融資のリスケとは?メリットやデメリットを解説!

更新日: / 公開日:2021.10.13

自営業者は景気悪化などで経営不振に陥り、資金繰りに悩むこともあるでしょう。借入金の返済に困ったときは、金融機関にリスケ(リスケジュール)を依頼する方法があります。ただし、リスケにはデメリットもあるので、特徴を理解してから計画的に進めることが大切です。

この記事では、融資のリスケのメリットとデメリット、リスケ以外の資金繰り改善方法について解説します。

リスケとは

リスケとは、リスケジュール(reschedule)の略語です。ビジネス用語として「スケジュールの見直し」の意味でよく使われますが、「返済計画の見直し」という意味でも使われます。

一般的に、銀行などの金融機関が使う「リスケ」は、後者を意味しており、借入金の返済が困難になった際に返済条件を変更するという意味で使われます。資金繰りが厳しくなった際には、金融機関と交渉することで融資のリスケができる可能性があります。具体的なリスケの方法は以下のとおりです。

  • 一定期間、返済額を減額する
  • 一定期間、元本支払いを据え置きする
  • 返済期間を延長し、返済額を減額する

融資のリスケの申込件数

金融庁の調査によると、2020年3月10日~2024年6月末の期間にリスケの申込みを行った中小企業者の数は、銀行分で約166万件(約1,055件/日)、協同組織金融機関分(信用金庫など)で約135万件(約858件/日)です。多くの中小企業者が、金融機関にリスケの相談や交渉を行っていることがわかります。

この背景にあるのは、2009年に施行された中小企業金融円滑化法です。中小企業金融円滑化法は2013年3月末で期限を迎えていますが、金融庁は金融機関に対して、引き続き円滑な資金供給や貸付条件等の変更に努めるように要請しています。そのため、現在もリスケに応じてもらいやすい状況が続いています。

実際に、同期間内の審査中や取下げを除くリスケの実行率は、銀行分が95.4%、協同組織金融機関分が96.3%です。実行率が非常に高いことから、正当な理由があればリスケに応じてもらえることがわかります。

出典)
金融庁「金融機関における貸付条件の変更等の状況について」
(銀行分)貸付条件の変更等の状況について
(協同組織金融機関分)貸付条件の変更等の状況について

融資のリスケをするメリット・デメリット

融資のリスケをするメリット

借入金の返済に困ったときに融資のリスケをするメリットは以下の2つです。

  • 借り換えをするよりも余計な費用がかからない
  • 経営立て直しのための時間的猶予を確保できる

資金繰りを改善するには、借り換えという選択肢もありますが、借り換えは既存借入の全額返済手数料、新規借入の事務手数料などの費用が発生します。一方で、融資のリスケによる支払条件の変更であれば、余計な費用はかかりません

また、融資のリスケをすると資金繰りが楽になるので、経営の立て直しに集中して取り組むことができます。経営課題の改善に取り組んで業績が回復すれば、今までどおり事業を継続できるでしょう。

融資のリスケをするデメリット

融資のリスケをするデメリットは以下の2つです。

  • 新規の融資を受けづらくなる
  • 返済が長期化する

通常、融資のリスケが行われている期間は、その金融機関からは追加融資を受けられません。返済原資を明確に示すことができなければ、他の金融機関から融資を受けるのも難しいでしょう。新規融資を受けられないと手元資金のみで資金繰りをしなくてはならないため、追加融資を考えている場合は、融資のリスケの前に運転資金を確保する必要があります。

融資のリスケは、返済が長期化するのもデメリットです。返済条件の見直しによって、一時的に資金繰りは楽になるかもしれません。しかし、長い目で見るとかえって返済負担が増し、経営にマイナスの影響を与える場合もあります。

融資のリスケ交渉のポイントと注意点

融資のリスケにあたり、最も大切なのは「どのようにして経営を立て直すか」です。融資のリスケはあくまでも返済条件の見直しであり、債務や利息が免除されるわけではありません。加えて、融資のリスケによって返済条件が見直されるのは、一般的に半年~1年程度の一定期間のみです。

金融機関にリスケ交渉を行う場合は、直近の実績と今後の予測を立てた資金繰り表、事業計画書、経営改善計画書などの作成や担保や保証人に関する資料を準備し、金融機関側に納得してもらうことが大切です。

融資のリスケに応じてもらったとしても、その後の対策を講じなければ根本的な解決にはならないため、融資のリスケを行うことで、本当に経営を立て直すことができるのかをしっかりと考えたうえで利用しましょう。

