「自宅売却」の記事一覧

  • 不動産買取のメリット・デメリットとは?不動産業者の選び方も解説

    一般的に不動産を売却する場合は「不動産買取業者へ売却する方法」と「不動産仲介業者を通して売却する方法」の2種類があります。どのような場合に不動産買取を利用し、どのような不動産業者を選べばわからない人もいるかもしれません。 この記事では、不動産買取業者の選び方のポイントや注意点について詳しく解説します。 不動産買取のメリット まずは、不動産買取のメリットについて解説します。不動産買取業者へ直接売却する場合は、不動産仲介で売却するより手間がなくスピーディーなのが特徴です。不動産会社に買い取ってもらう方法は、即時買取と買取保証の2種類があります。 即時買取 買取保証 即時買取は、売却にかかる期間が短いのがメリットです。不動産仲介で売却を行う場合、買主を探すための期間が必要なため、概ね約3か月〜半年程度の時間がかかります。そのため、離婚や相続などすぐに不動産を売却したい場合は即時買取が向いているでしょう。 買取保証は、不動産買取と不動産仲介の両方の面を持った売却方法です。まずは、市場価格で売却できるように販売活動を行い、売れない場合は最終的に買取業者が買い取ってくれるのがメリットです。買取保証は、売却までに時間がある方やなるべく高値で売りたい方に向いているでしょう。 不動産買取のデメリット 一方で、不動産買取にはデメリットもあります。 不動産買取業者で売却する場合は、不動産仲介よりも売却価格が低くなる傾向があるのがデメリットです。不動産買取業者は、購入した不動産のリフォームやリノベーション、解体などを行い、利益がでるように再販する仕組みです。 そのため、それらの諸費用を引いた買取価格となるため、売却価格が低くなってしまいます。 なるべく高値で売りたい方は、不動産仲介で依頼すると良いかもしれません。不動産仲介で売却する場合は、短期間で売却することが難しい一方で、市場価格に近い価格で売却しやすいです。 不動産買取業者の選び方 不動産買取業者の中には、高額な手数料を取ったり、嘘をついて契約する悪質な業者も存在します。ここからは、不動産買取業者の選び方について解説します。 不動産買取業者の対応エリアを確認 不動産買取業者を選ぶ際は、不動産の対応エリアの確認をしましょう。不動産会社は大手の不動産業者だとしても、すべての地域の不動産買取に対応している訳ではありません。事前に対応しているエリア内であるか確認してから査定をしてもらう必要があります。 また、対応エリアを確認したら、エリア内での買取実績を確認しましょう。地域の相場を調査することで、適正な価格相場が把握でき、高値で買い取ってもらう交渉がしやすくなるかもしれません。 不動産買取業者の専門分野を確認する 不動産会社を選ぶ際は、不動産買取業者の専門分野を確認しましょう。不動産買取業者によって、戸建て、マンション、土地など、買取の専門分野が異なるので、相場に見合わない価格を提示されてしまうケースがあります。 専門分野を確認すると、「戸建ての買取のみ」「マンションの買取のみ」といった物件種別が限られていることもあります。不動産買取業者の専門分野を確認し、より経験や知識が豊富な業者を選定しましょう。 買取実績が豊富な不動産買取業者を選ぶ 不動産買取業者を選ぶ際は、買取実績や事例が豊富な業者を選ぶことも重要なポイントです。買取の実績が豊富であれば、地域の不動産買取の相場や需要なども把握しているため、よりよい条件で買取してくれる可能性があります。 特に戸建ての買取は、地域密着型の不動産買取業者を選ぶのがおすすめです。大手の不動産業者でも買取を行っていますが、地域の環境やニーズを細かく把握しておらず、適正価格を見極めにくい傾向があります。 できるだけ高く買い取ってほしい場合は、買取実績が豊富な買取業者に何社かに見積もりを依頼し、比較検討しましょう。 目的に合ったサービスや対応力を確認する 不動産買取業者を選ぶ際は、目的にあったサービスや対応力も確認しましょう。例えば、即時買取や買取保証を行っているのかは、売却活動を行う上で重要です。さらに、リースバックを取り扱っているかどうかもポイントになるかもしれません。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 また、営業担当者の対応力も大切なポイントとなります。資格を持っているか、経験や知識が豊富か、疑問点にも誠実に答えてくれるかなどを確認し、スムーズに取引できるか確認しましょう。 買取価格を比較する 不動産買取業者を選ぶ際は、複数の買取業者の価格を比較しましょう。さまざまな買取業者の査定を受けることで、買取価格の交渉がしやすくなります。 最低でも、2~3社に見積もりを出してもらうのがおすすめです。不動産買取業者によって得意とする物件種別や実績が変わってくるため、より高く売りたい方は複数の業者に見積もりをお願いしましょう。 不動産買取の流れ ここからは、不動産買取の流れについて解説します。 1.不動産会社の選定 上述のようなポイントに基づき情報収集を行いましょう。売りたい不動産のエリアの買取価格の相場を把握することで、適切な価格で売却でき、買取時の損失を抑えられるでしょう。 また、不動産会社には得意とする専門分野がある場合や、物件種別によっては買取を受け付けていない場合もあります。口コミやWebサイトなどの情報を参考に、売りたい不動産がどこで高く売れそうか情報収集を行いましょう。 2.不動産の査定 近年、物件の条件や住所などを入力するだけで、簡易査定を行ってくれるサービスが増えています。不動産買取業者を扱うポータルサイトでは、複数社に簡単に査定依頼を申し込めます。 「早く売りたい」、「高い査定額を提示する会社に売りたい」という方は、簡易査定に申し込みましょう。ただし、より正確な買取金額を試算してもらうためには、訪問査定が必要となります。 また、査定後に会社を比較する際は、別途手数料が発生しないか、不当な条件になっていないかなどの確認が必要です。付帯するサービスの質や営業担当の対応力についても確認しておきましょう。 3.不動産会社と売買契約 不動産会社の買取金額や契約内容に納得したら、不動産会社と売買契約を結びます。契約書には、不動産の売却価格、支払い条件、引き渡し日などが記載されているため、納得できれば契約を締結します。 契約書は、誤りがないか隅々まで確認をすることが重要です。契約書に印を押した後は、簡単に契約内容を変更できないため注意しましょう。 4.引き渡し 一般的に、売買契約書で定めた日程に、不動産の引き渡しと決済が行われます。決済日は司法書士の立ち合いのもと、登記手続きを行います。また、決済日には、不動産の権利証や固定資産税・都市計画税納税通知書など司法書士に提出する書類が必要となるため、事前に必要なものについて確認しておきましょう。 引き渡し前には、契約時と物件の状況が変わっていないか、物件の状態の最終確認も行われます。 不動産買取の注意点 ここからは、不動産買取の注意点について解説します。 1.買取に対応できない場合もある 不動産買取業者は、不動産会社が買取した物件をリフォームやリノベーション、解体などをして再販することで利益を得ます。そのため、立地の悪い土地や地盤が弱い土地など、再販が期待できない物件は買取をしてくれる不動産業者が限られるでしょう。 ただし、たとえ1社に断られた場合でも、ほかの不動産会社は買い取ってもらえる可能性もあるため、複数の不動産買取業者に査定してもらうようにしましょう。 2.不動産仲介よりも買取相場が安い傾向にある 不動産買取は、不動産仲介よりも買取相場が安い傾向にあります。不動産の買取価格は、不動産会社がリフォームや解体などの付加価値をつけて再販することが前提で買取を行うため、リフォームやリノベーション、解体などにかかる費用が想定されて差し引かれるからです。 ただし、不動産仲介の場合は物件の価格帯や築年数・エリア・不動産の状態などによって、そもそも売却しづらい場合もあります。不動産仲介か不動産買取か迷ったら、不動産会社に相談するのがよいでしょう。 3.仲介手数料はないが、税金が発生する 不動産買取には仲介手数料はありませんが、不動産仲介での売却と同様に税金が発生します。不動産売却時にかかる税金は、「譲渡所得税」、「登録免許税」、「印紙税」の3種類です。 譲渡所得税:不動産を売却して利益が生じる場合にかかる税金。 登録免許税:抵当権抹消登記の際にかかる税金。登録免許税額は不動産1個につき1,000円。 印紙税:不動産売買契約書に貼付する収入印紙代。 出典) ・国税庁「土地や建物を売ったとき」 ・津地方法務局「抵当権の抹消登記に必要な書類と登録免許税」 関連記事はこちら不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説 4.不動産売却時は住宅ローンを完済する必要がある 不動産売却時は、住宅ローンを組んだ不動産に設定された抵当権を抹消する必要があり、そのためにはローンを完済しなければなりません。住宅ローンを売却額で補えない場合は、自己資金から支払う必要があるため注意しましょう。 まとめ 不動産買取は、不動産を早く売却しやすい点がメリットです。しかし、不動産仲介よりも買取価格が安い傾向があるなどの注意点について理解しておくことが大切です。 また、不動産買取業者を選ぶ際は、複数の会社に査定してもらい、高額な価格で買い取ってくれる業者を選ぶことがポイントです。不動産買取業者を選ぶ際は、本記事の買取業者の選び方を参考にしてみてください。 家を売る前に知っておきたい不動産査定のポイントと注意点を解説 家を売るとき、いくらで売れるかの目安を把握するため、不動産査定を検討するでしょう。しかし、不動産査定を依頼する際は、どのようなことに注意すればいいかわからないかもしれません。 この記事では、...記事を読む 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

