更新日: / 公開日:2021.11.10
誰でも年をとると、身の回りのことができなくなったり、思ったようにできなくなったりしていきます。体が弱ってきたとき、あるいは要介護状態になったとき、自宅以外の住まいの選択肢として、どのような候補があるのでしょう。
この記事では、高齢者向けの住まいである、老人ホームや介護施設がどのような施設なのかを紹介します。
高齢者向け住宅について調べていると、「介護施設」と「老人ホーム」という言葉が多く使われています。高齢者向け住宅について、詳しくない人にとっては、高齢者向け住宅は「老人ホーム」と「介護施設」の2つに大別されるものと思ってしまうかもしれません。まずは、これらの言葉が何を指しているのかについて考えてみましょう。
厚生労働省では、「高齢者向け住まい・施設」といった表記はあっても、「老人ホーム」と「介護施設」と分類した表記はありません(有料老人ホームや介護保険施設という言葉は出てきます)。つまり、この2つの言葉には明確な定義があるわけではなく、一般の人でもわかりやすいように説明しているものと考えられます。
そのため、この記事内では、「老人ホーム」と「介護施設」という2つの言葉を以下のように整理します。
以上のように定義すると、代表的な高齢者向け住宅は以下のように整理されます。
介護施設を除く老人ホーム
施設 | 主な設置主体 | 入所基準 | 認知症での入居 |
---|---|---|---|
軽費老人ホーム(自立型) | 地方自治体、社会福祉法人、知事許可を受けた法人 | 要支援1~ | 〇 |
住宅型有料老人ホーム | 民間 | 要支援1~ | 〇 |
養護老人ホーム | 地方自治体、社会福祉法人 | – | × |
サービス付き高齢者向け住宅 | 民間 | – | 〇 |
シルバーハウジング | 民間 | – | × |
介護施設
施設 | 主な設置主体 | 入所基準 | 認知症での入居 |
---|---|---|---|
介護老人福祉施設 | 地方自治体、社会福祉法人 | 要介護3~ | 〇 |
介護老人保健施設 | 地方自治体、医療法人 | 要介護1~ | 〇 |
介護医療院 | 地方自治体、医療法人 | 要介護1~ | 〇 |
介護療養型医療施設* | 地方自治体、医療法人 | 要介護1~ | 〇 |
軽費老人ホーム(介護型) | 地方自治体、社会福祉法人、 知事許可を受けた法人 | 要介護1~ | 〇 |
認知症対応型共同生活介護/th> | 民間 | 要支援2~ | 〇 |
介護付有料老人ホーム | 民間 | 要支援1~ | 〇 |
※介護療養型医療施設は2023年度末で廃止
公的施設は、主な設置主体が、地方自治体や社会福祉法人、医療法人です。代表的なのは介護保険施設で、介護老人福祉施設や介護老人保健施設などがあります。その他にも、軽費老人ホーム、養護老人ホームなども公的施設です。
公的施設は、民間施設に比べて、費用が抑えられることから人気が高く、エリアによっては入居待ちも起きています。施設によっては、低所得者に対する優遇があるなどの特徴があります。
一方で、民間の老人ホームとしては、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などがあります。民間企業が運営しているため、公的施設よりサービスが充実しているものの、費用面では高めになります。
介護サービスが必要ない「自立」の状態で利用できる老人ホームについて見ておきましょう。こちらも、概要や入所できる要介護度なども整理するとともに、公的施設と民間施設に分けてみます。
軽費老人ホームは身寄りがないなど、自宅での生活が困難な人向けの福祉施設です。自立型ケアハウスは低額で利用できるバリアフリー仕様の高齢者向け施設で、要支援1以上の高齢者に生活相談や食事が提供されています。
60歳以上の元気な人が入居でき、家事負担などを減らして暮らせます。介護サービスを受ける場合は、外部の事業者を利用します。「自立」で入所できる有料老人ホームにはほかに「健康型」もありますが、このタイプは要介護状態になると退去しなくてはなりません。
養護老人ホームは、身寄りがない人や、経済的・環境的な理由で自宅での生活が困難な65歳以上を対象にした施設です。職員も配置されていて、社会復帰の促進や自立した生活を送れるよう必要な指導や訓練等を行っています。介護施設ではないため、要介護になると退去しなくてはなりません。
60歳以上の高齢者向けの賃貸住宅で、部屋はバリアフリー化され、見守りサービスと生活相談サービスが付いています。部屋の大きさは原則25㎡以上と広めで、食事サービスや生活支援サービス(清掃、洗濯など)を提供している施設もあります。
公営住宅やUR都市再生機構賃貸住宅などの公共賃貸住宅の一部の部屋をバリアフリー化したもので、「生活援助員」がいて、生活相談や緊急時対応などのサービスを提供してくれる施設です。食事の提供などはありません。60歳以上の単身者または夫婦での利用も可能です。
要介護認定を受けた人の選択肢となる介護施設についても、概要と、入所できる要介護度などを整理します。公的施設と民間施設に分けて考えてみましょう。
常時の介護を必要とし、居宅で介護を受けることが困難な高齢者に対し、入所サービスを提供する施設です。要介護3以上の人が対象ですが、首都圏を中心に入居待ちも多くなっています。
病院を退院後、症状が安定している人で、在宅復帰を目指して看護や介護、リハビリを中心とした医療ケアと生活サービスを受けるための施設です。要介護1以上の人が対象で、入所期間は原則3か月程度などの条件があります。
2018年4月に新設された、医療と介護のニーズに対応するための介護保険施設。医療の必要な要介護者を対象として、医学管理や看取りなどの医療機能と、介護施設としての機能とを提供する施設です。療養機能にウエイトを置いたⅠ型と、機能訓練や必要な医療にウエイトを置いたⅡ型があり、要介護1以上の人が対象です。
治療が終わった後も、長期の療養が必要な人が医療や介護、機能訓練などを受けるための病院で、要介護1以上の人が対象です。なお、2024年3月31日の廃止が確定しています。
出典)介護療養病床・介護医療院の これまでの経緯 – 厚生労働省
軽費老人ホームは低額で利用できる福祉施設。家庭環境、住宅事情等で在宅での生活が難しい高齢者に対し、生活相談や食事が提供されます。バリアフリー仕様のケアハウスのうち、「特定施設入居者生活介護」の指定を受け、外部サービスを活用した介護サービスを受けられるのが介護型ケアハウスです。
要支援2以上の認知症高齢者が利用できます。少人数(1ユニット5~9人、1施設3ユニットまで)で家族のように共同生活を送ります。介助を受けながら、できる範囲で家事を分担し認知症の進行を遅らせます。施設によって入居の要件や費用も異なります。
介護・看護スタッフ等が常駐していて、介護保険を利用した介護サービスを24時間受けることができます。重度の要介護状態でも利用でき、施設によっては「看取り」まで可能なところもあります。一方で、サービスが手厚くなるほど費用も高額になります。そのほか、医療法人が経営する医療対応型の介護付き有料老人ホームもあります。要支援1から利用することができます。
この記事では老人ホームと介護施設の違いや概要を見てきました。高齢者向け住宅を検討している場合は、それぞれの違いを確認したうえで、検討するようにしましょう。
出典)高齢者向け住まいについて
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