制度の概要 介護保険制度について 高齢による身体機能の衰えや、病気やケガなどによって介護が必要となったときには、介護サービスを提供する公的介護保険制度を利用することができます。新たな社会保険制度として平成12 年4月にスタートしたもので、介護が必要な人とその家族をできる限り社会全体で支えるための公的なサービスです。 介護保険は自治体が保険者となって制度を運営しています。40歳以上の人が被保険者となって保険料を負担し、介護が必要と認定されたときに介護サービスを利用する仕組みです。 介護保険では、利用者がサービスの種類や事業者を選ぶことができます。利用料は利用限度額の範囲内であれば、1割(一定以上の所得者の場合は2割あるいは3割*)の利用者負担で介護サービスを受けることができます。 ※詳細は本記事内「2021~2023年度の主な改正内容」を参照ください。 必要な介護サービスを受けながら、住み慣れた地域で安心してその人らしい生活を実現していくために、上手に利用していきましょう。現在、介護サービスの基盤強化のために、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム*」の構築に向けた取り組みが進められています。 ※詳細は「家族を介護する必要が生じたなら…<介護と保健ガイドブック(1)>『地域包括ケアシステム』を参照ください。 介護サービスを利用できる人は? 公的介護保険の介護サービスは、介護保険に加入し保険料を納めている被保険者の内、下図の条件を満たし要介護認定を受けた人が利用できます。なお、実際に介護サービスを利用する場合は、介護サービス事業者との契約が必要になります。また、介護保険料額は、居住地域や被保険者の所得によって各自異なります。 申請方法から要介護認定までの流れ 介護サービスを受けるには 介護サービスを受けるには、要介護認定の申請が必要です。要介護認定とは、介護を必要としている人が「どの程度の要介護状態、要支援状態にあるか」を判断するものです。保険者である市区町村が調査を行い、要介護度を判定します。家族を介護する必要を感じたら、申請の手続きをしましょう。 介護保険の申請方法 相談できる窓口 介護される人が居住の市区町村役場の窓口(介護保険課など)で申請を行います。申請時は、申請書、本人の介護保険証(40〜64歳の特定疾病の人は健康保険証)と個人番号(マイナンバー)の確認ができるもの、主治医意見書を依頼するための主治医の情報、印鑑などが必要です(※詳細は自治体に要確認)。 主治医の情報は、申請書に主治医の名前・医療機関名・所在地などを記入します。主治医がいない場合は役所に相談し、高齢者医療に理解がある医師を紹介してもらいましょう。申請は家族が代理で申請することもできます。「地域包括支援センター」で申請の受付や代行も可能なので、所在 を確認して相談しましょう。 訪問調査 申請後、本人のもとへ市区町村の「認定調査員」(指定居宅介護支援事業者などに委託していることが多い)が訪れ、心身の状況などについて聞き取り調査(認定調査)を行い、その結果および主治医意見書に基づくコンピュータ判定(一次判定)を行います。 介護認定審査会 一次判定データは、市区町村に設けられた介護認定審査会にかけられ、保健、医療、福祉の専門家などが一次判定、訪問調査の結果と主治医意見書を基に、どの程度の介護が必要かを全国一律の基準により審査します。 要介護・用支援の認定 申請日から30日以内に「認定通知書」と「被保険者証」が届きます。要介護度区分に合わせて、ケアマネジャーが介護サービスの利用計画(ケアプラン)を作成していきます。 《主治医意見書について》 主治医意見書は、医学的な見地から認知症の有無や在宅介護で必要な配慮や介護の中身について、主治医が記入する書類です。主治医には、要介護者の普段の様子を把握している内科、老年内科、神経内科、整形外科などのかかりつけ医が適任です。区分の判定時に大きな影響を及ぼしますので、普段から主治医とのコミュニケーションを図っておきましょう。 要介護認定(要介護度の判定) 要介護認定について 要介護認定は、「非該当」と介護保険の対象となる「要支援1・2」「要介護1〜5」に区分されます。区分によって、受けられるサービスや利用限度額が異なります。要介護度認定は、どのくらい介護を必要としているかを判断するもので、本人の病気の重さと要介護度の重さが必ずしも一致しない場合があります。要介護認定の判定に不服がある場合は、再認定を要求することができます。 認定ごとの状態とサービス 非該当(自立) 歩行や起き上がりなどの日常生活上の基本的動作を自分で行うことが可能。薬の内服、電話の利用などの手段的日常生活動作を行う能力もある状態。社会的支援がなくとも生活ができる状態。介護保険を利用することはできないが、65歳以上であれば、市区町村で開催している一般介護予防事業に参加することができます。また、地域包括支援センターで基本チェックリストを用いた審査を受けることによって事業対象者と判定された場合には、介護予防・生活支援サービス事業を利用することができます。 要支援1・2 身体上または精神上の軽度の障害があるために、6か月継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態。訪問看護や福祉用具のレンタル・購入などのサービスが利用できる。 要介護1~5 身体上または精神上の障害があるために、6か月継続して、日常生活における基本的な動作の全部または一部について常時介護を要すると見込まれる状態。在宅あるいは施設入所での介護サービスを利用することができる。 図:要介護状態の区分(心身の状態の一例) ケアプランを作成する ケアプランを作成 要介護認定の通知を受け取ったら、ケアプラン(サービス利用計画書)を作成します。ケアプランは「これからどのような生活を送りたいか」という目標を設定し、その目標達成のためにどんなサービスをどれくらい使うかを計画するものです。ケアプランは、民間業者である「居宅介護支援事務所」に所属する介護支援専門員であるケアマネジャーに依頼して作成してもらうことができます。 介護サービスを利用するには、このケアプランの作成が必要になります。ケアマネジャーは、毎月1回以上に自宅を訪問し、利用者の希望を聞き、症状の変化に合わせてケアプランを作成、変更してくれます。家族は、本人の普段の様子や家族の要望などを伝えましょう。なお、ケアプラン作成には利用者負担はありません。 セルフケアプランという方法 ケアプランは、ケアマネジャーに依頼して作成してもらうケースがほとんどですが、自分でも作成することができます。複雑なサービスをコーディネートする必要がない場合などは、利用する本人が各種の介護サービスを自ら選択して調整したケアプラン(いわゆるセルフケアプラン)を作成することが可能です。セルフケアプランはあらかじめ市区町村に届け出て、認められた場合に介護保険の給付が受けられます。 図:ケアプラン作成の流れ 介護サービスの種類 サービスの種類(在宅・施設・地域密着型) 介護保険で利用できる介護サービスは、介護を受ける場所によって、大きく3つのスタイルに分けることができます。ひとつは自宅で生活しながら利用できる在宅サービス、もうひとつは施設に入所して受ける施設サービスです。さらに、在宅と施設の両方で受けられる地域密着型サービスもあります。 在宅で利用できるサービス 住み慣れた自分の家で受けられる在宅サービスには、「訪問」「通所」「宿泊」の3つの柱があり、これに福祉用具貸与など、その他のサービスを組み合わせます。サービスを利用することで介護する側とされる側、両方の負担が軽減されます。 訪問系サービス ・訪問介護 訪問介護事業所のヘルパーが自宅を訪問。身体介護や生活援助など日常生活のサポートを受ける ・訪問リハビリテーション 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訪問。自宅で機能回復訓練を受ける ・訪問入浴介護 専用浴槽や巡回入浴車で、入浴時のバイタルチェックも含め自宅での入浴をサポート ・居宅療養管理指導 医師や歯科医師、薬剤師などの専門家が自宅を訪問。指導やアドバイスを受ける ・訪問看護 看護師や保健師などの専門家が自宅を訪問。かかりつけ医の指示に合わせた医学的な世話や処置を受ける 通所系サービス ・通所リハビリテーション ・通所介護(デイサービス) 日帰りで施設に通い、食事や入浴など、日常生活上の介護や機能訓練などを受ける 短期滞在系サービス ・短期入所生活介護(ショートステイ) 短期的に施設へ入所し、日常生活の介護や機能訓練などの介護を受ける ・短期入所療養介護(医療型ショートステイ) 短期的に施設へ入所し、必要な医療を受けつつ日常生活の介護や機能訓練などを受ける 福祉用具をレンタル・購入するサービス 住宅の一部を改修したり、必要な福祉用具をレンタル・購入することで在宅での介護環境を整える ➡介護用品の支給や貸与(詳細はこちら) ➡住宅改修費の支給(詳細はこちら) 施設・居住系サービス ・特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、ケアハウスなど) 介護が必要になった場合に、指定を受けた有料老人ホームなどの施設(自宅扱い)に入居したまま介護サービスを受ける 施設を利用できるサービス 介護保険制度で利用できる「施設サービス」には、さまざまな種類や入居の条件があります。専門家による介護を受けられることや、緊急時にも安心できる対応など、多様なニーズに応えています。 介護老人保健施設 老人保健施設、いわゆる「老健」。病状が安定期にあり、入院治療の必要はないが介護や医療を必要とする人を対象に、家庭復帰に向け介護、医療ケア、リハビリテーションを行う施設 介護老人福祉施設 特別養護老人ホーム、いわゆる「特養」。常に介護が必要で在宅介護が困難と認められた人のための生活施設。入浴、排せつ、食事などの介護、そのほかの日常生活上の世話、機能訓練、健康管理および療養上の世話を行う施設 介護療養型医療施設 病院または診療所であり、要介護者のために必要な医療などを提供する長期療養施設。療養病床などに入院する人に、療養上の管理、看護、医学的管理下での介護やケア、リハビリテーションなどの機能訓練、そのほか必要な医療を行うことを目的とする施設 介護医療院 長期療養が必要な人を対象とした施設で、2018年に創設。長期療養のための日常的な医学管理や看取り、ターミナルケアなどの医療機能と、日常生活上の世話(介護)を提供する生活施設としての機能を兼ね備えた施設。プライバシーに配慮した環境整備などが特徴 特定施設 該当する施設は、有料老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)、養護老人ホーム、有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅。入居者を対象に特定施設入居者生活介護(日常生活上の世話や機能訓練、療養上の世話)が受けられる。特定施設入居者生活介護の指定を受ける特定施設を「介護付きホーム」という 地域密着型サービス 認知症高齢者や一人暮らしの高齢者が要介護状態になっても、できる限り住み慣れた地域で生活が継続できるように支援を行うサービスです。在宅と施設利用の両方のサービスがあり、地域密着で介護を支えます。居住している市区町村が提供しているサービスを利用することができます。 在宅サービス ・定期巡回、随時対応型訪問介護・看護 日中・夜間を通じて1日に複数回の定期訪問と随時対応を受けられる ・小規模多機能型居宅介護 日帰りの施設へのデイサービス、ショートステイ、訪問の3つのサービスを組み合わせて利用。自宅での生活の支援を受けられる ・看護小規模多機能型居宅介護 訪問看護と小規模多機能型居宅介護を組み合わせた、介護と看護を一体的に利用できるサービス。