フラット35は、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローンです。借入時に返済終了までの金利が確定するため、返済計画を立てやすく、金利変動リスクへの備えとなります。ただし、フラット35の審査基準は民間の住宅ローンとは異なります。 この記事では、フラット35の審査基準を、申込人に関する基準と住宅に関する基準に分けて解説します。 【フラット35】の審査基準:申込人に関する基準 フラット35の審査では、申込人の年齢や国籍、収入状況、信用情報などが確認されます。 年齢 フラット35は、申し込み時の年齢が満70歳未満の人が対象です。ただし、親子リレー返済を利用する場合は、満70歳以上でも申し込みできます。 親子リレー返済とは? 親子リレー返済とは、申込者本人とその後継者が2世代で住宅ローンを返済していく制度です。以下3つの要件をすべて満たす人を後継者とすれば、申込者本人の年齢が70歳以上でも申し込みできます。親子リレー返済の後継者の要件は以下のとおりです。 申込者本人の子・孫など(申込者本人の直系卑属)またはその配偶者で定期的収入のある人 申込時の年齢が満70歳未満の人 連帯債務者になる人 関連記事はこちら親子リレーローンとは?メリット・デメリットと注意点を解説 国籍 フラット35は、日本国籍であることも申込要件です。外国籍の場合、永住許可を受けている人か特別永住者の人であれば申し込みできます。 収入状況 収入状況については、年収に応じて総返済負担率(年収に占める年間合計返済額の割合)の基準が定められています。 年収400万円未満の場合:総返済負担率30%以下 年収400万円以上の場合:総返済負担率35%以下 年収は、原則として申込年度の前年の収入で確認されます。会社員は給与収入金額、自営業者などは所得金額(事業所得、不動産所得などの合計額)をもとに判断します。一定の要件を満たす場合は、申込者本人の親や子、配偶者との収入合算も可能です。 総返済負担率は、フラット35以外の住宅ローンや自動車ローン、カードローンなどの返済額も含めて計算します。 太陽光発電の売電収入を年収に合算できる 融資対象住宅に太陽光発電設備を設置する場合、一定の要件を満たすと、その設備から得られる売電収入を年収に加算できます。新築住宅の建設や購入、中古住宅の購入に併せてリフォーム工事を行う場合の融資が対象です。 年収に加算できる金額は、発電出力(kw数)に応じて上限額が設けられています。 信用情報 フラット35では、申込者の返済能力を判断するために信用情報が確認されます。具体的には、税金や他のローンの滞納などがないかを見られます。ローンの滞納歴などが信用情報に記録されていると、審査に通過しにくくなる恐れがあります。 資金使途 フラット35の資金使途は、申込者本人またはその親族が居住する新築住宅の建設や購入、中古住宅の購入に限定されます。第三者に賃貸するなど、投資用物件の取得資金には利用できません。 【フラット35】の審査基準:住宅に関する基準 フラット35は、住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合する住宅が対象です。基準を満たしていることを証明するため、物件検査をして適合証明書を取得しなくてはなりません。取得する住宅が新築か中古かで技術基準は変わります。 新築の場合 新築住宅の主な基準項目は以下のとおりです。 戸建て マンション 接道 原則として一般の道に2m以上接すること 住宅の規模 70㎡以上 30㎡以上 住宅の企画 原則として2以上の居住室、炊事室、便所および浴室の設置 併用住宅の床面積 併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上 戸建型式など 木造の住宅は戸建てまたは連続建てのみ 住宅の構造 耐火構造、準耐火構造または耐久性基準に適合すること その他に、断熱構造や配管設備などの基準もあります。マンションについては、管理規約や長期修繕計画も基準項目です。新築住宅の物件検査は、以下の流れで行われます。 設計検査(工事前に設計図などを確認) 中間現場検査(工事途中に目視で確認) 竣工現場検査(工事完了後に検査済証が交付されていることを確認) 合格後、適合証明書の交付 中古の場合 中古住宅の基準項目は、上記の新築住宅と大きな差はありません。ただし、住宅の耐震性や劣化状況などが確認されます。例えば、住宅の耐震性は建築確認日が昭和56年6月1日以後であることが要件です。建築確認日が昭和56年5月31日以前の場合は、耐震評価基準に適合している必要があります。 中古住宅の物件検査では、書類審査と現地調査が行われ、合格すると適合証明書が交付されます。新築時に適合証明書を取得していても、原則として中古住宅の適合証明書の取得が必要です。 フラット35の審査が緩いと言われる理由 フラット35は「審査が緩い」と言われることがあります。その理由は、フラット35の審査では、民間の住宅ローンとは異なる審査基準が用いられるためです。主に以下3つの理由が考えられます。 審査金利が適用金利と同じ 民間の住宅ローンの審査でも、フラット35の審査でも、返済負担率が重視されます。返済負担率の計算に用いる金利は審査金利と呼ばれますが、民間の住宅ローン(変動金利型)の場合、融資後の金利上昇を考慮して、3%以上の金利が用いられます。 一方で、フラット35の場合は返済負担率の計算にも、適用金利と同じ金利が用いられます。2024年4月時点のフラット35金利は、低いところで2%前後であるため、民間の住宅ローンより返済負担率が低く計算されます。 職種を重視されない 民間の住宅ローンでは、申込者の職種は重要視されます。住宅金融支援機構によると、住宅ローンを提供する金融機関の46.8%が「職種、勤務先、雇用形態は、審査項目として重要度が増している」と回答しています。 一方で、フラット35が公表している審査基準には、職種についての記載はありません。他の基準を満たせば、原則どんな職種でも審査に影響しないでしょう。 出典)住宅金融支援機構「2023年度 住宅ローン貸出動向調査」 団体信用生命保険の加入が任意 民間の住宅ローンの多くは、団体信用生命保険(団信)の加入が申込要件となっています。