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  • 筆界特定制度とは?活用できる場面や申請の流れ、費用を解説

    筆界特定制度とは?活用できる場面や申請の流れ、費用を解説

    筆界特定制度は、法務省が管轄する制度の一つです。本制度が定められるまで、土地の境界に関する紛争が起きた際、従来は裁判で解決するしかありませんでした。しかし、「筆界特定制度」を利用することで、裁判をしなくても問題を解決できる可能性があります。 この記事では、筆界特定制度の概要や活用できる場面、申請の流れなどを解説します。 筆界特定制度とは 筆界特定制度とは 、土地所有者の申請に基づいて、現地における土地の筆界の位置を特定する制度です。外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、筆界特定登記官が筆界についての判断を迅速に示せます。 筆界特定制度は裁判手続きによることなく、筆界をめぐる紛争の予防、早期の解決のために制定されました。また、当事者にとっても、臨時に対する訴えをすることなく、行政に職権で必要な調査を行ってもらえます。 筆界・所有権界・境界の違い 筆界特定制度への理解を深めるために、用語の意味を整理しておきましょう。 筆界:土地が登記されたときにその土地の範囲を区画するものとして定められた線 所有権界:土地所有者の権利が及ぶ範囲を画する線 境界:筆界または所有権界と同じ意味で用いられる言葉 ・筆界と所有権界 出典)政府広報オンライン「土地の境界トラブルを裁判なしで解決を図る「筆界特定制度」」 筆界は、土地の所有者同士の合意によって変更することができません。一方で、所有権界は自由に移動させることができます。通常、筆界と所有権界は一致しますが、「土地の一部を売買・贈与した」「時効によって所有権を取得した」などの理由で一致しないことがあります。 筆界特定が必要になる場面 筆界特定は、以下のような場面で必要になります。 土地の境界で隣人と揉めたとき 筆界がはっきりわからないとき 例えば、隣人との間で土地の境界の認識が異なり「ブロック塀が越境している」と言われて揉めてしまう場合などが考えられます。また、土地を売却する際、売主はその土地の筆界を明示しなくてはなりません。そのため、売却を検討している土地の筆界がわからない場合にも、筆界特定が必要です。 筆界特定制度のメリット 裁判は判断が示されるまでに約2年かかるのに対し、筆界特定制度を利用すれば、半年~1年と短い期間で判断が示されます。ただし、問題の内容が複雑な場合は、判断までに長期間を要する場合もあります。 公的機関が専門家の意見を踏まえて判断するため、証拠価値が高いのもメリットです。また、相手が話し合いに応じてくれなくても、一方の土地所有者だけで申請でき、裁判なしで土地の筆界を明らかにすることができます。 筆界特定制度の利用の流れ 筆界特定制度を利用する場合、全体の流れは以下のとおりです。 法務局へ筆界特定を申請 法務局の筆界特定登記官による審査 筆界調査委員による調査 筆界調査委員による意見の提出 筆界特定登記官による筆界特定 筆界調査委員は、土地家屋調査士や弁護士などの専門家から任命されます。周辺の実地調査や測量などを行い、筆界に関する意見を筆界特定登記官へ提出します。 申請人や関係人は、筆界特定の前に筆界特定登記官に対して意見や資料提出が可能です。また、筆界調査委員の実地調査に立ち会う機会も付与されます。 筆界特定制度の申請却下事由 筆界特定を法務局に申請するにあたり、「申請が却下されたらどうしよう」と不安になる人もいるかもしれません。却下事由は不動産登記法第132条にて明記されており、大まかに要約すると以下の内容です。 筆界特定を行う土地が申請した法務局の管轄外であった 申請者が筆界特定を申請する権限を持たないものであった 申請情報(申請者に関する情報、筆界特定の目的など)の記載に不備があった 申請した土地の境界が既に筆界特定もしくは民事訴訟によって確定されていた 手数料等の納付が行われなかった 出典)e-Gov法令検索「不動産登記法」 もし申請に不備があった場合でも、不備が補正可能なものであれば一定の期間内に補正を行うことで、再申請が可能です。 申請が却下された件数 参考までに、実際に申請が却下された件数についての統計データを見てみましょう。法務局が公表している統計によると、各年の処理がなされた申請のうち、却下された申請の割合は以下のとおりです。 ・却下された申請の割合 出典)e-Stat(法務局及び地方法務局管内別 筆界特定事件の受理,既済及び未済件数 ) この結果から、却下された割合は減少傾向にあり、割合としては100人に1人未満と、かなり少ないことが分かります。全体の件数でいうと、処理がなされた申請の年平均件数が約2,483件に対し、却下された件数が約63件です。 却下されている件数も少なく、万が一却下されても基本的には再申請が可能なので、安心して手続きを進めましょう。 筆界特定制度の利用にかかる費用 筆界特定制度を利用する際は、土地の価格に応じて「申請手数料」がかかります。 ・筆界特定申請手数料の一覧 出典)政府広報オンライン「土地の境界トラブルを裁判なしで解決を図る「筆界特定制度」」 土地の合計価格は、固定資産課税台帳に登録された土地の価格に基づいて算出します。例えば、対象土地(2筆)の合計価格が5,000万円の場合、申請手数料は9,600円です。 また、現地調査で測量が必要な場合は、申請手数料とは別に測量費用を負担する必要があります。測量費用は一律ではなく、個別の事案によって変わってきますが、数十万円程度が目安です。 筆界特定制度を利用しても解決できない場合 筆界特定制度の利用によって筆界が明らかになっても、所有権界をめぐる境界トラブルを解決できない場合があります。例えば、所有者でない人が土地の一部を長年利用し、時効によって所有権を取得している場合は、筆界と所有権界が一致しません。 筆界と所有権界が異なる土地について、所有権の範囲を明らかにするには「土地家屋調査士会ADR(境界問題相談センター)」を利用すると良いでしょう。 ・筆界特定制度と土地家屋調査士会ADRの比較 出典)政府広報オンライン「土地の境界トラブルを裁判なしで解決を図る「筆界特定制度」」 土地家屋調査士会ADRは、各地の土地家屋調査士会が運営している制度です。土地家屋調査士と弁護士が調停人として、当事者間の話し合いをサポートしてくれます。裁判のような強制力はありませんが、和解契約書の履行という法的効力が付与されます。状況に応じて、最寄りの土地家屋調査士会ADRに相談してみましょう。 >詳細はこちら まとめ 土地の境界をめぐって隣人と揉めてしまった場合、筆界特定制度を利用すれば裁判なしで問題を解決できる可能性があります。境界トラブルで困ったら、最寄りの法務局・地方法務局に相談してみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産登記とは?概要や手続きの流れ、必要書類、費用を徹底解説 不動産の売買や相続、住所変更などがあった場合は、不動産登記の手続きが必要です。しかし、「不動産登記」という言葉を聞いたことはあっても、詳細までは理解していないかもしれません。不動産登記の手続...記事を読む

