住まい」とは…? 最後に「中村さんにとって住まいとは?」と質問し、スケッチブックに答えを書いてもらいました。 答えは漢字2文字でしたが、その理由に中村氏の温和な人柄が表れており、とても素敵な答えでした。 実際の動画では、中村氏の自宅に関するお話だけでなく、還暦後の支出をどう考えているのかなど、「住まい」と「お金」について色々なお話を公開しています。 本編動画はこちら 執筆者紹介 SBIシニアの住まいとお金 メディア部 SBIシニアの住まいとお金は、【人生100年時代を見据えて、「住まい」も「お金」も充実できる人生をサポートしたい】との思いから、60歳以上の持ち家の方を対象に「Youtubeで楽しむ」、「セミナーで学ぶ」、「専門家に相談する」の3つのサービスを運営しています。 <公式サイト> https://www.sbi-efinance.co.jp/senior/ <YouTubeチャンネル> https://www.youtube.com/@sbi_senior/ 中村雅俊氏が語る「現在」と「これからの姿」 俳優で歌手の中村雅俊氏(72)(以下「中村氏」)のお住まいにお邪魔して、住まいやお金に関するお話をフリーアナウンサーの八木亜希子さんが伺いました。 この記事は、SBIシニアの住まいとお金ch...記事を読む

  • 有料老人ホームとは

    有料老人ホームとは?費用やサービスをわかりやすく解説

    有料老人ホームは、さまざまな種類や提供サービスの違いから、詳しくはわからないという人も多いでしょう。また、高齢者向けの住宅は、有料老人ホーム以外にも複数の形態があるので、検討の際には詳しく理解しておく必要があります。 この記事では、有料老人ホームの入居条件や費用、利用状況などを詳しく解説します。 有料老人ホームとは 「有料老人ホーム」とは、老人福祉法第29条第1項の規定に基づき、高齢者の心身の健康保持及び生活の安定のために設置される施設です。老人を入居させたうえで以下のいずれかのサービス(複数可)を提供している施設を、有料老人ホームと呼びます。 食事の提供 介護(入浴・排泄・食事)の提供 洗濯・掃除等の家事の供与 健康管理 なお、根拠法である老人福祉法では、「老人」という言葉に、年齢等の具体的な条件は定義されていません。 有料老人ホームの類型 有料老人ホームは、「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3つの類型に分けられます。 介護付有料老人ホーム 介護付有料老人ホームは、介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。介護等が必要となっても、施設が提供する介護サービスである「特定施設入居者生活介護」を利用しながら、施設での生活を継続することが可能です。 住宅型有料老人ホーム 住宅型有料老人ホームは、生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。介護が必要となった場合、入居者自身の選択により、地域の訪問介護等の介護サービスを利用しながら、施設の生活を継続することが可能です。 健康型有料老人ホーム 健康型有料老人ホームは、食事等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設です。介護が必要となった場合には、契約を解除し退去しなければなりません。 有料老人ホームの費用 有料老人ホームの費用について、根拠法である老人福祉法の第29条で以下のとおり定められています。 有料老人ホームの設置者は、家賃、敷金及び介護等その他の日常生活上必要な便宜の供与の対価として受領する費用を除くほか、権利金その他の金品を受領してはならない。 出典)老人福祉法(e-Gov法令検索) この定義からわかるように、有料老人ホームでは、施設の利用上必要となる範囲の費用しか、基本的にはかかりません。厚生労働省の「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」によると、利用料が以下のとおり定められています。 家賃 家賃は、施設の整備に要した費用、修繕費、管理事務費、地代に相当する額等を基礎として合理的に算定され、近傍同種の住宅の家賃から算定される額を大幅に上回らないこと (厚生労働省の令和3年度調査*によると、介護付は月84,790円、住宅型は月40,926円) 敷金 敷金を受領する場合には、その額は6か月分を超えないこととし、退去時に居室の原状回復費用を除き全額返還すること (厚生労働省の令和3年度調査*によると、介護付は月94,710円、住宅型は月45,367円) サービス費用 サービス費用は、入居者に対するサービスに必要な費用の額(食費、介護費用その他の運営費等)を基礎とする適切な額とすること (厚生労働省の令和3年度調査*によると、介護付は月122,457円、住宅型は月72,480円) ※令和3年度「高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究事業」報告書を参考としています。健康型のデータがないのは、健康型は施設数が他2類型と比較してかなり少ないため、十分な調査ができなかったものと推測されます。 有料老人ホーム入居時の前払い金 上述の主な費用に加えて、入居時に終身にわたって受領すべき家賃又はサービス費用の全部又は一部を前払金として一括して受領する、前払い方式を採用している施設もあります。前払金がない施設もあれば、1,000万円を超える施設もあります。前払金は老人福祉法の第29条で以下のとおり定められています。 有料老人ホームの設置者のうち、終身にわたって受領すべき家賃その他厚生労働省令で定めるものの全部又は一部を前払金として一括して受領するものは、当該前払金の算定の基礎を書面で明示し、かつ、当該前払金について返還債務を負うこととなる場合に備えて厚生労働省令で定めるところにより必要な保全措置を講じなければならない。 出典)老人福祉法(e-Gov法令検索) また、厚生労働省の「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」によると、基本的な前払金の算定方法を以下のとおり記載されています。 ①期間の定めがある契約の場合 (1ヶ月分の家賃又はサービス費用)×(契約期間(月数)) ②終身にわたる契約の場合 (1ヶ月分の家賃又はサービス費用)×(想定居住期間※(月数))+(想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額) ※想定居住期間は、入居者の終身にわたる居住が平均的な余命等を勘案して想定される期間と、同指導指針内で定義されています。 有料老人ホームの費用を抑える方法 有料老人ホームに入居する場合、以下の制度を利用することで、入居中の費用を抑えられる可能性があります。 高額介護サービス費制度 月々の利用者負担額(福祉用具購入費や食費・居住費等一部を除く。)の合計額が所得に応じて区分された上限額を超えた場合、その超えた分が介護保険から支給される制度です。詳細な上限額(月額)は以下のとおりです。 ・高額介護サービス費制度の負担の上限額(月額) ※厚生労働省ホームページを基に編集者作成 支給対象者には、各自治体から高額介護サービス費支給申請書が送られてきます。受け取ったらしっかりと申請手続きを行いましょう。 高額医療、高額介護合算制度 同じ医療保険の世帯内で、医療保険と介護保険両方に自己負担が生じた場合は、合算後の負担額が軽減されます。決められた上限額(年額)を500円以上超えた場合、医療保険者に申請をすると超えた分が支給されます。詳細な上限額(年額)は以下のとおりです。 ・高額医療、高額介護合算制度の負担の上限額(年額) ※厚生労働省ホームページを基に編集者作成 合算期間は8月1日から翌年の7月31日までの1年間で、各自治体の窓口に申請することで利用することができます。 その他の老健施設との違い 一般的に老人ホームと呼ばれるものの中には、有料老人ホーム以外の施設も存在します。どのような施設があるのかを紹介します。 サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) サービス付き高齢者向け住宅は、「状況把握サービス、生活相談サービス等の福祉サービスを提供する住宅」です。有料老人ホームとは異なり、1日のスケジュールが決められているわけではないため、食事や入浴の時間などは自分のペースで決められます。 見守りサービスや生活相談といったサービスが付いているので、一人暮らしに不安を感じられている方にとって、適度なサポートを受けながら自由な暮らしができます。 関連記事はこちらサービス付き高齢者向け住宅とは?入居条件や費用を解説 特別養護老人ホーム(特養) 特別養護老人ホームは、介護老人福祉施設とも呼ばれており、要介護状態の高齢者が入居できる公的施設であるのが特徴です。公的施設という性質上、民間の有料老人ホームと比べると安い費用で入所できます。 ただし、人気があるので申請から入所まで、時間がかかってしまう点に注意しておきましょう。 関連記事はこちら特別養護老人ホームとは?費用や入居条件、サービス内容を解説 まとめ 有料老人ホームには3つの類型があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。生活状況や介護の有無、将来的な費用負担なども考慮し、利用する施設を検討することが大切です。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 老人ホーム・介護施設とは?公的施設と民間施設の違いも解説 誰でも年をとると、身の回りのことができなくなったり、思ったようにできなくなったりしていきます。体が弱ってきたとき、あるいは要介護状態になったとき、自宅以外の住まいの選択肢として、どのような候...記事を読む

  • 人生100年時代の住まいと夢~江本孟紀氏~

    江本孟紀氏が語る「人生100年時代の住まいと夢」

    プロ野球解説者の江本孟紀氏(75)(以下「江本氏」)のご自宅にお邪魔して、住まいやお金に関するお話をフリーアナウンサーの八木亜希子さんが伺いました。 この記事は、SBIシニアの住まいとお金ch(YouTubeチャンネル)で公開されている、「突然の胃癌宣告!江本孟紀さんが経験した人生観の変化とは?【MC:八木亜希子】」を元に作成しています。動画の詳細はこちらをご覧ください。) 江本孟紀氏の現在 江本氏は現在、野球解説者として活躍されている一方で、本の執筆活動も行っている、非常に活動的な方です。 この記事では江本氏に住まいやお金についてお伺いしていきますが、江本氏は幼少期から何度も住み替えを経験している、住み替え経験豊富な方でもあります。 そんな江本氏のプロフィールの詳細や住み替え遍歴は、以下の記事で詳しくご紹介しています。こちらの記事も併せてぜひご覧ください。 >江本氏のプロフィールや住み替え遍歴は前編でご紹介しています シニア世代の老後の不安 江本氏に、持ち家がある50歳以上の男女200名を対象とした、「老後の暮らしにどのような不安を感じていますか?」というアンケート結果を見ていただきました。 ※2021年12月にSBIエステートファイナンス(株)が実施 1位が健康面、2位が老後の生活資金、3位が介護という結果を見て、江本氏はご自身も大病を患ったことを思い起こします。60代後半になって突然「スキルス進行の胃がん」と診断された江本氏は、『人生もうここで終わりか、と一瞬諦めました。』と当時を振り返りました。 それから5年以上の月日が流れ、すっかり元気になった江本氏ですが、この闘病生活を経てご自身の人生観にある「変化」があったといいます。 がんをきっかけに起きた人生観の変化 江本氏が胃がんを患った当時、一番考えたのは「相続はどうするか」だったといいます。遺言を遺すことや空き家のままにしていた江本氏のご両親の実家を処分することなど、健康なうちにやっておけばよかったことが多かったそうです。 近年では「終活」という言葉が浸透しつつあり、人生の最期を迎えるにあたり、自分の資産をどうするかについて考えることが重要視されています。江本氏自身も終活について、『他人事じゃなくて(中略)身近に色々考えた方がいい。』と語っています。 もうひとつ江本氏が胃がんを患って変わったのは、住まいに対する思いでした。江本氏は今のお住まいについて、『健康のことも考えたり、色々考えると、好きなことをして好きな場所でいようと考えた結果、ここが見つかった。』と明かしました。 75歳になった今、描く住まいの夢 『旅をするじゃないですか。そこにすぐに住みたくなる。』と笑顔で語る江本氏は、いつも国内外問わずご自身が住むイメージを膨らませることを楽しんでいるそうです。 最後に問題です。 江本氏は75歳からの住まいについて、『●●●●のデカい家に住みたい。』と語ってくれました。その驚きの場所とは、以下の5つのうちどこでしょうか。 アッパーイーストサイド(アメリカ) ビバリーヒルズ(アメリカ) 披露山(日本) セントーサコーブ(シンガポール) メイフェア(イギリス) 高級住宅街として有名な地名が並んでいますが、江本氏はいったいどの場所に住みたいと思っているのでしょうか。気になる正解は本編動画で探してみてください。 本編動画はこちら なお、こちらの記事は前編と後編に分かれています。まだご一読いただいていない方は、ぜひ前編も併せてお楽しみください。 >前編はこちら 執筆者紹介 SBIシニアの住まいとお金 メディア部 SBIシニアの住まいとお金は、【人生100年時代を見据えて、「住まい」も「お金」も充実できる人生をサポートしたい】との思いから、60歳以上の持ち家の方を対象に「Youtubeで楽しむ」、「セミナーで学ぶ」、「専門家に相談する」の3つのサービスを運営しています。 <公式サイト> https://www.sbi-efinance.co.jp/senior/ <YouTubeチャンネル> https://www.youtube.com/@sbi_senior/ 中村雅俊氏が「自宅」への思いを語る 俳優で歌手の中村雅俊氏(72)(以下「中村氏」)のお住まいにお邪魔して、住まいやお金に関するお話をフリーアナウンサーの八木亜希子さんが伺いました。 この記事は、SBIシニアの住まいとお金ch...記事を読む