仮に収入等の条件を満たしていたとしても、健康状態が原因で団信に加入できず、審査に落ちてしまう恐れもあります。 一方で、フラット35は団信加入が任意であり、団信に加入できないことで審査に落ちる心配がありません。ただし、団信に加入しないのであれば、もしものときにローン返済をどうするかを検討しておく必要があります。 まとめ フラット35の審査基準は、主に「申込人」と「住宅」の2つに分けられます。「審査が緩い」と言われることもありますが、基準を満たさないと融資を受けられません。審査基準はフラット35のホームページで公表されているので、事前に確認しておきましょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 フラット35Sとは?種類や金利、利用条件について解説 近年、全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」の金利が上がっています。「今後金利がますます上昇するのでは?」と不安になり、全期間固定金利であるフラット35を利用したい一方で、既にフラット3...記事を読む
マイホームを購入するときは、住宅ローンを利用するのが一般的です。しかし、住宅ローンには審査があるので、必ず利用できるとは限りません。金融機関は、どのような基準で住宅ローンの審査を行うのでしょうか。 この記事では、住宅ローンの審査基準や通らない場合の対処法を紹介します。 住宅ローンの審査項目 国土交通省の調査によると、金融機関が融資を行う際に「考慮する」と回答した割合が高い項目(90%以上)は以下のとおりです。 完済時年齢(99.1%) 健康状態(98.2%) 担保評価(98.2%) 借入時年齢(97.8%) 年収(95.7%) 勤続年数(95.3%) 連帯保証(95.1%) 返済負担率(92.1%) 金融機関の営業エリア(91.0%) 出典)国土交通省「令和2年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書P19」 ほとんどの金融機関で年齢や健康状態、担保評価、属性(年収、勤続年数)を重視していることがわかります。上記の他に融資可能額、雇用形態、国籍、他の債務の状況・返済履歴の割合も高い傾向にあります。 また、住宅金融支援機構の調査によると、住宅ローンの本審査で「重視度が増している」と金融機関が回答した審査項目は以下のとおりです。 返済負担率(65.9%) 職種、勤務先、雇用形態(45.3%) 借入比率:(39.0%) 借入者の社会属性(30.7%) 返済途上での返済能力の変化(28.2%) 預貯金や資産の保有状況(27.5%) 担保となる融資物件の時価(12.5%) 出典)住宅金融支援機構「2020年度 住宅ローン貸出動向調査P41」 返済負担率とは、月収に対する毎月返済額の割合のことです。約65%の金融機関が返済負担率の重視度が増していると回答しており、前回調査(63.0%)よりも割合が増えています。 住宅ローンの本審査に必要な書類 住宅ローンを利用する場合、一般的な例として、以下の必要書類を用意します。 • 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど) • 印鑑証明書(実印も) • 収入証明書(源泉徴収票や納税証明書を含む) • 預金通帳や証書 • 購入物件に関する各種資料 • その他必要書類 本人確認書類として運転免許証やパスポート、契約の際は印鑑証明書と実印が必要です。収入証明書や納税証明書は、一定の収入があること(返済能力があること)や税金の未納がないことを証明するために用意します。加えて、購入する物件の状況を確認するための書類として不動産登記簿謄本等の資料や他に借入中のローンがある場合は返済予定表も必要になります。上記以外にも自身の状況に応じて書類が必要になる場合があります。住宅ローンの審査をスムーズに進めたい場合は事前に金融機関に確認しておきましょう。 住宅ローンの審査の流れ STEP1 事前申し込み 購入する物件が決まったら住宅ローンを取り扱っている金融機関に事前の申し込みをします。ここでは、本人確認資料や収入証明書、購入物件に関する各種資料などの書類が必要になります。なお、現在ではWebサイトで事前申し込みを受け付けている金融機関もあります。 STEP2 事前審査 事前審査の結果が出るまでの期間は金融機関によって異なりますが、一般的には3~4日程度の場合が多いようです。 STEP3 正式申し込み 事前審査に通った後、住宅ローンの正式申し込みを行います。正式申し込みにあたっては、上記にて紹介している各種書類をそろえる必要があります。こちらも事前審査と同様に、Webサイト上で申し込みを受け付けている金融機関もあります。 STEP4 本審査 本審査では、事前審査と比べて厳密な審査が行われます。そのため、審査期間も長くなります。一般的には、1~2週間程度かかる場合が多いようです。 STEP5 契約締結 本審査に通ったら、金融機関と金銭消費貸借契約を締結します。加えて、担保となる物件の土地・建物に抵当権を設定するため、抵当権設定契約書の締結も行います。 STEP6 融資実行と所有権の移転 金銭消費貸借契約の締結後、物件の引き渡し日になったら融資の実行と所有権の移転を行います。 住宅ローンの審査に通らない理由 ここでは、住宅ローンの審査に通らない理由を項目別に詳しく確認していきましょう。 年齢:借入時年齢と完済時年齢 住宅ローンでは、借入時年齢と完済時年齢に上限が設けられています。借入時年齢は65~70歳、完済時年齢は75~80歳が一般的です。そのため、高齢になるほど、審査に通過するのは難しくなります。 健康状態:団信に通るか 住宅ローンは、多くの金融機関で団体信用生命保険(団信)の加入が条件となっています。契約者に万一のことがあった場合に、保険会社から金融機関に支払われる保険金で残債を回収できるからです。 団体信用生命保険の加入は多くの金融機関で必須であるため、健康上の問題で団信に加入できないと、住宅ローンの利用は難しくなります。 収入:年収や返済比率、雇用形態、勤続年数 住宅ローンは契約者の収入から返済されるため、年収や雇用形態、勤続年数といった属性が重視されます。 