    2024.08.09自宅売却
  • 不動産売買の仲介手数料とは?相場と上限額や計算方法を解説

    不動産仲介で売買を行う場合、一般的に仲介手数料が発生します。不動産売買の仲介手数料は、不動産会社に対する成功報酬や手続の代行費用といった意味合いがあり、その金額は法律で上限が定められています。 この記事では、不動産売買の仲介手数料の計算方法や支払うタイミングについて解説します。 不動産売買の仲介手数料とは 一般の人がマンションや戸建て、土地などの不動産を売買する場合、不動産会社に仲介を依頼することが多いでしょう。不動産仲介会社に依頼すると、物件の案内から引き渡しまで不動産会社を介して取引を進めます。 仲介手数料は、不動産会社の不動産売買に関わる活動に対して支払う成功報酬として位置付けられており、売買が成立しない場合は支払う必要はありません。 仲介手数料の上限額 不動産売買における仲介手数料は、宅地建物取引業法第46条で上限が定められています。そのため、上限を超える額を請求することは法令違反となりますが、上限額を超えない範囲であれば不動産会社が自由に仲介手数料の金額を決めることが可能です。 出典)全日本不動産協会 埼玉県本部「不動産売買の仲介手数料はいくら必要?計算方法や値引き交渉の可否などを徹底解説!」 上限は法律で決まっていますが、下限は定められていないため、仲介手数料の値引きは不可能ではありません。物件の売却に併せて購入も依頼する場合や、そもそも物件の価格が高い場合などは、交渉できる余地があるでしょう。 一方で、不動産会社にとって仲介手数料は、不動産売買の仲介に関わる人件費、広告費、交通費などの諸経費をまかなう重要な収入源となります。そのため、価格の安い物件や流通性の低い物件では、手数料の値引きが物理的に困難なこともあります。 不動産売買の仲介手数料の計算方法 仲介手数料の上限額は、不動産売買価格によって異なります。売買価格が200万円以下であれば価格の5%、200万超から400万円以下であれば価格の4%、400万円を超える場合は売買価格の3%に消費税を足した金額が上限額です。 不動産売買価格(税別) 仲介手数料の上限額 200万円以下 売買価格×5%+消費税 200万円超〜400万円以下 売買価格×4%+消費税 400万円超 売買価格×3%+消費税 速算式での計算方法 仲介手数料の計算は、前述のとおり不動産の売却価格を200万円以下、200万円超から400万円以下、400万円超の3つに分類し、それぞれに対応する割合をかけて足し合わせると求められます。 しかし、この計算には時間がかかるため、より簡単に仲介手数料を求められる「速算式」が存在します。速算式の計算方法は以下のとおりです。 不動産売買価格(税別) 仲介手数料の上限額(消費税率10%の場合) 200万円以下 (売買価格×5%)×1.1 200万円超〜400万円以下 (売買価格×4%+2万円)×1.1 400万円超 (売買価格×3%+6万円)×1.1 たとえば、売買価格が3,000万円(税別)の場合、表の400万円超に当てはまるので、上限額は105.6万円{(売買価格:3,000万円×3%+6万円)×1.1}と計算できます。 売買価格ごとの仲介手数料の上限 前述のとおり、仲介手数料は法律で定められている上限を超えなければ、自由に設定できます。速算表で計算した売買価格ごとの仲介手数料の上限額は下表となります。 仲介手数料の上限早見表 不動産売買価格(税別) 仲介手数料の上限額(税込) 1,000万円39万6,000円 2,000万円72万6,000円 3,000万円105万6,000円 4,000万円138万6,000円 5,000万円171万6,000円 6,000万円204万6,000円 7,000万円237万6,000円 8,000万円270万6,000円 9,000万円303万6,000円 10,000万円336万6,000円 ※費用は目安であり、実際の金額は不動産仲介会社に確認してください。 不動産取引で仲介手数料を支払うタイミング 仲介手数料は、契約成立に対する成功報酬という位置づけなので、不動産売買が成立した以後に支払う必要が生じます。支払う時期は、売買契約時や物件の引き渡し時の2回に分けて支払うことが一般的です。 また、仲介手数料を支払う人は売主か買主かを問わず、不動産仲介を不動産会社に依頼した人が支払います。売主と買主の個人間で取引をする場合や、売主か買主の一方しか不動産仲介会社へ依頼していない場合には、依頼をしていない人に仲介手数料は発生しません。 しかし、取引でトラブルが生じた場合は当人同士での解決が必要になります。また、不動産会社の知見やネットワークを利用することで、不動産の売買が円滑に進むことが多いでしょう。 出典)全日本不動産協会 埼玉県本部「不動産売買の仲介手数料はいくら必要?計算方法や値引き交渉の可否などを徹底解説!」 不動産取引で仲介手数料のほかに必要な費用 不動産売買に際して物件費用や仲介手数料のほかにもかかる費用があります。売主側と買主側でそれぞれかかる税金については、こちらからご確認ください。 関連記事はこちら不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説 なお、土地と建物の固定資産税について、年度の途中で売主から買主に不動産を引き渡した際は、買主が固定資産税相当額(固定資産税精算金)を支払うことが一般的です。引き渡し後の日数分の税額を日割りで計算し、買主が日割り精算金を売買価格に上乗せして売主に支払います。 出典)公益社団法人 全日本不動産協会「賃貸不動産の売買における固定資産税精算金の取扱いについて」 税金以外にかかる費用 税金以外については、取引によって異なりますが、主に以下のような費用がかかります。 【売主・買主の双方にかかる費用】引越し費用 買主が新たに家を購入し引越しをする場合、すぐに新居に住み替えられないことがあります。仮住まいが必要になる場合は、現在の家から仮住まい、仮住まいから新居と2回引越しすることになり負担も大きくなるため注意しましょう。 売主は現在住んでいる家を売却する際、引越し費用のほか引越し時のごみの廃棄やハウスクリーニング費用についても必要な場合があるので、余裕を持って準備しましょう。 【売主にかかる費用】土地の測量費用 土地の測量費用は、売主が土地を売却する際に隣地との土地の境界を確定するために必要です。測量は義務ではありませんが、買主としては測量された土地を購入することで隣地とのトラブルを回避できるため、土地の売却時に測量を行うことは一般的といえるでしょう。 費用は土地の大きさ、境界の数、隣地所有者の数などにより異なります。自宅によっては測量費用が高額になることもあるので、事前に不動産会社や土地家屋調査士に相談するとよいでしょう。 【買主にかかる費用】住宅ローン関連費用 買主が住宅ローンを組む場合は以下の費用がかかります。家の購入金額だけではなく、借り入れに伴う諸費用についても念頭に入れておきましょう。 住宅ローン事務手数料 住宅ローン保証料 火災保険料(地震保険は任意) 団体信用生命保険料 関連記事はこちらマイホームの購入予算はどう決める?頭金や住宅ローンの考え方 【その他必要に応じてかかる費用】 .bold-text { font-weight: bold; } ・建物の解体費用 売主が土地を売却する際、建物の解体費は、売主が更地にして土地を売る時に発生します。たとえば、国土交通省の公表する「我が国の住生活をめぐる状況等について」によれば、関東の木造住宅の解体費用の相場は1坪あたり3.7万円、50坪で185万円とされています。 出典)国土交通省「我が国の住生活をめぐる状況等について(前回までの補足)」P.7 ・住宅ローンの返済事務手数料 売主に住宅ローンの残債があり、ローンの一括返済を行う場合は手数料がかかる金融機関もあるので予め確認しておきましょう。 まとめ 不動産を売買する際には仲介手数料が必要となります。仲介手数料は、法律で上限が定められているため、不動産売買価格をもとに上限額を算出することも可能です。 仲介手数料が無料になったり、上限額よりも低く抑えられたりするケースもありますが、仲介手数料の金額だけでなく、実際に営業担当に話をしてみたり、手続きの対応スピードをみたりして、不動産会社を選ぶのがおすすめです。 仲介手数料のほかにも税金の支払いや引っ越し費用なども、不動産売買には必要になります。トラブルを避けるためにも、どんな費用がどのように発生するのかを理解してから、実際に不動産取引をするようにしましょう。 マイホーム選びのポイントは?購入経験者のアンケート結果もご紹介 マイホームは「人生最大の買い物」ともいわれます。一度購入すると簡単には手放せないため、「絶対に後悔したくない」と考える人も多いのではないでしょうか。希望条件が決まらない場合は、理想の暮らしを...記事を読む 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

