フラット35Sとは?種類や金利、利用条件について解説

公開日:2023.12.27

近年、全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」の金利が上がっています。「今後金利がますます上昇するのでは?」と不安になり、全期間固定金利であるフラット35を利用したい一方で、既にフラット35の金利を高く感じており、どうするべきか迷っている人もいるかもしれません。

そういった方に知っていただきたいのが、「フラット35S」という制度です。一定の条件を満たし、この制度を利用することで、フラット35の金利を一定期間下げることができます。この記事では、フラット35Sの種類や金利、利用の条件について解説します。

フラット35Sとは

フラット35Sとは、フラット35の申込者が長期優良住宅など、省エネルギー性や耐震性などを備えた質の高い住宅を取得する場合に、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度です。新築住宅だけでなく、中古住宅も対象です。

住宅の基準は通常のフラット35より厳しく設定されますが、基準を満たせば金利が下がるため、返済負担の軽減が期待できます。フラット35Sは、住宅の技術基準の高い順から、「フラット35S(ZEH)」、「フラット35S(金利Aプラン)」、「フラット35S(金利Bプラン)」の3種類があります。

出典)住宅金融支援機構「【フラット35】S」

フラット35Sの金利の引下げ幅と期間

フラット35Sの金利の引下げ幅と引下げ期間は、プランによって異なります。

フラット35S(ZEH)は、当初5年間は年-0.5%、6年目から10年目までは年-0.25%の引下げとなります。対してフラット35S(金利Aプラン)は当初10年間、フラット35S(金利Bプラン)は当初5年間、それぞれ年-0.25%の引下げとなります。

なお、どのプランでも金利引下げ期間が終了したら、通常のフラット35の金利に戻ります。

フラット35Sの返済シミュレーション

フラット35Sによって、返済負担はどのくらい軽減されるのでしょうか。

下表は、借入額3,000万円(融資率9割以下)、借入金利年1.80%、借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なしの場合の返済シミュレーションをまとめたものです。

返済シミュレーションの比較

出典)住宅金融支援機構「【フラット35】S」

通常のフラット35と比較した総返済額の負担軽減効果は、フラット35S(ZEH)で約114万円、フラット35S(金利Aプラン)で約74万円、フラット35S(金利Bプラン)で約40万円となります。より住宅の技術基準が厳しいプランほど、総返済額の負担軽減効果も高くなります。

フラット35Sの対象となる住宅の技術基準

フラット35Sを利用するには、フラット35の技術基準に加えて、プランごとに定められた追加基準を満たす必要があります。ここでは、フラット35Sの対象住宅の主な技術基準を紹介します。

①フラット35S(ZEH)

フラット35S(ZEH)では、「断熱性能」と「一次エネルギー消費量」の基準が設定されています。断熱性能は地域の区分、一次エネルギー消費量はZEH住宅の種類(区分)に応じた基準値を満たすことが要件です。

その他にも、戸建てと戸建て以外(マンションなど)で、それぞれ適用条件が詳細に定められています。

出典)【フラット35】S(ZEH)に関する基準

②フラット35S(金利Aプラン)

フラット35S(金利Aプラン)は、以下1~5のうち、いずれか1つ以上の基準を満たす新築住宅が対象です。

  1. 断熱等性能等級5以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級6の住宅
  2. 耐震等級3の住宅
  3. 免震建築物
  4. 高齢者等配慮対策等級4以上の住宅
  5. 長期優良住宅

中古住宅については、基準が異なります。詳しくは取扱金融機関にご確認ください。

出典)【フラット35】Sの対象となる住宅

③フラット35S(金利Bプラン)

フラット35S(金利Bプラン)は、以下1~5のうち、いずれか1つ以上の基準を満たす新築住宅が対象です。

  1. 断熱等性能等級4以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級6の住宅
  2. 断熱等性能等級5以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級4または等級5の住宅
  3. 耐震等級2以上の住宅
  4. 高齢者等配慮対策等級3以上の住宅
  5. 劣化対策等級3の住宅で、かつ、維持管理対策等級2以上の住宅

金利Aプランと同じく、中古住宅は基準が異なります。詳細は取扱金融機関にご確認ください。

出典)【フラット35】Sの対象となる住宅

フラット35Sの注意点

フラット35Sは金利引下げの特典を受けられますが、以下の点に注意が必要です。

予算金額次第で利用できない場合がある

フラット35Sは予算が決まっており、全体の実行額が予算額に達する見込みとなった時点で受付が終了します。受付終了日は、終了する3週間前までにフラット35のホームページにて掲載されます。利用を検討している場合は、定期的に確認しておきましょう。

フラット35であれば必ず併用できるわけではない

フラット35には、いくつか商品ラインナップがあります。そのうち、「フラット35(リノベ)※」はフラット35Sと併用できません。また、資金使途が借り換えの場合も利用できないので注意しましょう。

※フラット35(リノベ)とは、中古住宅の購入とあわせて一定の要件を満たすリフォームを実施すると、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度

借入期間中ずっと金利が下がるわけではない

フラット35Sの金利引下げ期間は当初5~10年間です。金利引下げ期間が終了すると金利は元に戻り、その後は返済負担が大きくなります。金利が元に戻ったときに、返済が厳しくならないかを考えておく必要があります。

フラット35Sを利用すべき?

フラット35を利用することが決まっている場合は、検討すべきでしょう。総返済額が減るため、一定期間金利を下げられるのは大きなメリットといえます。

ただし、フラット35Sを利用して金利を一定期間下げられたとしても、民間の金融機関の住宅ローンを固定金利で借りたほうが、総返済額が少なく済むことも考えられます。他の住宅ローンと総返済額などを比較したうえで、フラット35Sを利用するか判断することが大切です。

まとめ

一定の省エネルギー性や耐震性などを備えた住宅を購入する場合は、フラット35Sを利用することで金利が下がるかもしれません。固定金利で住宅ローンを組む場合は、銀行などのローンと比較したうえで、フラット35Sを検討してみてはいかがでしょうか。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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