融資のリスケ中に可能な不動産を活用した資金調達方法

リスケを行っている期間は一般的に新たな融資を受けることが難しくなりますが、不動産を所有していればその不動産を活用して資金を確保できるかもしれません。具体的には、以下のような方法があります。

不動産担保ローン

まずは、不動産担保ローンで資金調達をする方法です。不動産担保ローンは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保にすることで、運転資金や既存借入の借り換えとしても利用することができます。借り換えによって毎月の返済額を減らすことができれば、資金繰りを改善して経営の立て直しに注力できます。

不動産担保ローンは、信用力と担保不動産の価値を総合的に判断して審査を行うため、融資のリスケ中でも借入れができる可能性があります。また、金融機関によっては家族所有物件などの不動産も担保として申込みできます。

リースバック

次に、リースバックで資金調達をする方法です。リースバックとは、不動産売買と賃貸借契約が一体となったサービスのことです。自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けることができます。

リースバックで売却した不動産は将来的に買い戻しができるので、経済状況が安定した後に再購入することも可能です。一方で、リースバックは、基本的に売却価格が市場価格よりも安くなります。加えて、所有権がリースバック運営会社に移転するので、リフォームや建て替えなどが自由にできなくなってしまう点に注意が必要です。

自宅売却

自宅を売却して資金調達を行う方法もあります。ただし、自宅を売却すると転居先を探す必要があるなど、生活環境を大きく変えることになるので、現実的には難しいかもしれません。また、住宅ローンの残債がある場合には、そもそも売却価格が住宅ローンの残債を上回っていなければ、売却することが難しいでしょう。

これらの理由から、自宅売却は不動産担保ローンやリースバックなどの選択肢を取れない場合の最終的な手段になるかもしれません。

その他の資金調達や対策

不動産を利用する以外にも資金調達や経営状況を改善するための対策もとれます。

ファクタリング

ファクタリングとは、企業が保有している売掛債権(売掛金など)をファクタリング会社が一定の手数料を差し引いて買い取るサービスです。売掛債権の支払期日が到来する前に資金化できます。

ファクタリングの法的な位置づけは、「債券譲渡契約(売買契約)」のため金融機関からの融資とは異なり、貸借対照表上の借入金(負債)が増えません。

ABL(動産・債権担保融資)

ABLとは、「Asset Based Lending」という英単語のそれぞれの頭文字を取った略称で、企業が保有する在庫や売掛金、機械設備などの事業資産を担保にした融資の一種です。

企業が金融機関から事業資金を借り入れる場合、経営者による個人保証をつけたり、不動産を担保に入れたりするのが一般的ですが、ABLなら担保となる不動産がなくても、企業が保有している在庫などの資産を有効活用して事業資金を調達できます。

日本政策金融公庫の融資制度

日本政策金融国庫は、「国民生活事業」、「農林水産事業」、「中小企業事業」の3つの事業を主軸に支援を行う政府系金融機関です。経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)や事業再生・企業再建支援など経営再建が必要な企業への融資制度が用意されています。

金融機関でのリスケが難しそうな場合は、日本政策金融国庫の融資制度への借り換えを検討するのも良いでしょう。それぞれ利用できる融資制度や諸条件が異なるため、まずは窓口で相談してみましょう。

出典)日本政策金融国庫「中小企業事業」

中小企業庁による支援

全国の商工会議所等が運営する中小企業活性化協議会では、収益力低下、借入増加のおそれのある中小企業を対象に収益力改善支援を実施しています。具体的には、1~3年間の収益力改善計画と資金繰り計画の作成と、その後の定期的なモニタリングなどを行ってくれます。

計画作成にあたって融資のリスケが必要と判断された場合は、1年間の収益力改善計画を作成してくれます。融資のリスケを検討している場合や、今後経営をどう立て直すか悩んでいる場合は、収益力改善支援の利用を検討しても良いかもしれません。

出典)中小企業庁「収益力改善支援」

まとめ

借入金の返済に困ったときは、金融機関に融資のリスケを申込むことで返済条件を見直してもらえる可能性があります。融資のリスケをして一時的に資金繰りが楽になれば、経営立て直しに集中して取り組むことが可能です。

不動産を所有している場合は、融資のリスケ以外の選択肢としてノンバンクの不動産担保ローンやリースバックも検討してみましょう。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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