  • 三為契約とは?不動産仲介との違いや注意点を解説

    三為(さんため)契約は、不動産売買で用いられることがある契約形態の1つです。一般的な不動産仲介とは仕組みが異なるため、不動産を売買する予定があるなら三為契約の仕組みを理解しておくと安心です。 この記事では、不動産売買における三為契約の概要や不動産仲介との違い、注意点について解説します。 三為契約とは 三為契約とは、「第三者の為にする契約」という言葉の略称で、民法537条および538条に規定されています。 民法537条(第三者のためにする契約) 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。 2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。 3 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。 民法538条(第三者の権利の確定) 前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。 2 前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。 出典)民法(e-Gov法令検索) 不動産売買では、売主と買主で売買契約を締結するのが一般的です。しかし、三為契約では売主と買主の間に不動産業者が入り、売主と不動産業者、不動産業者と買主がそれぞれ売買契約を締結します。 三為契約を用いた不動産取引を扱う不動産業者は「三為業者」と呼ばれます。 三為契約の仕組み 上述のとおり、三為契約では売主と買主の間に三為業者が入り、それぞれと売買を行います。不動産売買が行われると、通常は所有権の移転登記を行います。しかし、三為契約では不動産業者への所有権移転登記を省略し、買主に直接所有権の移転登記を行う点で異なります。 ※筆者作成 このように、間に入っている不動産業者を省略し、売主から買主へ直接所有権を移転することを「中間省略登記」といいます。 中間省略登記について 中間省略登記は、原則禁止されています。これは取引の当事者をそれぞれA、B、Cとしたときに、物件の所有権がA⇒B⇒Cと移転しているのであれば、不動産登記もA⇒B⇒Cと移転していることを明示すべきであるという考えからです。 しかし、これには例外があり、法務省から法務局、地方法務局に対する通知がされています。(平成19年1月12日法務省民二第52号民事第二課長通知) 出典)一般社団法人 不動産適正取引推進機構「最近の判例から(5) 登記情報と登記原因証明情報の不一致を理由とする中間省略登記申請の却下処分が適法とされた事例」 不動産登記の申請情報(A⇒Cへの所有権移転)と登記原因証明情報(A⇒B⇒Cの取引の経緯)の合致という基本理念を踏まえつつ、A、B、C三者間で「第三者のためにする契約」又は「買主の地位の譲渡」により、AからCへの直接の所有権移転があったと認められる場合は、直接AからCへの所有権移転登記が可能とされています。 三為契約と一般的な不動産仲介との違い 不動産仲介は、不動産仲介会社が売主と買主の間に入って両者の売買契約を成立させる方法です。売主と買主とをつなぐという意味では、三為契約と不動産仲介は同じです。 しかし、三為契約は不動産業者が売主と買主それぞれと売買契約を行うのに対し、不動産仲介は売買契約ではなく媒介契約を行います。不動産仲介にも売主と買主それぞれの仲介となる「両手仲介」、一方の仲介となる「片手仲介」が存在します。 ※筆者作成 なお、不動産仲介では不動産業者が受け取れる仲介手数料は以下のように上限額が決められていますが、三為契約では不動産業者の売買差益の上限は定められていません。 仲介手数料の上限額 契約金額(税別) 仲介手数料の上限額 200万円以下 (契約金額×5%)+消費税10% 200万円超 400万円以下 (契約金額×4%+2万円)+消費税10% 400万円超 (契約金額×3%+6万円)+消費税10% 三為契約における三為業者のメリット 三為契約を用いた不動産売買は、三為業者にとって以下のようなメリットがあります。 仕入コストを下げられる 一般的な買取再販事業の場合、物件を仕入れする際に仕入資金が必要となります。しかし、三為契約の場合、仕入れにあたっての手付金は必要ですが、残金は買主が決済時に支払うことで精算されるため、仕入れにかかる費用を大幅に削ることが可能です。 売買に係る諸費用を軽減できる 一般的な買取再販事業の場合、物件の仕入れ時と販売時に登記費用等の諸費用が発生します。しかし、三為契約であれば、物件の登記費用が発生しないため、費用を抑えることができます。 在庫の保有リスクがない 一般的な買取再販事業の場合、在庫の売れ残りリスクを抱えます。在庫が売れ残ると、仕入資金をローンで賄っている場合には、大きな赤字となるリスクを抱えます。しかし、三為契約では、物件を所有することがないので、在庫の保有リスクがありません。 三為契約における買主の注意点 三為契約を用いた不動産売買は、買主にとって以下のような注意点があります 利用できる融資が限られる 一般的な不動産取引では、物件の売買と同時に登記が行われるため、仕入れや販売、最終的な買主への決済、登記までの一連の取引が明確です。 一方で、三為契約の場合、不動産業者は売買契約を締結するものの、所有権登記は行われません。売主から買主へ物件の所有権が直接移転することから、取引全体の流れが把握しにくいという特徴があります。 このような特徴から、金融機関によって三為契約への融資を取り扱わないことも珍しくありません。 通常より割高な物件を購入する恐れがある 一般的な不動産取引では、売主と買主が双方確認できる売買価格にて合意して取引が行われます。 一方で三為契約の場合、買主は売主の売却価格を把握できず、売主も買主の購入希望価格を知りません。そのため、売主と買主の双方が適正価格を把握していないと、売主は割安に売却し、買主は割高に購入してしまう恐れがあります。 本人確認を徹底する 売主と買主の間に三為業者が入ることで、売主に疑義がある(身元詐称、行為能力制限者)ことを悪意で隠される、過失で見逃す場合でも所有権自体が覆る恐れがあります。売主の顔が直接見えない分、司法書士などにしっかりと双方の本人確認をしてもらいましょう。 また、宅建業者が三為業者として入ることで、不動産の隠れたる瑕疵は三為業者が負うことになるため、不動産取引における売主、買主双方のメリットにもなり得ます。 まとめ 不動産売買における三為契約は、違法な契約ではありません。ただし、一般的な不動産仲介とは仕組みが異なり、買主に不利益が生じる恐れもあります。不動産を購入する際は売買契約書の内容を十分に確認し、不明点を解消してから契約を締結しましょう。 契約不適合責任とは?請求できる権利や期間について解説 不動産取引において、物件の引き渡し後に不具合が発覚する場合があります。物件が契約内容に適合しない場合、売主は買主に対して契約不適合責任を負います。不動産の購入を考えているのであれば、契約不適...記事を読む 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

  • 家売る方法

    家を売る3つの方法とは?それぞれのメリット・デメリットを解説

    家を売る方法は複数あり、どの方法を選ぶかによって売却価格や売りやすさ、費用などが異なります。家を売るうえで何を優先するかを明確にし、自分に合った方法を選択することが大切です。 この記事では、家を売る3つの方法とそれぞれのメリットとデメリットをわかりやすく解説します。 家を売る3つの方法 家の売却方法は主に以下の3つです。 不動産仲介 不動産仲介とは、不動産会社に買い手を見つけてもらう方法です。買い手を探してくれるうえに、買主との条件交渉や契約手続きなども任せられます。家を売るのが初めてでも、不動産仲介なら安心して売却活動を進められるでしょう。一方で、他の方法に比べて売却に時間がかかることがあり、仲介手数料も発生します(詳細は後述)。 不動産買取 不動産買取とは、不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。不動産会社が買主となるため、仲介のように買い手を見つける必要がありません。提示された買取価格に納得できれば、速やかに家を売却できます。ただし、不動産買取は、基本的に他の方法よりも売却価格が低くなります(詳細は後述)。 個人間売買 個人間売買とは、不動産会社を介さず自分で買い手を見つける方法です。売却価格を自由に設定でき、仲介手数料も発生しません。友人や知人などに購入希望者がいるなら、個人間売買も選択肢となるでしょう。ただし、個人間売買は、契約手続きなどをすべて自分で行う必要があります。不動産や税金に関する専門知識が求められるため、初心者には難しいでしょう。現実的には個人間売買が行われるケースは少ないので、以後は不動産仲介と不動産買取に絞って解説していきます。 不動産仲介のメリット・デメリット ここでは、不動産買取と比較した場合の不動産仲介のメリットとデメリットを紹介します。 不動産仲介のメリット 不動産仲介は、家を市場価格で売却できるのがメリットです。 不動産買取は不動産会社が提示する価格で売却する必要がありますが、不動産仲介なら希望価格で購入してくれる買い手が見つかるまで売却活動を続けられます。購入希望者との交渉次第では、市場価格より高値で売却できるかもしれません。 家を少しでも高く売りたい場合は、不動産仲介が向いているでしょう。 不動産仲介のデメリット 一方で、不動産仲介には以下のようなデメリットもあります。 売却に時間がかかる 需要が少ない物件は売りにくい 仲介手数料がかかる 不動産仲介は買い手を見つける必要があるため、不動産会社が買主となる買取に比べると売却までに時間がかかります。「築年数が古い」「人口が少ない」など、住宅需要が少ない物件はなかなか買い手が見つからず、売りにくい傾向にあるので注意が必要です。 また、売買が成立した際は仲介手数料が発生します。契約金額(税別)が400万円超の場合、仲介手数料の上限額は「(契約金額×3%+6万円)+消費税10%」です。 【仲介手数料の計算例:家の売却価格が2,000万円の場合】 (2,000万円×3%+6万円)+(2,000万円×3%+6万円)×10%=72.6万円 手数料は不動産会社や条件などによって異なるため、事前に仲介手数料がいくらかかるかを確認しておくといいでしょう。 不動産買取のメリット・デメリット 続いて、不動産仲介と比較した場合の不動産買取のメリットとデメリットを紹介します。 不動産買取のメリット 不動産買取には以下のようなメリットがあります。 早期の売却が可能 決済時期をコントロールしやすい 需要が少ない物件でも売れる 仲介手数料がかからない 契約不適合責任が免責となる 不動産会社が買主となるので、仲介に比べると短期間での売却が可能です。多くの場合、決済時期にも柔軟に対応してくれるため、住み替えで新居への入居時期が確定している場合などに勝手がいい 方法です。 また、不動産買取は仲介手数料がかからず、一般的には買主に対して生じる契約不適合責任も免責となります。 不動産買取のデメリット 不動産買取で家を売るデメリットは、不動産仲介より売却価格が安くなることです。不動産会社は、付加価値を付けて再販することを前提に家を買い取ります。再販にかかる経費やリスクを加味して買取価格を算出するため、市場価格より安くなる傾向にあります。 ただし、買取は仲介手数料がかかりません。不動産買取と不動産仲介のどちらにするか迷ったら、売却価格だけで比較するのではなく、仲介手数料を考慮した手取り額で比較しましょう。 家を売るときのポイント 家を売るときは、信頼できる不動産会社に不動産仲介を依頼する必要があります。 不動産査定を受ける際は1社だけでなく、複数の不動産会社に依頼することが大切です。査定額は会社によって異なります。査定結果とその根拠を比較すれば、相場をより正確に把握でき、信頼できる不動産会社や担当者を見つけやすくなるでしょう。 不動産査定と家を高く売るポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事はこちら家を売る前に知っておきたい不動産査定のポイントと注意点を解説 まとめ 家を売る場合、通常は不動産仲介と不動産買取の2つが選択肢となります。不動産仲介は高値で売れる可能性がありますが、不動産買取よりも売却に時間がかかり、仲介手数料も発生します。不動産買取は比較的早く売却できますが、不動産仲介に比べて売却価格が安くなるのがデメリットです。 それぞれのメリットとデメリットを理解して、自分に合った方法で家の売却を進めましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 自宅売却の流れや損をしないためのポイントを解説 持ち家に住んでいても、住み替えなどを理由に自宅の売却を検討することがあるでしょう。不動産を売却したことがないと、どのように手続きを進めればよいかわからないかもしれません。また、どうせ自宅を売...記事を読む