施設への「通い」を中心に、短期間の宿泊や訪問介護、訪問看護を利用者のニーズに応じて組み合わせて利用することができる。かかりつけ医との密接な連携のもと、医療行為も含めた多様なサービスが24時間365日受けられる ・夜間対応型訪問介護 夜間に定期的に自宅を訪問。おむつの交換やトイレ介助の支援を受けられる ・認知症対応型通所介護 日帰りで施設に通い、認知症に対応した介護や支援を受け、機能訓練を行う 施設サービス ・認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 認知症の高齢者が9人以下の少人数で入居し、入居者同士の交流など家庭的な雰囲気の中で共同生活をしながら、入浴や食事などの介護や支援、機能訓練などを受けられる 生活環境を整えるサービス 福祉用具貸与(レンタル) 加齢や疾病などで身体機能が低下した際、歩行器や車椅子などが必要になります。介護保険では、ケアプランで必要とされている福祉用具に限り1割(一定以上所得者の場合は2〜3割)負担でレンタルすることができます。担当のケアマネジャーに相談して、福祉用具の利用を検討しましょう。レンタル料金は、その他の介護サービス提供費用と合算して計算されます。 レンタルできるもの ・手すり ・歩行器 ・車いす ・特殊寝台(介助用ベッド) ・床ずれ防止用具 ・認知症老人徘徊感知機器 ・自動排せつ処理装置 ・スロープ ・歩行補助つえ ・車いす付属品 ・特殊寝台付属品 ・体位変換機 ・移動用リフト 特定福祉用具の購入 直接肌に触れるシャワーチェアなど、レンタルに不向きなものは購入する必要があります。「特定福祉用具」に定められているものであれば、1割(一定以上所得者の場合は2〜3割)負担で購入できます。費用の限度額は年10万円(毎年4月1日から翌年3月31日まで)。10万円を超えた額については全額自己負担となります。また、同じ種目の用具の再購入は、用途や機能が異なる場合や破損した場合には可能です。 購入できるもの ・腰掛け便座 ・自動排泄処理装置の交換可能部品 ・入浴補助用具 ・簡易浴槽 ・移動用リフトの釣り具の部分 住宅改修 在宅で介護をする際に「バリアフリーにしたい」「段差を解消したい」「手すりをつけたい」という要望が出てきたら、要介護者がより安全・快適に生活できるよう住宅改修を検討しましょう。保険給付の対象となる住宅改修費の支給があり、利用が可能です。費用の限度額は20万円で、自己負担は1割(一定以上所得者の場合は2〜3割)。 費用を支払った後に、市区町村から給付費分が支給される、いわゆる「償還払い」が一般的です。要介護度が3段階以上重くなった場合や引っ越しした場合は、再度申請が可能です。 2021~2023年度の主な改正内容 今回の見直しの背景 介護保険制度は円滑に保険給付を実施していくため、3年ごとに見直しを行い、介護保険事業計画を策定、運営しています。新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中で、2021年度からの制度改正が施行されました。 今回の見直しでは、日本の人口構造の急速な変化を見据えた対応がとられています。現在は75歳以上の高齢者の急増が目立ちますが、2025年以降には局面が変化し、現役世代の急減が予想されます。それは介護保険事業の支え手が減少していくことを意味します。高齢人口がピークを迎える2040年には、介護サービスの需要の増加が予想されます。 また、各地域の高齢化の状況は異なるため、利用者数の増減など個々の特性に 沿った対応も必要です。こうした状況に対応できるよう、3年に1度の見直しが行われています。 今期の改正のポイント 介護サービスを利用するうえで関わりの深い改正項目について、見ていきましょう。高齢化が進むなかで、負担の公平性と制度の持続可能性を高めるために、それぞれの状況に応じた負担を求める見直しが行われました。 介護保険施設における負担限度額の見直し 令和3年8月から、介護保険施設(介護老人保健施設、介護老人福祉施設、介護療養型医療施設、介護医療院)や短期入所施設(ショートステイ)を利用する際の食費・居住費の助成制度が変更になりました。食費・居住費については自己負担が原則ですが、低所得の人への助成(補足給付)を行い、食費・居住費の負担が軽減されています。今回の改正で、助成の認定要件および食費の負担限度額が変更になりました。 『認定要件の変更』では、単身・夫婦それぞれの預貯金額が変更になりました。今回の変更により補足給付の対象外となる場合も、預貯金額が減少して認定要件を満たしたときは申請することで負担軽減の対象となります。負債(借入金・住宅ローンなど)は、預貯金額から差し引いて計算します。預貯金等に含まれるものがある場合は、申請書に預貯金や負債額を記載して、必要な書類を添付します。その後、保険者が必要に応じて金融機関などに照会を行います。預貯金等に含まれるものは以下の①〜⑤になります。 ①預貯金(普通・定期)は、通帳などの写しで確認(インターネットバンクであれば口座残高ページの写し) ②有価証券(株式・国債・地方債・社債など)は、証券会社や銀行口座残高の写しで確認(ウェブサイトの写しも可) ③金・銀(積立購入を含む)など購入先の口座残高によって時価評価額が把握できる貴金属の確認は、購入先の銀行などの口座残高の写しで確認(ウェブサイトの写しも可) ④投資信託は、銀行、信託銀行、証券会社などの口座残高の写しで確認(ウェブサイトの写しも可) ⑤現金は自己申告。なお、預貯金等に含まれないものは、生命保険、自動車、腕時計、宝石といった時価評価額の把握が難しい貴金属、絵画、骨董品、家財などになります。 また、不正に受給した場合には、それまでに受けた給付額に加え、最大2倍の加算金(給付額と併せて最大3倍の額)の納付を求められる場合があります。『食費の負担限度額の変更』では、施設入所者、ショートステイに対する助成が見直されました。 年金収入など一定額以上の収入や預貯金がある人は、食費の負担額が変更になりました。平均的な食事の費用額(基準費用額)は、1日1,392円から1,445円に変わりました。居住費の負担限度額は変更ありません。生活保護受給者や老齢福祉年金受給者等(第1段階)の負担限度額は、食費・居住費ともに変更ありません。 高額介護サービス費の負担限度額 介護サービスを利用した際は、自己負担割合に応じた利用料を負担しています。1か月に支払った利用料の合計が負担限度額を超えた場合は、高額介護サービス費として差額分が払い戻されます。 負担限度額は一般的な所得の人は月額44,400円です。令和3年8月から、医療保険の高額療養費制度の負担上限額に合わせて、負担限度額が見直され一部変更になりました。対象になるのは一定年収以上の高所得者で、介護サービスの利用者または同一世帯に課税所得380万円(年収約770万円)以上の65歳以上の人がいる場合です。 それ以外の市区町村民税非課税世帯の場合は、負担上限額に変更はありません。また、医療費や介護サービス費ともに高額で、高額介護合算療養費制度(年間の医療費・介護サービス費が負担限度額を超えた場合に払い戻しを行う制度)による払い戻しを受けている人の場合は、収入や介護サービス費などに変更がなければ、実質的な負担額は変わりません。 知っておきたい今期の見直し 介護報酬は0.7%引き上げ 法改正とともに、3年ごとに介護報酬改定が行われています。2021年4月に施行された改定では2期続く引き上げとなり、全体で0.7%のプラス改定となりました。そのうちの0.05%は、新型コロナウイルス感染症に対応するための経費として、2021年9月末までの半年間、介護サービス事業者を支援するものでした。 介護報酬とは、介護サービス事業者が利用者に、介護保険が適用されるサービスを提供した際に支払われる費用です。介護事業者は利用者からサービス費用の1割(原則)を受け取り、自治体に残りの9割分を請求、介護報酬が支払われます。介護報酬は利用者の状況やサービス提供体制に応じて、サービスごとに設定されています。介護報酬の引き上げによって利用者の負担額が増えるサービスもあり影響があります。 介護職員の賃上げがスタート 介護人材の確保は、介護保険制度を持続していくうえで非常に重要です。介護職員の離職防止・定着促進を図ることは喫緊の課題です。そのため介護の現場では、介護職員の処遇改善や職場環境の改善に取り組んでいます。 処遇改善については「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(2021年11月19日閣議決定)に基づいて、2022年2月から9月までの間「介護職員処遇改善支援補助金」により、収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための措置が実施されます。10月分以降については、臨時の報酬改定を行い、収入を引き上げるための措置を講じる方向で調整が行われています。このほか、介護現場を革新するために、テクノロジーの活用や人員基準・運営基準を緩和することで業務を効率化し、負担の軽減を目指しています。 遠距離介護 離れて暮らす親の介護が必要になったときは、電話やビデオ通話などを使ってコミュニケーションを密にし、親の健康状態などに気を配ることが大切です。親の要介護度が進んだときには、食事介助やトイレ介助などの身体介護を誰がどのように担うのかといった問題が生じてきます。介護のために子どもが親元に戻るか親を呼び寄せるか、そんな悩みを抱える人も出てきます。親の介護に直面する世代は、40〜50代の働き盛りが中心です。 現在、介護を理由とする離職者が年間約10万人を超えています。国は、一億総活躍社会を実現するため、必要な介護サービスの確保や働く環境の改善、家族への支援を行い、介護離職ゼロを目指しています。育児・介護休業法で定められているのが「仕事と介護の両立のための制度」です。この制度を利用することによって、介護を行う期間だけでなく、仕事と介護が両立できる体制を整えるための期間にも介護休業を取ることが可能です。 介護保険サービスを受けるための準備期間への活用で、家族の介護をしながら仕事を続ける体制づくりが行えます。制度の内容には、通算して93日まで休業でき、休業前の賃金の67%が支給される「介護休業制度」、介護休業や年次有給休暇とは別に、時間単位で休暇の取得ができる「介護休暇制度」、短時間勤務や時差出勤が可能になる「介護のための短時間勤務等の制度」、残業を免除する「介護のための所定外労働の制限」があります。※ 育児・介護休業法は2021年に改正され、2022年4月から施行されます。雇用形態にかかわらず育児・介護休業を容易に取得できるよう、有期雇用労働者について「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件が廃止されます。なお、労使協定を締結した場合は、雇用期間が1年未満の人は対象から除外されます。 ※育児・介護休業法に関する相談窓口:都道府県労働局雇用環境・均等部(室) 出典)一般社団法人日本保健情報コンソシウム発行 『介護をする家族のための介護と保健ガイドブック』より引用 お悩みや疑問は解決できましたか? 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介護保険の利用を考える そろそろ介護が必要? 両親が高齢になってきた、離れて住む高齢の親がひとりで暮らしている、などという人は、 介護のことが身近な問題として気になり始めるのではないでしょうか。 高齢による身体機能の衰えや、認知症などの病気やケガなどにより介護が必要となったときには、介護サービスを提供する公的な介護保険制度を利用することができます。 家族や親族の高齢化により気になることが増えてきたら、介護保険の認定申請についてそろそろ考えたほうがよい時期かもしれません。 ☑「要介護」はここをチェック! □ 高齢者のみの世帯である □ 外出したがらない □ 歩行が困難になってきた □ よくつまずくようになった □ 食事の量が減っている □ 視力や聴力が衰えてきた □ 起き上がりや立ち上がりが難しい □ 入浴や排せつ、食事での介助が必要 □ 衣服の着脱で手伝いが必要 □ 物忘れやひきこもりなどの行動がある 介護に関して利用できる制度、サービス 介護をする側の心構え 自立支援を目指して 病気や障害、高齢のために家族を介護する必要が生じたなら、日常生活における起き上がり、移動、食事、排泄や入浴など、身体的な支援だけではなく、精神的な支援も必要です。介護をするうえで、どんな方針を立てて取り組めばいいのかをよく考えて実行していきましょう。 介護される人の多くは、住み慣れた地域や住まいで暮らし続けたい、可能な限り自宅で暮らしたいと願っています。自分で立てたスケジュールに沿って日常生活を営み、起床や就寝時間も自分の都合や体調に合わせ、食事も自分の自由にできる暮らしがしたいのです。 つまり、生活全般にわたってできるだけ長く「その人らしく暮らしていくことができる」ように支援の仕方を考えていくことが大切です。介護が必要な人の尊厳を保ちながら生活の質を高め、できるだけ自立した生活ができるように、押しつけではなく寄り添うような支援をすることが介護の基本になります。 介護をする際は、精神的な満足度や価値観の尊重、社会参加など、その人がその人らしくあるために望むことが可能な限りできているかどうかを、ときどきチェックしてみましょう。また、介護をする人がなるべく無理をせず、負担がかかりすぎないようにすることも大切です。 すべての重荷をひとりで背負い込まず、周囲に介護を頼める人がいれば遠慮をすることなくお願いし、利用できるサービスがあれば積極的に活用していきましょう。大切なことは、介護についての手続きや知識、役立つ情報などをよく調べ、自身の健康や生活面を犠牲にせず済むように工夫することです。 コミュニケーション、団欒を大切に 介護が必要になると特別な献立が必要になったり、食事に時間がかかることなどから、介護される人はひとりで食事を済ますことが多くなりがちです。ひとりきりの食事は味気なく、食欲の減退につながります。 食事の時間は食べることを楽しむ時間であるばかりでなく、家族と一緒の時間を過ごすことができる大切な時間です。本人が家族の一員であることが実感できるように、食事はできるだけ一緒にとるようにしましょう。 コミュニケーションを心がけることで、介護される人であっても楽しみや生きがいをもって生活することができます。ときにはお茶を飲みながら、昔の思い出話や相手が好きな話題についておしゃべりしたり…。そうした団らんの時間を持つことが、とても大切です。 別居していたり、施設へ入居している場合には、日々の忙しさに紛れてコミュニケーションがおろそかになりがちです。定期的に訪問することが難しい場合は、電話をかけて会話をしたり、介護をしてくれている人に積極的に連絡を取りましょう。 1日に5分でも電話で家族の声を聞くだけで「自分のことを気にかけてくれている」と、介護される人も喜んでくれるはずです。介護が必要な人は、思うように動けないことで、不安や寂しさを感じながら日々を過ごしています。そんな中で「自分を支えてくれる家族の存在」があれば、心強く感じて安心することができるのではないでしょうか。 介護者の役割分担 リーダーの下で介護を 多くの人が望んでいるのが、介護が必要になっても、住み慣れた自宅や地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けたいということです。その望みを実現するには、家族などの協力が欠かせません。 兄弟や配偶者、子ども、友人などの協力者がチームを組むことや、介護サービスを上手に利用していくことが求められます。 介護が必要な人の最も身近にいる人が介護のリーダーになることで、スムーズな介護を行うことができます。ケアマネジャーや介護事業所への連絡や家族の話し合い、介護サービスの依頼や管理、介護に必要なお金の出し入れなどを、リーダーになる人が責任を持って行いましょう。 介護分担はより具体的に決める 少子化や核家族化、晩婚化、共働きなどにより、家族を取り巻く状況はさまざま。また、子どもの教育費がかかる、住宅ローンを組んでいるなど、介護を担う側もいろいろな事情を抱えています。介護費用のことや介護内容、今後のことなどについて、よく話し合っておくことが大切です。 それぞれの役割分担や協力体制について、具体的に決めておきましょう。遠くに住んでいて介護の手助けができない場合には、金銭的負担をしたり、時間がとれる週末だけ介護を受け持ったり、毎日の電話による安否確認などを担当しましょう。自分にできること、できないことを率直に話し合って分担していきます。不公平感のない分担を目指すことが大切です。 協力者を考える かかりつけ医、地域の連携病院 普段から風邪や腹痛などで診てもらっている身近なかかりつけ医は、気軽に相談できる存在です。既往歴や現在の疾患、生活実態などを把握したうえで、健康管理のアドバイスもしてくれます。かかりつけ医の多くは入院設備を持たないクリニック(医院)で、検査などが必要になれば、入院設備を持つ一般病院や高度な治療を行う専門の病院の紹介も可能です。緊急時には往診もしてくれる体制があると、より安心です。 公的支援サービス どのようなサービスが利用できるのか、居住地の市区町村役場に積極的に問い合わせてみましょう。介護保険制度によるサービスを受けるには、要介護認定の申請を行います。そのほか、介護保険制度以外の各自治体独自の福祉サービスもあります。 民間支援サービス 有償ボランティア団体が提供するサービスなど、さまざまな民間支援サービスがあります。家事代行や配食などのサービスを活用することで、介護の負担を減らすことができます。 ご近所や地域の力も借りて 介護をする人もされる人も、親しいご近所の人の存在は心強いものです。気持ちのよいおつきあいが継続できるよう、隣り近所の人たちに声をかけ、普段からコミュニケーションを心がけるようにしましょう。また、地域によっては、ゴミ出しや見守りなど、ちょっとしたサービスを行っていることがあります。老人クラブや自治会、ボランティア、NPOなどの情報を集め、自治会や民生委員など相談しやすいところへ積極的に声をかけ、利用できるサービスを探しましょう。 介護の環境づくり 将来の介護を担う地域包括ケアシステム 高齢者など介護や医療が必要な人へ、切れ目のない介護・医療サービスを提供するための「地域包括ケアシステム」。その内容を充実させるための取り組みが各自治体で進められています。 地域包括ケアシステムにより、住まい・医療・介護・生活支援・介護予防が一体的に提供され、要介護となっても住み慣れた地域で暮らしを続けることが可能になっていきます。今後、増加が見込まれる認知症高齢者の生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築は重要です。このシステムは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(中学校区)を単位として構築することとされています。 地域包括ケアシステムの取り組み 各自治体によりその進み度合いは異なりますが、主に次の❶〜❺のサービス構築が推進されています。 受けられるサービス ❶医療との連携強化 ・24時間対応の在宅医療、訪問看護やリハビリテーションの充実強化 ・介護職員による痰(たん)の吸引などの医療行為の実施 ❷介護サービスの充実強化 ・特養などの介護拠点の緊急整備 ・24時間対応の定期巡回・随時対応サービスの創設等在宅サービスの強化 ❸予防の推進 ・要介護状態にならないための予防の取り組み ・自立支援型の介護の推進 ❹見守り、配食、買い物等多様な生活支援サービスの確保や権利擁護等 ・一人暮らしや高齢夫婦のみの世帯の増加、認知症の増加を踏まえ、さまざまな生活支援(見守り、配食などの生活支援や財産管理などの権利擁護)サービスを推進 ❺高齢期になっても住み続けることのできる高齢者住まいの整備(国土交通省・厚生労働省連携) ・一定の基準を満たした有料老人ホームと高齢者専用賃貸住宅を、サービス付高齢者住宅として高齢者住まい法に位置づけ 一人暮らしの人への介護 住み慣れた地域で「要介護2」までなら、必要なときに手を貸してもらえば一人暮らしを続けることはそれほどむずかしくはありません。日中なら、ホームヘルプサービスやデイサービスを利用していれば人の出入りもあります。 しかし、さまざまな介護サービスの利用が必要になると、「家の中で転んでケガをして起き上がれなかったら、誰にも気づいてもらえないのではないか」といった不安が大きくなってきます。 要介護度が重度化して「要介護3」になると、「一人暮らしの限界」となります。個人差はありますが、一般的には「ひとりでトイレに行けなくなる」と、一人暮らしは厳しくなると考えられます。しかし、施設ではなく、可能な限り住み慣れた環境の中で今までと変わらない生活を続けたいという願いを持つ人は多く、昨今、居住型サービスへの関心が高まっています。 そして、そのような背景から在宅に「365日・24時間の安心」を届けることのできる新しい在宅介護サービスの仕組みが注目されています。その内容は、日中の通いや一時的な宿泊、夜間や緊急時の訪問サービス、介護スタッフが居住するといった「通う」「泊まる」「訪問を受ける」「住む」などの複数のサービスが、介護が必要な人や家族の要望に応じて提供されるというものです。 要介護者の心身の状態を継続的に把握しているスタッフによって継続的なサービスの提供が行われることにより、本人の「在宅で過ごしたい」という希望をかなえることが可能になります。このような切れ目のないサービスを利用者の生活圏域で行うには、一体的・複合的に提供できる小規模・多機能サービス拠点が整備されていくことが必要です。 出典)一般社団法人日本保健情報コンソシウム発行 『介護をする家族のための介護と保健ガイドブック』より引用
定年退職や子どもの自立などによって、現役世代とはライフスタイルが大きく変化する高齢者世帯は多いのではないでしょうか。ライフスタイルが変化すると、より快適な家を求めて住み替えを検討するかもしれません。 そこでこの記事では、現在持ち家所有者である60歳以上の男女104名を対象に、住み替えに関するアンケートを実施した調査結果をご紹介します。 住み替えたい理由はリフォームでは対応できないから Q1. 住み替えたい理由を教えてください(複数回答可) 「建物の老朽化」と「間取りへの不満(広すぎる、狭すぎる)」がともに38%と、簡易なリフォームでは解決しにくい建物への不満であることがわかりました。これらの不満を解決するには建て替えや間取り変更を伴うリフォームが必要であるため、そういった手間や費用をかけるのであれば、自宅を住み替える選択をするのかもしれません。 住み替えで最も重視する点は利便性、最大の不安は資金面 Q2. 住み替えにあたって不安に感じることはありますか?(複数回答可) やはり「資金面」に不安を抱える方が最も多く、38%が不安を感じていました。次点は「荷物の整理・処分」で35%、「生活環境の変化」が30%と続いています。 Q3.住み替えで最も重要視するのはどこですか? 最も重視するのは「買い物、交通、病院などの利便性」の41%で他の選択肢を大きく引き離した結果となりました。シニア世代が普段の生活のしやすさを重視していることが分かります。一方で、住み替え先を選ぶ基準として、「家族との同居・近居」や「物件の資産価値」、「バリアフリー整備の充実」などの優先順位は低いようです。 約半数が住み替えの予定が立っていない、最大の理由は資金面 Q4. 実際に住み替える予定はいつですか? 「住み替え意向がある」にもかかわらず、「実際に住み替える予定は立っていない」人が45%となりました。