  • サービス付き高齢者向け住宅とは?

    サービス付き高齢者向け住宅とは?入居条件や費用を解説

    サービス付き高齢者向け住宅とは、サ高住とも呼ばれる高齢者のための集合住宅です。サービス付き高齢者向け住宅への入居を検討しているなら、あらかじめ必要な情報を集めておくことが大切です。 この記事では、サービス付き高齢者向け住宅の入居条件や費用、利用状況などを詳しく解説します。 サービス付き高齢者向け住宅とは サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、「状況把握サービス、生活相談サービス等の福祉サービスを提供する住宅」です。「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」に基づき、都道府県から登録を受けた住宅をサービス付き高齢者向け住宅と呼びます。 サービス付き高齢者向け住宅の登録基準は以下のとおりです。 住宅に関する基準 サービス付き高齢者向け住宅では、高齢者が生活するのに相応しい規模と設備を確保する目的で、住宅に関する基準が設けられています。詳細は以下のとおりです。 各専用部分の床面積は、原則25㎡以上(※1) 各専用部分に、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備えたものであること(※2) バリアフリー構造であること ※1:ただし、居間、食堂、台所そのほかの住宅の部分が、高齢者が共同して利用するため十分な面積を有する場合は18㎡以上 ※2:ただし、共用部分に共同して利用するため適切な台所、収納設備または浴室を備えることにより、各戸に備える場合と同等以上の居住環境が確保される場合は、各戸に台所、収納設備または浴室を備えずとも可 サービスに関する基準 サービス付き高齢者向け住宅では、専門家が日中建物に常駐してサービスを提供することが、認定の基準となっています。サービス内容は、安否確認と生活相談の2つが必須のサービスとして定められています。 なお、施設によって違いがありますが、食事の提供などの生活支援サービスを提供している施設もあります。実際に入居を検討する際には、どういったサービスが受けられるのかを施設に確認しておくことが大切です。 契約内容に関する基準 サービス付き高齢者向け住宅では、高齢者が安心して長く住み続けられるように、契約内容に関する基準も設けられています。いくつか抜粋して紹介します。 専用部分が明示された契約であること 長期入院などを理由に事業者から一方的に解約できないことになっている等、居住の安定が図られていること 敷金などの、家賃、サービスの対価以外の金銭を受領しないこと サービス付き高齢者向け住宅の入居条件 サービス付き高齢者向け住宅の入居対象者は、「60歳以上の方」もしくは「要介護、要支援認定を受けている60歳未満の方」です。ただし、施設によっては、認知症や感染症に関する独自の入居条件を追加している施設もあります。申し込みの前に確認しておきましょう。 同居者の入居条件 サービス付き高齢者向け住宅では、一定の条件を満たせば同居することも可能です。同居者の入居条件は以下のとおりです 入居者の配偶者 60歳以上の入居者の親族 要介護、要支援認定を受けている入居者の親族 特別な理由で知事から認められている者 なお、施設によっては2人部屋がなく、部屋が別々になることもあります。あらかじめ施設に確認しておくといいでしょう。 サービス付き高齢者向け住宅の入居費用 サービス付き高齢者向け住宅は、賃貸借契約を事業者と締結して入居する形となるため、初期費用や毎月の家賃などが発生します。国土交通省が公表している資料によると、令和2年8月時点でのサービス付き高齢者向け住宅の入居費用は概ね10万円前後です。 ・サービス付き高齢者向け住宅の入居費用 出典)厚生労働省「第5回サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会資料」 なお、サービス付き高齢者向け住宅では、上図の費用に含まれない「家賃、サービスの対価以外の金銭」を受領しないことが、高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)で定められています。 サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームとの違い 有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の違いは、下図のようになります。 ・図:有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の違い ※厚生労働省が公表している図を元に編集者が作成 サービス付き高齢者向け住宅のうち約96%が有料老人ホームにも該当することが分かっています。 高齢者向け施設のうち、①食事の提供、②介護(入浴、排泄、食事)の提供、③洗濯や掃除等の家事の供与、④健康管理のいずれかをひとつでも提供していれば、有料老人ホームと呼ばれます。 この4つのサービスは、どれもサービス付き高齢者向け住宅と認定されるために必要なサービスに含まれません。しかし、サービス付き高齢者向け住宅の約96%が①食事の提供、を行っており、結果的に有料老人ホームにも該当するのが実態です。 介護が受けられるサービス付き高齢者向け住宅とは 上図の「有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の違い」のとおり、サービス付き高齢者向け住宅の中には、特定施設入居者生活介護の指定を受けている施設も一定数存在します。 平成26年の国土交通省の調査によると、「特定施設入居者生活介護の指定を受ける予定はない」と回答したサービス付き高齢者向け住宅が95.1%と多数を占めていることが分かっています。 約10年前の調査結果ではありますが、特定施設入居者生活介護の指定を受けたサービス付き高齢者向け住宅が少数である状況は、現在も大きくは変わっていないと推測されます。 サービス付き高齢者向け住宅の利用者 国土交通省が公表している「サービス付き高齢者向け住宅の現状等」を基に、入居者の要介護度や年齢の分布を紹介します。自分の状況が、サービス付き高齢者向け住宅の利用者の状況に該当するかを、参考にすることもおすすめです。 要介護度 サービス付き高齢者向け住宅の入居者を要介護度別で見ると、どの区分も一定数入居していることが分かります。 ・サービス付き高齢者向け住宅入居者の要介護度別比率 出典)厚生労働省「第5回サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会資料」 ※編集者が一部加工 年齢 入居者の年齢は、85歳以上が全体の57.3%と最も高く、75~84歳も30.8%となっており、全体の約9割が75歳以上であることが分かります。 ・サービス付き高齢者向け住宅入居者の年齢別比率 出典)厚生労働省「第5回サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会資料」 サービス付き高齢者向け住宅の利用が向いている人 サービス付き高齢者向け住宅に向いている人は、「自立した生活を送りたい人」です。サービス付き高齢者向け住宅はあくまでも「状況把握サービス、生活相談サービス等の福祉サービスを提供する住宅」であり、基本的に24時間の医療体制や充実した介護サービスが付いている施設ではありません。 そのため、申し込み時点で介護なしで生活するのが困難な人や、健康面の不安を抱えており、常に見守りを必要としている人は、サービス付き高齢者向け住宅ではなく、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームを検討する方が安心して生活できる可能性があります。 ただし、サービス付き高齢者向け住宅は要介護度の高い人が住めない施設ではありません。自身の希望や健康状態を考慮したうえで、施設選びを行いましょう。 >特別養護老人ホームとは? まとめ サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリーに配慮した設計になっており、見守りサービスや生活相談などに対応してくれるのが特徴です。自立した生活を送りながらも、適度なケアを受けたいという方は、サービス付き高齢者向け住宅の利用を検討してみましょう。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 介護老人保健施設とは?費用や入所条件をわかりやすく解説 介護老人保健施設は、介護保険施設のひとつです。老健とも称され、介護保険法に基づいてサービスが提供されます。介護老人保健施設への入所を検討しているなら、あらかじめ必要な情報を集めておくことが大...記事を読む

