フラット35を利用するために必要な適合証明書とは?

公開日:2024.07.03

マイホームを建築・購入する際に、全期間固定型住宅ローンのフラット35を利用するには「適合証明書」の取得が必要です。適合証明書とはどのような書類で、どうすれば取得できるのでしょうか。

この記事では、フラット35の契約時に必要な適合証明書の概要と物件検査の流れ、注意点について解説します。

フラット35の適合証明書とは

実は、「適合証明書」という名称の書類は2種類あります。一つは、今回解説するフラット35の適合証明書で、住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合した住宅であることを証明する書類です。もう一つは、都市計画法の許可が不要である特定の建築行為であることや、開発許可済地における建築行為の際に、建築計画が開発許可の内容に適合していることなどを証明する書面です。

フラット35を契約する際は、取扱金融機関へ住宅金融支援機構が定める適合証明書を提出しなくてはなりません。第三者である適合証明検査機関、または適合証明技術者(適合証明技術者は中古住宅・借り換え対象の住宅のみ)による物件検査の結果、技術基準を満たしていれば適合証明書が発行される仕組みです。

出典)【フラット35】新築住宅の物件検査

適合証明書発行業者の一覧はこちらをご確認ください。

参考)住宅金融支援機構「適合証明機関一覧」

フラット35の適合証明書発行のための物件検査

フラット35の適合証明書を取得するために受ける物件検査は、新築住宅と中古住宅で手続きが異なります。

新築住宅の場合

新築住宅の物件検査の一般的な流れは以下のとおりです。

    1. 設計検査
    2. 中間現場検査
    3. 竣工現場検査
    4. 適合証明書の交付
  •  ※中間現場検査は一戸建てのみ

    設計検査では、設計図面や仕様書などの書類をもとに、フラット35の技術基準を満たしているかを確認されます。新築戸建て住宅の場合、現場検査は2回です。1回目の中間現場検査は屋根工事が完了した時点以降に、2回目の竣工現場検査はすべての工事が完了した時点で行われます。

    いずれも、目視できる範囲で技術基準に適合しているかをチェックされます。なお、新築マンションの場合は、中間現場検査の実施がありません。これらの検査に合格すると、適合証明書が交付されます。

    また、新築住宅では、建築基準法に基づく検査済証が交付されていることも確認項目です。検査済証は、建物が完成した後に行われる検査後に発行されるもので検査済証の再発行はできないので注意しましょう。

    出典)
    【フラット35】新築住宅の物件検査
    【フラット35】技術基準・検査ガイドブック
    座間市「1 建築確認済証と検査済証について」

    中古住宅の場合

    中古住宅の物件検査は次の2つです。

    • 書類審査
    • 現地調査

    書類審査では、設計図面や登記事項証明書などをもとに、フラット35の技術基準を満たしているかを確認されます。現地調査では、住宅の現状が技術基準に適合しているかを目視等で確認されます。

    書類審査と現地調査に合格すれば、適合証明書が交付される仕組みです。

    出典)【フラット35】中古住宅の物件検査の概要

    なお、以下2つのいずれかに該当する中古住宅の場合、物件検査の省略できます。

    1.中古マンションらくらくフラット35

    フラット35の技術基準に適合していることを、あらかじめ確認した中古マンションです。物件情報検索サイト「中古マンションらくらくフラット35」を利用すれば、該当するマンションを検索できます。

    2.一定の要件を満たす中古住宅

    下表の1~4の中古住宅については、それぞれ対応する「【フラット35】中古住宅に関する確認書」を取扱金融機関に提出することで、物件検査を省略できます。また、下表の右欄に示す【フラット35】S及び【フラット35】維持保全型を利用できます。