    2023.09.06制度
  • 債務整理とは

    債務整理とは?メリット・デメリットを解説

    債務整理は、借金の悩みを解決する方法のひとつです。住宅ローンやキャッシング等の返済が難しい場合は、債務整理を行うことによって生活を立て直せる可能性があります。この記事では、債務整理の概要や4種類の方法、それぞれのメリット・デメリットを解説します。 債務整理とは 債務整理とは、借金の元本の減額や免除、利息のカットなどにより借金問題を解決する手続きです。具体的には、以下4種類の方法があります。 ①自己破産 ②任意整理 ③個人再生手続(個人版民事再生) ④特定調停 それぞれの方法の仕組みと特長については、後ほど詳しく説明します。 共通のメリット 債務整理のメリットは、毎月の返済が減ったり、なくなったりする可能性があることです。借金の返済負担が軽減されるため、金銭的な余裕が生まれます。精神的にも楽になるでしょう。 また、専門家を通じて債権者に「受任通知」を送付することにより、一時的に督促や取り立てがなくなります。ただし、訴訟や強制執行といった裁判上の請求は止められません。 共通のデメリット 債務整理を行うと、借金の減額や免除を受けた事実が信用情報機関に登録されてしまいます。一定期間は、「住宅や車のローンを組む」「クレジットカードを新規作成する」などが難しくなります。 債務整理の種類ごとの特長 債務整理は、種類によって特長や向いている人が異なります。それぞれの仕組みを理解して、自分に合った方法を選択することが大切です。 ①自己破産 自己破産とは、裁判所を通じて借金の支払いを免責してもらう方法です。裁判所へ申し立て、免責が認められれば、借金が帳消し(ゼロ)になります。 ただし、持ち家や車などの財産は手放さなくてはなりません。また、借金の原因がギャンブルや投資行為の場合は、免責が認められないこともあります。そのため自己破産は、「借金を返済できる見込みがない人」に向いています。 ②任意整理 任意整理とは、債務者から依頼された弁護士や司法書士が、金融機関と長期の分割返済や利息のカットなどの交渉を行う方法です。交渉がうまく進めば、毎月の返済負担が軽減されます。また、裁判所を通さないため、手続きが比較的簡単です。 一方で、金融機関との任意の話し合いで返済計画を決めるため、交渉が成立するとは限りません。金融機関側が話し合いに応じなかった場合の強制力がないため、交渉が成立しなかった場合には他の手段を検討する必要が生じます。そのため任意整理は、「給与などの継続収入がある人」「借入金額が比較的少額の人」に向いています。 ③個人再生手続 個人再生手続とは、裁判所が認可した再生計画に基づいて借金を返済する方法です。債務者は、弁護士や司法書士を通じて裁判所へ申し立てを行い、再生計画案を提出します。住宅ローン特別条項により、自宅を失うことなく借金を整理できます。 住宅ローン特別条項とは、個人再生手続きを行う際に住宅ローンを今までどおり払い続けることで、自宅の処分を避けられる制度です。ただし、他の方法に比べると適用条件が厳しく、手続きに時間と費用がかかります。 そのため個人再生手続は、「住宅ローンのある自宅を失いたくない人」「継続収入がある人」「借金をしている金融機関の数や借入金額が多い人」に向いています。 ④特定調停 特定調停とは、裁判所が債務者と金融機関(債権者)の間に入り、利害関係を調整・仲介する方法です。裁判所に選任された調停委員が仲介を行います。弁護士や司法書士には依頼しないため、費用が安く済むのがメリットです。 一方で、返済計画には強制力があり、返済が遅れると直ちに給与などが差し押さえられます。そのため特定調停は、「借金をしている金融機関の数が少ない人」に向いています。 債務整理の種類別比較表 自己破産 任意整理 個人再生手続 特定調停 借金の減額効果 ゼロになる 減る 大幅に減る 減る 裁判所の関与 あり なし あり あり 期間 2ヵ月~半年程度 2~4ヵ月 1年程度 1~2ヵ月 費用の目安 30~60万円程度 1社2万5千円程度 30~60万円程度 数千円程度 自宅を残せるか 残せない 残せる場合もある 残せる 残せる場合もある 任意整理と特定調停は、住宅ローンを組んでいる金融機関を対象から外すことで自宅を残すことが可能です。ただし、借金のほとんどが住宅ローンの場合、返済負担の軽減効果は期待できないでしょう。 出典) ・政府広報オンライン「キャッシングやローン返済でお困りの方へ 借金問題は解決できます。まずは相談を!」 ・金融庁「債務整理4類型」 債務整理はどこに相談すればいい? 借金問題を解決するために、債務整理を検討する場合の相談先は以下のとおりです。 日本司法支援センター(法テラス) 日本弁護士連合会 日本司法書士会連合会 日本貸金業協会 日本クレジットカウンセリング協会 全国銀行協会 誰に相談したらよいかわからない場合は、上記の相談窓口に連絡してみましょう。 貸付自粛制度の検討も 貸付自粛制度とは、「借金をやめたいのにやめられない」という悩みを抱えている人を支援する制度です。「日本貸金業協会」または「全国銀行個人信用情報センター」のどちらかへ申告をすると、金融機関からの借り入れを5年間制限できます。 浪費癖やギャンブル依存などによる「お金の借り過ぎ」や「多重債務」の防止に有効です。貸付自粛制度については、以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事はこちら貸付自粛制度とは?メリット・デメリット、手続き方法を解説 まとめ 借金を返済できずに悩んでいる場合、債務整理の手続きをすれば、生活を立て直せるかもしれません。債務整理は4つの方法があり、それぞれ特長が異なります。自身の状況に応じて最適な方法を選択しましょう。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 倒産や破産、特別清算の違いとは?根拠法や用語の意味を解説 会社の経営が立ち行かなくなると、廃業を検討することもあるでしょう。「倒産」「破産」「特別清算」はいずれも廃業に関する用語ですが、廃業時に適切な方法を選択するためにも、用語の意味や違いを理解し...記事を読む

    2023.08.23制度
  • 地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を知ってリスクに備えよう

    地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説

    日本は「地震大国」と言われており、過去には巨大地震が発生して住宅が倒壊するなどの被害が生じています。地震による建物や家財の被害に備えるには、地震保険を付帯するのが有効です。万が一被害にあった場合は、保険金が生活再建の助けとなります。 この記事では、地震保険の仕組みや火災保険との違い、補償内容について解説します。 地震保険とは 地震保険とは、地震や噴火、それらによる津波を原因とする住宅や家財の損害を補償するための保険です。「地震保険に関する法律」に基づき、政府と民間の保険会社が共同で運営しています。 大地震が起こった場合は多額の保険金が発生し、民間の保険会社だけで引き受けるのは困難となります。そのため、政府が再保険を引き受けることにより、大地震の際は政府も保険金支払いを分担する仕組みになっています。なお、再保険とは、保険会社が再保険料を支払い、保険金の支払い責任の一部を他に転嫁する仕組みです。 地震保険の加入方法 地震保険は単独では契約できないため、火災保険と一緒に加入します。また、地震保険は火災保険に原則自動付帯となっています。 しかし、火災保険加入時に地震保険を付帯しているか覚えていない場合は、念のため契約内容を確認しておくといいでしょう。火災保険のみに加入している場合は、途中から地震保険を加えることも可能です。 地震保険と火災保険との違い 地震保険と火災保険には、以下のような違いがあります。 ①補償内容 火災保険は、火災や自然災害などで損害を受けた建物や家財を補償する保険です。一方で、地震保険は、地震や噴火、これらによる津波を原因とする火災や損壊、埋没、流失などの損害を補償しています。この補償内容の違いが、火災保険と地震保険の大きな違いです。 ②保険料 火災保険の保険料は、保険会社が自由に設定できるため、保険会社によって異なります。それに対して地震保険は、前述のとおり政府と民間の保険会社が共同で運営しているため、保険料の設定方法が統一されています。(地震保険の保険料についてはこの後詳しく解説します。)つまり、地震保険は火災保険と異なり、保険会社ごとに比較検討する必要がありません。 ③所得控除の対象かどうか 火災保険は所得控除の対象外ですが、地震保険は対象内です。(地震保険の所得控除についてはこの後詳しく解説します。)火災保険も過去に所得控除の対象でしたが、平成18年の税制改正によって平成19年分から廃止されました。 地震保険の対象とは 地震保険は、以下のような場合に支払い対象となります。 地震による火災で家が焼失した 地震により家が倒壊した 津波により家が流失した 地震による地盤沈下で家が傾いた 以下のような場合は、保険金支払いの対象外となります。 地震発生日から10日以上経過した後に生じた損害 地震等の際に生じた紛失・盗難の損害 故意や重大な過失、法令違反による損害 戦争、内乱などによる損害 地震保険で支払われる保険金 地震保険で支払われる保険金は、建物や家財の損害状況によって変わります。損害の程度を「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4つに区分し、その区分に応じて保険金が決まる仕組みです。損害の程度は保険会社が判断します。 出典)政府広報オンライン「被災後の生活再建を助けるために。もしものときの備え「地震保険」を。」 地震保険の契約金額(保険会社が支払う保険金の限度額をいいます。)は、火災保険の30~50%の範囲内で自由に決められます。ただし、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限です。 地震保険の保険料 地震保険の保険料は、保険対象の建物の構造や所在地によって決められています。地震の発生確率は地域によって差があり、人口分布や建物の強度により被害の程度も異なるためです。 表:契約金額1,000万円あたりの年間保険料(割引適用なし)の例 出典)政府広報オンライン「被災後の生活再建を助けるために。もしものときの備え「地震保険」を。」 北海道と東京都を比較すると、建物が同じイ構造(主として鉄筋、コンクリート造り)であっても、年間保険料は東京都のほうが約3.7倍高くなります。また、同じ東京都でも、ロ構造(主として木造)はイ構造より約1.5倍高くなっています。 保険期間ごとの保険料 地震保険の保険期間は短期契約(1年未満)、1年契約および長期契約(2~5年)があります。長期契約の保険料は、前述の年間保険料に対して以下の長期係数を乗じて算出する仕組みです。 期間 係数 2年 1.90 3年 2.85 4年 3.75 5年 4.70 出典)財務省「地震保険制度の概要」 仮に1年間の保険料が1万円の場合、保険期間5年の一括払いであれば、計算式は「1万円×4.70」となり、4万7,000円が契約金額となります。係数は期間に応じて割り引かれていくので、長期契約にしたほうがお得になる設計になっています。 保険料の割引制度 地震保険には、建物の免震、耐震性能に応じた保険料の割引制度があります。詳細は以下のとおりです。 出典)政府広報オンライン「被災後の生活再建を助けるために。もしものときの備え「地震保険」を。」 保険対象となる住宅が上記割引制度の要件を満たしていれば、保険料の負担軽減が期待できます。ただし、割引制度の適用を受けるには、所定の確認資料を提出する必要があります。また、各割引制度の重複適用は認められません。 地震保険料は所得控除の対象となる 支払った地震保険料のうち、一定額は「地震保険料控除」として所得から控除できるため、所得税や住民税の負担が軽減されます。控除額は以下のとおりです。 年間支払保険料の合計 控除額 所得税 5万円以下 支払金額の全額 5万円超 一律5万円 住民税 5万円以下 支払金額×1/2 5万円超 一律2万5,000円 所得税は最高5万円、住民税は最高2万5,000円が所得から控除されます。勤務先の年末調整または確定申告で控除を受けることが可能です。 地震保険はいらない? 地震保険の加入を検討する際に、「地震保険は必要ない」という意見を見かけた人もいるのではないでしょうか。その理由は、「保険料に対して被災後に受け取る保険金が小さい」と言われるためです。 確かに、地震保険の契約金額は火災保険の30~50%の範囲内であるため、損害の程度が全損壊であったとしても、同じ家を建て替えるだけの保険金が支払われることはほとんどありません。 加えて、損害の程度が低ければ支払われる保険金も小さくなるので、「保険料を払った割にあまり保険金を受け取れなかった」となる恐れもあります。以上の理由から「地震保険は必要ない」という意見が間違っているとは言い切れません。 結局のところ、地震保険が必要かどうかは、自分が地震によって大きな被害を受けるリスクをどう捉えるか次第です。どちらを選択するとしても、判断は慎重に行いましょう。 Appendix:少額短期保険に加入する選択肢 地震保険に関連して、「地震による損害を支払い対象とした少額短期保険」を紹介します。この少額短期保険は、本記事で解説した「地震保険」とは別の商品として扱われ、火災保険と一緒に加入する等の制約がありません。 少額短期保険は、地震保険とより保険金の限度額が少なくなるものの、支払う保険料も少なく済みます。「保険料を抑えたいが、何も保険がないのも不安だ」という人は、地震保険には加入せず、少額短期保険に加入するのも選択肢のひとつです。 また、少額短期保険は地震保険と併用も可能です。そうすることで、地震保険の保険金をある程度補うことが期待できます。「備えが地震保険だけでは不十分だ」という人は、併用を検討してもいいでしょう。 ただし、支払った少額短期保険の保険料は所得税の控除対象外です。地震保険と違って税制面でのメリットは享受できないので、注意しましょう。 まとめ 火災保険のみでは、地震による火災や地盤沈下で建物や家財に被害が出た場合に補償の対象外となってしまいます。日本は地震が多く、過去には巨大地震も発生しています。マイホームなどの不動産を購入する際は、火災保険に地震保険を付帯しておき、あらかじめリスクに備えておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む