    2024.03.20自宅売却
  • 不動産査定とは

    家を売る前に知っておきたい不動産査定のポイントと注意点を解説

    家を売るとき、いくらで売れるかの目安を把握するため、不動産査定を検討するでしょう。しかし、不動産査定を依頼する際は、どのようなことに注意すればいいかわからないかもしれません。 この記事では、家を売る前に知っておきたい不動産査定の基本やポイント、注意点を解説します。 不動産査定の基本 まずは、家を売るときの不動産査定の基本を確認しましょう。 不動産査定とは 不動産査定とは、家がいくらで売れそうかを調査し、推定売却価格を算出することです。一方で、査定結果はあくまでも「これぐらいで売れそう」という予測であり、正確な売却価格ではありません。そのため、不動産会社によって査定額は異なる場合があります。 不動産査定の方法 家を売るときの査定方法は以下の2つです。 机上査定(簡易査定) 机上査定(簡易査定)は、売主の基本情報(氏名、連絡先など)と物件情報(所在地、築年数、床面積など)を用いる査定方法です。不動産会社のホームページなどで必要事項を入力するだけで、手軽に査定結果が分かります。 訪問査定 訪問査定は、不動産会社が現地を直接訪問する査定方法です。周辺環境なども含めて詳細な現地調査が行われるため、より正確な査定額を得られます。 おおよその査定額を知りたい場合は机上査定、早期に家を売却したい場合は訪問査定を検討すると良いでしょう。 不動産査定の依頼方法 不動産査定の依頼方法は以下のとおりです。 AI査定等のサービス 不動産の一括査定サービス 不動産会社への直接相談 AI査定は、似た条件の不動産価格や相場をもとにAIが自動的に査定額を提示するサービスです。中には匿名で利用できるものもあります。 一括査定サービスは、複数の不動産会社に一括で査定依頼ができるサービスです。情報を1回入力するだけで、複数の不動産会社の査定結果を比較できます。 不動産会社に直接相談する方法もあります。不動産査定を依頼したい不動産会社が決まっている場合は、こちらの方法を選ぶといいでしょう。 不動産査定前の準備とポイント 家を少しでも高い価格で売却するには、査定依頼の前にやっておくべきことがあります。ここでは、査定前の準備とポイントを紹介します。 自分自身で売却相場を調べる 不動産査定を依頼する前に売却相場を把握しておけば、不動産会社の査定結果が妥当かを判断しやすくなります。インターネットや不動産会社のチラシなどで、条件の似た物件の成約価格を確認しておきましょう。 取引状況を調べるときは、「REINS Market Information」などの不動産取引情報提供サイトを利用すると便利です。 住宅ローンの有無と残債を把握する 査定前に、住宅ローンの状況を把握しておくことも重要です。家の売却価格によって、住宅ローンを完済できるかどうかが変わります。住宅ローンが残っている場合は、金融機関のアプリや残高通知ハガキを確認するほか、正確に調べる際は残高証明書の発行を依頼しておきましょう。 不動産査定や取引に必要な書類を準備する 査定前に家の売却に必要な書類を準備しておくと、査定結果の正確性が高まり、売却の取引もスムーズに進められます。主な必要書類は以下のとおりです。 登記事項証明書(登記済証) 建築確認済証 検査済証 地積測量図・境界確認書 間取りが確認できる資料(購入時のパンフレットなど) これらの書類がなくても、不動産査定を受けることは可能です。取引時の必要書類は、改めて不動産会社に確認しましょう。 売却の希望時期を決めておく 査定前に、家の売却希望時期を決めておきましょう。買い手を見つける必要があるため、すぐに売却できるとは限りません。一般的には、売却完了までに数ヵ月~半年程度かかります。売却活動に充てる期間は、ある程度の余裕をもって確保しておくと安心です。 不動産査定の注意点 不動産査定を依頼する際は以下の点に注意しましょう。 複数の不動産会社に依頼する 査定額はあくまでも予想売却価格であるため、1社だけに依頼すると、査定結果が妥当なものか判断するのが難しくなります。複数の不動産会社に依頼して、査定結果を比較検討することが大切です。 信頼できる不動産会社を選定する 複数の不動産会社に不動産査定を依頼したら、その中から信頼できる会社を選定しましょう。家の売却に強く、実績が豊富な不動産会社を選べば取引をスムーズに進められます。 売主と媒介契約を結ぶために、相場よりも高い査定額が提示される可能性もあるため、「査定額が高い」という理由だけで選ぶのは危険です。 「査定結果について明確な根拠を提示してくれる」「質問にわかりやすく回答してくれる」などに注目して、信頼できる不動産会社、担当者を選びましょう。 自分自身が相場観を持つ 不動産会社と相談はできますが、最終的な売り出し価格は売主が自分で決めなくてはなりません。自身の相場観を持っておけば、売り出し価格を判断しやすくなるでしょう。上述したように、査定前に自分自身で売却相場を調べておくのがおすすめです。 家の修繕歴や瑕疵などをできるだけ正確に伝える 瑕疵(かし)とは、「雨漏りする」「床が傾斜している」など、土地や建物に何らかの欠陥や不具合があることです。家に修繕歴や瑕疵があると、査定結果に影響を与えます。 売主には契約不適合責任があり、売却後に瑕疵が発覚すれば損害賠償などに発展する恐れがあります。売却する家に修繕歴や瑕疵などがある場合は、査定依頼の際にできるだけ正確に伝えましょう。 まとめ 家の売却をスムーズに進めるには、複数の不動産会社に査定依頼をして、信頼できる不動産会社を選ぶ必要があります。査定前に、住宅ローン残高の確認や売却相場の調査などの準備をしっかりと行うことが大切です。 家を売ることを検討していて、査定額を手軽に知りたい場合は、AI査定や一括査定を上手に活用しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説 不動産売買の際には、購入する側と売却する側のそれぞれに税金がかかります。不動産売買の予定がある場合は、あらかじめどのような税金が発生するのか知っておくことが重要です。 この記事では、不動産の...記事を読む