一般的には、高年収の正社員で勤続年数が高いほど金融機関の評価は高くなります。一方で、低年収で勤続年数が短い会社員や収入が不安定な自営業者は、融資条件が悪くなる場合や、そもそも住宅ローンの審査に通らないことがあります。 また、年収に対する住宅ローンの返済比率は30~35%が目安です。年収に対して借入希望額が大きすぎると、審査落ちの可能性が高くなります。 個人信用情報:延滞の有無 カードローンなどの返済を延滞すると、その情報が個人信用情報に記録されてしまいます。個人信用情報は金融機関に共有されます。延滞履歴があると住宅ローン審査でマイナス評価となるため、審査に通らない原因となります。 不動産:担保評価や取扱エリア 住宅ローンの審査では、購入物件の担保評価や取扱エリアも重視されます。契約者が返済できなくなった場合、金融機関は担保物件を売却して残債を回収するので、担保評価が低いと審査に通過できないことがあります。 また、住宅ローンは金融機関によって取扱エリアが決まっているため、エリア外の場合は申込ができません。 その他 住宅ローンの審査に通らないその他の理由として、申告内容と金融機関が把握している情報に相違があることが考えられます。たとえば、「他にローンを借りているが、個人信用情報に登録されている借入金額と申込書の記載金額が異なる」といったケースです。 このようなケースでは虚偽の申告をしたとみなされ、審査落ちの原因となります。 住宅ローンの審査が通らないときの選択肢 住宅ローンの審査に通らないときは、原因によってアプローチを変えることが大切です。具体的には以下のような選択肢が考えられます。 年齢:リ・バース60やリレーローンの取扱がある金融機関 高齢で通常の住宅ローンを利用できない場合は、高齢者向けの住宅ローンが選択肢です。たとえば、リ・バース60は60歳以上の方向けの住宅ローンです。返済が利息のみで、元金は債務者が亡くなったときに担保不動産を売却して返済する仕組みになっています。 親子リレーローンとは、親子で1つの住宅ローンを契約し、二世代に渡って返済を行う制度のことです。借入期間は、後継者にあたる子どもの年齢を基に算出されるので、一般的には、親の年齢で算出される借入期間よりも長い期間に設定することができます。 関連記事はこちらリ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 健康状態:ワイド団信や団信なしの住宅ローン 健康状態に問題がある場合は、ワイド団信や団信なしの住宅ローンが選択肢です。 ワイド団信とは、健康上の理由で一般団信に加入できない方向けに引受基準を緩和した団信です。基準は緩和されますが、住宅ローンの適用金利に一定の利率が上乗せされる点に注意しましょう。 金融機関によっては、団信なしの住宅ローンを取り扱っていることもあります。自身で一定の保証を確保できているなら、団信なしの住宅ローンを検討してもよいでしょう。 収入:収入が上がるまで待つ、連帯債務者を追加する(ペア、親子) 収入や勤続年数が原因の場合は、「基準を満たすまで待つ」という選択肢もあります。たとえば、転職したばかりで収入が下がっているなら、数年勤務すれば収入が上がり、審査に通過できるかもしれません。 また、ペアローンや親子ローンで連帯債務者を追加することで、審査に通過できる可能性もあります。 個人信用情報:滞りなく返済を行う 個人信用情報が原因の場合は、現在抱えている債務の返済を進めることが大切です。延滞の情報は5年程度で消えるため、滞りなく返済を行えば審査に通過できる可能性があります。 可能であれば、住宅ローンを申し込む前に自身の個人信用情報を確認しておくといいでしょう。個人信用情報はCIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターで確認できます。 不動産:物件を替える、取り扱いのある金融機関を選ぶ 不動産が原因の場合は、担保評価の高い物件に替えることが選択肢となります。これから物件を探す場合は、担保評価も考慮して物件を選ぶことが大切です。営業エリアにも注意して、取り扱いのある金融機関を選びましょう。 その他 住宅ローンを申し込む際は、金融機関の質問に対して正直に答えることが大切です。万が一虚偽の回答をし、金融機関の持っている情報と異なると不信感につながり、審査落ちの原因となります。もし住宅ローンを借りられたとしても、後で嘘が判明すれば一括返済を求められてしまう場合もあります。 住宅ローンの審査は手動か?自動か? 最近の傾向として、住宅ローン審査は自動が増えています。ローン審査を自動化すれば、人件費の削減やリスク分析の精度向上などが期待できるからです。自動審査では、AI技術によって申込者の情報を分析し、スコアリング方式で審査します。 スコアリング方式とは、申込者のデータをもとに審査項目ごとに点数をつけ、その合計点で融資判断を行う方式です。国土交通省の調査によれば、金融機関のスコアリング方式の採用状況は以下のとおりです。 スコアリング方式を使って審査をしている(46.9%) スコアリング方式では審査を行っていない(53.1%) 出典)国土交通省「令和2年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書P18」 住宅ローンの審査に柔軟な対応を求めるなら、スコアリング方式で一律に審査を行っていない金融機関に相談するのも手といえます。 まとめ 住宅ローンには多くの審査項目があり、基準を満たさないと審査に通過できません。無事にマイホームを購入するためにも、住宅ローンの審査項目を理解しておきましょう。審査に通らない場合は、原因を見極めて適切に対処することが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンを比較する5つのポイント マイホームは、住宅ローンを利用して購入するのが一般的です。さまざまな金融機関が住宅ローンを扱っているので、どのように選べばよいかわからないのではないでしょうか。 自分に合った住宅ローンを選ぶ...記事を読む