  • 介護老人保健施設とは?費用や入所条件をわかりやすく解説

    介護老人保健施設とは?費用や入所条件をわかりやすく解説

    介護老人保健施設は、介護保険施設のひとつです。老健とも称され、介護保険法に基づいてサービスが提供されます。介護老人保健施設への入所を検討しているなら、あらかじめ必要な情報を集めておくことが大切です。 この記事では、介護老人保健施設の特徴や費用、入所条件などの基本的な内容と、施設を選ぶ際のポイントと注意点について解説します。 介護老人保健施設とは 介護老人保健施設とは、要介護者を対象に、在宅復帰や在宅療養支援を行うための施設です。リハビリを中心とした心身の機能維持と改善の役割を担っており、長く入所することを目的とした施設ではありません。介護保険法では、次のように定義されています。 介護老人保健施設とは、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設。(介護保険法第8条第28項) 出典)e-Gov法令検索「介護保険法」 介護老人保健施設は、施設の人員数や設備の基準が厚生労働省によって細かく定められています。 施設の人員数に関する基準 介護老人保健施設は、厚生労働省によって、サービスを提供するうえでの必要な人員が、以下のとおり定められています。 ・介護老人保健施設の人員基準 出典)厚生労働省「介護老人保健施設(参考資料)」 介護老人保健施設は常勤の医師がおり、看護職員もしくは介護職員が24時間常駐しています。夜間対応の体制が整えられているため、専門職員による医療ケアを受けられます。 施設及び設備に関する基準 介護老人保健施設は、厚生労働省によって、サービスを提供するうえでの必要な設備が、以下のとおり定められています。 ・介護老人保健施設の施設及び設備 出典)厚生労働省「介護老人保健施設(参考資料)」 介護老人保健施設は入所者が適切な環境で過ごせるよう、設備にも基準が設けられています。適切な環境で専門職員による、介護やリハビリ等のサービスを受けられます。 介護老人保健施設の費用 介護老人保健施設にかかる費用は、「施設サービス費」「居住費と食費」「その他日常生活費」の大きく3つに分けられます。 まず、「施設サービス費」は、介護保険の対象となるサービスに該当するため、利用者の自己負担額は1割~3割です。自己負担の割合は所得があるか否か、などによって変わります。たとえば、要介護5の人が多床室を利用し、自己負担額を1割とした時、1か月の自己負担額の目安は、約25,200円です。 次に、「居住費や食費」「その他日常生活費」は、介護保険の対象外となるため、全額が自己負担です。前述と同様に、たとえば、要介護5の人が多床室を利用した場合、居住費が約25,650円、食費が約43,350円、日常生活費が約10,000円です。 つまり、自己負担額1割の要介護5の人が介護老人保健施設の多床室を利用する場合、1か月の負担額は約104,000円です。なお、介護老人保健施設にかかる費用として、実際に自己負担額として支払った金額は、全て医療費控除の対象となります。 出典)厚生労働省「サービス利用者の費用負担等」 介護老人保健施設の入所条件 介護老人保健施設の「入所条件」として、一律で定められた案内はありません。一方で、介護老人保健施設を利用できる人は、前述のとおり「要介護者である」ことが条件となっています。そのため、要介護認定を受けていない人の最初の手続きは、「要介護認定を受けること」になるでしょう。 要介護認定の手続きは、市区町村を通じて以下の手順で行います。 市区町村の窓口に要介護認定の申請を行う 認定調査員が自宅を訪問し、認定調査を行う 主治医に意見書を作成してもらう 要介護度が判定される 結果が通知される 入所者の要介護度の情報 厚生労働省が公表している、介護老人保健施設の要介護度別の入所者数のグラフを紹介します。結果は以下のとおりです。 ・介護老人保健施設の要介護度別の入所者数 出典)厚生労働省「介護老人保健施設(参考資料)」 まずは、いずれの要介護者も年々増加していることがわかります。これは、日本人の平均年齢が上がっていることからも、当然の結果と言えるでしょう。また、介護度に注目すると、要介護1が少ないことが分かります。これは、要介護1の状況は軽度であるため、介護老人保健施設を利用するまでもないと考えている人が多いからかもしれません。 介護老人保健施設を選ぶポイント 介護老人保健施設を選ぶときは、事前に押さえておくべきポイントがあります。 在宅復帰率を確認する 在宅復帰率とは、介護老人保健施設を退所して、在宅の暮らしに復帰できた割合を示すものです。介護老人保健施設はリハビリなどの医療ケアを通じて、在宅復帰を目指すことを目的としています。そのため、リハビリを受けた結果、どれくらいの割合で自宅に戻れるのかが、介護老人保健施設を選ぶポイントになります。 厚生労働省の公表している「介護老人保健施設における看取りの基本的な方針について」の調査結果によると、在宅復帰率が高い施設は積極的に施設内見取りを行っている傾向がある、という結果が出ています。 ・介護老人保健施設における看取りの基本的な方針について 出典)厚生労働省「介護老人保健施設(参考資料)」 看取りの方針を確認する 介護老人保健施設に入所後、必ずしも自宅に戻れるとは限りません。そのため、看取りに関する施設側の対応方針も確認しておきましょう。看取り対応の有無や、どのような体制で看取りを行ってもらえるかなど、細かな部分まで疑問点を解消しておきましょう。 事前に見学をする 施設を選ぶときは、できるだけ事前に見学を行うと安心です。実際に目でみることで、ホームページの情報だけでは分からない部分にも気付けます。見学を行う際は、入所者の様子や職員の対応、施設の清潔感や設備の安全性などを確認しましょう。気になる点は職員に直接尋ねられるので、不安の解消にも繋がります。 介護老人保健施設を利用する際の注意点 介護老人保健施設を利用する際、注意しておきたい点もあります。 入所期間が限られる 介護老人保健施設の入所期間は、原則として3ヶ月です。入所期間が限られているのは、自宅への復帰を目的としたリハビリサービスの提供が中心であるためです。そのため、退所後にどのようなサポートを受けるか、についてもあらかじめ検討しておきましょう。 生活面のサービスが不十分である あくまで、リハビリサービスの提供を行う施設であるため、生活支援としての買い物や洗濯などには対応しない施設もあります。入所を検討している施設が、どの程度までの支援を受けられるのか、事前に確認しておきましょう。 投薬に制限がある 医療費や薬代は施設側が負担してくれる一方で、施設に相談することなく、薬の処方や診療を受けてしまうと、全額自己負担となることもあります。施設自体に診療や薬の処方を受けられる環境は整っていますが、必要な薬の種類や量によっては、制限を受ける恐れもあるので注意しましょう。 まとめ 介護老人保健施設は、介護保険法に基づく公的な施設であり、主にリハビリを中心にサービス提供を行っています。医師や看護師が常駐しており、利用者は手厚い医療ケアを受けられるのが特徴です。心身の機能維持と改善を図り、在宅復帰を目指すために上手に活用しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 特別養護老人ホームとは?費用や入居条件、サービス内容を解説 特別養護老人ホームは、公的施設という性質上、入居条件が細かく定められています。そのため、特別養護老人ホームの利用を検討する前に、そもそも自分が条件に合致しているのかを判断する必要があります。...記事を読む

  • 特別養護老人ホームとは

    特別養護老人ホームとは?費用や入居条件、サービス内容を解説

    特別養護老人ホームは、公的施設という性質上、入居条件が細かく定められています。そのため、特別養護老人ホームの利用を検討する前に、そもそも自分が条件に合致しているのかを判断する必要があります。 この記事では、特別養護老人ホームの入居条件やサービス内容、養護老人ホームとの違いなどを解説します。 特別養護老人ホームとは 特別養護老人ホームとは、要介護状態の高齢者が入居できる公的な介護施設です。在宅での介護が困難な高齢者が対象となっており、施設の目的が老人福祉法で定義されています。老人福祉法の記載内容を要約すると、以下のとおりです。 65歳以上の者であって、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なものを入所させ、養護することを目的とする(老人福祉法第11条の1、第20条の5) 出典)e-Gov法令検索(老人福祉法) 特別養護老人ホームの入居条件 特別養護老人ホームの入居条件は、基本的に要介護度によって決められています。 要介護3以上 要介護3以上の認定を受けている方であれば、40歳からでも特別養護老人ホームへの入居が可能です。要介護3は自力での立ち上がりや歩行が困難であり、認知症の症状が見られるなど、食事や排泄など身の回りのことのほとんどに介護が必要な状態をいいます。 要介護1〜2 特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上の方を対象としていますが、特例によって要介護1~2の場合であっても入居できる場合があります。主な入居条件は以下のとおりです。 認知症である者であって、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られること 家族等による深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であること 単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であること 要介護1とは、日常生活における部分的な介護が必要な状態をいいます。具体的には、起き上がりや立ち上がり、買い物などに介助が必要な状態です。 要介護2も部分的な介護が必要であり、要介護1と比べて歩行や薬の服用、金銭管理などが自力でできないことが増えるため、見守りや介助が必要な状態をいいます。 出典)厚生労働省「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」の一部改正について(通知) 特別養護老人ホームで受けられる7つのサービス 特別養護老人ホームでは、生活全般に関するさまざまなサービスが受けられます。具体的に提供されている7つのサービスについて解説します。 ①食事 特別養護老人ホームでは、入居者の健康状態や好みを考慮した栄養バランスのとれた食事が提供されます。入居者にとって食事は楽しみのひとつであるため、季節に応じた食事や誕生日の特別食など、栄養士が献立を立てて調理しています。 できるだけ家庭と同じような時間帯に食事は提供され、自立を促すために離床して食事ができるようにサポートしてくれます。 ②排泄 排泄に関しては、入居者の身体能力を考慮した上で必要な介助を行っています。尿意や便意がなくても、排尿・排便間隔を把握してトイレへと誘導するケースが多いです。 自力で移動が可能な方にはトイレで排泄するように促し、ベッドから動けない寝たきりの場合はベッド上で排泄の介助を行ってもらえます。 ③入浴 一般的に、多くの事業所で入浴回数は週2回以上となっています。体調不良で入浴できないときには、体を清拭して衛生状態を保つなど、入居者の状況に応じた対応をとってもらえるので安心です。 また、寝たきりの場合でも機械浴槽で入浴することができ、しっかりとケアを行ってもらえます。 ④リハビリ 食事や排泄など、日常生活を送る上で必要な機能の維持、回復を図るために入居者の状況に応じたリハビリを行っています。手先を動かす遊びや体操など、レクリエーションも兼ねたリハビリも取り入れられています。 ⑤生活支援 居室などの掃除は定期的に行われており、清潔な住空間が保てるように配慮されています。洗濯サービスは無料で提供される場合が多く、生活支援のサービスは充実しています。 ⑥レクリエーションやイベント 手先や身体を使うゲームなど、リハビリの一環としてレクリエーションが行われています。季節に応じたイベントや誕生日会などが積極的に開催されており、お花見や紅葉狩りなどの外出の機会も設けられているので、ストレスの解消につながる工夫がなされています。 ⑦医療ケア 医療ケアについてはすべての処置が行えるわけではありませんが、とこずれの処置やたんの吸引、胃ろうの対応などが可能です。医師や看護職員によって対応が行われ、緊急時や夜間にも対応できる体制が整えられています。 特別養護老人ホームのメリット 特別養護老人ホームを利用するメリットは以下のとおりです。 費用が安い 特別養護老人ホームの特徴として、入居一時金が不要であったり、費用が所得に応じて減免されたりする点があげられます。低所得の方であっても入居しやすい仕組みが整えられており、有料老人ホームよりも費用は安く抑えられるでしょう。 24時間介護が受けられる 特別養護老人ホームは、24時間体制で介護を受けられます。夜間においても、入居者25~30名に1人の割合で介護士を配置することが基準として定められているため、夜間の緊急対応なども行ってもらえます。 看取りが可能な場合がある 厚生労働省は、特別養護老人ホームが要介護高齢者のための施設であることから、看取りの体制を整えることを重要視しています。そのため、特別養護老人ホームの中には看取りが可能な施設も一定数存在します。 特別養護老人ホームのデメリット 特別養護老人ホームを利用するデメリットは以下のとおりです。 入居待ちが生じる恐れがある 特別養護老人ホームは、費用面や手厚いサービスなどを理由として、入居希望者が多い施設です。厚生労働省の令和4年度調査によると、全国の2022年4月時点で入居申込済みだが、入居できていない人数は、要介護3以上の方で約25.3万人、要介護2以下の方で約2.2万人いると公表されています。調査結果からも分かるとおり、入居待ちの待機時間が生じる恐れがあると考えられます。 なお、入居の難易度は地域によって異なるので、希望する地域の入居状況を事前に確認しておきましょう。 医療ケアに限界がある 特別養護老人ホームはあくまで介護施設であり、医療機関ではありません。24時間必ず看護師が常駐している施設ではないため、施設内での緊急対応が難しい場合もあるでしょう。 また、医療ケアについても施設内に万全の体制が整っているわけではなく、緊急時は近隣の病院へ搬送しなければならない場合もあります。 年金だけで特別養護老人ホームへ入れる? 厚生労働省年金局が2022年12月に公表した「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、2021年度の厚生年金保険における老齢年金受給額は平均月額14万5,665円(年額174万7,980円)となっています。一方、国民年金保険の老齢年金では平均月額5万6,479円(年額67万7,748円)です。 特別養護老人ホームの年間費用は、厚生労働省の目安によれば月額14万1,430円程度(年額169万7,160円、要介護5の方がユニット型個室を利用したケース)となっています。個室や相部屋などの住環境によって自己負担額に違いはありますが、国民年金だけですべてをまかなうのは難しい部分があるといえるでしょう。 出典)令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況 特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いは? 特別養護老人ホームと名称がよく似ている施設として、養護老人ホームがあります。それぞれの入居条件やサービス内容などの違いは以下のとおりです。 特別養護老人ホーム 養護老人ホーム 施設の目的 要介護高齢者にリハビリ等を提供し在宅復帰を目指す施設 環境的、経済的に困窮した高齢者の入所施設 入居条件 原則として、要介護3以上であること 原則として、自立して生活していること サービス内容 身体介護を中心とした自立支援 食事の提供や健康管理などの自立支援 上記のように、特別養護老人ホームは要介護認定を受けた高齢者の身体介護を中心とした自立支援を行う施設です。一方、養護老人ホームは経済的に困窮しているものの、自立して生活している高齢者を社会復帰させるための施設です。 また、両者は施設の目的や対象者、入居条件などが異なる施設であり、選ぶ基準として「介護の有無」があげられます。介護が必要かどうかで、どちらの施設を選ぶべきかを判断してみましょう。 まとめ 特別養護老人ホームは公的施設であるため、有料老人ホームなどと比べると費用が安く、看取りが可能な施設もあるので人気です。一方で、入居待ちが生じている点や医療ケアに限界がある点などに注意が必要です。特別養護老人ホームの基本的な特徴を把握した上で、自分にあった施設かどうかを検討してみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 老人ホームや介護施設にかかる費用、選び方を解説 老後の住まいを考えたとき、老人ホームや介護施設などの、高齢者向け住宅を検討するかもしれません。一方で、これらの施設にかかる費用がいくらなのか、そもそもどのような人が、どのような施設を選ぶべき...記事を読む

