更新日: / 公開日:2019.12.24
老後の資金作りや副業として、不動産投資を始める会社員が増えています。マンションやアパートといった投資物件は、安定した家賃収入を得られるのが魅力です。一方で、不動産投資に興味はあっても、投資経験がないと何から始めたらいいかわからないのではないでしょうか。
不動産投資は投資金額が高額なので、その資金を多額のローンで賄う場合は、大きな損失を抱えるリスクもあります。不動産投資に取り組むのであれば、しっかりと準備をしたうえで始めることが大切です。この記事では、不動産投資を始めるための事前準備と基礎知識の学び方について解説します。
不動産投資を始める前に、事前準備として以下4つに取り組んでおきましょう。
実際に投資物件を購入する前に、まずは不動産投資の基礎知識を習得することが大切です。不動産投資で成功するには、安定して家賃収入を得られる物件に投資する必要があります。万が一、不動産会社に収益性の低い物件を勧められた場合に、知識がないと物件の良し悪しを判断できません。
しかし、経験がなくても知識があれば、投資すべき物件かどうかは判断できます。不動産投資は物件選びに失敗すると大きな損失を抱えるリスクがあるので、基礎知識の習得は必須です。基礎知識の学び方については、後ほど詳しく解説します。
不動産投資は投資金額が高額なので、ある程度まとまったお金が必要になります。金融機関の融資を利用することもできますが、仮に物件価格の全額を融資で賄う(フルローン)場合であっても、諸費用は用意しなくてはなりません。
物件価格が比較的安いワンルームマンションでも、都内の物件なら諸費用だけで100万円程度かかることもあります。多額の借金はリスクが高くなるので、融資を利用する場合でも、諸費用や頭金を用意できるように投資資金を貯めておきましょう。
不動産投資では、金融機関の融資を利用して物件を購入するのが一般的です。勤務先や年収、勤続年数などの属性によって、金融機関の審査結果は変わります。たとえば、東証プライム上場企業などの安定した企業に勤務している場合は、融資してもらえる可能性は高くなります。
しかし、転職して勤続年数が短いと、金融機関の評価が下がって審査に通らなくなるかもしれません。安定した企業に勤務している場合は、転職はしないで収入を増やすことに取り組みましょう。
現在の勤務先によっては、収入を減らさずに安定した企業へ転職するほうが有利なケースもあります。たとえば、創業したばかりの企業や業績不振の企業に勤務していると、安定収入がないとみなされて、融資審査に通らない恐れがあります。
しかし、勤務先が安定した企業であれば、たとえ勤務年数が短くても、金融機関からの評価は高くなります。現在の勤務先では融資を受けるのが厳しいと思われる場合は、なるべく収入を減らさずに安定した企業への転職を検討しましょう。
ここでは、不動産投資の基礎知識を学ぶ方法を4つ紹介します。
不動産投資の基礎知識を学ぶなら、まずは不動産投資に関する本を読むのがおすすめです。タイトルに「教科書」という言葉が入っている初心者向けの本や、個人投資家の成功体験が書かれたものなど、さまざまな内容の本が出版されています。また、ワンルームマンションやアパート一棟、戸建て、競売物件など、物件の種類で分類することもできます。
まずは、基礎知識が学べる初心者向けの本を1冊読んでみましょう。著者によって投資方法や考え方は異なるので、数冊読むとさらに理解が深まります。ただし、「~億円の資産を築いた方法」のようなタイトルの本は、多額の借金をして物件を購入していることが多いので注意が必要です。
不動産投資サイトやブログは基礎知識だけでなく、最新情報や投資家の体験談を無料で読めるのが魅力です。1記事あたりのボリュームは少ないので、空いた時間にパソコンやスマートフォンから気軽にチェックできます。ただし、個人ブログは本当に正しい情報なのか判断できないこともあるので、参考程度に読むのがいいでしょう。不動産投資サイトやブログは本と併せて読むことで、基礎知識を深めることができます。また、最近では、Youtubeで不動産投資の解説をする動画も増えているため、動画を活用するのもおすすめです。
不動産投資の基礎知識を学ぶには、セミナーに参加する方法もあります。セミナーは講師が直接説明してくれるので、ひとりで学ぶのが苦手な方でも理解しやすいのがメリットです。また、不動産会社によっておすすめの物件や地域は異なるので、複数のセミナーに参加することで、自分に合った投資方法を見つけやすくなります。
セミナー終了後は、個別の無料相談会が行われ、非公開物件などを紹介されることもあります。ほとんどの不動産会社は強引な勧誘を行いませんが、物件購入を強く勧められる可能性もゼロではありません。主催会社やセミナーの評判について、事前に確認してから参加しましょう。