借金の返済が出来なくなってしまった場合など、任意整理をすれば返済負担を軽減できる可能性があります。しかし、任意整理はどのように行うのか、任意整理をした場合に自宅などの所有資産がどうなるか気になるのではないでしょうか。 また、任意整理後に資金が必要になった時にどのような資金調達の方法があるのかによって、任意整理を行うのか、もしくは自己破産も視野に入れるべきなのかの判断も変わってくるでしょう。 この記事では、任意整理の概要や任意整理後に新規借り入れが利用できるかを解説します。 そもそも任意整理とは? そもそも任意整理とはどういった手続きなのか、概要を解説します。 任意整理は債務整理の一種 任意整理とは、債務整理の方法のひとつです。債務整理は返済が困難になった借金の減額・免除を認めてもらうための手続きで、主に以下の3種類があります。 任意整理:債権者に対して返済の一部(主に利息部分)を減額してもらう手続き 民事再生(個人再生):裁判所を通じて債務を大幅に減額してもらう手続き 自己破産:裁判所を通じてすべての債務を免除してもらう手続き 任意整理は、民事再生や自己破産に比べると手続きが簡単で、弁護士などの専門家に依頼することで対応してもらえます。なお、裁判所を通さずに専門家が債権者と直接交渉を行うため、官報に掲載されることはなく、他人に知られずに返済困難となった借金の整理ができます。 任意整理の目的は、当初の予定よりも返済負担を軽くすることにあります。民事再生や自己破産に比べて減額できる金額は小さく、利息部分を減額して元本のみの返済となることが多いです。 任意整理すると自宅はどうなる? 任意整理では、債務者のすべての保有財産を整理するのではなく、あくまでも個別の借り入れに対して調整を行います。たとえば、「A社の借金は任意整理をするが、B社の借金は任意整理をしない」といった選択も可能です。また、所有している自宅を処分する必要はないので、任意整理後もそのまま自宅に住み続けられます。一方で、同じ債務整理でも自己破産の場合は保有資産をすべて売却する必要があるので注意が必要です。 任意整理後に住宅ローンを借り入れるためには? 任意整理成立時の契約条件により、ほとんどのケースで任意整理した債権を返済中は新規借り入れが禁止されています。その契約に違反して追加の融資を受けると、任意整理した債権が返済できないまま契約解除となってしまう恐れがあります。 住宅ローンや無担保ローンは厳しい 任意整理後は住宅ローンや無担保ローンを新規で借り入れるのは厳しいでしょう。住宅ローンや無担保ローンは、職業や年収などの属性はもちろん、延滞歴などの信用情報も審査対象です。 任意整理をすると信用情報に記録されるため、金融機関からは「返済の確実性が低い」と厳しい見方をされることになります。そのため、任意整理後すぐはもちろんのこと、任意整理した債権を完済した後でも数年間は、一般的なローンを借り入れるのは難しいと考えておいたほうがいいでしょう。 任意整理後に住宅ローンを借り入れる方法 前述のとおり、信用情報に任意整理の記録が残っている間は、ローンを新規で借り入れるのは難しいです。しかし、この記録は数年すれば消えるため、それまで待てば審査に通りやすくなるでしょう。自身の信用情報は、各信用情報機関(JICC、CIC、KSC)に開示してもらうことができるため、住宅ローンに申し込む前に確認しておくことが大切です。 また、信用情報が消えるまでに、自身の収入を安定させる等、他の審査項目で審査に落ちることのないように備えておくことも大切です。 任意整理後に資金を調達する方法 任意整理後に住宅ローンを借り入れるのは難しいですが、資金調達の方法が全くないわけではありません。ここでは、任意整理後でも資金を調達できる可能性がある方法について紹介します。 ①不動産担保ローンを検討する 不動産担保ローンの場合、任意整理した債権を完済した後であれば、新規借り入れが可能な場合もあります。なぜなら不動産担保ローンは、担保となる不動産の価値に重点を置いているからです。信用情報に任意整理の記録が残っていたとしても、不動産に一定の価値があれば、与信面で審査が否決されるとは限りません。 また、任意整理をしても所有中の不動産を処分する必要はないので、自宅を担保に不動産担保ローンを借りられる可能性は十分にあるでしょう。ただし、不動産担保ローンを借り入れるには、融資金で任意整理した債務を完済することが条件となるケースがほとんどです。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 ②リースバックを検討する 任意整理後にまとまった資金が必要な場合は、「リースバック」という選択もあります。リースバックとは、不動産の売買と賃貸借契約が一体となった契約のことです。自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けられます。 リースバックはローン商品ではなく、不動産売買であるため、一般的なローンのように与信面の審査は厳しくありません。そのため、リースバックなら任意整理後すぐであったとしても、自宅に住み続けながら手元資金を確保できます。 ただし、リースバックは自宅の売却価格が市場価格よりも安くなることや、家賃の支払いが必要です。また、売却後も同じ家に住み続けられるのがメリットですが、ずっと住み続けられるとは限りません。「定期借家契約」の場合、運営会社の事情で契約が更新されず、引っ越しが必要になる可能性がある点に注意が必要です。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 まとめ 任意整理後に資金調達が必要な場合は、不動産担保ローンとリースバックを検討しましょう。任意整理後はしばらく一般的なローンを借り入れることができませんが、不動産担保ローンなら可能な場合もあります。 また、リースバックを利用すれば、自宅に住み続けながら手元資金を確保できます。不動産担保ローンとリースバックは特徴が異なるので、それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、どちらを利用するか判断することが大切です。 不動産担保ローンならSBIエステートファイナンス リースバックならSBIスマイル 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンの審査基準は?通らない場合の対処法も紹介 マイホームを購入するときは、住宅ローンを利用するのが一般的です。しかし、住宅ローンには審査があるので、必ず利用できるとは限りません。金融機関は、どのような基準で住宅ローンの審査を行うのでしょ...記事を読む
