【FP相談事例】コロナウイルスの影響で住宅ローン返済に困ったら

更新日: / 公開日:2020.05.29

コロナウイルスの影響で家計の収入がダウンし、住宅ローンが重荷になってきた家庭は少なくありません。住宅ローンそのものの見直しも考えられますが、長期的なローン負担を気にして、もっと迅速かつ身軽になれる手段を求める方も増えています。この記事では、コロナの長期化に不安をもつ方が、今できることとしてどんな手段があるのかをご紹介します。

<ご相談者 Hさん>

  • 54歳男性。会社員
  • 妻(52歳)はパート。子供はいない。
  • コロナウイルスの影響で、夫の勤め先の業績が落ち、ボーナスは見込めず、基本給のみに。
  • 妻のパート先も休業などでなくなり、夫婦の稼ぎは大幅にダウンしている。
  • 35歳で購入した住宅のローンは、定年退職金で完済しようと思っていたが、その前に収入ダウンで家計全体がきつくなっている。

(1)住宅ローンが重荷だが、この時期、引越しは避けたい

Hさん:会社員の我が家でもコロナによる収入ダウンの影響が出ています。自分はボーナスがなくなり、月収も基本給のみになるとのこと。妻はパートが全くなくなり、このままでは、住宅ローンの返済も心配です。

FP吹田:この時期、本当に収入ダウンが深刻になりつつありますよね。住居費は、住宅ローンのほか維持費もありますか?全体では住居費はどのくらいの負担なのでしょうか?

Hさん:はい、マンションなので、管理費や修繕積立金もあります。住宅ローンが月15万円、マンションの管理費や修繕積立金を入れると月17.5万円相当の支出が続くのは痛いです。何かいい方法はありますでしょうか?

FP吹田:コロナウイルスの影響に対して、金融機関による住宅ローンの返済方法の変更が柔軟になりつつあります。Hさんの場合、まず考えられるのは、住宅ローンの返済期間を延長して、毎月返済額を軽くする方法でしょう。

Hさん:なるほど。借り換えではなく、借入をしている金融機関に相談をするのですね?

FP吹田:はい、借り換えは審査に時間もかかりますし、収入が下がっている場合は、難しいかもしれません。現在の住宅ローンの返済残高と残りの期間はどのくらいでしょうか?

Hさん:残高は2,570万円ほどで、残りの期間は16年あります。

FP吹田:なるほど。現在54歳とのことなので、返済期間の延長で完済時年齢を80歳ギリギリまで期間を延ばすとすると、残り16年を26年まで10年間延長することができそうですね。住宅ローンの金利はどのくらいですか?

Hさん:1.40%です。返済期間が10年延びることで、どのくらい毎月返済が軽くなるでしょうか?

FP吹田:ざっと試算しますと、10年間の期間延長で、毎月の住宅ローンの返済は10万円になりますね。現在と比較すると、毎月の返済額は5万円ほど減りますが、期間延長によって、支払う利子の合計は300万円から480万円へと約180万円も膨らんでしまいます。

Hさん:そんなに膨らむのですか? 毎月5万円の減少は大きいですが、利子の負担が少し気になりますね。今後の働き方を考えると、転職の可能性もあるかもしれません。せっかく買った家ですが、転職するなら、この住まいにずっと住む必要があるかわからないですし、いっそのこと、売却も視野に入れたほうがいいでしょうか?

(2)売却でまとまったお金が入り、そのまま住み続けられるリースバックも

FP吹田:この時期、一般的な不動産売却を考えるのは、様々な手続きや引っ越しの手間などを考えると大変だと思います。まずは引っ越しをしないで、生活を立て直すための資産や預貯金を整理することを優先してはいかがでしょうか?

Hさん:なるほど、引越しをしないで、整理できることからですね。どのような方法がありますか?