  • 不動産売買の税金

    不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説

    不動産売買の際には、購入する側と売却する側のそれぞれに税金がかかります。不動産売買の予定がある場合は、あらかじめどのような税金が発生するのか知っておくことが重要です。 この記事では、不動産の購入と売却のそれぞれにかかる税金について解説します。 不動産の「購入」にかかる税金 まずは、不動産の購入にかかる税金の種類と計算方法を紹介します。不動産の購入にかかる税金は、「不動産取得税」「登録免許税」「印紙税」の3種類です。順に解説します。 不動産取得税 不動産取得税とは、土地や家屋などの不動産を取得した際に課される税金です。都道府県から送付される納税通知書を使用して、取得日から半年から1年後に納付します。税額は以下の算式で計算されます。 課税標準額(固定資産税評価額)×税率(本則4%) ただし、令和6年(2024年)3月31日までは、居住用の住宅を購入した場合に限り、以下2つの軽減措置があります。 土地部分のの課税評価額が2分の1に減額 土地部分も3%の軽減税率が適用 出典) ・総務省「不動産取得税」 ・東京都主税局「不動産取得税」 登録免許税 登録免許税とは、所有権の保存登記(新築住宅)や移転登記(中古住宅)、住宅ローンの抵当権設定登記などを行う際に納める税金です。法務局で登記手続きを行う際に納めるので、納税も含めて司法書士に依頼するのが一般的です。税額は以下の算式で計算されます。 課税標準額×税率 課税標準額と税率は登記の内容によって異なり、住宅については軽減税率が適用されます。 登記の内容 課税標準額 本則税率 軽減税率 建物の所有権保存登記 登記官が認定した価額 0.4% 0.15%※1 土地の所有権移転登記 固定資産税評価額 2% 1.5%※2 建物の所有権移転登記 固定資産税評価額 2% 0.3%※1 抵当権設定登記 借入金額 0.4% 0.1%※1 ※1 令和6年(2024年)3月31日まで ※2 令和8年(2026年)3月31日まで 印紙税 印紙税とは、契約書や領収書などに課される税金です。不動産の購入では、売買契約書や住宅ローンの金銭消費貸借契約書などに税額分の収入印紙を貼付します。印紙税額は以下のとおりです。 契約金額 不動産売買契約書()は軽減税率※ 工事請負契約書 金銭消費貸借契約書 100万円超500万円以下 2,000円(1,000円) 400円~2,000円 2,000円 500万円超1,000万円以下 1万円(5,000円) 1万円 1万円 1,000万円超5,000万円以下 2万円(1万円) 2万円 2万円 5,000万円超1億円以下 6万円(3万円) 6万円 6万円 1億円超5億円以下 10万円(6万円) 10万円 10万円 5億円超10億円以下 20万円(16万円) 20万円 20万円 ※ 令和6年(2024年)3月31日まで 出典) ・国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」 ・国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」 不動産購入時の税金対策 ここでは、不動産購入時に利用できる税金対策を2つ紹介します。 住宅ローン控除 住宅ローンを利用して住宅の新築、取得または増改築等をした場合に利用できる制度です。一定の要件を満たすと、最大13年間、年末ローン残高の0.7%が所得税(一部、翌年の住民税)から控除されます。初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で控除を受けられます。 住宅ローン控除については、以下の記事で詳しく説明しています。 関連記事はこちら【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 認定住宅新築等特別税額控除 個人が認定長期優良住宅や認定低炭素住宅など(以下認定住宅)を新築及び取得した場合に、一定額をその年の所得税額から控除できる制度です。控除額の計算方法は以下のとおりです。 標準的なかかり増し費用(限度額650万円)×10% 標準的なかかり増し費用とは、認定住宅の基準適合に必要な費用のことです。認定住宅の床面積に応じて計算します。ただし、住宅ローン控除とは併用できないので注意が必要です。 出典)国税庁「No.1221 認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)」 不動産の「売却」にかかる税金 次に、不動産の売却にかかる税金の種類と計算方法を紹介します。不動産の売却にかかる税金は、「譲渡所得税」「登録免許税」「印紙税」の3種類です。不動産購入と異なる譲渡所得税を中心に解説します。 譲渡所得税 不動産を売却して利益(譲渡所得)が生じる場合は、他の所得(給与所得、事業所得など)と区分して譲渡所得税がかかります。発生した譲渡所得税は確定申告をして納税を行います。税額算出に用いられる譲渡所得金額は以下の算式で計算されます。 譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額 取得費:売却する不動産の購入代金(建物は減価償却費相当額を控除)、仲介手数料など 譲渡費用:仲介手数料、不動産を売却するための測量費、建物の取壊し費用など ※特別控除額の詳細は後述 このように算出した譲渡所得金額に税率を掛けて計算します。税率は、「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」で以下のように異なります。 区分 税率 長期譲渡所得(所有期間5年超) 20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%) 短期譲渡所得(所有期間5年以下) 39.63%(所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%) 出典)国税庁「土地や建物を売ったとき」 登録免許税 売却時は、抵当権抹消登記の際に登録免許税がかかります。登録免許税額は、不動産1個につき1,000円です。住宅の場合、土地1個と建物1個で合計2,000円となります。 所有権移転登記も必要ですが、登録免許税額は買主負担が一般的です。 出典)法務局「抵当権の抹消登記に必要な書類と登録免許税」 印紙税 売却時は、不動産売買契約書に貼付する収入印紙が必要です。通常は売主と買主が1通ずつ契約書を保管するため、売却時にも印紙税が生じます。印紙税額は購入時と同様です。 不動産売却時の税金対策 不動産売却時の税金対策として利用できる制度を3つ紹介します。 3,000万円の特別控除 マイホームを売却したときに、所有期間に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例です。課税所得を大きく減らせるため、譲渡所得税の負担が軽減されます。 以前住んでいた住宅を売却する場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。ただし、親子や夫婦などの近しい親族へ売却する場合は控除を受けられません。 出典)国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」 マイホーム売却時の軽減税率の特例 所有期間10年超のマイホームを売却する場合、一定の要件を満たすと、長期譲渡所得にかかる税率(通常は20.315%)が以下のように軽減されます。 長期譲渡所得金額 税額 6,000万円以下の部分 14.21%(所得税10%、復興特別所得税0.21%、住民税4%) 6,000万円超の部分 20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%) この特例は、上述した3,000万円の特別控除と併用可能です。 出典)国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」 損益通算・繰越控除 令和5年(2023年)12月31日までに所有期間5年超のマイホームを売却して譲渡損失が生じた場合、一定の要件を満たすと、その損失を他の所得(給与所得、事業所得など)から控除できる損益通算が可能です。 また、損益通算をしても控除しきれなかった譲渡損失は、翌年以後3年以内に繰り越して控除できる、繰越控除が可能です。 出典) ・国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」 ・国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」 まとめ マイホームの売買は軽減税率や特別控除などの特例が充実しているため、うまく活用すれば税負担の軽減につながります。不動産売買の予定がある場合は、物件の売買価格や諸費用だけでなく、どんな税金がいくらかかるのかも把握しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住み替えの流れや費用、利用できる税制上の特例を解説 ライフスタイルの変化などから、「住み替え」を検討することがあるかもしれません。しかし、住み替えたいと思っても、どのように住み替えを進めていいか、わからないことが多いかもしれません。また、住み...記事を読む

  • 高齢者の自宅売却トラブルに注意

    高齢者の自宅売却のトラブルが増加!回避するための対策とは?

    「強引に勧誘された」「高額の違約金を請求された」など、高齢者の自宅売却に関するトラブルが増加しています。 相手に言われるがまま売買契約をしてしまうと、高齢者の場合は「住む場所が見つからない」「違約金の支払いで老後資金が足りない」などの問題が生じる恐れがあります。老後も持ち家で安心して生活するには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。 この記事では、高齢者の自宅売却のトラブル事例や回避するための対策を紹介します。 高齢者の自宅売却トラブルが増加している 国民生活センターの資料によると、契約当事者が60歳以上の自宅売却に関する相談件数は、以下のとおり推移しています。 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 571件 564件 657件 616件 610件 出典)国民生活センター「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」 2018年以降は600件を超えているものの、全体的には横ばいで推移しています。 一方で、70歳以上の高齢者の自宅トラブルは増加傾向にあります。以下は、契約当事者の年代別相談割合です。 60歳未満 60~69歳 70~79歳 80歳以上 2016年 35.6% 28.2% 20.6% 15.6% 2017年 35.0% 25.5% 21.9% 17.6% 2018年 34.8% 19.9% 26.1% 19.3% 2019年 34.5% 19.6% 25.5% 20.4% 2020年 30.1% 17.6% 30.4% 21.9% 出典)国民生活センター「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」 60歳未満および60歳代は年々減少していますが、70歳以上は増加が続いています。2020年は70歳以上の相談割合が52.3%で、全体の半分以上を占めている状況です。 自宅売却はクーリング・オフ制度を利用できない クーリング・オフとは、一度契約の申し込みや締結を行っても、一定期間内であれば無条件で申し込みの撤回や契約解除ができる制度です。しかし、自宅を不動産業者に売却する場合には、このクーリング・オフ制度を利用できません。 クーリング・オフはできないものの、契約破棄することも可能です。ただし、ほとんどの場合で契約解除には、売買金額の2割程度の違約金が発生するため、経済的に大きな負担となります。 高齢者の自宅売却に関するトラブル事例 高齢者の自宅売却について、具体的にどんなトラブルが発生しているのでしょうか。ここでは、国民生活センターに寄せられた相談事例を3つ紹介します。 長時間の居座り 長期間の勧誘を受け、強引に契約させられた80代女性の事例です。 1人暮らしの自宅に突然、不動産業者が2人で訪ねてきた。「住んでいるマンションを売らないか」と勧められ、連日朝10時から夜まで居座られた。弱気になり「売値を200~300万円上乗せしてくれるなら」と答えたら、2,300万円で売ることになってしまった。書面に署名押印したが、何の書類か覚えておらず、「やっぱり待ってほしい」と言っても取り合ってもらえなかった。 高額の解約料請求 強引に契約させられ、「解約には違約金がかかる」と言われた80代女性の事例です。 不動産業者から「自宅マンションを売ってほしい」と何度か電話があったが、断っていた。後日、外出先から戻るとエントランスで不動産業者が待っており、悪いと思って自宅に上げた。業者は「住み替えの物件を紹介する」と言って勝手に話を進め、内容を理解できないまま書面に署名押印し、その場で手付金約450万円を渡された。翌日不動産業者に契約をキャンセルすると電話すると、「解約料として約900万円支払ってほしい」と言われた。 契約に関する虚偽の説明 嘘の説明を信じて、自宅の売却と賃貸借の契約をしてしまった70代女性の知人の事例です。 知人宅に電話があり、その後不動産業者が訪ねてきた。知人はその日のうちに自宅マンションを約2,000万円で売却し、家賃18万円でそのまま住む契約をした。マンションの相場はもっと高額なはずだが、「このマンションは10年後には取り壊される」という虚偽の説明を信じて契約してしまった。知人は1週間後に不動産業者と会い、「キャンセルしたい」と伝えたが、できないと説得されて手付金を受け取ってしまった。 高齢者が自宅売却のトラブルを回避するには? 自宅売却に関するトラブルを避けるために、以下の3つを心掛けましょう。 わからない、納得できない場合は絶対に契約しない 不動産業者から話を聞いても、契約内容がわからない場合や納得できない場合は絶対に契約しないことが大切です。不動産売買はさまざまな手続きが必要で、仕組みも複雑です。自宅売却はクーリング・オフができないため、よくわからないまま契約してしまうと後悔するかもしれません。 1人で対応すると相手のペースで話を進められ、適切な判断ができない可能性があります。契約前に家族や友人などに相談し、不動産業者との面談ではできるだけ立ち会ってもらいましょう。相談できる身近な人がいない場合には、弁護士などの専門家に相談するのもひとつの手です。 迷惑な勧誘ははっきり断る 「夫(妻)と相談します」「考えてみます」のような断り方をすると、可能性があると判断され、今後も勧誘が続いてしまいます。不動産業者から電話や訪問で勧誘されても、自宅を売却するつもりがないなら「自宅は売りません」とはっきり断ることが大切です。 今後も勧誘してほしくない場合は、「もう勧誘はやめてください」と明確に意思を伝えましょう。消費者が断ったにも関わらず、不動産業者が勧誘を続けることは宅地建物取引業法で禁止されています。 不要な勧誘を避けるには、「知らない電話番号からの電話には出ない」「訪問されても玄関ドアを開けない(インターフォンで対応)」などの対策も有効です。 トラブルになりそうな場合は相談する 「不動産業者の説明がよくわからない」「よく考えずに契約してしまった(解約したい)」など、トラブルになりそうな場合は、なるべく早く消費者生活センターなどに相談しましょう。 連絡先:消費者ホットライン「188(いやや)」 消費者ホットライン「188」に電話し、アナウンスに従って自宅の郵便番号を入力すると、最寄りの消費者生活センターや市区町村の消費生活相談窓口につながります。また、長期間の居座りは不退去罪に当たる可能性があるため、状況によっては警察を呼ぶことも検討しましょう。 まとめ 高齢者が自宅売却のトラブルに巻き込まれると、住む場所が見つからなかったり、高額の違約金を請求されたりする恐れがあります。不動産業者から電話や訪問で勧誘されても、自宅を売るつもりがないなら「売りません」とはっきり断ることが大切です。 不安な場合やトラブルに巻き込まれそうなときは、消費者ホットライン「188」に電話して相談しましょう。 自宅の売却相談はこちらから SBIシニアの住まいとお金なら、金融と不動産の両方の知識で丁寧にアドバイスいたします 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住まいの終活で考えておくべきポイントをFPが解説 「終活」という言葉が一般に広がるなか、近年、「住まいの終活」についても注目されるようになってきました。どのような内容なのか、どうしたらいいのかなどについて考えてみましょう。 「住まいの終活」...記事を読む