投資用の賃貸アパートおよびマンション向けのアパートローンは、事業用資金の融資という側面が強い、ということを前回述べました。したがって、金融機関は、担保となるアパートやマンションの評価をする際、不動産の担保価値に加えて、不動産賃貸業としての収益性や継続性を判断することになります。 この記事では、アパートローンなど不動産担保ローンによる不動産投資を検討している人に向けて、収益性や事業性についてどんなポイントが審査されるのか、具体的にお話しします。現状、金融機関は、個人に対する新規の投資用不動産向け融資を抑制していますが、前回述べた相続税対策としてのアパートローンの活用は、今後も根強いニーズがあると考えられます。 収益性を左右するのは立地条件 アパート経営、あるいは、マンション賃貸業の収益力は、どんな要因に影響されるのでしょうか。さまざまな要因が挙げられますが、まずは入居者の確保が大前提となります。しかも、一般的にアパートローンは融資期間が長期にわたることから、長期間継続的に入居者が確保されることが重要になります。したがって、アパート経営などを検討する際には、必ず建設予定地周辺の賃貸用不動産に対する需要動向をチェックしなければなりません。 この賃貸需要は立地条件に大きく左右されます。例えば、都心近郊の鉄道路線の駅に近い立地であれば、継続的な賃貸需要が見込めます。具体的には、最寄り駅からの距離は、「徒歩10分」が目安になるとされています。ただし、乗降客の多いターミナル駅であれば、「徒歩15分」程度でも許容範囲と言われています。 以前は、あまり駅に近すぎていると、繁華街や幹線道路の騒音や電車の音がうるさいといったネガティブな要素もありましたが、最近は、防音性に優れた二重サッシの窓が普及しており、騒音を抑えられるようになっています。傾向として、駅に近いほど賃貸需要が見込めるようになりつつあります。 また、駅からのアクセスが良好でなければ、周辺に学校や大きな病院などの施設があるかどうか、といったことがポイントになってきます。前回紹介した、60歳以上の高齢者や要介護認定を受けた60歳未満の方を対象とした「サービス付き高齢者向け住宅」などは、総合病院が近くにあれば、居住者の利便性が大きくアップすると考えられるからです。 さらに、地域の人口動態も考慮すべきです。人口や世帯数が減少している市区町村や地域については、継続的な賃貸需要は見込めません。地域の人口動態をチェックするためには、総務省が発表している「住民基本台帳」が便利です。毎年、都道府県はもとより、全国の市区町村の人口や世帯数を記載しており、増減がわかるようになっています。 2018年1月時点のデータをみると、東京都では、八王子市、青梅市、町田市、福生市といった市で、前年から人口が減少しています。東京都全体では人口流入が続いていますが、このように市区町村レベルでは減少している地域もあります。ここ数年では、23区内でも足立区は減少する年が目立ってきました。都心部でも人口動態には差が生じています。「住民基本台帳」は総務省のホームページで閲覧できるので、ぜひチェックしてください。 長期的な視野に立って収益性を判断する 地域の賃貸需要がある程度把握できた後は、実際に部屋を借りてくれる賃借人を想定することが必要です。賃借人となるのは、単身者が多いのか、それともファミリー層なのか、あるいは高齢者なのか、といったことを想定します。具体的に借り手を想定することで、建築するアパートの間取りや専有面積を決めていくわけです。賃貸アパートやマンションは、いったん建築をしてしまうと、間取りや専有面積を変えることは困難です。最も多くの借り手として見込める層に見合った間取りや専有面積で建築しなければなりません。 例えば、学生や若手サラリーマンがおもな借り手として想定できるのであれば、間取りはワンルームあるいは1K、専有面積は18~20㎡が平均的な広さとなってきます。また、サービス付高齢者向け住宅の場合、単身者はワンルームか1K、専有面積は20~25㎡が妥当といえるでしょう。 こうしたステップを経れば、おのずと賃料も決まってきます。周辺にある同じような条件の物件と比較することで、賃料の〝相場〟がつかめるからです。ただし、ここで注意しなければならないのは、築年数が経過することによる賃料の値下げです。新築の物件であれば、当初は、同じような物件よりも賃料を高く設定しても賃貸需要は見込めるでしょう。しかし、築年数が経過すると、値下げをせざるを得ません。長期にわたるアパートローンの場合、そうした将来的な賃料の値下げも想定して、収益性を判断することが重要です。 実際、築年数が経過して、賃料を大幅に値下げせざるを得なくなった、さらには空室が頻繁に発生している、といったことが起きています。こうなると、当初見込んでいた賃料収入がローンの支払額を下回る、つまり、赤字の状態になりかねません。築年数の経過による値下げを織り込んだ収支計画を作ることができれば、ローンの審査にも通りやすくなると考えられます。 今回は、アパートローンなどで新築の賃貸物件を建築する人を念頭において解説をしてきましたが、投資用の中古アパートやマンションの購入を考えている人にも、内容はすべてあてはまります。購入を検討している物件が賃貸需要に合っているか、地域の人口は増えているかといったことは、中古物件でも何ら重要性は変わりません。建築当初は満室が続いていた単身者向けのワンルームの物件が、近接していた大学や企業が移転したことで空室ばかりになった、というケースも少なくないのです。やはり、長期的に収益性を考えることが大事なのです。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産投資ローンの審査はココをみる(2) 投資用の賃貸アパートおよびマンション向けのアパートローンは、事業用資金の融資という側面が強い、ということを前回述べました。したがって、金融機関は、担保となるアパートやマンションの評価をする際...記事を読む ▼シリーズ「不動産投資ローンの審査はココをみる」の記事一覧 ・第1回:不動産投資ローンの審査はココをみる(1) ・第2回:不動産投資ローンの審査はココをみる(2)