友人や知人など、周囲に不動産投資を始めている人がいれば、直接話を聞くのもおすすめです。基本的に不動産会社は物件を購入してほしいので、不動産投資のメリットを強調して説明する可能性があります。
しかし、利害関係がない友人・知人であれば、本やセミナーではわからない不動産投資のデメリットや注意点なども教えてもらうことができます。無理に探す必要はありませんが、可能であれば、実際に不動産投資を始めている人の話を聞いてみましょう。
不動産投資を成功させるには、物件を購入する前にリスクについて理解しておくことが大切です。ここでは、不動産投資における10のリスクと対策方法を紹介します。
不動産投資で最も避けたいのが空室リスクです。投資物件を購入しても、入居者がいなければ家賃収入を得ることはできません。空室リスクを下げるには、利回りだけで判断せず、地域や立地、周辺環境、築年数などを考慮して物件を選ぶことが大切です。たとえば、以下のような物件は、空室リスクが低い傾向にあります。
入居者がいても、家賃を滞納されてしまうと家賃収入を得られません。仮に入居者が家賃滞納を繰り返しても、入居者の権利は法律で保護されているため、物件所有者の判断で退去させるのは難しいでしょう。
家賃滞納リスクを回避するには、賃貸契約の際に、入居者に保証会社を利用してもらうことが大切です。入居者が家賃を滞納しても、保証会社が家賃を立て替えてくれます。また、家賃滞納に強い管理会社を選んで物件管理を依頼すれば、家賃滞納が発生したときに、管理会社が対応してくれるので安心です。
不動産投資では、地震や火事、水害によって建物が損壊するリスクがあります。地震については、1981年以降に建てられた新耐震基準の物件を選ぶと安心です。新耐震基準は「震度6強以上の地震でも倒れない住宅」とされており、大きな地震が発生しても、建物倒壊を回避できる可能性が高くなります。
不動産投資では物件を売却することも考慮し、売却しやすい物件を選ぶことが大切です。
火事や水害については、ハザードマップで火事や水害のリスクが低い地域を確認しておくことで、災害に強い地域の物件を選ぶことができます。ハザードマップは物件の所在地である市役所や区役所などのHPから簡単に調べることができます。また、もしもの時に備えて、火災保険や地震保険にも必ず加入しておきましょう。
不動産投資には、物件の設備が老朽化するリスクもあります。クーラーや給湯器は約10年が交換の目安になり、ワンルームマンションの場合でそれぞれ10万円程度かかります。また、キッチンや風呂など水回りのトラブルで漏水が発生した場合は、下階の損害も補填しなくてはなりません。
入居者の過失の場合、復旧関連費用は全て入居者負担となり、入居者が加入する火災保険(家財保険)から支払われます。賃貸契約時には、入居者に必ず火災保険に加入してもらい、万が一のトラブルに備えましょう。
不動産投資には、購入した投資物件が売れなくなってしまう流動性リスクがあります。築年数が古い物件や地方の空室リスクが高い物件などは、なかなか買い手が見つかりません。また、首都圏にある駅近のマンションであっても、1階の物件は売れにくい傾向にあります。マンションの1階は比較的日当たりが悪く、防犯やプライバシーの面から敬遠されることが多いからです。不動産投資では物件を売却することも考慮し、売却しやすい物件を選ぶことが大切です。
ローンを利用して不動産投資をしていると、住宅ローンを借りられなくなるリスクがあります。住宅ローンでは、ローンの返済原資は債務者の年収のみです。不動産投資では、空室や修繕によって債務者に自己負担が発生し、住宅ローンの返済に影響が出る恐れが加味され、金融機関は信用力(返済能力)が低下したとみなします。住宅ローンを利用してマイホームを購入する予定があるなら、不動産投資を始めるかどうか慎重に判断しましょう。
不動産投資ローンを利用する場合は、金利上昇リスクがあります。変動金利の場合、金利が上昇すると金利負担が増えて、ローン返済が困難になる恐れがあります。現在は低金利の状況が続いていますが、いつ金利が上昇するかは予測できません。適用金利はやや高くなりますが、金利上昇リスクに備えるなら、固定金利でローンを組むことを検討しましょう。
不動産投資で得られる家賃収入は、所得税の計算上は不動産所得に該当します。不動産所得は総合課税の対象で、給与所得などと合算して所得税が計算されるため、人によっては高い税率がかかります。また、投資物件を売却するときには、売却益に対して税金がかかります。