  • 自宅売却の流れや損をしないためのポイントを解説

    自宅売却の流れや損をしないためのポイントを解説

    持ち家に住んでいても、住み替えなどを理由に自宅の売却を検討することがあるでしょう。不動産を売却したことがないと、どのように手続きを進めればよいかわからないかもしれません。また、どうせ自宅を売るなら「少しでも高く売却したい」「損をしたくない」と思うのではないでしょうか。 自宅の売却で失敗を避けるには、手続きの流れや注意点を理解してから売却活動を始めることが大切です。この記事では、自宅売却の流れや損をしないためのポイント、かかる費用・税金について詳しく解説します。 自宅を売却する2つの方法 自宅を売却する方法は、一般的に「買取」と「仲介」の2つに分けられます。 買取:不動産会社に直接買い取ってもらう方法 仲介:不動産会社に買い手を見つけてもらう方法 買取と仲介は特徴が異なるので、状況に合わせて自分に合った方法を選択する必要があります。まずは、買取と仲介それぞれのメリット・デメリットを確認しておきましょう。 買取のメリット・デメリット 買取は不動産会社が買主となるため、短期間で売却が可能です。購入希望者の内覧に対応する必要がなく、買主に対して生じる「契約不適合責任」も免責となるのが一般的です。なお、「契約不適合責任」とは、以前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものです。2020年4月の民法改正に伴い、「契約不適合責任」として整理・追加がされています。 一方で、買取は仲介に比べると売却価格が低い傾向にあります。不動産会社は、付加価値をつけて再度販売することを前提に買取を行います。再販にかかる経費やリスクを考慮して買取価格を決定するため、市場価格よりも安くなります。 買取は早期に現金化できるので、住み替え先が決まっていて売却を急いでいる場合や、流通性が低く買い手が付きづらい物件などに向いています。 仲介のメリット・デメリット 仲介は、自宅を市場価格で売却できるのがメリットです。希望価格で購入してくれる買い手が見つかるまで売却活動ができるので、買い手が見つかれば相場より高い価格で売却することも可能です。 一方で、仲介は売却までに時間がかかる傾向にあります。不動産会社と媒介契約を締結し、主に個人の買い手を見つける必要があるため、買取に比べると売却までに時間がかかってしまいます。また、売買が成立した場合は仲介手数料の支払いが必要です。 自宅売却に時間をかけられる場合や、出来るだけ市場価格に近い価格で売却したい場合は、仲介が向いているでしょう。 自宅売却の流れ 自宅の売却は以下の流れで手続きを進めます。 査定を依頼して不動産会社を選ぶ 売却活動をする(仲介の場合) 売買契約を締結する 決済・引き渡しを行う 買取は不動産会社が買主となるため、2の売却活動は不要です。それぞれの項目について詳しく説明します。 査定を依頼して不動産会社を選ぶ 自宅を売却するときは、まず不動産会社に査定を依頼して、自宅がいくらで売れそうかを確認します。査定金額は不動産会社によって異なります。買取にせよ仲介にせよ、複数の会社に依頼して査定金額を比較することが大切です。 買取の場合は、買取価格が一番高い会社を選びましょう。基本的に提示された買取価格が変更されることはありません。 仲介の場合は、不動産会社と媒介契約を締結する必要があります。査定金額を確認した上で、以下の3種類から媒介契約を選びましょう。 一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約 一般媒介契約は、複数の不動産会社に仲介を依頼できる契約です。多くの購入希望者にアプローチできますが、物件情報のレインズ(不動産流通機構)への登録や売主に対する売却活動の報告は義務付けられていません。また、複数の不動産会社とやり取りするので手間がかかります。 専任媒介契約は、1つの不動産会社のみに仲介を依頼できる契約です。売主が自分で見つけた買い手と直接取引することも可能です。不動産会社は媒介契約締結後7営業日以内に物件をレインズに登録し、売主に対して2週間に1回以上売却活動の状況を報告する義務があります。 専属専任媒介契約も、1つの不動産会社のみに仲介を依頼できる契約です。ただし、売主は自分で見つけた買い手と直接取引はできません。レインズへの登録は媒介契約締結後5営業日以内、売主に対して1週間に1回以上の報告が義務付けられています。 専任媒介契約と専属専任媒介契約の契約期間は3ヵ月で、実務上は両者に大きな違いはありません。信頼できる会社を1社選定できる場合は、専属専任や専任媒介契約がおすすめです。1社に絞るのが難しく、複数の会社に依頼したい場合は一般媒介契約を検討しましょう。 売却活動をする(仲介の場合) 仲介の場合、買い手を見つけるための売却活動を行います。売却活動のほとんどは不動産会社に任せられます。ただし、住みながら売却活動する場合は、内覧に応じるなどの手間が発生します。 すべてを不動産会社任せにするのではなく、「いくらで売却したい」「いつまでに売却したい」といった希望をはっきり伝えることが大切です。後でトラブルにならないように、定期的に進捗状況を確認し、不明点や疑問点があればその都度解決しておきましょう。 売買契約を締結する 自宅の買い手が決まったら売買契約を締結します。売買契約時の主な必要書類は以下のとおりです。 不動産売買契約書 収入印紙(契約書に貼付する印紙代) 本人確認書類 印鑑(実印) 印鑑証明書 登記済権利書(または登記識別情報) 固定資産税納税通知書 手付金の領収書 必要書類は不動産会社が提示してくれるので、確認して準備を進めましょう。 売買契約時には、通常、売買代金の一部(10%程度)を手付金として受け取ります。契約書に手付解除の定めがあれば、期限日までに買主は支払った手付金を放棄、売主は受け取った手付金の倍額を払うことで契約解除が可能です。 契約後にトラブルが発生しないように、あらかじめ契約解除の方法などについて確認しておくことが大切です。 決済・引き渡しを行う 売買契約後は、契約書で取り決めた決済日に残金が入金されます。自宅は決済日に合わせて買主に引き渡しを行います。 住宅ローンが残っている場合は、抵当権の抹消手続きも必要です。不動産会社を通じて司法書士に依頼しておくと、スムーズに手続きを進められます。 自宅売却にかかる期間 自宅の売却を決めてから売買が成立するまで、どれくらいの期間が必要なのでしょうか。仲介で売却する場合の標準的な期間は以下のとおりです。 査定から媒介契約:2週間~1ヵ月程度 売却活動:1ヵ月~半年程度 売買契約から決済・引き渡し:1~2ヵ月程度 査定から引き渡しまで、3ヵ月~1年程度かかるのが一般的です。実際には、買主を見つけるまでの期間によって大きく変わってきます。人気のエリアや物件であれば、問い合わせも多く売却に苦労しないかもしれませんが、流通性の低いエリアや物件では1年以上売却にかかるでしょう。 一方で、買取は売却活動を行う必要がないので、抵当権が設定されていなければ数週間で売却できるケースもあります。 自宅売却で損をしないためのポイント 自宅の売却は取引金額が大きいので、手続きの進め方によって手元に残るお金が変わってきます。ここでは、自宅売却で損をしないためのポイントをお伝えします。 不動産の相場観を身に付ける 自宅売却で損をしないためには、いくらで売れそうか不動産の相場観を身に付けてから売却活動を始めることが大切です。インターネットや不動産会社のチラシなどで、住んでいる地域の同じような物件がいくらで売りに出されているかを確認しておきましょう。 不動産には相場があるので、「いくらで売りたいか」と「いくらで売れるか」は別問題です。希望売却価格と相場に「いつまでに売りたいか」という要素を組み合わせて、売出価格を慎重に判断する必要があります。 売出価格が高すぎると買い手が見つからず、安すぎると手元に残る金額が減ってしまいます。仲介を依頼する不動産会社を選ぶ段階で、あまりに高すぎる査定金額や、反対に・低すぎる査定金額を提示する会社は除外するといいでしょう。 不動産売却の仕組みを理解する 自宅を売却する前に、不動産売却の仕組みを理解することも必要です。取引ルールを理解しないまま売却活動を始めると、不動産会社からの提案や売買契約の内容が正しいか判断できません。有利な条件での売却が難しくなり、トラブルが発生するリスクも高まります。 特に確認しておきたいのが、不動産仲介におけるルールです。先程も触れたように、媒介契約は種類によって報告義務などが細かく定められています。 たとえば、一般媒介契約は複数の会社に仲介を依頼できますが、レインズへの登録や売主への報告は義務付けられていません。レインズは、不動産会社専用のネットワークシステムです。全国の物件情報が共有されているので、レインズに登録するほうが早期の売買成立につながります。また、不動産会社から定期的に報告をもらえるほうが手間はかからず、安心して売却活動を進められるでしょう。 媒介契約を選択する際には、流通性の高く人気のエリアの物件では一般媒介による売却とし、流通性が低く買い手が見つかりづらい物件では専任媒介を選択するといいかもしれません。媒介契約の選択に正解はありませんが、状況に合わせて自分にあった契約を選ぶことが大切です。 信頼できる会社を選ぶ 自宅売却で損をしないためには、不動産会社選びも重要なポイントです。さまざまな不動産会社が仲介に対応していますが、実績や強み、顧客への対応などは会社によって異なります。不動産会社を選ぶときは、以下のポイントを重視しましょう。 仲介におけるルールや報告義務を順守している 自分の相場感と査定金額が大きく離れていない 査定金額にしっかりとした根拠が示されている 疑問点や不明点を質問したときに丁寧に回答してくれる 不動産仲介の実績が豊富 インターネット上に悪い評判がない(少ない) 希望条件に近い形で売却できるように、複数の会社に査定を依頼して、信頼できる会社を見極めましょう。 自宅売却のための体制を整える 自宅を売却するときは、希望条件で売却できる体制を整えましょう。不動産は建物の外観だけでなく、部屋の状態も重要な要素です。部屋をきれいな状態に保ち、家具のレイアウトなども工夫すれば、内覧者によい印象を持ってもらえます。 また、売却を急ぐと売却価格が安くなりやすいので、余裕をもって売却活動を進めましょう。可能であれば、空室の状態で売却活動を行うほうが希望条件で売却しやすくなります。 自宅売却でかかる費用・税金 自宅の売却では、仲介手数料などの費用や税金がかかります。さらに、住宅ローンが残っている場合は、自宅の売却代金でローンを完済しなくてはなりません。 実際に手元に残るお金は売却価格とは異なるので、費用や税金も考慮して売却を進める必要があります。ここでは、自宅売却でかかる費用と税金について詳しく解説します。 仲介手数料 仲介手数料は、仲介での売買が成立したときに不動産会社に支払う手数料です。宅地建物取引業法により、不動産会社が受け取れる仲介手数料の上限額は以下のように決められています。 仲介手数料の上限額 契約金額(税別) 仲介手数料の上限額 200万円以下 (契約金額×5%)+消費税10% 200万円超 400万円以下 (契約金額×4%+2万円)+消費税10% 400万円超 (契約金額×3%+6万円)+消費税10% たとえば、自宅の売却価格が2,000万円の場合、仲介手数料は以下のように計算します。 (2,000万円×3%+6万円)+(2,000万円×3%+6万円)×10%=72.6万円 仲介手数料は、上限額いっぱいで請求されるのが一般的です。査定金額を確認した段階で、仲介手数料の概算金額を計算しておきましょう。 印紙税 不動産売買契約書は印紙税の課税文書であるため、税額分の収入印紙を貼付する必要があります。印紙税額は、以下のように契約金額によって異なります。 印紙税額 契約金額(税別) 印紙税額 軽減税額 100万円超500万円以下 2,000円 1,000円 500万円超1,000万円以下 1万円 5,000円 1,000万円超5,000万円以下 2万円 1万円 5,000万円超1億円以下 6万円 3万円 1億円超5億円以下 10万円 6万円 2022年3月31日までに作成される売買契約書の印紙税については、軽減税額が適用されます。売主分と買主分の2通の契約書を作成する場合は、それぞれ印紙税を負担します。 出典)国税庁「印紙税額一覧表(2021年5月現在)」 抵当権抹消に関する費用 売却する自宅に抵当権が残っている場合は、抹消手続きが必要です。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1つにつき1,000円です。土地と建物にそれぞれ抵当権が設定されている場合、登録免許税額は2,000円となります。 抵当権抹消登記を司法書士に依頼する場合は別途報酬が発生するので、見積もりをとって費用を確認しましょう。 出典)法務局「登録免許税の計算」 固定資産税・都市計画税の精算 固定資産税・都市計画税は、1月1日現在で不動産を所有している人に課税される税金です。その年の途中で不動産を売却しても、1月1日現在の所有者に全額が請求されます。 売買契約日以降の固定資産税・都市計画税は買主の負担となるため、日割り計算をして売買契約時に精算するのが一般的です。売買契約を締結する前に、不動産会社に固定資産税・都市計画税の精算方法を確認しておきましょう。 譲渡所得税 譲渡所得税は、不動産の売却で利益(譲渡所得)が出た場合にかかる税金です。譲渡所得に一定の税率をかけて税額を計算します。譲渡所得を求める計算式は以下のとおりです。 譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額 譲渡価額は自宅の売却価格です。 取得費は、自宅を取得するためにかかった費用です。自宅の購入代金や仲介手数料などが含まれます。ただし、建物については減価償却費を控除した後の金額となります。取得費がわからない場合は、譲渡価額の5%相当額を取得費とみなすことが可能です。 譲渡費用は、自宅を売却するときに払う仲介手数料、建物の取り壊し費用などです。一定の要件を満たして税制特例が利用できる場合は、特別控除額として譲渡所得から一定額を控除できます。 譲渡所得が求められたら、一定の税率をかけて税額を計算します。譲渡所得税の税率は、自宅の所有期間に応じて以下のように異なります。 譲渡所得税額 区分 所得税 復興特別所得税 住民税 税率合計 長期譲渡所得 15% 0.315% 5% 20.315% 短期譲渡所得 35% 0.63% 9% 39.63% 自宅を売却した年の1月1日現在で所有期間が5年超の場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となります。 出典)国税庁「土地や建物を売ったとき」 自宅売却で利用できる税制特例 自宅(マイホーム)を売却して譲渡所得が生じた場合は、「3,000万円の特別控除の特例」が利用できます。所有期間に関わらず、一定の要件を満たす場合は譲渡所得から最高3,000万円が控除できるため、譲渡所得税の節税になります。 このほかに、「軽減税率の特例」「買換え(交換)の特例」といった税制特例も用意されています。 税制特例を利用するには、必要書類を添付した上で確定申告書の提出が必要です。税制特例は併用できないものあり、どれを利用するのが有利かは状況によって異なります。自分で判断できない場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。 出典)国税庁「土地や建物を売ったとき」 住宅ローンが残っている自宅を売却する際の注意点 住宅ローンが残っている自宅を売却するには、ローンを完済し抵当権を抹消する必要があります。一般的には、自宅の売却代金が残債を上回っている場合は、売却代金を返済原資としてローンを完済できるので、問題なく売却ができます。一方で、自宅の売却代金が残債を下回っている場合は、自己資金で補填したり、住み替えローンを利用する必要があります。売却後もローンが残っている場合、金融機関が抵当権の抹消に同意してくれないためです。 住宅ローンが残っている自宅を売却する際は、事前に住宅ローンの残債と自宅の売却価格を把握し、ローンを完済できるかを確認したうえで売却活動を行うとよいでしょう。 まとめ 自宅を売りたいと思ったら、まずは自宅売却の流れや相場感、不動産の取引ルール、費用などを理解することが大切です。その後は複数の不動産会社に自宅の査定を依頼し、信頼できる会社を見極めることがポイントとなります。自宅売却を成功させるために、しっかりと準備を整えてから売却活動を始めましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住み替えの方法と成功させるポイント 持ち家に住んでいても、転勤や家族構成の変化などのライフスタイルの変化などを理由に住み替えを検討することがあるでしょう。 住み替えは新居の購入や自宅の売却、住宅ローンの手続きなど、同時に進めな...記事を読む