賃貸アパートやマンション等の収益物件を担保とした貸出しは、金融機関の不動産関連融資の中では主力商品のひとつです。2013年から始まったアベノミクスによって、国内の金融市場は超低金利状態に突入し、一般の個人が投資目的でマンションを購入したり、賃貸アパート経営に乗り出したりするケースが増加しました。それに伴って、金融機関の投資用不動産向け融資も伸びていったのです。 2015年には、相続税が課税強化されたことで、賃貸アパート建設が全国各地で拡大しました。保有する土地に賃貸用の不動産物件を建設すると、相続税評価額が小さくなるという優遇措置を活用するためです。しかし、2018年に、地方銀行の賃貸アパート投資向けの不正融資が明らかとなって以降は、個人に対する新規の投資用不動産向け融資は急減しています。 こうした状況下、すでに保有している投資用不動産を担保としたローンの申し込みは増加傾向にあるようです。また、依然として、個人による不動産投資のニーズも衰えてはいません。そこで、賃貸アパートやマンションに対する評価について、足元の動向を踏まえながら改めて解説をしていきましょう。なお、投資用の賃貸アパートやマンション購入向けの融資は、金融機関では「アパートローン」と呼ぶことが多いので、以下、アパートローンと表記します。 「アパートローン」は事業用資金の融資に近い 借り入れる本人や家族が住むために住宅を購入する際の住宅ローンと、投資用アパートおよびマンション向け融資であるアパートローンの最も違う点はどこか? それは、アパートローンには事業用資金の融資という側面が強いことです。 賃貸用アパートおよびマンションへの投資は、単に不動産を取得するだけでは終わりません。用地の取得から始まり、建物の建設、賃借人の募集、家賃の徴収、建物の維持や管理といったさまざまな業務が伴います。 このように、中身は事業性資金の貸出しに近いといえますので金融機関としては採算性を重視することになります。通常、不動産業者が手掛ける商業ビルやオフィスビルへの投資と比較すると、金額的には小さくなりますが、個人としての借入金額はかなり大きいはずです。投資をする個人にとっては、大きなリスクを抱えることになります。 また、ここ数年、「サービス付き高齢者向け住宅」の建設するための資金として、アパートローンを活用するケースも増えています。サービス付き高齢者向け住宅とは、おもに民間事業者が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅のことです。2011年に創設された制度により生まれた施設で、60歳以上の高齢者や要介護認定を受けた60歳未満の方を対象とした賃貸住宅です。 超高齢化社会を迎えつつある日本では、社会的なニーズも高く、現在も高水準の建設が続いています。建設にあたっては国からの補助金制度もあり、個人でも保有する土地に建設をするケースが少なくありません。冒頭で言及した、所有する土地に建設をすると相続税評価額を引き下げる効果もあるからです。ただし、そうした社会的なニーズに合致し、優遇制度が利用できる物件であっても、収益性が求められることには変わりありません。 「サブリース」方式の問題点 近年の賃貸用アパートおよびマンション投資ブームの背景には、「サブリース」契約の流行も影響しています。サブリースとは、サブリースを手掛ける会社がアパートを一括で借り上げ、各戸についてはそのサブリース会社が個人などに〝転貸〟をする、という仕組みです。一般的には、住宅メーカーや住宅メーカーの関連会社がサブリースを手がけているパターンが多いようです。 サブリース会社が建物全体を借り上げるため、賃借人の募集や家賃の徴収といった業務はサブリース会社が行ってくれます。アパートのオーナーはそうした煩わしい業務を自分でする必要はありません。オーナーにはサブリース会社から一定の賃料が支払われます。そのため、不動産投資の経験が浅い個人のアパートオーナーなどを中心に、積極的に活用されてきました。 しかし、サブリース方式によるアパート、マンション経営が上手くいかないケースが出てくるようになり、オーナー側に負債が発生している物件が増えてきました。サブリースの契約は、個人が適切な判断をするのが難しく、当事者間で問題が解決できずに裁判に持ち込まれるケースも少なくありません。次回以降では、サブリース契約の注意ポイントについても解説をしたいと思います。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産投資ローンの審査はココをみる(2) 投資用の賃貸アパートおよびマンション向けのアパートローンは、事業用資金の融資という側面が強い、ということを前回述べました。したがって、金融機関は、担保となるアパートやマンションの評価をする際...記事を読む ▼シリーズ「不動産投資ローンの審査はココをみる」の記事一覧 ・第1回:不動産投資ローンの審査はココをみる(1) ・第2回:不動産投資ローンの審査はココをみる(2)
不動産担保ローンを提供している金融機関のホームページには、よく「仮審査」や「事前審査」という言葉が使われています(以後この記事では「仮審査」と呼称します)。住宅ローンを利用したことがある人なら、「本審査」前に必ず行う手続きの一つと思うかもしれません。 しかし、不動産担保ローンの仮審査は、住宅ローンで行われるものとは異なります。この記事では、不動産担保ローンの仮審査について解説します。 住宅ローンの仮審査とは 仮審査は住宅ローンにおいて不可欠な手続きの一つです。仮審査を通過しないと、融資をするかどうかを決定する本審査に進めません。仮審査が必要となる理由には、住宅ローンを申し込むタイミングが関係しています。 正式に住宅ローンを申し込めるのは、ローンを借り入れる人が不動産業者と物件の売買契約を交わした後になります。物件の所有権を持っていないと、申し込みはできないことになっているからです。