    2023.07.05制度
  • 低炭素住宅とは?認定基準、メリット・デメリットを解説

    低炭素住宅とは?認定基準、メリット・デメリットを解説

    環境問題への意識の高まりから、マイホームの建築・購入の際に「低炭素住宅」を選ぶ人が増えています。環境にやさしい住宅であり、税制優遇を受けることもできますが、認定を受ける際の注意点もあります。低炭素住宅の取得を検討する場合には、事前に特徴を理解しておくことが大切です。 この記事では、低炭素住宅の認定基準やメリット・デメリット、認定手続きの流れを解説します。 低炭素住宅とは 低炭素住宅とは、二酸化炭素(CO2)の排出量を抑制する仕組みのある住宅です。一般的な住宅に比べて、地球温暖化の原因となるCO2の排出を抑えられるため、環境にやさしい住宅といえます。 社会経済活動に伴い発生するCO2の多くは、都市部で発生しているのが現状です。この状況を改善するため、2012年12月に「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」が施行されました。 本法律に基づき「低炭素建築物認定制度」が創設され、都道府県などの所管行政庁が低炭素住宅の認定を行っています。 低炭素住宅の認定状況 低炭素住宅の認定状況は以下のとおりです。 2019年度 2020年度 2021年度 戸建て住宅 5,189件 5,932件 16,464件 共同住宅等 2,036件 2,168件 4,127件 複合建築物※ 46件 45件 72件 ※1階が事務所、2階以上がマンション(住宅)のように、1つの建物を複数の用途で使用している建築物のこと 2021年度の認定実績は、戸建て住宅が前年比約2.8倍の16,464件、共同住宅等は前年比約1.9倍の4,127件、複合建築物は前年比1.6倍の72件となっています。 2021年度に認定実績が急増したのは、2020年10月に政府がカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)を目指すことを宣言し、低炭素住宅の普及を推進していることや、2021年度辺りから燃料不足等による電力不足が話題になったことなどが理由だと考えられます。 低炭素住宅の認定基準 低炭素住宅の認定基準は以下のとおりです。 省エネ法の省エネ基準に比べ、一次エネルギー消費量が-(マイナス)20%以上になること 再生可能エネルギー利用設備が設けられていること 省エネ効果による削減量と再生可能エネルギー利用設備で得られるエネルギー量の合計値が、基準一次エネルギー消費量の50%以上であること(戸建住宅のみ) その他の低炭素化に資する措置(選択項目)が講じられていること 上記4の選択項目については、次のいずれかの措置を講じる必要があります。 貯水対策(節水型機器の採用など) エネルギーマネジメント(HEMSの導入など) ヒートアイランド対策(敷地や屋上の緑化など) 建築物(躯体)の低炭素化(住宅の劣化軽減措置など) V2H充放電設備の設置 HEMS(ヘムス)とは、「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」の略です。エネルギー使用量を見える化し、無駄なく使うためのシステムを意味します。 V2H充放電設備とは、住宅から電気自動車等への充電、および電気自動車等から住宅への給電ができる装置のことです。 低炭素住宅のメリット 低炭素住宅には次のようなメリットがあります。 住宅ローン控除が利用できる 住宅ローン控除は、「住宅ローンの年末残高×0.7%」を所得税等から控除する制度です。住宅の省エネ性能によって、住宅ローン控除が適用される借入限度額が異なります。2023年6月時点での、低炭素住宅の借入限度額は5,000万円で、一般住宅(3,000万円)よりも2,000万円上乗せされます。 なお、2024年以降、一般住宅は住宅ローン控除の対象外となりますが、低炭素住宅は引き続き控除を受けることが可能です(借入限度額は4,500万円に変更)。 関連記事はこちら【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 登録免許税の優遇措置がある 低炭素住宅は、所有権登記にかかる登録免許税も軽減されます。そもそも住宅にかかる登録免許税は、個人の住宅の用に供される床面積50㎡以上の家屋に対して、軽減税率が適用されています。低炭素住宅であれば、それよりもさらに低い税率が適用されます。なお、この制度は2024年3月31日までなので、注意が必要です。 登記の種類 本則税率 軽減税率(一般住宅) 軽減税率(低炭素住宅) 所有権保存登記 0.4% 0.15% 0.1% 所有権移転登記 2.0% 0.3% 0.1% 容積率が緩和される 容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合です。低炭素住宅では、低炭素化に必要な設備にかかる床面積の容積率が緩和されます(延べ床面積の20分の1が限度)。敷地面積が同じ場合、一般住宅よりも広い家を建てることが可能です。 補助金の対象となる可能性がある 低炭素住宅は、国土交通省の「地域型住宅グリーン化事業」の補助金がもらえる可能性があります。 地域型住宅グリーン化事業とは、地域材を用いた省エネ性能等に優れた木造住宅への支援制度です。低炭素住宅であることに加えて、主要構造部が木造である、などの追加要件を満たすことが条件となります。令和5年度(2023年度)の補助限度額は140万円/戸となっています。 補助金の対象となるかは、事前にハウスメーカーや工務店に確認するといいでしょう。 出典)令和5年度地域型住宅グリーン化事業 グループ募集の開始について フラット35の金利が下がる 住宅金融支援機構のフラット35では、省エネ性能を備えた住宅を取得する際に金利優遇を受けられます。 低炭素住宅は「フラット35S」の金利Aプランに該当し、当初10年間は通常より0.25%低い金利が適用されるため、住宅ローンの返済負担の軽減が期待できます。 低炭素住宅のデメリットと注意点 低炭素住宅には次のようなデメリットがあります。 建築コストが高くなる 低炭素住宅は、認定基準を満たすための省エネ設備を導入する必要があるため、その分の費用が一般住宅よりもかかってしまいます。税制優遇や住宅ローン金利の引き下げ、補助金により、どの程度コストを吸収できるかを試算しておくことが大切です。 対応エリアが限られる 低炭素住宅は、原則として市街化区域内に建築される住宅が対象です。建築予定の土地が市街化区域内であるかを、自治体が公表している都市計画図などから確認しておきましょう。 関連記事はこちら市街化区域とは?市街化調整区域との違いを解説 低炭素住宅の認定手続きの流れ 低炭素住宅の認定手続きの流れは以下のとおりです。 審査機関に事前の技術的審査を依頼する 審査期間から適合証が発行される 所管行政庁に認定申請書を提出する(適合証を添付) 所管行政庁より認定証が交付される ただし、着工後の建築物は認定を受けられません。低炭素住宅を検討する場合は、ハウスメーカーや工務店に申請のサポートを受けられるかを確認しておきましょう。 まとめ 低炭素住宅は断熱性に優れており、1年中快適な環境で生活できるのが特徴です。税制優遇や住宅ローン金利の引き下げ、光熱費の削減など金銭面のメリットも期待できます。ただし、設備導入に費用がかかる点は注意が必要です。メリットとデメリットを比較したうえで、低炭素住宅の取得を検討してみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 長期優良住宅とは?認定制度の概要やメリット・デメリットを解説 住宅を購入しようとするときに、「長期優良住宅」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。長期優良住宅であることで、税制優遇措置や住宅ローンの金利引き下げなどのメリットがあるため、これ...記事を読む