    2021.09.22自宅売却
  • 任意売却にリースバックを利用するメリットや注意点を解説

    任意売却にリースバックを利用するメリットや注意点を解説

    住宅ローンの返済が困難になって自宅を売却せざるを得なくなった場合、任意売却をすることで競売を回避できます。任意売却なら自分の意志で自宅を売却できるため、市場価格に近い値段で売却できる可能性があります。しかし、任意売却でも競売でも、自宅の売却後には新たに住む家を探す必要があります。 そこで、任意売却にリースバックを利用すれば、住宅ローンの返済に充てる資金を確保しながら、そのまま自宅に住み続けることが可能です。この記事では、任意売却にリースバックを利用するメリットや注意点について解説します。 任意売却とは 任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になったときに、債権者と債務者の間で合意し、担保不動産を売却することです。任意売却では通常の不動産売買と同じ方法で売却できるので、「経済的な事情を知られずに売却できる」「市場価格に近い値段で売却できる」といったメリットがあります。 関連記事はこちら競売を回避する「任意売却」とは?注意点や流れを解説 任意売却にリースバックを利用するメリット 任意売却にリースバックを利用するメリットは以下のとおりです。 売却後も自宅に住める 通常の不動産売却の場合は、売却後に自宅を手放すことになります。別に住む家を見つけて引っ越しが必要になるため、手続きに手間がかかり、引っ越し費用も用意しなくてはなりません。一方で、リースバックであれば、売却後も慣れ親しんだ自宅に住み続けることができます。引っ越しも不要のため、経済的にも利点があると言えるでしょう。 将来的に買い戻しができる リースバックで売却した不動産は、将来的に買い戻しができます。多くのリースバック運営会社では、買い戻しができる期間が定められています。任意売却後に仕事や経済状況が安定すれば、買い戻して再び自宅を所有することも可能です。 任意売却にリースバックを利用する注意点 任意売却にリースバックを利用する場合は、以下の点に注意が必要です。 売却価格が住宅ローンの残債を上回る必要がある 通常、リースバックの売却価格は単独で決まるものではなく、家賃とのバランスによって決まります。売却価格が安くなれば家賃も安くなる関係にあるため、通常はリースバック運営会社との調整が可能です。 しかし、任意売却では担保不動産を売却することで債務を返済しなければならないため、家賃を安くするために価格を下げようと思っても、金融機関(債権者)に認められなければ、リースバック運営会社が提示する売却価格で利用できるとは限りません。 売却価格が安くなる恐れがある リースバックでは、不動産の売却価格が市場価格の7割程度となるのが一般的です。そのため、仲介による不動産売却よりも売却価格が安くなる恐れがあります。また、リースバック運営会社は数が限られるため、通常の不動産買取業者への売却よりも価格が安くなる恐れもあります。 自宅に住み続けることにこだわりがなければ、仲介で売却するほうが自宅を高く売ることができるかもしれません。 リースバック以外の選択肢は? 住宅ローンの返済が困難になった自宅の所有権を手放したくない場合は、「親子間売買」という方法もあります。具体例として、親が住宅ローンを返済するのが難しくなったときに、そのまま住み続けるために親から子に自宅を売却するケースが挙げられます。 親子間売買の注意点は、売買価格と実勢価格の乖離が大きいと贈与とみなされて贈与税が発生する恐れがあることです。また、親子間売買は通常の不動産売買と同じ税金が発生し、譲渡益が生じる場合は所得税や住民税が課税されます。 関連記事はこちら不動産の親子間売買は難しい?デメリットと手続きについて解説 親子間売買で住宅ローンを組むのは難しい 親子間売買は金融機関の審査が厳しいので、住宅ローンを組むのが難しいです。加えて、不動産は高額であるため、購入資金を全額自己資金でまかなうのも現実的ではありません。 親子間売買の資金調達方法として、不動産担保ローンが挙げられます。不動産担保ローンは住宅ローンと比較して金利がやや高くなりますが、まとまった資金を長期間借りることができるので、選択肢のひとつとして検討してもよいでしょう。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 まとめ 住宅ローンの返済が厳しい場合は、任意売却としてリースバックを利用することで自宅に住み続けながら返済に充てる資金を確保することができます。一方で、通常の任意売却と比較して売却価格が安くなる恐れがあるのがデメリットです。 もし、リースバックを選択肢のひとつと考えるのであれば、まずはリースバックの仮査定を申し込み、売却価格の目安を把握しましょう。具体的な目安を知ることで、本当に自分がリースバックに向いているかどうかを判断しやすくなるのでおすすめです。 ご相談・仮査定はこちら リースバックのご相談・仮査定を無料で受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リースバックの5つの活用事例 リースバックは、自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けられるサービスです。自宅を活用した資金調達方法として注目されており、老後資金...記事を読む

