更新日: / 公開日:2022.02.16
老後に向けて自宅の住み替えやリフォームなどを行う場合、まとまった資金が必要になります。預貯金があれば手元資金から捻出すればいいですが、老後資金への備えのためにローンを利用しようとしても、高齢になるとローンを借りるのが難しくなります。そのような時に高齢者向け住宅ローンの「リ・バース60」を活用できます。一方で、リ・バース60と通常の住宅ローンは何が違うのでしょうか。
この記事では、リ・バース60と住宅ローンの違いや類似点について詳しく解説します。
リ・バース60とは、住宅ローンの一種で満60歳以上の方向けの商品です。通常の住宅ローンと同じように、住宅の購入や建築、リフォーム、住宅ローンの借り換えなどに利用できます。
リ・バース60は毎月の支払が利息のみで、月々の返済負担が少ないのが特徴です。元本の支払いは、債務者が亡くなったときに担保不動産を売却して返済するか、相続人が現金で一括返済するかを選べます。
リ・バース60と住宅ローンはともに自宅を担保にした住宅ローンである点で共通しています。しかし、金融機関の借入限度額への考え方は大きく異なります。リ・バース60は不動産の評価額をベースに借入限度額を算出する、不動産担保ローンの考え方に近いです。一方で、住宅ローンは不動産の評価額をベースに借入限度額を算出するというよりは、債務者の与信を基に借入限度額を算出します。
このような考え方は融資条件にも表れます。具体的には、リ・バース60と住宅ローンは以下のような点で異なります。
リ・バース60は、毎月利息のみを返済する仕組みです。毎月の返済額が小さく、据え置いている元本は債務者の死後に一括返済します。そのため、返済は生きている限り無限に続きます。
一方、住宅ローンは、元本と利息を毎月返済する仕組みです。返済方法は、毎月同じ金額を返済する「元利均等返済」と毎月同じ元本を返済する「元金均等返済」の2つが一般的です。毎月元本を返済していくので、返済期間は有限です。
元利均等返済は返済額が毎月一定のため、返済計画が立てやすいのが特徴です。一方、元金均等返済は元利均等返済より総返済額が小さくなりますが、当初の返済額(元本+利息)が大きくなります。収入や支出、返済期間などを考慮して返済方法を選択することが大切です。
上述のとおり、リ・バース60と住宅ローンの借入限度額の算出方法は異なります。リ・バース60の借入限度額は、不動産評価額の50~60%程度(上限8,000万円)です。つまり、不動産の担保評価額が3,000万円なら、1,500~1,800万円(3,000万円×50~60%)が借入限度額となります。
一方で、住宅ローンは与信によって返済可能と判断されれば、不動産の購入額のみならず、住宅ローンの手数料や登記費用などといった諸費用分まで融資を受けられます。ただし、リ・バース60よりも年齢や収入、勤続年数といった申込人の属性に左右されます。
リ・バース60は、契約時点で満60歳以上の方が対象です。満50歳以上60歳未満の方も利用できますが、借入限度額の取扱いが変わってきます。そして、下限年齢は定められていますが、融資条件に上限年齢を定めていることは少ないです。
一方、住宅ローンには上限年齢に制限があり、「完済時年齢80歳まで」が一般的です。安定収入があることや団体信用生命保険(団信)の加入も条件となるため、転職して勤続年数が短い場合や健康状態に問題がある場合は、審査で不利に働きます。
適用金利は、リ・バース60が年利2.00~3.00%程度です。一方、住宅ローンは年0.30%程度から提供されていますが、金利タイプ(固定金利・変動金利)や借入期間などによって変わります。具体的な適用金利は金融機関ごとに異なるため、利用前に必ず比較検討することが大切です。
リ・バース60と住宅ローンは、団信の取扱いが異なります。団信は、ローン返済中に債務者が亡くなった場合、保険金によって残債が弁済される制度です。リ・バース60は亡くなった後に元本を返済する、いわゆる亡くなることを前提にした住宅ローンであるため、団信に加入できません。一方で、住宅ローンは一般的に団信への加入が必須です。
また、取扱金融機関の数にも違いがあります。リ・バース60は比較的新しい商品であるため、取扱金融機関は限られます。一方で、住宅ローンは都市銀行から地方銀行、信用金庫、ネット銀行、ノンバンクまで幅広い金融機関が取り扱っています。
リ・バース60と住宅ローンの類似点についても確認していきましょう。
リ・バース60と住宅ローンは、申込手続きや審査方法は基本的に同じ手順で行われます。ただし、リ・バース60は住宅ローンの借り入れの流れに加えて、推定相続人の同意が必要になります。これは元本の返済が債務者の死後に行われるという商品性から、相続人の協力が必要なためです。
リ・バース60と住宅ローンは、どちらも対象エリアは全国です。ただし、金融機関によっては対象エリアを限定しているケースもあります。上述のとおり、リ・バース60は比較的新しい商品であるため、全国でも取り扱う金融機関が限られ、地方などは対応する金融機関がない場合もあります。
リ・バース60と住宅ローンは、住宅の購入や建築、リフォーム、借り換えなどにのみ利用が認められています。事業資金や納税資金、教育資金など、住宅関連以外の使途には利用できません。
リ・バース60と住宅ローンは、どちらも一定の収入が必要です。これはどちらも借入可能額が返済比率を基に審査されるためです。なお、リ・バース60は毎月の返済額が少ない傾向にあり、住宅ローンに比べると比較的少ない収入で借り入れができます。
リ・バース60と住宅ローンは、どちらも抵当権による不動産の担保設定が必要です。取扱金融機関ごとに異なるものの、基本的に事務手数料や返済手数料も発生します。また、「市街化調整区域が利用できない」「再建築不可物件が利用できない」といった諸条件も類似しています。
年齢の関係で住宅ローンを組めない場合は、リ・バース60が選択肢となります。リ・バース60は住宅ローンの一種ですが、通常の住宅ローンとは異なる点もあります。老後に向けて住宅取得やリフォームを検討するなら、リ・バース60と住宅ローンの違いを理解しておきましょう。
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