    2023.06.28制度
  • 【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説

    【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説

    住宅ローン控除(住宅ローン減税ともいいます)とは、住宅ローンを利用して住宅の新築、取得又は増改築等をした場合に利用できる、所得税額等を控除する制度です。住宅ローン控除を利用する場合、自身の状況に合わせてどういった条件でどのような控除が受けられるかを把握しておくことが大切です。この記事では住宅ローン控除を、取得した住宅の状況に分けて解説します。 住宅ローン控除の4つの区分 住宅ローン控除は令和4年以降に居住の用に供した場合において、全部で11つの区分に分けられます。その中でも住宅の取得に関する以下4つの区分について解説します。 ①新築住宅を取得した場合 ②買取再販住宅を取得した場合 ③中古住宅を取得した場合 ④要耐震改修住宅を取得した場合 区分ごとに控除額や利用条件が異なる部分もあるため、ご自身の状況に合った区分の住宅ローン控除について、適切に理解しておくことが大切です。 出典)国税庁「令和4年分確定申告特集 住宅ローン控除を受ける方へ」 4つの区分に共通する利用条件 4つの区分に共通する住宅ローン控除の利用条件は、以下のとおりです。 1.住宅の取得日から6か月以内に入居していること 住宅ローン控除を利用するには、住宅を取得してから6か月以内に入居している必要があります。加えて、控除を受ける年の12月31日時点に、その住宅で居住している必要があります。住宅購入から引っ越しまでの期間が空いてしまう場合は、注意しましょう。 2.床面積が40平方メートル以上であり、その半分以上が居住用であること 住宅ローン控除を利用するためには、住宅の床面積が40平方メートル以上であり、かつその半分以上が居住用であることが必要です。そのため、住宅ローン控除を利用したい場合は、新居を探す段階で気を付けておく必要があります。なお、この床面積は登記簿に表示されている床面積により判断されます。購入前にあらかじめ不動産業者に確認しておくとよいでしょう。 3.控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること 住宅ローン控除を利用するには、自身の合計所得金額が2,000万円以下でなければなりません。ただし、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、合計所得金額の条件が1,000万円未満となるので、注意が必要です。住宅の床面積を確認したうえで、直近の源泉徴収票などで合計所得金額を確認しておきましょう。 出典)国税庁「専門用語集 合計所得金額」 4.住宅ローンの返済期間が10年以上であること 住宅ローン控除を利用するには、10年以上にわたり分割して返済する方法になっている、新築または取得のための一定の借入金または債務が必要です。ただし、勤務先からの無利子または0.2%(平成28年12月31日以前に取得した場合は1.0%)に満たない借入や、親族や知人からの借入は対象外です。 出典)国税庁「No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」 5.居住用として利用する住宅であること 2つ以上の住宅を保有している場合、主に居住用として利用する住宅である必要があります。例えば別荘として住宅を購入した場合だと、住宅ローン控除を利用することはできません。 6.譲渡所得の課税特例の適用がないこと 居住年および前2年以内に譲渡所得の課税の特例を受けていないことが条件です。また、居住年の後3年以内に、居住している住宅(住宅の敷地含む)以外の一定の資産を譲渡した場合も、譲渡所得の課税の特例を受けていないことが条件になります。 出典)国税庁「No.3223 譲渡所得の特別控除の種類」 7.贈与等による住宅取得ではないこと 住宅の取得時および取得後も引き続き生計を一にする者からの住宅取得でないことも条件です。また、贈与による住宅取得も対象外となります。 ①新築住宅を取得した場合 まずは、令和4年以降に新築住宅を居住の用に供した場合について解説します。 控除の内容 令和4年以降に新築住宅を居住の用に供した場合、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。ただし、計算に用いる住宅ローン残高には上限が設けられており、取得した住宅の環境等によって以下のように異なります。 住宅の環境性能 入居した年 令和4年・令和5年 令和6年・令和7年 認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅) 5,000万円 4,500万円 ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円 省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円 その他の一般新築住宅 3,000万円 2,000万円 例えば令和5年に認定住宅を取得した場合だと、1年間の最大控除額は35万円となります。 基本的に控除期間は13年間ですが、その他の一般新築住宅で入居した年が令和6年もしくは令和7年の場合のみ、10年間となります。 利用条件 新築住宅を取得した場合の利用条件については、前述の共通する利用条件のとおりです。 出典)国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合」 ②買取再販住宅を取得した場合 次に、令和4年以降に買取再販住宅を居住の用に供した場合について解説します。 控除の内容 令和4年以降に買取再販住宅を居住の用に供した場合も、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。計算に用いる住宅ローン残高の上限や、控除期間についても、新築住宅を取得した場合と同様です。 利用条件 利用条件については、前述の共通する利用条件に加えて、住宅が買取再販住宅に該当していることが必要となります。買取再販住宅とは、以下の条件を満たす住宅のことをいいます。 宅地建物取引業者が適切な特定増改築等をした住宅であること 宅地建物取引業者の既存住宅取得日から2年以内に取引された住宅であること 取引時点において、その住宅が新築された日から10年が経過していること 買取再販住宅と認定されるためには、宅地建物取引業者が定められた適切な特定増改築等を行っている必要があります。買取再販住宅に当てはまるかどうかを自分で判断するのは難しいので、事業者側に確認してもらうことが大切です。 出典)国税庁「No.1211-2 買取再販住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」 ③中古住宅を取得した場合 続いて、令和4年以降に中古住宅を居住の用に供した場合について解説します。 控除の内容 令和4年以降に中古住宅を居住の用に供した場合も、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。ただし、計算に用いる住宅ローン残高には上限が設けられており、前述の新築住宅および買取再販住宅を取得した場合と上限金額が異なります。 住宅の環境性能 入居した年 令和4年・令和5年 令和6年・令和7年 認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅) 3,000万円 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 その他の一般新築住宅 2,000万円 例えば令和5年に認定住宅を取得した場合だと、1年間の最大控除額は21万円となります。 中古住宅を取得した場合の控除期間は10年間です。新築住宅や買取再販住宅を取得した場合と比較して、上限金額も低く、控除期間も短くなります。 利用条件 利用条件については、前述の共通する利用条件に加えて、住宅が中古住宅に該当していることが必要となります。中古住宅とは、新築住宅や買取再販住宅に該当しない住宅のうち、新耐震基準に適合している住宅をいいます。 出典)国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」 ④要耐震改修住宅を取得した場合 最後に、令和4年以降に要耐震改修住宅を居住の用に供した場合について解説します。 控除の内容 令和4年以降に要耐震改修住宅を居住の用に供した場合も、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。ただし、計算に用いる住宅ローン残高には、入居した年にかかわらず、一律で2,000万円の上限が設けられています。また、控除期間については中古住宅と同様に10年間です。 利用条件 利用条件については、前述の共通する利用条件に加えて、住宅が要耐震改修住宅に該当していることが必要となります。ここでいう要耐震改修住宅とは、新築住宅や買取再販住宅、中古住宅のいずれにも該当しない住宅のうち、建築後に一度は使用されたことのある住宅をいいます。 なお、要耐震改修住宅の取得にあたり、取得日以降に新耐震基準に適合するための耐震改修を行うことを、取得日までに申請している必要があります。加えて、実際に入居する日までに耐震改修を行うことで新耐震基準に適合することとなったことが「耐震基準適合証明書」などによって証明されていることが必要となります。 耐震工事は取得日以降に行うことになるため、取得日から実際に耐震改修が終わって入居するまでにある程度の期間を要します。取得から入居までの期間が6か月を超えると住宅ローン控除が利用できなくなってしまうので、十分注意しましょう。 出典)国税庁「No.1211-5 要耐震改修住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」 まとめ 取得する住宅の条件によって、住宅ローン控除の控除額が変わってきます。住宅ローン控除を利用する場合は、取得する住宅の条件を確認し、今回紹介した4つの区分のどれが適用されるのかを把握しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅購入時の優遇制度を解説 住宅を購入するときは、「住宅ローン控除」をはじめとしたさまざまな優遇制度が用意されています。一方で、どのような優遇制度があるのか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。 この記事では、住...記事を読む