しかし、もし売買契約が完了している状態で、住宅ローンを借り入れることができなければ、物件の引き渡しは行えません。そうなれば売買代金を回収できない不動産会社や、物件を購入する人にとっては大問題です。 このような問題を発生させないために仮審査があります。購入する物件を決めた段階で金融機関に仮審査を申し込み、住宅ローンを借り入れるための条件を満たしているかどうかを審査します。そして、仮審査を通過した人が不動産会社と売買契約を結び、金融機関に本審査を申し込みます。このような段階を踏むことで、売買契約が完了しているにもかかわらず本審査に通らない、という事態を予防できます。 住宅ローンの本審査に落ちる要因 住宅ローンの仮審査はあくまで簡易的な審査です。住宅ローンを借り入れる人の年収や年齢、信用情報といった必要最小限の情報を基に、金融機関が信用力を判断します。そして、仮審査を通過すると本審査に進みますが、仮審査を通過しても必ず本審査に通るわけではありません。 本審査では住宅ローンを提供する金融機関に加えて、債務保証をする信用保証会社にも審査されます。信用保証会社は、住宅ローンを借り入れる人のいわば〝保証人〟といった存在です。そのため、仮審査は短い金融機関だと1~2日で終了しますが、本審査は1週間程度かかるところが多いようです。 本審査を通過できない理由は、以下のような理由が考えられます。 仮審査で申告した情報が事実と異なっている 収入証明書などの書類に不備がある 未申告の高額の借り入れがある 団体信用生命保険に加入できない 不動産担保ローンの仮審査とは 前述のとおり、住宅ローンの仮審査は手順や内容が明確になっています。一方で、不動産担保ローンの仮審査は、各金融機関が独自に行っており、中身は明確になっていません。また、仮審査を受けなくても、直接本審査を申し込むことが可能です。 不動産担保ローンを借り入れる人は不動産を保有しているため、住宅ローンで考慮しなければならない不動産会社との売買契約のタイミングなどが、存在しないからです。それでは、不動産担保ローンの仮審査にはどんな意味があるのでしょうか。 実際に行われている金融機関の仮審査は、多くの場合〝事前相談〟といった役割を担っているようです。不動産担保ローンを検討している人の「正式に審査を申し込む前に、融資が可能かどうかをちょっと聞いてみたい」という要望に対応しているといえます。 不動産担保ローンの本審査には、さまざまな書類が必要です。不動産の登記簿謄本の登記時事項証明書、土地や建物の図面、前年度の固定資産税納付の証明書、固定資産税評価証明書などです。こうした書類を揃えるには、かなりの手間と費用がかかるので、本審査に通過しなかった場合、精神的にもダメージを受けることは想像に難くありません。 まとめ 不動産担保ローンの仮審査は各金融機関によって異なりますが、信用情報や担保物件の簡易的な評価が行なわれています。また、仮審査で融資ができる可能性が高いと判断されても、本審査が通らないことがあるのは住宅ローンと同じです。このような点を理解していれば、気軽に打診ができる事前相談としての仮審査のメリットは小さくないのではないでしょうか。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産担保ローンの審査基準と審査通過のためのポイント 不動産担保ローンを利用して資金調達するには、金融機関の審査に通過する必要があります。しかし、不動産担保ローンの利用経験がないと、審査がどのように行われ、どうしたら審査を通過できるかわからない...記事を読む
不動産担保ローンを利用して資金調達するには、金融機関の審査に通過する必要があります。しかし、不動産担保ローンの利用経験がないと、審査がどのように行われ、どうしたら審査を通過できるかわからないかもしれません。 この記事では、不動産担保ローンの審査基準と審査通過のためのポイントを解説します。 不動産担保ローンの審査基準とは? 不動産担保ローンを申し込むと、金融機関は融資を受ける人の審査をします。その審査結果によって、「お金を貸してもよいか?」「融資できる金額はどのくらいか?」といった判断をします。 不動産担保ローンの場合、審査の対象は融資をする相手の「信用力」と、担保となる「不動産の価値」の大きく二つに分かれます。審査のポイントを理解し、必要書類などを不備なく準備して面談に臨むことで審査に通りやすくなります。 審査を受けるための準備 不動産担保ローンの審査に進むためには、まず金融機関のホームページから仮審査に申し込みます。仮審査の結果をもとに担当者と面談をした後、本申込を行うと担保不動産の実地調査や信用力の審査が行われ、審査に通過すれば契約をし、融資実行という流れになります。本申込の際は、主に以下の書類が必要です。 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど) 実印 印鑑証明書 納税証明書、固定資産税納付書 収入証明書 不動産登記簿謄本 借入残高証明書 商業登記謄本、決算書類、事業計画書など(法人の場合) 印鑑証明書、納税証明書、収入証明書は、自治体の窓口で即日発行が可能です。また、印鑑証明書は、マイナンバーカードがあれば全国のコンビニでも発行できます。固定資産税納付書は手元に保管しているかを確認し、見つからない場合は自治体の窓口で相談しましょう。 関連記事はこちら納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説 不動産登記簿謄本は法務局の窓口のほか、郵送やオンラインによる交付請求も可能です。ローンが残っている不動産を担保にする場合は、ローンを組んでいる金融機関に借入残高証明書の発行を依頼します。法人の場合は商業登記謄本や決算書類、事業計画書なども提出しなくてはなりません。 すべての必要書類を準備するには時間がかかるので、余裕を持って対応することが大切です。金融機関や条件によって、上記以外の必要書類もあるので、担当者に必ず確認しましょう。 「信用力」の審査基準とは? 審査対象の1つ目は融資をする相手の信用力です。これはあらゆるローン商品において必ず審査をされる対象で、担保となる不動産がある不動産担保ローンであっても、その重要性は変わりません。