住み替えの流れや費用、利用できる税制上の特例を解説

更新日: / 公開日:2021.04.07

ライフスタイルの変化などから、「住み替え」を検討することがあるかもしれません。しかし、住み替えたいと思っても、どのように住み替えを進めていいか、わからないことが多いかもしれません。また、住み替えには費用だけでなく、売却益が出れば税金がかかることもあります。

この記事では、住み替えの流れや費用、利用できる税制上の特例について詳しく解説します。

住み替えの流れ

住み替えの流れを把握するには、「自宅の売却」と「新居の購入」の2つの取引を理解することが必要です。まずは、それぞれの流れを確認しましょう。

自宅を売却するまでの流れ

不動産仲介会社を利用して、自宅を売却するまでの流れは以下のとおりです。

  1. 不動産査定
  2. 媒介契約
  3. 売買契約
  4. 決済
  5. 引き渡し

まずは不動産会社に自宅の査定を依頼し、売却見込み額を確認します。査定金額に納得できたら、不動産会社と媒介契約を締結して売却活動が始まります。

売却活動で買主が見つかり、売却金額や引渡日などの条件が決定したら、売買契約を締結します。契約の際には、決済日や引き渡し日を決めます。なお、これら一連の手続きは、不動産会社が進行してくれるので、細かい手続きは都度確認すれば問題ないです。

新居を購入するまでの流れ

つぎに、新居を購入するまでの流れは以下のとおりです。

  1. 物件探し
  2. 物件見学・申込
  3. 売買契約
  4. 決済
  5. 引き渡し

まずは、不動産ポータルサイトなどで、条件に合う新居を探します。良さそうな物件が見つかったら、販売活動を行っている不動産会社に問い合わせます。問い合わせた時点で購入可能な物件であれば、実際に物件を見学し、希望に合うかどうかなどを確認します。

購入する物件が決まったら、売主と売買契約を締結し、決済完了後に物件が引き渡されます。なお、住宅ローンを利用する場合は、物件が確定した段階で、仮審査や諸々の手続きを進める必要があります。

住み替えの費用

住み替えの費用を、自宅の売却と新居の購入それぞれでかかる費用に分けると、以下のようになります。

自宅の売却でかかる費用

不動産仲介会社を利用して、自宅を売却すると、以下のような費用がかかります。

  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 一括繰上返済手数料・登記費用 ※自宅に住宅ローンが残っている場合
  • 所得税・住民税 ※譲渡益が出た場合
  • 引っ越し費用、仮住まいの賃料など

仲介手数料は不動産の売買価格によって変化し、一般的には「売買価格×3%+6万円+消費税」がかかります。たとえば、売買価格が3,000万円なら「96万円+消費税」となります。印紙税も不動産の売買価格によって変化し、前述の売買価格3,000万円の場合、「本則税率:2万円、軽減税率:1万円」となります。

また、住宅ローンを組んでいる場合、住宅ローン完済のために、返済手数料や抵当権抹消の登記費用が掛かります。また、自宅の売却で譲渡益が出た場合は、所得税や住民税がかかります。ただし、税制上の特例を利用することで税金がかからない場合もあります。

その他、自宅から新居への引っ越し費用、仮住まいが必要な場合には、仮住まい費用もかかります。

新居の購入でかかる費用

新居の購入では、以下のような費用がかかります。

  • 仲介手数料 ※不動産仲介による購入の場合
  • 印紙税
  • 登記費用
  • 融資事務手数料、保証料など ※住宅ローンを組む場合
  • 保険料
  • 引っ越し費用、不動産取得税、固定資産税など

新居を不動産業者から直接購入する場合には、仲介手数料はかかりません。しかし、不動産仲介で購入する場合、自宅の売却と同様に売買価格によって変動する手数料がかかります。

所有権の保存や移転に伴う登記費用のほか、新たに住宅ローンを組む場合は、銀行に支払う手数料や保証料、司法書士に依頼する抵当権設定費用なども必要です。

その他、定常的に発生する火災保険や固定資産税などの費用がかかります。そのため、資金が不足しないように、住み替えをする前に購入時の費用と、住み替え後に発生する定常的な支出も見積もっておきましょう。

出典)
公益社団法人 全日本不動産協会「仲介手数料について」
不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

住み替えに利用できる特例

住み替えにはまとまった費用がかかりますが、税制上の特例を利用することで、税負担の軽減が可能です。

譲渡益が出た場合

自宅の売却で譲渡益が出た場合は、以下2つの特例が利用できます。

  • 3,000万円の特別控除
  • 買い替え特例

3,000万円の特別控除とは、自宅を売却したときに、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例です。つまり、譲渡益が3,000万円以下の場合には、所得税や住民税がかかりません。

買い替え特例とは、自宅を買い替えたときに、譲渡益にかかる税金を将来に繰り延べできる特例です。自宅を売却した年には譲渡益への課税は行われず、将来新居を売却するときに課税されます。

3,000万円の特別控除と買い替え特例は併用できないため、どちらかを選択する必要があります。どちらが有利かは譲渡所得の金額などによって変わってくるため、判断できない場合は税理士などの専門家に相談しましょう。

出典)
国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」

譲渡損失が出た場合

自宅の売却で譲渡損失が出た場合は、「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が利用できます。本特例は、自宅を売却して譲渡損失が生じたときに、損失を他の所得と損益通算できる制度です。

損益通算を行っても所得から控除しきれなかった譲渡損失は、自宅を売却した年の翌年から最長3年間繰り越せます。本特例を利用すれば、給与所得などにかかる所得税・住民税が軽減されます。特例が適用されるか判断できない場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。

出典)国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき」

まとめ

住み替えをスムーズに行うには、流れや費用を確認した上で、自分に合った方法で手続きを進めることが大切です。不動産会社や税理士などと相談しながら、新居への住み替えを成功させましょう。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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