  • 移住支援制度とは?移住先として人気の熱海を事例に紹介

    国は、地方での起業や東京圏からUIJターンにより起業・就業をする方へ支援金を支給する地方公共団体の取組を支援しています。この記事では、国による移住支援制度の一つである「移住支援金」について解説します。 移住支援制度とは? 移住支援制度とは、正式には「地方創生移住支援事業」という名称で、東京圏の一極集中是正と地方の担い手不足の解消を目的に創設されました。支援事業の詳細は、各地方自治体にゆだねられており、一律で決まっているものではありません。 対象者の詳細 各地方自治体によって詳細は異なるものの、一律の条件として定められているものは以下のとおりです。 移住直前の10年間で通算5年以上かつ直近1年以上、東京23区内に在住または東京圏(条件不利地域を除く)*に在住し、東京23区へ通勤していた者。 東京圏外または東京圏のうち条件不利地域の市町村に移住 地域の中小企業等への就業やテレワークにより移住前の業務を継続、地域で社会的企業などを実施 ※東京圏及び条件不利地域の定義 出典)内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生「移住支援金」 以上の条件には、「雇用者としての通勤の場合には、雇用保険の被保険者としての通勤に限る」や、「東京圏に在住しつつ、東京23区内の大学等へ通学し、東京23区内の企業等へ就職した者については、通学期間も本事業の移住元としての対象期間に加算可能」といった条件があります。詳細は国や地方自治体のホームページをご確認ください。 対象の要件 いつ移住しても対象になるわけではなく、以下のような条件があります。 移住支援金の申請が転入後3か月以上1年以内であること。 申請後5年以上、継続して移住先市町村に居住する意思があること 移住先の要件 詳細の条件は各地方自治体によって異なりますが、共通の条件として、以下の1~4のどれかに該当する必要があります。 1.地域で中小企業等へ就業 移住支援金の対象として都道府県のマッチングサイトに掲載されている求人に就業すること。 または、プロフェッショナル人材事業または先導的人材マッチング事業を利用して就業すること。 2.テレワークによる業務継続 自己の意思によって移住し、移住先で移住前の業務を引き続き行うこと。 3.市町村ごとの独自要件 市町村が地域や地域の人々と関わりがある者(関係人口)として認める要件を満たすこと。(要件は市町村によって異なるため、詳細は移住希望先都道府県・市町村へ直接お問い合わせください) 4.地方創生起業支援事業を活用 1年以内に起業支援金の交付決定を受けていること。 出典)内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生「移住支援金」 移住地希望ランキング1位は静岡県 これまで紹介してきた移住支援制度を受けて、移住地として人気のエリアを紹介します。地方移住(IJUターン)を支援する認定NPO法人ふるさと回帰支援センターが実施したアンケートでは、移住希望地として静岡県が3年連続1位にランクインしています。 図:移住希望地ランキング(※セミナー参加者を除いた順位) 2020年 2021年 2022年 1位 静岡県 静岡県 静岡県 2位 山梨県 福岡県 長野県 3位 長野県 山梨県 栃木県 出典)ふるさと回帰支援センターの移住希望地ランキング ここからは移住先の例として、静岡県の代表的な都市である熱海市の特色や移住支援制度について紹介します。 熱海市ってどんな街? まずは、熱海市の情報をご紹介します。 熱海市の基本情報 面積:61.78km² 人口:34,229人(令和5年5月末日現在) 2022年熱海市の年齢階級別の転入者推計数のデータを確認すると、「20~29 歳」の割合が高く、若手世代の移住先として支持されていることがわかります。 図:2022年熱海市の年齢階級別の転入者推計数 出典)2022年住民基本台帳人口移動報告(調査結果から著者が作成) アクセス 熱海駅は、東京駅から東海道新幹線「ひかり」で最短38分、「こだま」でも45分~50分でアクセス可能です。近年、働き方改革によりリモートワークも普及し、通勤することが当たり前ではなくなりました。都心まで毎日出社しなくてもよい、都心では暮らしたくないが、都心の近くに住みたい、というニーズを持つ人は特に、熱海市は最適な都市と言えるのではないでしょうか。 熱海市の特徴 歴史ある温泉地 熱海市は、源泉総数が500を超える温泉場です。熱海温泉は、古来より療養地として人気で、かの徳川家康も訪れたと記録されています。熱海市史によれば、江戸時代、熱海には多くの文化人が訪れ、明和から慶応までの江戸時代約100年の間に代表的な紀行文だけでも36編存在すると言われております。 出典)熱海市「熱海の温泉」 花火大会 熱海市の海上花火大会は、1952年から開催されており、2023年夏で72年目を迎えます。熱海市の海上花火大会は、年間を通して10回以上開催します。熱海市観光協会の「アクセス・人気ランキング」においても、熱海市の海上花火大会は常に上位にランクインされており、熱海市の代表的なイベントとして位置づけられています。 出典)熱海市観光協会「熱海会場花火大会」 熱海市の温泉付き物件を取材 移住先として人気の静岡県、その代表的な都市である熱海市に、実際にどのような物件が販売されているのか、熱海駅に拠点を置く不動産会社(※)に取材協力をいただきました。この記事では、相模湾に面したオーシャンビューを楽しめるだけでなく、温泉を家で楽しめる特徴を備えた物件を紹介します。 物件概要 建物面積 92.59m² (1階:52.85㎡ 2階:39.74㎡) 土地面積 207.96㎡ 場所 伊豆山周辺、熱海駅から車で約13分 編集からひと言 「伊豆山」は熱海市の中でも、頭一つ抜けたハイランクな土地と言われているそうです。 浴室には温泉が備え付きの場合もある 上の写真では、左が温泉専用の蛇口、右が通常の蛇口となっています。このように、熱海では温泉付きの物件も珍しくはありません。今回取材した物件の温泉に関する主な条件は、以下のとおりです。 泉質 ナトリウム、カルシウムが含まれた弱アルカリ性 温泉利用料 月額7,040円 (10立米まで) 温泉更新料 880,000円(税込)1口(10年毎に更新) 家で温泉を楽しむ上でのQ&A 取材協力させていただいた不動産会社の担当者に伺いました。 Q 温泉を維持するために配管清掃を行うなど、掃除は大変ではないのでしょうか? A 温泉というと、湯の花(温泉の不溶性成分が析出・沈殿物)が出やすいと言われています。ただ、ユニットバスに温泉の湯の花の成分が染み出すことはないので、通常のお風呂掃除と同じで、温泉だから大変ということはありません。 Q 湯量制限とは何でしょうか? A 本物件は、毎月10立米まで使用可能です。単純に「10」という数字を聞くと少なく感じるかもしれませんが、10,000リットルもの湯量を使用することができます。そのため、1日1回は温泉を楽しむことは可能で、特段湯量制限が生活の豊かさを損なうことはありません。 株式会社エンゼル不動産 熱海店 〒413-0011 静岡県熱海市田原本町9番1号 熱海第一ビル2階 TEL:0557-85-5151 熱海市の支援制度を紹介 令和5年度の移住・就業支援金について紹介します。なお、令和5年7月時点の情報のため、変更が行われる場合もあるので、詳細は公式ホームページをご覧ください。 移住元の要件 要件1 以下の1,2のどれかに該当する必要があります。 熱海市へ移住する直前の10年間のうち通算5年以上かつ移住する直前に連続して1年以上、東京23区に在住していたこと。 熱海市へ移住する直前の10年間のうち通算5年以上かつ移住する直前に連続して1年以上、東京23区以外の東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)のうちの条件不利地域以外の地域に在住し、東京23区内の法人への通勤をしていたこと。 ※「移住する直前の10年間のうち通算5年以上」は合算などでも算出することができます。 要件2 以下の1~3の全てに該当する必要があります。 暴力団などの反社会勢力又は反社会勢力と関係を有する者でないこと。 日本人、又は外国人で永住者、日本人の配偶者など、永住者の配偶者など、定住者、特別永住者のいずれかの在留資格を有すること。 移住する直前に在住していた市区町村において、最近1カ年市区町村税を滞納していないこと。 移住先の要件 就業に関する要件(一般の場合) 以下の1~7の全てに該当する必要があります。 勤務地が東京圏以外の地域又は東京圏内の条件不利地域に所在すること。 都道府県のマッチングサイトに掲載されている支援金対象求人に就業すること。 申請者にとって3親等以内の親族が代表者、取締役などの経営を担う職務を務めている中小企業などへの就業でないこと。 週20時間以上の無期雇用契約に基づいて中小企業などに就業し、かつ、申請時において当該中小企業などに連続して3月以上在職していること。 マッチングサイトに求人が支援金の対象として掲載された日以降に同求人への応募をしたこと。 就業した当該中小企業などに、支援金の申請日から5年以上、継続して勤務する意思を有していること。 転勤、出向、出張、研修などによる勤務地の変更ではなく、新規の雇用であること。 起業に関する要件 静岡県が実施する地域創生起業支援事業に係る起業支援金の交付決定を1年以内に受けていることが必要です。 就業に関する要件(専門人材の場合) プロフェッショナル人材事業又は先導的人材マッチング事業を利用して、令和3年3月1日以降に就業し、以下の1~5の全てに該当する必要があります。 勤務地が東京圏以外の地域又は東京圏内の条件不利地域に所在すること。 週20時間以上の無期雇用契約に基づいて就業し、申請時において連続して3カ月以上在職していること。 当該就業先において、移住支援金の申請日から5年以上、継続して勤務する意思を有していること。 転勤、出向、出張、研修などによる勤務地の変更ではなく、新規の雇用であること。 目的達成後の解散を前提とした個別プロジェクトへの参加など、離職することが前提でないこと。 就業に関する要件(テレワークの場合) 以下の1,2の全てに該当する必要があります。 所属先企業などからの命令でなく、自己の意思により住民票を熱海市に異動した場合であって、熱海市を生活の本拠とし、移住元での業務を引き続き行うこと。 内閣府地方創生推進室が実施する地方創生テレワーク交付金を活用した取組の中で、所属先企業などから資金提供されていないこと。 就業に関する要件(関係人口の場合) 以下の1~3の全てに該当する必要があります。 移住時の年齢が39歳以下であること。 熱海市に主たる事業所を有しかつ中小企業基本法第2条第1項に規定する中小企業者及び社会福祉法人、医療法人、NPO法人などに就職し、かつ、申請時において当該中小企業者などに連続して3月以上在職していること。 当該中小企業などに、支援金の申請日から5年以上、継続して勤務する意思を有していること。 交付金額 支援金の交付金額は以下のとおりです。 区分 支援金の額 単身での移住の場合 60万円 2人以上の世帯での移住の場合 100万円 18歳未満の世帯員を帯同して移住する場合(令和4年4月1日以降移住者が対象) 18歳未満お一人につき30万円加算 18歳未満お一人につき100万円加算 申請について 就業の場合 熱海市へ転入後3カ月以上1年以内で、対象企業に就業して3カ月後から申請可能 起業の場合 熱海市へ転入後3カ月以上1年以内で、静岡県の起業支援事業の交付決定から1年以内に申請可能 出典)熱海市「移住・就業支援金」 まとめ 移住支援制度は、地方自治体が主体となって実施します。実施期間、支給額等の制度の詳細は地方自治体により異なります。気になる移住先があれば、各地方自治体の移住支援制度のページをご確認ください。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