「10年以内」というやや住み替えへの意識が低い方も含めれば、半数以上の人が住み替えへの目途が立っていないようです。 Q5. 住み替える予定が立っていないのはなぜですか? 住み替える予定が立っていない理由を見てみると、「希望に合う住み替え先がないから」が約半数という結果となりました。続いて、「住み替え費用が用意できないから」が36%となりました。 多くは住み替え先が見つからないためですが、資金不足が原因で積極的に情報収集に取り掛かれていないのかもしれません。なお、Q3でシニアが重視するのは圧倒的に利便性の高い物件でしたが、希望の利便性と購入可能予算内で物件を探すのは、シニアにとって非常に難しいことかもしれません。 住み替え資金を自宅の売却で考えるとハードルが高い Q6. 住み替えの費用をどのように捻出する予定ですか? 「自宅の売却」で住み替え費用を捻出しようとしている割合は約半数にのぼりました。 その一方、「住宅ローン」を利用しようとしている人はたった5%にとどまっています。 【考察】 一連のアンケートから、住み替え意向がある60歳以上の方の多くが、実際には”住み変えられない”という結果が得られました。約半数は希望に合う物件がないという理由でしたが、次いで資金面の課題が多いことがわかりました。 住み替え資金が用意できないという理由には、住み替え予算に自宅の売却資金を見込んでいることが原因でしょう。新居に自宅の売却資金を使うためには、新居の購入前に自宅を売却するか、購入と同時に自宅を売却することが一般的です。 上記のような一般的な売却を行うと、仮住まいが必要になってしまうこと、新居の選定か自宅の売却価格に妥協せざるを得ない場合があること、購入と売却のスケジュール調整が難しいことなど、いくつかの課題が発生します。これらがシニアの住み替えを難しくしている要因ではないでしょうか。 まとめ 住み替え意向がある60歳以上の人の約半数が、「実際に住み替える予定がない」という結果となりました。さらに、利便性を求めることで希望に合う住み替え先が見つからないほか、自宅の売却と住み替えの両立が難しいという理由で、住み替える予定が立たないことがわかりました。 資金面や仮住まいの問題のため住み替えが出来ないシニア世代の方々は、高齢者向けの住宅ローンであるリ・バース60やリースバックなどのサービス利用を検討してみましょう。既存のサービスでは実現出来なかった、スムーズで賢い住み替えができるかもしれません。 SBIシニアの住まいとお金で『住まいとお金ガイドブック』無料進呈中 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 老後の住まいはどうすべき?ポイントを徹底解説 老後に豊かな生活を送るには、ライフスタイルに合わせて住まいを選ぶ必要があります。しかし、住まいを選ぶ際には多くの選択肢があるので、どのように選べばよいかわからないのではないでしょうか。 老後...記事を読む
突然のケガなどによって介護が必要になる場面だけでなく、家族の中に高齢者がいると自宅のリフォームを検討するかもしれません。スムーズにリフォームを進めるには、事前に工事にかかる費用をある程度把握しておくことが大切です。また、利用できる補助金についても押さえておけば、いざというときに頼りになるでしょう。 この記事では、介護を行うために必要なリフォーム費用の目安や工事のポイントなどを解説します。 介護リフォームが必要な理由 介護を行うためにリフォームが必要な理由としては、被介護者を守るためだけでなく、介護者の負担を減らすためという点が挙げられます。介護を受ける側も行う側も気持ちよく過ごせる環境を整えるためには、必要なリフォームを実施することが大切です。 それぞれのポイントについて、さらに詳しく見ていきましょう。 被介護者を守るため 高齢者の視点から考えると家の中には階段や段差、お風呂場、トイレなど、ケガの原因となる場所が無数に点在しています。身体の状態にもよりますが、それまであまり気にならなかった小さな段差でも、つまずいて転倒につながるリスクは十分にあります。 介護が必要な状態といっても、その介護レベルは様々で、室内であれば問題なく自分で移動できるというケースも多いものです。そうした方にとっては、できるだけ自分の力で安心して行動できるような室内環境を整えることが、健康や自信を維持するためにも重要なポイントとなります。 上記のように、まずは「高齢者を守る」という観点から、バリアフリーを目的とした介護リフォームは重要です。 介護者の負担を減らすため 介護リフォームのもうひとつの目的は介護者側の負担をできるだけ減らすことにあります。介護を行うためには被介護者自身が快適と感じられるだけでなく、介護者にとってもサポートをしやすいと感じられる環境が求められます。 たとえば、被介護者の横について排泄のサポートをする場面を考えると、トイレには二人分のゆったりとしたスペースが必要です。十分な広さがなければ、介護者の身体に負担がかかるだけでなく、心理面においてもストレスを感じてしまう原因になります。 また、簡単に玄関や窓のカギが開かないような工夫をするなど、被介護者の安全を守る仕組みが、介護者自身の精神的な負担を軽減させてくれることもあります。そのため、介護リフォームを行ううえでは、介護者の目線からも快適と感じられる設計や工夫が重要です。 出典)「一般社団法人 住宅金融普及協会」 リフォームの需要は高齢者世帯に多い 介護リフォームについて考えるのは、ある程度の年齢を重ねてからとイメージされるでしょう。実際のところ、住宅におけるリフォームの需要は、若い世代よりも65歳以上の高齢者に多い傾向があります。 『住宅土地統計調査』(総務省・2018年)のデータによれば、2014年以降に増改築・改修工事などが行われた持ち家の件数901.4万戸のうち、施主が65歳以上のケースは532.9万戸であり、全体の60%近くを占めることがわかります。 一方で、65歳以上の高齢者が住む住宅2253万4千世帯のうち、一定水準のバリアフリー化が済んでいる世帯は955万6千世帯で、全体の42.4%とされています。 これらの結果から、リフォームの需要は加齢や築年数が古くなることに伴うが、介護に備えた「バリアフリー化」は思ったよりも進んでいないことがわかります。また、築年数が古いほどバリアフリー化率が低く、今後も介護リフォームの需要は高まっていきそうです。 出典)総務省「住宅土地統計調査」 介護リフォームにかかる費用相場 介護リフォームの費用は、どの部位を施工するかによっても大きく異なります。また、水回りの入れ替えを行う場合、新たに導入する設備のグレードによっても費用に大きな差が生まれます。 一般的な介護リフォームを行う場合、主な部位の目安金額は以下のとおりです。 リフォームを行う箇所費用の目安 洗面所の改装20~100万円 トイレ全体の改装20~100万円 システムバスへの交換60~150万円 手すりの設置1~20万円 廊下の改修20~100万円 和室→洋室(バリアフリー仕様)へ改装70~300万円 段差の解消(床のかさ上げ)8~20万円 合計額199~790万円 上記のように、介護リフォームに必要な費用の目安には一定の幅があります。ただ、国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査報告」(2012~2014年度)によれば、リフォーム工事の価格帯は、500万円未満が全体の80%程度を占めるとされています。 太陽光発電システムの導入や基礎から行う耐震補強のように、あまり大がかりな施工を依頼しなければ、通常のリフォームより費用が安く収まるケースも少なくありません。ただし、リフォーム業者によって費用は変わるため、必ず「相見積もり」をとって複数の会社を比較しましょう。 出典) ・国土交通省 部位別リフォーム費用一覧 資料5-2 ・国土交通省 軽微な工事(リフォーム工事等)に関する対応の検討 失敗しないための介護リフォームのポイントを紹介 介護リフォームで失敗しないためには、それぞれの工事箇所で見落としがちな点を細かくチェックすることが必要です。介護のためのリフォームは初めてという方もめずらしくないため、一つ一つ確認をしていきましょう。 玄関のリフォーム 玄関のリフォームで意識したいのは以下のポイントです。 出入りがしやすい(車椅子でも入れる) 靴を履いたり脱いだりするときに座る場所がある 手すりがある 雨の日でも滑らない 段差がない まずは間口の広さに着目し、車椅子でも問題なく出入りができるかをチェックしましょう。玄関口と廊下には段差が生まれてしまうのが通常のため、上り下りを補助するための台や手すりを設置することも大切です。 また、意外と見落としてしまいがちなポイントとして、床の材質が挙げられます。雨の日の転倒事故を防ぐために、濡れても滑りにくい材質を導入しましょう。 トイレのリフォーム トイレのリフォームで意識したいのは以下のポイントです。 出入りがしやすい トイレ内が広い 用を足しやすい スリッパを履かずに済む トイレは場合によって、被介護者と介護者が一緒に入る可能性もあります。そのため、二人同時に入るケースを想定して、出入りのしやすさやトイレ内の広さを確保することが大切です。 また、便座の高さや向き、ドアからの動線を考慮して、用を足しやすいつくりを心がけることも重要です。被介護者の状態によっては、身体の向きを変えるだけでも苦労してしまうことがあるため、体勢を変えずに利用できる設計を検討しましょう。 つまずき防止を考えて、スリッパを履く必要がない床材を導入するのもコツです。 お風呂のリフォーム お風呂のリフォームで意識したいのは以下のポイントです。 出入りがしやすい 濡れても滑らない 浴槽に入りやすい 段差がない お風呂もその他のスペースと同様に、まずは出入りのしやすさを考えることが大切です。浴室は特に転倒しやすいスペースなため、少しの段差でもケガにつながることがあります。 車椅子を使うことも想定して、脱衣所との段差はなるべく解消しておきましょう。さらに、転倒防止の基本として床材を滑りにくいものに変更するのも重要なポイントです。 また、お風呂においては、浴槽の高さに目を向ける必要もあります。またいだときの転倒リスクを軽減させるためにも、浴槽部分を少し掘り下げて、床との高低差を小さく抑えることが大切です。段差が小さければ、介護者も入浴サポートがしやすくなります。 階段のリフォーム 階段のリフォームで意識したいのは以下のポイントです。階段は転倒・転落などの事故が起こらないように、安全面に目を向けることが大切です。 手すりがある 滑り止めがある 段差がゆるやかである 階段昇降機が設置してある まずは、上り下りでしっかりと身体を支えられるように、手すりを設置する必要があります。滑りにくくつかみやすい太さ・形状を心がけ、とっさのタイミングでもすぐにつかまれるようにしておくと安心です。 また、床には滑りにくい材質を用いるとともに、へりに滑り止めの加工を行うことも大切です。上記2つの施工内容であれば、それほど費用をかけずに実現できるため、優先的に取り入れたいポイントといえるでしょう。 そのうえで、階段スペースの広さを十分に確保できるのであれば、段差をゆるやかに設計し直すのもひとつの方法です。傾斜を抑える分だけ、階段のスペースは広がってしまいますが、上り下りの負担を軽減する有効な手段となります。 さらに、費用にゆとりがあるなら被介護者を乗せられる階段昇降機を設置すると便利です。費用は高額になりますが、レンタルを行っている会社もあるため、選択肢のひとつとして考えてみてもいいかもしれません。 介護リフォームは介護保険の補助金を活用しよう 介護リフォームに取り組む際は介護保険から受けられる補助を活用することが大切です。費用の一部に充てられるため、必要な介護リフォームをスムーズに進めやすくなるでしょう。 以下では介護保険を利用してリフォームを行う流れを解説します。 