    2023.05.24制度税金
  • 空き家税とは?制度内容や導入される目的、対策を解説

    空き家税とは?制度内容や導入される目的、対策を解説

    京都市において、全国初の「空き家税」が2026年度に導入される見通しとなりました。空き家税は、利用されていない空き家や別荘などに課税する新たな税の仕組みです。京都市では、なぜ空き家税が創設されるのでしょうか。 この記事では、空き家税の制度内容や導入される目的、課税への対策について解説します。 空き家税とは 空き家税とは、正式名称ではなく、京都市が創設する「非居住住宅利活用促進税」のことを指します。京都市では、令和2年(2020年)8月に有識者や市民公募委員などで構成される検討委員会を設置し、空き家や別荘所有者への適正な負担のあり方について議論を重ねていました。 その後、令和4年(2022年)3月に「京都市非居住住宅利活用促進税条例」が成立しました。令和5年(2023年)3月24日には総務大臣が空き家税の創設に同意したことで、令和8年度(2026年度)以降に全国初の空き家税が導入される見通しとなっています。 京都市が空き家税を導入する目的 検討委員会の答申によると、空き家税を創設する目的は以下の2つです。 (1)住宅供給の促進や居住の促進、空き家の発生の抑制といった政策目的の達成 (2)現在及び将来の社会的費用の低減を図り、その経費に係る財源を確保すること 出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」 京都市の見解では、空き家や別荘、セカンドハウスなどの「非居住住宅(※)」の存在が、京都市への移住希望者や住宅供給を妨げ、防災や防犯、生活環境に関する問題の発生や地域コミュニティの活力低下の原因の1つにもなっているとされています。 ※その所在地に住所(住民票の有無にかかわらず、居住実態の有無によって生活の本拠が判断される。)を有する者がない住宅のこと。 空き家の所有者に課税することによって、非居住住宅の有効活用を促す狙いがあります。また、空き家税の税収により、住宅供給の促進や安全な生活環境の確保といった施策にかかる費用の低減を図る方針です。 空き家税の制度概要 ここでは、京都市の空き家税の制度概要を確認していきましょう。 納税義務者 空き家税は、京都市内の市街化区域内に所在する非居住住宅が課税対象です。 非居住住宅の所有者が納税義務者となり、「家屋価値割額」および「立地床面積割額」の合算額を負担します(詳細は後述)。 課税免除 次の非居住住宅については、空き家税が免除されます。 ①事業の用に供しているもの又は1年以内に事業の用に供することを予定しているもの ②賃貸又は売却を予定しているもの※(事業用を除く) ③固定資産税において非課税又は課税免除とされているもの ④景観重要建造物その他歴史的な価値を有する建築物として別に定めるもの等 ※ただし、1年を経過しても契約に至らなかったものは除く。 出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」 課税額と税率 空き家税は「①家屋価値割」と「②立地床面積割」の2つがあります。それぞれの税額を計算し、足し合わせたものが空き家税の課税額となります。計算方法は以下のとおりです。 出典)京都新聞「京都市検討の別荘税「空き家」も幅広く対象に 課税額は物件価値で3段階か」 なお、②立地床面積割の税率は、固定資産評価額(土地)によって以下のとおり変動します。 固定資産評価額(土地)税率 立地床面積割700万円未満0.15% 700万円以上900万円未満0.30% 900万円以上0.60% 出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」 ただし、家屋価値割の課税標準が20万円(条例施行後の当初5年間は100万円)に満たない非居住住宅は免税となり、課税されません。 空き家税の賦課期日(課税の基準日)は毎年1月1日です。徴収方法は「普通徴収」で、京都市から送付される納税通知書で税額を納めます。 空き家税の対策 京都市に空き家を所有している場合、何もしなければ将来は税負担が増えてしまいます。ここでは、空き家税への対策を2つ紹介します。 売却する 1つ目は、所有している空き家を売却することです。売却して空き家を手放せば納税義務者ではなくなるので、空き家税を課税されることはありません。 また、実際に売却されていなくても、売却を予定している非居住住宅は課税が免除されます(1年を経過しても契約に至らない場合を除く)。将来住む予定がない空き家を放置している場合は、少しでも早く売却活動を始めるといいでしょう。 賃貸に出す もう1つは、所有している空き家を賃貸に出すことです。非居住住宅であっても、賃貸を予定しているものは課税が免除されます(1年を経過しても契約に至らない場合を除く)。入居者が見つかれば、家賃収入を得られるのもメリットです。 ただし、賃貸に出すには、空き家を入居希望者に貸し出せる状態にする必要があります。物件の状態によっては、リフォームの必要があるかもしれません。 また、賃貸借契約や家賃の回収といった管理業務が発生し、入居者がいないと家賃が入ってこない「空室リスク」もあります。立地や間取り、築年数などから、賃貸に適しているかを見極める必要があるでしょう。 関連記事はこちら不動産投資の8つのリスクとその対策 まとめ 京都市が創設する空き家税がうまく機能すれば、今後は他の自治体でも導入されるかもしれません。利用していない空き家を所有している場合は、売却や不動産活用を検討しておいた方がいいかもしれません。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 空き家を相続したらどうするべき?対処方法や税制特例について解説 相続で取得した実家に住む予定がない場合、何もしなければ空き家になってしまいます。空き家の状態で放置することには、さまざまなリスクが存在します。 そのため、空き家を相続する予定があるなら、どの...記事を読む

    2023.04.12制度
  • 貸付自粛制度とは?仕組みやメリット・デメリット、手続き方法を解説

    貸付自粛制度とは?メリット・デメリット、手続き方法を解説

    貸付自粛制度とは、「借金をやめたいのにやめられない」という悩みを抱えている方に向けた支援制度です。本制度を利用することによって、さらに借金が増えるのを防止できる可能性があります。 この記事では、貸付自粛制度の仕組みやメリット・デメリット、手続き方法について解説します。 貸付自粛制度とは 貸付自粛制度とは、「日本貸金業協会」または「全国銀行個人信用情報センター」のどちらかへ申告をすると、金融機関からの借り入れを5年間制限できる制度です。 浪費癖やギャンブル依存などにより、本人や家族の生活に支障が生じる借金を行わないようにサポートすることを目的としています。 自らを「自粛対象者」として登録することで、今後借り入れの申込みをしても金融機関はこれに応じなくなるため、借金に対する抑止力が期待できます。 利用できる人の範囲 貸付自粛制度の利用を申告できるのは、原則として本人のみです。たとえ家族であっても、本人に無断で登録することはできません。ただし、法定代理人や、一定の要件を満たす家族は申告可能です。 貸付自粛制度のメリット 貸付自粛制度のメリットは以下のとおりです。 お金の借り過ぎや多重債務の防止になる 自粛対象者として登録すると、その後本人が借り入れの申込みをしたとしても、金融機関はこれに応じなくなります。そのため、「借金をやめたいが、どうしてもやめられない」といった悩みを抱えている人にとっては、借り過ぎを防ぐ効果が期待できます。 無料で利用できる 貸付自粛制度は登録手数料がかからず、無料で利用できます。費用の心配をせずに登録できるので安心です。ただし、郵送で申告する場合は、申告書控えを送るための返信用切手を自己負担で用意する必要があります。 貸付自粛制度のデメリット 一方で、貸付自粛制度には以下のようなデメリットもあります。 家族の借金をやめさせるのは難しい 貸付自粛制度は、原則として本人が申告を行います。家族が手続きできるのは、本人が所在不明であることが条件です。本人に借金をやめる気持ちがない場合、家族が本制度を利用して借金をやめさせるのは難しいでしょう。 3ヵ月経過すると撤回できてしまう 貸付自粛制度は、登録を依頼した日から3ヵ月経過すると自分で撤回できてしまいます。「借金をしない」という強い意志がないと、登録を撤回して再び借金をしてしまう恐れがあります。 違法な金融業者からであれば借り入れができてしまう 貸付自粛制度は、「日本信用情報機構」「シー・アイ・シー」「全国銀行個人信用情報センター」に加盟している会員(貸金業者・銀行)が対象です。本制度に登録をしても、前述3つのいずれにも加盟していない違法な金融業者からであれば借り入れができてしまいます。 違法な金融業者から借り入れてしまうと、違法な高金利の請求や悪質な取り立てなどの被害にあうリスクが高まるので、絶対に利用しないようにしましょう。 出典)金融庁「違法な金融業者にご注意!」 貸付自粛制度の手続き方法 貸付自粛制度を利用する場合は、日本貸金業協会または全国銀行個人信用情報センターのどちらかへ申告します。全国銀行個人信用情報センターで申告する際の手続きの流れは以下のとおりです。 申告に必要な書類を準備  ・貸付自粛申告書  ・貸付自粛申告確認書(申告理由がギャンブル等による場合)  ・本人確認書類(2点)の写し  ・返信用切手(404円分) 全国銀行個人信用情報センターに郵送 本人確認の連絡(電話) 登録完了(申告書の控えが郵送される) ※日本貸金業協会はWeb申告が可能 ギャンブル等依存症対策のため、申告理由がギャンブル等による場合は「貸付自粛確認書」も作成して同封する必要があります。 また、申告書を送付した後は電話で本人確認が行われます。本人確認ができないと申告書が受理されないので、連絡が来たら必ず対応しましょう。 出典) ・日本貸金業協会「貸付自粛申告」 ・全国銀行協会「貸付自粛制度のご案内」 貸付自粛制度以外の解決策 貸付自粛制度は借り過ぎ防止が期待できる一方で、「申告できるのは原則本人のみ」「3ヵ月経過すると撤回できてしまう」などのデメリットもあります。自身もしくは家族の借金を何とかしたいと思っても、「貸付自粛制度では解決できない」という人もいるでしょう。 ここでは、貸付自粛制度以外の解決策として、自身や家族の借金に関する相談先を3つ紹介します。 依存症対策全国センター 全国の依存症専門相談窓口や依存症専門医療機関を探し、相談できます。借金の原因がギャンブル等依存症の場合、専門家に相談することで改善・解決が期待できるかもしれません。 >詳細はこちら 金融庁 多重債務相談窓口 金融庁が多重債務に関する相談窓口をまとめています。信頼できる相談窓口の中から、自身に合った相談先が見つかるかもしれません。 >詳細はこちら 消費者ホットライン 消費者ホットラインでも借金についての相談が可能です。特に金銭や商品、サービスなどで業者とトラブルになっている場合は消費者ホットラインに相談しましょう。 >詳細はこちら まとめ 借金で自身や家族の生活に支障が生じている場合は、貸付自粛制度によって借り過ぎの防止が期待できます。「借金をやめたくてもやめられない」と悩んでいるなら、貸付自粛制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ コロナ禍が追加!自然災害債務整理ガイドラインとは? コロナ禍による収入減で、住宅ローンの返済に苦しむ人も増えているようです。住宅ローンの返済が厳しくなったときにできることは何があるでしょう? また、2020年12月から「自然災害債務整理ガイド...記事を読む