  • 終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリット、普通建物賃貸借契約との違い、手続き方法を分かりやすく解説

    終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説

    終身建物賃貸借契約は、高齢者が安心して賃貸住宅に居住できる仕組みです。老後も賃貸暮らしを続けるなら、終身建物賃貸借契約に対応している賃貸住宅も選択肢のひとつです。この記事では、終身建物賃貸借契約の概要やメリット・デメリット、手続きの流れについて解説します。 終身建物賃貸借契約とは? 終身建物賃貸借契約とは、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づき、高齢者単身・夫婦世帯等が終身にわたり安心して賃貸住宅に居住することができる仕組みとして、借家人が生きている限り存続し、死亡時に終了する相続のない一代限りの借家契約です。 賃借人は生涯同じ家で安心して生活でき、一代限りの契約であるため、死亡時に相続は発生しません。基本的に入居できるのは60歳以上に限られます。ただし、60歳以上の配偶者との同居であれば、60歳未満でも入居ができます。 なお、終身建物賃貸借契約をするには、対象となる不動産が都道府県知事の認可を受けている必要があります。また、賃貸住宅が一定の基準に適合していることも要件です。 出典)東京都住宅政策本部「終身建物賃貸借制度」 終身建物賃貸借契約のメリット 終身建物賃貸借契約のメリットは以下のとおりです。 死亡するまで住み続けられる 終身建物賃貸借契約は契約期間が終身であるため、賃借人が死亡するまで同じ家に住み続けられ、賃貸人からの解約は、原則以下のとおりです。 老朽や損傷などにより、住宅を維持できない場合 入居者が長期にわたり居住しておらず、住宅の管理が困難な場合 入居者に不正行為や公序良俗に反する行為、事実が判明した場合 中途解約は基本的に都道府県知事の承認が必要です。それに加え、6か月前に入居者に対して解約の申入れを行わなければならず、急に賃貸人から退去を求められることが少ない点も安心です。 なお、老人ホームへの入所や親族との同居などの理由で居住できなくなった場合は、1ヵ月前に申入れを行うことで、賃借人からの解約が可能です。 契約終了後の手続きが簡単 終身建物賃貸借契約は、賃借人の死亡によって契約が終了します。相続が発生せず、契約終了の手続きが不要のため、相続人に迷惑をかけずに済みます。同居配偶者は、賃借人の死亡を知った日から1ヵ月以内に申し出れば、引き続き居住が可能です。 バリアフリーの要件を満たしている 終身建物賃貸借契約の対象不動産は、一定のバリアフリー基準を満たしています。「段差のない床」「浴室等の手すり」などが備わっており、高齢者にとっては住みやすいでしょう。 高齢者でも家を借りられる 一般的な賃貸住宅では、健康面や金銭面の不安から高齢者の入居を敬遠するケースもあります。それに対し、終身建物賃貸借契約は、高齢者が生涯にわたって賃貸住宅に居住できる制度であるため、高齢を理由に入居を断られる心配がありません。 更新料がかからない 普通建物賃貸借契約では契約期間が定められており、契約更新の際に家賃1ヵ月分の更新料がかかるのが一般的です。一方、終身建物賃貸借契約は契約期間が終身のため、更新料はかかりません。同じ家に長く住む場合は、住居費の負担軽減が期待できます。 終身建物賃貸借契約のデメリット 終身建物賃貸借契約には、以下のようなデメリットもあります。 事前に認可されている不動産でないと利用できない 終身建物賃貸借契約を利用できるのは、都道府県知事から認可を受けた不動産に限られます。認可されている不動産はまだ少ないので、住みたいエリアに終身建物賃貸借契約に対応した物件がない可能性もあります。 同居配偶者や60歳以上の親族以外は入居できない 終身建物賃貸借契約は、賃借人や同居人に一定の制限があります。賃借人は、基本的に60歳以上の高齢者に限られます。また、同居配偶者や60歳以上の親族以外は入居できないので注意が必要です。 終身建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約の違い 終身建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約の違いは以下のとおりです。 区分 終身建物賃貸借契約 普通建物賃貸借契約 定期建物賃貸借契約 契約の方法公正証書等の書面による契約に限る書面でも口頭でも可公正証書等の書面による契約に限る 期間または期限賃借人の死亡に至るまで1年以上または期間の定めなし期間の定めなし 契約の更新無し正当事由がない限り更新更新なし、再契約が必要 賃料増減額請求権 増減を請求できる※1 増減を請求できる※2 増減を請求できる※3 相続の有無無し有り有り ※1 賃料を改定しない特約があるときは増減を請求できない ※2 賃料を増額しない特約があるときは増額を請求できない ※3 増減額請求権を排除する特約を定めることが可能 終身建物賃貸借契約は、契約方法が公正証書等に限られ、契約期間が終身で更新や相続がないのが特徴です。 終身建物賃貸借契約の手続き方法 終身建物賃貸借契約は、賃借人側に特別な準備は必要ありません。都道府県ごとに、終身建物賃貸借契約が利用できる住宅一覧が公表されているため、確認して問い合わせてみましょう。入居したい物件が見つかったら、賃貸人と終身建物賃貸借契約を締結します。 出典)東京都終身認可住宅一覧(令和5年4月1日現在) 賃貸人の手続き 賃貸人が終身建物賃貸借契約をするには、事前に都道府県知事の認可を受ける必要があります。手続きの流れは以下のとおりです。 賃貸住宅の概要や賃貸条件等を記載した「事業認可申請書」を作成する 間取図等の必要な書類を添付する 都道府県知事等の自治体の長に提出する 一定のバリアフリー基準等に適合していることが要件となるため、物件の状況によっては手すりの設置などの対応も必要です。 出典)国土交通省住宅局安心居住推進課「終身建物賃貸借契約の手引き」 まとめ 高齢者は、健康面や金銭面の問題で賃貸住宅の入居を断られるケースが少なくありません。しかし、終身建物賃貸借契約を利用できる不動産であれば、高齢者でも安心して同じ家に住み続けられます。老後も賃貸暮らしを続けたい場合は、終身建物賃貸借契約に対応した物件を探してみてはいかがでしょうか。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 老後にリースバックを利用すると得られる4つのメリット リースバックは、自宅を売却してまとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるサービスです。リースバックを利用することで老後の不安を解消し、より快適な生活が送れるように...記事を読む