    ※住宅金融支援機構と協定を締結した団体が運営する中古住宅の登録制度の対象となる住宅

    対象となる中古住宅利用できる【フラット35】S
    及び【フラット35】維持保全型
    1築年数が20年以内の中古住宅で、
    長期優良住宅の認定を受けている住宅
    ・【フラット35】S(金利Aプラン)
    ・【フラット35】維持保全型
    2安心R住宅である中古住宅で、
    新築時に【フラット35】を利用している住宅※1
    ・【フラット35】S(金利Bプラン)
    ・【フラット35】維持保全型
    3築年数が10年以内の中古住宅で、
    新築時に【フラット35】を利用している住宅※1
    ・【フラット35】S(金利Bプラン)
    4団体登録住宅※2である中古住宅で、当該団体があらかじめ
    【フラット35】の基準に適合することを確認した住宅
    ・【フラット35】S(ZEH・金利Aプラン・金利Bプラン)
    ・【フラット35】維持保全型
    (注)基準に適合する場合のみ

    ※1 新築時のフラット35の融資が【フラット35(保証型)】であった場合、この確認書を利用して借入申込みができる金融機関は売主が新築時にフラット35(保証型)を利用した金融機関に限られます。
    ※2 団体登録住宅とは、機構と協定を締結した団体が運営する中古住宅の登録制度の対象となる住宅です。

    なお、上記の要件を満たす中古住宅は、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる「フラット35S」及び【フラット35】維持保全型を利用できます(金利引下げメニューは住宅によって異なる)。

    フラット35の技術基準となる項目

    フラット35では、新築住宅と中古住宅でそれぞれ技術基準が定められています。

    新築住宅の基準項目

    新築住宅の基準項目とその概要は以下のとおりです。

    一戸建て住宅など(※1)マンション
    接道原則として一般の道に2m以上接すること。
    住宅の規模(※2)70㎡以上30㎡以上
    住宅の規格原則として2以上の居住室(家具等で仕切れる場合でも可)、炊事室、便所及び浴室の設置
    併用住宅の床面積併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上
    戸建型式など木造の住宅(※3)は一戸建てまたは連続建てのみ
    断熱構造(※4)次のいずれかに該当すること。
    (1)断熱等性能等級4以上、かつ、一次エネルギー消費量等級4以上
    (2)建築物エネルギー消費性能基準(別途、結露防止措置の基準あり)
    住宅の構造耐火構造もしくは準耐火構造(※5)であることまたは耐久性基準(※6)に適合すること。
    配管設備の点検点検口などの設置共用配管を構造耐力上主要な壁の内部に設置しないこと。
    区画住宅相互間等を1時間準耐火構造などの界床・界壁で区画
    床の遮音構造界床を厚さ15cm以上(RC造の場合)
    維持管理基準
    管理規約
    管理規約が定められていること。
    維持管理基準
    長期修繕計画
    計画期間20年以上

    ※1. 一戸建て住宅等には、連続建て住宅及び重ね建て住宅を含みます。
    ※2. 住宅の規模とは、住宅部分の床面積をいい、車庫や共用部分(マンションの場合)の面積を除きます。
    ※3. 木造の住宅とは、耐火構造の住宅及び準耐火構造(※5)の住宅以外の住宅をいいます。
    ※4. 2023年4月1日以降に設計検査の申請を行う住宅であっても、建築確認検査を受けた日(建築確認検査不要な住宅は着工日)が2023年3月31日以前の場合は、従前の基準(断熱等性能等級2相当)を適用できます。
    ※5. 準耐火構造には、省令準耐火構造を含みます。
    ※6. 耐久性基準とは、基礎の高さ、床下換気孔等に関する基準です。

