公開日:2024.05.15
両親や配偶者などの親族が亡くなり、相続人が財産を引き継ぐ場合、その財産は相続税の課税対象となります。相続財産の評価額が基礎控除額を超えるときは、その超える部分について相続税を納めなくてはなりません。相続税対策として、どのような準備をすればよいのでしょうか。
この記事では、相続税の基礎控除額や税負担を減らす方法について詳しく紹介します。
相続税の基礎控除額とは、相続税がかからない非課税枠のことです。基礎控除があることで、相続財産の評価額が一定の範囲に収まっていれば、相続税はかかりません。
相続税が発生するかどうかは、相続財産から負債や葬儀費用などを差し引いた残額が、基礎控除額を上回るかどうかで判断ができます。
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人 |
例えば、相続人が被相続人(亡くなった人)の配偶者と子2人の場合、法定相続人は3人です。この時、相続税の基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となり、相続財産の合計額が4,800万円以下であれば課税されません。
出典)財務省「親が亡くなりました。遺産を相続する場合にどのような税金がかかるのですか?」
相続財産の評価額が基礎控除額を超えると想定される場合、税負担を軽減するために、対策ができないか検討するかもしれません。相続税の軽減策として以下のような対策ができます。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
生前贈与によって、相続財産の総額を減らしていく方法です。被相続人が健在なうちに、少しずつ財産を推定相続人に渡していけば、相続税の負担軽減が期待できます。生前贈与としては、次の2つの方法が考えられます。
暦年贈与とは、1年単位(1月1日~12月31日)で贈与を行う方法です。贈与税(暦年課税)には年110万円の基礎控除額があるため、年110万円の範囲内で贈与を行えば、贈与税が非課税のまま財産を受け取ることができます。
ただし、「毎年100万円ずつ10年間」のように毎年同額の贈与を行うと、定期金給付契約に基づく権利の贈与を受けたとみなされ、贈与税がかかる恐れがあります。毎年贈与契約を結び、その契約に基づいて贈与を行うことが大切です。
また、相続開始前7年以内に被相続人から取得した贈与財産は、一定額を除いて相続税の課税対象となります。相続税対策として暦年贈与を行うなら、なるべく早く始めたほうがいいでしょう。
出典)
・国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
・国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」
・国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」
子どもや孫などに住宅取得資金や教育資金、結婚や子育て資金の贈与を行う場合は、一定の要件を満たすと、一定額まで贈与税が非課税になる次の特例を利用できます。
いずれも贈与税の申告書の提出、金融機関での専用口座の開設などの手続きが必要です。利用できるか判断できない場合は、税理士や金融機関などの専門家に相談してみましょう。
出典)
・国土交通省「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」
・国税庁「父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を 受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」
相続税は、相続財産の評価額に税率を掛けて税額を計算します。そのため、評価額を減らすことができれば、結果として相続税の負担軽減につながります。ここでは、相続財産の評価額を減らす方法を3つ紹介します。
被相続人の死亡により受け取る生命保険金も相続税の課税対象ですが、次のように非課税限度額が設けられています。
生命保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数 |
仮に法定相続人が配偶者と子2人(計3人)であれば、1,500万円(500万円×3人)までは相続税がかかりません。生命保険をうまく活用することで、より多くの財産を残すことが可能です。
出典)国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」
小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たすと宅地の相続税評価額が減額される特例です。被相続人が居住用として使用していた宅地(特定居住用宅地)について、330㎡を限度に80%の減額を受けられます。
出典)国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
マンションやアパート経営も、相続財産の評価額を減らす効果が期待できます。賃貸用のマンションやアパートは借地権割合や借家権割合、賃貸割合を考慮して評価されるため、一般的な住宅よりもさらに評価額を下げることが可能です。
ただし、マンションやアパート経営などの不動産投資にはさまざまなリスクがあり、入居者がいなければ家賃が入ってきません。相続税の負担軽減だけでなく、安定した賃貸収入が見込めるかも考慮して判断する必要があるでしょう。
相続税対策として、次のような制度を利用する方法もあります。
相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の両親や祖父母から、18歳以上の子または孫に財産を贈与したときに選択できる制度です。2,500万円までは贈与税が課税されず、限度額を超えた部分については一律20%の贈与税率が適用されます。
相続時には、本制度の贈与財産と他の相続財産を合計して相続税を計算する仕組みです。相続時精算課税制度は、令和5年度税制改正によって年110万円の基礎控除が創設されました。
暦年課税制度では相続開始前7年以内の贈与が相続税の課税価格の対象となる一方で、相続時精算課税制度では期間に関係なく、課税価格に加算されないというメリットがあります。しかし、相続時精算課税制度を一度選択すると、暦年課税に戻すことはできないので注意が必要です。
詳しくは、以下の関連記事をご確認ください。
養子縁組を行い、相続税の控除額を増やす方法です。基礎控除額や生命保険金の非課税限度額は法定相続人の数で決まるため、養子縁組で子どもの数が増えれば控除額も増えます。
注意点は、法定相続人に含まれる養子の数に制限があることです。被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までとなっています。また、代襲相続人になっていない孫などが養子になる場合、相続税額が2割加算される点にも注意が必要です。
相続が発生しても、相続財産の評価額が「3,000万円+600万円×法定相続人」の基礎控除額の範囲内であれば相続税はかかりません。しかし、基礎控除額を超える場合は、何か対策ができないか検討してもいいかもしれません。
一方で、税金対策として活用できるかどうか、本当に対策ができるかどうかを素人が判断するのは難しいでしょう。実際に対策や制度を利用する際には、あらかじめ税理士などの専門家に相談すると安心でしょう。
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