その信用力を計る条件としては、まず収入が挙げられます。収入とは個人であれば年収、企業であれば利益のことです。 収入 当然、収入は多ければ多いほど信用力はアップしますが、金額だけで評価されるわけではありません。毎月の収入に対するローンの返済額の割合を表す「返済負担率」がポイントとなります。例えば、毎月の収入が50万円で、返済額が15万円の場合は、返済負担率は30%になります。返済負担率が高いほど評価は悪くなり、審査に通過する可能性も低くなります。 過去の返済履歴 過去にローンを借り入れたことがあれば、その返済状況が審査されます。そして、ローンの返済が滞ったことがあると信用力は低くなります。短期間かつ1、2回程度の返済の遅れであれば、「不注意による引き落とし口座の残高不足」と見なされ、審査に通過することはありますが、それ以上の延滞が重なると審査は厳しくなります。 勤続年数 個人の信用力では勤続年数も重要です。勤続年数が長くなるほど、安定した収入が継続的に得られている、とみなされるからです。法人の場合は、事業年数ということになります。設立したばかり、あるいは事業年数が短い法人は、信用力がないと判断はされやすくなります。 年齢 不動産担保ローンの返済期間は、10年、20年と長期にわたることもあるため、年齢も審査項目になります。ローンを完済したときに何歳になっているかという「完済時年齢」がポイントで、完済時年齢は、高齢になるほど収入が不安定になるとみなされてしまいます。 他の金融機関からの借入状況 また、他の金融機関からの借り入れの有無と、その借入金額、何社からの借り入れがあるのかという点も信用力の判断基準になります。借入金額の大きさや、借り入れている金融機関の数の多さで審査の通過しやすさが変わります。 「不動産の価値」の審査基準とは? 審査対象の2つ目は不動産の価値です。借り入れの担保不動産の価値が高い、すなわち、不動産の価格が高いほど審査に通りやすく、大きな金額のローンが組めることになります。では、不動産の価格はどうやって測定するのでしょうか。 土地の評価方法 不動産は土地と建物の2つの軸で評価がされます。土地価格はいくつかの基準があり、国土交通省が発表している「公示地価」、都道府県による「基準地価」、国税庁の「路線価」、市町村の「固定資産税評価額」、の4つです。したがって、同じ土地であっても4種類の価格が存在することになります。 関連記事はこちら公示価格とは?実勢価格との違いと活用法をわかりやすく解説 金融機関によって評価の手法はさまざまで、重視する基準も異なりますが、比較的よく用いられるのは国税庁の路線価のようです。路線価の正式名称は「相続税路線価」といい、相続税を算定するときに使う地価のことです。 一般的な不動産の売買価格は公示地価や基準地価に基づいて行われており、路線価は公示地価、基準地価よりも低く、その8割程度とされています。つまり、路線価は、公示地価、基準地価より2割程度は割安に評価されているわけです。 実態よりも低い路線価が採用されている理由は、金融機関のリスクヘッジのためです。不動産担保ローンでは、融資金の回収が不可能となった場合に、担保不動産を売却することで融資金を回収します。しかし、地価が値下がりすると、担保不動産を売却しても融資金を全額回収できない恐れがあります。そこで、より保守的な価格である路線価を採用することで、将来的に地価が値下がりをしていても、融資金を回収できる可能性が高まります。 建物の評価方法 土地に比べて建物の評価の方法は少し複雑です。まず、建物の「再調達価格」を算定するところから始まります。再調達価格とは、その建物を新たに建築、購入した場合に必要となる金額のことです。そして、建物の「延べ床面積」や「法定耐用年数」などを用いて、建物の評価額を決定します。 ただし、建物の築年月が法定耐用年数を超えていると、建物の価格は0円になってしまう点には注意が必要です。例えば、住宅用の木造戸建ての場合、国税庁が定める法定耐用年数は22年です。すると、築22年を超えた戸建ての建物価格は0円になってしまいます。したがって、不動産価格は土地だけを評価すればいいことになります。 審査通過のためのポイント 不動産担保ローンの審査に通過するために、必要書類を早く集め、担当者からの質問には正確に回答して、なるべく多くの情報を提供することを心掛けましょう。担保不動産の評価や信用力も大切ですが、担当者への対応も審査結果に影響を与えます。 金融機関の担当者は日々多くのローン相談を受けており、担保不動産や信用力の調査を徹底的に行うため、虚偽の情報は逆効果です。仮に審査に通過したとしても、融資実行後に嘘が発覚した場合は一括返済を求められる恐れもあります。不利になることも正直に伝えるなど真摯に対応することで、金融機関から信頼を得ることができ、結果として審査に通りやすくなるでしょう。 また、個人事業主の方や法人の場合は、事業計画書の内容も非常に重要です。金融機関の信頼を得られるように、客観的な事業計画を作成することも審査通過のポイントです。内容がわかりやすく、根拠をもとに作られた事業計画であれば、金融機関は審査しやすくなります。 事業計画書を提出する前に、税理士などの専門家に確認してもらうといいでしょう。自分ひとりで事業計画書を作成すると、金融機関の印象を少しでも良くしたいという思いから、売上などの見通しが甘くなることも考えられます。専門家の視点を取り入れることで、実現可能性が高い、説得力のある事業計画を作成できます。 まとめ 不動産担保ローンの審査の対象は、融資をする相手の「信用力」と、担保となる「不動産の価値」であることを説明しました。しかし、審査通過のためには正確な情報を真摯に担当者に伝え、金融機関からの信頼を得ることが大切です。これらのポイントを踏まえたうえで不動産担保ローンの審査に進むといいでしょう。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産担保ローン金利の基礎知識と低金利で借りるコツ ローン金利は、一般的に「○%~○%」というように上限と下限が表示されることがほとんどです。このような表示は、個別のローンごとに適用される金利が変わることを表しています。当然、ローンを借り入れ...記事を読む