FP吹田:はい、ご自宅を不動産業者へ売却するけれども、そのまま借りるというリースバックという方法なら、売却資金が入って、住宅ローンは完済されますよね。そして引越しせずに、今のお部屋に家賃相当のリース料を払って住み続けることが可能です。

Hさん:なるほど。今の生活は大きく変えずに、住宅ローンがなくなるのですね。デメリットは何でしょうか?

FP吹田:デメリットは、売却価格がやや安めになる点と、リース料がかかることですね。先ほどの住宅ローンの期間延長と比べた特徴を表にしてみました。

リースバック住宅ローンの期間延長
仕組み不動産を売却するが、そのまま賃借して住み続ける住宅の所有権はそのまま、住宅ローンの返済期間を延ばし、返済額を軽減
メリット・買主を探す必要がなく、比較的早く現金化できる
・売却後も住み慣れた家に住み続けることが出来る
・不動産の価格下落リスクを回避することができる
・毎月のローン返済が軽くなる
・所有権は変わらない
デメリット・売却価格が周辺相場よりも安くなる傾向にある
・売却価格によっては住宅ローンを完済できないことがある
・毎月のリース料(家賃)が発生する
・敷金や礼金、更新料の負担がある(一部の企業では無料)
・返済金額が長くなることで、利息負担総額は膨らむ
・固定資産税や管理費・修繕費用など維持費がかかる

Hさん:なるほど。一般的な不動産売却では引っ越しなどの手間がありますが、現在の住環境を変える必要がないというのは大きなメリットですね。

FP吹田:そうですね。他に、ご自宅の現金化とローン完済が迅速にできることも、新型コロナウイルスが不動産価格にどう影響するのか不透明である今の時期には重要でしょう。売却価格やリース料については、一度、担当者に相場観など調べてもらって確認してみる価値はあると思いますよ。

Hさん:そうですね。住宅ローンがなくなって、どの程度現金が残るのか、リース料の負担も今後どのくらい生活設計に影響が出るのか、チェックしてもらいたいです。

FP吹田:そうですね。将来の生活設計については、今のお住まいでずっとリース料を払い続けるというよりも、ご夫婦の働き方や暮らしのベースに応じて拠点などもう一度見直していくべきだと思います。転職やリモートワークなどから、エリアももっと柔軟に考えられるかもしれませんよね。お引越しを落ち着いた頃にできると考えれば、住居費の負担も身の丈に合ったものにできると思いますよ。

Hさん:確かにそうですね。今はある意味、我が家にとっても非常事態で、大きな過渡期だと思います。過去のことに縛られずに、リセットできるように身軽にしておくことが一番なのかなと思っています。過渡期の整理の手段として、リースバックも検討してみます。

まとめ

住宅ローンが辛い家計、引越しせずに生活を立て直す手段は?

住宅ローンの期間延長は?

  • 利子の負担増加で支払総額は膨らむことになり、相当な金額になることもある。
  • 借入金融機関との交渉のみでいいので、早く対応ができる。

リースバックの効果は?

  • 引っ越し不要で、売却により住宅ローンを完済でき、そのまま住み続けられる。
  • 金利上昇や災害時など、突発的な出費のリスクを軽減できる。
  • 現在の住宅ローン残高や売却価格次第では手元に大きな資金を用意できる。

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執筆者紹介

吹田 朝子( Tomoko Suita )
人とお金の理想的な関係を追求するお金のメンタリスト®・1級ファイナンシャルプランニング技能士・宅地建物取引士・住宅ローンアドバイザー・キャリアコンサルタント
(社)円流塾代表理事、ぜにわらい協会会長、STコンサルティング(有)代表取締役社長
一橋大学卒業後、金融機関の主計部を経て1994年より独立。中小企業経営者から個人まで相談実績は3,300件以上。自己実現のためのお金の使い方や増やし方のサポートに力を入れている。
<主な著書>
「お金の流れをきれいにすれば100年人生は楽しめる!」スタンダーズ社・「小学生でもわかる!お金にまつわるそもそも事典」C&R研究所・「お金オンチの私が株式投資を楽しめるようになった理由」C&R研究所 など

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