    出典)住宅金融支援機構「【フラット35】新築住宅の技術基準の概要」

    後述する中古住宅にはありませんが、新築住宅では断熱構造や配管設備の点検、区画などが基準項目に含まれています。

    中古住宅の基準項目

    中古住宅の基準項目とその概要は以下のとおりです。

    一戸建て住宅など(※1)マンション(※2)
    接道原則として一般の道に2m以上接すること。
    住宅の規模(※3)70㎡以上(共同建ての住宅は30㎡以上(※4))30㎡以上(※4)
    住宅の規格原則として2以上の居住室(家具等で仕切れる場合でも可)ならびに炊事室、便所及び浴室の設置
    併用住宅の床面積併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上
    戸建型式等木造の住宅(※5)は一戸建てまたは連続建てに限る
    住宅の構造耐火構造、準耐火構造(※6)または耐久性基準(※7)に適合
    住宅の耐震性建築確認日が昭和56年6月1日以後(※8)であること
    (建築確認日が昭和56年5月31日以前の場合(※9)は、耐震評価基準などに適合)
    劣化状況土台、床組等に腐朽や蟻害がないこと等外壁、柱等に鉄筋の露出がないこと等
    維持管理基準
    管理規約
    管理規約が定められていること。
    維持管理基準
    長期修繕計画
    計画期間20年以上

    ※1. 一戸建て住宅等には、連続建て住宅、重ね建て住宅及び地上2階以下の共同建ての住宅を含みます。
    ※2. マンションとは、地上3階以上の共同建ての住宅をいいます。
    ※3. 住宅の規模とは、住宅部分の床面積をいい、車庫やバルコニー等は含みません。
    ※4. 共同建ての住宅の場合は、建物の登記事項証明書による確認においては、28.31㎡以上あれば構いません。
    ※5. 木造の住宅とは、耐火構造の住宅及び準耐火構造(※6)の住宅以外の住宅をいいます。
    ※6. 準耐火構造には、省令準耐火構造を含みます。
    ※7. 耐久性基準とは、基礎の高さ、床下換気孔等に関する基準です。
    ※8. 建築確認日が確認できない場合は、新築年月日(表示登記における新築時期)が昭和58年4月1日以後とします。
    ※9. 建築確認日が確認できない場合は、新築年月日(表示登記における新築時期)が昭和58年3月31日以前とします。

    出典)住宅金融支援機構「【フラット35】中古住宅の技術基準の概要」

    中古住宅は過去に人が居住したことがあるため、住宅の耐震性や劣化状況が基準項目に含まれています。

    フラット35の適合証明書のメリットや注意点

    適合証明書のメリット

    フラット35を利用するために、わざわざ物件検査を受けて適合証明書を取得しなくてはならないことを面倒だと思うかもしれません。しかし、第三者の物件検査を受けて合格し、所定の技術基準をクリアしていることが証明されれば、住宅を取得するうえで安心感につながります。

    今後長い間マイホームに住むことを考えると、手間や費用をかけるだけの価値はあるのではないでしょうか。

    適合証明書の注意点

    適合証明書の発行にかかる費用と有効期限

    フラット35の適合証明書の発行にかかる物件検査費用や発行までにかかる時間は、依頼した会社によって異なります。適合証明書がないと契約ができないため、スケジュールに余裕をもって物件検査の申請を行うことが大切です。

    適合証明書の有効期限

    フラット35の適合証明書には有効期限があります。新築住宅は、竣工から2年以内に借入れの申し込みをする必要があるため、適合証明書も竣工から2年以内に借入れの申し込みを行った場合のみ有効です。

    中古住宅の場合、適合証明書の有効期限は以下のとおりです。

    • 一戸建て:現地調査実施日から1年間
    • マンション(竣工から5年超):現地調査実施日から3年間
    • マンション(竣工から5年以内):現地調査実施日から5年間

    また、物件検査が不合格で、適合証明書を発行できなくても費用はかかる点にも注意しましょう。

    まとめ

    フラット35を利用するには、物件検査を受けて適合証明書を取得する必要があります。費用はかかりますが、第三者の物件検査を受けて合格し、所定の技術基準を満たしていることが証明されれば、住宅を取得するうえで安心感につながります。

    物件検査の依頼先がわからない場合は、不動産会社や建築会社などの専門家に相談しましょう。


    執筆者紹介

    「住まいとお金の知恵袋」編集部
    金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。