投資物件の建物部分は、年数が経過すると減価償却によって帳簿価格が下がるので、思った以上に売却益が出て課税されることが多いです。また、物件購入後5年以内の短期売却の場合は、税率が高くなるので注意が必要です。
投資先がマンションの場合、管理状況が悪化するリスクがあります。マンションでは、共有部分の清掃や設備点検、大規模修繕への備えとして、毎月管理費と修繕積立金を支払います。しかし、管理組合が機能していないと、修繕積立金の不足や管理費の延滞が発生する恐れがあります。また、入居者が外国人の場合、文化の違いやコミュニケーション不足が原因で、ゴミ出しや騒音、ペット飼育などのトラブルが発生することもあります。
投資物件としてマンションを購入するときは、重要事項説明書などで修繕積立金や管理費などの状況を確認しましょう。また、外国人の入居者に対しても、しっかりと対応できる管理会社に物件管理を依頼することも大切です。
不動産投資には、家賃・物件価格が下落するリスクもあります。新築物件の場合、家賃や物件価格にはいわゆる「新築プレミアム」が上乗せされます。最初の入居者に対しては家賃を高めに設定できますが、退去すると中古物件となり、家賃の下落率は高くなります。
また、新築物件は物件価格の下落率も大きく、購入から数年で2割程度下落することもあります。投資物件の家賃や物件価格は、築年数が経過するほど下落率が緩やかになるため、家賃・物件価格の下落リスクに備えるなら、新築よりも中古物件がおすすめです。
ここでは、不動産投資における投資物件と不動産事業者の選び方について解説します。
まずは、複数の不動産投資セミナーに参加することから始めましょう。セミナーを主催する不動産事業者によって、おすすめの投資方法や物件の種類、考え方などは異なります。たとえば、中古ワンルームに強い事業者もいれば、アパートなどの一棟ものに強い事業者もいます。
また、経験・実績が豊富な会社から、設立されたばかりの新しい会社まで、さまざまな不動産事業者が存在します。複数のセミナーに参加して比較・検討すると、選択すべき投資方法が明確になり、自分にあった投資物件と不動産事業者を見つけやすくなります。
複数のセミナーに参加して情報収集できたら、身の丈にあった不動産投資方法を選択しましょう。収入に対してあまりにも高額な借り入れをするような投資方法はリスクが高く、万が一失敗したときは大きな損失が発生します。しかし、身の丈にあった投資方法を選択すれば、たとえうまくいかなかったとしても、それほど大きな損失を抱えずに済みます。
たとえば、物件価格が比較的手頃な中古ワンルームであれば、不動産投資初心者でも取り組みやすいでしょう。ただし、資産が潤沢にある場合は、最初からアパートなどの一棟ものに投資するのも選択肢のひとつです。
不動産投資方法が決まったら、複数の不動産事業者と関係を持ちましょう。担当者との面談では、以下のような点を確認することが大切です。
セミナーと同じく、複数の不動産事業者を比較・検討します。面談で強引なセールス・勧誘があった場合、その事業者と取引するとトラブルに発展する恐れがあるので注意が必要です。また、少しでも違和感を覚える不動産事業者についても、関係を続けるのは避けたほうが無難です。
対応に問題がなく、信頼できそうな不動産事業者を見つけたら投資物件を紹介してもらいましょう。不動産事業者によって、取り扱っている物件の数や種類、地域などは異なります。また、不動産情報サイトには公開されていない「非公開物件」を多く取り扱っている事業者もいます。まずは、不動産事業者が紹介する物件の癖を見抜くことが大切です。紹介された物件は安定した収益を見込めるか、選んだ投資方法に合っているかを見極めましょう。
物件を紹介してもらったら、担当者の対応や提案内容、物件の特徴などを比較・検討して、付き合う不動産事業者を選別していきます。担当者の対応や提案内容に問題がなくても、紹介された物件が選んだ投資方法と合っていない場合は、無理に付き合う必要はありません。不動産投資を成功させるために、自分が選んだ投資方法にあった物件を紹介してくれる不動産事業者を選びましょう。
ただし、収益性が高い物件は数が少なく、事業者によっては物件を紹介してもらえるまで時間がかかることもあります。投資方法にあった物件を取り扱っている不動産事業者については、優良物件が出てくるまでじっくり待つことも大切です。
不動産事業者の選別が終わったら、紹介してもらった物件を見に行ってみましょう。現地では最寄り駅からの距離や物件設備、周辺環境などが、担当者の説明と違っていないか確認します。現地に行って初めてわかる情報も多いので、物件情報だけで投資判断せず、必ず実際の物件を確認しましょう。