介護保険の支給限度基準額 介護保険制度では要介護者などが一定の介護リフォームを行うときに、必要な手続きを行うことで一定金額の補助を受けることができます。具体的には、最大で20万円の限度額を基準に支給される仕組みです。 ただし、実際には改修費用の1~3割は自己負担となるため注意しましょう。なお、介護リフォームのうち、介護保険制度の対象となるのは以下の工事です。 手すりの取り付け 段差の解消 床や通路における滑り防止のための材料の変更 引き戸などへの扉の取り替え 洋式便器などへの便器の取り替え 上記5つの施工のために必要な工事 また、国の制度である介護保険とともに、自治体独自の取り組みもあります。制度の仕組みは自治体によって違い、介護保険と併用できるかどうかも異なります。 たとえば、東京都の場合は「住宅改善事業」という制度が設けられており、細かな仕組みや運用のルールは市区町村ごとに決められています。 出典)東京都 住宅改善事業 介護保険を利用してリフォームを行う流れ 介護保険の支給制度を利用するためには、決められた流れに沿って手続きを行う必要があります。リフォームの前に行う「事前申請」と施工後に行う「事後申請」のどちらも必要となるため、全体の流れをきちんと把握しておきましょう。 なお、助成金の支給が行われるのはリフォームの工事完了後になる点にも注意が必要です。 ケアマネジャーへの相談 介護リフォームを検討したら、まずは福祉センターのケアマネジャーにどのような介護リフォームが必要であるかを相談し、ケアプランを作成してもらいます。ケアマネジャーが作成する「住宅改修が必要な理由書」がなければ、支給の申請自体が行えないため注意しましょう。 市区町村への書類の申請 介護保険制度を利用する際は、市区町村にて工事前に申請する必要があります。申請には以下の書類が必要となります。 支給申請書 工事費見積書 住宅改修が必要な理由書 住宅改修後の完成予定の状態がわかるもの(日付入り写真や住宅間取り図など) 工事費見積書については金額の妥当性を確かめるためにも、複数の施工会社での相見積もりが推奨されています。ケアマネジャーによっては介護リフォームを得意とする施工会社を紹介してもらえることもあるため、不安な方は相談しておくといいでしょう。 施工の開始・完成 事前申請が終われば、施工会社による工事が実施されます。工事の期間は作業内容や範囲によっても異なるものの、介護保険における補助金の対象工事にはそれほど大規模なものはないため、比較的短いスケジュールで完成します。 工事費の支払い 施工が完了してからは実際の状態を確認し、プランとの差異がないかを確認します。そのうえで、問題がなければ工事費の支払いへと移ります。 このとき、リフォームの工事費用は一度自己負担しなければならない点に注意が必要です。支払い時に受け取る領収書は事後申請時に必要なため、きちんと保管しておきましょう。 介護保険の申請と改修費の支給 工事費の支払いが終わり、改めて市区町村に必要書類を提出すると、介護保険の正式な支給申請として取り扱われることとなります。このときに必要な書類は以下のとおりです。 住宅改修にかかった費用の領収書 工事費内訳書 完成後の状態を確認できる書類(改修前と改修後のそれぞれの写真など) 事前申請で提出された書類との確認や、適切な工事が行われたかの確認が終わると正式に申請が受理され、改修費が支給されます。 出典)厚生労働省 介護保険における住宅改修 まとめ 病気やケガなどで家族の介護が必要になったとき、介護リフォームを検討することもあるでしょう。大まかな費用相場を把握していれば、必要なリフォームを進めやすくなります。 介護保険をうまく活用してリフォームを進めることで、経済的な負担を軽減できるはずです。基本的な流れをきちんと押さえたうえで、介護リフォームを進めてみましょう。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リフォーム費用の相場と安く抑えるコツ 住み始めた頃は問題ないと感じていても、月日の経過に伴って住まいに不便さを感じる場面も出てきます。今後の生活を快適にするためには、リフォームを検討してみるのも選択肢の1つです。しかし、実際にリ...記事を読む
年齢を重ねてくると、購入当時の住まいでは生活のしづらさを感じる場面が増えてくるものです。ライフスタイルに合った住環境を作るために、選択肢の1つとしてリフォームを考えることもあるでしょう。しかし、実際にリフォームを行うとなると、どこから手をつければいいか悩んでしまいがちです。 この記事では、シニア世代がリフォームを行うときのポイントや間取りの事例、活用できる制度などを詳しく解説します。 シニアがリフォームを行う際のポイント 50歳以降にリフォームを考えるときには、老後の暮らしを見据えた住みやすい間取りにすることを念頭に置く必要があります。特に子どもが独立してからは、間取りはシンプルなほうが暮らしやすいでしょう。 加齢に伴う身体機能の低下やバリアフリー、生活動線やライフスタイルなどの点から総合的に考えていく必要があります。以下ではリフォームを行う際にポイントとなる部分をそれぞれ解説します。 1.玄関 まず、玄関のリフォームで重要な点は、安全に出入りができるかということです。間口が狭い場合は、車椅子がスムーズに出入りできるように広げることも検討してみましょう。 玄関付近で気をつけておきたいのは、敷居や玄関のアプローチなどの段差でつまずく転倒事故です。できるだけ段差をなくすようにして、スロープを設けると安心です。また、安全に通行するために手すりを設置することも安心につながります。 2.水回り設備 浴室や脱衣所、キッチンやトイレといった水回り設備は転倒につながりやすい箇所でもあるため、特に注意が必要です。浴室や脱衣所はイスやシャワーチェアを置くスペースを確保できるかを確認しましょう。 まず、浴室の床は滑りやすいタイルなどは避け、なるべく滑りにくい素材に変更しましょう。また、浴室と脱衣所の間にある段差の解消や、ヒートショック対策として暖房器具を設置するなどの対策を行いましょう。 次に、トイレは手すりを設置して、立ち座りの負担を軽減することが大事です。また、出入りをスムーズに行えるように、ドアは引き戸にするほうがよいでしょう。 最後に、キッチンは戸棚の位置を低くして、座りながら調理できるスペースを設けてみると負担が減ります。ガスコンロからIHに切り替えて、火の不始末が起こらないような工夫もしてみましょう。 3.生活動線・段差 室内の移動はちょっとした段差でもつまずきやすいため、できるだけ段差を解消しましょう。夜間は足元が暗くなるため、フットライトを取り付けておくと安心です。 廊下には行き来をするときにつかまりやすいよう、壁に手すりを設けておきましょう。車椅子を使用するときは、廊下の幅が85~90センチメートルほどは必要になるため、通行の妨げになるものがないかをチェックしておきましょう。 4.リビングのレイアウト リビングはくつろぐための空間であるため、日当たりや風通しに配慮したリフォームを心がけておきましょう。リビングからトイレや寝室までの距離は短くするなど、生活動線を考えた間取りの配置を考慮しましょう。 また、テーブルや食器棚などの家具の配置にも気を配る必要があります。一人掛けのソファなど、後から移動させやすい家具を選んでおくとよいでしょう。すぐに目につくように、家具の色はメリハリのある色づかいのものを選ぶのも良いかもしれません。 5.空調・採光・周辺環境 高齢になると室内で過ごすことが多くなるため、部屋の換気や採光に配慮しておくことが大切です。部屋ごとの室温に大きな差がないか、窓の開け閉めをしやすいかなどをチェックしておきましょう。 また、外に出るときのことを考えて、道路や車庫に出るまでのルートが安全であるかもチェックしておく必要があります。段差の解消や手すりの設置、フットライトの取り付けなど基本的な部分を点検してみましょう。 間取りごとのリフォーム事例を紹介 一口にリフォームといっても、物件の種類によって適した間取りは異なります。戸建てやマンション、二世帯住宅などそれぞれのパターンで、具体的な間取りの事例を見ていきましょう。 事例1:2階建て以上の戸建て 2階建て以上の戸建ての場合は、1階に寝室を配置するとよいでしょう。寝室とトイレの位置をできるだけ近くして、生活動線を考えた間取りの配置を行うことが大切です。 玄関にはイスを置けるスペースを確保し、階段下を収納として活用すると便利です。リビングにいる家族の気配が感じられるように、間口を広くしたり対面型のキッチンにしたりすると安心です。また、2階に上がる階段は転倒防止のために、手すりや滑り止めを設けておきましょう。 事例2:平屋・マンション 平屋やマンションの場合は、壁を取り払って広めのLDKにするのも1つの方法です。トイレと脱衣所、浴室などの水回りを1箇所にまとめてシンプルな設計にしてみると、移動がラクになります。 玄関は各部屋までの移動距離が短くなるように、間取りの中央部分にあるほうが望ましいといえます。ベランダやバルコニーは、外との出入りがしやすいように縁側やウッドデッキなどを設けると、採光や換気の調整も行いやすくなります。 事例3:二世帯住宅 二世帯住宅の場合は、それぞれのライフスタイルやプライバシーの確保に配慮した間取りにすることが重要です。トイレは年配の方が利用しやすい位置に配置し、玄関までの移動距離を短くするのがポイントです。 和室を作る場合は、ベッドが置けるように一部をフローリングにしてみるとよいでしょう。広々とした階段ホールに改良するなどして、各世帯の独立性を維持しながらも、ふれあえる空間を設けておくと良いでしょう。 リフォーム工事に活用できる制度 リフォームを行うにはまとまった費用がかかるため、各種ローンだけでなく国や地方自治体が設けている補助金制度を有効活用することが大切です。どのような補助金があるのか事前に把握しておけば、リフォームの計画を進めやすくなるでしょう。 ここでは、3つの補助金制度についてポイントを紹介します。 介護保険法にもとづく住宅改修(高齢者住宅改修費助成制度) 介護保険は40歳からの加入が義務付けられている保険制度であり、要支援・要介護認定を受けたときに、介護費用の一部を支援してもらえる仕組みです。住宅改修費用についても介護保険の適用が受けられるため、負担の軽減につながります。 自己負担割合は1~3割と決められていますが、最大20万円までの補助が受けられます。補助金の支給は実際に工事を行って、業者に代金を支払った後で償還される仕組みであり、利用する際はあらかじめ住んでいる自治体に確認をしておきましょう。 対象となる工事は開口部・外壁・屋根・床などの断熱改修やエコ住宅設備(太陽熱利用システム・節水型トイレ・高断熱浴槽など)の設置、子育て対応改修やバリアフリー改修などです。 出典)介護保険における住宅改修 長期優良住宅化リフォーム推進事業 「長期優良住宅化リフォーム推進事業」とは、子育てに取り組みやすい生活環境の整備や住宅の長寿命化・省エネ化を推進するために行うリフォームに対して支援を行うものです。三世代同居対応改修工事や子育て世帯向け改修工事などの費用を支援してもらえます。 バリアフリー改修工事や高齢期に備えた住まいの改修工事なども対象となっており、幅広い用途で利用できる仕組みです。補助金の上限額は長期優良住宅の認定を受けない場合は最大100万円、認定を受ける場合は最大250万円となっており、工事費用の3分の1までが補助の対象となります。 出典)長期優良住宅化リフォーム推進事業 総合トップページ こどもみらい住宅支援事業 「こどもみらい住宅支援事業」は子育て世帯や若者夫婦世帯が高い省エネ性能を持つ住宅を取得したり、リフォームを行ったりするときの費用を補助する仕組みです。住宅の新規購入時は、省エネ性能に応じて60~100万円の補助を受けられます。 リフォームの場合は、すべての世帯を対象として最大30万円の補助金が交付されます。さらに、子育て世帯や若者夫婦世帯の場合、最大60万円まで上限が引き上げられるので活用してみましょう。 出典)こどもみらい住宅支援事業 まとめ 年齢を重ねてからも住みやすい環境を維持するには、必要に応じてリフォームを行うことが大切です。物件の種類によって間取りや生活動線などが異なるため、この記事で紹介したリフォームのポイントや事例などを参考にして、自分に合った住まいに作り変えてみましょう。 大がかりなリフォームになると、費用もそれなりにかさんでくるため、国が設けている補助金制度を上手に活用することが重要です。これから年を重ねていったときの暮らしをイメージしながら、早めに取り組んでみましょう。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リフォームとリノベーションの違いとは?費用の目安も解説 建物の改装を検討するときには、リフォームとリノベーションのどちらが適しているのかを見極めることが大切です。この記事では、リフォームとリノベーションの基本的な違いについて解説します。 また、施...記事を読む