  • 【2023年版】リフォーム減税はどのような工事が対象?申請の流れ・注意点

    【令和5年版】リフォーム減税の対象工事・申請の流れ・注意点

    自宅のリフォームを行う際、内容によってリフォームの減税制度の対象となる場合があります。リフォームの減税制度にはいくつかの種類があるので、仕組みや条件、それぞれの特徴を正しく理解することが大切です。 この記事では、2022年度の税制改正の内容を踏まえて、現行のリフォームの減税制度の内容について解説します。また、利用するために必要な手続きも併せて見ていきましょう。 リフォームの減税制度とは リフォームの減税制度では、一定の要件を満たすリフォームを行った場合に減税を受けられます。リフォームの減税制度は全部で5種類あり、各減税制度によって対象となるリフォームの内容が異なります。各リフォームの減税制度と、対象となるリフォームの内容は以下のとおりです。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)目次/概要」 前半部分では各リフォームの減税制度について、後半部分では対象となるリフォームの具体的な工事内容について解説します。 1.所得税の控除 所得税を対象としたリフォームの減税制度は、リフォーム促進税制と住宅ローン減税の2種類があります。2つの制度を併用することはできないため、自身の状況を踏まえてどちらかを選択する必要があります。まずはそれぞれの特徴や注意点について解説します。 リフォーム促進税制 リフォーム促進税制とは、特定の性能向上リフォームを行った場合に利用できる減税制度です。後程説明する住宅ローン減税とは異なり、リフォームローンの有無にかかわらず利用できます。このリフォーム促進税制は、リフォーム費用を大きく3つに分類し、控除額を計算します。 図中Ⓐは「10%控除の対象となる費用」です。図中Ⓐの限度額(以下10%控除限度額という)は、対象となる工事の内容ごとに定められています。なお、上記①~⑤に複数該当するリフォームを行う場合、該当した分だけ10%控除限度額が大きくなります。ただし、⑤長期優良住宅リフォームは①耐震リフォームや③省エネリフォームと併用することができないので注意が必要です。リフォームの内容のごとの限度額は以下のとおりです。 リフォームの内容 10%控除限度額 ①耐震リフォーム250万円 ②バリアフリーリフォーム200万円 ③省エネリフォーム250万円※ ④三世代同居対応リフォーム250万円 ⑤長期優良住宅リフォーム250万円※ ※太陽光パネル設置の場合350万円 図中Ⓑは「5%控除の対象となる費用」です。図中Ⓑの限度額は、1,000万円-Ⓐで計算できます。内訳としては、10%控除限度額を超過してしまった費用と、①~⑤に該当しないリフォームにかかる費用の2種類です。 図中Ⓒは「控除の対象とならない費用」です。リフォーム費用総額のうち、1,000万円を超えた部分については控除の対象となりません。なお、図中Ⓐ+Ⓑが1,000万円を超えない場合、Ⓒの費用が発生することはありません。 リフォーム費用をⒶ、Ⓑ、Ⓒの3つに分類したうえで、Ⓐ×10%+Ⓑ×5%が控除額となります。 注意点として、計算に用いられるリフォーム費用は、国土交通大臣が工事内容ごとに定めた「標準的な工事費用相当額」を用いて計算した金額であることが挙げられます。実際にかかった費用ではないので、あらかじめ金額を確認しておくことが重要です。 出典)国土交通省ホームページ 住宅ローン減税 住宅ローン減税は、住宅の購入にあたって住宅ローンを組む場合に利用できる制度ですが、リフォームローンを組む場合でも利用できます。利用条件は以下のとおりです。 ①償還期間が10年以上であること ②リフォーム費用合計額(補助金を控除した金額)が100万円を超えていること ③対象となる第1号~第6号工事のいずれかに該当する工事であり、建築士・指定確認検査機関・登録住宅性能評価機関・住宅瑕疵担保責任保険法人の証明を得ること ④その他リフォームを行う住宅等の条件を満たすこと 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅵ.住宅ローン減税編」 住宅ローン減税は、10年間にわたって毎年の「年末ローン残高の0.7%」が所得税から控除されます。リフォーム費用分にあたる年末ローン残高(上限2,000万円)×0.7%の控除が受けられるので、1年あたりの最大控除額は14万円までとなります。 2.固定資産税の減額 固定資産税を対象としたリフォーム減税は、対象となるリフォーム工事をした翌年度の固定資産税額のうち、一定割合を控除する仕組みです。具体的な減額割合はリフォームの内容によって以下のように異なります。 リフォームの内容 減額割合 家屋面積の上限 ①耐震リフォーム1/2120㎡相当分まで ②バリアフリーリフォーム1/3100㎡相当分まで ③省エネリフォーム1/3120㎡相当分まで ④三世代同居対応リフォーム減額なし- ⑤長期優良住宅リフォーム2/3120㎡相当分まで 上記のように、リフォームの内容によって家屋面積に上限がある点に注意しておきましょう。併用は基本的にできませんが、バリアフリー+省エネリフォームの場合のみ併用が可能です。 3.贈与税の非課税措置 親などから資金援助を受けてリフォームする場合、条件によっては贈与税の非課税措置が利用可能です。贈与税には基礎控除が設けられており、そもそも贈与資金が年間110万円までであれば、どのような用途であっても原則非課税となります。 そのうえで、親や祖父母などからリフォーム資金の贈与を受ける場合は、一定の条件を満たすことで最大1,000万円までが非課税となります。条件には面積や最低工事費用、贈与を受ける人の年齢といったさまざまなものがありますが、一般的なリフォームであれば、自然と満たしているものが多いのも特徴です。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅶ.贈与税の非課税措置編」 4.登録免許税の特例措置 個人が対象となるリフォームが行われた住宅を購入した場合、所有権移転登記に係る登録免許税の特例措置の対象となります。通常は課税標準額×2%の登録免許税がかかるところが、0.1%まで軽減されます。特例を受けるためには、申請書類を法務局に提出する必要があります。リフォームが行われた住宅を購入する場合には、売り主や仲介会社に書類について確認してみましょう。 なお、中古住宅を購入した後にリフォームを行う場合は対象外となります。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅷ.登録免許税の特例措置編」 5.不動産取得税の特例措置 宅地建物取引業者が中古住宅を購入する場合、対象のリフォームを行ったうえで個人に譲渡することを条件に、不動産取得税の控除を受けることができます。また、個人が新耐震基準を満たしていない中古住宅を購入し、購入後に耐震リフォームを行う場合も、不動産取得税の控除を受けることができます。 どちらの場合も、購入する中古住宅の新築日の日付に応じて控除額が決定します。新築日が前であるほど控除額は小さくなります。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅸ.不動産取得税の特例措置編」 リフォームの減税制度が適用される工事の種類 リフォームの減税制度を利用するためには、適用される工事であるかどうかを事前に確認することが大切です。ここでは、適用対象となる工事の種類を具体的に見ていきましょう。 耐震リフォーム 耐震リフォームとは、住宅の耐震化に関するリフォーム工事のことを指します。主に古い耐震基準で建てられた建物について、現行の耐震基準に適合するように行われる補強・改修を行う工事のことです。 バリアフリーリフォーム バリアフリーリフォームとは、高齢者や障がい者が安全かつ快適に生活するために必要なリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「通路等の拡幅」「階段の勾配の緩和」「浴室改良」「段差の解消」などの工事が対象となります。 要介護もしくは要支援の認定を受けている人や、高齢者・障がい者が居住していることなどが、リフォームの減税制度の適用条件となっています。 省エネリフォーム 省エネリフォームとは、住宅の省エネ性能を上げるためのリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「窓や壁などの断熱工事」「高効率空調機の設置工事」「太陽光発電設備の設置工事」などが該当します。注意点として、リフォーム減税の適用には窓の断熱工事が基本的に必須とされていることが挙げられます。 同居対応リフォーム 同居対応リフォームとは、親と子・孫の三世代が同居をするためのリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「キッチン」「浴室」「トイレ」「玄関」のいずれかの増設工事を指し、このうち2つ以上の設備が複数ある場合、リフォームの減税制度の対象となります。 ただし、あくまでも「同居」が条件であるため、離れなどに増設した場合は対象とならない点に注意が必要です。 長期優良住宅化リフォーム 長期優良住宅化リフォームとは、シロアリ対策や耐震補強といった住宅の耐久性を高めるためのリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「外壁を通気構造等とする工事」「浴室または脱衣室の防水性を高める工事」「シロアリ対策」「断熱リフォーム」など11種の工事が対象であり、長期優良住宅の認定を取得することでリフォームの減税制度が利用できます。 主なリフォーム費用の相場や活用できる補助金については、以下の記事で詳しく解説されているので、参考にしてみてください。 関連記事はこちらリフォーム費用の相場と安く抑えるコツ リフォームの減税制度の申請方法 リフォームの減税制度を利用するためには、工事を行ったあとに自分で申請手続きを行う必要があります。ここでは、申請のタイミングと必要書類について解説します。 工事を行った翌年に確定申告を行う リフォームの減税制度を利用する場合、確定申告を行う必要があります。リフォーム工事の完了日、あるいは工事契約書に記された日付を基準日とし、その翌年の2月中旬~3月中旬にかけて申告しなければなりません。 なお、会社員などの給与所得者であっても、制度を利用するためには自分で確定申告を行う必要があります。ただし、翌年以降は勤務先の年末調整で手続きを済ませられるため、負担が大幅に軽減されます。 ただし、利用するリフォームの減税制度によっては、確定申告以外にも手続きが必要な場合もあります。 例えば、固定資産税のリフォームの減税制度を利用する場合は、工事が完了してから3ヶ月以内にお住まいの都道府県・市区町村に申請する必要があります。 必要書類は工事内容によって異なる リフォームの減税制度を利用するには、リフォーム工事が適用条件を満たしているかを証明するための書類を提出する必要があります。必要書類は利用する制度や工事内容によっても異なりますが、以下のようなものが挙げられます。 確定申告書 登記事項証明書 増改築等工事証明書等 工事請負契約書 住宅ローン残高証明書 住宅耐震改修証明書(耐震リフォームの場合) 介護保険の被保険者証の写し(バリアフリーリフォームの場合) 必要書類のなかには、工事を担当した施工会社に用意してもらう必要がある場合もあります。そのため、国税庁のホームページなどで確認しておくとともに、施工会社にも必要な手続き・書類について相談しておくと安心です。 まとめ リフォームの減税制度にはさまざまなものがあります。各制度の利用条件を確認し、どのリフォームの減税制度を利用できるかを確認することが大切です。 また、リフォームの減税制度を利用するためには、必要書類を整えたうえで確定申告による手続きを行う必要があります。利用条件だけでなく、必要な手続きについても忘れずに調べておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 【令和5年版】リフォームで活用できる補助金の種類と金額の目安 住宅のリフォームを検討する際には、補助金制度の仕組みにも目を向けて計画を立てるのがおすすめです。補助金には全国一律で適用されるものと、自治体ごとに独自で設けられているものがあるので、あらかじ...記事を読む