  • <介護と保健ガイドブック>介護におけるコミュニケーション

    <介護と保健ガイドブック>介護におけるコミュニケーション

    介護におけるより良いコミュニケーションとは 介護される人の心理状態を理解しよう より良い介護を行うためには、介護される人、介護する人、この両者間のコミュニケーションが非常に大切なものになります。介護をされる人の心理状態を知っておくことはとても重要です。相手がどういう心理状態なのかを理解できれば対応の方法もわかり、お互いの関係を良好に保つことにつながります。 一見わがままだと思えることも、介護されることへの申し訳ないという思いや家族に負担をかけることへの罪悪感、今までできていたことができないことへのいら立ちなどからくるものなのかも知れません。ここでは介護を受ける人が一般的にどのような気持ちを持つことが多いのかを紹介します。 ただし、実際にはひとりひとりに個人差がありますので、紹介する心理状態が必ずしも当はまる訳ではありません。介護される人と介護する人がよく話し合い、お互いの気持ちを知り、思いやりを持って接することが大切です。 【介護を受ける人の心理状態】 それまで、できていたことができなくなることによるイライラ、焦り、不満などを抱えていることがある。 自由にできていたことが人の手を借りないとできなくなることによる欲求不満から、攻撃的になる場合もある。 介護してもらうことに申し訳ないという罪悪感を持っていたり、負い目を感じていたりする場合もある。 排泄や入浴などの介助を受ける場合、恥ずかしいという意識をもつ場合もある。 高齢者の一般的な心理背景 介護を受ける人との接し方のポイント 介護を受ける人と接する場合、具体的にどのようなことに配慮して、どのような心がまえ、態度で対応したらよいのでしょうか。そのポイントを紹介します。 傾聴、受容、共感が大事 相手の気持ちや考え、状態を理解するには、まず相手の話にじっくりと耳を傾ける「傾聴」が大事です。また、話を聞いたら否定せず、ありのままを受け入れる「受容」、そして、相手の喜怒哀楽に「共感」する姿勢を持つことも大切です。相づちを打ちながら聞く、相手の言ったことに質問をしたり、聞いた言葉をそのまま繰り返したりするなど、相手の話をよく聞いているということを示すようにしましょう。相手と目線の高さを合わせ、相手の表情も見ながら話すように心がけると、より良いコミュニケーションにつながります。 非言語コミュニケーションも大事 コミュニケーションは、言葉だけで行われるものではありません。例えば、声の大きさや発し方にも気を配りましょう。「高齢者は耳が遠いから大声で話す」と思いがちですが、十分に聞こえている人もいます。相手の状態を見て、声の大きさは調整するようにします。一般的に、少し低めの声で、ゆっくり、はっきりと話すと聞き取りやすいといわれています。また、言葉で説明するだけでは伝わりにくいと思う場合、身ぶりや手ぶりを交える、文字で書いて示す、現物を見せるなどの工夫も有効です。さらに、肩に手を置く、手を握るなど、スキンシップも有効な場合があります。このように相手の状態をよく観察しながら、上手にコミュニケーションがとれるように工夫しましょう。できるだけリラックスして話せるように静かな環境を整えることも大切です。 「できることは本人にやってもらう」のが基本 介護というと、なんでもかんでもお世話をするものと思いがちですが、手を出し過ぎるとその人の機能低下を招くことにもなりかねません。「できることは本人にやってもらう」のが基本です。そのためには、衰えた機能ばかりに目を向けるのではなく、その人ができることは何かを見つけて、その能力を引き出すような援助を心がけましょう。また、介護を受ける人は、それまで自力でできていたことが他人の手を借りなければできなくなっていることに負い目を感じている場合もあります。その人ができることを見つけ、何かの役に立っているという自己有用感を持ってもらうことも大切です。それが生きる喜び、生きたいという意欲にもつながります。いたずらに「頑張れ」と励ますだけではなく、その人の意に沿った具体的な目標を決め、達成できたらそれを一緒に喜び合うという姿勢を持ちましょう。 その人らしさ、その人らしい暮らしを大切に ここに挙げたのは一般的にいわれていることです。人にはそれぞれ個性があります。杓子定規に考えて決めつけることはせず、一人ひとりに合った対応を心がけましょう。本人の意志、その人らしい暮らし方を尊重することが、より良い関係を築くためにとても重要です。 よくある事例への対応 物を盗られたと訴える 物を盗られたと訴える「物盗られ妄想」は、アルツハイマー型認知症に多く見られる症状で、一番身近な介護者を疑うことも多いのです。このような場合、本人に理屈を説明しても納得してもらうことはむずかしく、介護者が見つけるとより疑いが強まる場合もあります。一緒に探し、本人が見つけるように誘導しましょう。 入浴や着替えをいやがる 服を脱がされることが恥ずかしくて拒否していることも考えられます。その場合は、同性の家族が一緒に服を脱いであげると抵抗感がなくなることもあります。また、入浴は浴室でするということにこだわらず、部分的な清拭を行ったり、ベッドサイドで足浴をしたりすることでもよいでしょう。無理をすると思わぬ事故につながることもあるので、介護サービスなどの入浴サービスを利用することも一案です。 知らない間に出て行き、帰れなくなる 昔住んでいた家や思い出深い場所に行ってみたくなり、知らない間に出て行き、帰る場所がわからなくなって徘徊し保護されるケースも…。このような場合は無理に止めず、一緒に出かけて近所を一周すると落ち着くこともあります。また「今日はもう遅いので、明日にしましょう」などと声がけをし、延期してもらうことで落ち着くこともあります。声がけで止めるのがむずかしい場合、玄関などにセンサーをつけておく、夜間などは二重ロックをかけるなどの対応策をとることも考えましょう。 介護をする人自身が健康を損なわないように まじめな人ほど、介護の手を抜いたり他人任せにすることに罪悪感を感じ、頑張ってしまいがちです。しかしそれが続くと、介護をする人が体調を崩したり、精神的に追い詰められたりしてしまいます。ここでは、介護をする人の心身を守るために心がけておきたいことを紹介します。 周りに協力を求め、一人で抱え込まない もっとも大切なのは、ひとりで抱え込まないことです。協力してくれる人を周りにたくさんつくっておくことで精神的な余裕が生まれます。家族内で分担をする、それが無理ならば離れている兄弟や近所の人、あるいは介護ヘルパーなどのプロの手もぜひ借りましょう。 介護を支援する制度をうまく利用する 介護保険制度だけではなく、その他の公的なサービスも徐々に増加しています。まずは自治体の窓口で、どのようなサービスが利用できるのかを相談してみましょう。各自治体ごとに提供されるサービスが異なりますので、情報収集をしっかりと行うことが大切です。また、福祉用具や機器の貸し出しなど、経済的な負担を軽減する制度もあるので上手に利用しましょう。 家族だからできる介護とは? 介護のための技術を習得しているプロの手を借りたほうが安全であったり、介護される人も気が楽だったりする場合もあるでしょう。しかし家族には、苦楽をともにしてきた経験や時間という、他人には共有できないものがあります。あるベテランのヘルパーは「私たちがどんなに頑張っても、家族の間でのやりとりから生まれる自然な笑顔を引き出すことはできない」と言います。公的サービスも大いに活用すべきですが、家族だからこそできることを同時に考えていくことが、より良い介護につながります。 広がり始めた「見守りサービス」 超高齢社会を迎え、一人暮らしの高齢者や高齢の夫婦のみといった「高齢者だけの世帯」が増えています。離れて暮らす家族にとって、高齢の親や親族の安否をつねに確認できることは、安心につながります。高齢者が住み慣れた土地で自立して暮らし続けるには、周囲の見守りが欠かせません。現在、地方自治体や多くの民間事業者などが、効果的な高齢者の「見守りサービス」に取り組んでいます。 見守りサービスには、安否の確認や通報、駆けつけを代行してくれるものなど、さまざまなタイプがあります。自治体が実施している見守り関連事業には「安否確認」「緊急通報システム」「配食サービス」「コミュニティ活動や学習活動」「サロンの運営・管理」などがあります。介護保険によるサービスに加え、多くの自治体では、民生委員や地域包括支援センターによる一人暮らしの高齢者への見守り活動、民間事業者と連携した支援の提供などに取り組んでいます。 サービスの情報 新型コロナウイルスの影響により、離れて暮らす高齢の家族を訪ねることが困難な状況の中で、カメラ型やセンサー型などの見守り装置の設置が注目されています。パソコンやスマホを使って、遠隔で家族を見守ることが可能です。 自治体が行う支援やサービスについては、内容や要件などが各自治体によってそれぞれ異なります。利用する際は、居住する市区町村の福祉課や地域包括支援センターなどに問い合わせてください。民間事業者が手がけるサービスについては、企業の公式サイトなどで情報を入手することができます。自治体と連携しているサービスでは、機器の設置などが助成対象になる場合があります。 出典)一般社団法人日本保健情報コンソシウム発行 『介護をする家族のための介護と保健ガイドブック』より引用

