公開日:2022.08.31
年齢を重ねてくると、購入当時の住まいでは生活のしづらさを感じる場面が増えてくるものです。ライフスタイルに合った住環境を作るために、選択肢の1つとしてリフォームを考えることもあるでしょう。しかし、実際にリフォームを行うとなると、どこから手をつければいいか悩んでしまいがちです。
この記事では、シニア世代がリフォームを行うときのポイントや間取りの事例、活用できる制度などを詳しく解説します。
50歳以降にリフォームを考えるときには、老後の暮らしを見据えた住みやすい間取りにすることを念頭に置く必要があります。特に子どもが独立してからは、間取りはシンプルなほうが暮らしやすいでしょう。
加齢に伴う身体機能の低下やバリアフリー、生活動線やライフスタイルなどの点から総合的に考えていく必要があります。以下ではリフォームを行う際にポイントとなる部分をそれぞれ解説します。
まず、玄関のリフォームで重要な点は、安全に出入りができるかということです。間口が狭い場合は、車椅子がスムーズに出入りできるように広げることも検討してみましょう。
玄関付近で気をつけておきたいのは、敷居や玄関のアプローチなどの段差でつまずく転倒事故です。できるだけ段差をなくすようにして、スロープを設けると安心です。また、安全に通行するために手すりを設置することも安心につながります。
浴室や脱衣所、キッチンやトイレといった水回り設備は転倒につながりやすい箇所でもあるため、特に注意が必要です。浴室や脱衣所はイスやシャワーチェアを置くスペースを確保できるかを確認しましょう。
まず、浴室の床は滑りやすいタイルなどは避け、なるべく滑りにくい素材に変更しましょう。また、浴室と脱衣所の間にある段差の解消や、ヒートショック対策として暖房器具を設置するなどの対策を行いましょう。
次に、トイレは手すりを設置して、立ち座りの負担を軽減することが大事です。また、出入りをスムーズに行えるように、ドアは引き戸にするほうがよいでしょう。
最後に、キッチンは戸棚の位置を低くして、座りながら調理できるスペースを設けてみると負担が減ります。ガスコンロからIHに切り替えて、火の不始末が起こらないような工夫もしてみましょう。
室内の移動はちょっとした段差でもつまずきやすいため、できるだけ段差を解消しましょう。夜間は足元が暗くなるため、フットライトを取り付けておくと安心です。
廊下には行き来をするときにつかまりやすいよう、壁に手すりを設けておきましょう。車椅子を使用するときは、廊下の幅が85~90センチメートルほどは必要になるため、通行の妨げになるものがないかをチェックしておきましょう。
リビングはくつろぐための空間であるため、日当たりや風通しに配慮したリフォームを心がけておきましょう。リビングからトイレや寝室までの距離は短くするなど、生活動線を考えた間取りの配置を考慮しましょう。
また、テーブルや食器棚などの家具の配置にも気を配る必要があります。一人掛けのソファなど、後から移動させやすい家具を選んでおくとよいでしょう。すぐに目につくように、家具の色はメリハリのある色づかいのものを選ぶのも良いかもしれません。
高齢になると室内で過ごすことが多くなるため、部屋の換気や採光に配慮しておくことが大切です。部屋ごとの室温に大きな差がないか、窓の開け閉めをしやすいかなどをチェックしておきましょう。
また、外に出るときのことを考えて、道路や車庫に出るまでのルートが安全であるかもチェックしておく必要があります。段差の解消や手すりの設置、フットライトの取り付けなど基本的な部分を点検してみましょう。
一口にリフォームといっても、物件の種類によって適した間取りは異なります。戸建てやマンション、二世帯住宅などそれぞれのパターンで、具体的な間取りの事例を見ていきましょう。
2階建て以上の戸建ての場合は、1階に寝室を配置するとよいでしょう。寝室とトイレの位置をできるだけ近くして、生活動線を考えた間取りの配置を行うことが大切です。