  • 終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリット、普通建物賃貸借契約との違い、手続き方法を分かりやすく解説

    終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説

    終身建物賃貸借契約は、高齢者が安心して賃貸住宅に居住できる仕組みです。老後も賃貸暮らしを続けるなら、終身建物賃貸借契約に対応している賃貸住宅も選択肢のひとつです。この記事では、終身建物賃貸借契約の概要やメリット・デメリット、手続きの流れについて解説します。 終身建物賃貸借契約とは? 終身建物賃貸借契約とは、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づき、高齢者単身・夫婦世帯等が終身にわたり安心して賃貸住宅に居住することができる仕組みとして、借家人が生きている限り存続し、死亡時に終了する相続のない一代限りの借家契約です。 賃借人は生涯同じ家で安心して生活でき、一代限りの契約であるため、死亡時に相続は発生しません。基本的に入居できるのは60歳以上に限られます。ただし、60歳以上の配偶者との同居であれば、60歳未満でも入居ができます。 なお、終身建物賃貸借契約をするには、対象となる不動産が都道府県知事の認可を受けている必要があります。また、賃貸住宅が一定の基準に適合していることも要件です。 出典)東京都住宅政策本部「終身建物賃貸借制度」 終身建物賃貸借契約のメリット 終身建物賃貸借契約のメリットは以下のとおりです。 死亡するまで住み続けられる 終身建物賃貸借契約は契約期間が終身であるため、賃借人が死亡するまで同じ家に住み続けられ、賃貸人からの解約は、原則以下のとおりです。 老朽や損傷などにより、住宅を維持できない場合 入居者が長期にわたり居住しておらず、住宅の管理が困難な場合 入居者に不正行為や公序良俗に反する行為、事実が判明した場合 中途解約は基本的に都道府県知事の承認が必要です。それに加え、6か月前に入居者に対して解約の申入れを行わなければならず、急に賃貸人から退去を求められることが少ない点も安心です。 なお、老人ホームへの入所や親族との同居などの理由で居住できなくなった場合は、1ヵ月前に申入れを行うことで、賃借人からの解約が可能です。 契約終了後の手続きが簡単 終身建物賃貸借契約は、賃借人の死亡によって契約が終了します。相続が発生せず、契約終了の手続きが不要のため、相続人に迷惑をかけずに済みます。同居配偶者は、賃借人の死亡を知った日から1ヵ月以内に申し出れば、引き続き居住が可能です。 バリアフリーの要件を満たしている 終身建物賃貸借契約の対象不動産は、一定のバリアフリー基準を満たしています。「段差のない床」「浴室等の手すり」などが備わっており、高齢者にとっては住みやすいでしょう。 高齢者でも家を借りられる 一般的な賃貸住宅では、健康面や金銭面の不安から高齢者の入居を敬遠するケースもあります。それに対し、終身建物賃貸借契約は、高齢者が生涯にわたって賃貸住宅に居住できる制度であるため、高齢を理由に入居を断られる心配がありません。 更新料がかからない 普通建物賃貸借契約では契約期間が定められており、契約更新の際に家賃1ヵ月分の更新料がかかるのが一般的です。一方、終身建物賃貸借契約は契約期間が終身のため、更新料はかかりません。同じ家に長く住む場合は、住居費の負担軽減が期待できます。 終身建物賃貸借契約のデメリット 終身建物賃貸借契約には、以下のようなデメリットもあります。 事前に認可されている不動産でないと利用できない 終身建物賃貸借契約を利用できるのは、都道府県知事から認可を受けた不動産に限られます。認可されている不動産はまだ少ないので、住みたいエリアに終身建物賃貸借契約に対応した物件がない可能性もあります。 同居配偶者や60歳以上の親族以外は入居できない 終身建物賃貸借契約は、賃借人や同居人に一定の制限があります。賃借人は、基本的に60歳以上の高齢者に限られます。また、同居配偶者や60歳以上の親族以外は入居できないので注意が必要です。 終身建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約の違い 終身建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約の違いは以下のとおりです。 区分 終身建物賃貸借契約 普通建物賃貸借契約 定期建物賃貸借契約 契約の方法公正証書等の書面による契約に限る書面でも口頭でも可公正証書等の書面による契約に限る 期間または期限賃借人の死亡に至るまで1年以上または期間の定めなし期間の定めなし 契約の更新無し正当事由がない限り更新更新なし、再契約が必要 賃料増減額請求権 増減を請求できる※1 増減を請求できる※2 増減を請求できる※3 相続の有無無し有り有り ※1 賃料を改定しない特約があるときは増減を請求できない ※2 賃料を増額しない特約があるときは増額を請求できない ※3 増減額請求権を排除する特約を定めることが可能 終身建物賃貸借契約は、契約方法が公正証書等に限られ、契約期間が終身で更新や相続がないのが特徴です。 終身建物賃貸借契約の手続き方法 終身建物賃貸借契約は、賃借人側に特別な準備は必要ありません。都道府県ごとに、終身建物賃貸借契約が利用できる住宅一覧が公表されているため、確認して問い合わせてみましょう。入居したい物件が見つかったら、賃貸人と終身建物賃貸借契約を締結します。 出典)東京都終身認可住宅一覧(令和5年4月1日現在) 賃貸人の手続き 賃貸人が終身建物賃貸借契約をするには、事前に都道府県知事の認可を受ける必要があります。手続きの流れは以下のとおりです。 賃貸住宅の概要や賃貸条件等を記載した「事業認可申請書」を作成する 間取図等の必要な書類を添付する 都道府県知事等の自治体の長に提出する 一定のバリアフリー基準等に適合していることが要件となるため、物件の状況によっては手すりの設置などの対応も必要です。 出典)国土交通省住宅局安心居住推進課「終身建物賃貸借契約の手引き」 まとめ 高齢者は、健康面や金銭面の問題で賃貸住宅の入居を断られるケースが少なくありません。しかし、終身建物賃貸借契約を利用できる不動産であれば、高齢者でも安心して同じ家に住み続けられます。老後も賃貸暮らしを続けたい場合は、終身建物賃貸借契約に対応した物件を探してみてはいかがでしょうか。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 老後にリースバックを利用すると得られる4つのメリット リースバックは、自宅を売却してまとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるサービスです。リースバックを利用することで老後の不安を解消し、より快適な生活が送れるように...記事を読む