  • <介護と保健ガイドブック>家庭での介護

    <介護と保健ガイドブック>家庭での介護

    起き上がりと移動の介助 寝返りや起き上がり、ベッドから車イスへの移乗など、「移動」は、日常のさまざまな場面で必要となる介助です。力任せに動かそうとすると、介助する人が腰を痛める原因にもなってしまいます。無理な力を使わず、介護をする人にとっても介護をされる人にとっても安心で楽な方法を覚えましょう。 起きて座ることの意味 人にとって「起きる」ということは非常に重要な意味を持っています。まず、「起きて」「座る」ことは「食べる」「歩く」といった日常生活の基本となる行動です。起きて髪をとかす、座って食事をとるなど、自分でできることを自分で行えることは、自信の回復や生きる意欲にもつながります。 また、「起きて」「座る」ことは、意識を覚醒させるため、脳の活性化にもつながります。さらに、「起きる」ということは、重力に逆らって姿勢を保つ筋力を使います。寝たきりになってしまうと、この筋力が衰え、骨の弱化、換気障害なども起こしやすくなります。 体の一部にずっと重みが加わることによって褥瘡(床ずれ)の原因にもなります。生活にメリハリとリズムをつけるためにも、少しでも「起きて」「座って」過ごす時間を増やすような介助を行いましょう。 【2時間に1回を目安に】 寝返りの介助は、床ずれを防止するためにもとても大切です。できれば2時間に1回を目安に、こまめに体の向きを変えるようにしましょう。 【本人に動作を説明し、協力してもらう】 介助をされる人にも、始めようとする動作を説明し、協力してもらうとスムーズになり、お互い楽に動くことができます。 寝返りの介助-仰向けから横向きに 起き上がりの介助 生活の質を保つためには、できるだけ離床時間をつくることが大切です。近年は、介助する人が腰を痛めぬよう、高さの調整機能、背上げ機能があるベッドを利用することも多くなっています。自身で動ける場合はできるだけ自分の力で起き上がってもらうようにして、介助者は最低限の手助けをするようにします。 介助用ベッドを使用する場合 【動作と動作の変わり目には声がけを!】 「移動」は一気にしようとすると転倒などの恐れがあります。動作と動作の変わり目では必ず動きを止め、安定してから次の動作に移るようにしましょう。次の動作を言葉で伝えることも大切です。 【座ることは自立した生活への第一歩】 移動が楽にできるようになれば、ベッドで寝たまま過ごす時間が短くなり、生活の行動範囲も広がります。座ることによって大脳が刺激され、表情が生き生きとしてくることもあります。 【腰を痛めないコツと注意点】 起き上がりの介助は腰痛の原因になりがちです。腰痛を防ぐコツと注意点を紹介します。 足を広げて、重心を低くする。 腕の力や背筋の一部ではなく、全身の大きな筋肉を使う。力で動かそうとするのではなく、てこの原理を利用したり、体重移動で動かす。 水平移動、平行移動を心がけ、体を変な方向にねじらないようにする。 介助用ベッドを使用しない場合 ベッドから車いすに移乗する ベッドから車イスに移動する場合、少しでも自分で動ける場合はトランスファーボードの使用がおすすめです。全介助の場合はスライディングシートを使う方法もあります。 トランスファーボードを使った移乗 ベッドを車イスよりも5センチ程度高くし、ベッドに座ってもらう。この時、足の裏がしっかり床についているか確認。 車イスのアームバーは外しておく。 体を前に傾け、片方に体重をかけ、お尻を浮かせる。その隙間にトランスファーボードを差し込む。 骨盤を前傾させ、進行方向に体重を移動させる。 本人ができなければ、後ろから骨盤を持って移動を介助する。または、前から膝を押さえて移動を介助する方法もある。 ボードを抜く前に姿勢を直す。ボードを立てるようにして引き抜く。 これがコツ! 力まかせにしない!身体の自然な動きを考えよう。 動作と動作の間は、必ず1回止まってから! これから行う動作について、言葉で伝えることも大切! 【リフトで移動する福祉用具も上手に利用しよう】 持ち上げなければ移動が難しくなった場合、リフトを利用する方法もあり、介護者の腰痛防止にもなります。リフトにはベッド固定型、レール走行型、床走行型などがあり、目的、要介護者・介護者の状態、部屋の状況、費用などを考慮して選ぶことが大切です。 食事の介助 「食べること」は栄養をしっかりとることも大切な目的ですが、生きるうえでの大きな楽しみのひとつでもあります。加齢とともに噛む力や飲み込む力は低下しがちですが、食材選びや調理法をよく考え、楽しくおいしく食べられる工夫を心がけましょう。 気を付けたい「低栄養」と「過栄養」 高齢者で注意すべきポイントのひとつは「低栄養」です。低栄養とは身体に必要なエネルギーやたんぱく質などが不足している状態。それは噛めない、飲み込めない、偏食や食欲不振などにより食べる量が減る、また、あっさりした食事が中心で肉や卵、脂質が十分に摂取できていないことなどによって起こります。そしてもうひとつ注意したのは「過栄養」です。 加齢によりどうしてもエネルギー消費は低下し、過栄養となりがちです。過栄養は、肥満、脳卒中、心疾患を引き起こす要因にもなります。量よりも質を考えて、バランスのよい栄養を摂取することが大切です。 低栄養化どうかをチェック □最近、急に体重が減ってきた □食事がおいしいと感じない □食事はあっさりしたものが中心で、卵、肉はあまり食べない □脂っぽいもの、揚げものなどはあまり食べない □お菓子ばかり食べて、ちゃんとした食事をしていない □お酒とおつまみで食事を終えている □食事は好きなものばかり食べている □歯や歯茎が痛くて食べられない 食べる環境を整える 生活にメリハリをつけるためにも、食事はベッドから離れ、テーブルで食べるようにしたいもの。また、おいしく、楽しく食べるには姿勢も大切です。そのためにはテーブルやイス、食事の道具など、食べるための環境を整えることが重要です。そのポイントを紹介しましょう。 【注意したいポイント】 ・寝たままでの食事は、誤嚥の危険性あり!できるだけ上体を起こすように。 ・食器は手の届くところに置きましょう。 ・テーブルに置かれた食器と口との距離が遠い場合は、食器の下に台を置きましょう。 ・こぼしやすい場合には、ナプキンやタオルを。 【介護用の食器、道具をうまく活用しよう】 食事は使い慣れた食器、道具を使えれば良いのですが、つかみにくい、使いにくいなど、食べることがめんどうになってしまっては本末転倒。柄や色がきれいなものも増えていますので、介護用の食器、道具を上手に取り入れましょう。 食事をするときの姿勢 ・イスと背もたれの間にクッションなどを入れ、身体を安定させる ・姿勢は、イスの背にもたれず、少し前かがみがよい ※イスの背にもたれて食べると、食べ物が気管に入りやすくなるので注意 ・テーブルは、座ったときに肘をつけられる高さに調節する ・イスが高く、足が床に届かない場合は、雑誌や新聞などを重ねて置き、その上に足を置くようにすると安定する これはやっちゃダメ 食べるのが遅かったり、手が震えてこぼしたりしているのを見ると、つい、食べさせてあげたくなってしまうもの。でも、自分でできることは自分でしたほうが本人の機能維持にも役立ちます。自分のペースで食べられるよう、見守ることが大切です。 誤嚥を防ぐ  食事の介助でとくに気をつけたいのは「誤嚥」です。「誤嚥」は飲み込んだ食べ物が、食道ではなく気管に入ってしまうこと。肺炎や窒息の原因にもなりかねません。注意するポイントを紹介しましょう。 【誤嚥を防ぐためのポイント】 ポイント 1 ゆっくり噛んで食べるようにする。噛む力が落ちている場合、食材を細かくきざむ、すりつぶした状態にするなどの工夫をする。 ポイント 2 水のようにサラサラとしたものは誤嚥しやすい。食べ物にとろみをつける、すぐに飲み込まないで、一度、口の中にためてから飲み込むようにする。 ポイント 3 食べたものが逆流する場合もある。食後1〜2時間は上体を起こした姿勢にする。 嚥下体操 舌を出したり、引っ込めたりする。それを3回くらい繰り返す。 舌で左右の口角をさわるようにする。これも3回くらい繰り返す。 首をゆっくり左右に曲げる。3 回繰り返す。 顔をゆっくり左右に向ける。3 回繰り返す。 最後に唾をゴクンと飲み込んでみる。 出典)『今スグ役立つ!よくわかる!家庭の介護ハンドブック』(鎌田ケイ子監修、新星出版社) 食事中の事故への対応 食事中、急に元気がなくなり息が荒くなった、何を聞いても答えない、けわしい表情をしている、咳が止まらない…などの状態が見られたら誤嚥の可能性があります。その場合は次のように対処しましょう。 ・口を下に向ける。 ・口を大きく開き、咳や痰と一緒に吐き出すように促す。咳やむせを我慢させない。タオル やティッシュを渡して、咳や痰を吐くのを遠慮しなくてよいようにするという配慮も。 ・大きな咳払いを数回するように促す。 調理の工夫 飲み込む機能が低下している場合、選ぶ食材や調理法を工夫することによって、食べやすくすることができます。ただし、食べることは楽しみのひとつ。例えば、魚の場合は魚の形のままお皿にのせ、本人が食べやすい大きさを確かめながら、本人の前で切り分けるようにすることも一案です。 【嚥下障害のある人が食べにくいもの】 ・ベタベタと粘り気のあるもの  例)もち、団子 など ・水分がなくてパサパサとしたもの  例)パン、クッキー、ゆでたまご、のり など ・固くて噛み切りにくいもの  例)タコ、イカ、厚切りの肉、ゴボウ、寒天 など 【嚥下障害のある人が食べやすいもの】 ・のどごしがよいもの  例)ゼリー、プリン、卵豆腐、茶碗蒸し など ・とろみのあるもの  例)おかゆ、カレー、シチュー など ・口の中で、バラバラになりにくいもの  例)うどん ・適度な水分、油分が含まれているもの 飲み込みにくい症状のほか、「むせやすい」「口の中が乾いている場合」など、その人の状態によって食べやすいもの、食べにくいものがあります。避けたほうがよいものを挙げましょう。 ◎むせやすいとき  酢の物、麺類(すすって食べるのでむせやすい)  細かくきざんだもの ◎口の中が乾いているとき  パン、クッキー、ゆでたまご など 排泄の介助 排泄の介助は、介護する人にとっても介護される人にとっても精神的、肉体的に大きな負担になりがちなケアです。介護される人の尊厳を保ちつつ、介護する人の負担を軽減するためにも、適切な介助のポイントを心得ておきましょう。 トイレ介助のポイントとは? 「排泄」はデリケートな問題です。排泄の機能が正常で、トイレまで歩行や車イスによって移動が可能な場合は、できるだけトイレで排泄が行えるようにします。そのためには、トイレの環境を整え、トイレまで行きやすいようにすることを考えましょう。 一方、身体が不自由でベッドから動くことができない、排泄障害があるという場合は、排泄用 具を適切に選んで使用することを考えます。 排泄障害とは? 排泄障害とは、排便、排尿に関して、何らかの問題がある症状をいいます。具体的には「尿失禁」「便秘」「下痢」などの症状が挙げられます。「尿失禁」は加齢によって尿道を締める筋肉が弱まり、くしゃみやお腹に力を入れることで尿漏れを起こしてしまう、尿意が大脳に伝わらずに漏れてしまう…などのケースがあります。 「下痢」は神経性のもの、アレルギー性のもの、細菌によるものなど、さまざまな原因が考えられます。それぞれの原因によって適切な対応が必要です。「便秘」は加齢により腸の働き、腹筋などが弱くなることによって起きやすくなります。また、食事や水分、あるいは運動が少ないことでも起きやすくなります。 負担を軽減するために環境を整備する トイレまで行きやすいようにする環境整備 自力歩行ができる、車イスや介助があればトイレまで行けるという場合は、トイレまで行きやすくするための環境を整えましょう。下図に示すような点がポイントです。 トイレ内の環境整備 トイレの中で、立ったり、座ったりしやすいようにすることが大切です。例えば、下図に示すような点に気をつけましょう。 排泄用具を使う ポータブルトイレを使用する場合 ベッドから起き上がることはできるけれど、トイレまで行くことがむずかしい場合は、ポータブルトイレをベッドサイドなどに用意し、使用するとよいでしょう。 ・ひとりでズボンや下着を下ろせない場合、自分に寄りかかってもらい下ろしてあげる。あるいは、壁や手すりにつかまり立ってもらい、後ろから脱がせてあげる。 ・自分に寄りかかってもらい、抱きかかえるようにして便座の中央に座らせる。 ・ひとりで排泄ができる場合は、便座に身体が安定して座っているのを確認したら、カーテンや衝立などで囲い、排泄中はプライバシーが守れるようにする。排泄が終わったら声をかけてもらうようにする。 ベッド上で排泄する場合 腰のあたりに防水布を敷き、肛門の中央にくるように差し込み便器をあてがう。腰を浮かせることができない場合は、本人に横向きになってもらい、便器をあてて、仰向けになってもらう。 女性の場合は、尿が飛び散らないように、トイレットペーパーを股の間に挟んでおく。あらかじめ便器の中に2〜3枚、トイレットペーパーを入れておくと後始末がしやすい。 