また、紹介された物件だけではなく、周辺の物件を見極めることも大切です。周辺にどのような物件があるか、賃料の相場、空室があるかどうかなど、可能な範囲で周辺の物件情報についても確認しておきましょう。紹介された物件と周囲の物件を比較することで、より投資判断をしやすくなります。
不動産事業者からの説明を鵜呑みにするのではなく、紹介された物件を自分で比較・分析したうえで購入判断することが大切です。ここでは、物件の比較表の作成や不動産投資ローンの比較、返済シミュレーションの作成について解説します。
まずは、不動産事業者から紹介された物件の比較表を作成しましょう。希望をすべて満たすような優良物件は、それほど多くありません。物件の比較表を作成することで、各物件の良し悪しがはっきり見えてくるのはもちろん、どのような項目を重視して物件を選ぶべきかが見えてきます。比較表で確認すべき主な項目は以下のとおりです。
収益性の高い物件を選ぼうとすると、利回りだけに注目してしまいがちですが、他の項目も重要です。たとえ利回りが高くても、築年数があまりに古いと空室リスクが高くなるほか、いざというときに買い手がつかない恐れもあります。一方で、築年数が新しいと物件価格が高くなって利回りは低下します。
不動産投資で大切なのは、自分に合った物件を見つけることです。初めての投資であることや投資金額を踏まえて、身の丈に合った物件を選ぶことが大切です。安心して長期保有できるように、物件の修繕状況や管理会社等についてもしっかり確認しておきましょう。
不動産投資ローンを使う場合は、ローンを比較するのも大切なポイントです。金融機関によって融資金額や適用金利、返済期間などの融資条件は異なります。金利や返済期間によって月々の返済額や総返済額は大きく変わるので、ローン選びは不動産投資の収支に大きな影響を与えます。複数の金融機関を比較・分析して、融資条件の良いローンを利用しましょう。
利用する不動産投資ローンが決まったら、返済シミュレーションを作成します。不動産投資を成功させるには、家賃収入の範囲でローン返済を行い、なるべく自己資金の持ち出しが発生しないようにすることが大切です。通常は定期的に退去が発生するので、満室を前提にせず、退去に伴う費用や入居者募集にかかる費用、修繕費、税金などを考慮しても問題なく返済できるかを見極めましょう。空室率を変更したり、繰り上げ返済の金額を調整したりして、複数の返済シミュレーションを作成すると投資判断しやすくなります。
物件や不動産投資ローンの比較、返済シミュレーションを行い、勝てる条件が整ったら思い切って物件購入を決断しましょう。不動産投資は、株式や投資信託などの金融商品と比べると投資金額が高額なので、たとえ好条件の物件が見つかったとしても、なかなか一歩を踏み出せないかもしれません。
「やっぱり難しい」と思うなら、無理に不動産投資を始める必要はないでしょう。しかし、不動産投資に取り組んでみたい気持ちがあり、時間をかけて投資物件を探して勝てる条件が整ったのであれば、思い切って決断してみてはいかがでしょうか。
物件探しに取り組んでも、投資したいと思える物件がなかなか見つからないこともあります。ここでは、投資物件が見つからない場合の対処法を2つ紹介します。
投資物件が見つからない場合の対処法1つ目は、不景気になるまで待つことです。一般的に景気がよいときは、不動産価格が上昇して利回りが低下するため、収益性の高い物件は少なくなります。景気は一定の周期で後退と回復を繰り返しているので、好景気の後は不景気になって不動産価格は下落します。焦って投資を始めても成功する確率が低くなるので、投資物件が見つからないときは、投資資金を貯めながら不景気になるまで待ちましょう。
投資物件が見つからない場合の対処法2つ目は、不動産への目利きをつけるために、最低半年程度は物件を見続けることです。不動産事業者から紹介される物件だけでなく、インターネットに掲載されている物件情報もチェックし、気になる物件があれば直接見に行ってみましょう。物件情報を見るときは、自分で作成した比較表を有効活用するのがおすすめです。気になる物件が見つかったときは、比較表に追記してより多くの物件を比較・分析することで収益性の高い物件を見つけやすくなります。
不動産投資で物件を購入するときは、紹介された物件の比較表を作成して投資すべき物件かどうかを見極めましょう。不動産投資ローンを比較し、返済シミュレーションも作成したうえで勝てる条件が整ったら、思い切って決断することが大切です。ただし、投資したい物件が見つからない場合は、焦って物件を購入しても成功する確率は低くなるので、「不景気になるまで待つ」「最低半年程度は物件を見続ける」といった方法で対処しましょう。
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