公開日:2021.11.04
マイホームを購入するときは、住宅ローンを利用するのが一般的です。しかし、住宅ローンには審査があるので、必ず利用できるとは限りません。金融機関は、どのような基準で住宅ローンの審査を行うのでしょうか。
この記事では、住宅ローンの審査基準や通らない場合の対処法を紹介します。
国土交通省の調査によると、金融機関が融資を行う際に「考慮する」と回答した割合が高い項目(90%以上)は以下のとおりです。
出典)国土交通省「令和2年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書P19」
ほとんどの金融機関で年齢や健康状態、担保評価、属性(年収、勤続年数)を重視していることがわかります。上記の他に融資可能額、雇用形態、国籍、他の債務の状況・返済履歴の割合も高い傾向にあります。
また、住宅金融支援機構の調査によると、住宅ローンの本審査で「重視度が増している」と金融機関が回答した審査項目は以下のとおりです。
出典)住宅金融支援機構「2020年度 住宅ローン貸出動向調査P41」
返済負担率とは、月収に対する毎月返済額の割合のことです。約65%の金融機関が返済負担率の重視度が増していると回答しており、前回調査(63.0%)よりも割合が増えています。
住宅ローンを利用する場合、一般的な例として、以下の必要書類を用意します。
• 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
• 印鑑証明書(実印も)
• 収入証明書(源泉徴収票や納税証明書を含む)
• 預金通帳や証書
• 購入物件に関する各種資料
• その他必要書類
本人確認書類として運転免許証やパスポート、契約の際は印鑑証明書と実印が必要です。収入証明書や納税証明書は、一定の収入があること(返済能力があること)や税金の未納がないことを証明するために用意します。加えて、購入する物件の状況を確認するための書類として不動産登記簿謄本等の資料や他に借入中のローンがある場合は返済予定表も必要になります。上記以外にも自身の状況に応じて書類が必要になる場合があります。住宅ローンの審査をスムーズに進めたい場合は事前に金融機関に確認しておきましょう。
購入する物件が決まったら住宅ローンを取り扱っている金融機関に事前の申し込みをします。ここでは、本人確認資料や収入証明書、購入物件に関する各種資料などの書類が必要になります。なお、現在ではWebサイトで事前申し込みを受け付けている金融機関もあります。
事前審査の結果が出るまでの期間は金融機関によって異なりますが、一般的には3~4日程度の場合が多いようです。
事前審査に通った後、住宅ローンの正式申し込みを行います。正式申し込みにあたっては、上記にて紹介している各種書類をそろえる必要があります。こちらも事前審査と同様に、Webサイト上で申し込みを受け付けている金融機関もあります。
本審査では、事前審査と比べて厳密な審査が行われます。そのため、審査期間も長くなります。一般的には、1~2週間程度かかる場合が多いようです。
本審査に通ったら、金融機関と金銭消費貸借契約を締結します。加えて、担保となる物件の土地・建物に抵当権を設定するため、抵当権設定契約書の締結も行います。
金銭消費貸借契約の締結後、物件の引き渡し日になったら融資の実行と所有権の移転を行います。
ここでは、住宅ローンの審査に通らない理由を項目別に詳しく確認していきましょう。
住宅ローンでは、借入時年齢と完済時年齢に上限が設けられています。借入時年齢は65~70歳、完済時年齢は75~80歳が一般的です。そのため、高齢になるほど、審査に通過するのは難しくなります。
住宅ローンは、多くの金融機関で団体信用生命保険(団信)の加入が条件となっています。契約者に万一のことがあった場合に、保険会社から金融機関に支払われる保険金で残債を回収できるからです。
団体信用生命保険の加入は多くの金融機関で必須であるため、健康上の問題で団信に加入できないと、住宅ローンの利用は難しくなります。
住宅ローンは契約者の収入から返済されるため、年収や雇用形態、勤続年数といった属性が重視されます。
一般的には、高年収の正社員で勤続年数が高いほど金融機関の評価は高くなります。一方で、低年収で勤続年数が短い会社員や収入が不安定な自営業者は、融資条件が悪くなる場合や、そもそも住宅ローンの審査に通らないことがあります。
また、年収に対する住宅ローンの返済比率は30~35%が目安です。年収に対して借入希望額が大きすぎると、審査落ちの可能性が高くなります。