60歳を越えると、定年退職や子供の自立など、ライフスタイルが大きく変わる人も少なくないでしょう。自身が所有する住まいについても同様に、設備の故障や経年劣化によって、リフォームを検討する人も多いのではないでしょうか。 そこでこの記事では、持ち家がある60歳以上の男女500名を対象に、リフォームに関するアンケートを実施した調査結果をご紹介します。 詳細はこちら シニアのリフォーム予定は約4割、その半数が費用を200万円未満と想定、資金不足に悩むシニアは約2割!~SBIエステートファイナンスが「シニアのリフォーム」に関するアンケート調査を実施~ 約4割がリフォームを予定している Q. 今、住んでいる物件のリフォームを検討していますか? 「リフォームを予定している」と回答した方は約4割でした。この回答から、60代にもなるとリフォームの必要性を感じる方が多いことがわかります。 Q. 何年後にリフォームを予定していますか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォームの予定時期は「半年以内」が10%、「1年以内」が11%と、1年以内にリフォームを計画している人が約2割いることがわかりました。また、未定が4割であることから、いずれリフォームが必要と考えているが、それほど緊急度の高いリフォームではないことも推察されます。 リフォーム費用は約5割が200万円以下という結果に Q. リフォーム費用はどの程度で考えていますか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォームの費用は、最も多い回答が「100万円以上200万円未満」で30%、「100万円未満」が17%となり、200万円以下のリフォームに留める方が約半数であることがわかりました。このことから、大規模な修繕工事ではなく、最低限の修繕にとどめたリフォームを検討していることが多いことがわかります。 Q. リフォーム費用はどのように準備する予定ですか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォーム費用は、約8割の人が貯金から準備する予定であり、「資産(株、投資信託等)の売却」を足すと9割以上となります。このことから大半の人が保有する資産の中からリフォーム費用を準備することがわかりました。 一方で、リフォームを予定しているが、「ローン」を利用するという人が4%、「当てがない」という人も4%おり、リフォームは必要になると考えているものの、どのようにリフォーム資金を準備するか悩んでいる人も一定数いるようです。 全体の2割近くが資金面を理由にリフォームを予定していない Q. リフォームを予定していない理由はなぜですか?(リフォームを予定していないと回答した方) リフォームを予定していない理由は、「現在の住宅に全く不満がない」という理由が34%でした。また、既にリフォームを実施済の人も25%いることから、リフォームを予定していないシニアの方の約6割はライフスタイルに合った自宅に住んでいることが推察されます。 一方で、リフォームを予定していない理由の中には、「費用がかかりそう」が15%、「費用が用意できない」が15%といったように、資金面で悩みがあることもわかりました。この結果とリフォームを予定しているが資金面で悩んでいる人を足し合わせると、資金面でリフォームに悩んでいる人は回答者全体の約2割となることがわかりました。 まとめ 今回の調査によると、シニア世代のほとんどが貯金などからリフォーム費用を準備する一方で、資金面で悩んでいる人が全体の2割を占めることがわかりました。また、リフォーム費用を低く見積もる方も多く、どれくらいの費用をかければどの程度のリフォームができるかを正しく把握できていない可能性もありそうです。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 シニアがリフォームする際のポイントや間取り事例を紹介 年齢を重ねてくると、購入当時の住まいでは生活のしづらさを感じる場面が増えてくるものです。ライフスタイルに合った住環境を作るために、選択肢の1つとしてリフォームを考えることもあるでしょう。しか...記事を読む
シニア世代は、子どもの独立や退職などをきっかけに生活環境が大きく変化します。今住んでいる家がライフスタイルに合わなくなると、将来を見据えて住み替えを検討することもあるでしょう。 この記事では、シニアが住み替える際に確認しておきたいポイントを4つ紹介します。 住み替えの目的を明確にする まずは住み替えの目的を明確にすることが大切です。シニアはどんなきっかけで住み替えを考えるのでしょうか。「エリア」「設備」「趣味・嗜好」の3つの観点から、シニアが住み替える目的を確認していきましょう。 エリア 居住エリアの変更を希望する場合は、「子どもと同居、近居したい」「利便性を向上させたい」といった場合が考えられます。 子ども世帯の近隣に住み替えることで、子どもや孫と支えあいながら楽しく暮らせます。また、スーパーや医療機関、公共交通機関などが充実しているエリアに住み替えれば、老後も不自由なく暮らせるでしょう。 設備 「建物や設備の経年劣化により長く住み続けるのが難しい」「バリアフリー化したい」といった理由で住み替えを検討するケースです。 住み替えることで建物や設備が新しくなり、バリアフリー化もできます。ただし、今住んでいる家の建て替えや「リフォームで対応することができないのか」改めて考えてみるといいでしょう。 趣味・嗜好 「趣味の読書や映画、音楽を楽しみたい」「一年中ゴルフをして過ごしたい」「スローライフを満喫したい」など、趣味・嗜好で住み替えを検討する場合も考えられます。戸建てやマンションだけでなく、高齢者向け住宅などの様々な住まいの候補があります。それぞれメリット・デメリットがあるので、後悔がないように物件を選定するといいでしょう。 より快適な老後を過ごすには、住環境を整える必要があります。自分の好みに合った家に住み替えることで、毎日を楽しく快適に過ごすことができるでしょう。 余裕を持った資金計画を立てる シニアが住み替えを成功させるには、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。具体的には以下の点を確認しましょう。 総資産額を把握して住み替え予算を決定する まずは手元にある資産や負債を把握して、住み替えの予算を決定します。 資産は預貯金のほかに自宅の売却価格、株や保険などの金融商品も確認しましょう。自宅の売却価格は住み替えの進め方や売却方法によって変わってくるため、保守的に見積もることが大切です。 負債は住宅ローンやその他の借入があるかを確認します。資産から負債を差し引いた金額が、現時点で手元にある本当の資産(純資産)となります。 借入可能額を見積もる 資金調達を利用する場合は、いくらまで借りられるかを見積もりましょう。 シニアの場合、年齢や収入によって利用できるローン商品が変わってきます。通常の住宅ローンは審査が通りにくく、借りられたとしても長期のローンを組むのは難しいでしょう。高齢者向け住宅ローンの「リ・バース60」も選択肢として検討を進めるといいでしょう。 関連記事はこちらリ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 預貯金として残す金額を決める 資産や負債、借入可能額がわかったら、預貯金として残す金額を決めます。年金だけで生活するのが難しい場合、預貯金は生活費を補う重要な財産となります。急にまとまった出費が生じる可能性もあるので、預貯金は多めに確保しておきましょう。 無理のないキャッシュフローにする 住み替え前と住み替え後でキャッシュフローは異なるケースが多いでしょう。借入を利用する場合は、毎月の返済が増え、マンションに住み替える場合は、毎月管理費・修繕積立金がかかります。住み替え後のキャッシュフローができるだけプラスになるか、手元の預貯金で賄えるかなどの視点から、無理のない収支計画を立てましょう。 賢く手段を選んで自宅を売却する シニアが住み替えを成功させるには、自宅をどのように売却するかも重要です。自宅の売却方法は、「買い先行」と「売り先行」の2つがあります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った方法を選択しましょう。 買い先行で住み替える 買い先行は、新居を購入してから自宅を売却する方法です。空室にしてから売却するので、内覧希望者に対応しやすく、高値で売却できる可能性があります。 ただし、今の住宅ローンを残したまま新居のローンを組むのは難しいため、資金に余裕がある人に向いています。 買い先行は「市街化区域外」「旧耐震」「再建築不可」「既存不適格」「借地権」「郊外」「マンションの1階」など、売りづらい物件に住んでいる場合は要注意です。自宅の売却に時間がかかると手元資金が不足する恐れがあります。 売り先行で住み替える 売り先行は、自宅を売却してから新居を購入する方法です。住み替え資金を確保しやすく、新居のローンを組みやすいので、資金に余裕がない場合は売り先行が向いています。 ただし、売り先行は新居に引っ越しするまでの仮住まいを確保しなくてはなりません。また、新居の購入スケジュールによっては早期に売却しなくてはならないため、買い先行に比べると自宅の売却価格が安くなりがちです。 少しでも高く売るために「仲介」で売却するのか、確実に売却するために「業者買取」を利用するのかを判断する必要があります。 目的に合った物件を選定する 資金計画や自宅の売却方法が決まったら新居を探します。目的に対応する物件を選ぶ際は、以下の点を意識するといいでしょう。 持ち家か賃貸か シニアの住み替えでは、持ち家だけでなく賃貸物件も選択肢となります。 持ち家は間取りなどの選択肢が広く、いざというときに有効活用できるのがメリットです。「売却する」「物件を担保に融資を受ける」などの方法で、まとまった資金を確保できます。 賃貸は毎月家賃がかかりますが、自宅の処分やローンを考慮せずに引っ越しができ、相続トラブルを回避しやすいのがメリットです。ただし、オーナーによっては高齢であることを理由に入居を断られる場合もあるので、老人ホームや高齢者向け賃貸住宅から選ぶといいでしょう。 戸建てかマンションか 住み替えの目的によって、戸建てとマンションのどちらが向いているかは変わってきます。 たとえば、子ども世帯と同居するなら間取りの自由度が高い戸建て、将来の売却や相続を考慮するなら売却しやすいマンションがよいかもしれません。目的に応じて、どちらがよいかを見極めましょう。 都市部か郊外か 都市部と郊外では、住環境が大きく異なります。都市部は生活に便利な設備がそろっていますが、物件価格や家賃は高い傾向にあります。一方、郊外は静かな環境で穏やかに暮らせますが、インフラ整備などの状況など生活するには不便な場所もあります。 都市部と郊外のどちら選ぶにせよ、売却しやすい物件に住み替えることを意識しましょう。 予算を超えたら? 条件に合致する土地や物件が見つかっても、予算を超えてしまうかもしれません。その場合は以下のような選択肢があります。 建て替え・リフォームに切り替える エリアを変える ダウンサイジングする 老後資金不足を招く恐れがあるため、予算を超える場合は住み替えを見送るのが無難です。住み替えにこだわらず、建て替えやリフォームで住環境を改善する方法もあります。 どうしても住み替えたい場合は、エリア変更やダウンサイジング(より小さな家への住み替え)を検討しましょう。 まとめ シニアが住み替えをする場合は、目的をはっきりさせたうえで資金計画を立てることが大切です。また、自分にあった売却方法や物件を選ぶことも重要なポイントとなります。快適なシニアライフを過ごすために、必要に応じて住み替えを検討しましょう。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住み替えの方法と成功させるポイント 持ち家に住んでいても、転勤や家族構成の変化などのライフスタイルの変化などを理由に住み替えを検討することがあるでしょう。 住み替えは新居の購入や自宅の売却、住宅ローンの手続きなど、同時に進めな...記事を読む