玄関にはイスを置けるスペースを確保し、階段下を収納として活用すると便利です。リビングにいる家族の気配が感じられるように、間口を広くしたり対面型のキッチンにしたりすると安心です。また、2階に上がる階段は転倒防止のために、手すりや滑り止めを設けておきましょう。
平屋やマンションの場合は、壁を取り払って広めのLDKにするのも1つの方法です。トイレと脱衣所、浴室などの水回りを1箇所にまとめてシンプルな設計にしてみると、移動がラクになります。
玄関は各部屋までの移動距離が短くなるように、間取りの中央部分にあるほうが望ましいといえます。ベランダやバルコニーは、外との出入りがしやすいように縁側やウッドデッキなどを設けると、採光や換気の調整も行いやすくなります。
二世帯住宅の場合は、それぞれのライフスタイルやプライバシーの確保に配慮した間取りにすることが重要です。トイレは年配の方が利用しやすい位置に配置し、玄関までの移動距離を短くするのがポイントです。
和室を作る場合は、ベッドが置けるように一部をフローリングにしてみるとよいでしょう。広々とした階段ホールに改良するなどして、各世帯の独立性を維持しながらも、ふれあえる空間を設けておくと良いでしょう。
リフォームを行うにはまとまった費用がかかるため、各種ローンだけでなく国や地方自治体が設けている補助金制度を有効活用することが大切です。どのような補助金があるのか事前に把握しておけば、リフォームの計画を進めやすくなるでしょう。
ここでは、3つの補助金制度についてポイントを紹介します。
介護保険は40歳からの加入が義務付けられている保険制度であり、要支援・要介護認定を受けたときに、介護費用の一部を支援してもらえる仕組みです。住宅改修費用についても介護保険の適用が受けられるため、負担の軽減につながります。
自己負担割合は1~3割と決められていますが、最大20万円までの補助が受けられます。補助金の支給は実際に工事を行って、業者に代金を支払った後で償還される仕組みであり、利用する際はあらかじめ住んでいる自治体に確認をしておきましょう。
対象となる工事は開口部・外壁・屋根・床などの断熱改修やエコ住宅設備(太陽熱利用システム・節水型トイレ・高断熱浴槽など)の設置、子育て対応改修やバリアフリー改修などです。
出典)介護保険における住宅改修
「長期優良住宅化リフォーム推進事業」とは、子育てに取り組みやすい生活環境の整備や住宅の長寿命化・省エネ化を推進するために行うリフォームに対して支援を行うものです。三世代同居対応改修工事や子育て世帯向け改修工事などの費用を支援してもらえます。
バリアフリー改修工事や高齢期に備えた住まいの改修工事なども対象となっており、幅広い用途で利用できる仕組みです。補助金の上限額は長期優良住宅の認定を受けない場合は最大100万円、認定を受ける場合は最大250万円となっており、工事費用の3分の1までが補助の対象となります。
「こどもみらい住宅支援事業」は子育て世帯や若者夫婦世帯が高い省エネ性能を持つ住宅を取得したり、リフォームを行ったりするときの費用を補助する仕組みです。住宅の新規購入時は、省エネ性能に応じて60~100万円の補助を受けられます。
リフォームの場合は、すべての世帯を対象として最大30万円の補助金が交付されます。さらに、子育て世帯や若者夫婦世帯の場合、最大60万円まで上限が引き上げられるので活用してみましょう。
出典)こどもみらい住宅支援事業
年齢を重ねてからも住みやすい環境を維持するには、必要に応じてリフォームを行うことが大切です。物件の種類によって間取りや生活動線などが異なるため、この記事で紹介したリフォームのポイントや事例などを参考にして、自分に合った住まいに作り変えてみましょう。
大がかりなリフォームになると、費用もそれなりにかさんでくるため、国が設けている補助金制度を上手に活用することが重要です。これから年を重ねていったときの暮らしをイメージしながら、早めに取り組んでみましょう。
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