  • 【2022年度版】リフォームで活用できる補助金の種類や金額の目安、申請時の注意点を解説

    【令和5年版】リフォームで活用できる補助金の種類と金額の目安

    住宅のリフォームを検討する際には、補助金制度の仕組みにも目を向けて計画を立てるのがおすすめです。補助金には全国一律で適用されるものと、自治体ごとに独自で設けられているものがあるので、あらかじめ細かく情報収集することが大切です。 この記事ではリフォーム関連の補助金の種類やそれぞれの仕組み、利用条件などについて詳しく解説します。 補助金を活用できるリフォームの種類 一口にリフォームといっても、その内容は目的によって異なります。そして、どのような種類のリフォームを行うかによって、補助金の支給対象になるかどうかも変わります。 補助金を活用しやすいリフォームの代表的な種類は以下のとおりです。 介護・バリアフリーに関するリフォーム 介護やバリアフリーに関するリフォームでは、特定の施工内容について、介護保険を利用した住宅改修制度などの補助金を活用することができます。たとえば、トイレを和式から洋式に換える、浴室の扉を引き戸にするなど、介護に必要なリフォームは補助金の支給対象となります。 また、「手すりを設置する」、「床の段差を解消する」、「床を滑りにくい素材に変更する」といったバリアフリー化に関する施工も補助金の支給対象です。 省エネ・エコ・断熱に関するリフォーム 省エネやエコに繋がるリフォームでは、持続可能な住環境の推進を目的としたリフォームが補助金の支給対象となります。具体的には、窓や壁などの断熱リフォーム(複層ガラスの導入、内窓の設置など)、高効率給湯器(エコキュートなど)の設置、節水性の高いトイレに交換するといった施工が挙げられます。 また、太陽光発電システムや蓄電池といった「創エネ」に関する設備の導入にも、補助金制度を活用できる場合があります。 耐震診断・耐震改修に関するリフォーム 耐震診断や耐震補強工事といった基本的な安全性に関わるリフォームは、多くの自治体が補助金の支給対象としています。具体的には、専門家による耐震診断の費用や耐震補強・改修工事などが挙げられます。なお、旧耐震基準で建てられた建物(1981年5月31日以前に建築確認を受けた、倒壊リスクが高いとされる建物)であることが、利用条件に含まれる場合もあるため、注意が必要です。 また、自治体によっては、安全面や周囲への被害防止の観点から、倒壊の危険があるブロック塀の撤去や解体工事の費用についても補助金の支給対象としています。 テレワークに関するリフォーム 自治体によっては、「新しい生活様式」の推進に向けたテレワーク関連のリフォーム補助金を取り扱っている場合があります。具体的には、間仕切りの設置によるワークスペースの確保や換気、防音工事、衛生管理対策などが挙げられます。 また、国土交通省が実施している「長期優良住宅化リフォーム推進事業」においても、テレワークスペースを確保するためのリフォーム工事が補助金の支給対象となる場合があります。ただし、耐震改修工事や断熱改修工事などの性能向上工事と併せてリフォームを行う必要があるので注意が必要です。 その他のリフォーム 自治体によっては、アスベスト除去や景観の改善など、健康被害の予防や環境整備に関するリフォーム補助金が設けられている場合があります。また、豪雪地域の自治体では、屋根の改修などの雪対策に利用できる補助金制度が設けられている場合もあります。 それ以外にもシンプルな増改築や間取り変更、外壁の補修、床暖房の設置にまで利用できる補助金など、地域によって異なる特色があるので、自治体のホームページなどで調べてみると良いでしょう。 リフォームで活用できる補助金の要件や金額の目安 補助金の仕組みは種類によって異なるため、それぞれの特徴を的確に把握しておくことが大切です。ここでは、代表的な5つの補助金制度について、具体的な要件や金額の目安を解説します。 介護保険 介護保険には、要支援、要介護と自治体から認定された方がバリアフリーリフォームを行う際に、工事費用の一部を補助してもらえる制度が設けられています。運営主体は各自治体ですが、全国共通で利用できる補助金制度です。 利用にあたっては、担当のケアマネージャーなどと相談し、理由書を作成してもらう必要があります。また、介護保険の補助金利用は、着工前に申請を行わなければならないため、注意が必要です。 補助金の上限額は20万円であり、工事費用の最大9割までが補助される仕組みです。なお、一回の工事費用が20万円に満たなかった場合、次回に差額分を利用可能です。 出典)厚生労働省「介護保険における住宅改修」 長期優良住宅化リフォーム推進事業 長期優良住宅とは、長期間にわたって快適かつ安全に居住できる施工が行われた住宅のことです。一般住宅から長期優良住宅へのリフォームを行う際に、一定の性能向上を満たしていれば、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の補助金制度を利用できます。 補助金額は工事内容に応じて異なりますが、一戸あたり100~250万円となっています。また、三世代同居対応の設備拡充や、子育てをしやすい住宅への改修なども対象となる場合があります。 この制度を利用するためには、着工前に住宅診断(インスペクション)を行う必要がありますが、申請手続きは居住者本人ではなく施工会社が行います。あらかじめ施工会社に対応してもらえるかどうかを確認しておくと良いでしょう。 出典)国立研究開発法人建築研究所「長期優良住宅化リフォーム推進事業」 住宅エコリフォーム推進事業 住宅の省エネ化を推進するための事業であり、ZEHレベルの高い省エネ性能へリフォームする場合に活用できる補助金制度です。ZEHとは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」です。具体的には省エネ診断、省エネ設計、省エネ改修などが挙げられます。 なお、省エネ診断では「補助率3分の1(民間実施の場合)」、省エネ設計も「補助率3分の1(民間実施の場合)」、省エネ改修では「補助率11.5%(一戸建ての上限は512,700円)」が限度となっています。 出典)住宅エコリフォーム推進事業実施支援室「事業概要」 既存住宅における断熱リフォーム支援事業/次世代省エネ建材実証支援事業 既存住宅における断熱リフォーム支援事業と次世代省エネ建材実証支援事業は公募形式による補助金制度で、高性能な断熱材や「次世代省エネ建材」を使用したリフォームを行うときに適用されます。 「断熱リフォーム支援事業」では、断熱材、断熱用の窓、断熱用ガラス、断熱仕様の玄関ドアを用いるリフォームを対象に、一戸あたり120万円を上限として工事費用の3分の1以内が支給されます。 「次世代省エネ建材実証支援事業」では、外張り断熱、内張り断熱、窓断熱の3つの区分から施工内容を選択可能であり、外断熱なら一戸あたり300~400万円、内断熱なら一戸あたり200万円、窓断熱なら一戸あたり150万円を上限に、対象経費の2分の1以内が支給されます。 出典) ・公益財団法人北海道環境財団「既存住宅の断熱リフォーム支援補助金について」 ・一般社団法人環境共創イニシアチブ「令和4年度 次世代省エネ建材の実証支援事業のご紹介」 リフォームで活用できる補助金の申請時の注意点 リフォームに関する補助金を利用する際には、申請のタイミングに注意する必要があります。 リフォームを着工する前に申請が必要な場合がある 補助金制度の中には、「着工前」に申請を行わなければならない場合があります。この場合、リフォーム工事の着工後や完了後に申請をしても受理されず、補助金が利用できないため注意が必要です。 また、利用条件として工事完了の期限が設けられている場合もあるため、スケジュールを逆算したうえで工事日を調整することも大切です。 予算の上限で早めに締め切られることがある 補助金制度の中には、あらかじめ自治体などの運営主体が予算の上限総額を設定している場合があります。予算の上限に達すると、期限内であっても締め切られてしまうため、なるべく早く申請手続きを行うことが大切です。 なお、一般的な補助金は年度ごとに募集がかけられ、夏や秋ごろには利用枠が埋まってしまう恐れがあります。補助金利用の可否によって出費には大きな差が生まれるので、施工会社にも前もって相談しておくと良いでしょう。 補助金を申請するには? 補助金には様々なものがあり、種類によって取り扱う窓口は異なります。また、申請にあたって必要となる書類や手続きのタイミング、具体的な手順などもそれぞれ違うので注意が必要です。 たとえば、介護保険の補助金制度を利用するなら、まずは担当のケアマネージャーに相談し、理由書を作成してもらう必要があります。円滑に申請を済ませるためにも、利用したい補助金に応じてどのような手続きが求められるのかを確認しておきましょう。 まとめ 住宅のリフォームには、介護・バリアフリーに関するものや省エネ・環境保護に関するものなど、様々な種類の補助金制度が用意されています。その中から適切な補助金制度を正しく申請することで、リフォーム費用の一部を賄える場合もあります。リフォームを行う際には、事前に補助金制度の仕組みを調べておくことが大切です。 また、補助金には施工会社を通して申請するものも多いので、不明点があれば遠慮をせずに専門家へ相談しましょう。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リフォーム費用の相場と安く抑えるコツ 住み始めた頃は問題ないと感じていても、月日の経過に伴って住まいに不便さを感じる場面も出てきます。今後の生活を快適にするためには、リフォームを検討してみるのも選択肢の1つです。しかし、実際にリ...記事を読む