老後の住まいを考えたとき、老人ホームや介護施設などの、高齢者向け住宅を検討するかもしれません。一方で、これらの施設にかかる費用がいくらなのか、そもそもどのような人が、どのような施設を選ぶべきなのか、など、わからないことも多いでしょう。 この記事では、老人ホームや介護施設にかかる費用と、その選び方について解説します。なお、高齢者向け住宅については、以下の記事で詳しく解説しています。 >老人ホーム・介護施設とは?公的施設と民間施設の違いも解説 老人ホームと介護施設の違いとは 「老人ホーム」と「介護施設」という言葉は、世間一般で使用されますが、実は正式に定義がされていません。たとえば、厚生労働省のホームページでは、これらの施設を総称して、「高齢者向け住まい・施設」という表記が用いられています。そのため、前述した記事と同様に、この記事でも「老人ホーム」と「介護施設」を以下のように定義します。 老人ホーム:広義の高齢者向け住まい・施設 介護施設:介護サービスを受けられる高齢者向け住まい・施設 なお、厚生労働省の資料では、「高齢者向け住まい・施設」の利用者数は下図のようになっています。 出典)厚生労働省「介護分野をめぐる状況について」 直近、最も利用が多かったのは、介護老人福祉施設です。次いで、有料老人ホーム、介護老人保健施設と続きます。また、有料老人ホームの種別としては、住宅型有料老人ホームが介護付き有料老人ホームの約1.5倍であることがわかります。 老人ホームの種類と費用の目安 では、老人ホームの種類と費用の目安を整理しておきましょう。それぞれの施設の特徴などは前述した記事を参照してください。 なお、以下で紹介する費用はあくまで目安額のため、要介護度などにより変わることもあります。また、施設によっては入所・入居時に一時金が発生する場合もあります。特に有料老人ホームは、グレードが高いものほど一時金が高くなる傾向があり、中には数千万円の一時金がかかるものもあります。 一方で、同じ部屋に対し、一時金があるプランと、一時金がない、もしくは少額である代わりに月額が高めのプランを用意しているところもあります。 介護施設を除く老人ホーム 施設公的/民間一時金(目安)月額(目安) 軽費老人ホーム(自立型)公的0~数百万円8~20万円 住宅型有料老人ホーム民間0~数千万円15~30万円 養護老人ホーム公的不要0~12万円 サービス付き高齢者向け住宅民間0~数十万円10~25万円 シルバーハウジング民間敷金1~13万円 介護施設 施設公的/民間一時金(目安)月額(目安) 介護老人福祉施設公的不要5~20万円 介護老人保健施設公的不要5~20万円 介護医療院公的不要7~17万円 介護療養型医療施設*公的不要7~17万円 軽費老人ホーム(介護型)公的0~数百万円10~25万円 認知症対応型共同生活介護民間0~数十万円10~25万円 介護付有料老人ホーム民間数十万円~数千万円15~30万円 ※介護療養型医療施設は2023年度末で廃止 ※執筆者作成 老人ホームの探し方 老人ホームを選ぶ際には、入所する人の経済状態や要介護度をはじめ、いくつかの条件で絞り込む必要があります。主なポイントは「健康状態」「予算」「立地」の3点です。 健康状態 まずは、入所者の健康状態を確認します。大きな軸としては、「自立している」か「要支援・要介護の状態である」かに分かれます。要支援や要介護の場合は、どの段階なのかということや、認知症であるか否か、ということも重要です。 たとえば、要介護状態で医療的措置が必要な人は、介護医療院や介護療養型医療施設、介護老人福祉施設が候補となります。 予算 次に、自身の経済状況を踏まえた予算設定が必要です。一般的に、民間施設よりも公的施設の方は費用が安いです。しかし、公的施設は需要過多の状態が続いており、入所待ちが常に発生している状況です。 一方で、有料老人ホームなどの民間施設は、公的施設よりも費用が高いものの、供給数が多いため、経済状況に合わせた選択肢もあるかもしれません。予算設定の際には、入所の際に発生する一時金や、毎月負担できる月額を考えましょう。貯金がない場合には、毎月の収入である年金や金融資産、いずれ住まなくなる自宅の活用などを加味して検討します。 立地 親族との近居をした方がいいのか、必要ないかなど、立地条件から絞り込むこともできます。家族が訪れやすいよう利便性を重視する場合は、地域を限定して探すことになります。地域が限定されるのであれば、自身が居住する地域の地域包括支援センターなどで相談をすると、空室状況なども教えてもらえます。 施設見学や体験入所で候補を絞る 老人ホームを前述のような条件で絞り込んだ後は、次のような5つのポイントを確認して施設を決めましょう。 設備:浴室や食堂、リハビリ施設、トイレなど 介護・医療サービス:施設スタッフによる介護か、外部サービスの施設か、看護スタッフがいるかなど 食事:食事がおいしいか、病気に合わせて減塩、低糖などの配慮をしてくれるかなど 入院時や看取り:病院に入院すると退所となるか、看取り(施設で亡くなること)ができるのかなど 経営状態:施設の運営母体の財務状況に問題がないか、倒産時にどのような保証があるかなど 2025年は団塊世代が後期高齢者になり始めることから、大介護時代が始まるとされています。たとえば、介護老人福祉施設は要介護3以上が条件の施設ですが、首都圏を中心に空きがなく要介護度4でも入居待ちとなっているところもあります。 また、公的な介護施設は、重度の人が優先となり、軽度の人の選択余地はなくなることも考えられます。公的施設が難しく、有料老人ホームに入る場合は、具体的に施設を見学し、いくつか候補を絞っておくのがいいでしょう。施設見学や体験入所もできるので、元気なうちに候補を絞っておくと安心です。 まとめ 老後の住まいを決めるのは、元気に動けるときが一番です。人生100年時代とも言われる現在、目先の費用だけでなく、100歳まで長生きをしても払い続けられるかなど、持続性も確認しましょう。費用を捻出するために、自宅という資産を活用する選択肢があるのかどうかを確認しておくことも安心です。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 豊田 眞弓( Mayumi Toyoda ) マネー誌ライターを経て、94年より独立系ファイナンシャルプランナー。 個人相談、講演・研修講師、コラム寄稿などを行う。座右の銘は「笑う門には福もお金もやってくる」。趣味は講談、投資。 <主な著書> 「夫が亡くなったときに読む本」(日本実業出版社)、「親の入院・介護が必要になるときいちばん最初に読む本」(アニモ出版)、ほか著書多数。 老人ホーム・介護施設とは?公的施設と民間施設の違いも解説 誰でも年をとると、身の回りのことができなくなったり、思ったようにできなくなったりしていきます。体が弱ってきたとき、あるいは要介護状態になったとき、自宅以外の住まいの選択肢として、どのような候...記事を読む
誰でも年をとると、身の回りのことができなくなったり、思ったようにできなくなったりしていきます。体が弱ってきたとき、あるいは要介護状態になったとき、自宅以外の住まいの選択肢として、どのような候補があるのでしょう。 この記事では、高齢者向けの住まいである、老人ホームや介護施設がどのような施設なのかを紹介します。 そもそも老人ホームと介護施設の違いは? 高齢者向け住宅について調べていると、「介護施設」と「老人ホーム」という言葉が多く使われています。高齢者向け住宅について、詳しくない人にとっては、高齢者向け住宅は「老人ホーム」と「介護施設」の2つに大別されるものと思ってしまうかもしれません。まずは、これらの言葉が何を指しているのかについて考えてみましょう。 厚生労働省では、「高齢者向け住まい・施設」といった表記はあっても、「老人ホーム」と「介護施設」と分類した表記はありません(有料老人ホームや介護保険施設という言葉は出てきます)。つまり、この2つの言葉には明確な定義があるわけではなく、一般の人でもわかりやすいように説明しているものと考えられます。 そのため、この記事内では、「老人ホーム」と「介護施設」という2つの言葉を以下のように整理します。 老人ホーム:広く高齢者が利用できる住宅・施設 介護施設:介護サービスを受けられる高齢者向けの住宅・施設 以上のように定義すると、代表的な高齢者向け住宅は以下のように整理されます。 介護施設を除く老人ホーム 施設主な設置主体入所基準認知症での入居 軽費老人ホーム(自立型)地方自治体、社会福祉法人、知事許可を受けた法人要支援1~〇 住宅型有料老人ホーム民間要支援1~〇 養護老人ホーム地方自治体、社会福祉法人-× サービス付き高齢者向け住宅民間-〇 シルバーハウジング民間-× 介護施設 施設主な設置主体入所基準認知症での入居 介護老人福祉施設地方自治体、社会福祉法人要介護3~〇 介護老人保健施設地方自治体、医療法人要介護1~〇 介護医療院地方自治体、医療法人要介護1~〇 介護療養型医療施設*地方自治体、医療法人要介護1~〇 軽費老人ホーム(介護型)地方自治体、社会福祉法人、 知事許可を受けた法人要介護1~〇 認知症対応型共同生活介護/th>民間要支援2~〇 介護付有料老人ホーム民間要支援1~〇 ※介護療養型医療施設は2023年度末で廃止 公的施設と民間施設では何が違う? 公的施設は、主な設置主体が、地方自治体や社会福祉法人、医療法人です。代表的なのは介護保険施設で、介護老人福祉施設や介護老人保健施設などがあります。その他にも、軽費老人ホーム、養護老人ホームなども公的施設です。 公的施設は、民間施設に比べて、費用が抑えられることから人気が高く、エリアによっては入居待ちも起きています。施設によっては、低所得者に対する優遇があるなどの特徴があります。 一方で、民間の老人ホームとしては、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などがあります。民間企業が運営しているため、公的施設よりサービスが充実しているものの、費用面では高めになります。 介護施設を除く老人ホーム(公的施設・民間施設) 介護サービスが必要ない「自立」の状態で利用できる老人ホームについて見ておきましょう。こちらも、概要や入所できる要介護度なども整理するとともに、公的施設と民間施設に分けてみます。 <公的施設>軽費老人ホーム(自立型ケアハウス) 軽費老人ホームは身寄りがないなど、自宅での生活が困難な人向けの福祉施設です。