  • 競売とは?競売を回避すべき理由とその回避方法

    競売とは?競売を回避すべき理由とその回避方法

    不動産を担保とするローンの返済が困難になると、最悪の場合、競売によって担保不動産が強制的に売却されてしまいます。競売にはデメリットがあるので、ローンの返済が困難になったとしても、絶対に回避すべきです。また、不動産を担保にローンを借りるのであれば、もしものときの備えとして、競売について理解しておくことが大切です。 この記事では、競売を回避すべき理由や回避する方法について解説します。 競売とは 競売とは、債務者の所有する不動産などを売却し、その代金を債務の弁済にあてる手続きです。この手続きは、債権者の申し立てにより、裁判所が不動産などを差し押さえることで行われます。 競売は3種類に分類される 一口に「競売」といっても、競売に至るまでの経緯によって、3種類に分類されます。なお、手続きそのものの流れについては、3種類とも同様です。 強制競売 強制競売は、判決や裁判所での和解又は調停で決まった内容を実現したり、公証人が作成した公正証書の内容を実現したりするための手続きです。 担保不動産競売 担保不動産競売は、不動産に設定された担保権(主に抵当権)を実行するための手続きです。 形式競売 形式競売は、債務の清算としてではなく、遺産分割や共有物分割、破産手続上の換価など、不動産を売却してお金に換える必要があるときに、競売手続をその手段として利用するものです。 公売と競売の違い 競売は債権の回収を図る手続きであるのに対して、公売は滞納税金の回収を図る手続きです。根拠法も競売が民事執行法であるのに対し、公売は国税徴収法となります。また、競売は主に裁判所が手続きを進行しますが、公売は国税局や税務署が手続きを進行します。 競売の流れ 一般的に住宅ローンなどの保証会社がついている融資の場合、競売の大まかな流れは以下のとおりです。 金融機関から一括返済を求められる(督促状・催告状が届く) 保証会社が金融機関に一括返済を行う(代位弁済) 債権者が裁判所に競売申立てを行う 裁判所から競売開始決定通知が届く(差押え) 不動産の現況調査が行われる 競売の入札が実施される 落札者に不動産が売却される(退去) 上述のような流れで競売手続きが開始され、最終的には担保不動産が売却されます。競売の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事はこちら担保不動産競売までの流れをわかりやすく解説 競売を回避すべき3つの理由 競売は主に以下の3つの理由から、回避すべきと言えます。 落札価格(売却価格)が市場価格よりも安くなる 競売物件は買主にとってリスクが高いため、落札価格(売却価格)は市場価格を下回るのが一般的です。市場価格より落札価格が安くなる理由は以下のとおりです。 落札した建物に欠陥が見つかれば、買主が修繕費を負担しなくてはならない 前の所有者が落札後も退去しなければ、退去してもらうための交渉や手続きも必要になる 「競売物件」に対する抵抗感がある 通常の不動産取引に比べて、競売は手続きが煩雑である 競売での落札価格に大きく関わるのが、「売却基準価額」と「買受可能価額」です。上述のとおり、競売は落札者の負担が大きいことから、競売にかけられる不動産の売却基準価額は、市場価格の約7~8割程度に設定されます。 そして、最低落札価格を表す買受可能価額は、売却基準価額の8割です。落札価格の基準となる価額がこのように決定されているため、一般的に落札価格は市場価格を下回ってしまいます。 余計な費用がかかる 競売では、通常の不動産取引ではかからない、余計な費用がかかります。競売が実行されるまでには、各種書面の送付や現況調査など、さまざまな費用が発生しますが、これらの費用は予納金によって賄われます。予納金とは、裁判所に競売の手続きを申立てるときに債権者が納めるお金です。たとえば、競売物件が東京23区の場合、予納金の額は以下のとおりです。 請求債権額 予納金の額 2,000万円未満 80万円※ 2,000万円以上 5,000万円未満 100万円 5,000万円以上 1億円未満 150万円 1億円以上 200万円 ※令和2年3月31日以前に受理された申立てについては60万円 出典)裁判所|不動産競売事件(担保不動産競売,強制競売,形式的競売)の申立てについて 予納金は競売手続きを開始するときは債権者が債務者に代わって立替をしますが、最終的には売却代金から差し引かれて債権者に返還されるため、実質的には債務者が負担することになります。 また、ローンの延滞が始まってから競売で売却されるまでは、延滞分の遅延損害金も発生します。延滞から競売による売却まで一年以上かかる場合もあるため、残債によってはかなりの額になります。こうした費用が重なり債務者の負担金額が増加するため、競売で不動産を売却しても、残債を完済できない恐れもあります。 競売にかけられたことを知られてしまう 不動産を競売にかけられると、周囲に知られてしまう恐れがあります。なぜなら、裁判所による競売・差押えは公示され、所在地や外観、室内写真など、物件の詳細がホームページ上に掲載されるからです。名前が公開されることはありませんが、近所の人や会社などが見れば、競売にかけられていることはすぐにわかります。 また、競売の手続きが進むと、裁判所の執行官による現地調査が行われ、占有者や物件状態の確認、外観や室内の写真撮影、周辺住民への聞き取りなども行われます。また、ホームページなどに掲載された情報をもとに、落札目的の不動産業者が物件確認に訪れることも多いです。 競売で残債を完済できないとどうなる? 上述のとおり、競売は落札価格(売却価格)が市場価格よりも安くなるうえに、余分な費用も掛かってしまうため、競売後も残債を完済できない恐れがあります。 競売で完済できなかった残債については、引き続き、債権者に返済をすることになります。このときの債権者は、ローンを融資した金融機関や途中で「代位弁済」をした保証会社となりますが、債権管理回収を専門に行う「サービサー」という業者になることもあります。サービサーは、競売後、それまでの債権者から債権を譲渡され、債務者からの債権回収を行ないます。 このように、債権者は変わる可能性はありますが、債務者の残債に対する返済義務はそのままです。実際の返済方法については、債権者との交渉になりますが、分割払いとなるケースが多いようです。 競売を回避する方法 債権者から申立てによって、競売手続きが開始されたとしても、開札期日の前日までは取り下げの手続きができます。しかし、申立てを取り下げるように交渉するのは簡単ではありません。債権者に競売の申立てられた場合には、以下のような対策を行いましょう。 ①不動産担保ローン 他の金融機関から新たに融資を受け、残債を返済することができれば、債権者は競売の手続きを取り下げてくれます。しかし、延滞歴や資産状況を考えると現実的には難しいです。 一方で、不動産担保ローンを提供している金融機関の中には審査が柔軟な会社もあり、不動産に評価余力があれば融資を受けられるかもしれません。不動産担保ローンを利用して返済期間を延長できれば、毎月の返済額を低減できる可能性があります。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 ②任意売却 次に、任意売却とは、債権者と債務者の間で合意したうえで不動産を売却する方法です。債権者の合意を得ること以外は一般的な売却と同じなので、市場価格に近い値段で売却できる可能性があります。まずは、任意売却の相談に乗ってくれる不動産会社や弁護士を探しましょう。 関連記事はこちら競売を回避する「任意売却」とは?注意点や流れを解説 ③リースバック 最後に、同じ家に住み続けたい場合はリースバックも選択肢のひとつです。リースバックは自宅をリースバック運営会社に売却し、その運営会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けられます。債権者から売却価格の同意が得られれば利用できるかもしれません。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 まとめ 競売の申立てが行われると、取り下げてもらうのは簡単ではありません。競売で自宅を売却されてしまうと、市場価格よりも安くなるだけでなく、余計な費用がかかるなどのデメリットがあります。ローン返済の見通しが立たないときには、必ず借り入れした金融機関に相談しましょう。 自宅の売却相談はこちらから SBIシニアの住まいとお金なら、金融と不動産の両方の知識で丁寧にアドバイスいたします 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 「金銭消費貸借契約証書」の重要性とは? 金融機関から借入れた不動産担保ローンの返済が困難になってしまうと、担保として提供している不動産は金融機関によって売却されることになります。これは、不動産担保ローンを借入れるときの〝常識〟です...記事を読む