カードローンなどの返済を延滞すると、その情報が個人信用情報に記録されてしまいます。個人信用情報は金融機関に共有されます。延滞履歴があると住宅ローン審査でマイナス評価となるため、審査に通らない原因となります。
住宅ローンの審査では、購入物件の担保評価や取扱エリアも重視されます。契約者が返済できなくなった場合、金融機関は担保物件を売却して残債を回収するので、担保評価が低いと審査に通過できないことがあります。
また、住宅ローンは金融機関によって取扱エリアが決まっているため、エリア外の場合は申込ができません。
住宅ローンの審査に通らないその他の理由として、申告内容と金融機関が把握している情報に相違があることが考えられます。たとえば、「他にローンを借りているが、個人信用情報に登録されている借入金額と申込書の記載金額が異なる」といったケースです。
このようなケースでは虚偽の申告をしたとみなされ、審査落ちの原因となります。
住宅ローンの審査に通らないときは、原因によってアプローチを変えることが大切です。具体的には以下のような選択肢が考えられます。
高齢で通常の住宅ローンを利用できない場合は、高齢者向けの住宅ローンが選択肢です。たとえば、リ・バース60は60歳以上の方向けの住宅ローンです。返済が利息のみで、元金は債務者が亡くなったときに担保不動産を売却して返済する仕組みになっています。
親子リレーローンとは、親子で1つの住宅ローンを契約し、二世代に渡って返済を行う制度のことです。借入期間は、後継者にあたる子どもの年齢を基に算出されるので、一般的には、親の年齢で算出される借入期間よりも長い期間に設定することができます。
健康状態に問題がある場合は、ワイド団信や団信なしの住宅ローンが選択肢です。
ワイド団信とは、健康上の理由で一般団信に加入できない方向けに引受基準を緩和した団信です。基準は緩和されますが、住宅ローンの適用金利に一定の利率が上乗せされる点に注意しましょう。
金融機関によっては、団信なしの住宅ローンを取り扱っていることもあります。自身で一定の保証を確保できているなら、団信なしの住宅ローンを検討してもよいでしょう。
収入や勤続年数が原因の場合は、「基準を満たすまで待つ」という選択肢もあります。たとえば、転職したばかりで収入が下がっているなら、数年勤務すれば収入が上がり、審査に通過できるかもしれません。
また、ペアローンや親子ローンで連帯債務者を追加することで、審査に通過できる可能性もあります。
個人信用情報が原因の場合は、現在抱えている債務の返済を進めることが大切です。延滞の情報は5年程度で消えるため、滞りなく返済を行えば審査に通過できる可能性があります。
可能であれば、住宅ローンを申し込む前に自身の個人信用情報を確認しておくといいでしょう。個人信用情報はCIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターで確認できます。
不動産が原因の場合は、担保評価の高い物件に替えることが選択肢となります。これから物件を探す場合は、担保評価も考慮して物件を選ぶことが大切です。営業エリアにも注意して、取り扱いのある金融機関を選びましょう。
住宅ローンを申し込む際は、金融機関の質問に対して正直に答えることが大切です。万が一虚偽の回答をし、金融機関の持っている情報と異なると不信感につながり、審査落ちの原因となります。もし住宅ローンを借りられたとしても、後で嘘が判明すれば一括返済を求められてしまう場合もあります。
最近の傾向として、住宅ローン審査は自動が増えています。ローン審査を自動化すれば、人件費の削減やリスク分析の精度向上などが期待できるからです。自動審査では、AI技術によって申込者の情報を分析し、スコアリング方式で審査します。
スコアリング方式とは、申込者のデータをもとに審査項目ごとに点数をつけ、その合計点で融資判断を行う方式です。国土交通省の調査によれば、金融機関のスコアリング方式の採用状況は以下のとおりです。
出典)国土交通省「令和2年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書P18」
住宅ローンの審査に柔軟な対応を求めるなら、スコアリング方式で一律に審査を行っていない金融機関に相談するのも手といえます。
住宅ローンには多くの審査項目があり、基準を満たさないと審査に通過できません。無事にマイホームを購入するためにも、住宅ローンの審査項目を理解しておきましょう。審査に通らない場合は、原因を見極めて適切に対処することが大切です。
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