自立型ケアハウスは低額で利用できるバリアフリー仕様の高齢者向け施設で、要支援1以上の高齢者に生活相談や食事が提供されています。 <民間施設>住宅型有料老人ホーム 60歳以上の元気な人が入居でき、家事負担などを減らして暮らせます。介護サービスを受ける場合は、外部の事業者を利用します。「自立」で入所できる有料老人ホームにはほかに「健康型」もありますが、このタイプは要介護状態になると退去しなくてはなりません。 <公的施設>養護老人ホーム 養護老人ホームは、身寄りがない人や、経済的・環境的な理由で自宅での生活が困難な65歳以上を対象にした施設です。職員も配置されていて、社会復帰の促進や自立した生活を送れるよう必要な指導や訓練等を行っています。介護施設ではないため、要介護になると退去しなくてはなりません。 サービス付き高齢者向け住宅 60歳以上の高齢者向けの賃貸住宅で、部屋はバリアフリー化され、見守りサービスと生活相談サービスが付いています。部屋の大きさは原則25㎡以上と広めで、食事サービスや生活支援サービス(清掃、洗濯など)を提供している施設もあります。 シルバーハウジング 公営住宅やUR都市再生機構賃貸住宅などの公共賃貸住宅の一部の部屋をバリアフリー化したもので、「生活援助員」がいて、生活相談や緊急時対応などのサービスを提供してくれる施設です。食事の提供などはありません。60歳以上の単身者または夫婦での利用も可能です。 介護施設(公的施設・民間施設) 要介護認定を受けた人の選択肢となる介護施設についても、概要と、入所できる要介護度などを整理します。公的施設と民間施設に分けて考えてみましょう。 <公的施設>介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 常時の介護を必要とし、居宅で介護を受けることが困難な高齢者に対し、入所サービスを提供する施設です。要介護3以上の人が対象ですが、首都圏を中心に入居待ちも多くなっています。 <公的施設>介護老人保健施設 病院を退院後、症状が安定している人で、在宅復帰を目指して看護や介護、リハビリを中心とした医療ケアと生活サービスを受けるための施設です。要介護1以上の人が対象で、入所期間は原則3か月程度などの条件があります。 <公的施設>介護医療院 2018年4月に新設された、医療と介護のニーズに対応するための介護保険施設。医療の必要な要介護者を対象として、医学管理や看取りなどの医療機能と、介護施設としての機能とを提供する施設です。療養機能にウエイトを置いたⅠ型と、機能訓練や必要な医療にウエイトを置いたⅡ型があり、要介護1以上の人が対象です。 <公的施設>介護療養型医療施設 治療が終わった後も、長期の療養が必要な人が医療や介護、機能訓練などを受けるための病院で、要介護1以上の人が対象です。なお、2024年3月31日の廃止が確定しています。 出典)介護療養病床・介護医療院の これまでの経緯 - 厚生労働省 <公的施設>軽費老人ホーム(介護型ケアハウス) 軽費老人ホームは低額で利用できる福祉施設。家庭環境、住宅事情等で在宅での生活が難しい高齢者に対し、生活相談や食事が提供されます。バリアフリー仕様のケアハウスのうち、「特定施設入居者生活介護」の指定を受け、外部サービスを活用した介護サービスを受けられるのが介護型ケアハウスです。 <民間施設>認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 要支援2以上の認知症高齢者が利用できます。少人数(1ユニット5~9人、1施設3ユニットまで)で家族のように共同生活を送ります。介助を受けながら、できる範囲で家事を分担し認知症の進行を遅らせます。施設によって入居の要件や費用も異なります。 <民間施設>介護付有料老人ホーム 介護・看護スタッフ等が常駐していて、介護保険を利用した介護サービスを24時間受けることができます。重度の要介護状態でも利用でき、施設によっては「看取り」まで可能なところもあります。一方で、サービスが手厚くなるほど費用も高額になります。そのほか、医療法人が経営する医療対応型の介護付き有料老人ホームもあります。要支援1から利用することができます。 まとめ この記事では老人ホームと介護施設の違いや概要を見てきました。高齢者向け住宅を検討している場合は、それぞれの違いを確認したうえで、検討するようにしましょう。 出典)高齢者向け住まいについて 執筆者紹介 豊田 眞弓( Mayumi Toyoda ) マネー誌ライターを経て、94年より独立系ファイナンシャルプランナー。 個人相談、講演・研修講師、コラム寄稿などを行う。座右の銘は「笑う門には福もお金もやってくる」。趣味は講談、投資。 <主な著書> 「夫が亡くなったときに読む本」(日本実業出版社)、「親の入院・介護が必要になるときいちばん最初に読む本」(アニモ出版)、ほか著書多数。 終活とは?終活では何を準備すればいい? 昔に比べて平均寿命が延びて老後の期間が長くなったことから、「終活」を行う人が増えています。終活と聞くと、葬儀やお墓、相続など自分が亡くなった後のことをイメージするかもしれません。しかし、実際...記事を読む
子どもが独立したり、定年が近づいてきたりすると、老後の住まいについて考える機会が増えるのではないでしょうか。戸建てに住んでいる場合は、住み替えやリフォームだけでなく、建て替えも検討するかもしれません。 建て替えによって自宅が新しくなれば、安心して老後を過ごせるかもしれません。一方で、建て替え資金をどうやって準備するかという問題もあります。この記事では、老後に自宅を建て替えるメリット・デメリット、資金を準備する方法について解説します。 高齢者の住宅事情について まずは高齢者世帯の持ち家率や建て替えの現状など、高齢者の住宅事情について確認していきましょう。 高齢者世帯の持ち家率 総務省の調査によると、65歳以上の高齢者がいる世帯の持ち家率(2018年)は82.1%となっています。持ち家率は減少傾向にあるものの、高齢者の8割超が持ち家に住んでいるのが現状です。 図:高齢者世帯の持ち家比率 ※調査結果から著者が作成 出典)総務省「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要P8」 建て替えの現状 総務省の調査によると、2018年の持ち家の取得方法のうち「建て替え」は565万6,000戸で、全体の17.2%となっています。 建て替えを行った住宅の建築時期で最も多いのは、1991~2000年の141万6,000戸(21.2%)です。次いで、1981年~1990年の104万8,000戸(18.3%)です。築30~40年で建て替えを実施するケースが多く、建て替え全体の約4割を占めています。 図:建て替えの現状 ※調査結果から著者が作成 ただし、建て替えが必要かどうかは、物件の構造や状態によって異なります。適切にメンテナンスを行っていれば、築年数が古くなったとしても、必ずしも建て替えが必要になるとは限りません。 出典)総務省「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要P6」 老後に建て替えを検討するきっかけ 多くの人は、どのようなきっかけで自宅の建て替えを検討するのでしょうか。老後に建て替えを行う理由として以下のようなことが考えられます。 若いときに建てた自宅が老朽化している 二世帯住宅/賃貸併用住宅に対応するため 賃貸暮らしだったが実家を相続した 20代で自宅を建てた場合、定年を迎える頃には築30~40年となります。建物や設備の老朽化が気になる場合、リフォームだけでなく、建て替えは選択肢の1つとなるでしょう。 また、子ども世帯と一緒に住むための二世帯住宅、家賃収入を得るための賃貸併用住宅に対応することを目的に建て替えを検討するケースも考えられます。 さらに、相続した実家への住み替えも、建て替えのきっかけになるでしょう。建物が老朽化している場合は、建て替えを選択肢に入れるかもしれません。 老後に自宅を建て替えるメリット 老後に自宅を建て替えるメリットは以下のとおりです。 ライフスタイルにあった家を建てられる 老後を安心して過ごせる 若いときに建てた自宅が、老後のライフスタイルに合うとは限りません。例えば、子どもが独立して夫婦だけの生活になれば、間取りが広すぎると感じることもあるでしょう。老後に建て替えを行えば、ライフスタイルの変化に対応した住みやすい家を建てられます。 また、建物が老朽化することで地震や台風などの災害リスクも高まります。建て替えによって建物を新しくすれば、耐震性や耐久性が高まり、老後を安心して過ごせます。 関連記事はこちらシニアが住み替える際の4つのポイント 老後に自宅を建て替えるデメリット 一方で、老後の建て替えには以下のようなデメリットもあります。 まとまったお金がかかる 建て替えが完了するまでの仮住まいが必要 自宅を建て替えるにはまとまった資金が必要です。しっかりとした資金計画を立てておかないと、老後の生活費が不足する可能性があります。また、建て替えが完了するまでは自宅に住めないため、仮住まいを用意しなくてはなりません。賃貸物件を借りる場合は、家賃の支払いが必要です。 建て替え資金はいくら必要? 自宅の建て替えにかかる費用は、大きく「工事費用」と「諸費用」の2つに分けられます。 工事費用 建て替えの際は、現在住んでいる家の解体工事と新築する建物の本体工事が行われます。また、給排水や電気・ガスなどの付帯工事も必要です。 工事費用は、「坪(㎡)数 × 各工事の単価」によって概算金額を算出できます。物件によって異なりますが、解体工事は坪4~8万円、本体工事は坪50~70万円が相場です。また、付帯工事は本体工事の20%程度が相場となります。 あくまでも目安なので、実際に建て替えを行う場合は事前に見積もりをとって、正確な金額を把握する必要があります。 諸費用 建て替えの際は以下のような諸費用もかかります。 印紙代(契約時) 登記費用 火災保険料 住宅ローン手数料(利用する場合のみ) 各種申請費用(長期優良住宅認定、建築確認申請等) 上記のほかに、引っ越し費用や仮住まいにかかる費用、新調する家電・家具などの購入費用も必要です。支払い時に困らないように、事前に費用を確認した上で多めに資金を用意しておきましょう。 関連記事はこちら住み替えの流れや費用、利用できる税制上の特例を解説 老後の建て替え資金にはリ・バース60 建て替え資金を自己資金で準備できない場合は、住宅ローンを組むのが基本です。しかし、高齢になると住宅ローンを組むのが難しいかもしれません。その場合は「リ・バース60」を検討しましょう。 リ・バース60は高齢者向けの住宅ローンで、満60歳以上の方でも借り入れが可能です。毎月の支払いは利息のみで、元金の支払いは債務者が亡くなったときに担保不動産を売却して返済するか、現金で一括返済するかを選べます。 リ・バース60については、以下の記事で詳しく説明しています。 関連記事はこちらリ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 まとめ 自宅の建て替えを行えば、理想の住まいで老後を豊かに過ごせるかもしれません。ただし、建て替えにはまとまった資金がかかるため、老後の生活費に影響が出る恐れもあります。 建て替えを行う場合はしっかりとした資金計画を立て、必要に応じてローンの利用を検討しましょう。 商品選びに困った方はこちら リ・バース60の商品詳細はこちら お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 老後生活への準備として住み替えやリフォームをする場合、まとまった資金が必要になります。しかし、高齢になると、一般的な住宅ローンやリフォームローンの審査に通りにくくなります。 このような時に活...記事を読む