排便が終わったら陰部の洗浄をする。便器を取るときは、腰を浮かせることができる場合、声がけをして腰を上げてもらう。上げられない場合は、本人の膝を片方の手で手前に倒すようにして横に向ける。このとき、便器のふちをもう片方の手で押さえるようにすると、排泄物がこぼれない。 ここがポイント 陰部の洗浄は手際よく。尿でおむつが汚れた場合、 汚れたおむつの上でシャワーボトルにお湯を入れ て陰部を洗い流します。 便の場合は、ウェットティッシュで便を拭き取り、新しいパッドを敷いてから洗浄するとよいでしょう。 おむつの交換 まったく動けない、尿意がない、尿もれの量が多いなどの場合は、おむつの使用を考えます。使用する人の状態、尿の量、使用する時間帯、ベッドで過ごす時間の長さ、介助する人の負担などを考えて選びます。 おむつの種類 ・テープ式おむつ 寝たきり、あるいは介助があれば起き上がれる人の場合。 ・パンツタイプおむつ 介助があれば座れるが、昼間の排泄は主におむつでするという人の場合に使用する。中に尿取りパッドを重ねるとよい。介助があれば立てる、トイレまで行ける、ポータブルトイレで排泄ができるという人の場合も、パンツタイプのおむつを単体で使用する。心配な場合は、尿取りパッドを併用する。 ・軽失禁パッド 尿もれはあるが、量が少ない人 の場合に使用する。 【ニオイが気になるとき】 汚物は、確認したら手早く処理する。 部屋の換気も忘れずに。 差し込み便器、尿器、ポータブルトイレなどに、 あらかじめニオイを防ぐ薬剤などを入れておく。また、時間をおくとニオイがとれなくなるので、こまめに洗浄する。 使用済みのおむつは小さく丸め、テープで止めてから処理する。フタ付きの容器を使用するなどしてニオイを防ぐ。 消臭剤、脱臭剤などを活用する。 ここがポイント 排泄介助を受ける人は、恥ずかしい気持ち、申し訳ない気持ちを持っていることが多いもの。おむつ交換のときは、腰のあたりをバスタオルで覆うなどの配慮を。そして、作業は手早くすることが基本です。 パンツタイプのおむつ交換 テープ式おむつの交換 入浴の介助 入浴は身体を清潔に保つだけではなく、血行を良くしリラックス効果もあるため、介護される人にとっては楽しみのひとつです。しかし、急激な温度変化が身体に負担をかけたり、浴室内での転倒は大きなケガにつながる恐れもあります。つねに安全を保つよう、十分に配慮しましょう。 安全な環境づくり 【入浴をする前に気をつけること】 ・体調の確認をする(体温、脈拍、血圧、顔色、 呼吸数などをチェック。心配な点がある 場合は、取りやめる判断も大切)。 ・食前・食後の1時間は避ける。 ・お湯の温度を確認する。適温は40度ぐらい。 心臓病、高血圧がある場合は40度以下に。 ・入浴は体力を消耗するので、入浴時間は10〜 15分程度に。 ・すべり止めマットを敷くなどして転倒しないように気をつける。 ここがポイント ・あらかじめ浴槽のフタを開けておく。 ・温水のシャワーを流すなどして、浴室を前もって温めておく。 ・バスボードには、あらかじめお湯をかけておくとヒヤッとしないですみます。 ・浴槽内は浮力があるので、姿勢が不安定になる恐れがあります。頭が後ろにいくとバランスが崩れるので、足の裏を浴槽の壁に当ててもらいます。また、両手で風呂のふちを持ち、前かがみの姿勢になってもらうと安定します。 浴槽に入るときの介助 浴槽の横にシャワーチェアを置いて座ってもらう。片マヒがある場合、マヒのない側から入ってもらうようにする バスボードに腰を移す。介助する人は腰を支え、腰を回転させながら、片足ずつ湯船の中に入れる。 バスボードに腰を移す。介助する人は腰を支え、腰を回転させながら、片足ずつ湯船の中に入れる。 ! 出るときは逆の動作で。マヒした側を先に出すことになるので、介助する人は気をつけること。 湯船に入れないときは、シャワー浴や足浴も シャワー浴 浴槽に入れない場合や浴槽に入ると体力を消耗する場合など。 シャワーイスに座ってもらう。お湯を張ったバケツを用意し、足を入れてもらう。 肩、腰にタオルをかける。 シャワーのお湯は、手足にかけてから胴体へ。石けんで洗う場合、手が届く範囲は本人に。届かない部分は介助する。 足浴 お風呂まで行けず入浴できない場合、ベッドサイドでもできる。 バケツ、または洗面器にお湯を張る。 防水マットかタオルを敷き、その上にお湯を張ったバケツ・洗面器を置く。 足を入れてもらう。 身体の清潔のための介助 洗髪や洗顔、着替えなど、身体を清潔に保つための介助は衛生面だけではなく、介護される人にとって、さっぱりとした気持ちで心地よく過ごすためにもとても大切なケアです。上手なコツを覚えて、できるだけこまめなケアを心がけましょう。 洗顔(ベッドから起きることができない場合) 目頭から目尻に向かって拭く。 額と頬を顔の内側から外側に向かって拭く。 鼻は上から下に向かって拭く。鼻のわきも内側から外側に向かって拭き取るように。 口のまわりを円を描くように拭く。 ※仕上げに熱めの蒸しタオルを当てるとさっぱりする。 ※しわとしわの間、耳、あごの下も忘れずに。 ※耳の中もときどき掃除を。綿棒に植物油をつけて掃除をすると、耳垢がやわらかくなり掃除しやすい。 【蒸しタオルのつくり方】 タオルを水でぬらして軽く絞ってからポリ袋に入れて電子レンジで加熱(加熱時間の目安はハンドタオル1本の場合500Wで30秒程度)。相手の身体に当てる前に、必ず自分の手に当てて熱さを確かめましょう。 洗髪(ドライシャンプー) ケープをかけたり、タオルなどで肩から下を覆う。 蒸しタオルを1本用意し、頭部を覆う。 1〜2分蒸した後、ドライシャンプーを髪につけ、頭皮をマッサージするように洗う。 蒸しタオルでシャンプーを拭き取る。これを何度か繰り返す(頭部を蒸しタオルで蒸すのは最初だけでOK)。 最後に、乾いたタオルでよく拭き取る。 ブラシで整髪する。 ベッドから移動できない場合の洗髪は、用意する道具も多く大変です。通常は、入浴サービスのときに行うのがよいでしょう。家族が洗髪を行う場合は、お湯で流す必要のないドライシャンプーが手軽でおすすめです。 全身を拭く〜清拭〜 室温は22〜24度ぐらいにしておく。拭き始める前に、熱い蒸しタオルで身体を包み、温める。タオルの温度は43度ぐらいが適温。 仰向けになってもらい、顔→両腕→首〜胸〜腹→両足の順に拭いていく。手は指先から心臓に向かって拭く。指の間、脇の下も忘れずに。お腹は強く押さえず、下腹部は「の」の字を書くように拭く。 横向きになってもらい、背中→腰→臀部を拭く。背中は円を描くように、下から上に向かって拭く。臀部は、外側から円を描くように内側に向かって拭いていく。背中、腰、臀部は褥瘡(床ずれ)ができやすいので、マッサージも兼ねて拭くように心がけるとよい。 もう一度、仰向けになってもらい、足のかかと→下腿部→太もも→陰部を拭く。膝の後ろは汚れやすいのでていねいに拭く。 最後に乾いたタオルで水分を拭き取る。 ※拭いている部分以外は寒くないよう、また羞恥心を感じさせないよう、タオルで覆っておくとよい。 口腔ケア 口の中は雑菌が繁殖しやすい環境なので、朝と食後には、必ずケアを行いましょう。むし歯や歯周病を防ぐことはもちろん、繁殖した菌を食べ物、あるいは唾液と一緒に誤嚥し、肺炎を発症するリスクを減らすという目的もあります。 入れ歯の場合 毎食後外して、ブラシでしっかり水洗いをする。研磨剤が入っている練り歯みがきは使用しない。外すときは下から、装着するときは上から先に入れる 寝たまま行う口腔ケア 片側にマヒがある場合、マヒしている側に食べ物のカスが残っていることがあるので、割り箸にガーゼを巻いたものなどを用意し拭き取るようにする。 イスに座って行う口腔ケア 介護される人が上向きになると、あごが上がり、誤嚥の恐れがある。介護される人があごを引く姿勢になるように、介助する人は立つ位置を調節する。 介護される人の歯を磨くときは角度や方向などがむずかしく、少し時間がかかります。そんなときは短時間で上手に磨ける電動歯ブラシがおすすめです。また、使用する介護者にとっても楽な姿勢でブラッシングができ、腰痛などの予防にもなります。 介助される人が寝た状態でのシーツ交換 介助する人が立つ側と反対側に転落防止柵を立てる。介助される人には、介助する人と反対側のベッドの端に移動してもらう ベッドの手前側から、古いシーツをはずし、扇子折りにして介助される人の下に入れていく。 シーツをはがしたマットレスを掃除したら、その上に新しいシーツを広げ、マットレスと角を合わせてマットレスを包み込む。反対側の端は古いシーツの下に入れ込む。 手前の転落防止柵を上げてから、介助される人に新しいシーツの上に移動してもらう。古いシーツをはずし、マットレスを掃除してから新しいシーツを広げ、同じように角を合わせてマットレスを包み込む。 ここがポイント 新しいシーツが敷けたら各コーナー部分を持ち、対角線の方向に引っ張るようにするとしわが伸びます(シーツは角にゴムが入ったものを利用すると便利です)。 マットレスの掃除は、ガムテープを使うとほこりを立てずにゴミを取ることができます。 介助する人が腰を痛めないように、ベッドの高さを調整してから作業するとよいでしょう。 着替え ズボンをはかせる(寝たきりの場合) 仰向けになってもらい、扇子折りにしておいたズボンを足に通す。片足ずつ、かかとを支え、ひざまでズボンを上げる。 片手でズボンのすそをくるぶしの位置で押さえ、もう片方の手でズボンを足のつけ根まで引き上げる。反対側も同じように。 ひざを立て、ハの字になるように両足を開いてもらう。お尻の下に手を入れ、ズボンの後ろの中心線に沿って扇子折りにする。 介助される人に足でベッドを踏み込んでもらい、腰を浮かせる。その間にズボンをお尻の側から引き上げる。踏み込めない場合はひざをくっつけ、足のつま先の方に押すと腰を浮かせることができる。 座れる人の場合は、49ページで紹介した「パンツタイプのおむつ ! 交換」と同じ要領でズボンをはかせる。 服を着替えることは生活にメリハリをつけるためにとても大切です。寝ている間にも人はかなり汗をかくもの。着替えを行うことでベッド周りも清潔に保つことができます。なお、片マヒがある場合は、マヒのある側から着て、マヒのない側から脱ぐのが原則。マヒのない側がズボンやシャツなどに通っていない方が、動きが制限されにくいためです。 前あきのシャツを着る(寝たきりの場合) 袖を扇子折りにし、介助する人の腕に通してから介助される人と握手をするようにして袖を通し、肩まで上げる。 介助する人に背中を向ける姿勢で横になってもらい、シャツの中心線と背骨を合わせる。反対の身ごろを体の下に入れる。 介助する人の側に顔を向けてもらい、体の下に押し込んだ部分を引き出す。❶と同じように、袖に手を通す。 腕が通ったら仰向けになってもらい、ボタンを留める。両脇の下の部分を足の方向に斜めに引っ張ると、背中側に寄ったしわが伸びる。 【ここがポイント】 着替えは、マヒがあったり認知症だったりする場合、動作がゆっくりになりがちです。つい手伝いたくなることもありますが、時間がかかっても、本人ができたり、やる気があれば、できるだけ本人にやってもらうことが基本です。ボタンを留めたりする動作はリハビリにもなるので、必要以上に手伝わないことも大切です。 老老介護・認認介護 日本では、配偶者の介護をする高齢者夫婦や、年老いた子がより高齢の親を介護するというような高齢者が高齢者の介護を行うケースが増えています。65歳以上の要介護者を 65歳以上の人が介護している場合を、いわゆる「老老介護」といいます。 厚生労働省の「令和元年国民生活基礎調査」によれば、老老介護は 59.7%と介護全体の 5割を超えています。老老介護の増加は介護者と要介護者がともに高齢化しているためです。 主な介護者は配偶者で、全体の約4分の1を占めています。介護の担い手が高齢の場合は、経済的、肉体的な負担はもちろん、精神的にも大きなストレスを抱えてしまうことが多く、「生活の質」の維持が心配されます。 また、さまざまな事例がある老老介護の中には、認知症の高齢者を介護する高齢者自身が認知症になり、適切な介護ができなくなる「認認介護」もあります。この場合は、第三者による早急なケアが必要です。いずれにせよ、老老介護を続けるにはひとりで抱え込まないことが大切です。 介護者自身の健康を守るためにも、周囲の人に頼ったり、身近な公的機関を活用することが必要です。最近では、介護者や要介護者を支える在宅サービスの整備も進んできています。介護で困ったときは、地域包括支援センターに相談しましょう。 常駐しているケアマネジャーや保健師などの専門家から適切なアドバイスや支援策を受けることができます。必要に応じて、レンタル用品やデイサービスなどの介護サービスの情報提供もあります。相談する際は、介護の悩みや気づいたことなどを書いたメモを持参することが大切。専門家の視点により、問題を解決する方法が見つかる可能性が高くなります。 出典)一般社団法人日本保健情報コンソシウム発行 『介護をする家族のための介護と保健ガイドブック』より引用 お悩みや疑問は解決できましたか? 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